(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歪半導体層の前記第2の領域のある部分から前記歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させるステップが、前記歪半導体層の前記第2の領域で歪みを緩和するサブステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記歪半導体層の前記第2の領域のある部分から前記歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させるステップが、前記歪半導体層の前記第2の領域で凝縮工程を行うサブステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0026]本明細書に提示する説明図は、いずれかの特定の半導体構造、デバイス、システム、又は方法の実際の図であることを意図されておらず、開示の諸実施形態を説明するために使用される理想的な図であるにすぎない。
【0011】
[0027]本明細書において使用されるいかなる項目も、添付の特許請求の範囲及び法的同等物によって定義される本発明の諸実施形態の範囲を限定すると考えられるべきではない。いかなる特定の項目に記載される概念も、一般的に、明細書全体を通して他の項に適用可能である。
【0012】
[0028]説明及び特許請求の範囲における第1及び第2という用語は、同様の要素を区別するために使用される。
【0013】
[0029]本明細書で使用される場合、「フィン」及び「フィン構造」という用語は、長さ、幅、及び高さを有する半導体材料の、細長い、三次元の有限及び有界体積を意味し、ここではその長さはその幅よりも大きい。フィンの幅及び高さは、いくつかの実施形態ではフィンの長さに従って変動することがある。
【0014】
[0030]半導体構造を製造するために使用されることが可能である方法、及びそのような方法を使用して製造されることが可能である半導体構造について、図を参照して以下に説明する。
【0015】
[0031]
図1を参照すると、ベース基板102と、ベース基板102の表面の上の埋め込み酸化(BOX)層104と、ベース基板102と反対側の面でBOX層104の上の歪半導体層106とを含む多層基板100を設けることができる。歪半導体層106は、歪シリコン層を備えることができ、多層基板100は、絶縁体上歪シリコン(SSOI:strained silicon-on-insulator)基板を備えることができる。
【0016】
[0032]ベース基板102は、たとえば半導体材料(たとえば、シリコン、炭化シリコン、ゲルマニウム、III−V半導体材料など)、セラミック材料(たとえば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、炭化シリコンなど)、又は金属材料(たとえば、モリブデンなど)のダイ若しくはウェハーを備えることができる。いくつかの実施形態では、ベース基板102は、単結晶又は多結晶の微細構造を有することがある。他の実施形態では、ベース基板102は、非晶質であることがある。ベース基板102は、たとえば、約400μm〜約900μmまで(たとえば、約750μm)の範囲の厚さを有することができるが、より厚い又はより薄いベース基板103もまた使用できる。
【0017】
[0033]BOX層104などの、ベース基板102を覆う層は、たとえば、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PLD)、気相エピタキシー(VPE:vapor phase epitaxy)、分子線エピタキシー(MEB:molecularbeam epitaxy)、及び熱酸化などの、いくつかの異なる工程のいずれかを使用してエピタキシャルに基板の上に堆積される、「成長させられる」、又はその他の場合は形成されることがある。さらなる実施形態においてこれらは、知られている工程を使用して別のドナー基板からベース基板102に転写されることがある。
【0018】
[0034]限定ではなく、例として、多層基板100は、スマートカット(SMART−CUT)(登録商標)工程のような、当技術分野で知られている工程を使用して形成されてもよく、スマートカット(登録商標)では、半導体材料の層が、ドナー構造から受取基板(すなわち、ベース基板)に転写されて、受取基板と転写された層の半導体層との間に酸化層(すなわち、BOX層104)が配置されるようにする。スマートカット(登録商標)工程については、たとえば、Bruelへの米国特許第RE39,484号(2007年2月6日発行)、Aspar他への米国特許第6,303,468号(2001年10月16日発行)、Aspar他への米国特許第6,335,258号(2002年1月1日発行)、Moriceau他への米国特許第6,756,286号(2004年6月29日発行)、Aspar他への米国特許第6,809,044号(2004年10月26日発行)、及びAspar他への米国特許第6,946,365号(2005年9月20日)に記載されている。
