特許第6615090号(P6615090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615090高いガラス転移温度および高い結晶化度を有する部分芳香族コポリアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615090
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】高いガラス転移温度および高い結晶化度を有する部分芳香族コポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20191125BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20191125BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20191125BHJP
【FI】
   C08G69/26
   C08L77/06
   H01L33/60
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-518988(P2016-518988)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-521791(P2016-521791A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2014062114
(87)【国際公開番号】WO2014198762
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年6月2日
【審判番号】不服2019-1210(P2019-1210/J1)
【審判請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】13171659.9
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン リヒター
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュヴィーク
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ヴィルムス
(72)【発明者】
【氏名】ギャド コリー
【合議体】
【審判長】 近野 光知
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−529074(JP,A)
【文献】 特開昭56−45924(JP,A)
【文献】 特開2013−67705(JP,A)
【文献】 特表2010−530458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分芳香族コポリアミド(PA)であって、以下:
a)テレフタル酸36〜50モル%、
b)イソフタル酸0超〜14モル%、
c)ヘキサメチレンジアミン35〜42.5モル%、
d)少なくとも1つの環状ジアミン7.5〜15モル%、ここで、該環状ジアミンd)は、イソホロンジアミンを含むか、またはイソホロンジアミンからなる
を重合導入した形態で含み、
ここで、成分a)〜d)が、合計100モル%である、前記部分芳香族コポリアミド。
【請求項2】
テレフタル酸とイソフタル酸とを、100未満:0超〜80:20のモル比で重合導入した形態で含む、請求項1に記載のコポリアミド。
【請求項3】
テレフタル酸とイソフタル酸とを、88:12〜80:20のモル比で重合導入した形態で含む、請求項1または2に記載のコポリアミド。
【請求項4】
ヘキサメチレンジアミンと少なくとも1つの環状ジアミンとを、75:25〜85:15のモル比で重合導入した形態で含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコポリアミド。
【請求項5】
ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンとを、75:25〜85:15のモル比で重合導入した形態で含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコポリアミド。
【請求項6】
少なくとも150℃のガラス転移温度Tg2を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のコポリアミド。
【請求項7】
少なくとも40J/gの融解熱ΔH2を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコポリアミド。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の、少なくとも1つのコポリアミドを含むポリアミド成形材料。
【請求項9】
A)請求項1から7までのいずれか1項に記載の、少なくとも1つのコポリアミド25〜100質量%、
B)少なくとも1つの充填剤および強化剤0〜75質量%、
C)少なくとも1つの添加剤0〜50質量%、
を含み、
ここで、成分A)〜C)が、合計100質量%である、請求項8に記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
請求項8または9に記載のポリアミド成形材料から製造される成形体。
【請求項11】
自動車分野のための構成部材の形態またはその部品である、請求項10に記載の成形体。
【請求項12】
シリンダーヘッドカバー、エンジンカバー、インタークーラー用ハウジング、インタークーラーバルブ、サクションパイプ、インテークマニホールド、コネクタ、ギヤホイール、ファンホイール、冷却水タンク、熱交換器用ハウジングまたはハウジング部品、クーラントクーラー、インタークーラー、サーモスタット、ウォーターポンプ、ラジエーターおよび固定部品から選択される、請求項11に記載の成形体。
【請求項13】
電気または電子構成部材の形態またはその部品である、請求項10に記載の成形体。
【請求項14】
プリント基板およびその部品、ハウジング構成部材、シート、導管、スイッチ、分配器、リレー、レジスタ、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、発光ダイオード(LED)、トランジスタ、コネクタ、レギュレータ、メモリチップおよびセンサーから選択される、請求項13に記載の成形体。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の部分芳香族コポリアミド、または請求項8もしくは9に記載の成形材料の、電気および電子構成部材を製造するための、または高温領域における自動車用用途のための使用。
