特許第6612965号(P6612965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612965組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュール
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  • 特許6612965-組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュール 図000128
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612965
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   C09B 23/01 20060101AFI20191118BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20191118BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20191118BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   C09B23/01
   C09B67/20 F
   G02B5/22
   H01L27/146 D
【請求項の数】23
【全頁数】141
(21)【出願番号】特願2018-501732(P2018-501732)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006566
(87)【国際公開番号】WO2017146092
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-35022(P2016-35022)
(32)【優先日】2016年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-146953(P2016-146953)
(32)【優先日】2016年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-22240(P2017-22240)
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】荒山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和敬
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−163955(JP,A)
【文献】 特開2015−200878(JP,A)
【文献】 特開2009−263614(JP,A)
【文献】 特開2012−078396(JP,A)
【文献】 特開2003−171574(JP,A)
【文献】 特開2009−029952(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/035695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 23/01
C09B 67/20
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料誘導体と、溶剤とを含み、
前記顔料が式(PP)で表される化合物であり、
前記顔料誘導体が、下記式(1)で表される化合物を含む、組成物
【化1】
(式(PP)中、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、
27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【化2】
(式(1)中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
、R、RおよびRは、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
およびRは、各々独立に、−BR10を表し、
およびR10は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
Lは、式(L−1)で表される基とアルキレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基とアリーレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−SO−とアルキレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−S−とアルキレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−O−とアリーレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−NR’−と−CO−とアリーレン基との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−COO−との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−OCO−との組み合わせからなる基、式(L−1)で表される基と−COO−とアルキレン基との組み合わせからなる基または式(L−1)で表される基と−OCO−とアルキレン基との組み合わせからなる基を表し、
R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、カルボキシル基、スルホ基、フタルイミド基、式(X−3)で表される基、式(X−4)で表される基または式(X−9)で表される基を表し、
mは1〜10の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。)
【化3】
(式中、*は、連結手を表す)
【化4】
(式中、*は、式(1)のLとの連結手を表し、R100〜R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
顔料と、顔料誘導体と、樹脂と、溶剤とを含み、
前記顔料が式(PP)で表される化合物であり、
前記顔料誘導体が、下記式(1)で表される化合物を含み、
前記樹脂が、ポリカプロラクトン構造を有する樹脂を含む、組成物
【化5】
(式(PP)中、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、
27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【化6】
(式(1)中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
、R、RおよびRは、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
およびRは、各々独立に、−BR10を表し、
およびR10は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、カルボキシル基、スルホ基、フタルイミド基、式(X−3)で表される基、式(X−4)で表される基または式(X−9)で表される基を表し、
mは1〜10の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。)
【化7】
(式中、*は、式(1)のLとの連結手を表し、R100〜R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)中、Xが、カルボキシル基、スルホ基および式(X−3)で表される基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記顔料が、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
25℃における粘度が1〜100mPa・sである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記顔料の平均粒子径が5〜500nmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記顔料の100質量部に対し、前記顔料誘導体を1〜50質量部含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記顔料は、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の顔料を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
25℃の前記溶剤に対する、前記顔料の溶解度が、0〜0.1g/Lである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
25℃の前記溶剤に対する、前記式(1)で表される化合物の溶解度が、0〜0.1g/Lである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、樹脂を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
前記樹脂が、ポリカプロラクトン構造を有する樹脂を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物と、硬化性化合物とを含む、硬化性組成物。
【請求項14】
前記硬化性化合物が重合性化合物であって、さらに光重合開始剤を含む、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
アルカリ可溶性樹脂を含む、請求項13または14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
近赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を遮光する色材を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化膜。
【請求項18】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いてなる、近赤外線カットフィルタ。
【請求項19】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いてなる、赤外線透過フィルタ。
【請求項20】
顔料と、顔料誘導体と、溶剤とを含み、前記顔料が式(PP)で表される化合物であり、前記顔料誘導体が下記式(1)で表される化合物を含む組成物と、
硬化性化合物と、を含む硬化性組成物を用いてなる、赤外線透過フィルタ。
【化8】
(式(PP)中、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、
27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【化9】
(式(1)中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
、R、RおよびRは、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
およびRは、各々独立に、−BR10を表し、
およびR10は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、RおよびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、カルボキシル基、スルホ基、フタルイミド基、式(X−3)で表される基、式(X−4)で表される基または式(X−9)で表される基を表し、
mは1〜10の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。)
【化10】
(式中、*は、式(1)のLとの連結手を表し、R100〜R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項21】
請求項17に記載の硬化膜を含む、固体撮像素子。
【請求項22】
請求項17に記載の硬化膜を含む、赤外線センサ。
【請求項23】
固体撮像素子と、請求項18に記載の近赤外線カットフィルタとを有する、カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルタなどを用いることが多い。近赤外線カットフィルタは、例えば、近赤外線吸収剤を含む組成物を用いて製造されている。近赤外線吸収剤としては、例えば、ピロロピロール顔料などが知られている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
また、組成物中における顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体を使用することが検討されている。例えば、特許文献2には、顔料と、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料誘導体とを含む顔料液の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263614号公報
【特許文献2】特開2011−246649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の発明では、顔料の分散性は十分ではないことが分かった。また、本発明者らが、特許文献2に記載の顔料分散液について、更に検討したところ、顔料の色相(特に、可視領域の色相)が、顔料誘導体によって影響を受け、得られる膜の色相において、顔料が有する可視領域の色相が変動しやすいことが分かった。
【0006】
なお、特許文献1は、近赤外領域に吸収を有し、400〜700nmの領域に吸収を有さず不可視性に優れた、高堅牢な近赤外線吸収化合物および微粒子を提供することを目的とした発明である。しかしながら、特許文献1には、顔料と顔料誘導体とを併用することについての記載はない。さらには、特許文献1に記載の化合物を、顔料誘導体として用いることについての記載や示唆もない。
【0007】
よって、本発明の目的は、顔料が有する可視領域の色相に影響を与えることなく、顔料の分散性に優れた組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、後述する式(1)で表される顔料誘導体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 顔料と、顔料誘導体と、溶剤とを含み、
顔料誘導体が、下記式(1)で表される化合物を含む、組成物;
【化1】
式(1)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
3、R4、R5およびR6は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
7およびR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR910、または金属原子を表し、
7は、R1、R3またはR5と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
8は、R2、R4またはR6と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
9およびR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R9およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基を表し、
mは1〜10の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。
<2> 式(1)中、Xが、カルボキシル基、スルホ基、フタルイミド基、および、下記式(X−1)〜(X−9)で表される基から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の組成物;
【化2】
式(X−1)〜(X−9)中、*は、式(1)のLとの連結手を表し、R100〜R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよく、Mは、アニオンと塩を構成する原子または原子団を表す。
<3> 式(1)中、Xが、カルボキシル基、スルホ基および式(X−3)で表される基から選ばれる少なくとも1種である、<2>に記載の組成物。
<4> 顔料が、700〜1200nmの範囲に吸収極大波長を有する化合物である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> 顔料が下記式(PP)で表される化合物である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の組成物;
【化3】
式(PP)中、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、
27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。
<6> 25℃における粘度が1〜100mPa・sである、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> 組成物中の顔料の平均粒子径が5〜500nmである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の組成物。
<8> 顔料の100質量部に対し、顔料誘導体を1〜50質量部含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の組成物。
<9> 顔料は、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の顔料を含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の組成物。
<10> 25℃の溶剤に対する、顔料の溶解度が、0〜0.1g/Lである、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の組成物。
<11> 25℃の溶剤に対する、式(1)で表される化合物の溶解度が、0〜0.1g/Lである、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の組成物。
<12> さらに、樹脂を含む、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の組成物。
<13> 樹脂が、ポリカプロラクトン構造を有する樹脂を含む、<12>に記載の組成物。
<14> <1>〜<13>のいずれか1つに記載の組成物と、硬化性化合物とを含む、硬化性組成物。
<15> 硬化性化合物が重合性化合物であって、さらに光重合開始剤を含む、<14>に記載の硬化性組成物。
<16> アルカリ可溶性樹脂を含む、<14>または<15>に記載の硬化性組成物。
<17> 近赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を遮光する色材を含む、<14>〜<16>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<18> <14>〜<17>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化膜。
<19> <14>〜<17>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を用いてなる、近赤外線カットフィルタ。
<20> <14>〜<17>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を用いてなる、赤外線透過フィルタ。
<21> <18>に記載の硬化膜を含む、固体撮像素子。
<22> <18>に記載の硬化膜を含む、赤外線センサ。
<23> 固体撮像素子と、<19>に記載の近赤外線カットフィルタとを有する、カメラモジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、顔料が有する可視領域の色相に影響を与えることなく、顔料の分散性に優れた組成物、硬化性組成物、硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサおよびカメラモジュールを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、「アリル」および「メタリル」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の双方、または、いずれかを表す。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本明細書において、近赤外線とは、波長領域が700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID(内径)×15.0cm)を、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めることができる。
【0012】
<組成物>
本発明の組成物は、顔料と、顔料誘導体と、溶剤とを含み、顔料誘導体が、後述する式(1)で表される化合物を含む。式(1)で表される化合物は、可視透明性に優れる。そして、式(1)で表される化合物は、組成物中において、顔料と、式(1)で表される化合物のピロロピロール骨格とが相互作用すると共に、式(1)で表される化合物が有する、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基が、組成物中の他の成分と相互作用して、組成物中における顔料の分散性を高めることができる。このため、本発明の組成物は、顔料が有する可視領域の色相に影響を与えることなく、顔料の分散性を向上させることができる。このため、本発明の組成物を用いることで、可視領域の色相が良好な硬化膜などを製造することができる。また、本発明の組成物は顔料の分散性が良好であるため、組成物のチキソトロピー性が低く抑えられる。ここで、チキソトロピー性とは、流体にせん断力を印加したときに、せん断力の増加とともに粘度が低下する現象を意味する。また、本発明において、「チキソトロピー性が低い」とは、流体に印加するせん断力を増加させたときの、流体の粘度変化が小さいことを意味する。
【0013】
本発明の組成物は、25℃における粘度が1〜100mPa・sであることが好ましい。この態様によれば、顔料の分散性が良好である。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下が更に好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、顔料の平均粒子径が5〜500nmであることが好ましい。この態様によれば、顔料の分散性が良好である。上限は、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。下限は、10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。なお、本明細書において、顔料の平均粒子径は、顔料の一次粒子(単微結晶)が集合した二次粒子についての平均粒子径を意味する。顔料の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により求めた値である。
【0015】
本発明の組成物は、顔料が、ピロロピロール顔料(好ましくは後述する式(PP)で表される化合物)であることが好ましい。この態様によれば、顔料の分散性が特に良好である。また、顔料が、ピロロピロール顔料(好ましくは後述する式(PP)で表される化合物)である場合、本発明の組成物は、可視領域における吸収が小さいことが好ましい。例えば、波長400〜650nmの範囲における平均透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長400〜650nmの範囲における透過率の最小値が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
【0016】
<<顔料>>
本発明の組成物は、顔料を含有する。顔料の種類は、特に限定されない。顔料は、可視領域に吸収を有する顔料(以下、有彩色顔料ともいう)であってもよく、近赤外領域に吸収を有する顔料(以下、近赤外線吸収顔料ともいう)であってもよい。
【0017】
有彩色顔料としては、特に限定されず、可視領域(好ましくは、波長400〜650nmの範囲)に吸収を有する化合物が挙げられる。例えば、ジケトピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アゾ化合物、イソインドリン化合物、キノフタロン化合物、ベンズイミダゾロン化合物、ペリノン化合物などが挙げられる。有彩色顔料の具体例としては、以下が挙げられる。
カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等、
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等、
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80
【0018】
近赤外線吸収顔料としては、極大吸収波長が700〜1200nmの範囲に有する化合物が好ましく、極大吸収波長が700〜1000nmの範囲に有する化合物がより好ましい。本発明において、顔料は、近赤外線吸収顔料であることが好ましい。近赤外線吸収顔料は、組成物中における分散性が低下しやすいものが多く、分散性のさらなる改善が望まれており、本発明の効果が特に顕著に得られ易い。
【0019】
近赤外線吸収顔料としては、例えば、ピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ペリレン化合物、シアニン化合物、ジチオール金属錯体化合物、ナフトキノン化合物、イミニウム化合物、アゾ化合物およびスクアリリウム化合物などが挙げられ、ピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物が好ましく、ピロロピロール化合物がより好ましい。ピロロピロール化合物は、ピロロピロールホウ素化合物であることが好ましい。ピロロピロール化合物は、近赤外線吸収性および不可視性に優れるので、近赤外遮蔽性および可視透明性に優れた近赤外線カットフィルタ等の硬化膜が得られ易い。また、ピロロピロール化合物は、組成物中における分散性が低い顔料であるが、本発明によれば、組成物中における顔料の分散性を良好にでき、本発明の効果がより顕著に得られ易い。ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物などが挙げられる。フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イミニウム化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物及びクロコニウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に開示の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
顔料は、後述する式(1)で表される化合物(顔料誘導体)の母核構造と同じ化合物であることが好ましい。
【0020】
本発明において、顔料は、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の顔料を用いることも好ましい。特に、顔料として近赤外線吸収顔料を用いた場合、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の顔料を用いることが好ましい。この態様によれば、膜の吸収スペクトルの波形が、1種類の近赤外線吸収顔料を使用した場合に比べて広がり、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽することができる。
【0021】
極大吸収波長の異なる少なくとも2種の顔料を用いる場合、波長700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の近赤外線吸収顔料と、第1の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長よりも短波長側であって、波長700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する第2の近赤外線吸収顔料とを少なくとも含み、第1の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長と、第2の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長との差が、1〜150nmであることが好ましい。
【0022】
第1の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長と、第2の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長との差の好ましい態様の一つとしては、5〜100nmが好ましく、30〜90nmがより好ましい。この態様は、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる膜などの製造に適している。また、第1の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長と、第2の近赤外線吸収顔料の極大吸収波長との差の好ましい態様のもう一つは、5〜100nmが好ましく、20〜60nmがより好ましい。この態様は、特定の波長範囲の赤外線を選択的に遮蔽可能な膜などの製造に適している。なお、本発明において、上述の波長範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収顔料を3種類以上含んでいてもよい。この場合、波長700〜1200nmの範囲において、最も長波長側に極大吸収波長を有する近赤外線吸収顔料を第1の近赤外線吸収顔料とし、第1の近赤外線吸収顔料よりの短波長側に極大吸収波長を有する近赤外線吸収顔料のすべてを第2の近赤外線吸収顔料とする。また、最も長波長側に極大吸収波長を有する近赤外線吸収顔料が2種類以上存在する場合は、両者を第1の近赤外線吸収顔料とする。
【0023】
顔料は、組成物に含まれる溶剤(25℃)に対する溶解度が0〜0.1g/Lであることが好ましく、0〜0.01g/Lであることがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物において、顔料の含有量は、組成物の全固形分中の10〜60質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
【0025】
(ピロロピロール化合物)
