特許第6614701号(P6614701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614701
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20191125BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/304 622L
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-61507(P2016-61507)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-175040(P2017-175040A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 恒成
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄平
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−047815(JP,A)
【文献】 特開2014−017472(JP,A)
【文献】 特開2012−151275(JP,A)
【文献】 特開2013−184268(JP,A)
【文献】 特開平11−016862(JP,A)
【文献】 特開2015−067404(JP,A)
【文献】 特開2011−171594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムがウエーハの外周縁からはみ出してはみ出し部が形成された状態で樹脂を介して該フィルムがウエーハの一方の面に固着されている場合における該樹脂と該フィルムとからなる保護部材をウエーハから剥離する剥離装置であって、
該保護部材を下にしてウエーハの他方の面を保持する保持面を有する保持手段と、
該保護部材の該はみ出し部を挟持する挟持手段と、
該挟持手段と該保持手段とを相対的に該ウエーハの外周縁から中心に向かって径方向に移動させウエーハから該保護部材を剥離する移動手段と、
該保持面に対面する載置面にウエーハから剥離した該保護部材の該樹脂側を下にして載置する載置テーブルと、
該載置テーブルに該保護部材を複数枚積層させたのち該載置テーブルから落下させる落下手段と、
該落下手段により該載置テーブルから落下させた複数枚積層した該保護部材を収容するボックスと、
を備える剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材をウエーハから剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハの製造工程において平坦面を備えるウエーハを作製する場合には、例えば、シリコン等の原材料からなる円柱状のインゴットを、ワイヤーソー等で薄く切断して、円板状のウエーハを得る。この円板状のウエーハの両面には、うねりが存在している場合が多いため、切り出したウエーハに対する研削加工を施す、すなわち、ウエーハのワイヤーソーによる切断面に対して、回転する研削砥石を当接させることにより、切断面のうねりを除去して平坦な面にしていく加工を施す。
【0003】
研削加工を行うにあたっては、例えば、図11に示すように、円板状のウエーハWの一方の面Waに液状樹脂S1で保護部材を形成する。ウエーハWに保護部材を形成するには、例えば、ウエーハWの直径よりも大径の円形状フィルムS2を、保護部材形成装置の保持テーブル90の平坦な保持面90aに載置し、このフィルムS2上に液状の樹脂S1を樹脂供給装置91から所定量供給する。この樹脂S1は、例えば、光(代表的には、紫外線)によって硬化する性質を備えている。そして、保持手段92でウエーハWの他方の面Wbを吸引保持し、ウエーハWの一方の面Waに対向するように配設されたフィルムS2上で、ウエーハWを液状樹脂S1に対して上側から押し付けることで、液状樹脂S1を押し広げてウエーハWの一方の面Wa全面が液状樹脂S1で被覆された状態にする。次いで、液状樹脂S1に対して、例えば、保持テーブル90の内部に配設された紫外線照射機構93から紫外線の照射を行い硬化させることで、図12に示す保護部材Sが形成される。また、ウエーハWの外周縁WdからフィルムS2がはみ出したはみ出し部S2aが形成される。
【0004】