【請求項16】
プラグインコネクタ、マイクロスイッチ、マイクロボタンまたは半導体構成部材製造するための、無鉛条件(鉛フリーはんだ)下のはんだプロセスにおける使用のための、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
発光ダイオード(LED)のリフレクターハウジングにおける、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いガラス転移温度および高い結晶化度を有する部分芳香族コポリアミド、そのような部分芳香族コポリアミドを含むポリアミド成形材料、ならびに前記部分芳香族コポリアミドおよび前記ポリアミド成形材料の使用に関する。
【0002】
ポリアミドは、世界的に広範囲に製造されているポリマーに含まれており、シート、繊維および材料の主要適用分野の他に、多数のさらなる使用目的に用いられている。ポリアミドの重要な群は、部分結晶性または非晶質で、熱可塑性の、部分芳香族ポリアミドであり、重要な工業的プラスチックとして広範囲に使用されてきた。このポリアミドは、特に、耐温度性が高いことを特徴としており、高温ポリアミド(HTPA)とも呼ばれる。HTPAの重要な使用範囲は、電気および電子構成部材の製造であり、ここで、とくに、ポリフタルアミド(PPA)をベースとするポリマーは、無鉛条件(lead free soldering(鉛フリーはんだ))下のはんだプロセスにおける使用に好適である。ここで、HTPAは、特に、コネクタ、マイクロスイッチおよびマイクロボタン、および半導体構成部材、例えば、発光ダイオード(LED)のリフレクターハウジングの製造に用いられる。HTPAのさらに重要な使用範囲は、高温領域における自動車適用である。ここで、特に、使用されるポリマーの優れた耐熱老化性、高い強度および靱性および溶接継目強度が重要である。非晶質のHTPAまたは結晶性含分がきわめて少ないHTPAは、透明であり、特に、透明性が有利である適用に好適である。部分結晶性のHTPAは、一般に、高い周囲温度において耐性が永続的であることを特徴としており、例えば、エンジンルーム領域での適用に適している。
【0003】
高温適用のための成形材料中で使用するためのポリアミドは、複雑な特性プロファイルを有している必要があり、ここで、長期熱負荷においても、優れた機械的特性と優れた加工性が調和していなければならない。例えば、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸の高い含分は、確かに結晶化度を改善して、ガラス転移温度を著しく高めるが、このモノマー単位の含有率が増加するに伴って、多くの場合、融点が高いために加工性は悪くなる。
【0004】
国際公開第2008/155271号は、ジカルボン酸およびジアミンをベースとする部分芳香族コポリアミドの製造方法を記載しており、ここで、このモノマー混合物は、ジカルボン酸混合物50モル%(テレフタル酸60〜88質量%およびイソフタル酸40質量%)とヘキサンメチレンジアミン50モル%で構成されている。さらに、ヘキサメチルジアミン0〜5質量%が、別のC2〜C30ジアミンで置換されてよいことが、ごく大まかに記載されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0667367号明細書は、部分芳香族で、部分結晶性の熱可塑性ポリアミド成形材料であって、
A)コポリアミドであって、以下
a1)テレフタル酸に由来する単位30〜44モル%、
a2)イソフタル酸に由来する単位6〜20モル%、
a3)ヘキサメチレンジアミンに由来する単位43〜49.5モル%、
a4)6〜30個の炭素原子を有する脂肪族環状ジアミンに由来する単位0.5〜7モル%
から構成されるコポリアミド40〜100質量%、
ここで、成分a1)〜a4)のモルパーセントは、合計100%であり、および
B)繊維状または粒子状の充填物0〜50質量%、
C)ゴム弾性重合体0〜30質量%、
D)通常の添加物および加工助剤0〜30質量%、
を含み、
ここで、成分A)〜D)の質量パーセントは、合計100%である、
前記ポリアミド成形材料を記載している。
【0006】
さらに、欧州特許出願公開第0667367号明細書は、前記成形材料の、繊維、シートおよび成形体の製造のための使用を記載している。記載されたコポリアミドは、高い結晶化度および充分に高い融点において許容できるガラス転移温度をすでに有している。
【0007】
さらに、高温において、加工性および得られた機械的特性に関して改善された特性プロファイルを有する、ポリアミド成形材料のための部分芳香族コポリアミドの需要がある。
【0008】
本発明の基礎をなす課題は、改善された特性を有する部分芳香族コポリアミド(半芳香族コポリアミド)を提供することである。このコポリアミドは、特に、ポリアミド成形材料の製造に適しているのが望ましく、この成形材料から、自動車産業ならびに電気/電子分野のための構成部材が製造されるのが好ましい。
【0009】
驚くべきことに、少なくとも1つの環状ジアミンを、欧州特許出願公開第0667367号明細書の記載よりも多い量で使用する場合に、高い結晶化度および一定の高い融点と同時に、ガラス転移温度がはるかに高いコポリアミドが得られることが判明した。したがって、このようにして得られたコポリアミドは、同じ温度にて加工可能であるが、しかし、高温での機械的特性が優れていることを特徴としている。このことは、特に、前記コポリアミドのアミン成分が、イソホロンジアミンを含むか、またはイソホロンジアミンからなる場合にもたらされる。
【0010】
本発明の第一の対象は、部分芳香族コポリアミドPA)であって、以下:
a)テレフタル酸36〜50モル%、
b)イソフタル酸0〜14モル%、
c)ヘキサメチレンジアミン35〜42.5モル%、
d)少なくとも1つの環状ジアミン7.5〜15モル%
を重合導入された形態で含み、
ここで、成分a)〜d)は、合計100モル%である、部分芳香族コポリアミドPA)である。
【0011】
本発明のさらなる対象は、これ以前および以下に記載の部分芳香族コポリアミドを含むポリアミド成形材料である。
【0012】
本発明のさらなる対象は、部分芳香族コポリアミドの、特に、高温領域における自動車適用ならびに電気/電子分野の構成部材の製造に用いられるポリアミド成形材料を製造するための使用である。
【0013】