【0019】
[0035]BOX層104は、たとえば、酸化物(たとえば、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなど)、窒化物(たとえば、窒化シリコン)、酸窒化物(たとえば、酸窒化シリコン)、又はこのような誘電材料の組み合わせを備えることができる。BOX層104は、結晶質又は非晶質であってもよい。BOX層104は、たとえば、約10nmと約200nmとの間の平均層厚を有することができるが、より厚い又はより薄いBOX層104が本開示の諸実施形態に使用されることも可能である。
【0020】
[0036]歪半導体層106は、引張歪シリコン(Si)の層などの、歪(圧縮又は引張)結晶質半導体材料を備えることができる。他の実施形態では、歪半導体層106は、歪ゲルマニウム(Ge)、歪シリコンゲルマニウム(SiGe)、又は歪III−V半導体材料を備えることができる。したがって、歪半導体材料106は、通常、平衡状態で自立したバルク形態の、それぞれの半導体材料の結晶構造によって示される、緩和された格子パラメータを上回る(引張歪)か、下回る(圧縮歪)かのいずれかである格子パラメータを示す結晶構造を有することができる。歪半導体層106は、約50nm以下の、又はさらには約10nm以下の平均層厚を有することができる。歪半導体層106は、歪半導体層106の臨界厚さを下回る平均層厚を有することができる。歪半導体層106が、ドナー基板からベース基板102に転写される歪シリコン層を備え、歪半導体層106を、層転写工程の前にドナー基板上のSiGeバッファ層でエピタキシャル成長させる諸実施形態では、歪シリコン層の臨界厚さは、ゲルマニウム濃度が増えると臨界厚さが減少し、SiGeバッファ層におけるゲルマニウム濃度の関数とすることができる。歪半導体材料106のより厚い層もまた、本開示の諸実施形態に使用されることがある。歪半導体層106は、ベース基板102への転写後に、たとえば、Thean他、「Uniaxial−Biaxial Stress Hybridization for Super−Critical Strained−Si Directly On Insulator(SC−SSOI) PMOS With Different Channel Orientations(異なるチャネル方向を有する絶縁体上臨界超過歪Si(SC−SSOI)PMOSのための1軸−2軸応力混成)」、IEEEインターナショナル(電子デバイス会議、ワシントンDC 2005)、509〜512頁に開示されるように、エピタキシー堆積技法を使用して歪緩和を弱めることなく、その臨界厚さよりも大きい厚さまで厚くされてもよい。
【0021】
[0037]非限定的な具体例として、ドナー基板100のベース基板102は、単結晶シリコン基板を備えることができ、BOX層104は、二酸化シリコン(SiO
2)を備えることができ、歪半導体層106は、その結晶構造における局在欠陥の緩和及び形成の開始を回避するために、そのそれぞれの臨界厚さを下回る厚さを有する引張歪単結晶シリコン(sSi)を備えることができる。
【0022】
[0038]いくつかの実施形態では、酸化層108が、自然酸化層(native oxide layer)又は堆積された酸化物(depositedoxide)であってもよく、BOX層104と反対側の歪半導体層106の主表面の上に存在してもよい。他の実施形態では、酸化層108はないことがある。
【0023】
[0039]
図2を参照すると、歪半導体層106の上に、パターニングされたマスク層110が設けられてもよい。パターニングされたマスク層110は、歪半導体層106の1つ又は複数の領域を覆ってもよく、歪半導体層106の他の領域は、パターニングされたマスク層110によって覆われていなくてもよい。非限定的な例として、
図2は、パターニングされたマスク層110によって覆われている歪半導体層の第1の領域106Aと、パターニングされたマスク層110によって覆われていない歪半導体層の第2の領域106Bとを示す。
【0024】
[0040]パターニングされたマスク層110は、酸化層、窒化層、酸窒化層の1つ又は複数などの、ハードマスク層材料を備えることができる。パターニングされたマスク層110は、多層基板100の上にハードマスク材料の連続した層を堆積し、又は他の場合は設け、その後、歪半導体層106の領域の覆いを取るためにハードマスク材料の部分を取り除くことが望まれる場所でハードマスク材料を貫通する開口部を形成するように、フォトリソグラフィによるマスキング及びエッチング工程を使用してハードマスク材料をパターニングすることによって形成されてもよい。他の実施形態では、パターニングされたマスク層110は、フォトレジストマスキング材料を備えることができる。
【0025】
[0041]続けて
図2を参照すると、パターニングされたマスク層110を形成した後に、歪半導体層の第1の領域106Aなどの、パターニングされたマスク層110によって覆われている歪半導体層の1つ又は複数の領域にイオンを注入することなく、歪半導体層の第2の領域106Bなどの、パターニングされたマスク層110によって覆われていない歪半導体層106の1つ又は複数の領域に(方向矢印によって示すように)、イオンが注入されてもよい。イオンは、マスク層110の開口部を通過して、歪半導体層の第1の領域106Aに達することができるが、マスク層110は、歪半導体層の第2の領域106Bを遮蔽して、イオンがそこに注入されないようにする。
