特許第6613887号(P6613887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6613887ゴム組成物、ゴム架橋物およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613887
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム架橋物およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20191125BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20191125BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20191125BHJP
   C08G 61/08 20060101ALI20191125BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20191125BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   C08J3/20 BCEQ
   C08J3/24 ZCEQ
   C08L65/00
   C08G61/08
   C08K3/36
   B60C1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-256769(P2015-256769)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119766(P2017-119766A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角替 靖男
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/133028(WO,A1)
【文献】 特開平11−130908(JP,A)
【文献】 特開2014−210901(JP,A)
【文献】 特表2011−513559(JP,A)
【文献】 特開2013−087272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08L 1/00−101/14
C08G 61/00−61/12
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを含有するゴム組成物を製造する方法であって、
前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する工程を備え
前記環状オレフィン開環重合体(A)のガラス転移温度が、−60℃以下であることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを混練した後、混練により得られた混練物に前記シリカ(B)を加えた状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記シリカ(B)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを混合した後、混合により得られた混合物に前記環状オレフィン開環重合体(A)を加えた状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを同時に配合した状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを混練しながら、前記非イオン性界面活性剤(C)を加えることで、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
架橋剤をさらに配合させる請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られたゴム組成物を架橋するゴム架橋物の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の製造方法により得られたゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物を用いるタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ゴム架橋物およびタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、ゴム組成物としての加工性に優れ、かつ、優れたウエットグリップ性および低発熱性を有するゴム架橋物を与えることのできるゴム組成物の製造方法、ならびに、このようなゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や環境対策などが重視されるにつれて、自動車の低燃費化に対する要求は、ますます厳しくなり、自動車タイヤについても、転動抵抗を小さくすることにより、低燃費化に寄与することが求められている。タイヤの転動抵抗を小さくするには、タイヤ用ゴム材料として、一般に、発熱性の低いゴム架橋物を与えることができるゴム材料の使用が有効である。
【0003】
タイヤ用ゴムとしては、一般的に天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴムなどの共役ジエン系ゴムが用いられる。近年、補強材として使用されるシリカやカーボンブラックと親和性のある変性基を重合体鎖末端に導入した共役ジエン系ゴムを含んでなるゴム組成物を用いることにより、発熱性を低下させることが提案されている。
【0004】
これに対して、特許文献1〜3には、たとえば、シクロペンテンを開環メタセシス重合して得られる環状オレフィン開環重合体は、シリカと親和性のある変性基としてアルコキシシリル基を有するオレフィン性不飽和炭化水素化合物を重合時に加えることで、容易に重合体鎖末端にアルコキシシリル基を導入することができ、これにより、低発熱性に優れたゴム架橋物を与えるタイヤ用ゴム組成物を得る技術が開示されている。これら特許文献1〜3の技術によれば、環状オレフィン開環重合体と、シリカとの親和性を良好なものとできるため、低発熱性に優れたゴム架橋物が得られるものの、その一方で、ゴム組成物としての加工性や、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性が必ずしも十分なものではなく、そのため、加工性やウエットグリップ性のさらなる向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−37362号公報
【特許文献2】国際公開第2011/87072号
【特許文献3】国際公開第2012/43802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ゴム組成物としての加工性に優れ、かつ、優れたウエットグリップ性および低発熱性を有するゴム架橋物を与えることのできるゴム組成物の製造方法、ならびに、このようなゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物およびタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体と、シリカとを含有するゴム組成物を製造する際に、非イオン性界面活性剤の存在下で、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体と、シリカとを混練することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを含有するゴム組成物を製造する方法であって、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する工程を備えることを特徴とするゴム組成物の製造方法が提供される。