本願の範囲に記載されるガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)および融解熱(ΔH)は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry(DSC))を用いて測定することができる。測定は、自体公知の方法で行われてよい(DIN EN ISO11357、part1〜3)。溶融エンタルピーΔH2、ガラス転移温度Tg2、および融点Tm2における指数(2)は、2回目の測定であること(1回目の繰り返し)、つまり、前記コポリアミドPAの試料は、この試料が融点に温められる最初のDSC測定の実施によって条件調整されることを意味する。この測定は、窒素ガス下に、るつぼを開放して、約20K/minの範囲の昇温速度で行われる。
【0014】
前記酸成分およびジアミン成分のモノマーは、それぞれのモノマーに由来する繰り返し単位もしくはアミドの形態の末端基の縮合によって形成されている。前記モノマーは、一般に、前記コポリアミド中に存在している繰り返し単位および末端基全体の95モル%、特に99%の割合を占めている。その他に、前記コポリアミドは、モノマー、例えば、ジアミンの分解反応または副反応から生じることがある、少量の別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0015】
本発明により使用されるモノマーに対して、以下の略称が使用される:
6=ヘキサメチレンジアミン、T=テレフタル酸、I=イソフタル酸、MXDA=m−キシリレンジアミン、IPDA=イソホロンジアミン。
【0016】
前記部分芳香族コポリマーは、テレフタル酸a)40〜50モル%を重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0017】
前記部分芳香族コポリマーは、イソフタル酸b)0〜10モル%を重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0018】
前記部分芳香族コポリマーは、ヘキサメチレンジアミン35〜40モル%を重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0019】
前記部分芳香族コポリマーが、少なくとも1つの環状ジアミンd)10〜15モル%を重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0020】
環状ジアミンd)は、イソホロンジアミン(IPDA)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)、4,4’−(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。
【0021】
環状ジアミンd)が、イソホロンジアミンを含むか、またはイソホロンジアミンからなるのが特に好ましい。
【0022】
本発明によるコポリアミドは、6.T/IPDA.Tおよび6.T/6.I/IPDA.T/IPDA.Iから選択されるのが好ましい。
【0023】
本発明によるコポリアミドは、テレフタル酸とイソフタル酸とを、100:0〜80:20のモル比で重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0024】
本発明によるコポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンと少なくとも1つの環状ジアミンとを、70:30〜85:15のモル比で重合導入して含んでいるのが好ましい。
【0025】
特に好ましい実施態様では、本発明によるコポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンとを、75:25〜85:15のモル比で重合導入して含む。
【0026】
本発明によるコポリアミドは、少なくとも145℃、好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度Tg2(2回目の加熱で測定)を有しているのが好ましい。
【0027】
本発明によるコポリアミドは、少なくとも145℃、より好ましくは少なくとも150℃、特に好ましくは少なくとも153℃、特に少なくとも160℃のガラス転移温度Tg2を有しているのが好ましい。好適な値範囲は、例えば、145〜175℃、好ましくは150〜175℃である。
【0028】
本発明によるコポリアミドは、少なくとも40J/gの融解熱ΔH2を有しているのが好ましい。融解熱ΔH2は、50J/gを上回っているのが好ましい。
【0029】
本発明によるコポリアミドは、50〜100mol/gのアミノ末端基含有量(AEG)を有しているのが好ましい。
【0030】
本発明によるコポリアミドは、80〜120ml/gの粘度数を有しているのが好ましい。粘度数(シュタウディンガー関数、VZ、VNまたはJを用いて表される)は、VZ=1/cx(η−ηs)/ηsと定義される。粘度数は、前記コポリアミドの平均モル質量と直接関係し、プラスチックの加工性に関する情報を示すものである。粘度数の測定は、EN ISO307に準拠して、ウベローデ粘度計を使用して行うことができる。
【0031】
本発明によるコポリアミドは、13000〜25000g/mol、特に好ましくは15000〜20000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有しているのが好ましい。
【0032】
本発明によるコポリアミドは、25000〜125000の範囲の質量平均分子量Mwを有しているのが好ましい。
【0033】
本発明の範囲における数平均分子量Mnおよび質量平均分子量Mwの数値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いる測定を基準とする。較正のために、多分散度が低いポリマー標準としてPMMAが使用される。
【0034】
本発明によるコポリアミドは、最大で6、特に好ましくは最大で5、特に、最大で3.5の多分散度PD(=Mw/Mn)を有しているのが好ましい。
【0035】
本発明による部分芳香族ポリアミドは、基本的に、通常、当業者に公知の方法により製造することができる。部分芳香族ポリアミドの製造は、一般に、少なくとも1つのジアミンと少なくとも1つのジカルボン酸からなる水性塩溶液を形成することで開始する。この塩溶液の形成の後に、液体の水相中におけるオリゴマー化が続く。所望の分子量に増加させるために、次に、さらなる方法の過程において水が除去されて、反応温度が高められる必要がある。さらに分子量を増加するためには、原則的に、2つの代替的な経路が提供される。第一の別形では、形成されたオリゴマーは、脱水により固相に変えられて、いわゆる固相重合(solid state polymerization、SSP)に供される。第二の別形では、水分離および温度上昇を制御してさらに重縮合させて前記水溶液を溶融物に変える。さらに分子量を増加するために、必要な場合、後重合が、例えば、押出機内でもう1回続けられてよい。