そして、図12に示すように、保護部材Sが形成されていない他方の面Wbが上側になるようにして、ウエーハWを研削装置94のチャックテーブル940の保持面上に載置し、ウエーハWの上方から回転する研削ホイール941を降下させて、ウエーハWの他方の面Wbに研削砥石941aを当接させながら研削を行っていく。その後、テープ剥離装置(例えば、特許文献1参照)によりウエーハWから保護部材Sを剥がしてから、保護部材Sにより保護されていたウエーハWの一方の面Waをさらに研削することで、両面が平坦面となるウエーハWを作製することができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−168488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウエーハWからの保護部材Sの剥離においては、保持手段によりウエーハの最初に研削した方の面Wb(他方の面Wb)を吸引保持してウエーハWを持ち上げ、例えばクランプ等から構成される挟持手段によりフィルムS2を挟持して、挟持手段を移動させてウエーハWから保護部材Sを剥離する。したがって、剥離された保護部材Sは、フィルムS2に樹脂S1が貼着され一体となった状態で、ゴミ箱内に廃棄される。
【0007】
樹脂S1には収縮しようとする力が働くため、フィルムS2は樹脂S1が貼着されている面側に向かって丸まろうとする。そのため、ゴミ箱内に落とされた保護部材Sは、落下中の空気抵抗又はゴミ箱の底に着地した時の衝撃により、図13に示すように、樹脂S1が貼着されている面を内側にして保護部材Sの外周の二方向から筒状に丸まる場合と、図14に示すように、樹脂S1が貼着されている面を内側にして保護部材Sの外周の三方向から中心に向かっておおよそ均等な角度で丸まる場合とがある。
【0008】
このように、ゴミ箱内において保護部材Sがそれぞれ丸まった状態で図15に示すように積み重なると、各保護部材Sがそれぞれ平らな層状に積み重なる場合に比べて、ゴミ箱内に隙間が多く残った状態でゴミ箱内の上部まで保護部材Sが達してしまうため、多くの保護部材Sをゴミ箱内に収容することができなくなるという問題がある。
【0009】
よって、樹脂が貼着されたフィルムからなる保護部材をゴミ箱内に廃棄する場合においては、廃棄された保護部材がゴミ箱内において丸まった状態とならずに、各保護部材が平らな状態で積層されていくようにし、ゴミ箱内に十分な枚数の保護部材を廃棄できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、フィルムがウエーハの外周縁からはみ出してはみ出し部が形成された状態で樹脂を介して該フィルムがウエーハの一方の面に固着されている場合における該樹脂と該フィルムとからなる保護部材をウエーハから剥離する剥離装置であって、該保護部材を下にしてウエーハの他方の面を保持する保持面を有する保持手段と、該保護部材の該はみ出し部を挟持する挟持手段と、該挟持手段と該保持手段とを相対的に該ウエーハの外周縁から中心に向かって径方向に移動させウエーハから該保護部材を剥離する移動手段と、該保持面に対面する載置面にウエーハから剥離した該保護部材の該樹脂側を下にして載置する載置テーブルと、該載置テーブルに該保護部材を複数枚積層させたのち該載置テーブルから落下させる落下手段と、該落下手段により該載置テーブルから落下させた複数枚積層した該保護部材を収容するボックスと、を備える剥離装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る剥離装置は、保持手段により保護部材をウエーハの他方の面を下にして保持し、保護部材のはみ出し部を挟持手段で挟持した状態で、移動手段により、挟持手段と保持手段とを相対的にウエーハの外周縁から中心に向かって径方向に移動させウエーハから保護部材を剥離する。そして、保持手段の保持面に対面する載置テーブルの載置面に、ウエーハから剥離した保護部材の樹脂側を下にして載置する。さらに、載置テーブルに保護部材を複数枚積層させたのち、落下手段により複数枚積層した保護部材を載置テーブルからボックスに落下させてボックスに収容することで、ボックス内において保護部材が丸まった状態とならずに、各保護部材が平らで層状に重なった状態でボックスに収容することができる。そのため、ボックスに多くの枚数の保護部材を収容することができるので、作業者等によるボックス内からの保護部材の回収作業の回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】剥離装置の一例を示す斜視図である。
図2】保持手段により保持されたウエーハの保護部材のはみ出し部を、挟持手段により挟持している状態を示す断面図である。
図3】保護部材のはみ出し部を挟持した挟持手段を移動手段により移動させ、保護部材の剥離を開始した状態を示す断面図である。
図4】保護部材のはみ出し部を挟持した挟持手段を移動手段により移動させ、ウエーハから保護部材の大部分を剥離した状態を示す断面図である。