【0026】
[0042]いくつかの実施形態では、酸化層108は、存在する場合、歪半導体層106の表面が露出されるように、歪半導体層106の上から取り除かれてもよい。しかしながら他の実施形態では、イオンは、酸化層108を通して歪半導体層106に注入されてもよい。
【0027】
[0043]イオンの注入は、歪半導体層106の結晶質半導体材料の部分を非晶質材料に変質させることができる。したがって、イオンが注入される半導体層106の1つ又は複数の領域は、
図3の拡大図に示すように、非晶質領域112と、下層の結晶質領域114とを有することができる。
【0028】
[0044]注入されるイオンは、半導体層106の結晶構造にある少なくとも1つの元素とは異なる元素のイオンであってもよい。たとえば、歪半導体層が歪シリコン(sSi)を含む諸実施形態では、注入されるイオンは、たとえば、シリコンとは異なるゲルマニウムイオンを含むことができる。この理由は、注入されるイオンは、半導体層106の他の元素と比べて異なる原子半径を有し、使用されるとその後、以下にさらに詳細に説明するように、その後の処理において半導体層106の歪状態を変えるからである。
【0029】
[0045]以下の表1は、40〜50KeVのイオン注入エネルギーで行われるゲルマニウムイオン注入工程の5つ(5)の異なるドーズ量のそれぞれに対して、半導体層106の層厚みにおける引張歪シリコン半導体層106中のゲルマニウム濃度及びゲルマニウム含有量の例を提供する。
【表1】
【0030】
[0046]
図4を参照すると、(
図3に示すように)1つ又は複数の領域が非晶質領域112及び下層の結晶質領域114を含むように、歪半導体層106の1つ又は複数の領域にイオンを注入した後、半導体層106の非晶質領域112を再結晶させることができる。たとえば、
図4に示すように、非晶質領域112を再結晶させ、再結晶領域120を形成するために、高温の炉で行われる焼鈍工程を使用することができる。再結晶させると、再結晶領域120は、最初に形成された半導体層106に存在する少なくとも1つの元素(たとえば、シリコン)と比べて異なる原子半径を有する注入されたイオン(たとえば、ゲルマニウムイオン)の存在により、歪半導体層の第1の領域106A(
図2)の歪状態とは異なる歪状態となることができる。
【0031】
[0047]したがって、最初に形成された歪半導体層106が引張歪シリコンを含み、注入されたイオンがゲルマニウムイオンを含む実施形態では、再結晶領域120は、Si
yGe
1−yを含むことができる。ここでyは、約0.01〜約0.50、又はいくつかの実施形態では約0.10〜約0.20である。
【0032】
[0048]再結晶工程の間、半導体層106の非晶質領域112の再結晶は、半導体層106の下層の結晶質領域114が種結晶となる(seeded)ことができる。半導体層106の下層の結晶質領域114はシリコンを含むことができ、再結晶領域120はSi
yGe
1−yを含むことができるので、Si
yGe
1−yの再結晶領域114は、下層のSiの上にでき、Si
yGe
1−yの結晶格子は、下層のSiによって拘束される可能性があり、Si
yGe
1−yの再結晶領域は、圧縮歪の状態にある(Geの原子半径がSiの原子半径より大きいので、Si
yGe
1−yの格子パラメータがSiの格子パラメータよりも大きい)。
【0033】
[0049]
図5を参照すると、半導体層106の非晶質領域112を再結晶させて、再結晶領域120を形成した後、存在する場合はオプションの酸化層108は、化学エッチング工程、機械研磨工程、又は化学機械研磨(CMP)工程の1つ又は複数を使用して取り除かれることが可能である。
【0034】
[0050]
図6に示すように、いくつかの実施形態では、半導体層の第1の領域106Aにさらなる半導体材料をエピタキシャル成長させることなく、半導体層の第2の領域106Bにさらなる半導体材料124を選択的にエピタキシャル成長させることができる。さらなる半導体材料124は、たとえば、シリコン又はSi
1−yGe
yを含むことができる。
【0035】
[0051]いくつかの実施形態では、一連の図に示すように、非晶質領域112を再結晶させて、再結晶領域120を形成した後に、さらなる半導体材料124の成長を行うことができる。しかしながら他の実施形態では、半導体層の第2の領域106Bにイオンを注入し、非晶質領域112を形成する(
図3)前に、さらなる半導体材料124の成長を行うことができる。
図6に関して論じたようなさらなる半導体材料124の選択的エピタキシャル成長は、
図2を参照して説明したイオン注入工程の前に行われるとき、より多量のイオンの注入を可能にすることもでき、これにより、半導体層の第2の領域106Bにおける注入されるイオンの濃度をより高くすること、並びに
