(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に延在する測定部材の互いに異なる第1及び第2の位置にそれぞれ設けられた第1及び第2のダイアフラムにより、前記測定部材を前記第1の方向に変位可能に支持し、
前記測定部材を、前記第1の方向に沿って振動させ、
前記測定部材の前記第1及び第2のダイアフラムの間の所定の部分を、前記第1の方向に直交する第2の方向、及び前記第1及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向の各々に沿って振動させ、
前記測定部材の先端に設けられた先端球を測定対象物に向けて移動し、
前記測定部材の前記第1の方向における変位と、前記所定の部分の前記第2及び第3の方向の各々における変位とをもとに、前記先端球と前記測定対象物との接触を検出する
接触検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような三次元座標測定機では、接触式のプローブによる接触の検出感度が、接触対象物との接触方向に依存してばらつくと、形状等の測定精度が低下してしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、接触方向に依存しない安定した接触検出を可能とする三次元座標測定機用プローブヘッド、及び接触検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る三次元座標測定機用プローブヘッドは、測定部材と、第1及び第2のダイアフラムと、第1の加振機構と、第2の加振機構とを具備する。
前記測定部材は、第1の方向に延在する。
前記第1及び第2のダイアフラムは、前記測定部材の互いに異なる第1及び第2の位置にそれぞれ設けられ、前記測定部材を前記第1の方向に変位可能に支持する。
前記第1の加振機構は、前記第1の方向に沿って前記測定部材を振動させる。
前記第2の加振機構は、前記測定部材の前記第1及び第2のダイアフラムの間の所定の部分を、前記第1の方向に直交する第2の方向、及び前記第1及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向の各々に沿って振動させる。
【0008】
この三次元座標測定機用プローブヘッドでは、第1の加振機構により、第1及び第2のダイアフラムに支持された測定部材が、第1の方向に沿って振動される。また第2の加振機構により、第1及び第2のダイアフラムの間の所定の部分が、第2及び第3の方向の各々に沿って振動される。これにより接触方向に依存しない安定した接触検出が可能となる。
【0009】
前記測定部材は、前記測定部材の先端に設けられた先端球を有してもよい。この場合、前記第2の加振機構は、前記第1の方向に直交する平面上で前記先端球が円運動するように、前記測定部材の所定の部分を振動させてもよい。
これにより接触方向に依存しない高精度な接触検出が可能となる。
【0010】
前記所定の部分は、前記第1及び前記第2のダイアフラムの間の中央部分であってもよい。
これにより先端球の動作を精度よく制御することが可能となる。
【0011】
前記第1及び前記第2の加振機構は、非接触で前記測定部材を振動させてもよい。
これにより高い精度で安定して接触を検出することが可能となる。
【0012】
前記第2の加振機構は、前記第2の方向に沿って前記所定の部分を振動させる第1の振動印加部と、前記第3の方向に沿って前記所定の部分を振動させる第2の振動印加部とを有してもよい。
これにより第2及び第3の方向の各々に沿って、測定部材の所定の部分を精度よく振動させることが可能となる。
【0013】
前記第1の加振機構は、第1の周波数で前記測定部材を振動させてもよい。この場合、前記第1及び前記第2の振動印加部は、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数で前記所定の部分を振動させてもよい。
これにより高い精度で安定して接触を検出することが可能となる。
【0014】
前記第1の振動印加部は、正弦波状に前記所定の部分を振動させてもよい。この場合、前記第2の振動印加部は、前記第1の振動印加部による振動に対して位相が90°異なるように、正弦波状に前記所定の部分を振動させてもよい。
これにより容易に振動子の先端球を円運動させることができる。
【0015】
前記三次元座標測定機用プローブヘッドは、さらに、前記測定部材の前記第1の方向における変位を検出する第1の検出機構と、前記所定の部分の前記第2及び第3の方向の各々における変位を検出する第2の検出機構とを具備してもよい。
第1及び第2の検出機構の検出結果をもとに、高い精度で安定して接触を検出することが可能である。また接触方向を検出することも可能である。