図5】ウエーハから剥離した保護部材の樹脂側を下にして載置テーブル上に載置した状態を示す断面図である。
図6】載置テーブルに保護部材を複数枚積層させた状態を示す断面図である。
図7】載置テーブルに複数枚積層させた保護部材に落下手段を接触させた状態を示す断面図である。
図8】落下手段によって、載置テーブルに複数枚積層させた保護部材をボックス上方に向かって押し動かしている状態を示す断面図である。
図9】複数枚積層した保護部材を落下手段によりボックス内に落下させてボックス内に収容した状態を示す断面図である。
図10】ボックス内が保護部材で満杯になった状態を示す断面図である。
図11】ウエーハの一方の面に液状樹脂で保護部材を形成している状態を説明する模式的な説明図である。
図12】保護部材を保持してウエーハの他方の面を研削している状態を示す側面図である。
図13】保護部材が外周の二方向から筒状に丸まった状態を示す斜視図である。
図14】保護部材が外周の三方向から中心に向かって丸まった状態を示す斜視図である。
図15】丸まった保護部材が積み重なった状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す剥離装置1は、保護部材SをウエーハWから剥離する装置である。保護部材Sは、ウエーハWよりも大径に形成され、ウエーハWの一方の面に固着されており、ウエーハWの外周縁Wdよりも外周側にはみ出したはみ出し部S2aを備えている。
剥離装置1は、保護部材Sを下にしてウエーハWの他方の面Wbを保持する保持面210aを有する保持手段2と、保護部材Sのはみ出し部S2aを挟持する挟持手段3と、挟持手段3を±Y方向に移動させる移動手段4と、保持面210aに対面する載置面5aを備えウエーハWから剥離した保護部材Sが載置される載置テーブル5と、載置テーブル5に複数枚積層された保護部材Sを載置テーブル5から落下させる落下手段6と、落下手段6により載置テーブル5から落下させた複数枚積層した保護部材Sを収容するボックス7と、を備えている。
【0014】
剥離装置1のベース10上の後方側(−X方向側)には、コラム11が立設されており、コラム11の+X方向側側面の上部には、モータ122によりボールネジ120を回動させることで、可動板121に配設された保持手段2をY軸方向に往復移動させるがY軸方向移動手段12が配設されている。
【0015】
可動板121上には、Z軸方向に保持手段2を往復移動させるZ軸方向移動手段13が配設されている。Z軸方向移動手段13は、モータ132によりボールネジ130を回動させることで、可動板131上に配設された保持手段2をZ軸方向に往復移動させる。
【0016】
保持手段2は、可動板131上に−X方向側の一端が固定されたアーム部20と、アーム部20の+X方向側のもう一端の下面に配設されウエーハWを吸引保持する保持パッド21とを備えている。図2に示す保持パッド21は、ポーラス部材からなりウエーハWを吸着する吸着部210と、吸着部210を支持する枠体211とを備える。吸着部210は、吸引管212を介して吸引源213に連通している。そして、吸引源213が吸引を行うことで生み出された吸引力が、吸着部210の露出面であり枠体211の下面と面一に形成されている保持面210aに伝達されることで、保持手段2は保持面210aでウエーハWを吸引保持する。
【0017】
図1に示すコラム11の+X方向側側面の中間部、すなわち、保持手段2の移動経路の下方には、+Z方向側から順に、X軸方向の軸心を有する回転ローラ18と、移動手段4と、載置テーブル5と、落下手段6とが並んで配設されている。また、移動手段4の+Y方向側の近傍には、テーブル保持台140がコラム11の+X方向側側面に固定して配設されており、テーブル保持台140上には、研削加工後のウエーハWが載置される受け渡しテーブル141が配設されている。受け渡しテーブル141は、その保持面141a上に載置されたウエーハWを吸引保持できる。
【0018】
移動手段4は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ40と、ボールネジ40と平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40を回動させるモータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する可動ブロック43とから構成される。そして、モータ42がボールネジ40を回動させると、これに伴い可動ブロック43がガイドレール41にガイドされてY軸方向に移動し、可動ブロック43上に配設された挟持手段3が可動ブロック43の移動に伴いY軸方向に移動する。