図7を参照して以下に説明するように、より長い熱拡散工程を実行すること、したがって半導体層の第2の領域106Bの歪状態をより大きく変えることを実現できる可能性がある。
【0036】
[0052]半導体層の第2の領域106Bの上に選択的にエピタキシャル成長されるさらなる半導体材料124の厚さは、
図7を参照して以下に説明する拡散及び富化工程の後に、半導体層の第2の領域106Bの厚さが、
図7を参照して説明する拡散及び富化工程にかけられない半導体層の第1の領域106Aの厚さに少なくとも実質的に等しくなることができるように、選択することができる。
【0037】
[0053]
図7を参照すると、半導体層の第2の領域106Bの非晶質領域112を再結晶させて再結晶領域120を形成した後に、半導体層の第2の領域106Bの再結晶領域120のある部分から半導体層の第2の領域106Bの別の部分へ元素が拡散されて、半導体層の第2の領域106Bの別の部分における拡散された元素の濃度を高め、半導体層の第2の領域106Bの歪状態を変えるようにすることができる。
【0038】
[0054]たとえば、凝縮工程(しばしば「熱混合」工程と呼ばれる)又は別のタイプの工程が使用されて、半導体層の第2の領域106Bの一部の中に元素が濃縮され、富化されるように、半導体層の第2の領域106B内で元素を拡散して、半導体層の第1の領域106Aにおける歪のレベルに比べて半導体層の第2の領域106Bにおいて、選択的に、引張歪みを低減させる、圧縮歪みを増大させる、及び/又は歪を緩和することができる。このような実施形態では、元素は、半導体層の第1の領域106A内ではいかなる実質的な方法でも拡散されないことがある。言い換えれば、凝縮工程は、単に半導体層の第2の領域106Bで行われ、半導体層の第1の領域106Aでは行われないことがある。このような凝縮工程について、以下に説明する。
【0039】
[0055]
図7は、
図3〜
図6と同様であって、半導体層の第2の領域106Bに凝縮工程を行った後の多層基板100を示している。凝縮工程は、半導体層の第2の領域106Bを、酸化性雰囲気(たとえば、HCLあり、又はなしのドライO
2)中の高温(たとえば、約900℃と約1500℃の間)の炉における酸化工程にかけることを伴うことができる。酸化工程により、半導体層の第2の領域106Bの表面に酸化層122を形成することができ、半導体層の第2の領域106Bの上方領域内から半導体層の第2の領域106Bの下方領域への元素の拡散を引き起こすことができる。
【0040】
[0056]歪半導体層106が歪シリコン(sSi)を含む諸実施形態では、
図2を参照して説明するように半導体層の第2の領域106Bに注入されるイオンは、ゲルマニウムイオンを含むことができ、ゲルマニウム原子は、凝縮工程中に半導体層の第2の領域106Bにさらに拡散することができる。酸化層122が、半導体層の第2の領域106Bの表面にでき、半導体層の第2の領域106Bで厚みが増すことがある。ゲルマニウム凝縮工程中に酸化層122の厚みが成長するにつれて、Si
yGe
1−y半導体層106の厚みは減少し、Si
yGe
1−y半導体層106が所望のゲルマニウム濃度を有するまで、半導体層106におけるゲルマニウムの濃度は増える。半導体層の第2の領域106B内のゲルマニウムの拡散及び濃縮により、歪半導体層106内の任意の引張歪を減少させることができ、歪半導体層106内の歪の緩和及び/又は圧縮歪の生成に至ることができる。
【0041】
[0057]結果として、半導体層の第1の領域106Aは、第1の歪状態とすることができ、半導体層の第2の領域106Bは、第1の歪状態とは異なる第2の歪状態とすることができる。
【0042】
[0058]拡散及び富化工程(たとえば、凝縮工程)において形成される酸化層122は、その後の処理の前に半導体層の第2の領域106Bの上で取り除かれ形成してもよい。
【0043】
[0059]前述のように、半導体層の第1の領域106Aは、引張歪シリコン層を備えることができる。半導体層の第1の領域106Aにおける引張歪は、半導体層の第1の領域106A内に向上した電子移動度をもたらすことができ、これは、半導体層の第1の領域106Aの部分を備えたチャネル領域を有するn型FETトランジスタを形成するために望ましいものとすることができる。半導体層の第2の領域106Bにおいて行われるイオン注入及び再結晶工程、並びに凝縮工程により、半導体層の第2の領域106B内の正孔移動度を向上させることができ、これは、半導体層の第2の領域106Bの部分を備えたチャネル領域を有するp型FETトランジスタを形成するために望ましいものとすることができる。
【0044】
[0060]
図8に示すように、半導体層106を覆う酸化層108及びマスク層110は取り除かれて、半導体構造130を形成することができる。
図8に示す半導体構造130は、
図1〜
図7を参照して説明したような方法によって形成され、ベース基板102と、ベース基板102の表面の上のBOX層108と、ベース基板102と反対のBOX層104の面に共通の平面でBOX層104の上に配置された半導体層の第1の領域106A及び半導体層の第2の領域106Bとを含む。半導体構造130は、その後処理されて、n型トランジスタとp型トランジスタの両方を含んだ半導体デバイスの製造を完了することができる。n型トランジスタは、半導体層106の第1の領域上に、及び/又は第1の領域中に形成されてもよく、p型トランジスタは、半導体層106の第2の領域上に、及び/又は第2の領域中に形成されてもよい。