【0036】
以下に、可能な方法のいくつかが、例示的に記載されているが、ここで、前記部分芳香族コポリアミドの製造に関する前記文献の開示は、本願の開示にすべて組み入れられる。
【0037】
好適な方法は、例えば、欧州特許出願公開第0693515号明細書に記載されている。ここで、部分芳香族コポリアミドの予備縮合物の製造は、以下の段階a)〜e)を含む多段階のバッチプロセスにおいて行われる:
a)1つ以上のジアミンおよび1つ以上のジカルボン酸から、1つ以上の塩を製造するための塩形成段階、および場合により、120℃〜220℃の温度および23barまでの圧力で部分的に予備反応させて低分子オリゴアミドにする段階、
b)場合により、段階a)の溶液を、その製造の最後に一般的な条件下に、第2反応容器もしくは撹拌オートクレーブに移す段階、
c)前記反応器内容物を所定の温度に加熱して、水蒸気分圧を、前記オートクレーブに連結された水蒸気発生装置から水蒸気を制御して排出するか、または場合により水蒸気を制御して供給することによって維持される所定の値に制御して調節することによって反応を促進させて前記予備縮合物にする反応段階、
d)前記反応器内容物の温度および水蒸気分圧それぞれが、前記予備縮合物を後続のプロセス段階に移すために企図される値に調節される、少なくとも10分間維持される定常段階
ここで、280℃超の融点を有する部分結晶性(コ)ポリアミドの予備縮合物の場合、前記反応器内容物の温度は、段階c)およびd)の間、265℃を超過してはならず、かつ段階c)およびd)の間の前記部分結晶性(コ)ポリアミドに対してより厳密に定義された周囲条件は、最小限に適用される水蒸気分圧PH2O(最小値)の、前記反応器内容物の温度および前記ポリマーのアミド基濃度との依存性に関して維持され、および
e)前記予備縮合物が、溶融した状態で直接、または固体の状態が成立した後および場合によりさらなる方法段階の後に、最終反応装置に供給されてよい排出段階。
【0038】
欧州特許出願公開第0976774号明細書は、以下の工程を含むポリアミドの製造方法を記載している:
i)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分、ならびに1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンの含分を有するジアミン成分60〜100モル%を、水15〜35質量%の存在下に、250〜280℃の反応温度および以下の方程式:
【数1】
[前記式中、P0は、反応温度での水の飽和蒸気圧を表す]
を満たす反応圧力にて重縮合して、第一重縮合体を得る工程、
(ii)工程i)と同じ温度範囲を有する大気環境において、および工程i)と同じ含水率にて、工程i)の第一重縮合体を排出する工程、
(iii)工程ii)の排出物を、固相重合または溶融重合に供して分子量を増加させる工程。
【0039】
欧州特許出願公開第0129195号明細書は、ポリアミドの連続的な製造方法であって、蒸発器帯域において、ジカルボン酸とジアミンからなる塩の水溶液を、高められた圧力下に、250〜300℃に加熱して、水の蒸発およびプレポリマーの形成を同時に行い、プレポリマーと蒸気とを連続的に分離し、蒸気を精留して、連行されたジアミンを導き戻し、前記プレポリマーを重縮合帯域に送り込み、1〜10barの過圧下に250〜300℃の温度で縮合させるポリアミドの連続的な製造方法を記載しており、ここで、前記塩水溶液は、1〜10barの過圧下に最大で60秒の滞留時間以内に、蒸発器帯域からの排出時に反応度が少なくとも93%であり、かつ前記プレポリマーの含水率が最大で7質量%であるという条件付で加熱される。
【0040】
欧州特許出願公開第0129196号明細書は、欧州特許出願公開第0129195号明細書と同じ方法を記載しており、ここで、前記塩水溶液は、内部構造体が備えられた、管状の予備縮合帯域の三分の一において、1〜10barの過圧下に反応度が少なくとも93%まで縮合されて、前記予備縮合帯域の残りの三分の二において、前記プレポリマーおよび蒸気相が互いに強く接触させられる。
【0041】
国際公開第02/28941号は、以下の工程を含む、ポリアミドを加水分解重合する連続的な方法を記載している:
a)二価酸とジアミンからなる水性塩溶液を、多相の反応混合物を生じさせるのに好適な温度条件および圧力条件下に重合する工程、ここで、しかし、相分離が回避される反応時間が選択される、
b)固形物の形成なしに、水を除去するために、圧力を低下させるのと同時に前記反応混合物に入熱する工程、
c)この脱水された反応混合物を所望の分子量になるまでさらに重合する工程。
【0042】
米国特許第4,019,866号明細書は、連続的にポリアミドを製造する方法およびその装置を記載している。この方法によれば、ポリアミドを形成する反応物質は、迅速な加熱および均一な混合が可能であるように設計されている反応帯域に連続的に圧送される。前記反応物質は、加熱されて、前記反応帯域内部で、あらかじめ決められた滞留時間の間、高められた温度および高められた圧力で均一に混合されて、このようにして蒸気およびプレポリマーが形成される。この形成された蒸気は、プレポリマーと連続的に分離され、および前記プレポリマーは、反応帯域から取り出される。使用された装置は、カラム状に形が整えられており、精留帯域、第一反応帯域および第二反応帯域を含むものである。第一反応帯域においては、ポリアミドを形成する塩溶液が、部分的に蒸発して部分的に反応し、および第二反応帯域においては、第一反応帯域におけるよりも低い圧力で前記反応が継続される。第一反応帯域の蒸気は、前記精留帯域により排出される。
【0043】
欧州特許出願公開第0123377号明細書は、特に、ポリアミドの製造に用いられる縮合法を記載している。それによれば、塩溶液またはプレポリマーは、0〜27.6barの相対圧(正圧)にある蒸発反応器内で放圧される。前記蒸発反応器内の滞留時間は、0.1〜20秒である。特別な実施態様では、まず、191〜232℃の温度および25質量%未満の溶媒含有率(含水率)で予備重合が行われる。次に、生じた塩溶液は、溶融温度を上回る値に温度を高められて、前記溶液を放圧させて初めて103.4〜206.8barの相対圧にされる。前記ポリマーは、二軸スクリュー押出機に供給され、そこで、約45秒〜7分の滞留時間で重合に供されてよい。
【0044】