【0019】
挟持手段3は、軸方向がX軸方向であるスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、スピンドル30の+X方向側の先端に配設された挟持クランプ32とを備えている。挟持クランプ32は、互いが接近及び離間可能な一対の挟持板320の間に挟持対象を挟み込むことができ、スピンドル30が回転することで、挟持対象に対する角度を変えることができる。なお、例えば、挟持手段3は、可動ブロック43上を上下方向に移動可能となっていてもよい。
【0020】
回転ローラ18は、例えば、その外形が円柱状に形成されており、図示しないモータによりX軸方向の軸心を軸として回転する。回転ローラ18は、保護部材Sに当接することにより、例えば、保護部材Sの剥離の際に起き得る図12−15に示す樹脂S1の折れを防止する役割を果たす。なお、回転ローラ18は、Y軸方向に移動可能であってもよい。
【0021】
載置テーブル5は、例えば、その外形が略長方形状であり、すのこ状の載置面5aを備えている。すなわち、載置テーブル5は、直線材50を、その長手方向をY軸方向としてX軸方向に等間隔を保って隙間が形成されるように並列に整列させ、各直線材50の+Y軸方向側の一端を図示しない棒状の連結具で連結し固定した構成となっている。例えば、載置テーブル5は、各直線材50を連結する図示しない棒状の連結具により、コラム11の+X方向側側面に固定される、または、後述する落下手段6の一対のガイドレール61の側面61c上に、載置テーブル5の下面5bの一部分を固定することで、挟持手段3及び保持手段2の移動経路下に配設される。
【0022】
落下手段6は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ60と、ボールネジ60と平行に配設された一対のガイドレール61と、ボールネジ60を回動させるモータ62と、内部のナットがボールネジ60に螺合し側部630がガイドレール61に摺接する可動部材63と、可動部材63に配設された突き出しピン64とから構成される。
【0023】
可動部材63は、例えば、ボールネジ60に螺合する側部630と、側部630の上端から+X方向側に向かって突き出すように形成されたピン台部631とを備えている。ピン台部631の上面には、+Z方向に向かって突き出る2本の突き出しピン64が配設されている。各突き出しピン64は、X軸方向に所定距離だけ離間して配置されており、モータ62がボールネジ60を回動させると、これに伴い可動部材63がガイドレール61にガイドされてY軸方向に移動し、可動部材63上に配設された突き出しピン64が、載置テーブル5の各直線材50間の隙間を通るようにしてY軸方向に移動する。なお、2本の突き出しピン64は、ピン台部631からZ軸方向に移動可能として突き出しピン64の上端の高さ位置を変更できるものとしてもよい。なお、突き出しピン64の本数は、2本に限定されるものではなく、例えば、3本以上がピン台部631上でX軸方向に離間して配置されていてもよい。
【0024】
ベース10上に配設されたボックス7は、例えば、外形が略直方体状に形成されており、載置テーブル5の+Y方向側端の下方において開口している。ボックス7の上部には、例えば、発光部790(−Y方向側)と受光部791(+Y方向側)とを備える透過型の光センサ79が配設されている。光センサ79は、ボックス7内に保護部材Sが所定の高さまで積み上がり、発光部790と受光部791との間の検査光が保護部材Sにより遮られることで、ボックス7内が保護部材Sで満たされたことを検出する。
【0025】
以下に、図1図10を用いて、剥離装置1によりウエーハWから保護部材Sを剥離して廃棄する場合の剥離装置1の動作について説明する。なお、図2図10においては、剥離装置1の構成を簡略化して示している。
【0026】
まず、図1に示すように、研削後のウエーハWが、研削された面である他方の面Wbが上側になるように、受け渡しテーブル141上に載置される。保持手段2が+Y方向に移動し、保持パッド21の保持面210aの中心がウエーハWの他方の面Wbの中心に略合致するように、ウエーハWの上方に位置付けられる。さらに、保持手段2が−Z方向へと降下し、保持パッド21の保持面210aをウエーハWの他方の面Wbに接触させる。さらに、吸引源213が吸引することで生み出された吸引力が保持面210aへと伝達されることで、保持手段2が保護部材Sを下にしてウエーハWの他方の面Wbを吸引保持する。
【0027】