【0045】
[0061]
図9は、たとえば、それぞれが半導体層の第1の領域106Aの一部を含んだ第1の複数のフィン構造132Aと、それぞれが半導体層の第2の領域106Bの一部を含んだ第2の複数のフィン構造132Bとの形成について示している。フィン構造132A、132Bのそれぞれは、フィンFET型トランジスタでトランジスタチャネル構造として使用するためにサイズを決められ、構成される。非限定的な例として、フィン構造132A、132Bのそれぞれは、約15nm以下の平均幅を有するように形成されてもよい。
【0046】
[0062]第2の複数のフィン構造132Bのフィン構造132Bは、第1の複数のフィン構造132Aのフィン構造132Aの結晶歪とは異なる結晶歪を有する。第1の複数のフィン構造132Aの各フィン構造132Aは、凝縮されていない歪半導体材料を含む。第2の複数のフィン構造132Bの各フィン構造132Bは、2つ以上の元素(たとえば、シリコン及びゲルマニウム)を含んだ凝縮された歪半導体材料を含む。
【0047】
[0063]第1及び第2の複数のフィン構造132A、132Bを形成した後、第1の複数のフィン構造132Aを含んだ第1の複数のn型フィンFETトランジスタが形成されることが可能であり、第2の複数のフィン構造132Bを含んだ第2の複数のp型フィンFETトランジスタが形成されることが可能である。
【0048】
[0064]さらなる実施形態では、
図10に示すように、
図8の半導体構造130は、その後処理されて、半導体層の第1の領域106A上に及び/又は第1の領域106A中に複数の従来のプレーナn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOS FET)と、半導体層の第2の領域106B上に及び/又は第2の領域106B中に複数の従来のプレーナp型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(PMOS FET)とを形成することができる。たとえば、半導体層106に形成されるトランジスタチャネル領域を電気的に絶縁するために、半導体層106の一部に、又は全体に1つ又は複数の浅溝分離(STI)構造134を形成することができる。従来のSTI処理を使用して、半導体層106におけるトランジスタチャネル構造を定めることができる。このような処理では、マスキング及びエッチング工程を使用して、隣接するトランジスタチャネル構造間に溝を形成することができ、溝内に誘電材料を提供して、トランジスタチャネル構造間にSTI構造134を形成することができる。したがって、半導体層106のSTI構造134を使用して、半導体層106で定められるトランジスタチャネル構造を電気的に絶縁することができる。
図10には1つのSTI構造134しか示していないが、複数のこのようなSTI構造134を使用して、半導体層106でトランジスタチャネル構造を定めることができる。
【0049】
[0065]半導体層106にSTI構造134を形成した後、それぞれが半導体層の第1の領域106Aの一部を含んだ第1の複数のトランジスタチャネル構造が形成されることが可能であり、それぞれが半導体層の第2の領域106Bの一部を含んだ第2の複数のトランジスタチャネル構造が形成されることが可能である。トランジスタチャネル構造は、MOS FET型トランジスタでトランジスタチャネル構造として使用するためにサイズを決められ、構成されてもよい。
【0050】
[0066]半導体層の第1の領域106Aに形成されるNMOS FETトランジスタチャネル構造は、半導体層の第2の領域106Bに形成されるPMOS FETトランジスタチャネル構造の結晶歪とは異なる結晶歪を有する。第1及び第2の複数のトランジスタチャネル構造を形成した後、第1の複数のトランジスタチャネル構造を含んだ第1の複数のNMOS FETトランジスタが形成されることが可能であり、第2の複数のトランジスタチャネル構造を含んだ第2の複数のPMOS FETトランジスタが形成されることが可能である。
【0051】
[0067]さらなる実施形態では、STI構造134を形成する前に、第1の複数のトランジスタチャネル構造を含んだ第1の複数のNMOS FETトランジスタが形成されることが可能であり、第2の複数のトランジスタチャネル構造を含んだ第2の複数のPMOS FETトランジスタが形成されることが可能である。
図11〜
図16は、
図1〜
図9を参照して上述したものと同様のコプレーナn型及びp型フィンFETトランジスタを製造するために使用されることが可能である方法のさらなる実施形態を示している。
【0052】
[0068]
図11は、
図1を参照して本明細書で前述したように、ベース基板102と、埋め込み酸化層104と、歪半導体層106とを含んだ多層基板140を示している。
【0053】
[0069]