【0009】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、第1の態様として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを混練した後、混練により得られた混練物に前記シリカ(B)を加えた状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練するように構成することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法においては、第2の態様として、前記シリカ(B)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを混合した後、混合により得られた混合物に前記環状オレフィン開環重合体(A)を加えた状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練するように構成することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法においては、第3の態様として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)と、前記非イオン性界面活性剤(C)とを同時に配合した状態として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練するように構成することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法においては、第4の態様として、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを混練しながら、前記非イオン性界面活性剤(C)を加えることで、前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練するように構成することができる。
また、本発明のゴム組成物の製造方法において、架橋剤をさらに配合させることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記製造方法により得られたゴム組成物を架橋するゴム架橋物の製造方法、および上記製造方法により得られたゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物を用いるタイヤの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム組成物としての加工性に優れ、かつ、優れたウエットグリップ性および低発熱性を有するゴム架橋物を与えることのできるゴム組成物の製造方法、ならびに、このようなゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物およびタイヤの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム組成物の製造方法は、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを含有するゴム組成物を製造する方法であって、
前記環状オレフィン開環重合体(A)と、前記シリカ(B)とを、前記非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混合する工程を備える。
まず、本発明の製造方法で用いる、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とについて説明する。
【0013】
<重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)>
本発明で用いる重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)(以下、単に「環状オレフィン開環重合体(A)」とする。)は、その主鎖を構成する繰返し単位として環状オレフィンを開環重合してなる繰返し単位を含有してなり、実質的に環状オレフィンを開環重合してなる繰返し単位のみからなることが好ましく、その重合体鎖末端にシリル基を含有するものである。
【0014】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)を形成するための環状オレフィンとしては、特に限定されず、たとえば、モノ環状オレフィン、モノ環状ジエン、モノ環状トリエンや多環の環状オレフィン、多環の環状ジエン、多環の環状トリエンなどが挙げられる。モノ環状オレフィンとしては、置換基を有していてもよいシクロペンテン、置換基を有していてもよいシクロオクテンが例示され、シクロペンテンが好ましい。モノ環状ジエンとしては、置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンが例示される。モノ環状トリエンとしては、置換基を有していてもよい1,5,9−シクロドデカトリエンが例示される。また、多環の環状オレフィン、多環の環状ジエン、および多環の環状トリエンとしては、2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの置換基を有していてもよいノルボルネン化合物が例示される。本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)としては、その主鎖を構成する繰返し単位としてモノ環状オレフィン由来の構造単位を有するものが好ましく、環状オレフィン開環重合体(A)中の全繰返し構造単位に対して、モノ環状オレフィン由来の構造単位の含有割合を50モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上とする。また、モノ環状オレフィン由来の構造単位のなかでも、シクロペンテン由来の構造単位が好ましい。モノ環状オレフィン由来の構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、環状オレフィン開環重合体のガラス転移温度を低くすることができ、これにより、低温でのゴム特性を良好なものとすることができる。
【0015】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)は、重合体鎖末端にシリル基を有するものである。シリル基は、ケイ素原子を有する基であり、シリル基としては、たとえば、下記一般式(1)で表される基を有するものが好適に挙げられる。
【化1】
(上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子、またはヘテロ原子が介在していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。aは1〜3の整数である。)
【0016】
上記一般式(1)において、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アシル基、アルキルシリル基、アリールシリル基が例示される。これらの中でも、シリカ(B)との親和性が高いという観点より、炭素数が1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0017】
また、上記一般式(1)において、aは1〜3の整数であるが、aが2または3であることが好ましく、生産性の観点より、aが3であることがより好ましい。
【0018】
このようなシリル基としては、アルコキシシリル基、アリーロキシシリル基、アシロキシシリル基、アルキルシロキシシリル基、アリールシロキシシリル基、ヒドロキシシリル基が例示される。これらの中でも、シリカ(B)との親和性が高く、低発熱性の向上効果が高いという点より、アルコキシシリル基が好ましい。
【0019】
アルコキシシリル基は、1つ以上のアルコキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリメトキシシリル基、(ジメトキシ)(メチル)シリル基、(メトキシ)(ジメチル)シリル基、トリエトキシシリル基、(ジエトキシ)(メチル)シリル基、(エトキシ)(ジメチル)シリル基、(ジメトキシ)(エトキシ)シリル基、(メトキシ)(ジエトキシ)シリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基などが挙げられる。
【0020】
アリーロキシシリル基は、1つ以上のアリーロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリフェノキシシリル基、(ジフェノキシ)(メチル)シリル基、(フェノキシ)(ジメチル)シリル基、(ジフェノキシ)(エトキシ)シリル基、(フェノキシ)(ジエトキシ)シリル基などが挙げられる。なお、これらのうち、(ジフェノキシ)(エトキシ)シリル基、(フェノキシ)(ジエトキシ)シリル基は、アリーロキシ基に加え、アルコキシ基をも有するため、アルコキシシリル基にも分類されることとなる。
【0021】
アシロキシシリル基は、1つ以上のアシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリアシロキシシリル基、(ジアシロキシ)(メチル)シリル基、(アシロキシ)(ジメチル)シリル基などが挙げられる。