【0016】
前記第1及び前記第2の検出機構は、非接触で前記測定部材の変位を検出してもよい。
これにより高い精度で安定して接触を検出することが可能となる。
【0017】
前記第2の検出機構は、前記所定の部分の前記第2の方向における変位を検出する第1の変位センサと、前記所定の部分の前記第3の方向における変位を検出する第2の変位センサとを有してもよい。
これにより第2及び第3の方向における変位を高精度に検出することができる。
【0018】
前記第1の加振機構は、前記測定部材の測定対象物が接触する端部側から反対の端部側に向けて、前記測定部材に力を作用させた状態で、前記測定部材を振動させてもよい。
これにより第1の方向において、測定部材のバランスを保つことが可能となる。
【0019】
本発明の一形態に係る接触検出方法は、第1の方向に延在する測定部材の互いに異なる第1及び第2の位置にそれぞれ設けられた第1及び第2のダイアフラムにより、前記測定部材を前記第1の方向に変位可能に支持することを含む。
前記測定部材が、前記第1の方向に沿って振動される。
前記測定部材の前記第1及び第2のダイアフラムの間の所定の部分が、前記第1の方向に直交する第2の方向、及び前記第1及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向の各々に沿って振動される。
前記測定部材の先端に設けられた先端球が測定対象物に向けて移動される。
前記測定部材の前記第1の方向における変位と、前記所定の部分の前記第2及び第3の方向の各々における変位とをもとに、前記先端球と前記測定対象物との接触が検出される。
この接触検出方法により、接触方向に依存しない安定した接触検出が可能となる。
【0020】
前記接触の検出ステップは、前記測定部材の前記第1の方向における変位と、前記所定の部分の前記第2及び第3の方向の各々における変位とをもとに、前記測定対象物に対する前記先端球の接触方向を検出してもよい。
本接触検出方法により、高精度に接触方向を検出するこができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、接触方向に依存しない安定した接触検出が可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[形状測定装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置の構成例を示す概略図である。形状測定装置500は、三次元座標測定機1及びコンピュータ2を有する。
【0025】
三次元座標測定機1は、定盤10と、Y軸駆動機構11と、Yブリッジ12と、Xキャリッジ13と、Zラム14とを有する。定盤10は、測定対象物Wが載置されるベース面15が、水平面(
図1のXY平面)と平行となるように設置される。Y軸駆動機構11は、定盤10のX方向の一端に、Y方向に延在するように設置される。
【0026】
Yブリッジ12は、門型の構造を有し、Yコラム16と、Yサポータ17と、Xビーム18とを有する。Yコラム16は、Y軸駆動機構11上に垂直方向(Z方向)に延在するように設置される。Yサポータ17は、X方向でYコラム16と対向するように、定盤10上の他端に設置される。Yサポータ17の下端は、エアーベアリング等によりY方向に移動可能に支持される。
【0027】
Xビーム18は、X方向に延在し、Yコラム16及びYサポータ17により両端が支持される。Y軸駆動機構11が駆動すると、Yコラム16、Yサポータ17、及びXビーム18が、Y方向に一体的に移動する。
【0028】
Xキャリッジ13は、Z方向に延在するように、Xビーム18に設置される。Xキャリッジ13は、Xビーム18に備えられたX軸駆動機構(図示省略)により、Xビーム18に対してX方向に移動可能に構成される。
【0029】
Zラム14は、Z方向に延在するように、Xキャリッジ13に設置される。Zラム14は、Xキャリッジ13に備えられたZ軸駆動機構(図示省略)により、Xキャリッジ13に対してZ方向に移動可能に構成される。
【0030】
Zラム14の下端には、プローブヘッド100が装着される。Y軸駆動機構11やその他のX軸及びZ軸の駆動機構がコンピュータ2により制御されることで、XYZの3軸で構成される測定座標区間内で、プローブヘッド100を走査することが可能となる。
【0031】
また三次元座標測定機1には、プローブヘッド100の変位を検出するためにリニアエンコーダ部19が設置される。このリニアエンコーダ部19は、プローブヘッド100が走査される際に、XYZの各方向の変位量や位置のデータを出力する。
【0032】