本発明において、ピロロピロール化合物としては、下記式(PP)で表される化合物が好ましい。式(PP)で表される色素の極大吸収波長は、700〜1200nmの範囲に有することが好ましく、700〜1000nmの範囲に有することがより好ましく、730〜980nmの範囲に有することがさらに好ましく、750〜950nmの範囲に有することが一層好ましい。化合物の極大吸収波長は後述する固体撮像素子や赤外線センサなどの光学デバイスの求められる性能に応じて設計される。
【化4】
式(PP)中、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基スルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、
27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
式(PP)において、R21およびR22は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
21およびR22が表すアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
21およびR22が表すアリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
21およびR22が表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
上述したアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基を有していることが好ましい。置換基としては、酸素原子を含んでもよい炭化水素基、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、複素環オキシ基、複素環カルボニルオキシ基、複素環オキシカルボニル基、複素環オキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、メルカプト基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられ、酸素原子を含んでもよい炭化水素基または、ハロゲン原子が好ましい。また、顔料の分散性の観点から、置換基は、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基以外の基であることが好ましい。酸性基、塩基性基、塩構造を有する基の詳細については、後述する式(1)で表される化合物(顔料誘導体)のXで説明した基が挙げられる。
【0027】
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
置換基としての炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐のアルキル基の炭素数は、3〜40が好ましい。下限は、例えば、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が一層好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。分岐のアルキル基の分岐数は、例えば、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐のアルケニル基の炭素数は、3〜40が好ましい。下限は、例えば、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が一層好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。分岐のアルケニル基の分岐数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。
複素環オキシ基、複素環カルボニルオキシ基、複素環オキシカルボニル基、複素環オキシカルボニルアミノ基、複素環チオ基、複素環スルホニル基、および、複素環スルフィニル基が有する複素環を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。複素環は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
酸素原子を含む炭化水素基としては、−L−Rx1で表される基が挙げられる。
Lは、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(ORx2m−または−(Rx2O)m−を表す。Rx1は、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。Rx2は、アルキレン基またはアリーレン基を表す。mは2以上の整数を表し、m個のRx2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
Lは、−O−、−(ORx2m−または−(Rx2O)m−であることが好ましく、−O−がより好ましい。Lは、−OCO−であることも好ましい。
x1が表すアルキル基、アルケニル基、アリール基は上述したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。Rx1は、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、アルキル基がより好ましい。Lが−OCO−である場合、Rx1は、アリール基であることも好ましい。
x2が表すアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が更に好ましい。アルキレン基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。Rx2が表すアリーレン基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。Rx2はアルキレン基が好ましい。
mは2以上の整数を表し、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。
【0028】
アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基が有してもよい置換基は、分岐アルキル構造を有する基が好ましい。また、置換基は、酸素原子を含んでもよい炭化水素基が好ましく、酸素原子を含む炭化水素基がより好ましい。酸素原子を含む炭化水素基は、−O−Rx1で表される基が好ましい。Rx1は、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、分岐のアルキル基が特に好ましい。すなわち、置換基は、アルコキシ基がより好ましく、分岐のアルコキシ基が特に好ましい。置換基が、アルコキシ基であることにより、耐熱性および耐光性にすぐれた膜が得られやすい。アルコキシ基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルコキシ基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐のアルコキシ基の炭素数は、3〜40が好ましい。下限は、例えば、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が一層好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。分岐のアルコキシ基の分岐数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基が有してもよい置換基は、複素環カルボニルオキシ基、または、複素環オキシカルボニル基であることも好ましい。
【0029】
21およびR22の具体例としては、以下の基および後述する式(PP)で表される化合物で示すAr−1〜Ar−7、Ar−41〜Ar−57などが挙げられる。以下において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表す。*は、式(PP)における結合位置を表す。
【化5】
【化6】
【0030】
式(PP)において、R23、R24、R25およびR26は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表す。
23およびR25の一方が、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことが好ましく、R23およびR25の一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
24およびR26の一方が、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことが好ましく、R24およびR26の一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
【0031】
ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。ヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基は置換基を有してもよく、無置換であってもよい。置換基としては、下記の置換基Tで説明した基が挙げられる。また、顔料の分散性の観点から、置換基は、後述する式(1)で表される化合物(顔料誘導体)のXで表される基以外の基(すなわち、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基およびフタルイミド基以外の基)であることが好ましい。酸性基、塩基性基、塩構造を有する基の詳細については、後述する式(1)で表される化合物(顔料誘導体)のXで説明した基が挙げられる。
【0032】
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1〜30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0033】
23〜R26が表すヘテロアリール基は、下記式(A−1)で表される基および(A−2)で表される基であることが好ましい。
【化7】
【0034】
式(A−1)において、X1は、O、S、NRX1またはCRX2X3を表し、RX1〜RX3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Ra1およびRa2は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Ra1とRa2は、互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(PP)における結合位置を表す。
a1、Ra2およびRX1〜RX3が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
【0035】
a1とRa2が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。Ra1とRa2とが環を形成する場合、(A−1)としては、下記の(A−1−1)で表される基、(A−1−2)で表される基などが挙げられる。
【化8】
式中、X1は、O、S、NRX1またはCRX2X3を表し、RX1〜RX3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、R101a〜R109aは、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。*は、式(PP)における結合位置を表す。R101a〜R109aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。
【0036】
式(A−2)において、Y1〜Y4は、それぞれ独立に、NまたはCRY1を表し、Y1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、RY1は、水素原子または置換基を表し、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(PP)における結合位置を表す。RY1が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
【0037】
1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。隣接するRY1同士が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。隣接するRY1同士が環を形成する場合、(A−2)としては、下記の(A−2−1)で表される基、(A−2−2)で表される基などが挙げられる。
【化9】
式中、R201a〜R227aは、各々独立して、水素原子または置換基を表し、*は、式(PP)における結合位置を表す。R201a〜R227aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。
【0038】
23〜R26が表すヘテロアリール基の具体例としては、以下が挙げられる。以下において、Buはブチル基を表す。ヘテロアリール基の種類は、併用する顔料の種類に応じて選択することが好ましい。例えば、顔料としてピロロピロール化合物を用いた場合、顔料誘導体の前述のヘテロアリール基は、ピロロピロール化合物のR23〜R26に相当する部分におけるヘテロアリール基と共通の構造を有するヘテロアリール基であることが好ましい。なお、共通の構造を有するヘテロアリール基とは、ヘテロアリール基が置換基を有する場合は、置換基を除いた部分の構造が同一である場合を意味する。*は、式(PP)における結合位置を表す。
【化10】
【化11】
【0039】
式(PP)中の、R27およびR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR2930、または金属原子を表し、−BR2930が好ましい。
【0040】
27およびR28が、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す場合、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基としては、上述したR21およびR22で説明した基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
27およびR28が、金属原子を表す場合、金属原子としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズ、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、白金が挙げられ、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金が特に好ましい。
【0041】
27およびR28が、−BR2930を表す場合、R29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、または、アリール基がより好ましく、アリール基がさらに好ましい。R29およびR30は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0042】
29およびR30が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
29およびR30が表すアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
29およびR30が表すアルケニル基の炭素数は、2〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。
29およびR30が表すアリール基およびアリールオキシ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。アリール基およびアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。これらの詳細については、前述したものが挙げられる。
29およびR30が表すヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基のヘテロアリール環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がさらに好ましく、3〜5が特に好ましい。ヘテロアリール環は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。これらの詳細については、前述したものが挙げられる。
【0043】
−BR2930のR29とR30は、互いに結合して環を形成していてもよい。例えば、下記(B−1)〜(B−4)に示す構造などが挙げられる。以下において、Rは置換基を表し、Ra1〜Ra4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、m1〜m3は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、*は、式(PP)における結合位置を表す。RおよびRa1〜Ra4が表す置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【化12】
【0044】
−BR2930の具体例としては、以下が挙げられる。以下において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表す。*は、式(PP)における結合位置を表す。
【化13】
【0045】
式(PP)において、R27は、R21、R23またはR25と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、R28は、R22、R24またはR26と、共有結合もしくは配位結合していてもよい。
【0046】
式(PP)における、R21〜R28の1つ以上が、後述する式(1)で表される化合物が有する置換基と同一であることが好ましく、4つ以上が同一であることがより好ましい。
【0047】
ピロロピロール化合物は、下記式(II)で表される化合物、または、下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。この態様によれば、赤外線遮蔽性および耐光性に優れた膜を製造しやすい。
【化14】
【0048】
式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に、O、S、NRX1またはCRX2X3を表し、RX1〜RX3は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、
a1〜Ra4は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Ra1とRa2、または、Ra3とRa4は互いに結合して環を形成していてもよく、
121およびR122は、各々独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
123およびR124は、シアノ基を表し、
127およびR128は、各々独立に、−BR2930を表し、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0049】
式(II)のR121およびR122は、式(PP)のR21およびR22と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(II)のR127およびR128は、式(PP)のR27およびR28で説明した−BR2930と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(II)のX1、X2およびRa1〜Ra4は、上述した式(A−1)のX1、Ra1およびRa2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0050】
式(III)中、Y1〜Y8は、それぞれ独立に、NまたはCRY1を表し、Y1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、Y5〜Y8の少なくとも2つはCRY1であり、RY1は、水素原子または置換基を表し、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
121およびR122は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
123およびR124は、シアノ基を表し、
127およびR128は、各々独立に、−BR2930を表し、
29およびR30は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R29およびR30が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0051】
式(III)のR121およびR122は、式(PP)のR21およびR22と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(III)のR127およびR128は、式(PP)のR27およびR28で説明した−BR2930と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(III)のY1〜Y8は、上述した式(A−2)のY1〜Y4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0052】
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。また、例えば特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052(対応する米国特許出願公開第2011/0070407号明細書の[0070])を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。以下の構造式において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0053】
上記表におけるAr−1〜Ar−7、AR−41〜Ar−57、R−1〜R−7は以下である。以下に示す構造における「*」は連結手である。
【化15】
【化16】
【化17】
【0054】
(ジケトピロロピロール化合物)
本発明において、ジケトピロロピロール化合物としては、下記式(DP)で表される化合物が挙げられる。
式(DP)
【化18】
式中、RDP1およびRDP2は、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。
DP1およびRDP2は、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。
ヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
上述したアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。例えば、ハロゲン原子が好ましい。
【0055】
式(DP)で表される化合物の具体例としては、例えば以下に示す化合物が挙げられる。
【化19】
【0056】
(フタロシアニン化合物)
本発明において、フタロシアニン化合物としては、下記式(PC)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
【0057】
式(PC)において、X1〜X16は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、M1は、Cu、Ti=O、または、V=Oを表す。
【0058】
1〜X16が表す置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、アルキルアミノ基、アニリノ基が好ましい。
1〜X16のうち、置換基の数は、0〜16が好ましく、0〜4がより好ましく、0〜1がさらに好ましく、0が特に好ましい。また、M1は、Ti=O、または、V=Oであることが好ましく、Ti=Oがより好ましい。
【0059】
フタロシアニン化合物としては、オキシチタニウムフタロシアニン(式(PC)におけるM1がTi=Oである化合物)が好ましい。オキシチタニウムフタロシアニンは、近赤外線吸収顔料として好ましく用いることができる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0060】
(ナフタロシアニン化合物)
本発明において、ナフタロシアニン化合物としては、下記式(NPC)で表される化合物が挙げられる。
【化21】
式(NPC)において、X1〜X24は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、M1は、Cu又はV=Oを表す。X1〜X24が表す置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、アルキルアミノ基、アニリノ基が好ましい。M1は、V=Oであることが好ましい。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0061】
<<顔料誘導体>>
本発明の組成物は、顔料誘導体を含む。顔料誘導体としては、顔料の一部が、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基で置換された構造を有する化合物が挙げられる。
【0062】
顔料誘導体は、式(1)で表される化合物を含む。式(1)で表される顔料誘導体は、ピロロピロール骨格部分が、顔料と相互作用して顔料表面に吸着し易いので、組成物中における顔料の分散性を向上させることができる。また、組成物中において、他の成分(例えば、樹脂を含む場合においては、樹脂など)と、顔料誘導体の末端部Xとが相互作用し、顔料の分散性を更に向上させることができる。そして、式(1)で表される顔料誘導体は、可視透明性に優れるので、顔料が有する可視領域の色相に影響を与えることなく、顔料の分散性を向上させることができる。
【化22】
式(1)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
3、R4、R5およびR6は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
7およびR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR910、または金属原子を表し、
7は、R1、R3またはR5と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
8は、R2、R4またはR6と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
9およびR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R9およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基を表し、
mは1〜10の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。
【0063】
式(1)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
1およびR2が表すアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
1およびR2が表すアリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。
1およびR2が表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
1およびR2が表す、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。また、式(1)の−L−(X)nが結合していてもよく、式(1)の−L−(X)nが結合していることが好ましい。
【0064】
式(1)中、R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基スルフィニル、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表す。
3およびR5の一方は、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましく、R3およびR5の一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
4およびR6の一方は、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましく、R4およびR6の一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
【0065】
3〜R6が表すヘテロアリール基としては、上述のピロロピロール化合物のR23〜R26で説明したヘテロアリール基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。また、式(1)の−L−(X)nが結合していてもよい。
3〜R6が表すヘテロアリール基の種類は、併用する顔料の種類に応じて選択することが好ましい。例えば、顔料としてピロロピロール化合物(好ましくは上述の式(PP)で表されるピロロピロール化合物)を用いた場合、R3〜R6が表すヘテロアリール基は、顔料としてのピロロピロール化合物が有するヘテロアリール基と共通の構造を有するヘテロアリール基であることが好ましい。この態様によれば、顔料が有する可視領域の色相を損なうことなく、顔料の分散性をさらに向上させることができる。なお、共通の構造を有するヘテロアリール基とは、ヘテロアリール基に置換基が結合している場合は、置換基を除いた部分の構造(ヘテロアリール環の構造)が同一である場合を意味する。
【0066】
式(1)中、R7およびR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR910、または金属原子を表し、−BR910が好ましい。R9およびR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、または、アリール基がより好ましく、アリール基がさらに好ましい。R9およびR10が互いに結合して環を形成していてもよい。R7〜R8の詳細については、上述した式(PP)で表されるピロロピロール化合物のR27〜R28で説明した範囲と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0067】
式(1)中、Lは、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。なお、3価以上の連結基の場合は、上記の連結基から水素原子が1個以上除かれた基である。
アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。
アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