【0022】
アルキルシロキシシリル基は、1つ以上のアルキルシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリス(トリメチルシロキシ)シリル基、トリメチルシロキシ(ジメチル)シリル基、トリエチルシロキシ(ジエチル)シリル基、トリス(ジメチルシロキシ)シリル基などが挙げられる。
【0023】
アリールシロキシシリル基は、1つ以上のアリールシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリス(トリフェニルシロキシ)シリル基、トリフェニルシロキシ(ジメチル)シリル基、トリス(ジフェニルシロキシ)シリル基などが挙げられる。
【0024】
ヒドロキシシリル基は、1つ以上のヒドロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、具体例としては、トリヒドロキシシリル基、(ジヒドロキシ)(メチル)シリル基、(ヒドロキシ)(ジメチル)シリル基、(ジヒドロキシ)(エトキシ)シリル基、(ヒドロキシ)(ジエトキシ)シリル基などが挙げられる。なお、これらのうち、(ジヒドロキシ)(エトキシ)シリル基、(ヒドロキシ)(ジエトキシ)シリル基は、ヒドロキシ基に加え、アルコキシ基をも有するため、アルコキシシリル基にも分類されることとなる。
【0025】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)の重合体鎖末端における、シリル基の導入割合は、特に限定されないが、シリル基が導入された環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端数/環状オレフィン開環重合体の重合体鎖数の百分率の値として、20%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上である。シリル基の導入割合が高いほど、シリカ(B)との親和性が高く、これにより、得られるゴム架橋物の低発熱性の向上効果が高くなるため、好ましい。なお、重合体鎖末端へのシリル基の導入割合を測定する方法としては、特に限定されないが、たとえば、H−NMRスペクトル測定により求められるシリル基に対応するピーク面積比と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィから求められる数平均分子量とから求めることができる。
【0026】
また、本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜80万であり、より好ましくは15万〜75万であり、さらに好ましくは20万〜70万である。環状オレフィン開環重合体(A)がこのような分子量を有することにより、得られるゴム架橋物の機械強度を適切なものとすることができる。
【0027】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、通常5.0以下であり、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.0以下である。このようなMw/Mnを有することにより、得られるゴム架橋物の機械強度を適切なものとすることができる。
【0028】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)を構成する繰返し単位中に存在する二重結合において、そのシス/トランス比は、特に限定されないが、通常10/90〜90/10の範囲で設定されるが、低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができる環状オレフィン開環重合体を得る観点からは、30/70〜90/10の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)は、ゴム弾性を良好に示すという観点より、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは−40℃以下であり、より好ましくは−60℃以下、さらに好ましくは−90℃以下である。一方、ガラス転移温度(Tg)の下限は、特に限定されないが、好ましくは−120℃以上である。
【0030】
本発明で用いる環状オレフィン開環重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、たとえば、オレフィン性不飽和結合基を有する、シリル基を有する化合物であるシリル基含有オレフィン化合物の存在下で、環状オレフィンを開環重合させる方法が挙げられる。シリル基含有オレフィン化合物の存在下で、開環重合を行うことにより、環状オレフィンの開環重合と、シリル基含有オレフィン化合物による末端変性を同時に行うことができるため、簡便であり、好ましい。
【0031】
環状オレフィンを開環重合する際において、用いるシリル基含有オレフィン化合物としては、特に限定されず、重合体鎖末端に導入するシリル基の種類に応じて適宜選択すればよいが、たとえば、下記一般式(2)または(3)で示される化合物が挙げられる。
【0032】
【化2】
(上記一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R、Rは、それぞれ、水素原子、またはヘテロ原子が介在していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。また、Lは、単結合またはシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、bは1〜3の整数である。)
【0033】
【化3】
(上記一般式(3)中、R10、R11は、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R、R、R12、R13は、それぞれ、水素原子、またはヘテロ原子が介在していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。また、L、Lは、それぞれ、単結合、またはシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、c,dは1〜3の整数である。)
【0034】
上記一般式(2)、(3)において、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アシル基、アルキルシリル基、アリールシリル基が例示される。
【0035】
上記一般式(2)、(3)において、R〜R、R10、R11は水素原子であることが好ましく、これらを水素原子とすることにより、シリル基含有オレフィン化合物をメタセシス反応性により優れたものとすることができる。
【0036】
また、上記一般式(2)、(3)において、L〜Lは、シリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結合可能な基であればよく特に限定されないが、シリル基含有オレフィン化合物をメタセシス反応性により優れたものとすることができという点より、炭化水素基、エーテル基、または三級アミノ基が好ましく、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基がより好ましい。また、シリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とは、これらの基を介さずに、直接結合するような構成であってもよい。
【0037】
なお、上記一般式(2)、(3)で示される化合物のうち、一般式(2)で示される化合物を用いた場合には、これらがメタセシス反応することにより、環状オレフィン開環重合体(A)の片末端にシリル基を導入することができ、また、一般式(3)で示される化合物を用いた場合には、これらがメタセシス反応することにより、環状オレフィン開環重合体(A)の両末端にシリル基を導入することができる。
【0038】
一般式(2)で示される化合物の好ましい具体例としては、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1−アリルヘプタメチルトリシロキサン、1−アリルノナメチルテトラシロキサン、1−アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1−アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0039】