独国特許出願公開第4329676号明細書は、高分子の、特に非晶質の部分芳香族コポリアミドを連続的に重縮合する方法を記載しており、ここで、まず、水性の反応混合物から、加熱および少なくとも15barの圧力で予備縮合物が製造され、続いて、温度および圧力が高められてプレポリマーが製造され、最終的に脱気押出機内での縮合によってコポリアミドが製造される。ここで、すでに、前記予備縮合段階では、含水率が低下しており、予備縮合の終わりには約5〜40質量%である。その場合、前記プレポリマーの製造は、220〜350℃および少なくとも20barの圧力で行われる。その場合、後重合は、脱気帯域を有する二軸スクリュー押出機内で実施される。
【0045】
本発明によるポリアミドを製造するため、少なくとも1つの触媒が使用されてよい。好適な触媒は、無機および/または有機リン化合物、スズ化合物または鉛化合物およびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。
【0046】
触媒として好適なスズ化合物は、例えば、酸化スズ(II)、水酸化スズ(II)、スズ(II)塩、一価または多価カルボン酸、例えば、スズ(II)ジベンゾエート、スズ(II)−ジ(2−エチルヘキサノエート)、シュウ酸スズ(II)、ジブチル酸化スズ、ブチルスズ酸(C49SnOOH)、ジブチルスズジラルレートなどである。好適な鉛化合物は、例えば、酸化鉛(II)、水酸化鉛(II)、酢酸鉛(II)、塩基性酢酸鉛(II)、カルボン酸鉛(II)などである。
【0047】
好ましい触媒は、リン化合物、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、および/または一価〜三価のカチオンを有するそれらの塩、例えば、Na、K、Mg、Ca、ZnまたはAlおよび/またはそれらのエステル、例えば、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスファイトまたはトリス(ノニルフェニル)ホスファイトである。触媒として、次亜リン酸、およびその塩、例えば、次亜リン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0048】
前記触媒は、成分a)〜d)の総質量に対して0.005〜2.5質量%の量で使用されるのが好ましい。
【0049】
次亜リン酸および/または塩は、成分a)〜d)の総量に対して50〜1000ppm、特に好ましくは100〜500ppmの量で使用されるのが特に好ましい。
【0050】
前記モル質量を調節するために、少なくとも1つの鎖調節剤が使用されてよく、この鎖調節剤は、モノカルボン酸およびモノアミンから選択されるのが好ましい。この鎖調節剤は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン酸、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)酢酸、3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2−フェニルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−アミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−アミン、4−アミノ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールおよびそれらの混合物から選択されているのが好ましい。アミノ基または酸基と反応しうる、別の単官能性化合物、例えば、無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物またはエステルが調節剤として使用されてもよい。前記鎖調節剤は、オリゴマー化の開始前またはその開始時に前記反応混合物に添加されてよい、および/または後重合の前に前記プレポリマーに添加されてよい。前記鎖調節剤の通常の使用量は、ポリアミド形成に使用される成分1kgあたり5〜500mmol、好ましくはポリアミド形成に使用される成分1kgあたり10〜200mmolである。
【0051】
特別な実施態様では、本発明によるコポリアミドを製造するために、テレフタル酸a)、イソフタル酸b)、ヘキサメチレンジアミンc)、および少なくとも1つの環状ジアミンd)からなる水性組成物が準備されて塩形成に供される。所望の場合、前記溶液に、さらなる成分、例えば、触媒、鎖調節剤、および種々の添加剤が添加されてよい。好適な添加剤は、以下においてポリアミド成形材料に詳しく記載する。すでに本発明によるポリアミドの製造で添加されてもよい添加剤には、例えば、酸化防止剤、光保護剤、通常の加工助剤、核形成剤、および結晶化促進剤が含まれる。これらは、一般に、前記製造のいずれの段階において本発明によるポリアミドに添加されてもよい。すでに本発明によるポリアミドの製造において、充填剤および強化剤を使用することも可能である。充填剤および強化剤は、最後の後重合の前および/またはその間に添加されるのが好ましい。したがって、これらは、例えば、押出機または混練機内での後重合において本発明によるコポリアミドに添加されてよい。この場合、前記押出機が、好適な混合エレメント、例えば、混練ブロックを有している場合が有利である。
【0052】
本発明によるコポリアミドを製造するために準備される前記組成物は、前記溶液の総質量に対して20〜55質量%、特に好ましくは25〜50質量%の含水率を有しているのが好ましい。
【0053】
前記水性組成物の製造は、通常の反応装置、例えば、撹拌槽内で行われてよい。前記成分の混合は、加熱して行われるのが好ましい。前記水性組成物の製造は、実質的にオリゴマー化が行われない条件下に行われるのが好ましい。工程a)における前記水性組成物の製造における温度は、80〜170℃の範囲、特に好ましくは100〜165℃の範囲であるのが好ましい。前記水性組成物の製造は、周囲圧力で行われるか、または高められた圧力下に行われるのが好ましい。圧力は、0.9〜50barの範囲、特に好ましくは1〜10barの範囲であるのが好ましい。特別な実施態様では、前記水性組成物の製造は、前記反応混合物の自生圧で行われる。前記水性組成物の製造は、不活性ガス雰囲気で行われてよい。好適な不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウムまたはアルゴンである。多くの場合、完全な不活性化は必要ないが、前記成分を加熱する前に、前記反応装置が不活性ガスで洗浄されていればすでに充分である。前記水性組成物を製造するための好適な方法では、ジアミン成分は、少なくとも水の一部中に溶解して前記反応装置に装入される。続いて、残っている成分は、好ましくは撹拌されて添加され、含水率は、所望の量に調節される。前記反応混合物は、澄明で均一な溶液が生じるまで撹拌されて温められる。このようにして得られた水性組成物は、実質的に製造温度で、つまり、中間冷却されずにオリゴマー化に使用されるのが好ましい。