含窒素複素環基は、5員環または6員環が好ましい。また、含窒素複素環基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。含窒素複素環基に含まれる窒素原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。含窒素複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。窒素原子以外のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子が例示される。窒素原子以外のヘテロ原子の数は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。含窒素複素環基としては、ピペラジン環基、ピロリジン環基、ピロール環基、ピペリジン環基、ピリジン環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ピラジン環基、モルホリン環基、チアジン環基、インドール環基、イソインドール環基、ベンズイミダゾール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キノキサリン環基、シンノリン環基、カルバゾール環基および下記式(L−1)〜(L−7)で表される基が挙げられる。
【化23】
式中の*は、P、LまたはXとの連結手を表す。Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した式(1)で説明した置換基Tが挙げられる。
【0068】
連結基の具体例としては、以下が挙げられる。
(1)アルキレン基;
(2)−COO−;
(3)−OCO−;
(4)−NR’−;
(5)−O−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−O−アルキレン基−など);
(6)−O−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−O−アリーレン基−など);
(7)−O−とアルキレン基と−S−の組み合わせからなる基(−O−アルキレン基−S−など);
(8)−O−とアリーレン基と−S−の組み合わせからなる基(−O−アリーレン基−S−など);
(9)−COO−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−COO−アルキレン基−など);
(10)−COO−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−COO−アリーレン基−など);
(11)−COO−とアリーレン基とアルキレン基との組み合わせからなる基(−COO−アリーレン基−アルキレン基−、−COO−アルキレン基−アリーレン基−など);
(12)−OCO−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−OCO−アルキレン基−など);
(13)−OCO−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−OCO−アリーレン基−など);
(14)−OCO−とアリーレン基とアルキレン基との組み合わせからなる基(−OCO−アリーレン基−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−アリーレン基−など);
(15)−NR’−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−NR’−アルキレン基−など);
(16)−NR’−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−NR’−アリーレン基−など);
(17)−NR’−とアリーレン基とアルキレン基との組み合わせからなる基(−NR’−アリーレン基−アルキレン基−、−NR’アルキレン基−アリーレン基−など);
(18)−NR’−と−CO−との組み合わせからなる基(−NR’−CO−、−NR’−CO−NR’−など);
(19)−NR’−と−CO−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−NR’−CO−アルキレン基−など);
(20)−NR’−と−CO−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−NR’−CO−アリーレン基−など);
(21)−NR’−と−CO−とアルキレン基とアリーレン基の組み合わせからなる基(−NR’−CO−アルキレン基−アリーレン基−など);
(22)−SO2−;
(23)上記(L−1)で表される基;
(24)上記(L−5)で表される基;
(25)NR’−と−SO2−との組み合わせからなる基(−NR’−SO2−など);
(26)NR’−と−SO2−とアルキレン基との組み合わせからなる基(−NR’−SO2−アルキレン基−など);
(27)NR’−と−SO2−とアリーレン基との組み合わせからなる基(−NR’−SO2−アリーレン基−など);
(28)NR’−と−SO2−とアルキレン基とアリーレン基との組み合わせからなる基(−NR’−SO2−アルキレン基−アリーレン基−、−NR’−SO2−アリーレン基−アルキレン基−など);
(29)上記(L−1)で表される基とアルキレン基との組み合わせからなる基;
(30)上記(L−1)で表される基とアリーレン基との組み合わせからなる基;
(31)上記(L−1)で表される基と−SO2−とアルキレン基との組み合わせからなる基;
(32)上記(L−1)で表される基と−S−とアルキレン基との組み合わせからなる基;
(33)上記(L−1)で表される基と−O−とアリーレン基との組み合わせからなる基;
(34)上記(L−1)で表される基と−NR’−と−CO−とアリーレン基との組み合わせからなる基;
(35)上記(L−1)で表される基と−COO−との組み合わせからなる基;
(36)上記(L−1)で表される基と−OCO−との組み合わせからなる基;
(37)上記(L−1)で表される基と−COO−とアルキレン基との組み合わせからなる基;
(38)上記(L−1)で表される基と−OCO−とアルキレン基との組み合わせからなる基;
(39)上記(L−3)で表される基とアリーレン基との組み合わせからなる基;
(40)−OCO−とアリーレン基と−CO−と−NR’−との組み合わせからなる基;
(41)−COO−とアリーレン基と−CO−と−NR’−との組み合わせからなる基;
【0069】
Lは、連結基であることが好ましい。また、連結基は、(1)〜(21)、(29)〜(38)、(40)、(41)であることが好ましく、(1)〜(21)であることがより好ましく、(2)、(3)、(5)〜(14)が更に好ましく、(5)〜(14)がより一層好ましく、(5)、(14)が特に好ましく、(5)が最も好ましい。Lが(5)〜(14)である化合物は、顔料の分散性が特に優れる。特に、Xが、スルホ基の場合、Lは上記の(5)、(29)〜(38)の連結基であることが好ましい。また、Xが、後述の式(X−3)で表される基の場合、Lは上記の(14)、(29)〜(38)、(40)、(41)の連結基であることが好ましい。
【0070】
式(1)中、Xは、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基を表す。
酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基等が挙げられる。
塩基性基としては、後述する式(X−3)〜(X−9)で表される基が挙げられる。
塩構造を有する基としては、上述した酸性基の塩、塩基性基の塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、金属原子、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。金属原子としては、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子が好ましい。アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
フタルイミド基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した酸性基、塩基性基、塩構造を有する基等が挙げられる。また、上述した式(1)で説明した置換基Tであってもよい。置換基Tは、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0071】
Xは、カルボキシル基、スルホ基、フタルイミド基、および、下記式(X−1)〜(X−9)で表される基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシル基、スルホ基および式(X−3)で表される基がより好ましく、スルホ基および式(X−3)で表される基がさらに好ましく、スルホ基が特に好ましい。Xがスルホ基で表される基である化合物は、顔料の分散性をより効果的に向上することができる。また、Xが式(X−3)で表される基である化合物は、他の塩基性基に比べて塩基性度が高く、樹脂との相互作用を向上でき、顔料の分散性を向上することができる。
【化24】
式(X−1)〜(X−9)中、*は、式(1)のLとの連結手を表し、R100〜R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよく、Mはアニオンと塩を構成する原子または原子団を表す。
【0072】
100〜R106が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよい。直鎖のアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。分岐のアルキル基の炭素数は、3〜20が好ましく、3〜12がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。環状のアルキル基の炭素数は、3〜20が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
100〜R106が表すアルケニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
100〜R106が表すアリール基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。環は、脂環であってもよく、芳香族環であってもよい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。R100とR101が結合して環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が挙げられる。前述の環の具体例としては、例えば、ピペラジン環、ピロリジン環、ピロール環、ピペリジン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラジン環、モルホリン環、チアジン環、インドール環、イソインドール環、ベンズイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、カルバゾール環などが挙げられる。R100とR101は環を形成していないことが好ましい。
Mはアニオンと塩を構成する原子または原子団を表す。これらは、上述したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
100およびR101は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。
【0073】
式(1)において、mは1〜10の整数を表し、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましく、2が特に好ましい。
式(1)において、nは1〜10の整数を表し、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0074】
式(1)において、R1〜R8の少なくとも一つが「−L−(X)n」で表される構造を含んでいることが好ましく、R1およびR8の少なくとも一つが「−L−(X)n」で表される構造を含んでいることがより好ましく、R1およびR8が「−L−(X)n」で表される構造を含んでいることがさらに好ましい。
【0075】
式(1)で表される化合物は、下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【化25】
式(1a)中、R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
7およびR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR910、または金属原子を表し、
7は、R3またはR5と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
8は、R4またはR6と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
9およびR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R9およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
1およびL2は、各々独立に、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
1およびX2は、各々独立に、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基を表し、
n1およびn2は、各々独立に0〜4を表し、n1およびn2の少なくとも一方が1以上である。
【0076】
式(1a)のR3〜R8は、式(1)のR3〜R8と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(1a)のX1およびX2は、式(1)のXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0077】
式(1a)において、L1およびL2は、各々独立に、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−SO2−もしくはこれらの組み合わせからなる連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。L1およびL2は、各々独立に、連結基であることが好ましい。連結基の具体例としては、上述した式(1)のLで説明した(1)〜(41)が挙げられ、(1)〜(21)、(29)〜(38)、(40)、(41)であることが好ましく、(1)〜(21)であることがより好ましく、(2)、(3)、(5)〜(14)が更に好ましく、(5)〜(14)がより一層好ましく、(5)、(14)が特に好ましく、(5)が最も好ましい。また、X1(X2)がスルホ基の場合、L1(L2)は上記の(5)、(29)〜(38)の連結基であることが好ましい。また、X1(X2)が上記式(X−3)で表される基の場合、L1(L2)は上記の(14)、(29)〜(38)、(40)、(41)の連結基であることが好ましい。
【0078】
また、L1は、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造に直結するベンゼン環と、X1とをつなぐ鎖を構成する原子の数が1〜20個であることが好ましい。下限は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。L2は、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造に直結するベンゼン環と、X2とをつなぐ鎖を構成する原子の数が1〜20個であることが好ましい。下限は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。この態様によれば、顔料の分散性をより向上させることができる。詳細な理由は不明だが、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造と、X1およびX2との距離を長くすることで、X1およびX2が立体障害を受けにくくなって樹脂などとの相互作用が働きやすくなり、その結果、顔料の分散性を向上させることができたと推測する。
【0079】
例えば、以下の化合物(B−1)の場合、ピロロピロール構造に直結するベンゼン環とX1とをつなぐ鎖を構成する原子の数は5個であり、ピロロピロール構造に直結するベンゼン環とX2とをつなぐ鎖を構成する原子の数も5個である。化合物(B−1)は、式(1a)において、n1およびn2が1で、X1およびX2がスルホ基(SO3H)である化合物である。
また、以下の化合物(B−27)の場合、ピロロピロール構造に直結するベンゼン環とX1とをつなぐ鎖を構成する原子の数は10個であり、ピロロピロール構造に直結するベンゼン環とX2とをつなぐ鎖を構成する原子の数も10個である。化合物(B−27)は、n1=2およびn2=2である。化合物(B−27)は、式(1a)において、n1およびn2が2で、X1およびX2が−N(C252である化合物である。
なお、構造式に併記した数字は、X1またはX2と、ピロロピロール構造に直結するベンゼン環とをつなぐ鎖を構成する原子の数である。
【化26】
【0080】
式(1a)において、n1およびn2は、各々独立に0〜4を表し、n1およびn2の少なくとも一方が1以上である。n1およびn2は、各々独立に1〜4であることが好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0081】
式(1)で表される化合物は、組成物に含まれる溶剤(25℃)に対する溶解度が0〜0.1g/Lであることが好ましく、0〜0.01g/Lであることがより好ましい。この態様によれば、顔料の分散性をより向上させることができる。
【0082】
式(1)で表される化合物は、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。また、波長500nmにおける吸光度A1と、極大吸収波長における吸光度A2との比率A1/A2が、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。なお、化合物の吸光度は、化合物の溶液での吸収スペクトルから求めた値である。式(1)で表される化合物の溶液での吸収スペクトルの測定に用いる測定溶剤としては、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。式(1)で表される化合物がクロロホルムに溶解する場合は、クロロホルムを測定溶剤として用いる。また、クロロホルムには溶解しないが、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランに溶解する場合は、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランを測定溶剤として用いる。
【0083】
式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。以下の構造式において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。なお、下記表におけるAr−11〜Ar−34、Ar−61〜Ar−77、R−1〜R−7は以下である。以下に示す構造における「*」は連結手である。
【化27】
【化28】
【化29】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【化30】
【化31】
【0084】
(他の顔料誘導体)
本発明の組成物は、上述した式(1)で表される化合物以外の顔料誘導体(他の顔料誘導体ともいう)を含んでいてもよい。他の顔料誘導体としては、下記式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化32】
式(A)中、Pは、ジケトピロロピロール骨格、キナクリドン骨格、アントラキノン骨格、ジアントラキノン骨格、ベンゾイソインドール骨格、チアジンインジゴ骨格、アゾ骨格、キノフタロン骨格、フタロシアニン骨格、ジオキサジン骨格、ペリレン骨格、ペリノン骨格およびベンゾイミダゾリノン骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸性基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミド基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。
【0086】
式(A)のLおよびXは、上述した式(1)のLおよびXで説明した基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。他の顔料誘導体としては、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094等に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
本発明の組成物は、顔料100質量部に対し、顔料誘導体を1〜50質量部含有することが好ましい。下限値は、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。上限値は、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
顔料誘導体中における式(1)で表される化合物の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、式(1)で表される化合物のみで実質的に構成されていることが特に好ましい。なお、顔料誘導体が、式(1)で表される化合物のみで実質的に構成されている場合とは、顔料誘導体の全質量に対する式(1)で表される化合物の含有量が99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがさらに好ましく、式(1)で表される化合物が100質量%であることが一層好ましい。
本発明の組成物は、顔料100質量部に対し、式(1)で表される化合物を1〜50質量部含有することが好ましい。下限値は、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。上限値は、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。式(1)で表される化合物の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性が良好である。式(1)で表される化合物は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0088】
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含む。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、組成物の塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0089】
有機溶剤の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。アルコール類として、2−ブタノールが挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−アルキルオキシプロピオン酸メチル、3−アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−アルキルオキシプロピオン酸メチル、2−アルキルオキシプロピオン酸エチル、2−アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。ただし、溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により減量したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0090】
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤を2種以上組み合わせて用いる場合、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液が好ましい。
【0091】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb以下であることが好ましい。必要に応じて質量pptレベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0092】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いた濾過を挙げることができる。フィルタを用いたろ過におけるフィルタの孔径としては、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製が好ましい。
【0093】
溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)を含んでいてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0094】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0095】
本発明の組成物中の、溶剤の含有量は、組成物の全固形分が5〜60質量%となる量が好ましく、10〜40質量%となる量がより好ましい。溶剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0096】
<<樹脂>>
本発明の組成物は、更に樹脂を含むことが好ましい。樹脂は、例えば、顔料などを組成物中で分散させる用途、バインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などを分散させるために用いる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0097】
本発明において、樹脂として、酸基を有する樹脂を用いることが好ましい。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000であることが好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。
【0098】
(分散剤)
樹脂である分散剤は、酸性樹脂、塩基性樹脂および両性樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、酸性樹脂および両性樹脂から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
本発明において、酸性樹脂とは、酸基を有する樹脂であって、酸価が5mgKOH/g以上、アミン価が5mgKOH/g未満の樹脂を意味する。酸性樹脂は、塩基性基を有さないことが好ましい。酸性樹脂が有する酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸性樹脂の酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、10mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。上限は、100mgKOH/g以下がより好ましく、60mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、酸性樹脂のアミン価は、2mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましい。
本発明において、塩基性樹脂とは、塩基性基を有する樹脂であって、アミン価が5mgKOH/g以上、酸価が5mgKOH/g未満の樹脂を意味する。塩基性樹脂は、酸基を有さないことが好ましい。塩基性樹脂が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましい。塩基性樹脂のアミン価は、5〜200mgKOH/gが好ましく、5〜150mgKOH/gがより好ましく、5〜100mgKOH/gがさらに好ましい。
本発明において、両性樹脂とは、酸基と塩基性基を有する樹脂であって、酸価が5mgKOH/g以上で、アミン価が5mgKOH/g以上である樹脂を意味する。酸基としては、前述したものが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。塩基性基としては、アミノ基が好ましい。両性樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上で、アミン価が5mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価は、5〜200mgKOH/gがより好ましい。下限は、10mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、アミン価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、10mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下がさらに好ましい。両性樹脂の酸価とアミン価の比率は、酸価:アミン価=1:4〜4:1が好ましく、1:3〜3:1がより好ましい。
【0099】
樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィによりパターンを形成する際、画素の下地に発生する残渣をより減少させることができる。
【0100】
樹脂は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
末端変性型高分子としては、例えば、特開平3−112992号公報、特表2003−533455号公報等に記載の末端にリン酸基を有する高分子、特開2002−273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9−77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007−277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
グラフト型高分子としては、例えば、特開昭54−37082号公報、特表平8−507960号公報、特開2009−258668公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9−169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10−339949号公報、特開2004−37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子を有するモノマーとの共重合体、特開2003−238837号公報、特開2008−9426号公報、特開2008−81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010−106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体などが挙げられる。マクロモノマーとしては、例えば、東亞合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、(株)ダイセル製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。