一般式(3)で示される化合物の好ましい具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、2−ブテン−1,4−ジ(トリメトキシシラン)、2−ブテン−1,4−ジ(トリエトキシシラン)、1,4−ジ(トリメトキシシリルメトキシ)−2−ブテンなどのアルコキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリフェノキシシラン)などのアリーロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリアセトキシシラン)などのアシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]などのアルキルシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリフェニルシロキシ)シラン]などのアリールシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(ヘプタメチルトリシロキサン)、2−ブテン−1,4−ジ(ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン)などのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0040】
シリル基含有オレフィン化合物の使用量は、製造する環状オレフィン開環重合体(A)の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。なお、シリル基含有オレフィン化合物は、環状オレフィン開環重合体(A)の重合体鎖末端へのシリル基の導入作用に加え、分子量調整剤としても作用する。
【0041】
また、シリル基含有オレフィン化合物の存在下で環状オレフィンを開環重合する方法において用いることができる開環重合触媒としては、たとえば、ルテニウムカルベン錯体を挙げることができる。
【0042】
ルテニウムカルベン錯体は、環状オレフィンの開環重合触媒となるものであれば、特に限定されない。好ましく用いられるルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0043】
ルテニウムカルベン錯体の使用量は、特に限定されるものではないが、(触媒中の金属ルテニウム:重合体に用いる単量体)のモル比として、通常1:1,000〜1:2,000,000、好ましくは1:2,000〜1:1,500,000、より好ましくは1:3,000〜1:1,000,000の範囲である。使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、得られる環状オレフィン開環重合体(A)からの触媒残渣の除去が困難となる。
【0044】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよいが、重合反応の制御等の観点より、溶液中で行うことが望ましい。溶液中で重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、重合に用いる環状オレフィンや重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。
【0045】
重合温度は、特に限定されないが、通常−50〜100℃の範囲で設定される。また、重合反応時間は、好ましくは1分間〜72時間、より好ましくは5時間〜20時間である。重合転化率が所定の値に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えることにより、重合反応を停止させることができる。
【0046】
あるいは、シリル基含有オレフィン化合物の存在下で、環状オレフィンを開環重合する方法において用いることができる別の開環重合触媒としては、モリブデン化合物やタングステン化合物を挙げることができる。開環重合触媒として用いられ得るモリブデン化合物の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドなどを挙げられる。また、タングステン化合物の具体例としては、タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリド、タングステンオキソテトラフェノレートなどを挙げることができる。
【0047】
モリブデン化合物やタングステン化合物を開環重合触媒として用いる場合には、助触媒として、有機金属化合物を組み合わせて使用してもよい。この助触媒として用いられ得る有機金属化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期表第1、2、12、13または14族金属原子の有機金属化合物が挙げられる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく用いられ、有機リチウム化合物、有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物がより好ましく用いられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましく用いられる。
【0048】
助触媒として用いられ得る、有機リチウム化合物の具体例としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどが挙げられる。有機マグネシウム化合物の具体例としては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどが挙げられる。有機亜鉛化合物の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。有機スズ化合物の具体例としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズが挙げられる。有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド;下記一般式(4)で表される化合物;などが挙げられる。
【0049】
【化4】
(上記一般式(4)中、R14およびR15は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、xは、0<x<3である。)
【0050】
上記一般式(4)において、R14やR15で表される炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などを挙げることができる。なお、R14とR15で表される炭素数1〜20の炭化水素基は、それぞれ同じものであっても、異なるものであってもよいが、環状オレフィン開環重合体の繰返し単位中に存在する二重結合において、シス構造の割合を高くして、ゴム材料としての物性に優れる環状オレフィン開環重合体(A)を得る観点からは、少なくとも、R14で表される炭化水素基が、炭素原子が4個以上連続して結合してなるアルキル基であることが好ましく、特に、n−ブチル基、2−メチル−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基のいずれかであることが好ましい。
【0051】
また、上記一般式(4)において、xは、0<x<3であるが、環状オレフィン開環重合体(A)の繰返し単位中に存在する二重結合において、シス構造の割合を高くして、ゴム材料としての特性に優れる環状オレフィン開環重合体(A)を得る観点からは、一般式(4)におけるxが、0.5<x<1.5の範囲である有機アルミニウム化合物を助触媒として用いることが好ましい。
【0052】
モリブデン化合物やタングステン化合物を開環重合触媒として用いる場合の重合反応条件などは、ルテニウムカルベン錯体を用いる場合で述べた条件の範囲で適宜設定すればよい。
【0053】
また、得られる環状オレフィン開環重合体(A)には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、環状オレフィン開環重合体(A)には、所望により、伸展油を配合してもよい。
【0054】
さらに、重合反応を行う際に、溶媒を用い、重合反応を溶媒中で行なった場合において、重合体溶液から、環状オレフィン開環重合体(A)を取得する方法としては、公知の方法を採用すればよく、特に限定されないが、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状ゴムを取得する方法などが採用できる。
【0055】
<シリカ(B)>