【0054】
オリゴマー化してプレポリマーを形成すること、および後重合して分子量を増加させることは、通常の、当業者に公知の方法によって行われてよい。そのような方法のいくつかの例は、ここよりさらに上にすでに言及されている。
【0055】
本発明による部分芳香族コポリアミドは、加工してポリアミド成形材料にする前に、成形に供されてよく、ここで、ポリアミド粒子が得られる。ポリアミドは、まず成形されて1つまたは複数のストランドにされるのが好ましい。そのためには、当業者に公知の装置、例えば、排出側に、例えば有孔板、ノズルまたはノズル板を有する押出機が使用されてよい。前記部分芳香族ポリアミドは、流動状態で成形されてストランドにされて、流動性のストランド状の反応生成物として、または冷却後に顆粒化に供されるのが好ましい。
【0056】
ポリアミド成形材料
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの本発明による部分芳香族コポリアミドを含むポリアミド成形材料である。
【0057】
ポリアミド成形材料は、以下:
A)少なくとも1つの部分芳香族コポリアミド25〜100質量%(先に記載の通り)、
B)少なくとも1つの充填剤および強化剤0〜75質量%、
C)少なくとも1つの添加剤0〜50質量%
を含み、
ここで、成分A)〜C)が、合計100質量%である、ポリアミド成形材料が好ましい。
【0058】
「充填剤および強化剤」(=成分B)という概念は、本発明の範囲において広く理解されており、粒子状の充填剤、繊維物質および任意の変換形態(Uebergangsformen)を含む。粒子状の充填剤は、粉塵状ないし粗粒状の粒径にわたる広い変動幅を有していてよい。充填材料として、有機または無機の充填剤および強化剤が考慮に入れられる。例えば、無機充填剤、例えば、カオリン、白亜、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、グラファイト、ガラス粒子、例えば、ガラス球、ナノスケールの充填剤、例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)、カーボンブラック、ナノスケールの層状ケイ酸塩、ナノスケールの酸化アルミニウム(Al23)、ナノスケールの二酸化チタン(TiO2)、グラフェン、永久的に磁力のある、もしくは磁力可能な金属化合物、および/または合金、層状ケイ酸塩、およびナノスケールの二酸化ケイ素(SiO2)が使用されてよい。前記充填剤は、表面処理されていてもよい。
【0059】
層状ケイ酸塩として、本発明による成形材料において、例えば、カオリン、蛇紋岩、タルク、雲母、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物(Doppelhydroxide)またはそれらの混合物が使用されてよい。前記層状ケイ酸塩は、表面処理されていてよいか、または処理されていなくてよい。
【0060】
さらに、1つまたは複数の繊維物質が使用されてよい。この繊維物質は、公知の無機強化繊維、例えば、ホウ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸繊維、セラミック繊維およびバサルト繊維;有機強化繊維、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維および天然繊維、例えば、木材繊維、亜麻繊維、麻繊維およびサイザル繊維から選択されるのが好ましい。
【0061】
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、金属繊維またはチタンカリウム繊維の使用が特に好ましい。
【0062】
特に、チョップドガラス繊維が使用される。特に、成分B)は、ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでおり、ここで、短繊維が使用されるのが好ましい。これらは、2〜50mmの範囲の長さ、および5〜40μmの直径を有しているのが好ましい。代替的に、エンドレス繊維(ロービング)が使用されてよい。円形状および/または非円形状の断面を有する繊維が好適であり、ここで、後者の場合、主断面軸の副断面軸に対する寸法比は、特に2より大きく、好ましくは2〜8の範囲、特に好ましくは3〜5の範囲である。
【0063】
特別な実施態様において、成分B)は、いわゆる「平坦なガラス繊維」を含む。これは、特に、楕円形もしくは長円の断面、または1つ以上の狭窄部が備えられている長円(いわゆる「まゆ」もしくは「コクーン」繊維)または長方形もしくはほぼ長方形の断面を有するものである。ここで、非円形状の断面を有し、かつ主断面軸の副断面軸に対する寸法比が2超、好ましくは2〜8、特に3〜5であるガラス繊維が使用される。
【0064】
本発明による成形材料を強化するために、円形状または非円形状の断面を有するガラス繊維の混合物が使用されてもよい。特別な実施態様において、平坦なガラス繊維の割合は、上記の通り、圧倒的に多い、つまり、前記ガラス繊維は、繊維の総質量の50質量%超の割合を占めている。
【0065】
成分B)として、ガラス繊維のロービングが使用される場合、このロービングは、10〜20μm、好ましくは12〜18μmの直径を有しているのが好ましい。ここで、ガラス繊維の断面は、円形、楕円形、長円、ほぼ長方形または長方形であってよい。断面軸比が2〜5であるいわゆる平坦なガラス繊維が特に好ましい。特に、Eガラス繊維が使用される。しかし、あらゆる別のガラス繊維の種類、例えば、Aガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Mガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維、またはそれらの任意の混合物またはEガラス繊維との混合物が使用されてもよい。
【0066】
本発明によるポリアミド成形材料は、長繊維強化された棒状顆粒を製造するための公知の方法、特に、エンドレス繊維ストランド(ロービング)をポリマー溶融物に完全に含浸させて、続いて冷却して切断するプルトルージョン法によって製造することができる。このようにして得られた長繊維強化された棒状顆粒であって、3〜25mm、特に4〜12mmの顆粒長さを有しているのが好ましい前記棒状顆粒は、通常の加工法、例えば、射出成形法または圧縮法によってさらに加工されて成形部材にすることができる。