ブロック型高分子としては、特開2003−49110号公報、特開2009−52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0101】
本発明において、樹脂は、ポリカプロラクトン構造を有する樹脂であることが好ましい。この態様によれば、顔料の分散性をより向上させることができる。更には、現像性を向上させることもできる。ポリカプロラクトン構造を有する樹脂は、分子内に、式(a)で表される構造および式(b)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造を有する樹脂が挙げられる。式中、mおよびnは、各々独立に2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【化33】
【0102】
ポリカプロラクトン構造を有する樹脂は、式(I)及び式(II)のいずれかで表される繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。
【0103】
【化34】
【0104】
式(I)及び式(II)中、R21〜R26は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X21及びX22は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L21及びL22は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、A21及びA22は、各々独立に、1価の有機基を表し、ma及びnaは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【0105】
21〜R26は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基)等が挙げられる。R21、R22、R24、及びR25は、水素原子であることが好ましく、R23及びR26は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0106】
21及びX22は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。中でも、−C(=O)O−、−CONH−、フェニレン基が、顔料への吸着性の観点で好ましく、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0107】
21及びL22は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表す。2価の有機連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基や、アルキレン基とヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造とからなる2価の有機連結基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が一層好ましい。また、ヘテロ原子を含む部分構造におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子、窒素原子が好ましい。好ましいアルキレン基として、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。アルキレン基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。2価の有機連結基としては、上記のアルキレン基の末端に、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介して、隣接した酸素原子と連結したものが、顔料への吸着性の点から好ましい。ここで、隣接した酸素原子とは、式(I)におけるL21、及び式(II)におけるL22に対し、側鎖末端側で結合する酸素原子を意味する。
【0108】
21及びA22は、分散安定性、現像性の点から、炭素原子数1〜20の直鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜20の分岐状のアルキル基、炭素原子数5〜20の環状のアルキル基が好ましく、炭素原子数4〜15の直鎖状のアルキル基、炭素原子数4〜15の分岐状のアルキル基、及び炭素原子数6〜10の環状のアルキル基がより好ましく、炭素原子数6〜10の直鎖状のアルキル基及び炭素原子数6〜12の分岐状のアルキル基が更に好ましい。
【0109】
ma及びnaは、各々独立に、2〜8の整数を表す。分散安定性、現像性の点から、4〜6であることが好ましく、5であることが特に好ましい。
【0110】
p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。pの異なるもの、qの異なるものが2種以上、混合されてもよい。p及びqは、分散安定性、現像性の点から、5〜80が好ましい。
【0111】
式(I)及び式(II)のいずれかで表される繰り返し単位を含む樹脂は、更に式(P1)で表される繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化35】
式(P1)において、R1は水素またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Zは含窒素複素環構造を表す。
【0112】
2が表すアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、メチレンオキシカルボニル基、メチレンチオ基等が好適に挙げられ、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシカルボニル基、メチレンチオ基がより好ましい。
【0113】
Zが表す含窒素複素環構造としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、および環状イミド構造を有するものが挙げられる。これらのうち、Zが表す含窒素複素環構造としては、下記式(P2)または(P3)で表される構造が好ましい。
【0114】
【化36】
【0115】
式中、Xは単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、及び、−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。なお、ここでRは水素原子またはアルキル基を表す。Xは、単結合、メチレン基、−O−、−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0116】
式中、環A、環B、および環Cはそれぞれ独立に芳香族環を表す。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0117】
式(P1)で表される繰り返し単位の具体例としては、例えば以下が挙げられる。その他、特開2008−009426号公報の段落番号0023の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化37】
【0118】
上記式(I)及び式(II)のいずれかで表される繰り返し単位を含む樹脂については、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0069の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれる。上記樹脂の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。また、特開2012−255128号公報の段落番号0072〜0094に記載の樹脂を用いることができる。
【化38】
【0119】
樹脂は、グラフト共重合体を用いることもできる。グラフト共重合体は、水素原子を除いた原子数が40〜10000の範囲であるグラフト鎖を有する樹脂が好ましい。また、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数は、40〜10000が好ましく、50〜2000がより好ましく、60〜500が更に好ましい。
【0120】
グラフト共重合体の主鎖構造としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。グラフト共重合体のグラフト鎖は、グラフト部位と溶剤との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることがより好ましい。
【0121】
グラフト共重合体は、下記式(1)〜式(4)のいずれかで表される繰り返し単位を含むことが好ましい。なお、式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を含む樹脂は、ポリカプロラクトン構造を有する樹脂でもある。
【0122】
【化39】
【0123】
式(1)〜式(4)において、W1、W2、W3、及びW4はそれぞれ独立に酸素原子、または、NHを表し、X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、1価の基を表し、Y1、Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、Z1、Z2、Z3、及びZ4はそれぞれ独立に1価の基を表し、R3はアルキレン基を表し、R4は水素原子又は1価の基を表し、n、m、p、及びqはそれぞれ独立に1〜500の整数を表し、j及びkはそれぞれ独立に2〜8の整数を表す。式(3)において、pが2〜500のとき、複数存在するR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。式(4)において、qが2〜500のとき、複数存在するX5及びR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0124】
1、W2、W3、及びW4は、酸素原子であることが好ましい。
1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
1、Y2、Y3、及びY4は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
1、Z2、Z3、及びZ4が表す1価の基の構造は、特に限定されない。例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基などが挙げられる。
【0125】
式(1)〜式(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ独立に、1〜500の整数である。また、式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2〜8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性、現像性の観点から、4〜6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0126】
式(3)中、R3はアルキレン基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましい。pが2〜500のとき、複数存在するR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0127】
式(4)中、R4は水素原子又は1価の基を表す。R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子、またはアルキル基が好ましい。式(4)において、qが2〜500のとき、複数存在するX5及びR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0128】
上記の式の詳細については、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0069の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれる。
【0129】
樹脂は、主鎖および側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系樹脂を用いることもできる。オリゴイミン系樹脂としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する基Xを含む繰り返し単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖および側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。側鎖Yは、ポリカプロラクトン構造を有するポリマー鎖であることが好ましい。ポリカプロラクトン構造としては、上述した式(a)、式(b)で表される構造が挙げられる。
【0130】
オリゴイミン系樹脂は、例えば、下記式(I−1)で表される繰り返し単位と、式(I−2)で表される繰り返し単位および式(I−2a)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1つとを含む樹脂などが挙げられる。
【0131】
【化40】
1およびR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)を表す。aは、各々独立に、1〜5の整数を表す。*は繰り返し単位間の連結部を表す。
8およびR9はR1と同義の基である。
Lは単結合、アルキレン基(炭素数1〜6が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2〜6が好ましい)、アリーレン基(炭素数6〜24が好ましい)、ヘテロアリーレン基(炭素数1〜6が好ましい)、イミノ基(炭素数0〜6が好ましい)、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、またはこれらの組合せに係る連結基である。なかでも、単結合もしくは−CR56−NR7−(イミノ基がXもしくはYの方になる)であることが好ましい。ここで、R5およびR6は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(炭素数1〜6が好ましい)を表す。R7は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
aはCR8CR9とNとともに環構造を形成する構造であり、CR8CR9の炭素原子と合わせて炭素数3〜7の非芳香族複素環を形成する構造であることが好ましい。より好ましくは、CR8CR9の炭素原子およびN(窒素原子)を合わせて5〜7員の非芳香族複素環を形成する構造であり、さらに好ましくは5員の非芳香族複素環を形成する構造であり、ピロリジンを形成する構造であることが特に好ましい。この構造はさらにアルキル基等の置換基を有していてもよい。
XはpKa14以下の官能基を有する基を表す。
Yは原子数40〜10,000の側鎖を表す。側鎖Yは、ポリカプロラクトン構造を有するポリマー鎖であることが好ましく、上述した式(a)または式(b)で表される構造を有するポリマー鎖であることがより好ましい。
上記樹脂(オリゴイミン系樹脂)は、さらに式(I−3)、式(I−4)、および、式(I−5)で表される繰り返し単位から選ばれる1種以上を共重合成分として含有していてもよい。上記樹脂が、このような繰り返し単位を含むことで、顔料の分散性能を更に向上させることができる。
【0132】
【化41】
【0133】
1、R2、R8、R9、L、La、aおよび*は式(I−1)、(I−2)、(I−2a)における規定と同義である。
Yaはアニオン基を有する原子数40〜10,000の側鎖を表す。式(I−3)で表される繰り返し単位は、主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂に、アミンと反応して塩を形成する基を有するオリゴマー又はポリマーを添加して反応させることで形成することが可能である。Yaは、ポリカプロラクトン構造を有するポリマー鎖であることが好ましく、上述した式(a)または式(b)で表される構造を有するポリマー鎖であることがより好ましい。
【0134】
上述したオリゴイミン系樹脂については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれる。オリゴイミン系樹脂の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。また、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることができる。
【化42】
【0135】
分散剤として用いる樹脂は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、特開2014−130338号公報の段落番号0046に記載された製品が挙げられる。
【0136】
これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を使用しても良い。
【0137】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂としては、分子中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。アルカリ可溶性樹脂としては、耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
【0138】
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0139】
アルカリ可溶性樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂、並びに側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたポリマーが挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また、他のモノマーとしては、N位置換マレイミドモノマーを用いることもできる。N位置換マレイミドモノマーとしては、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーが挙げられる。具体例として、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0140】
アルカリ可溶性樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体を好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。また、市販品としては、例えばアクリベースFF−426、FFS−6752((株)日本触媒製)などを用いることもできる。
アルカリ可溶性樹脂は、重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、重合性基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂等が有用である。重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、アクリキュアRD−F8((株)日本触媒製)などが挙げられる。
【0141】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)のうちの少なくとも一方を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
【0142】
【化43】
【0143】
式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【化44】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
【0144】
式(ED1)中、R1およびR2で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、tert−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、tert−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0145】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0146】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化45】
式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
【0147】
上記式(X)において、R2のアルキレン基の炭素数は、2〜3であることが好ましい。また、R3のアルキル基の炭素数は1〜20であるが、好ましくは1〜10であり、R3のアルキル基はベンゼン環を含んでもよい。R3で表されるベンゼン環を含むアルキル基としては、ベンジル基、2−フェニル(イソ)プロピル基等を挙げることができる。
【0148】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜50,000であることが好ましい。下限は、5,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましい。上限は、30,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましい。
【0149】
本発明の組成物における樹脂の含有量は、顔料100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下が一層好ましい。下限は、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。樹脂の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性が良好である。
【0150】
<組成物の調製>
本発明の組成物は、上述した各成分を混合することによって調製することができる。組成物の調製に際しては、組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分をそれぞれお有機溶剤に溶解または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。また、顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。また「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」に記載のプロセス及び分散機を好適に使用することが出来る。また、顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程による顔料の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報に記載のものを使用することができる。
【0151】
本発明の組成物の製造方法は、少なくとも顔料誘導体および溶剤の存在下(好ましくはさらに樹脂の存在下)で、顔料を分散させる工程(分散工程)を含むことが好ましい。
【0152】
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度、より好ましくは0.05〜0.5μm程度である。この範囲とすることにより、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
【0153】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
例えば、第1のフィルタでは、分散液のみをろ過し、他の成分を混合した後で、第2のろ過を行ってもよい。
【0154】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、上述した組成物と、硬化性化合物とを含む。
本発明の硬化性組成物において、顔料の含有量は、必要に応じて調整することができる。例えば、硬化性組成物の全固形分中0.01〜50質量%であることが好ましい。下限は、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。本発明の硬化性組成物が顔料を2種以上含む場合、その合計量は上記範囲内であることが好ましい。
【0155】
<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を含む。硬化性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
本発明において、硬化性化合物は、重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物などが挙げられる。重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基を1個以上有する化合物が好ましく、2個以上有する化合物がより好ましく、3個以上有することがさらに好ましい。上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。
【0156】
(重合性化合物)
【0157】
重合性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよいが、モノマーが好ましい。モノマータイプの重合性化合物は、分子量が200〜3000であることが好ましい。分子量の上限は、2500以下がより好ましく、2000以下が更に好ましい。分子量の下限は、250以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
【0158】
重合性化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落番号0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。上記化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM−35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介して結合している構造を有する化合物が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038の重合性化合物の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0585])に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、重合性化合物として、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亞合成(株)製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0159】
重合性化合物は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有する重合性化合物は、多官能アルコールの一部のヒドロキシ基を(メタ)アクリレート化し、残ったヒドロキシ基に酸無水物を付加反応させてカルボキシル基とするなどの方法で得られる。また、上述のヒドロキシ基に、非芳香族カルボン酸無水物などを反応させて酸基を導入しても良い。非芳香族カルボン酸無水物の具体例としては、無水テトラヒドロフタル酸、アルキル化無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アルキル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0160】
酸基を有する重合性化合物は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を付加した重合性化合物がより好ましく、上述のエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのうちの少なくとも一方である化合物がさらに好ましい。市販品としては、アロニックス M−510、M−520(東亞合成(株)製)、CBX−0、CBX−1(新中村化学工業(株)製)などが挙げられる。酸基を有する重合性化合物の酸価は、0.1〜40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0161】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013−253224号公報の段落番号0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物としては、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120等、サートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0162】
重合性化合物としては、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載されている、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。
市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600、ライトアクリレートDCP―A(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、重合性化合物として、アロニックス M−215、M−305、M−313、M−315、TO−2349(東亞合成(株)製)、SR−368(サートマー社製)、A−9300(新中村化学工業(株)製)などのイソシアヌル酸エチレンオキシ(EO)変性モノマーを好ましく用いることができる。
【0163】
(エポキシ基を有する化合物)
エポキシ基を有する化合物は、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物であり、2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基を1分子内に1〜100個有する化合物が好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。
【0164】