シリカ(B)としては、特に限定されず、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカ・デュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
シリカ(B)は、窒素吸着比表面積が、好ましくは50〜300m/g、より好ましくは80〜220m/g、特に好ましくは100〜170m/gである。また、シリカ(B)のpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5〜6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠して、BET法にて測定することができる。
【0057】
<非イオン性界面活性剤(C)>
本発明で用いる非イオン性界面活性剤(C)としては、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンエーテル、糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシドまたは多価アルコールエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物のムーニー粘度をより効果的に低減させ、これによりゴム組成物としての加工性をより向上させることができるという点より、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンエーテルが好ましい。
【0058】
多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールの脂肪酸エステルであり、また、多価アルコールとは少なくとも2つの水酸基を有する化合物であり、糖類やグリコール、ポリヒドロキシ化合物が挙げられる。また、多価アルコールとエステルを形成する脂肪酸は炭素数10〜20の高級脂肪酸が好ましい。炭素数10〜20の高級脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、たとえば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルチミン酸などを挙げることができる。さらに、多価アルコールの脂肪酸エステルのうち、多価アルコールの複数の水酸基の一部が脂肪酸とエステルを形成し、残りが水酸基のままのものがさらに好ましい。このような多価アルコールの脂肪酸エステルの中でも、糖類の脂肪酸エステルが好ましく、3つ以上の水酸基を有する炭素数5または6の糖類の脂肪酸エステルがさらに好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレートおよびソルビタンジオレートなどが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルは、さらにポリオキシエチレン基を含有するものも好ましく用いられる。そのようなソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートおよびポリオキシエチレンソルビタントリオレートなどを挙げることができる。
その他、グリコールの脂肪酸エステルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、およびポリエチレングリコールモノオレートなどを挙げることができる。ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステルの具体例としては、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート、およびテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどを挙げることができる。
【0059】
ポリオキシアルキレンエステルとしては、たとえば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンエステルの具体例としては、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンオレート等が挙げられる。
【0060】
ポリオキシアルキレンエーテルとしては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェノールエーテルなどが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテルにおける、ポリオールとしては、炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられ、たとえば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グルコ−ス、シュクロース、ペンタエリスリトール、ソルビタンなどが挙げられる。
【0061】
ポリオキシアルキレンエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C13)エーテル、ポリオキシエチレン2級アルキル(C12〜C14)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C13)エーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(C11〜C15)エーテル、ポリオキシアルキレン2級アルキル(C12〜C14)エーテル、ポリオキシアルキレンセチルエーテル等が挙げられる。
【0062】
糖脂肪酸エステルとしては、たとえば、ショ糖、グルコース、マルトース、フラクトース、多糖類の脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
【0063】
アルキルポリグリコシドとしては、たとえば、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシドなどが挙げられ、これらの脂肪酸エステル類も挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
【0064】
多価アルコールエーテルとしては、たとえば、ポリオキシエチレン多価アルコールアルキルエーテルが挙げられ、多価アルコールとしては、炭素数2〜12のポリオールが挙げられ、具体的には、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、シュクロース、ペンタエリスリトール、ソルビタンなどが挙げられる。
【0065】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法は、上述した環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを含有するゴム組成物を製造する方法であって、
環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する工程を備えるものである。
【0066】
本発明によれば、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練することにより、環状オレフィン開環重合体(A)中に、シリカ(B)を高度に分散させることができ、これによりゴム組成物のムーニー粘度を低減することができ、結果として得られるゴム組成物の加工性を向上させることができ、しかも、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたものとすることができるものである。
【0067】
なお、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する方法としては、たとえば、以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。また、本発明において、これらを混練する際には、環状オレフィン開環重合体(A)として、固形状のゴムを使用し、通常、溶媒を用いずに混練を行う。
【0068】
(1)環状オレフィン開環重合体(A)と、非イオン性界面活性剤(C)とを予め混練した後、混練により得られた混練物にシリカ(B)を加えた状態として、混練装置等にて、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する方法。
【0069】
(2)シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを予め混合した後、混合により得られた混合物に環状オレフィン開環重合体(A)を加えた状態として、混練装置等にて、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する方法。