リニアエンコーダ部19は、X軸リニアエンコーダ19x、Y軸リニアエンコーダ19y、及びZ軸リニアエンコーダ19zを有する。X軸リニアエンコーダ19xは、Xビーム18に配置され、Xキャリッジ13のX方向の変位量を検出する。Y軸リニアエンコーダ19yは、Y軸駆動機構11の近傍に配置され、Yブリッジ12のY方向の変位量を検出する。Z軸リニアエンコーダ19zは、Xキャリッジ13に配置され、Zラム14のZ方向の変位量を検出する。
【0033】
プローブヘッド100には、スタイラス(測定子)36が着脱可能に取り付けられる。スタイラス36の先端には、例えば球状の先端球38が設けられる。測定対象物Wに対する先端球38の接触が検出されることで、コンピュータ2により測定対象物Wの形状が測定される。プローブヘッド100を用いた接触検出方法については、後に詳しく説明する。
【0034】
コンピュータ2は、三次元座標測定機1を駆動制御して必要な測定値を取り込むと共に、測定対象物Wの表面性状を算出するのに必要な演算処理を実行する。コンピュータ2は、コンピュータ本体21、キーボード22、マウス23、モニタ24及びプリンタ25を有する。
【0035】
[プローブヘッド]
図2及び
図3は、本発明の一実施形態に係るプローブヘッド100の構成例を示す概略図である。
図2は、プローブヘッド100の内部の構成例を示す斜視図である。
図3は、プローブヘッド100の中心軸Cを通るXZ平面における断面図である。
【0036】
本実施形態では、Z方向が第1の方向に相当し、X方向が第1の方向に直交する第2の方向に相当する。またY方向が、第1及び第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に相当する。以下便宜的に、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向として説明を行う。
【0037】
プローブヘッド100は、基体30と、測定部材31と、2枚のダイアフラム32と、垂直加振/検出機構33と、水平加振/検出機構34とを有する。基体30は、中空の円筒形状を有し、Z方向に延在するように配置される。基体30の上面が、Zラム14の下端に設けられたプローブアダプタ20に接続される。
【0038】
測定部材31は、一方向に延在する棒状の部材であり、主軸35と、スタイラス36とを含む。測定部材31は、Z方向に沿って延在するように、基体30内の中心軸Cの位置に設けられる。主軸35の上端は、基体30の上面側に設けられるZ加振機構41に接続される。主軸35の下端には、スタイラス36が着脱可能に取り付けられる。
【0039】
図3に示すように、基体30の下面には、貫通孔37が形成されている。スタイラス36は、当該貫通孔37を通って、主軸35の下端に接続される。スタイラス36の下端には、先端球38が設けられる。
【0040】
2枚のダイアフラム32は、測定部材31の互いに異なる第1の位置P1及び第2の位置P2にそれぞれ設けられる。本実施形態では、第1のダイアフラム32aが、主軸35の上端側のZ加振機構41との接続部分(第1の位置P1)に設けられる。また第2のダイアフラム32bが、主軸35の下端側のスタイラス36との接続部分(第2の位置P2)に設けられる。
【0041】
図3に示すように、本実施形態では、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bの間の距離(第1及び第2の位置P1及びP2間の距離)は、主軸35の長さと略等しくなる。またスタイラス36の長さは、主軸35の略半分の長さに等しい。
【0042】
図4は、ダイアフラム32の構成例を示す概略図であり、Z方向から見た平面図である。ダイアフラム32は、円盤状の薄板からなり弾性材料により形成される。ダイアフラム32の中央には円形状の開口39が形成され、その周囲には所定の形状を有する複数の開口40が形成される。
【0043】
中央の開口39には、接続部材32が挿入される。周囲の開口40は、ダイアフラム32により適正な弾性力が発揮されるように形成される。
図4Aに示すダイアフラム32では、Lの字に近い形状の開口40が3つ形成される。
図4Bに示すダイアフラム32では、中央の開口39と同心円となる位置に複数の開口40が形成される。弾性材料の種類や開口40の形状等は限定されない。
【0044】
図3に示すように、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bは、各周縁部が、基体30の内面に固定される。そして各ダイアフラム32の中央の開口39に、測定部材31が挿入されて取り付けられる。
【0045】
従って第1及び第2のダイアフラム32a及び32bにより、主軸35及びスタイラス36が、Z方向に変位可能に支持される。また第1及び第2のダイアフラム32a及び32bにより、主軸35及びスタイラス36の回転が規制される。
【0046】