【0067】
本発明によるポリアミド成形材料は、少なくとも1つの充填剤および強化剤B)を、前記ポリアミド成形材料の総質量に対して好ましくは25〜75質量%、特に好ましくは33〜60質量%含んでいる。
【0068】
好適な添加剤C)は、熱安定剤、難燃剤、光保護剤(UV安定剤、UV吸収剤またはUV遮蔽剤)、潤滑剤、染料、核形成剤、金属顔料、金属箔、金属被覆された粒子、静電気防止剤、導電性添加剤、離型剤、光学的光沢剤、消泡剤などである。
【0069】
成分C)として、本発明による成形材料は、少なくとも1つの熱安定剤を好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.02〜2質量%、特に0.1〜1.5質量%含んでいる。
【0070】
前記熱安定剤は、銅化合物、第二級芳香族アミン、立体障害フェノール、ホスファイト、ホスホナイトおよびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。
【0071】
銅化合物が使用される場合、銅の量は、成分A)〜C)の合計に対して0.003〜0.5質量%、特に0.005〜0.3質量%、特に好ましくは0.01〜0.2質量%であるのが好ましい。
【0072】
第二級芳香族アミンをベースとする安定剤が使用される場合、この安定剤の量は、成分A)〜C)の合計に対して好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.2〜1.5質量%である。
【0073】
立体障害フェノールをベースとする安定剤が使用される場合、この安定剤の量は、成分A)〜C)の合計に対して好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.2〜1質量%である。
【0074】
ホスファイトおよび/またはホスホナイトをベースとする安定剤が使用される場合、この安定剤の量は、成分A)〜C)の合計に対して好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.2〜1質量%である。
【0075】
好適な一価または二価の銅の化合物C)は、例えば、無機酸もしくは有機酸を有する一価もしくは二価の銅の塩、または一価もしくは二価のフェノール、一価もしくは二価の銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンとの錯体化合物、好ましくはハロゲン化水素酸、シアン化水素酸のCu(I)塩もしくはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩である。前記一価の銅化合物CuCl、CuBr、Cul、CuCNおよびCu2O、ならびに二価の銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)が特に好ましい。
【0076】
前記銅化合物は、市販されているか、もしくはその製造は、当業者に公知である。前記銅化合物は、それ自体で使用されてよいか、または濃縮物の形態で使用されてよい。ここで、濃縮物とは、好ましくは成分A)と同一の化学的性質のポリマーであると理解され、このポリマーは、銅塩を高い濃度で含むものである。濃縮物の使用は、通常の方法であり、特に多くの場合、使用物質がきわめて少量で計量供給される場合に適用される。前記銅化合物は、さらなる金属ハロゲン化物、特に、アルカリハロゲン化物、例えば、Nal、Kl、NaBr、KBrと組み合わせて使用されるのが有利であり、ここで、金属ハロゲン化物の銅ハロゲン化物に対するモル比は、0.5〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは3〜7である。
【0077】
本発明により使用可能な、第二級芳香族アミンをベースとする安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノール酸との付加物、Naugard(登録商標)445、N,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、またはそれらの2つもしくは3つからなる混合物である。
【0078】
本発明により使用可能な、立体障害フェノールをベースとする安定剤の好ましい例は、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1’−チオエチルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、またはそれらの2つまたは複数の安定剤の混合物である。
【0079】
好ましいホスファイトおよびホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリス−(tert−ブチルフェニル))ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12H−ジベンゾ−[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12−メチル−ジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に、トリス[2−tert−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル)−フェニル−5−メチル]フェニルホスファイト、およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Hostanox(登録商標)PAR24:BASF SE社市販製品)が好ましい。
【0080】
前記熱安定剤の好ましい実施態様は、有機熱安定剤(特に、Hostanox PAR24およびIrganox 1010)、エポキシドをベースとするビスフェノールA(特に、Epikote 1001)ならびにCulおよびKlをベースとする銅安定化剤と組み合わせることにある。有機安定剤とエポキシドからなる市販の安定剤混合物は、例えば、BASF SEのIrgatec NC66である。CulおよびKlのみをベースとする熱安定化が特に好ましい。銅または銅化合物の添加と同時に、さらなる遷移金属化合物、特に、周期表のVB、VIB、VIIBまたはVIIIBの群の金属塩または金属酸化物を使用することは不可能である。さらに、本発明による成形材料は、周期表のVB、VIB、VIIBまたはVIIIBの遷移金属、例えば、鉄粉または鋼粉が添加されないのが好ましい。
【0081】