【0070】
(3)環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを予め混合することなく、混練装置等に仕込み、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する方法。
【0071】
(4)混練装置等にて、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを混練しながら、非イオン性界面活性剤(C)を加えることで、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する方法。
【0072】
上記(1)〜(4)の方法において、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する際に用いる混練装置としては、特に限定されず、バンバリーミキサー、ニーダー、混練ロール、ブラベンダーミキサーなどの公知の混練装置を用いることができる。また、混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間〜30分間である。
【0073】
上記(1)、(2)の方法において、各成分を予め混合する際に用いる混合装置としては、各成分を均一に混合できるような装置であれば何でもよく、特に限定されない。また、上記(4)の方法において、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを混練しながら、非イオン性界面活性剤(C)を加える方法としては、特に限定されず、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とが比較的均一に互いに分散した段階で、用いる非イオン性界面活性剤(C)の全量を一度に加えてもよいし、用いる非イオン性界面活性剤(C)を分割して、複数回に分けて加えてもよい。
【0074】
また、上記(2)の方法において、シリカ(B)と、非イオン性界面活性剤(C)とを予め混合した後、混合により得られた混合物に環状オレフィン開環重合体(A)を加えた状態として、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練した後に、さらに、シリカ(B)を追加添加して、さらに混練を行うような態様としてもよい。同様に、上記(1)、(3)、(4)の態様においても、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練した後に、さらに、シリカ(B)を追加添加して、さらに混練を行うような態様としてもよい。
【0075】
本発明の製造方法における、シリカ(B)の配合量は、ゴム組成物中に含まれるゴム成分100重量部に対して、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜140重量部、さらに好ましくは30〜120重量部である。シリカ(B)の配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
【0076】
本発明の製造方法における、非イオン性界面活性剤(C)の配合量は、ゴム組成物中に含まれる環状オレフィン開環重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.2〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部である。非イオン性界面活性剤(C)の配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物のムーニー粘度をより効果的に低減させることができ、これによりゴム組成物としての加工性をより高めることができる。
【0077】
また、本発明の製造方法においては、ゴム組成物中に、環状オレフィン開環重合体以外のゴムや、架橋剤、その他の配合剤を配合してもよい。
【0078】
環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50重量%、ブタジエン部分の1,2−結合含有量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、SBRが好ましく、ゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性を向上させる観点より、SBRが特に好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムを配合する場合、当該環状オレフィン開環重合体(A)の割合を、ゴム組成物中のゴム成分の全量に対して、10重量%以上とすることが好ましく、15〜90重量%の範囲とすることがより好ましく、20〜80重量%の範囲とすることが特に好ましい。この割合が低すぎると、得られるゴム架橋物の低発熱性が劣るおそれがある。
【0080】
また、環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムを配合するタイミングとしては、特に限定されないが、環状オレフィン開環重合体(A)と同様のタイミングとすることが好ましく、特に、環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムは、環状オレフィン開環重合体(A)と予め混練させた状態にて、配合することが好ましい。なお、この際において、たとえば、上記(1)の方法においては、環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムと、環状オレフィン開環重合体(A)とを予め混練し、得られた混練物と、非イオン性界面活性剤(C)とを混練し、次いで、シリカ(B)を配合して混練するような態様としてもよい。あるいは、環状オレフィン開環重合体(A)以外のゴムと、環状オレフィン開環重合体(A)とを、非イオン性界面活性剤(C)とともに混練し、得られた混練物に、シリカ(B)を配合して混練するような態様としてもよい。
【0081】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられ、これらの中でも、硫黄が好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0082】
本発明の製造方法における、架橋剤の配合量は、ゴム組成物中に含まれるゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。架橋剤を配合するタイミングとしては、特に限定されないが、環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練した後とすることが好ましい。なお、架橋剤の配合は、混練物を通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0083】
また、本発明の製造方法においては、ゴム組成物中に、常法に従って、シランカップリング剤;シリカ(B)以外の無機粒子;架橋促進剤;架橋活性化剤;老化防止剤;活性剤;プロセス油;可塑剤;ワックス;などの配合剤をそれぞれ必要量配合してもよい。
【0084】
なお、これらのうち、架橋促進剤以外の配合剤の配合タイミングは、特に限定されず、その配合目的に応じて適宜配合することができる。また、架橋促進剤の配合タイミングは、特に限定されないが、架橋剤と同様のタイミングとすることが好ましい。
【0085】
シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6−248116号公報に記載されているγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0086】
架橋促進剤としては、たとえば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジン、1−オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0087】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0088】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。
【0089】
<ゴム架橋物の製造方法>
本発明においては、上述した本発明の製造方法により得られるゴム組成物を架橋することにより、ゴム架橋物を得ることができる。