本実施形態では、先端球38に付加がかかっていない状態では、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bが凹むことなく、水平方向(XY平面方向)に平行となるように、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bの弾性力等が設定されている。これにより安定した精度の高い接触検出が可能となる。
【0047】
垂直加振/検出機構33は、Z加振機構41と、Z変位検出機構42とを有する。Z加振機構41は、ボイスコイルモータとして構成され、永久磁石43が設けられたヨーク44と、基体30の上面に設けられた電磁コイル45とを有する。
図3に示すように、ヨーク44の下面側が主軸35の上端に接続される。
【0048】
電磁コイル45に電力が供給されると、Z方向に沿ってヨーク44が振動する。これにともなって測定部材31も、Z方向に沿って振動する。すなわちZ加振機構41により、Z方向に沿って測定部材31が振動される。ボイスコイルモータの構成により、非接触で、測定部材31を振動させることが可能である。
【0049】
Z変位検出機構42は、基体30の中心軸Cの位置に設けられ、非接触で、Z方向に沿って振動するヨーク44の変位を検出する。例えばZ変位検出機構42として、静電容量型の変位計が用いられるが、これに限定される訳ではない。
【0050】
Z加振機構41及びZ変位検出機構42は、本実施形態において、第1の加振機構及び第1の検出機構に相当する。Z加振機構41及びZ変位機構42の具体的な構成は限定されず、例えばボイスコイルモータとは別の構成が用いられてもよい。
【0051】
水平加振/検出機構34は、ターゲットキューブ47と、X加振機構48と、X変位検出機構49と、Y加振機構50と、Y変位検出機構51とを有する。ターゲットキューブ47は、略立方体の形状を有し、主軸35の中央部分(第1及び第2のダイアフラム32a及び32bの間の中央部分)に設けられる。
【0052】
ターゲットキューブ47は、6面がXYZの各方向に直交するように設けられる。すなわち上面及び下面はZ方向と直交し、右面及び左面はX方向と直交する。また前面及び後面は、Y方向と直交する。
【0053】
図3に示すようにX加振機構48は、左面に設けられたコイン形状の永久磁石52と、これに対向するように基体30に設けられた電磁コイル53とを有する。電磁コイル53に電力が供給されると、X方向に沿ってターゲットキューブ47が振動する。すなわちX加振機構により、非接触で、主軸35の中央部分をX方向に沿って振動させることができる。
【0054】
X変位検出機構49は、インダクタンス式変位計として構成され、右面に設けられたフェライトコア54と、これに対向するように基体30に設けられたインダクタンスコイル55とを有する。X変位検出機構49により、非接触で、X方向におけるターゲットキューブ47の変位(主軸35の中央部分の変位)を検出することができる。
【0055】
Y加振機構49及びY変位検出機構50は、X加振機構48及びX変位検出機構49と略等しい構成を有し、Y方向で対向して配置される。Y加振機構49により、非接触で、ターゲットキューブ47がY方向に沿って振動される。またY変位検出機構50により、非接触で、Y方向におけるターゲットキューブ47の変位が検出される。
【0056】
X加振機構48及びX変位検出機構49は、本実施形態において、第1の振動印加部及び第1の変位センサに相当する。Y加振機構50及びY変位検出機構51は、本実施形態において、第2の振動印加部及び第2の変位センサに相当する。
【0057】
またX加振機構48及びY加振機構50により、本実施形態に係る第2の加振機構が構成される。X変位検出機構49及びY変位検出機構51により、本実施形態に係る第2の検出機構が構成される。X加振機構48、X変位機構49、Y加振機構50、及びY変位検出機構51の具体的な構成は限定されず、任意に設計されてよい。
【0058】
図5は、X加振機構48を駆動させた場合の動作を示す概略図である。X加振機構48により、X方向に沿って、ターゲットキューブ47に力が作用される。主軸35の第1のダイアフラム32aが設けられる第1の位置P1と、第2のダイアフラム32bが設けられる第2の位置P2とを支点として、主軸35が弓なりに弾性変形する。
【0059】
例えば、電磁コイル53と永久磁石52との間に磁気吸引力を発生させると、ターゲットキューブ47がX方向に沿って右側(X軸のプラス側)に変位する。これに応じて主軸35が弾性変形し、スタイラス36の先端球38がX方向に沿って左側(マイナス側)に変位する。
【0060】