図2に示すように、ウエーハWを吸引保持した保持手段2が、回転ローラ18の上方に位置するまで−Y方向に移動してから−Z方向に下降して、保護部材Sの下面Sbの+Y方向側の外周部付近に回転ローラ18の側面18cを当接させる。挟持手段3が、−Y方向に移動し、挟持クランプ32と保護部材Sのはみ出し部S2aとの位置合わせを行い、挟持クランプ32がはみ出し部S2aを挟持する。ここで、保護部材Sは、樹脂S1とフィルムS2とからなり、フィルムS2が樹脂S1を介してウエーハWの一方の面Waに固着されている。
【0028】
例えば、図3に示すように、挟持クランプ32がはみ出し部S2aを挟持した後、スピンドル30が+X方向側からみて時計回り方向に90度回転することで、回転ローラ18が保護部材Sの下面Sb側を支持した状態で、保護部材Sの樹脂S1が回転ローラ18の側面18cにならって緩やかに曲げられつつ、保護部材Sが−Z方向に向かって挟持クランプ32により引っ張られることにより、ウエーハWの一方の面Waから保護部材Sの一部が剥離される。
【0029】
次いで、図1に示した移動手段4により、挟持手段3と保持手段2とを相対的にウエーハWの外周縁Wdから中心に向かって径方向に移動させウエーハWから保護部材Sを剥離する。すなわち、移動手段4によって挟持手段3を−Y方向側に移動させるとともに、回転ローラ18がX軸方向の軸心を軸に回転し、保護部材Sの樹脂S1が回転ローラ18の側面18cにならって緩やかに曲げられた状態を維持しつつ、ウエーハWの+Y方向側の外周縁Wdから−Y方向側に向かって保護部材Sを剥離していく。
保護部材Sの剥離中に樹脂S1の折れが発生すると、剥離後も樹脂S1がウエーハWに対して部分的に残ってしまったり、樹脂折れによる反動で樹脂S1からウエーハWの一方の面Waに対して瞬間的に撃力が加わりウエーハの一方の面Waが傷ついてしまったりする場合があるが、回転ローラ18の側面18cがフィルムS2に当接することにより、そのような問題が生じるのを防ぐことができる。
【0030】
図4に示すように、挟持手段3がウエーハWの−Y方向側の外周縁Wd近くまで移動すると、スピンドル30が+X方向側からみて時計回り方向にさらに90度回転することで、保護部材Sの樹脂S1側が下に向けられた状態になる。さらに、移動手段4によって挟持手段3を−Y方向側に移動させることで、ウエーハWから保護部材Sが完全に剥離される。保護部材SがウエーハWから完全に剥離されると、挟持クランプ32を開き挟持手段3によるはみ出し部S2aの挟持を解除させ、図5に示すように、保護部材Sの樹脂S1側を下にして保護部材Sを載置テーブル5に向かって落下させる。
【0031】
保護部材Sの樹脂S1側が下側になって落下することで、樹脂S1の収縮によりフィルムS2に働く樹脂S1が貼着されている面側に向かって丸まろうとする力は、落下中に保護部材Sに働く空気抵抗によって弱められる。そのため、図5に示すように、載置テーブル5上に落下した保護部材Sは、丸まった状態ではなく、ほとんど平らな状態で載置テーブル5の載置面5a上に載置された状態となる。
【0032】
以下同様に、新たなウエーハWから保護部材Sを剥離していき、図6に示すように載置テーブル5に保護部材Sを複数枚(たとえば、5枚以上が好ましい)積層させていく。図6に示すように、各保護部材Sは、その水平面中心が皆各々略合致するようにして、載置テーブル5上に積層された状態となる。保護部材Sが複数枚(図示の例においては、5枚)積層した状態となると、各保護部材Sの下面Sbと各保護部材Sの各樹脂S1が互いに接触した状態になる。樹脂S1の摩擦係数は一般的に高いことから、各保護部材Sの各樹脂S1が各保護部材S間において滑り止めの役割を果たすため、保護部材Sの樹脂S1が丸まろうとする力が一枚下側に位置する保護部材Sの下面Sbによって弱められる。したがって、各保護部材Sは、載置テーブル5上に一枚の状態で載置されているよりも丸まりにくくなり、より平らな状態で載置テーブル5上に載置された状態になる。
【0033】
次いで、落下手段6が、複数枚積層した保護部材Sを載置テーブル5から落下させる。図7に示すように、落下手段6の2本の突き出しピン64(図7においては、1本のみを示す)の上端の高さ位置が複数枚積層した保護部材Sの最も上方の高さ位置、すなわち、図示の例においては、下から5枚目の保護部材Sの高さ位置以上に至るまで、2本の突き出しピン64が+Z方向に上昇する。また、図1に示す可動部材63がガイドレール61にガイドされて+Y方向に移動し、2本の突き出しピン64が、載置テーブル5の各直線材50間の隙間を通るようにして+Y方向に移動する。突き出しピン64は、複数枚積層した保護部材Sに当接し、図8に示すように複数枚積層した保護部材Sを一体的に+Y方向に向かって押し動かしていく。
【0034】
