特許第6613498号(P6613498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613498
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/36 20060101AFI20191125BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A47C3/36
   A47C7/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-137429(P2017-137429)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-5528(P2019-5528A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】596173322
【氏名又は名称】株式会社 中居木工
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】中居 睦博
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 幸夫
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−004673(JP,A)
【文献】 実開昭55−111461(JP,U)
【文献】 特開2000−351589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/20−3/40,7/02−7/35,19/04
A47B 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台の上側に位置して背もたれを有する座板と、前記基台と前記座板とを連結する側方視で略X字状のリンク部材とを備え、前記リンク部材は、一方の第一リンク棒の一端が前記基台の上部に設けられた下側固定ブラケットに回転自在に連結されており、他端が前記座板に設けられた移働ブラケットに前後に移動可能に取り付けられており、他方の第二リンク棒の一端が前記座板に設けられた上側固定ブラケットに回転自在に連結されており、他端が前記基台に設けられた調節ブラケットに設けられた空洞にピンにより係合されており、前記空洞には前記ピンが陥没してピンの位置を保持する位置保持溝が複数設けられている椅子において、
前記上側固定ブラケットは、前記座板の前記背もたれと反対側に位置しており、前記基台は前記下側固定ブラケット側に踏み板部を有し、前記踏み板部の上部には、前記座板が最下位置においても人が前記踏み板部を足で踏める程度の空隙を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記調節ブラケットは、その上面から前記位置保持溝にむけてロックピンが挿通可能なピンホールが設けられており、前記ピンホールは前記ロックピンが挿通された状態において前記位置保持溝に係合したピンの抜けを阻止する位置にもうけられていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記下側固定ブラケットの上端と前記第二リンク棒の下端が接触することで、最下点の位置を決めることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日常的に使用する椅子に関する。対象となる椅子とは、座椅子、ダイニング椅子、ゆったりくつろげる椅子であり高さの調整が楽にできるものである。調節機能に関しては数段に高さ調整であれば十分であり位置の精度よりも、位置の変更を楽にするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子は支点の位置をネジ送りによって正確に高さを変えるものがほとんどであり、操作のスピードが遅い。高さ調整のための機械装置は一見便利そうに感じられるが、日常的に使用すると、潤滑材によるよごれ、故障の修繕などが煩わしいものである。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭53−15544号
【特許文献2】特開平9−19324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術はほとんどが、移動支点をねじ送りやガスシリンダなどの機械によって制御している。しかしながら日常生活で触れるものには、木材の温もりを求めて金属製の機械仕掛けを好まない需要者が少なくない。また省資源・省エネルギーの見地からも、日用品には単純な機構が見直されている。特許文献1と2では、ある程度これらの要求を満たしているものの、高さ調節の操作は未だ複雑であり、構造的にも木材に適したものではない。本願では、できるだけ木材を用いる単純な機構で、しかも確実かつ容易に操作できる椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基台と、前記基台の上側に位置して背もたれを有する座板と、前記基台と前記座板とを連結する側方視で略X字状のリンク部材とを備え、前記リンク部材は、一方の第一リンク棒の一端が前記台座の上部に設けられた下側固定ブラケットに回転自在に連結されており、他端が前記座板に設けられた稼働ブラケットに前後に移動可能に取り付けられており、他方の第二リンク棒の一端が前記座板に設けられた上側固定ブラケットに回転自在に連結されており、他端が前記基台に設けられた調節ブラケットに設けられた空洞にピンにより係合されており、前記空洞には前記ピンが陥没してピンの位置を保持する位置保持溝が複数設けられている椅子において、
前記上側固定ブラケットは、前記座板の前記背もたれと反対側に位置しており、前記基台は前記下側固定ブラケット側に踏み板部を有し、前記踏み板部の上部は、前記座板が最下位置においても人が前記踏み板部を足で踏める程度の空隙を有することを特徴とする椅子である。
【0007】
この構造によって、高さ調節操作は極めて単純かつ容易となった。すなわち、前記座板を持ち上げる際に前記リンク部材の交叉支点に作用する偶力によって座板を上昇させることができる。この時、前記基台に設けられた前記踏み板を踏みながら前記座板を上昇させれば、安定した操作が可能である。しかしながら、使用中に予期しない外力が加わると思いがけない座板昇降のおそれがある。そこで、使用中に前記位置保持溝からピンが抜け出すのを防ぐために、ピンの上側からロックピンを出し入れするようにしてもよい
【0008】
一番低い状態での高さ調整は、前記下側固定ブラケットの上端と前記第二リング棒の下端が接触するようにしてもよい