本発明の製造方法により得られるゴム架橋物は、本発明の製造方法により得られるゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0090】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0091】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0092】
このようにして得られるゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られるゴム組成物を用いて得られるものであり、上述したように、本発明の製造方法により得られるゴム組成物は、ゴム組成物中に、シリカ(B)が高度に分散したものであることから、ムーニー粘度が低く、加工時においては、優れた加工性を備え、しかも、これを用いる本発明の製造方法により得られるゴム架橋物は、優れたウエットグリップ性および低発熱性を有するものである。そして、このような本発明の製造方法により得られるゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。特に、本発明の製造方法により得られるゴム架橋物は、低発熱性に優れたものであることから、低燃費タイヤや、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤなどのタイヤトレッド、サイドウォール、アンダートレッド、カーカス、ビート部などの材料として好適である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0094】
<分子量>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、HタイプカラムHZ−M(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、環状オレフィン開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。なお、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。
【0095】
<ガラス転移温度(Tg)>
環状オレフィン開環重合体のガラス転移温度(Tg)を、示差走査型熱量計(DSC,日立ハイテクサイエンス社製X−DSC7000)を用いて、−140℃〜40℃までを10℃/分の昇温で測定した。
【0096】
<重合体鎖末端へのトリエトキシシリル基導入率>
環状オレフィン開環重合体の重クロロホルム溶液について、H−NMRスペクトル測定により、トリエトキシシリル基特有のピーク積分値およびオレフィン由来のピーク積分値の比率の測定を行なった。そして、測定したピーク積分値の比率、および上記したGPCによる数平均分子量(Mn)の測定結果に基づいて、重合体鎖末端へのトリエトキシシリル基導入率を算出した。重合体鎖末端へのトリエトキシシリル基導入率は、環状オレフィン開環重合体鎖数に対するトリエトキシシリル基の個数の割合とした。すなわち、トリエトキシシリル基導入率=100%は、1分子の環状オレフィン開環重合体鎖に対し、1個の割合でトリエトキシシリル基が導入されている状態を示し、トリエトキシシリル基導入率=200%は、1分子の環状オレフィン開環重合体鎖の両末端にトリエトキシシリル基が導入されている状態を示す。
【0097】
<ゴム組成物のムーニー粘度>
ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)をJIS K6300に従って測定した。そして、得られた測定結果を、比較例1のサンプルの測定値を100とする指数で算出した。この指数が小さいものほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れると評価できる。
【0098】
<ウエットグリップ性>
ゴム組成物を、160℃で25分間プレス架橋することにより、試験片を作製し、得られた試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES−G2」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用い、せん断歪み0.5%、周波数10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。そして、得られた測定結果を、比較例1のサンプルの測定値を100とする指数で算出した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れると評価できる。
【0099】
<低発熱性>
ゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋することにより、試験片を作製し、得られた試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES−G2」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用い、せん断歪み2%、周波数10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。そして、得られた測定結果を、比較例1のサンプルの測定値を100とする指数で算出した。この指数が小さいほど、低発熱性に優れると評価できる。
【0100】
(製造例1)両末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A−1)の製造
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液580部、および2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液285部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。
【0101】
次いで、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン1500部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン6.2部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液865部を加えて、20℃で4時間重合反応を行った。4時間後、重合溶液にエチルアルコールを加えて重合を停止した後、大過剰のエタノールに注いで、環状オレフィン開環重合体(A−1)の沈殿物を得た。そして、この沈殿物に、老化防止剤としてイルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を環状オレフィン開環重合体(A−1)100部に対して0.2部となるように添加した後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、両末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A−1)375部を得た。得られた環状オレフィン開環重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は428,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.98、Tgは−105℃で、重合体鎖末端へのトリエトキシシリル基の導入率は、約200%であった。
【0102】
(実施例1)