図12に示すように、歪半導体層106は、たとえばマスキング及びエッチング工程を使用してパターニングされて、それぞれが歪半導体層106の領域を含んだフィン構造142を形成することが可能である。フィン構造142は、当技術分野で知られているフィンFET製造工程を使用して形成されることが可能であり、スペーサ定義ダブルパターニング(SDDO:Spacer-Defined Double Patterning)工程(当技術分野では「側壁イメージ転写(Side-wall Image Transfer)工程」としても知られる)を含むことができる。フィン構造142は、第2の複数のフィン構造142Bと、第1の複数のフィン構造142Aとを含むことができる。
【0054】
[0070]
図13を参照すると、1つ又は複数のマスキング層が、フィン構造142の上に堆積されることが可能である。マスキング層は、たとえば、不動態化(passivating)酸化層144、窒化層146、及びマスク層148を含むことができる。マスク層148は、たとえば、フォトレジストマスキング材料を含むことができ、これは、第2の複数のフィン構造142Bの上に貫通する開口部を形成するようにパターニングされてもよい。酸化層144及び窒化層146の一方又は両方は、1つ又は複数のエッチング工程を使用して取り除かれてもよく、エッチング工程においてこれらは、マスク層148の開口部から腐食液にさらされるが、マスク層148は、構造の残部を腐食液から保護する。
図13に示すように、いくつかの実施形態では、第2の複数のフィン構造142Bを覆う窒化層146の領域は、エッチング工程を使用して取り除かれてもよいが、酸化層144の少なくとも一部は、第2の複数のフィン構造142Bの上の所定の位置に残されてもよい。しかしながら他の実施形態では、第2の複数のフィン構造142Bを覆う酸化層144の部分は、少なくとも実質的に完全に取り除かれてもよい。マスク層148は、オプションで、その後の処理の前に取り除かれてもよく、又はマスク層148は、
図13に示すように所定の位置に残されてもよい。
【0055】
[0071]
図13に示すように、イオンが、
図2を参照して前述したような工程でマスク層148と窒化層146の一方又は両方の開口部から第2の複数のフィン構造142Bに注入され、
図14に示すように、第2の複数のフィン構造142Bの部分に非晶質領域150を形成してもよい。第2の複数のフィン構造142Bは、
図3を参照して前述したように、実質的に非晶質領域150の下に残っている歪半導体層106の結晶質領域114を含むことができる。
【0056】
[0072]
図15を参照すると、非晶質領域150を形成した後、非晶質領域150は、再結晶されて、再結晶領域154を形成してもよい。再結晶工程は、
図4を参照して前述したように行うことができる。
【0057】
[0073]
図16を参照すると、再結晶領域154(
図15)を形成した後に、
図7を参照して前述したような方法で、拡散及び富化工程(たとえば、凝縮工程)が、第2の複数のフィン構造142Bに行われてもよい。拡散及び富化工程により、第2の複数のフィン構造142Bのそれぞれの上に酸化層156を形成することができる。
【0058】
[0074]オプションでは、
図5及び
図6を参照して前述したように、拡散及び富化工程を行う前に、第2の複数のフィン構造142Bに、さらなる半導体材料のエピタキシャル成長が行われることもある。
【0059】
[0075]したがって、第2の複数のフィン構造142Bは、p型フィンFETトランジスタを形成するためにサイズを決められ、構成されたトランジスタチャネル構造を備えることができ、第1の複数のフィン構造142Aは、n型フィンFETトランジスタを形成するためにサイズを決められ、構成されたトランジスタチャネル構造を備えることができる。
【0060】
[0076]
図11〜
図16を参照して前述したように、第1及び第2の複数のフィン構造142A、142Bを形成した後、第1の複数のフィン構造142Aを含んだ第1の複数のNMOSフィンFETトランジスタが形成されることが可能であり、第2の複数のフィン構造142Bを含んだ第2の複数のPMOSフィンFETトランジスタが形成されることが可能である。
【0061】
[0077]
図17は、(
図9のフィン構造の)本開示の諸実施形態に従って第2の複数のフィン構造142B及び/又は第1の複数のフィン構造142Aを使用して製造することができるフィンFETトランジスタ構成の非限定的な簡略化した例示的実施形態を示す。フィンFETの多くの異なる構成が、当技術分野で知られ、本開示の諸実施形態に従って使用されることが可能であり、
図7に示すフィンFET構造は、単にそのようなフィンFET構造の一例として記載されることに留意すべきである。
【0062】
[0078]