電磁コイル53と永久磁石52との間に磁気斥力を発生させると、ターゲットキューブ47がX方向に沿って左側(マイナス側)に変位する。これに応じてスタイラス36の先端球38がX方向に沿って右側(プラス側)に変位する。
【0061】
このようにX加振機構48を駆動させてターゲットキューブ47を変位させると、その変位の向きと反対側に先端球38が変位する。先端球38の変位量は、ターゲットキューブ47の変位量に対応する。従って電磁コイル53に供給する電力を制御することで、先端球38の変位量を制御することができる。
【0062】
図5に示すように、本実施形態では、支点となる第1及び第2の位置P1及びP2の間の中央部分にターゲットキューブ47が設けられる。換言すれば、変位させる中央部分に対して、Z方向にて対称となる位置に、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bが設けられる。
【0063】
これによりX加振機構48による加振力を制御することで、ターゲットキューブ47の変位を精度よく制御することが可能となる。この結果、先端球38の変位も高精度に制御可能となる。
【0064】
またスタイラス36の長さが主軸35の略半分の長さであるので、ターゲットキューブ47と先端球38との間の略中央に、第2のダイアフラム32bが位置する。従って第2の位置P2を支点として、ターゲットキューブ47の変位と先端球38の変位とが十分に対応する。この点から見ても、先端球38の変位を高精度に制御することが可能である。
【0065】
Y加振機構50によるターゲットキューブ47の加振についても、同様である。磁気吸引力を発生させると、ターゲットキューブ47がY方向に沿って、前方側(Y軸のマイナス側)に変位する。これに応じて先端球38がY方向に沿って後方側(プラス側)に変位する。磁気斥力を発生させると、ターゲットキューブ47がY方向に沿って後方側(プラス側)に変位する。これに応じて先端球38がY方向に沿って前方側(マイナス側)に変位する。
【0066】
図6は、X加振機構48及びY加振機構50によるターゲットキューブ47の加振例を示す模式図である。
図6に示すように、X加振機構48により、X方向に沿って、ターゲットキューブ47を正弦波状に振動させる。その振動と同じ周波数で、位相が90°異なるように、Y加振機構50によりターゲットキューブ47を、Y方向に沿って正弦波状に振動させる。これによりターゲットキューブ47は、XY平面上で中心軸Cを中心として円運動する。これに応じて先端球38もXY平面上で中心軸Cを中心として円運動する。
【0067】
なおターゲットキューブ47(先端球38)の円運動は、X加振機構48の電磁コイル53、及びY加振機構50の電磁コイルの各々に、互いに90°位相が異なるように正弦波状の電圧を印加することで、簡単に実現可能である。
【0068】
本実施形態では、Z加振機構41により、Z方向に沿って、所定の周波数fz[Hz]及び振幅Az[μm]にて、先端球38が正弦波状に振動される。またX加振機構48及びY加振機構50により、互いに同じ周波数fxy[Hz]及び振幅Axy[μm]にて、円運動するように先端球38が振動される。
【0069】
周波数fz[Hz]及び振幅Az[μm]は、例えば1000[Hz]〜750[Hz]及び1.5[μm]〜3[μm]の範囲内で定められる。また周波数fxy[Hz]及び振幅Axy[μm]は、例えば500[Hz]〜300[Hz]及び3[μm]〜5[μm]の範囲内で定められる。もちろんこの範囲に限定されず、適宜設定されてよい。
【0070】
本実施形態では、周波数fz[Hz]が、周波数fxy[Hz]よりも大きく設定される。すなわちZ方向における加振周波数が、X及びY方向の各々における加振周波数よりも大きく設定される。とくに周波数fz[Hz]を、周波数fxy[Hz]のルート2倍よりも大きい値に設定することで、Z方向における振動と、XY平面内での振動(円運動)とが共振してしまうことを抑えることが可能である。これにより高い精度で安定して接触を検出することが可能となる。その他、各方向における固有振動数等をもとに、各加振周波数が設定されてもよい。
【0071】
なおZ方向に延在する測定部材31を高い周波数で振動させることは容易であるので、周波数fz[Hz]を、周波数fxy[Hz]よりも大きく設定することも容易に可能である。
【0072】
上記したようにZ変位検出機構42により、Z方向に沿ったヨーク44の変位が検出可能である。またX変位検出機構49及びY変位検出機構51により、XY平面上のターゲットキューブ47の変位が検出可能である。これらの変位は、先端球38の変位に相当する。すなわちXYZの各変位検出機構により、各方向における先端球38の変位を検出することが可能である。
【0073】