エポキシ基を有する化合物は、エポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)が500g/当量以下であることが好ましく、100〜400g/当量であることがより好ましく、100〜300g/当量であることがさらに好ましい。
【0165】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0166】
エポキシ基を有する化合物としては、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1007、jER1009、jER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、jER806、jER807、jER4004、jER4005、jER4007、jER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、jER152、jER154、jER157S70、jER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等が挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(日本化薬(株)製)等が挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂として、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、jER1031S(三菱化学(株)製)、OXT−221(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0167】
エポキシ基を有する化合物は、特開2009−265518号公報の段落番号0045等の記載に記載の化合物を用いることもできる。また、エポキシ基を有する化合物は、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)を使用することも好ましい。
【0168】
本発明の組成物において、硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、1〜90質量%であることが好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が一層好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、1〜90質量%であることが好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が一層好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。重合性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物において、重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して10〜35質量%が好ましい。下限は12質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましい。上限は、33質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0169】
<<光重合開始剤>>
本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有するものが好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光重合開始剤は、約300nm〜800nm(330nm〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0170】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するものなど)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)に記載の化合物、英国特許1388492号明細書に記載の化合物、特開昭53−133428号公報に記載の化合物、独国特許3337024号明細書に記載の化合物、F.C.Schaefer著のJ.Org.Chem.;29、1527(1964)に記載の化合物、特開昭62−58241号公報に記載の化合物、特開平5−281728号公報に記載の化合物、特開平5−34920号公報に記載の化合物、米国特許第4212976号明細書に記載の化合物などが挙げられる。
【0171】
また、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0172】
α−アミノケトン化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。α−アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)などが挙げられる。
【0173】
光重合開始剤として、α−ヒドロキシケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。α−ヒドロキシケトン化合物としては、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アシルホスフィン化合物としては、市販品であるIRGACURE 819やIRGACURE TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0174】
光重合開始剤として、オキシム化合物を用いることも好ましい。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2016−21012号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0175】
本発明において、好適に用いることのできるオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232に記載の化合物、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等も挙げられる。市販品ではIRGACURE OXE01(BASF社製)、IRGACURE OXE02(BASF社製)、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−930((株)ADEKA製)を用いることができる。
【0176】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報及び米国特許公開2009−292039号公報に記載の化合物、国際公開WO2009/131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報に記載の化合物、特開2014−137466号公報の段落番号0076〜0079に記載の化合物などを用いてもよい。
好ましくは、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0274〜0275を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX−1)で表される化合物が好ましい。オキシム化合物は、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であってもよく、オキシムのN−O結合が(Z)体のオキシム化合物であってもよく、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0177】
【化46】
【0178】
式(OX−1)中、RおよびBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
式(OX−1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
式(OX−1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
式(OX−1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
【0179】
本発明は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0180】
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0181】
本発明は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体として用いることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されている化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
【0182】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0183】
【化47】
【化48】
【0184】
オキシム化合物としては、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有する化合物がより好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高い化合物が特に好ましい。
【0185】
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることがさらに好ましい。化合物のモル吸光係数の測定は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0186】
光重合開始剤は、オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成することが容易になる。オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α−アミノケトン化合物を50〜600質量部含有することが好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
【0187】
光重合開始剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0188】
<<アルカリ可溶性樹脂>>
本発明の硬化性組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有していても良い。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、アルカリ現像によって所望のパターンを形成できる。アルカリ可溶性樹脂としては、上述した組成物で説明したアルカリ可溶性樹脂や、酸基を有する樹脂が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0189】
本発明の硬化性組成物が、アルカリ可溶性樹脂を含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上とすることもでき、5質量%以上とすることもでき、10質量%以上とすることもできる。また、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分中、80質量%以下とすることもでき、65質量%以下とすることもでき、60質量%以下とすることもでき、15質量%以下とすることもできる。尚、本発明の硬化性組成物を用いて、アルカリ現像によってパターンを形成しない場合には、アルカリ可溶性樹脂を含有しない態様とすることもできることは言うまでもない。
【0190】
また、本発明の硬化性組成物において、樹脂の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し、14〜70質量%が好ましい。下限は、17質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。上限は、56質量%以下がより好ましく、42質量%以下がさらに好ましい。
本発明の硬化性組成物において、酸基を有する樹脂の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し、14〜70質量%が好ましい。下限は、17質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。上限は、56質量%以下がより好ましく、42質量%以下がさらに好ましい。
また、重合性化合物と樹脂との質量比は、重合性化合物/樹脂=0.3〜0.7であることが好ましい。上記質量比の下限は0.35以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。上記質量比の上限は0.65以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。上記質量比が、上記範囲であれば、矩形性に優れたパターンを形成することができる。
また、重合性化合物と、酸基を有する樹脂との質量比は、重合性化合物/酸基を有する樹脂=0.3〜0.7であることが好ましい。上記質量比の下限は0.35以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。上記質量比の上限は0.65以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。上記質量比が、上記範囲であれば、矩形性に優れたパターンを形成することができる。
また、重合性化合物と、アルカリ可溶性樹脂との質量比は、重合性化合物/アルカリ可溶性樹脂=0.3〜0.7であることが好ましい。上記質量比の下限は0.35以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。上記質量比の上限は0.65以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。上記質量比が、上記範囲であれば、矩形性に優れたパターンを形成することができる。
【0191】
<<染料>>
本発明の硬化性組成物は、染料を含有することもできる。染料の種類としては、特に限定はない。可視領域に吸収を有する染料(有彩色染料)であってもよく、近赤外領域に吸収を有する染料(近赤外線吸収染料)であってもよい。
染料の公知の化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、スクアリリウム系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等が挙げられ、これらの染料を本発明に使用することができる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
染料の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し、1〜50質量%が好ましい。下限は、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0192】
<<近赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を遮光する色材(可視光を遮光する色材)>>
本発明の硬化性組成物は、近赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。本発明の硬化性組成物が可視光を遮光する色材を含有する場合、顔料の含有量は、その可視光を遮光する色材の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。可視光を遮光する色材は、複数の色材の組み合わせにより、黒色、灰色、またはそれらに近い色を呈することが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長域の光を吸収する材料であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長450〜650nmの波長域の光を遮光する色材であることが好ましい。
【0193】
可視光を遮光する色材は、以下の(1)および(2)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましく、(1)の要件を満たしていることがより好ましい。
(1):2種類以上の有彩色着色剤を含む態様。
(2):有機系黒色着色剤を含む態様。
なお、本発明において、可視光を遮光する色材としての有機系黒色着色剤は、可視領域の光を吸収するが、近赤外領域の光の少なくとも一部を透過する材料を意味する。したがって、本発明において、可視光を遮光する色材としての有機系黒色着色剤は、近赤外領域の光および可視領域の光の両方を吸収する黒色着色剤である、カーボンブラックやチタンブラックは含まない。また、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400〜650nmの範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。本発明において、有彩色着色剤は、顔料(有彩色顔料)であってもよく、染料(有彩色染料)であってもよい。
【0194】
有彩色顔料としては、上述した組成物で説明した有彩色顔料が挙げられる。有彩色染料としては、特に制限はなく、公知の有彩色染料が使用できる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0195】
本発明において、可視光を遮光する色材は、例えば、波長450〜650nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長900〜1300nmの範囲における吸光度の最小値Bとの比であるA/Bが4.5以上であることが好ましい。
上記の特性は、1種類の素材で満たしていてもよく、複数の素材の組み合わせで満たしていてもよい。例えば、上記(1)の態様の場合、複数の有彩色着色剤を組み合わせて上記分光特性を満たしていることが好ましい。
【0196】
可視光を遮光する色材として2種以上の有彩色着色剤を含む場合、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤およびオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0197】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで可視光を遮光する色材を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
【0198】
各着色剤の比率(質量比)としては例えば以下が挙げられる。
【表13】
【0199】
本発明の硬化性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。下限は、例えば、0.01質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の硬化性組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しない態様とすることもできる。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、本発明の硬化性組成物の全固形分中、0.005質量%以下が好ましく、0.001質量%以下がより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
【0200】
<<シランカップリング剤>>
本発明の硬化性組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することができる。なお、本発明において、シランカップリング剤は、上述した硬化性化合物とは異なる成分である。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、珪素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくとも一方によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基は、樹脂との間で相互作用もしくは結合を形成して親和性を示す基を有することが好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基、フェニル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。即ち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基と、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基のうちの少なくとも一方とを有する化合物が好ましい。
【0201】
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、パラスチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、上記以外にアルコキシオリゴマーを用いることができる。また、下記化合物を用いることもできる。
【化49】
【0202】
市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513,KC−89S,KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。また、シランカップリング剤として、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0203】
また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることもできる。式中Etはエチル基を表す。
【化50】
【0204】
シランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜15.0質量%であることが好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上を使用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0205】
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。
【0206】
硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0207】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0208】
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開WO2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0209】
フッ素系界面活性剤として、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位とを含む、含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化51】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
【0210】
また、フッ素系界面活性剤として、エチレン性不飽和結合を有する基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤として、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられ、これらを用いることができる。
【0211】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0212】
カチオン系界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0213】
アニオン系界面活性剤としては、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0214】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4460、TSF−4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0215】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜2.0質量%であることが好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。
【0216】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物およびジケトン化合物が挙げられ、共役ジエン化合物が好ましい。共役ジエン化合物は、下記式(UV−1)で表される化合物がより好ましい。
【化52】
【0217】
式(UV−1)において、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R1とR2とは互いに同一でも異なっていてもよいが、同時に水素原子を表すことはない。
1及びR2は、R1及びR2が結合する窒素原子とともに、環状アミノ基を形成してもよい。環状アミノ基としては、例えば、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、ヘキサヒドロアゼピノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。
1及びR2は、各々独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がさらに好ましい。
3及びR4は、電子求引基を表す。ここで電子求引基は、ハメットの置換基定数σp値(以下、単に「σp値」という。)が、0.20以上1.0以下の電子求引基である。好ましくは、σp値が0.30以上0.8以下の電子求引基である。
3は、シアノ基、−COOR5、−CONHR5、−COR5、−SO25より選択される基であることが好ましい。R4は、シアノ基、−COOR6、−CONHR6、−COR6、−SO26より選択される基であることが好ましい。R5及びR6は、各々独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。
3及びR4としては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基が好ましく、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基がより好ましい。また、R3及びR4は、互いに結合して環状電子求引基を形成してもよい。R3およびR4が互いに結合して形成する環状電子求引基としては、例えば、2個のカルボニル基を含む6員環を挙げることができる。
上記のR1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つは、連結基を介して、ビニル基と結合したモノマーより導かれるポリマーの形になっていてもよい。他のモノマーとの共重合体であっても良い。
【0218】
式(UV−1)で示される紫外線吸収剤の具体例としては、下記化合物が挙げられる。式(UV−1)で示される紫外線吸収剤の置換基の説明は、国際公開WO2009/123109号公報の段落番号0024〜0033(対応する米国特許出願公開第2011/0039195号明細書の[0040]〜[0059])の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。式(UV−1)で表される化合物の好ましい具体例は、国際公開WO2009/123109号公報の段落番号0034〜0037(対応する米国特許出願公開第2011/0039195号明細書の[0060])の例示化合物(1)〜(14)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。式(UV−1)で示される紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV503(大東化学(株)製)などが挙げられる。
【化53】
【0219】
紫外線吸収剤として用いるジケトン化合物は、下記式(UV−2)で表される化合物が好ましい。
【化54】
式(UV−2)において、R101及びR102は、各々独立に、置換基を表し、m1およびm2は、それぞれ独立して0〜4を表す。置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、メルカプト基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられ、アルキル基およびアルコキシ基が好ましい。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状が挙げられ、直鎖または分岐が好ましく、分岐がより好ましい。
アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましい。アルコキシ基は、直鎖、分岐、環状が挙げられ、直鎖または分岐が好ましく、分岐がより好ましい。
101及びR102の一方がアルキル基で、他方がアルコキシ基である組み合わせが好ましい。
m1およびm2は、それぞれ独立して0〜4を表す。m1およびm2は、それぞれ独立して0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、1が特に好ましい。
【0220】
式(UV−2)で表される化合物としては、下記化合物が挙げられる。
【化55】
【0221】
紫外線吸収剤は、ユビナールA(BASF社製)を用いることもできる。また、紫外線吸収剤は、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、トリアジン化合物等の紫外線吸収剤を用いることができ、具体例としては特開2013−68814号に記載の化合物が挙げられる。ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0222】
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物の製造中又は保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、重合禁止剤を含有させてもよい。重合禁止剤としては、例えばフェノール系水酸基含有化合物類、N−オキシド化合物類、ピペリジン1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、ジアゾニウム化合物類、カチオン染料類、スルフィド基含有化合物類、ニトロ基含有化合物類、リン系化合物類、ラクトン系化合物類、遷移金属化合物類(FeCl3、CuCl2等)が挙げられる。また、重合禁止剤はフェノール骨格やリン含有骨格などの重合禁止機能を発現する構造が同一分子内に複数存在する複合系化合物であってもよい。例えば特開平10−46035号公報に記載の化合物なども好適に用いられる。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−パラクレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、パラメトキシフェノールが好ましい。