図17に示すように、フィンFETトランジスタ160は、ソース領域162と、ドレイン領域164と、ソース領域162とドレイン領域164との間に広がるチャネルとを含む。チャネルは、第1のフィン構造142A又は第2のフィン構造142Bのいずれかなどのフィンによって定められ、これを含む。いくつかの実施形態では、ソース領域162及びドレイン領域164は、フィン構造142の長手方向の両端部を含む、又はこれらによって定められることがある。導体ゲート166が、ソース領域162とドレイン領域164との間のフィン構造142の少なくとも一部の上に、隣接して広がる。ゲート166は、誘電材料168によってフィン構造142から隔てられてもよい。ゲート166は、多層構造を含むことができ、半導電層及び/又は導電層を含むことができる。導電性シリサイドなどの、金属、金属化合物、又は両方を含む低抵抗層が、ソース領域162及び/又はドレイン領域164の上に堆積されて、電気接点を形成してもよい。
【0063】
[0079]チャネルにおける引張応力/歪が、NMOSフィンFETトランジスタの性能を上げ、閾電圧を低減させることができ、チャネルにおける低減された引張応力/歪(たとえば、より小さい引張応力、引張応力も圧縮応力もない、又は圧縮応力がある)が、PMOSフィンFETトランジスタの性能を上げ、閾電圧を低減させることができることが有利である。いくつかの機能については、高い性能が必要とされるので、歪デバイスが有益であり、他のいくつかの機能については、性能は重要ではないが、高い閾電圧が有益である。本開示の諸実施形態を用いて、製造者は、共通のFETトランジスタ平面の同じデバイスにおいて異なるフィンFETトランジスタ又はMOSFETトランジスタの結晶格子に、様々なレベルの応力及び歪を選択的に組み入れることができる。
【0064】
[0080]本開示のさらなる非限定的な例示的実施形態を以下に記載する。
【0065】
[0081]実施形態1:半導体構造を製造する方法であって、ベース基板と、ベース基板の表面の上の埋め込み酸化層と、ベース基板と反対側の埋め込み酸化層の上の歪半導体層とを含み、歪半導体層が結晶質半導体材料を備える、多層基板を提供するステップと、歪半導体層の第1の領域にイオンを注入することなく歪半導体層の第2の領域にイオンを注入し、歪半導体層の第2の領域が非晶質領域、及び下層の結晶質領域を有するように、歪半導体層の第2の領域における結晶質半導体材料の一部を非晶質材料に変質させるステップと、非晶質領域を再結晶させるステップと、歪半導体層の第2の領域のある部分から歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させて、歪半導体層の第2の領域の別の部分における拡散された元素の濃度を高め、歪半導体層の第2の領域が、歪半導体層の第1の領域の歪状態とは異なる歪状態となるように、歪半導体層の第2の領域の歪状態を変えるステップと、それぞれが半導体層の第1の領域の一部を備える第1の複数のトランジスタチャネル構造、及びそれぞれが半導体層の第2の領域の一部を備える第2の複数のトランジスタチャネル構造を形成するステップとを含む、方法。
【0066】
[0082]実施形態2:歪シリコンを備えるように歪半導体層を選択するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0067】
[0083]実施形態3:引張歪シリコンを備えるように歪半導体層を選択するステップをさらに含む、実施形態2に記載の方法。
【0068】
[0084]実施形態4:歪半導体層の第2の領域にイオンを注入するステップが、歪半導体層の第2の領域にゲルマニウムイオンを注入して、Si
yGe
1−yを形成するサブステップを含み、ここでyは約0.10〜約0.50であり、歪半導体層の第2の領域のある部分から歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させるステップが、歪半導体層の第2の領域の別の部分へゲルマニウムを拡散させるサブステップを含む、実施形態2又は実施形態3に記載の方法。
【0069】
[0085]実施形態5:第1の複数のトランジスタチャネル構造及び第2の複数のトランジスタチャネル構造を形成するステップが、それぞれが半導体層の第1の領域の一部を備える第1の複数のフィン構造と、それぞれが半導体層の第2の領域の一部を備える第2の複数のフィン構造とを形成するサブステップを含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
[0086]実施形態6:第1の複数のフィン構造を備える複数のn型フィンFETトランジスタを形成するステップと、第2の複数のフィン構造を備える複数のp型フィンFETトランジスタを形成するステップとをさらに含む、実施形態5に記載の方法。
【0071】
[0087]実施形態7:約15nm以下の平均幅を有するように第1及び第2の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造を形成するステップをさらに含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
[0088]実施形態8:歪半導体層の第2の領域のある部分から歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させるステップが、歪半導体層の第2の領域で歪みを緩和するサブステップを含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