図9に示すように、突き出しピン64が載置テーブル5の+Y方向側の一端近くまで移動することで、落下手段6が、複数枚積層した保護部材Sを一体的に載置テーブル5からボックス7内に落下させる。各保護部材Sは、各保護部材Sの樹脂S1側を下側にして複数枚積層した状態で落下するため、各樹脂S1の収縮により各フィルムS2に働く各樹脂S1が貼着されている面側に向かって丸まろうとする力は、落下中に保護部材Sに働く空気抵抗によって弱められる。また、各樹脂S1による各保護部材S間における滑り止めの役割によって複数枚積層した保護部材Sが一体的に落下することから、保護部材Sが一枚の状態で落下する場合に比べて各保護部材Sの変形が起こりにくくなり、各保護部材Sが丸まった状態とならずに複数枚平らな状態で積層したままボックス7内に収容される。
【0035】
以下同様に、新たなウエーハWから保護部材Sを剥離していき、載置テーブル5に保護部材Sを複数枚(たとえば、5枚以上が好ましい)積層させてから、複数枚積層した保護部材Sをボックス7内に収容していく。図10に示すように、光センサ79の高さ位置まで保護部材Sがボックス7内に適切に収容されることで、発光部790と受光部791との間の検査光が保護部材Sにより遮られるため、ボックス7内が保護部材Sで満たされたことを検出する。そして、ボックス7に保護部材Sが十分回収されたことを光センサ79により作業者が認識し、作業者がボックス7から保護部材Sを取り出して回収する。
【0036】
本発明に係る剥離装置1は、保持手段2により保護部材Sを下にしてウエーハWの他方の面Wbを保持し、保護部材Sのはみ出し部S2aを挟持手段3で挟持し、移動手段4により、挟持手段3と保持手段2とを相対的にウエーハWの外周縁Wdから中心に向かって径方向に移動させウエーハWから保護部材Sを剥離する。そして、保持手段2の保持面210aに対面する載置テーブル5の載置面5aにウエーハWから剥離した保護部材Sの樹脂S1側を下にして載置する。そして、載置テーブル5に保護部材Sを複数枚積層させたのち、落下手段6により複数枚積層した保護部材Sを載置テーブル5からボックス7に落下させてボックス7に収容することで、ボックス7に収容された保護部材Sが丸まった状態とならずに、各保護部材Sが平らに積層された状態でボックス7に収容することができる。そのため、ボックス7に多くの枚数の保護部材Sを収容することができるので、作業者等によるボックス7内からの保護部材Sの回収作業の回数を減らすことができる。
【0037】
なお、本発明に係る剥離装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている剥離装置1の各構成の大きさや形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。例えば、移動手段4は、保持手段2と挟持手段3とを相対的にウエーハWの外周縁Wdから中心に向かって径方向に移動させウエーハWから保護部材Sを剥離するものであればよいため、挟持手段3はY軸方向には移動せず、保持手段2がY軸方向に移動することにより保護部材Sを剥離する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
90保持テーブル 90a:保持面 91:樹脂供給装置 92:保持手段
93:紫外線照射機構 94:研削装置 940:チャックテーブル
941:研削ホイール 941a:研削砥石
W:ウエーハ
Wa:ウエーハの一方の面 Wb:ウエーハの他方の面 Wd:ウエーハの外周縁
S:保護部材 S1:樹脂 S2:フィルム S2a:はみ出し部
1:剥離装置 10:ベース 11:コラム
12:Y軸方向移動手段 120:ボールネジ 121:可動板 122:モータ
13:Z軸方向移動手段 130:ボールネジ 131:可動板 132:モータ
140:テーブル保持台
141:受け渡しテーブル 141a:受け渡しテーブルの保持面
18:回転ローラ 18c:回転ローラの側面
2:保持手段 20:アーム部 21:保持パッド 210:吸着部
210a:保持面211:枠体 212:吸引管 213:吸引源
3:挟持手段 30:スピンドル 31:ハウジング
32:挟持クランプ 320:一対の挟持板
4:移動手段 40:ボールネジ 41:一対のガイドレール 42:モータ
43:可動ブロック
5:載置テーブル 5a:載置テーブルの載置面 50:直線材
6:落下手段 60:ボールネジ 61:一対のガイドレール 62:モータ
63:可動部材 631:ピン台部 64:突き出しピン
7:ボックス 79:光センサ 790:発光部 791:受光部
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