重合禁止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0223】
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、上記組成物で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
本発明の硬化性組成物中の溶剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分が5〜90質量%となる量が好ましく、10〜80質量%となる量がより好ましく、20〜75質量%となる量がさらに好ましい。
【0224】
<<その他成分>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする近赤外線カットフィルタなどの光学フィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012−003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の[0237])の記載、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。好ましくは、分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物又は分子量500以上のチオエーテル化合物が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤として、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらは、市販品として容易に入手可能であり、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330((株)ADEKA)などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上を使用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0225】
<硬化性組成物の調製>
本発明の硬化性組成物は、上述した各成分を混合することによって調製することができる。また、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタの種類、ろ過方法については、組成物で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0226】
<硬化性組成物の用途>
本発明の硬化性組成物は、液状とすることができるため、例えば、本発明の硬化性組成物を基材などに適用し、乾燥させることにより硬化膜を容易に製造できる。
本発明の硬化性組成物の粘度は、塗布により硬化膜を形成する場合は、1〜100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
本発明の硬化性組成物の全固形分は、塗布方法により変更されるが、例えば、1〜50質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下がより好ましい。
【0227】
本発明の硬化性組成物の用途は、特に限定されない。例えば、近赤外線吸収顔料を含む硬化性組成物を用いることで、近赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。例えば、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する近赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における近赤外線カットフィルタなどに好ましく用いることができる。特に、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、波長700〜1000nmの光を検出することで物体を検出する赤外線センサの近赤外線カットフィルタなどに使用できる。
また、可視光を遮光する色材を含む硬化性組成物を用いることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタの形成に用いることもできる。例えば、波長400〜900nmまでを遮光し、波長900nm以上の近赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。この場合、可視光を遮光する色材と、近赤外線吸収顔料とを併用することが好ましい。赤外線透過フィルタは、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値は、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。また、波長400〜830nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bは、4.5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0228】
<硬化膜、近赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ>
次に、本発明の硬化膜、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタについて説明する。
本発明の硬化膜は、上述した本発明の硬化性組成物を用いてなるものである。本発明の硬化膜は、近赤外線カットフィルタや、赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。硬化膜は、支持体上に積層した状態で用いてもよく、硬化膜を支持体から剥離して用いてもよい。
本発明の硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
また、本発明の近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタは、上述した本発明の硬化性組成物を用いてなるものである。
【0229】
近赤外線カットフィルタは、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400〜550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700〜1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0230】
赤外線透過フィルタは、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の波長の光を透過するフィルタが挙げられる。なお、本発明の硬化膜を、赤外線透過フィルタとして用いる場合、近赤外線吸収顔料と、可視光を遮光する色材(好ましくは、2種以上の有彩色着色剤を含有する色材、または、有機系黒色着色剤を少なくとも含有する色材)とを含む硬化性組成物を用いたフィルタであるか、近赤外線吸収顔料を含む層の他に、可視光を遮光する色材を含む層が別途存在するフィルタであることが好ましい。赤外線透過フィルタは、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が80%以上である分光特性を有することが好ましい。
【0231】
本発明の近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタは、本発明の硬化性組成物からなる膜の他に、更に、反射防止膜、紫外線吸収膜などを有していてもよい。紫外線吸収膜としては、例えば、WO2015/099060号の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。反射防止膜としては、高屈折層と低屈折層とが、交互に積層してなる積層体(例えば、誘電体多層膜など)が挙げられる。反射防止膜の分光特性は、光源の波長、光学フィルタの分光特性等に応じて適宜選択できる。本発明の近赤外線カットフィルタと反射防止膜とを組み合わせて用いることで、幅広い領域の赤外線を遮光することもできる。反射防止膜の詳細は、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0232】
本発明の硬化膜、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。また、本発明の光学フィルタは、近赤外線を吸収またはカットする機能を有するレンズ(デジタルカメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、f−θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ)および半導体受光素子用の光学フィルタ、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用コーティングフィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用や写真用近赤外線フィルタ、保護めがね、サングラス、熱線遮断フィルタ、光学文字読み取り記録フィルタ、機密文書複写防止用フィルタ、電子写真感光体などに用いることができる。またCCDカメラ用ノイズカットフィルタ、CMOSイメージセンサ用フィルタとしても有用である。
【0233】
<積層体>
本発明において、本発明の硬化性組成物を用いた近赤外線カットフィルタと、有彩色着色剤を含むカラーフィルタとを積層して、積層体としてもよい。積層体は、近赤外線カットフィルタと、カラーフィルタとが、厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。近赤外線カットフィルタと、カラーフィルタとが、厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された基材とは別の基材に近赤外線カットフィルタが形成されていてもよく、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0234】
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長の光を通過し、特定の波長の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長の光を通過させ、特定の波長の光を遮光するフィルタを意味する。また、赤外線透過フィルタとは、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過するフィルタを意味する。
【0235】
<パターン形成方法>
次に、パターン形成方法について説明する、パターン形成方法は、本発明の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法により、硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程と、を含む。
【0236】
例えば、近赤外線カットフィルタと、カラーフィルタとが積層した積層体を製造する場合は、近赤外線カットフィルタのパターン形成と、カラーフィルタのパターン形成は、別々に行ってもよい。また、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとの積層体に対してパターン形成を行ってもよい(すなわち、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとのパターン形成を同時に行ってもよい)。
【0237】
近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとのパターン形成を、別々に行う場合とは、次の態様を意味する。近赤外線カットフィルタおよびカラーフィルタのいずれか一方に対してパターン形成を行う。次いで、パターン形成したフィルタ層上に、他方のフィルタ層を形成する。次いで、パターン形成を行っていないフィルタ層に対してパターン形成を行う。
【0238】
パターン形成方法は、フォトリソグラフィによるパターン形成方法であってもよく、ドライエッチングによるパターン形成方法であってもよい。本発明の硬化性組成物は、フォトリソグラフィによるパターン形成性に優れているので、本発明の硬化性組成物を用いてパターン形成を行う場合は、フォトリソグラフィによるパターン形成方法が好適である。
【0239】
近赤外線カットフィルタのパターン形成と、カラーフィルタのパターン形成とを、別々に行う場合、各フィルタ層のパターン形成方法は、フォトリソグラフィ法のみ、または、ドライエッチング法のみで行ってもよい。また、一方のフィルタ層をフォトリソグラフィ法でパターン形成し、他方のフィルタ層をドライエッチング法でパターン形成してもよい。ドライエッチング法とフォトリソグラフィ法とを併用してパターン形成を行う場合、1層目のパターンは、ドライエッチング法によりパターン形成を行い、2層目以降のパターンは、フォトリソグラフィ法によりパターン形成を行うことが好ましい。
【0240】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、各組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
また、ドライエッチング法によるパターン形成は、各組成物を用いて支持体上に組成物層を形成し、硬化して硬化物層を形成する工程と、硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、露光および現像することによりフォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、レジストパターンをエッチングマスクとして硬化物層をドライエッチングしてパターンを形成する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0241】
<<組成物層を形成する工程>>
組成物層を形成する工程では、各組成物を用いて、支持体上に組成物層を形成する。
【0242】
支持体としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の材料からなる基材が挙げられる。また、基材上にCCDやCMOS等の固体撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用支持体を用いることができる。
パターンは、固体撮像素子用基板の固体撮像素子形成面側(おもて面)に形成してもよいし、固体撮像素子非形成面側(裏面)に形成してもよい。支持体は、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0243】
支持体への組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された特許公報に記載の方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0244】
支持体上に形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10〜300秒が好ましく、40〜250秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0245】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
<<露光工程>>
次に、組成物層を、パターン状に露光する(露光工程)。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が最も好ましい。
露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(好ましくは15体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(好ましくは22体積%以上、より好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2〜100000W/m2(好ましくは5000W/m2以上、より好ましくは15000W/m2以上、さらに好ましくは35000W/m2以上)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0246】
<<現像工程>>
次に、未露光部を現像除去してパターンを形成する。未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。
現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0247】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。また、現像液には無機アルカリ剤を用いてもよい。無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどが好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した組成物で説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0248】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200〜230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が一層好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0249】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上に形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、得られた硬化物層上にフォトレジスト層を形成し、次いでこのフォトレジスト層をパターニングしてマスクを形成し、次いで、このパターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングすることで行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、プリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0250】
<固体撮像素子、カメラモジュール>
本発明の固体撮像素子は、本発明の硬化膜を含む。また、本発明のカメラモジュールは、固体撮像素子と、本発明の近赤外線カットフィルタとを有する。固体撮像素子の構成としては、本発明の硬化膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0251】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の硬化膜を有する構成である。また、固体撮像素子において、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各色画素を形成する硬化膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0252】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の硬化膜を有する。本発明の赤外線センサの構成としては、本発明の硬化膜を有する構成であり、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。
【0253】
以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0254】
近赤外線カットフィルタ111は、後述する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長によりその特性は選択される。近赤外線カットフィルタ111は、可視光(例えば、波長400〜650nmの光)を透過し、かつ、近赤外線(例えば、波長700nmを超える波長の光)の少なくとも一部を遮光するフィルタであることが好ましい。近赤外線カットフィルタ111は、上述した本発明の硬化性組成物を用いて形成することができる。
【0255】
カラーフィルタ112は、可視光領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0256】
赤外線透過フィルタ114は、後述する赤外LEDの発光波長によりその特性は選択される。
例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長400〜650nmの範囲における最大値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。この透過率は、波長400〜650nmの範囲の全域で上記の条件を満たすことが好ましい。波長400〜650nmの範囲における最大値は、通常、0.1%以上である。
【0257】
赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長800nm以上(好ましくは800〜1300nm)の範囲における最小値が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。この透過率は、波長800nm以上の範囲の一部で上記の条件を満たすことが好ましく、赤外LEDの発光波長に対応する波長で上記の条件を満たすことがより好ましい。波長900〜1300nmの範囲における光透過率の最小値は、通常、99.9%以下である。
【0258】
赤外線透過フィルタ114の膜厚は、100μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。下限値は、0.1μmが好ましい。膜厚が上記範囲であれば、上述した分光特性を満たす膜とすることができる。
赤外線透過フィルタ114の分光特性、膜厚等の測定方法を以下に示す。
膜厚は、膜を有する乾燥後の基板を、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定した。
膜の分光特性は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、波長300〜1300nmの範囲において透過率を測定した値である。
【0259】
上述した分光特性を有する赤外線透過フィルタ114は、可視光を遮光する色材を含む組成物を用いて形成できる。可視光を遮光する色材の詳細については、上述した本発明の硬化性組成物で説明した範囲と同様である。
【0260】
また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が80%以上であることが好ましい。
【0261】
上述した分光特性を有する赤外線透過フィルタ114は、可視光を遮光する色材と、近赤外線とを近赤外線吸収顔料と含む硬化性組成物を用いて製造できる。
【実施例】
【0262】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「部」は質量基準である。
【0263】
<酸価の測定方法>
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT−510、京都電子工業製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出した。
A=56.11×Vs×0.5×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプル質量(g)(固形分換算)
【0264】
<アミン価の測定>
アミン価は、固形分1gあたりの塩基性成分と当量の水酸化カリウム(KOH)の質量で表したものである。測定サンプルを酢酸に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT−510、京都電子工業製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L過塩素酸/酢酸溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として次式によりアミン価を算出した。
B=56.11×Vs×0.1×f/w
B:アミン価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L過塩素酸/酢酸溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L過塩素酸/酢酸溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0265】
<溶解度の測定>
測定サンプルを、大気圧下で、25℃の溶剤に添加し、1時間攪拌したのち、測定サンプルの溶剤に対する溶解度を求めた。
【0266】
<化合物(A−1)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−1)を合成した。
【化56】
4−(2−メチルブトキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、化合物(A−1−a)を合成した。
1H−NMR(ジメチルスルホキシド(DMSO)/テトラヒドロフラン(THF)混合):δ0.95(t,3H),1.02(d,3H),1.58(m,1H),1.87(m,1H),3.92(m,2H),7.66(d,2H),8.54(d,2H)
(A−1−a)179質量部、2−(2−ベンゾチアゾリル)アセトニトリル162.5質量部をトルエン1840質量部中で撹拌し、オキシ塩化リン476.74質量部を滴下し3.5時間加熱還流した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール1800質量部を90分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間撹拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール450質量部で洗浄した。得られた結晶にメタノール2300質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−1−b)を240質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.99(t,3H),1.07(d,3H),1.58(m,1H),1.93(m,1H),3.93(m,2H),7.15(d,2H),7.66(d,2H),8.54(d,2H)
ジフェニルボリン酸2−アミノエチルエステル119質量部、化合物(A−1−b)170質量部をトルエン2840質量部中で撹拌し、外接温度40℃で、四塩化チタン167質量部を30分間かけて滴下し、30分間撹拌した。外接温度を130℃まで昇温させ、3時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール1620質量部を滴下した。滴下後30分間撹拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール150質量部で洗浄した。得られた結晶に1500質量部のメタノールを加え室温で10分間撹拌し、結晶をろ別するという操作を2回行った。得られた結晶にテトラヒドロフラン(THF)2000質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃以下になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、顔料(A−1)を234質量部得た。MALDI−MS(飛行時間型質量分析法)により、分子量1100.5のピークが観測され、化合物(A−1)であると同定した。化合物(A−1)の極大吸収波長(λmax)は、クロロホルム中で780nmであった。
【0267】
<化合物(A−9)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−9)を合成した。
【化57】
4−(1−メチルヘプトキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、(A−9−a)を合成した。
1H−NMR(DMSO(ジメチルスルホキシド):ナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液=95:5(質量比)の混合液) ; δ0.82(t,6H),1.15−1.70(m,26H),4.40(m,2H),6.78(d,4H),8.48(d,2H)
化合物(A−9−a)20.0質量部、2−(2−ベンゾチアゾリル)アセトニトリル15.4質量部をトルエン230質量部中で攪拌し、オキシ塩化リン45.0質量部を滴下し3.5時間加熱還流した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール200質量部を60分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間攪拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール100質量部で洗浄した。得られた結晶にメタノール200質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−9−b)を8.8質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.90−1.90(m,32H),4.54(m,2H),7.12(d,4H),7.20−7.40(m,2H),7.43(t,2H),7.75(d,4H),7.81(t,4H)
ジフェニルボリン酸2−アミノエチルエステル3.9質量部、化合物(A−9−b)6.0質量部をトルエン60質量部中で攪拌し、外接温度40℃で、四塩化チタン10.6質量部を10分間かけて滴下し、30分間攪拌した。外接温度130℃まで昇温し3時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール40質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール35質量部で洗浄した。得られた結晶に50質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別するという操作を2回行った。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−9)を4.6質量部得た。
1H−NMR(DMSO):δ6.20−6.30(dd,8H),6.91(d,2H),7.12−7.21(m,24H),7.92(d,2H),9.54(s,2H)