XYZの各変位検出機構により検出される変位の変化、すなわち振動状態の変化をもとに、測定対象物Wとの接触及びその接触方向が検出される。典型的には接触方向として、先端球38が測定対象物Wに接触する接触ポイントにおける法線方向が検出される。
【0074】
本実施形態では、XYZの各方向における、先端球38の変位の振幅の減少量Δx、Δy及びΔzが算出される。振幅の減少量Δx、Δy及びΔzは、各方向における接触による先端球38の変位の大きさ、すなわち測定対象物Wによる先端球38の押し込み量に相当する。また後に説明するように、各方向において、測定対象物Wがどちらの向きから先端球38に接触しているか、すなわち接触の向きが算出される。
【0075】
算出された減少量Δx、Δy及びΔzと、接触の向きとをもとに、各方向での接触による先端球38の変位を表す、接触変位ベクトルX、Y、及びZが生成される。振幅の減少量Δx、Δy及びΔzが大きくなるほど、接触変位ベクトルX、Y、及びZが大きくなる。
【0076】
各方向での接触変位ベクトルX、Y、及びZを合成することで、XYZ空間での接触による先端球38の変位を表す、接触変位ベクトルXYZが生成される。接触変位ベクトルXYZの大きさ、方向、及び向き大きさをもとに、接触による先端球38の変位の大きさ(押し込み量)、接触方向、及び接触の向きが算出される。
【0077】
なお押し込み量は、Δx、Δy及びΔzの二乗和平方根(Δx
2+Δy
2+Δz
2)
1/2により算出される。例えばコンピュータ2により、Δx、Δy及びΔzの二乗和平方根(Δx
2+Δy
2+Δz
2)
1/2が所定の閾値よりも大きくなった場合に、接触があると判定される。すなわち測定対象物Wとの接触が検出される。当該閾値は限定されず適宜設定されてよい。
【0078】
以下、具体例を挙げて、押し込み量、接触方向、及び接触の向きの算出について説明する。
図7は、先端球38がZ方向に沿って測定対象物Wに接触する場合を示す模式図である。
図7では、Z方向に沿った振動のみが図示されており、XY平面上の円運動は図示が省略されている。
【0079】
例えば先端球38が測定対象物Wと接触していない非接触状態の場合には、Z方向に沿って正弦波状に振動する先端球38の変位が検出される(実線L1)。先端球38が測定対象物Wに接触すると、先端球38のZ方向に沿った変位の振幅Azが小さくなる(破線M1)。上記したようにΔx、Δy及びΔzの二乗和平方根(Δx
2+Δy
2+Δz
2)
1/2が所定の閾値を超えると接触が検出される(
図7に示す例では、Δx=Δy=0である)。
【0080】
なお
図7の破線M1に示すように、測定対象物Wに接触する側の振幅Azの減少量(
図7に示す例では0°から180°までの振幅Azの減少量)は、接触しない側の振幅Azの減少量(180°から360°までの振幅Azの減少量)よりも大きくなる。従ってΔzとしては、減少量が大きい方の値が用いられる。これにより高精度に接触を検出することが可能となる。
【0081】
Z方向においては、先端球38は上方から下方に向けて測定対処物Wに接触する。従って接触変位ベクトルZの向きは、上方向きとなる。またΔx=Δy=0であるので、接触変位ベクトルZ=接触変位ベクトルXYZとなる。従って押し込み量、接触方向、及び接触の向きは、Δzの大きさ、Z方向、及び上方向きとなる。
【0082】
図8は、先端球38がx方向に沿って測定対象物Wに接触する場合を示す模式図である。先端球38が非接触状態である場合には、X及びY方向において、先端球38の正弦波状の振動が検出される(実線L2及びL3)。先端球38が測定対象物Wに接触すると、先端球38のX方向に沿った変位の振幅Axが小さくなる(破線M2)。一方Y方向においては、変位の振幅Ayは減少しない。
【0083】
Δx、Δy及びΔzの二乗和平方根(Δx
2+Δy
2+Δz
2)
1/2が所定の閾値を超えると接触が検出される(Δy=Δz=0である)。なお減少量Δxは、減少量が大きい方の値が用いられる。
【0084】
X方向における接触の向きは、減少量Δxが大きい側の振幅の方向(向き)をもとに算出される。
図8に示す例では、先端球38が中心軸Cから左側(X軸のマイナス側)へ振動する場合の減少量Δxが大きいので、先端球38の左側に測定対象物Wが存在することが検出される。従って接触の向きとして、右向き(X軸のプラス向き)が算出される。
【0085】
図8に示すように、Δy=Δz=0であるので、接触変位ベクトルX=接触変位ベクトルXYZとなる。従って押し込み量、接触方向、及び接触の向きは、Δxの大きさ、X方向、及び右向きとなる。
【0086】
先端球38がY方向に沿って測定対象物Wに接触する場合も、
図8に示す例と同様に、押し込み量、接触方向、及び接触の向きが算出可能である。
【0087】