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、高さの切り替えがきわめて単純な操作で可能となり、交叉リンクの機能を有効に利用することができるようになった。全てを人力で行うので電力を消費せず、かつ木材を最大限に使用できる構造を実現した。家具として長く使用しても、機構部の損耗による金属粉や潤滑剤による汚れを生じることがなく、作動時の不快な騒音などもない。これは、資源とエネルギーを節約しつつ生活の質の向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】 この発明の椅子の座板が2番目の高さの斜視図である。
図2】 この発明の椅子の座板が下降した時の斜視図である。
図3】 実施例1の座板が下降した時の断面図である。
図4】 実施例1の座板が2番目に移行する前の断面図である。
図5】 実施例1の座板が上昇した時の断面図である。
図6】 実施例1の座板が上昇して下降する前の断面図である。
図7】 実施例2の座板が2番目の高さでの裏側の斜視図である。
図8】 実施例3の座板が下降した時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本実施例は、高さが容易に変換できる椅子であり、図1は椅子の2番目の高さの斜視図、図2は高さが一番低い時の斜視図、図3は高さが一番低い時の側面図、図4は高さが2番目の高さに移行する前の側面図である。
【0012】
まず図3ないし図4を用いて本願請求項1に関わるリンク構造について説明する。基台の上に2の下側固定ブラケットが固着している。第一リンク棒の下端は2の下側固定ブラケット内にある11回転軸に枢支されている。第一リンク棒の上端にある14移動軸は、座板6の背もたれ7側に固着している4の移動ブラケットの中にある穴19の中を前後に移動できるようになっている。なお、以下、特に断りがない限り、椅子の背もたれ7がある側を後側、背もたれ7がない側を前側と称する。
【0013】
座板の下側に固着している3の上側固定ブラケットは第二リンク棒の上端で12の回転軸に枢支されている。第一リンク棒と第二リンク棒は13の中心軸で回動自在に動く。第二リンク棒は、その下端に15のピンがあり、このピン15基台1に固着している5の調節ブラケットの中ある位置保持22、25にはまる構造となっている。
【0014】
の調節ブラケットの中に細長い空洞20がありこの空洞20の下側に位置保持溝22、25がある。図面ではこの位置保持溝が片側2個であるが、多く設定しても良い。この溝の数と同じだけの高さ調整が出来る。位置保持溝の後側の面21は空洞20に対して垂直になっている。位置保持溝の前側の傾斜面23空洞20に対して45度になっている。
【0015】
次に、本願実施例の操作方法を説明する。図2おいて踏み板30を足で踏んで座板6の前方を上に上げる。F0の力が座板に発生する。そうすると図3において、5の調節ブラケットの中の空洞20の中にあったピン15は3の上側固定ブラケットが上方向に移動するので空洞20の中を前側方向に動く。さらに座板6を上に上げるとピン15は5の調節ブラケット中にある位置保持溝22の中に陥没する。この時陥没の音がして、座板を上昇するのをやめると椅子は2番目の高さの状態で安定する。
【0016】
椅子の高さを1段高くするために、座板6の前側を上にあげるだけで、面倒な動作をしないで出来ることは、大変便利なことである。この時特別に、何ら高さをロックする必要がないのは本発明の重要な部分である。次の高さを設定するためには同じ動作を繰り返す。足で踏み板30を足で踏んで座板の前方を再度上に上げる。位置保持22の中にあった15のピンは傾斜面23を駆け上がる。そして次の位置保持25に陥没して止まる。椅子の高さは番目の高さとなる。
【0017】
15のピンが位置保持溝22,25に安定的にとどまるためには15のピンの直径が溝の深さLより短い必要がある。15のピンの直径がLより大きいと座板に人が座ったとき15のピンが位置保持溝の後側の面21の壁を超えて後方に下がる可能性があるからである。また15のピンが次の位置保持溝に向かうための位置保持溝の前側の傾斜面23の角度は45度くらいが良い。
【0018】
次に高さを元の位置にもどす方法について説明する。図5のAは高さが一番高い状態である。この状態で背を前側に引く。背にはF1の力が発生する。そうすると、図5のBのように13の回転軸にF2の力が発生し第二リンク棒の先端にあるピン15は溝25から抜け出して調節ブラケットの空洞20の前側の上側の26に衝突する。
【0019】
この時手を離すと、背を前方向に引っ張っていたF1がなくなり椅子の自重でF3が発生する。F3の下向きの力により、第二リンク棒は中心軸13を軸として右回転する。第二リンク棒が右回転することによりピン15は図6Aのように5の調節ブラケットの空洞20の上端27を後側方向に移動する。
【0020】
26の位置にあったピン15がこの時元の位置保持溝25に戻らないのが、本発明の最大の効果である。元の位置25に戻らずに、調節ブラケットの空洞20の上側27を後側方向に動くので椅子は最も低い高さとなる。理由はこのリンク構造で第二リンク棒が13を支点として前側方向に動こうとするからである
【実施例2】
【0021】
次に請求項2の動作について説明する。前記までは椅子の高さが簡単に調整できるが100%安全とは言えない。椅子の高さの解除するためには、椅子の座板を上方向に移動すればできるからである。座った状態で椅子の座板を上にあげることはないのであるが、第3者が故意に椅子の座板を上に移動することがない訳ではない。本発明は、いかなることがあっても高さが変更できないようにしたものである。
【0022】
図7でこれを説明する。調節ブラケット5の上側には穴40,41,42が開いている。この穴にロックピン43を上から差し込む。図面手前はロックピン43を調節ブラケットに刺しこんだ状態である。2番目の高さで椅子は固定している。これを刺しこむとピン15は後方に移動することはできないので高さは完全にロックされ安全である。
【0023】
高さが一番低い状態では、穴40にロックピン43を刺しこんでおき、高さ変更に合わせてロックピン43を穴41または穴42に刺しこむとよい。
【実施例3】
【0024】
一番低い状態での高さ調整は、2の下側固定ブラケットの上端と第二リンク棒の下端を接する状態で使用する。最下点の位置の決定はそれぞれの部材のあたる位置が不明確なのでこの方法が最も安定していると考えられる。
【符号の説明】
【0025】
基台1 下側固定ブラケット2 上側固定ブラケット3 移動ブラケット4 調節ブラケット5 座板6 背もたれ7 中心軸13 ピン15 位置保持溝22,25 踏み板30 ロックピン43
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8