MALDI−MSにより分子量1090.9のピークが観測され、化合物(A−9)であると同定した。化合物(A−9)のλmaxは、DMSO(ジメチルスルホキシド)中で782nmであった。
【0268】
<化合物(A−8)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−8)を合成した。
【化58】
2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール50.0質量部、水酸化カリウム93.4質量部を水200質量部中で、24時間加熱還流し、10℃以下まで冷却した。反応液のpHが6になるように、10℃以下を維持しながら、6mol/L塩酸と酢酸を添加した。析出した結晶をろ別し、水200質量部で洗浄した。得られた結晶全量と、マロノニトリル18.3質量部、酢酸19.3質量部をメタノール172質量部中、60℃で1時間攪拌し、10℃以下まで冷却した。析出した結晶をろ別し、冷メタノール200質量部で洗浄した。得られた結晶を40℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−8−b)を38.7質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ3.85(s,3H),4.22(s,2H),7.16(d,1H),7.38(s,1H),7.97(d,1H)
(A−1−a)と(A−8−b)を原料にして、(A−1−b)の合成と同様の方法にて、(A−8−c)を合成した。
1H−NMR(DMSO(ジメチルスルホキシド):ナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液=95:5(質量比)の混合液):δ0.98(t,6H),1.12(d,6H),1.30(m,2H),1.63(m,2H),1.95(m,2H),3.89(m,4H),6.88(d,2H),6.98(d,4H),7.42(m,4H),7.67(s,2H),7.85(d,4H)
化合物(A−8−c)を原料にして、化合物(A−1)の合成と同様の方法にて、化合物(A−8)を合成した。MALDI−MSにより分子量1161.1のピークが観測され、化合物(A−8)であると同定した。化合物(A−8)のλmaxは、クロロホルム中で802nmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ1.00(t,6H),1.05(d,6H),1.33(m,2H),1.63(m,2H),1.95(m,2H),3.74(m,4H),6.46(s,8H),6.57(d,2H),6.85(d,2H),6.98(s,2H),7.20(m,12H),7.25(m,8H)
【0269】
<化合物(A−2)〜(A−7)の合成>
【化59】
化合物(A−8)の合成と同様の方法にて、化合物(A−2)〜(A−7)を合成した。いずれもMALDI−MSにより分子量が理論値と同じであったことから目的化合物であると同定した。クロロホルム中でのλmaxは、化合物(A−7)が794nm、化合物(A−3)が786nm、化合物(A−2)が782nm、化合物(A−5)が788nm、化合物(A−4)が785nm、化合物(A−6)が794nmであった。
【0270】
<化合物(A−201)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−201)を合成した。
【化60】
(A−201−a)179質量部、2−(2−キノキサリニル)アセトニトリル7.1質量部をトルエン90.5質量部中で攪拌し、オキシ塩化リン21.3質量部を滴下し3.5時間加熱還流した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール80質量部を60分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間攪拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール80質量部で洗浄した。得られた結晶にメタノール100質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−201−b)を3.6質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.87(t,6H),0.99(d,6H),1.30−2.00(m,6H),3.99(m,4H),7.20(d,4H),7.60−7.80(m,10H),8.03(d,2H),9.10(s,2H),14.07(s,2H)
ジフェニルボリン酸2−アミノエチルエステル5.6質量部、化合物(A−201−b)2.0質量部をトルエン40質量部中で攪拌し、外接温度40℃で、四塩化チタン7.8質量部を10分間かけて滴下し、30分間攪拌した。外接温度130℃まで昇温し1.5時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール40質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール80質量部で洗浄した。得られた結晶に60質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別するという操作を2回行った。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−201)を1.9質量部得た。MALDI−MSにより分子量1090.9のピークが観測され、化合物(A−201)であると同定した。化合物(A−201)のλmaxは、クロロホルム中で862nmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ1.02(t,6H),1.10(d,6H),1.34(m,2H),1.57(m,2H),2.00(m,2H),3.85(m,4H),6.19(d,4H),6.59(d,4H),7.10−7.32(m,24H),7.72(d,2H),8.00(d,2H),9.06(s,2H)
【0271】
<化合物(A−15)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−15)を合成した。
【化61】
【0272】
5−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾール125.0質量部、水酸化カリウム234.8質量部を水468質量部、エチレングリコール468質量部中で、21時間加熱還流し、10℃以下まで冷却した。反応液のpHが6になるように、10℃以下を維持しながら、6mol/L塩酸を添加した。析出した結晶を濾別し、水500質量部で洗浄した。得られた結晶全量と、マロノニトリル46.1質量部、酢酸49質量部をメタノール780質量部中、60℃で1時間攪拌し、メタノール250質量部で希釈した後、熱時濾過をした。得られた濾液を10℃以下まで冷却し、析出した結晶を濾別し、冷メタノール375質量部で洗浄した。得られた結晶を50℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−15−b)を117.2質量部得た。
化合物(A−9−a)125.0質量部、化合物(A−15−b)112.5質量部をトルエン1400質量部中で攪拌し、オキシ塩化リン281.5質量部を95℃で滴下し、95℃1時間撹拌した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール2500質量部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で30分間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール1250質量部で洗浄した。得られた結晶にメタノール1250質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶を濾別するという操作を2回繰り返した。得られた結晶を50℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−15−c)を140.2質量部得た。
ジフェニルボリン酸2−アミノエチルエステル116.0質量部、化合物(A−15−c)135.0質量部をトルエン2160質量部中で攪拌し、外接温度95℃で、四塩化チタン251.3質量部を15分間かけて滴下した。外接温度130℃まで昇温し1時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール2160質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌し、析出した結晶を濾別し、メタノール1080質量部で洗浄した。得られた結晶に2160質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶を濾別した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥した後、2025質量部のN−メチルピロリドンを加えて120℃で2時間撹拌し、30℃になるまで放冷し、結晶を濾別し、N−メチルピロリドン675質量部、メタノール1350質量部で順に洗浄した。得られた結晶に2025質量部のジメチルアセトアミドを加えて85℃で1時間撹拌し、30℃になるまで放冷し、結晶を濾別し、ジメチルアセトアミド675質量部、メタノール1350質量部で順に洗浄した。得られた結晶に2025質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶を濾別した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−15)を130.0質量部得た。MALDI−MSにより分子量1020.3のピークが観測され、化合物(A−15)であると同定した。化合物(A−15)のλmaxは、DMSO(ジメチルスルホキシド)中で795nmであった。
【0273】
化合物(A−15)のモル吸光係数は185,000L/(mol・cm)、グラム吸光係数は200L/(g・cm)であった。化合物(A−15)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)純度は96.6%であり、副生成物として下記構造の(A−15−d)が0.8%、(A−15−e)が0.5%、(A−15−f)が0.9%、その他の構造不明成分が合計で1.2%含まれていた。また、化合物(A−15)にはチタンが160質量ppm、塩素が20質量ppm含まれていた。
【化62】
【0274】
化合物(A−15)の粉末X線回折スペクトルのピーク位置は、回折角度2θが7.3°、10.1°、12.5°、13.5°、14.0°、14.4°、14.6°、16.3°、17.2°、18.0°、19.3°、19.9°、20.9°、21.8°、22.9°、23.7°、25.2°、26.6°、28.2°、31.1°であり、ピーク強度が最大である7.3°のピークの半値全幅は0.24°であった。
【0275】
(HPLC純度の測定)
以下の条件にて測定し、ピーク面積%を求めた。
測定装置:Agilent製1200
カラム:Phenomenex製kinetex5μC18100A(250mm×直径4.60mm)
溶離液:酢酸0.1体積%テトラヒドロフラン(THF)溶液/酢酸0.1体積%イオン交換水=60/40(体積比)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
【0276】
(チタン含有量の測定)
測定装置としてパーキンエルマー製Optima7300DVを使用した。試料約50mgに硝酸5mLと硫酸0.5mLを添加してマイクロウェーブにて260℃にて灰化し、水で40mLに希釈した液について、誘導結合プラズマ発光分光分析にて測定し、試料中のチタン含有量を算出した。
【0277】
(塩素含有量の測定)
試料約2mgを精秤し、石英ボード上に乗せ、燃焼式ハロゲン分析装置(ダイアインスツルメンツ製AQF−100)を使用して900℃で燃焼した後、吸収液に気化したガスを吸収させ、イオンクロマトグラフィにて塩素量を定量した。吸収液は約300質量ppm過酸化水素水+約3.6質量ppm酒石酸を3mL使用した。イオンクロマトグラフィは、以下の条件で測定した。
カラム:サーモフィッシャーサイエンティフィック製AS12A
溶離液:2.7mmol/L炭酸ナトリウム+0.3mmol/L炭酸水素ナトリウム
流量:1.5mL/min
カラム温度:35℃
【0278】
(粉末X線回折スペクトルの測定)
測定装置として、リガク製試料水平型強力X線回折装置RINT−TTR IIIを使用し、回折角度2θ=5°〜55°、電圧50kV、電流300mA、スキャンスピード4°/min、ステップ間隔0.1、スリット(散乱0.05mm、発散10mm、受光0.15mm)の条件で、粉末X線回折スペクトルを測定した。得られた粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度2θが5〜10°の回折強度が最も大きいピークを、ローレンツ関数[y=A/(1+((x−x0)/w)2)+h]にフィッティングして、同ピークの半値全幅を求めた。ここで、yは強度、Aはピーク高さ、xは2θ、x0はピーク位置、wはピーク幅(半値半幅)、hはベースラインである。
【0279】
<化合物(A−10)、(A−14)、(A−16)、(A−33)、(A−34)、(A−38)、(A−39)、(A−106)、(A−209)の合成>
【化63】
【0280】
化合物(A−15)の合成と同様の方法にて、化合物(A−10)、(A−14)、(A−16)、(A−33)、(A−34)、(A−38)、(A−39)、(A−106)、(A−209)を合成した。いずれもMALDI−MSにより分子量が理論値と同じであったことから目的化合物であると同定した。DMSO(ジメチルスルホキシド)中でのλmaxは、(A−10)が782nm、(A−14)が795nm、(A−16)が806nm、(A−33)が781nm、(A−34)が782nm、(A−38)が795nm、(A−39)が795nm、(A−106)が743nm、(A−209)が883nmであった。
【0281】
<化合物(A−25)、(A−30)、(A−60)、(A−101)、(A−145)、(A−301)の合成>
【化64】
【0282】
化合物(A−1)の合成と同様の方法にて、化合物(A−25)、(A−30)、(A−60)、(A−101)、(A−145)、(A−301)を合成した。いずれもMALDI−MSにより分子量が理論値と同じであったことから目的化合物であると同定した。クロロホルム中でのλmaxは、(A−25)が782nm、(A−30)が795nm、(A−60)が717nm、(A−101)が740nm、(A−145)が677nm、(A−301)が814nmであった。
【0283】
<化合物(A−81)の合成>
下記スキームに従い化合物(A−81)を合成した。MALDI−MSにより分子量1228.3のピークが観測され、化合物(A−81)であると同定した。化合物(A−81)のλmaxは、クロロホルム中で800nmであった。
【化65】
【0284】
<化合物(A−76)、(A−257)の合成>
【化66】
【0285】
化合物(A−81)の合成と同様の方法にて、化合物(A−76)、(A−257)を合成した。いずれもMALDI−MSにより分子量が理論値と同じであったことから目的化合物であると同定した。クロロホルム中でのλmaxは、(A−76)が786nm、(A−257)が883nmであった。
【0286】
<化合物(A-514)の合成>
下記スキームに従い化合物(A-514)を合成した。
【化67】
【0287】
4−(1−メチルヘプトキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、化合物(A−a)を合成した。
【0288】
下記スキームに従い(中間体C−0)を合成した。
【化68】
4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミン5.0質量部と、グリオキシル酸1水和物2.9質量部と、エタノール120質量部をフラスコに入れ、加熱還流条件で12時間攪拌した。反応後、析出物を濾取した。この結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体C−0aを5.5質量部得た。
中間体C−0a5.0質量部と、オキシ塩化リン30質量部をフラスコに入れ、加熱還流条件で2時間攪拌した。反応後、反応液を300質量部の水に注ぎ、析出物を濾取した。この結晶を送風乾燥することで、中間体C−0bを5.0質量部得た。
60質量%の水素化ナトリウム1.3質量部と、テトラヒドロフラン10質量部とをフラスコに入れ、氷浴下でシアノ酢酸tert−ブチル4.0質量部を滴下した。室温で1時間攪拌した後に、中間体C−0b 5.0質量部を添加し、12時間攪拌した。反応液を75質量部の水に注ぎ、酢酸3質量部を加え、析出物を濾取した。この結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体C−0cを4.6質量部得た。
中間体C−0c 4.0質量部と、トリフルオロ酢酸12質量部と、ジクロロメタン24質量部をフラスコに入れ、60℃で1時間攪拌した。反応後、炭酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。溶媒を減圧除去し、得られた結晶を酢酸エチルで再結晶により精製した。この結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体C−0を2.0質量得た。
【0289】
化合物(A−a)50質量部、中間体C−0 52.4質量部をトルエン1000質量部中で攪拌し、オキシ塩化リン127質量部を滴下し3.5時間加熱還流した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール1000質量部を60分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間攪拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール500質量部で洗浄した。得られた結晶にメタノール500質量部を加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃12時間送風乾燥させることで、化合物(A−b)を56.6質量部得た。
ジフェニルボリン酸2−アミノエチルエステル51質量部を1,2−ジクロロベンゼン500質量部中で攪拌し、外接温度40℃で、四塩化チタン72.2質量部を10分間かけて滴下し、30分間攪拌した。A−bを25質量添加し、外接温度130℃まで昇温し90分加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール1000質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌し、結晶をろ別し、メタノール500質量部で洗浄した。得られた結晶に250質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−c)を25質量部得た。
【0290】
下記スキームに従い中間体C−1を合成した。
【化69】
【0291】
トリメリット酸無水物60質量部をジメチルホルムアミド(DMF)400質量部中で攪拌し、メチルアミン塩酸塩23.2質量部を添加した。内温35℃以下を維持しつつトリエチルアミン34.7質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌した後、外接温度160℃まで昇温し3時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、水200質量部、酢酸エチル200質量部を加え、分液操作により有機層を取り出した。有機層を1mol/L塩酸水溶液100質量部で洗浄した後、溶媒を減圧留去することで、中間体C−1aを62質量部得た。
中間体C−1a 50質量部をクロロホルム500質量部中で攪拌し、ジメチルホルムアミド(DMF)0.1質量部、塩化オキサリル46質量部を添加した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、中間体C−1を54質量部得た。
【0292】
化合物(A−c)20質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で攪拌し、トリエチルアミン22.3質量部、中間体C−1を32.9質量部の順で滴下し、外接温度75℃まで昇温し1時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、結晶をろ別し、テトラヒドロフラン200質量部で洗浄した。得られた結晶に200質量部のメタノールを加えて一時間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(A−514)を24質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ3.27(s,6H),6.39(d,4H),7.00(d,4H),7.20〜7.40(m,20H),7.81(s,2H),8.05(s,2H),8.29(s,2H),8.65(s,2H),8.76(s,2H),9.05(s,2H),
化合物(A−514)のλmaxは、クロロホルム中で883nmであった。
【0293】
<化合物(A−102)、(A−103)、(A−116)、(A−117)、(A−118)、(A−601)、(A−602)、(A−603)の合成>
化合物(A−1)の合成と同様の方法にて、化合物(A−102)、(A−103)、(A−116)、(A−117)、(A−118)、(A−601)、(A−602)、(A−603)を合成した。いずれもMALDI−MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry)により、分子量が理論値と同じであった事から目的化合物であると同定した。クロロホルム中でのλmaxは化合物(A−102)は742nm、化合物(A−103)は745nm、化合物(A−116)は740nm、化合物(A−117)は742nm、化合物(A−118)は745nm、化合物(A−601)は718nm、化合物(A−602)は723nm、化合物(A−603)は720nmであった。
【0294】
<化合物(A−401)、(A−407)、(A−413)、(A−416)、(A−419)、(A−422)の合成>
化合物(A−514)の合成と同様の方法にて、化合物(A−401)、(A−407)、(A−413)、(A−416)、(A−419)、(A−422)を合成した。いずれもMALDI−MSにより、分子量が理論値と同じであった事から目的化合物であると同定した。クロロホルム中でのλmaxは化合物(A−401)は740nm、化合物(A−407)は746nm、化合物(A−413)は746nm、化合物(A−416)は746nm、化合物(A−419)は746nm、化合物(A−422)は746nmであった。
【0295】
<化合物(B−1)の合成>
下記スキームに従い化合物(B−1)を合成した。
【化70】
化合物(A−9)の3.0質量部と、炭酸カリウムの3.45質量部とを、ジメチルアセトアミド(DMAc)の28.2質量部中で撹拌した後、ブタンスルトンの3.40質量部と、DMAcの5.6質量部とを添加し、10分間室温で撹拌した。外接温度を105℃まで昇温させて4時間加熱した。次に、内温30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。4mol/L塩酸水溶液の30質量部に、内温30℃以下を維持しつつ、得られた結晶を少量ずつ添加し、30分間室温で撹拌し、析出した結晶をろ別する操作を2回行った。得られた結晶に60質量部の酢酸エチルを加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別する操作を3回行った。得られた結晶を50℃24時間送風乾燥させる事で、化合物(B−1)を2.74質量部得た。
1H−NMR(ジメチルスルホキシド):δ1.76(m,8H),3.42(m,4H),3.93(m,4H),6.34−6.47(dd,8H),6.89(d,2H),7.12−7.21(m,24H),7.93(d,2H)
【0296】
化合物(B−22)の合成
【化71】
化合物(A−9)を4.6質量部と、4−[(ジエチルアミノ)メチル]−安息香酸クロリドを10質量部と、DMAcを87質量部と、トリエチルアミンを16.7質量部とを添加し、5分間撹拌した。外接温度を110℃まで昇温させ、4時間加熱した。内温が30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。ついで、メタノール100質量部、水100質量部で洗浄した。得られた結晶に蒸留水200質量部を添加し、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。得られた結晶にジメチルスルホキシド200質量部を添加し、30分間80℃で加熱した。加熱終了後、30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。得られた結晶にメタノール200質量部を添加し、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。得られた結晶を50℃24時間送風乾燥させる事で、化合物(B−22)を5.5質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):1.07(t,12H)、2.56(q,8H)、3.67(s,4H)、6.60(d,4H)、6.85(d,4H)、6.91−7.40(m,26H)、7.51(m,6H)、8.19(d,4H)
【0297】
化合物(B−14)、(B−16)の合成
4−[(ジエチルアミノ)メチル]−安息香酸クロリドの代わりに、イソニコチン酸クロリド、ニコチン酸クロリドを用いる以外は、化合物(B−22)と同様の手法を用いることで、化合物(B−14)、(B−16)を得た。
【0298】
化合物(B−12)の合成
【化72】
N−(3−ブロモプロピル)フタルイミドを4.5質量部と、化合物(A−9)を2.0質量部と、DMAcを37.6質量部と、炭酸カリウムを4.7質量部とを添加し、5分間撹拌した。外接温度を100℃まで昇温させ、1時間加熱した。次いで、N−(3−ブロモプロピル)フタルイミドを2.3質量部と、炭酸カリウムを2.5質量部とを反応機に追加し、続けて6時間撹拌した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつ1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を40質量部滴下した。滴下後30分間攪拌し、析出した結晶をろ別し、蒸留水35質量部で洗浄した。得られた結晶を50℃24時間送風乾燥させる事で、化合物(B−12)を2.1質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):2.21(quin,4H)、3.96(t,4H)、4.02(t,4H)、6.35(d,4H)、6.40(d,4H)、7.00−7.25(m,28H)7.73(m,4H)、7.89(m,4H)
【0299】
<化合物(B-634)の合成>
下記スキームに従い中間体C−2を合成した。
【化73】
トリメリット酸無水物60質量部をジメチルホルムアミド(DMF)400質量部中で攪拌し、塩化アンモニウム53.5質量部を添加した。内温35℃以下を維持しつつトリエチルアミン34.7質量部を滴下した。滴下後30分間攪拌した後、外接温度160℃まで昇温し3時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、水200質量部、酢酸エチル400質量部を加え、分液操作により有機層を取り出した。有機層を1mol/L塩酸水溶液100質量部で洗浄した後、溶媒を減圧留去することで、中間体C−2を30質量部得た。
【0300】
下記スキームに従い化合物(B-634)を合成した。
【化74】
【0301】
化合物(A−c)を20質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で攪拌し、中間体C−2を28.1質量部、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド18.5質量部、ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.2質量部の順で滴下し、室温で6時間撹拌した。結晶をろ別し、テトラヒドロフラン100質量部で洗浄した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(B−a)を23.5質量部得た。
化合物(B−a)を15質量部と炭酸セシウム22.5質量部とを、ジメチルアセトアミド(DMAC)100質量部とテトラヒドロフラン100質量部との混合液中で10分撹拌した。プロパンスルトン10質量部を加え、外接温度60℃まで昇温し90分加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、テトラヒドロフラン200質量部を加え、析出した結晶をろ別した。1mol/L塩化水素/酢酸エチル溶液100質量部に得られた結晶を添加し、30分室温で撹拌し、析出した結晶をろ別する操作を2回行った。得られた結晶に水75質量部を加えて、30分室温で撹拌し、析出した結晶をろ別した。得られた結晶に酢酸エチル300質量部を加えて30分加熱還流し、30℃まで放冷し結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(B−634)を9.0質量部得た。
MALDI−MSより分子量1676.2のピークが観測され、化合物(B−634)と同定した。
【0302】
<化合物(B-644)の合成>
下記スキームに従い中間体C−3を合成した。
【化75】
トリメリット酸無水物60質量部をジメチルホルムアミド(DMF)400質量部中で攪拌し、内温40℃以下を維持しつつN,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン42.7質量部を添加した。滴下後30分間攪拌した後、外接温度160℃まで昇温し4時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、酢酸エチル400質量部を加え30分間攪拌した。結晶をろ別し、酢酸エチル200質量部で洗浄した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、中間体C−3aを90質量部得た。
中間体C−3aの30質量部をクロロホルム300質量部中で攪拌し、ジメチルホルムアミド(DMF)0.1質量部、塩化オキサリル19質量部を添加した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、中間体C−3を42質量部得た。
【0303】
下記スキームに従い化合物(B−644)を合成した。