図9に示すように、XY平面上において、斜め45°の方向で先端球38が測定対象物Wに接触する場合には、X方向に沿った変位の振幅Ax、及びY方向に沿った変位の振幅Ayがともに同じ程度減少する(破線M2及びM3)。
【0088】
Δx、Δy及びΔzの二乗和平方根(Δx
2+Δy
2+Δz
2)
1/2が所定の閾値を超えると接触が検出される(Δx=Δy、Δz=0である)。なお減少量Δx及びΔyは、減少量が大きい方の値が用いられる。
【0089】
図8に示す例の説明と同様にして、X及びY方向において、押し込み量や接触の向きが算出される。そして
図9に示すように、接触変位ベクトルX及びYが設定される。接触変位ベクトルX及びYを合成することで、接触変位ベクトルXYZが生成される。この結果、押し込み量、接触方向、及び接触の向きとして、(Δx
2+Δy
2)
1/2、左斜め45°に沿う方向、及び右手前向きが算出される。
【0090】
XY平面上において、45°とは異なる角度で、先端球38が測定対象物Wに接触するとする。この場合には、接触角度(接触方向)に応じて、X方向に沿った変位の振幅Axの減少量Δxと、Y方向に沿った変位の振幅Ayの減少量Δyとが異なってくる。この場合でも、減少量Δx、及びΔyをもとに、接触変位ベクトルX及びYを設定し、接触変位ベクトルXYZを生成することで、押し込み量、接触方向、及び接触の向きを算出することが可能である。
【0091】
三次元空間における接触による変位の大きさ、接触方向、及び接触の向きを検出する方法は、上記で説明したのみに限定されない。例えば各方向における振幅の大きさや減少量が、所定の閾値と比較されてもよい。また各方向における振幅の大きさの合計、減少量の合計等が用いられてもよい。また各方向における減少量の割合(比率)をもとに、接触方向等が算出されてもよい。その他、任意のアルゴリズムが採用されてよい。
【0092】
ここで、先端球38をZ方向のみに沿って振動させて測定を行う場合を考察する。例えば
図7に示すように、先端球38がZ方向に沿って測定対象物Wに接触する場合には、振動変位の方向と接触の方向が一致しているため、接触は衝突的であり振動振幅は接触ポイントを変位限界とするために、十分な感度で接触を検出することができる。
【0093】
しかしながら
図10に示すように、Z方向に延在するスタイラス36に対して、水平方向から測定対象物Wが接触すると、Z方向に振動する先端球38の振動状態に変化を与える力は、測定対象物Wとの間の摩擦力となる。このため接触による振動状態の変化が摩擦状態の影響を受け易く、接触の検出感度が安定しない。すなわちZ方向のみに振動させる場合には、先端球38と測定対象物Wとの接触に関する感度に方向依存性がでてしまい、接触方向によって測定値に偏りが生じてしまうことが問題となる。
【0094】
また1軸方向のみの加振型の接触検出センサでは、測定空間における、測定対象物Wに対する接触方向を検出することができない。従って測定対象物Wとの接触方向をもとに三次元測定機が自律して走査方向を決定する、3D倣い測定用の接触検出センサとして活用することができなかった。
【0095】
これに対して、本実施形態に係るプローブヘッド100では、Z加振機構41により、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bに支持された測定部材31が、Z方向に沿って振動される。またX加振機構48及びY加振機構50により、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bの間の中央部分に配置されたターゲットキューブ47が、X及びY方向の各々に沿って振動される。
【0096】
これによりXYZの各方向において、測定対象物Wに対して衝突的な接触が行われることになり、接触による振動状態の変化を非常に高い感度で検出することが可能となる。すなわち接触方向に依存しない安定した接触検出が可能となる。
【0097】
図6に示すように、本実施形態では、XY平面上において先端球38が円運動するように、ターゲットキューブ47に振動が加えられる。これにより全方向的に接触の方向依存性を十分に軽減することが可能となる。
【0098】
また先端球38と測定対象物Wとの接触方向、及び接触の向きを高い精度で安定して検出可能であるので、3D倣い測定用のプローブヘッドとして活用することが可能である。
【0099】
また一般的な倣いプローブによる測定では、測定対象面を連続して接触するが、それとは異なり、本プローブヘッド100では、全方向においてタッピングモードによる周期的な接触となる。これにより先端球38と測定対象物Wとの動摩擦係数の変動や、測定対象物Wの表面の粘弾性や吸着力の影響を大幅に軽減することが可能である。すなわちディザー効果を発揮させることが可能となり、非常に高い精度の接触検出を実現することが可能となる。
【0100】