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、製造例1で得られた両末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A−1)30部に、ソルビタンモノラウレート(商品名「レオドールSP−L10」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))1.5部およびスチレン・ブタジエンゴム(商品名「Nipol NS616」、日本ゼオン社製)70部を加え、30秒素練りした。次いでシリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)50部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、新日本石油社製)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」、デグッサ社製)4.1部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部およびN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加し、さらに3分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は135℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーからゴム混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム混練物と、硫黄1.4部および架橋促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製)1.2部と1,3−ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部との混合物)2.4部とを混練することで、シート状のゴム組成物を得た。
【0103】
そして、得られたゴム組成物を用いて、上記方法にしたがって、ムーニー粘度、ウエットグリップ性および低発熱性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(実施例2)
ソルビタンモノラウラート1.5部に代えて、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(商品名「レオドールTW−L120」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))1.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例3)
ソルビタンモノラウラート1.5部に代えて、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート(商品名「レオドールTW−O320V」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))1.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例4)
ソルビタンモノラウラート1.5部に代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン108」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))1.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例5)
ソルビタンモノラウラート1.5部に代えて、ポリエチレングリコールモノオレート(商品名「エマノーン4110」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))1.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例6)
予め、シリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)50部とソルビタンモノラウレート(商品名「レオドールSP−L10」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))3部とを混合することで、シリカ・非イオン性界面活性剤混合物を調製した。
次いで、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、製造例1で得られた両末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A−1)30部およびスチレン・ブタジエンゴム(商品名「Nipol NS616」、日本ゼオン社製)70部を加え、30秒素練りした。そして、上記にて予め調製したシリカ・非イオン性界面活性剤混合物53部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、新日本石油社製)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」、デグッサ社製)4.1部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部およびN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加し、さらに3分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は135℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーからゴム混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.4部および架橋促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製)1.2部と1,3−ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部との混合物)2.4部とを混練することで、シート状のゴム組成物を得た。
【0109】
そして、得られたゴム組成物を用いて、上記方法にしたがって、ムーニー粘度、ウエットグリップ性および低発熱性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例7)
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、製造例1で得られた両末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A−1)30部に、スチレン・ブタジエンゴム(商品名「Nipol NS616」、日本ゼオン社製)70部を加え、30秒素練りし、次いでシリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)50部、ソルビタンモノラウレート(商品名「レオドールSP−L10」、花王社製、非イオン性界面活性剤(C))3部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、新日本石油社製)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」、デグッサ社製)4.1部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(商品名「Zeosil1115MP」、ソルベイ社製)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部およびN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加し、さらに3分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は134℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーからゴム混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム混練物と、硫黄1.4部および架橋促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製)1.2部と1,3−ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部との混合物)2.4部とを混練することで、シート状のゴム組成物を得た。
【0111】
そして、得られたゴム組成物を用いて、上記方法にしたがって、ムーニー粘度、ウエットグリップ性および低発熱性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0112】
(比較例1)
ソルビタンモノラウラート1.5部を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示す結果より、重合体鎖末端にシリル基を有する環状オレフィン開環重合体(A)と、シリカ(B)とを、非イオン性界面活性剤(C)の存在下で混練する工程を経て得られるゴム組成物は、ムーニー粘度が低く、ゴム組成物としての加工性に優れ、また、得られるゴム架橋物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れるものであった(実施例1〜7)。