【化76】
化合物(A−c)を12質量部をテトラヒドロフラン180質量部中で攪拌し、トリエチルアミン20質量部を添加した。中間体C−3の35質量部をクロロホルム150質量部で溶解させた溶液を滴下し、室温で5時間撹拌した。反応後、結晶をろ別し、テトラヒドロフラン100質量部で洗浄した。得られた結晶に200質量部のメタノールを加えて一時間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を40℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(B−644)を15.6質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ1.06(t,12H),δ1.97(m,4H),δ2.63(m,12H),δ3.83(t,4H),6.39(d,4H),6.99(d,4H),7.20〜7.40(m,20H),7.82(s,2H),8.04(s,2H),8.29(s,2H),8.65(s,2H),8.75(s,2H),9.05(s,2H)
化合物(B−644)のλmaxは、クロロホルム中で883nmであった。
【0304】
<化合物(B−522)の合成>
下記スキームに従い化合物(B−522)を合成した。
【化77】
5−ブロモ−吉草酸25質量部とジヒドロフラン96.8質量部を添加し、1時間加熱還流した。次に内温30℃以下になるまで放冷し、外接温度30℃で減圧留去する事で、化合物(B−522a)を36.7質量部得た。
1H−NMR(CDCl3):δ1.70〜2.10(m,8H),δ2.33(t,2H),δ3.41(t,2H),δ3.90〜4.08(m,2H),δ6.31(d,1H)
【0305】
化合物(A−15)を4質量部と炭酸カリウム4.33質量部を、DMAc75.2質量部中で撹拌した後、化合物(B−522a)を7.87質量部と、DMAc15.0質量部とを添加し、10分間室温で撹拌した。内温85℃になるまで加熱し、1時間撹拌した。次に、内温30℃以下になるまで放冷し、メタノール126.7質量部を滴下した。析出した結晶をろ別し、メタノール64.0質量部、脱イオン水64.0質量部、メタノール64.0質量部の順に洗浄した。1mol/L塩化水素/酢酸エチル溶液160質量部に得られた結晶を添加し、室温で1時間撹拌した。結晶をろ別し、酢酸エチル160質量部で洗浄した。得られた結晶を、酢酸エチル80質量部に添加し、30分間加熱還流した後、結晶をろ別し、酢酸エチル160質量部で洗浄した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥させることで、化合物(B−522)を3.3質量部得た。
MALDI−MSより分子量1221.0のピークが観測され、化合物(B−522)と同定した。
【0306】
[試験例1]
<組成物(分散液)>
(製造例1)
下記表に示す顔料10質量部、下記表に示す顔料誘導体3質量部、下記表に示す樹脂7.8質量部、下記表に示す溶剤150質量部、および直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して組成物を製造した。なお、実施例19は、顔料A−6を5質量部と、顔料A−9を5質量部と用いた。また、実施例32は、顔料誘導体B−1を1.5質量部と、顔料誘導体B−33を1.5質量部とを用いた。
【表14】
【0307】
(製造例2)
下記表に示す顔料10質量部、下記表に示す顔料誘導体2質量部、下記表に示す樹脂7.8質量部、下記表に示す溶剤150質量部、および直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して組成物を製造した。
【表15】
【表16】
【表17】
【0308】
上記表に示す原料は以下である。
(顔料)
A−1〜10、A−14〜16、A−25、A−30、A−33、A−34、A−38、A−39、A−60、A−76、A−81、A−101、A−106、A−145、A−201、A−203、A−207、A−209、A−257、A−301、A−dpp、A−ph:下記構造の化合物。A−1〜10、A−14〜16、A−25、A−30、A−33、A−34、A−38、A−39、A−60、A−76、A−81、A−101、A−106、A−145、A−201、A−203、A−207、A−209、A−257、A−301は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび2−ブタノールに対する溶解度が0〜0.1g/Lであり、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物である。
【0309】
A−102、A−103、A−116〜A−118、A−401、A−407、A−413、A−416、A−419、A−422、A−504、A−509、A−512、A−513、A−514、A−517、A−518、A−531、A−534、A−539、A−540、A−544、A−545、A−552、A−601〜A−603、606:上述した式(PP)で表される化合物の具体例で挙げた化合物A−102、A−103、A−116〜A−118、A−401、A−407、A−413、A−416、A−419、A−422、A−504、A−509、A−512、A−513、A−514、A−517、A−518、A−531、A−534、A−539、A−540、A−544、A−545、A−552、A−601〜A−603、606。これらの化合物は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび2−ブタノールに対する溶解度が0〜0.1g/Lであり、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物である。
【化78】
【化79】
【0310】
(顔料誘導体)
B−1、B−7、B−12、B−14、B−16、B−18、B−22、B−28、B−31、B−35、B−101、B−201、B−202、B−322、B−323、B−324、B−325、B−dr−1、B−dpp:下記構造の化合物。B−dr−1におけるmは平均2であり、B−dppにおけるmは平均2である。B−1、B−12、B−14、B−16、B−18、B−22、B−28、B−31、B−322、B−323、B−324、B−325、B−dr−1は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび2−ブタノールに対する溶解度が0〜0.1g/Lである。
【化80】
【化81】
【0311】
B−401、B−405、B−409、B−413〜415、B−436、B−440、B−444、B−448〜B−451、B−455、B−459、B−463、B−467〜470、B−522、B−524、B−540、B−546、B−609、B−614、B−621、B−631、B−632、B−633、B−634、B−635、B−636、B−638、B−640、B−642、B−643、B−644、B−645、B−646、B−654、B−657、B−661、B−662、B−664、B−670、B−671、B−679:上述した式(1)で表される化合物の具体例で挙げた化合物B−401、B−405、B−409、B−413〜415、B−436、B−440、B−444、B−448〜B−451、B−455、B−459、B−463、B−467〜470、B−522、B−524、B−540、B−546、B−609、B−614、B−621、B−631、B−632、B−633、B−634、B−635、B−636、B−638、B−640、B−642、B−643、B−644、B−645、B−646、B−654、B−657、B−661、B−662、B−664、B−670、B−671、B−679。これらの化合物は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび2−ブタノールに対する溶解度が0〜0.1g/Lである。
【0312】
(樹脂)
D−1:下記構造の樹脂(酸価=105mgKOH/g、重量平均分子量=8000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
D−2:下記構造の樹脂(酸価=32.3mgKOH/g、アミン価=45.0mgKOH/g、重量平均分子量=22900)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
【化82】
【0313】
(溶剤)
C−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
C−2:2−ブタノール
C−3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
【0314】
<硬化性組成物>
下記の成分を混合して、硬化性組成物を作製した。
・上記で得られた組成物(分散液):55質量部
・アルカリ可溶性樹脂(アクリベースFF−426、(株)日本触媒製):7.0質量部
・重合性化合物(アロニックス M−305、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート55〜63質量%含有、東亞合成(株)製):4.5質量部
・光重合開始剤(IRGACURE OXE02、BASF社製):0.8質量部
・重合禁止剤(パラメトキシフェノール):0.001質量部
・界面活性剤(下記混合物(Mw=14000)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。):0.03質量部
【化83】
・紫外線吸収剤(UV−503、大東化学社製):1.3質量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):31質量部
【0315】
<硬化膜の作製>
硬化性組成物をガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して塗布層を得た。得られた塗布層を、i線ステッパーあるいはアライナーを用い、500mJ/cm2の露光量にて露光した。次いで、露光後の塗布層に対し、さらにホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ0.7μmの硬化膜を得た。
【0316】
<分散性>
(粘度)
E型粘度計を用いて、25℃での組成物(分散液)の粘度を、回転数1000rpmの条件で測定し、下記基準で評価した。
A:1mPa・s以上15mPa・s以下
B:15mPa・sを超え30mPa・s以下
C:30mPa・sを超え100mPa・s以下
D:100mPa・sを超える
【0317】
(チキソトロピー性)
E型粘度計を用いて25℃の組成物(分散液)の粘度を、回転数20rpmおよび回転数50rpmの条件で測定し、回転数20rpmでの粘度/回転数50rpmでの粘度をチキソトロピーインデックス(TI値)と定義し下記基準で評価した。
A:TI値が1以上1.3以下
B:TI値が1.3を超え、1.5以下
C:TI値が1.5を超え、2以下
D:TI値が2を超える
【0318】
(粒子径)
組成物(分散液)の顔料の平均粒子径は、日機装(株)製のMICROTRACUPA 150を用いて、体積基準で測定した。
A:5nm以上50nm以下
B:50nmを超え100nm以下
C:100nmを超え500nm以下
D:500nmを超える
【0319】
<可視透過率変化>
下記表に示す硬化性組成物を用いて製造した硬化膜と、下記表に示す硬化性組成物から顔料誘導体のみを除いた硬化性組成物を用いて製造した硬化膜の、波長400〜650nmの範囲の透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。400〜650nmで最大の透過率変化を下記式から算出し、下記基準で評価した。
透過率変化=|顔料誘導体を含む硬化性組成物を用いた硬化膜の透過率−顔料誘導体を含まない硬化性組成物を用いた硬化膜の透過率|
A:透過率変化が5%未満
B:透過率変化が5%以上10%未満
C:透過率変化が10%以上
【0320】
<耐熱性>
硬化膜を、ホットプレートにて、260℃で300秒加熱した。加熱前後の硬化膜の波長400〜1200nmの光に対する透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。400nm〜1200nmで最大の透過率変化を下記式から算出し、下記基準で評価した。
透過率変化=|(加熱後の透過率−加熱前の透過率)|
A:透過率変化が3%未満
B:透過率変化が3%以上5%未満
C:透過率変化が5%以上
【0321】
<耐光性>
硬化膜をスーパーキセノンランプ(10万ルクス)搭載の退色試験機にセットし、紫外線カットフィルタを使用しない条件下にて、50時間の光照射を行った。次に、照射後の硬化膜の透過スペクトルを、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定し、極大吸収波長の吸光度について、その残存率を下記式から算出し、下記基準で評価した。
残存率(%)={(照射後の吸光度)÷(照射前の吸光度)}×100
A:残存率が95%を超え100%
B:残存率が80%を超え95%以下
C:残存率80%以下
【0322】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0323】
上記結果から明らかなように、実施例は、顔料の分散性が良好で、可視透過率の変化が小さく、可視領域の色相が良好であった。さらには、耐熱性および耐光性に優れた硬化膜を製造することができた。
これに対し、比較例は、顔料の分散性と、顔料誘導体の有無による可視透過率変化の少なくとも一方が劣るものであった。
【0324】
(フォトリソグラフィ性の評価)
上記で得られた実施例101〜116、実施例119、実施例132の硬化性組成物を、塗布後の膜厚が0.7μmになるように、下塗り層付きシリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱して硬化性組成物層を得た。次いで、得られた硬化性組成物層に対し、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1.1μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光(露光量は線幅1.1μmとなる最適露光量を選択)した。次いで、露光後の硬化性組成物層に対し、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗し、パターンを得た。得られたパターンの下地上に残る残渣の量を画像の2値化処理により、下記基準で評価した。
A:残渣量が下地全面積の1%未満
B:残渣量が下地全面積の1%を超え3%以下
C:残渣量が下地全面積の3%超
実施例101〜116、実施例119、実施例132の硬化性組成物を用いて得られたパターンはいずれも評価Aであり、フォトリソグラフィに適していることがわかった。
【0325】
実施例において、重合性化合物を、アロニックス M−305(東亞合成(株)製)の代わりに、アロニックス M−510(東亞合成(株)製)またはKAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)を用いても同様の効果が得られる。
また、実施例において、重合性化合物を、アロニックス M−305(東亞合成(株)製)の代わりに、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)とNKエステル A−DPH−12E(新中村化学工業(株)製)とを質量比1:1で併用したものに置き換えても同様の効果が得られる。
また、実施例において、重合性化合物を、アロニックス M−305(東亞合成(株)製)の代わりに、NKエステル A−TMMT(新中村化学工業(株)製)とNKエステル A−DPH−12E(新中村化学工業(株)製)とを質量比1:1で併用したものに置き換えても同様の効果が得られる。
また、実施例において、重合性化合物を、アロニックス M−305(東亞合成(株)製)の代わりに、アロニックス TO−2349(東亞合成(株)製)とNKエステル A−DPH−12E(新中村化学工業(株)製)とを質量比1:1で併用したものに置き換えても同様の効果が得られる。
実施例において、アルカリ可溶性樹脂を、アクリベースFF−426((株)日本触媒製)の代わりに、アクリキュアRD−F8((株)日本触媒製)またはアクリベースFFS−6752((株)日本触媒製)を用いても同様の効果が得られる。
【0326】
実施例において、顔料として以下の方法で混練研磨処理した顔料を用いても同様の効果が得られる。
合成後の粗顔料5.3質量部、摩砕剤74.7質量部および粘結剤14質量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に添加し、装置中の混練物の温度が70℃になるように温度コントロールして、2時間混練した。摩砕剤は中性無水芒硝E(平均粒子径(体積基準の50%径(D50))=20μm、三田尻化学製)、粘結剤はジエチレングリコールを使用した。混練研磨後の混練物を、24℃の水10Lで水洗処理して摩砕剤および粘結剤を取り除き、加熱オーブンで80℃24時間の処理を行った。
【0327】
[試験例2]
(赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物の調製)
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物を調製した。
【0328】
(組成101)
実施例12の組成物・・・22.67質量部
顔料分散液1−1・・・11.33質量部
顔料分散液1−2・・・22.67質量部
顔料分散液1−3・・・10.34質量部
顔料分散液1−4・・・6.89質量部
重合性化合物(アロニックス M−305、東亞合成(株)製)・・・1.37質量部
樹脂101・・・3.52質量部
光重合開始剤(IRGACURE OXE 01、BASF社製)・・・0.86質量部
界面活性剤101・・・0.42質量部
重合禁止剤(パラメトキシフェノール)・・・0.001質量部
PGMEA・・・19.93質量部
【0329】
樹脂101:下記構造の樹脂(Mw=40,000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化84】
界面活性剤101:下記混合物(Mw=14000、下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
【化85】
【0330】
(顔料分散液1−1)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で混合、分散して、顔料分散液を調製した。
・C.I.ピグメントレッド・・・13.5質量部
・樹脂11・・・2質量部
・樹脂12・・・2質量部
・PGMEA・・・82.5質量部
・樹脂11:下記構造の樹脂(Mw=7950、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。)
【化86】
・樹脂12:下記構造の樹脂(Mw=12000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化87】
【0331】
(顔料分散液1−2)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で混合、分散して、顔料分散液を調製した。
・C.I.ピグメントブルー15:6 ・・・13.5質量部
・樹脂13・・・4質量部
・PGMEA・・・82.5質量部
・樹脂13:下記構造の樹脂(Mw=30000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。)
【化88】
【0332】
(顔料分散液1−3)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で混合、分散して、顔料分散液を調製した。
・C.I.ピグメントイエロー139・・・14.8質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製)・・・3質量部
・樹脂12 ・・・2.2質量部
・PGMEA ・・・80質量部
【0333】
(顔料分散液1−4)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で混合、分散して、顔料分散液を調製した。
・C.I.ピグメントバイオレット23 ・・・14.8質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製)・・・3質量部
・樹脂12 ・・・2.2質量部
・PGMEA ・・・80質量部
【0334】
(Red組成物の調製)
C.I.ピグメントレッド254を9.6質量部、C.I.ピグメントイエロー139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液・・51.7質量部
樹脂102(40%PGMEA溶液) ・・・0.6質量部
重合性化合物102・・・0.6質量部
光重合開始剤(IRGACURE OXE 01、BASF社製)・・・0.3質量部
界面活性剤101・・・4.2質量部
PGMEA・・・42.6質量部
【0335】
重合性化合物102:下記化合物
【化89】
樹脂102:下記構造の樹脂(酸価=70mgKOH/g、Mw=11000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化90】
【0336】
(Green組成物の調製)
C.I.ピグメントグリーン36を6.4質量部、C.I.ピグメントイエロー150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液・・・73.7質量部
樹脂102(40%PGMEA溶液)・・・0.3質量部
重合性化合物(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)・・・1.2質量部
光重合開始剤(IRGACURE OXE 01、BASF社製)・・・0.6質量部
界面活性剤101・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学社製)・・・0.5質量部
PGMEA・・・19.5質量部
【0337】
(Blue組成物の調製)
C.I.ピグメントブルー15:6を9.7質量部、C.I.ピグメントバイオレット23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液・・・44.9質量部
樹脂102(40%PGMEA溶液) ・・・2.1質量部
重合性化合物(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)・・・1.5質量部
重合性化合物102・・・0.7質量部
光重合開始剤(IRGACURE OXE 01、BASF社製)・・・0.8質量部
界面活性剤101・・・4.2質量部
PGMEA・・・45.8質量部
【0338】
(パターン形成)
実施例116の硬化性組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した後に、更にホットプレートで200℃で5分間加熱した。次いでドライエッチング法により2μmのベイヤーパターン(近赤外線カットフィルタ)を形成した。
次に、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2で2μmのドットパターンをマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した後に、ホットプレートで、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物の硬化膜をパターニングした。同様にGreen組成物の硬化膜、Blue組成物の硬化膜を順次パターニングし、赤・青・緑の着色パターンを形成した。
次に、上記パターン形成した膜上に、組成101の赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2で2μmのベイヤーパターンをマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した後に、ホットプレートで、200℃で5分間加熱し、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターンの抜け部分に、赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子を、低照度の環境下(0.001Lux)にて、赤外発光ダイオード(赤外LED)光源から発光波長940nmの光を照射し、画像の取り込みを行ったところ被写体をはっきりと認識できた。
【0339】
[試験例3]
(赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物の調製)
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物を調製した。
【0340】
顔料分散液10−1・・・46.5質量部
顔料分散液10−2・・・37.1質量部
重合性化合物201・・・1.8質量部
樹脂201・・・1.1質量部
光重合開始剤201・・・0.9質量部
界面活性剤101・・・4.2質量部
重合禁止剤(パラメトキシフェノール)・・・0.001質量部
シランカップリング剤201・・・0.6質量部
PGMEA・・・7.8質量部
【0341】
(顔料分散液10−1)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液10−1を調製した。
・赤色顔料(C.I.ピグメントレッド254)及び黄色顔料(C.I.ピグメントイエロー139)からなる混合顔料・・・11.8質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製)・・・9.1質量部
・PGMEA ・・・79.1質量部
【0342】
(顔料分散液10−2)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液10−2を調製した。
・青色顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)及び紫色顔料(C.I.ピグメントバイオレット23)からなる混合顔料・・・12.6質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製)・・・2.0質量部
・樹脂202・・・3.3質量部
・シクロヘキサノン ・・・31.2質量部
・PGMEA ・・・50.9部
【0343】
重合性化合物201:下記構造(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【化91】
【0344】
樹脂201:下記構造の樹脂(酸価=70mgKOH/g、Mw=11000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化92】
樹脂202:下記構造の樹脂(Mw=14,000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化93】
光重合開始剤201:下記構造の化合物
【化94】
シランカップリング剤201:下記構造の化合物
【0345】
(パターン形成)
実施例112の硬化性組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した後に、更にホットプレートで200℃で5分間加熱した。次いでドライエッチング法により2μmのベイヤーパターン(近赤外線カットフィルタ)を形成した。
次に、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2で2μmのドットパターンをマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した後に、ホットプレートで、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物の硬化膜をパターニングした。同様にGreen組成物の硬化膜、Blue組成物の硬化膜を順次パターニングし、赤・青・緑の着色パターンを形成した。
次に、上記パターン形成した膜上に、組成201の赤外線透過フィルタ形成用硬化性組成物を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2で2μmのベイヤーパターンをマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した後に、ホットプレートで、200℃で5分間加熱し、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターンの抜け部分に、赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子を、低照度の環境下(0.001Lux)にて、赤外発光ダイオード(赤外LED)光源から発光波長850nmの光を照射し、画像の取り込みを行ったところ被写体をはっきりと認識できた。
【0346】
<セシウム酸化タングステン含有組成物の調製>
YMS−01A−2(住友金属鉱山株式会社製:セシウム酸化タングステン粒子分散液)の49.84質量部と、下記樹脂301(固形分40%PGMEA溶液)の39.5質量部と、KAYARAD DPHA(日本化薬製)6.80質量部と、IRGACURE 369(BASF製)の2.18質量部と、PGMEA1.68質量部を混合、撹拌してセシウム酸化タングステン含有組成物を調製した。
樹脂301:下記構造の樹脂(酸価=70mgKOH/g、Mw=11000、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。)
【化95】
【0347】
<近赤外線カットフィルタの作製>
実施例101〜132の組成物をガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して塗布層を得た。得られた塗布層を、i線ステッパーあるいはアライナーを用い、500mJ/cm2の露光量にて露光した。次いで、露光後の塗布層に対し、さらにホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ1.0μmの硬化膜を得た。その基板に上述のセシウム酸化タングステン含有組成物をスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して塗布層を得た。得られた塗布層を、i線ステッパーあるいはアライナーを用い、500mJ/cm2の露光量にて露光した。次いで、露光後の塗布層に対し、さらにホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ3.0μmの硬化膜を得た。得られた近赤外線カットフィルタの800〜1300nmの波長領域の透過率は10%以下であった。
【符号の説明】
【0348】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層
図1