また各方向において非接触で振動を加えるので、振動の印加時のノイズ発生や外乱等により先端球38の振動状態が変化してしまうこと等を十分に抑えることが可能である。すなわち測定対象物Wとの接触による振動状態の変化を高精度に検出することが可能となり、接触の検出感度を向上させることができる。
【0101】
さらに、上記した特許文献1に記載のプローブのような構成が用いられる場合には、例えばピエゾアクチュエータ等による加振力が、スタイラス等の被駆動部材の重心に作用しない。この結果、加振力と重心とのオフセットにより、アクチュエータの駆動変位とスタイラスの先端球の変位との位相差が生じ、高い周波数の印加が出来ず、高精度な測定が困難になる。
【0102】
またアクチュエータの加振による変位の線上に変位計が無く、振動振幅及び接触による振幅の減少量を変位として検出することが出来ず、高精度な3軸の倣い測定に展開することが困難である。さらに、アクチュエータがそのままスタイラスの支持機構を兼ねるため、アクチュエータの加振に伴う発熱が伸びや変形をもたらし、高精度な測定が困難となる。
【0103】
これに対して本プローブヘッド100は、主軸35の上端にZ加振機構41が設けられる。また支点となる第1及び第2の位置P1及びP2の間の中央部分にターゲットキューブ47が設けられる。この結果、先端球38の変位を高精度に制御可能となる。また上記したように高精度な3軸の倣い測定に展開することも容易である。さらに各加振機構の加振による発熱を原因として変形等もなく、高精度の測定が実現可能である。
【0104】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0105】
Z加振機構41により、Z方向において測定部材31のバランスが保たれてもよい。例えば比重の大きな材質によるスタイラスや長いスタイラスの使用により、測定部材31の重量が大きくなる場合がある。このような場合に、Z加振機構41の電磁力により、上方に向けて測定部材31に力が作用されてもよい。そしてその状態で、測定部材31がZ方向に沿って振動されてもよい。
【0106】
例えば標準的なスタイラスの使用での加振のための周期的な交番電圧の中央値の電圧に対して、増加重量分に見合ったバイアス電圧を掛けることで、バランスを取ることが可能である。
【0107】
Z加振機構41によりバランス機能を発揮させることで、第1及び第2のダイアフラム32a及び32bに過大なたわみが発生してしまうことを防止することが可能となる。またバランスウエイト等が不要となり、部品コストの削減や装置の小型化を図ることができる。なお上方側への向きは、先端球38側から反対の上端側への向きに相当する。
【0108】
上記では、XYZの各方向において、先端球38が正弦波状に振動された。またXY平面上において、先端球38が円運動するように振動が加えられた。各方向において先端球をどのように振動させるかは限定されず、適宜設定されてよい。例えばXYZの各方向において、互いに独立した振動が印加されてもよい。正弦波状の振動や円運動等が行われない場合でも、接触方向に依存しない安定した接触検出が実現される。
【0109】
倣い測定が行われる場合には、倣いの方向に応じて、先端球38のZ軸周りの円運動の方向(右回り又は左回り)が任意に選択可能であってもよい。またその選択が、接触方向等をもとに自動的に実行されてもよい。これにより摩擦係数の軽減のみならず、先端球38の摩耗を軽減させることができる。
【0110】
例えば
図8に示す接触状態のままY軸のプラス側にプローブヘッド100が進む場合には、先端球38が左回りに回転される。すなわちプローブヘッド100の進行方向とは反対方向から先端球38が接触するように回転方向が設定される。これにより測定対象物Wと先端球38との接触時間を短縮することが可能となり、摩耗の軽減を図ることができる。もちろんこれに限定される訳ではない。
【0111】
上記で説明したプローブヘッドが適用される三次元座標測定機の種類は限定されない。CNC(Computer Numerical Control)三次元座標測定機やタッチ信号プローブを搭載可能なマシニングセンタ等、種々の三次元座標測定が可能な機器に本発明に係るプローブヘッドは適用可能である。
【0112】
また本技術に係るプローブヘッドを、加振型の3D接触検出センサとして、任意の装置に適用することも可能である。また
図1に示すコンピュータの機能の一部または全部が、プローブヘッドに備えられてもよい。
【0113】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせること
も可能である。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるもの
ではなく、また他の効果が発揮されてもよい。