[0089]実施形態9:歪半導体層の第2の領域で歪みを緩和するステップが、歪半導体層の第2の領域内の正孔移動度を増大させるサブステップを含む、実施形態8に記載の方法。
【0074】
[0090]実施形態10:歪半導体層の第2の領域のある部分から歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させるステップが、歪半導体層の第2の領域で凝縮工程を行うサブステップを含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
[0091]実施形態11:歪半導体層の第2の領域で凝縮工程を行うサブステップが、歪半導体層の第2の領域の一部を酸化させることを含む、実施形態10に記載の方法。
【0076】
[0092]実施形態12:非晶質領域を再結晶させるステップが、下層の結晶質領域を用いて非晶質領域の再結晶の種結晶とするサブステップを含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
[0093]実施形態13:歪半導体層の第2の領域のある部分から歪半導体層の別の部分へ元素を拡散させる前に、半導体層の第1の領域にさらなる半導体材料を成長させることなく、半導体層の第2の領域にさらなる半導体材料をエピタキシャル成長させるステップをさらに含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
[0094]実施形態14:ベース基板と、ベース基板の表面の上の埋め込み酸化層と、ベース基板と反対側の共通の平面で埋め込み酸化層の上に配置された第1の複数のトランジスタチャネル構造及び第2の複数のトランジスタチャネル構造とを備え、第2の複数のトランジスタチャネル構造の各トランジスタチャネル構造が、2つ以上の元素を含んだ凝縮された歪半導体層を備え、第1の複数のトランジスタチャネル構造の各トランジスタチャネル構造が、凝縮されていない歪半導体層を備え、第2の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造が、第1の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造の結晶歪とは異なる結晶歪を有する、半導体構造。
【0079】
[0095]実施形態15:第1の複数のトランジスタチャネル構造の各トランジスタチャネル構造の凝縮されていない歪半導体層が、歪シリコンを備える、実施形態14に記載の半導体構造。
【0080】
[0096]実施形態16:第2の複数のトランジスタチャネル構造の各トランジスタチャネル構造の凝縮された歪半導体層が、Si
xGe
1−xを備え、ここでxは約0.01〜約0.50である、実施形態14又は実施形態15に記載の半導体構造。
【0081】
[0097]実施形態17:第1の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造が、引張歪の状態であり、第1の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造が、緩和されている、又は圧縮歪の状態である、実施形態14〜16のいずれか1つに記載の半導体構造。
【0082】
[0098]実施形態18:第1の複数のトランジスタチャネル構造及び第2の複数のトランジスタチャネル構造のトランジスタチャネル構造が、約15nm以下の平均幅を有する、実施形態14〜17のいずれか1つに記載の半導体構造。
【0083】
[0099]実施形態19:第1の複数のトランジスタチャネル構造及び第2の複数のトランジスタチャネル構造のそれぞれのトランジスタチャネル構造が、フィン構造を備える、実施形態14〜18のいずれか1つに記載の半導体構造。
【0084】
[00100]実施形態20:第1の複数のトランジスタチャネル構造を備える第1の複数のn型フィンFETトランジスタと、第2の複数のトランジスタチャネル構造を備える第2の複数のp型フィンFETトランジスタとをさらに備える、実施形態19に記載の半導体構造。
【0085】
[00101]上述の開示の例示的実施形態は、これらの実施形態は、本発明の単に例であるので、添付の特許請求の範囲及びその法的同等物の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しない。いかなる同等の実施形態も本発明の範囲内であるものとする。実際には、説明した要素の他の有益な組み合わせなど、本開示の様々な変更形態が、本明細書に示し、説明したものに加えて、説明から当業者には明らかになるであろう。言い換えれば、本明細書に記載する1つの例示的実施形態の1つ又は複数の特徴は、本明細書に記載する別の例示的実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わされて、本開示のさらなる実施形態をもたらすことができる。このような変更形態及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。