本発明による成形材料は、添加剤C)として少なくとも1つの難燃剤を、成分A)〜C)の総質量に対して好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは0〜20質量%含んでいる。本発明による成形材料が、少なくとも1つの難燃剤を含む場合、例えば、成分A)〜C)の総質量に対して好ましくは0.01〜30質量%、特に好ましくは0.1〜20質量%の量である。難燃剤C)として、ハロゲン含有およびハロゲン不含の難燃剤およびその協力剤が考慮に入れられる(Gaechter/Mueller、3rd edition 1989 Hanser Verlag、Chapter 11)。好ましいハロゲン不含の難燃剤は、赤リン、ホスフィン酸塩またはジホスフィン酸塩、および/または窒素含有の難燃剤、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン、ホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸メラミン(第一、第二)または第二ピロリン酸メラミン、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミン、グアニジン、およびそれらの当業者に公知の誘導体、ならびにポリマーのリン酸メラミン(CAS番号:56386−64−2もしくは218768−84−4ならびに欧州特許出願公開第1095030号明細書)、ポリリン酸アンモニウム、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(場合により、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの混合物中のポリリン酸アンモニウムも)(欧州特許出願公開第584567号明細書)。さらなるNを含む、もしくはPを含む難燃剤、または難燃剤として好適なPN縮合物は、独国特許出願公開第102004049342号明細書から読み取ることができ、同じく、そのための通常の協力剤、例えば、酸化物またはホウ酸塩も前記明細書から読み取ることができる。好適なハロゲン含有難燃剤は、例えば、オリゴマーの臭素化ポリカーボネート(BC 52 Great Lakes)または4個超のNを有するポリペンタブロモベンジルアクリレート(FR 1025、Dead Sea bromine)、テトラブロモビスフェノールAとエポキシドとの反応生成物、多くの場合、協力剤である酸化アンチモンと一緒に使用される、オリゴマーまたはポリマーの臭素化スチレンである(詳細およびさらなる難燃剤に関して:独国特許出願公開第102004050025号明細書参照)。
【0082】
静電気防止剤として、本発明による成形材料中においては、例えば、カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブが使用されてよい。しかし、カーボンブラックの使用は、前記成形材料の黒変を改善するために用いられてもよい。しかし、前記成形材料は、金属顔料を含んでいなくてもよい。
【0083】
成形体
さらに、本発明は、本発明によるコポリアミドもしくはポリアミド成形材料を使用して製造される成形体に関する。
【0084】
本発明による部分芳香族ポリアミドは、有利には、電気および電子部品のための、および高温領域における自動車適用のための成形部材を製造するための使用に好適である。
【0085】
特別な実施態様は、特に、シリンダーヘッドカバー、エンジンカバー、インタークーラー用ハウジング、インタークーラーバルブ、サクションパイプ、インテークマニホールド、コネクタ、ギヤホイール、ファンホイール、冷却水タンク、熱交換器用ハウジングまたはハウジング部品、クーラントクーラー、インタークーラー、サーモスタット、ウォーターポンプ、ラジエーター、固定部品から選択される、自動車分野の構成部材の形態またはその部品である成形体である。
【0086】
さらなる特別な実施態様は、電気的または電子的に不活性または活性の構成部材、プリント基板、プリント基板の部品、ハウジング構成部材、シート、導管またはそれらの部品である成形体、特に、スイッチ、プラグ、ブッシュ、分配器、リレー、レジスタ、コンデンサ、コイルまたは巻型、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、レギュレータ、集積回路(IC)、プロセッサ、コントローラ、メモリおよび/またはセンサーの形態またはそれらの部品である成形体である。
【0087】
本発明による部分芳香族ポリアミドは、さらに、プラグインコネクタ、マイクロスイッチ、マイクロボタン、および半導体構成部材、特に、発光ダイオード(LED)のリフレクターハウジングを製造するための、無鉛条件(鉛フリーはんだ)下のはんだプロセスにおける使用に特に好適である。
【0088】
特別な実施態様は、電気または電子構成部材の固定エレメント、例えば、スペーサー、ボルト、張り出し部(Leisten)、インサートガイド(Einschubfuehrungen)、ネジおよびナットとしての成形体である。
【0089】
ソケット、プラグインコネクタ、プラグまたはブッシュの形態またはそれらの部品としての成形部材が特に好ましい。前記成形部材は、機械的靭性を要求する機能エレメントを含んでいるのが好ましい。そのような機能エレメントの例は、フィルムヒンジ(Filmscharniere)、スナップフック(Schnapphaken)(スナップ・イン)およびばね舌状部(Federzungen)である。
【0090】
自動車内部空間においては、計器盤、ステアリングコラムスイッチ、座部、ヘッドレスト、センターコンソール、トランスミッションコンポーネントおよびドアモジュールに、自動車外部空間においては、ドアハンドル、サイドミラーコンポーネント、ワイパーコンポーネント、ワイパー保護ハウジング、装飾グリル(Ziergitter)、ルーフレール、サンルーフフレーム、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、サクションパイプ、ワイパーならびに車体外装部品に使用することが可能である。
【0091】
台所および家事分野の場合、流動性が改善されたポリアミドは、台所器具、例えば、電気フライ器、アイロン、スイッチ用ボタンのためのコンポーネント、ならびに庭園余暇分野における適用、例えば、給水装置または園芸用具およびドアハンドルのためのコンポーネントを製造するために使用することが可能である。
【0092】
以下の例は、本発明を明確にするために用いるが、それによって制限されることはない。
【0093】

前記ポリアミドの製造は、撹拌式圧力オートクレーブ内における前記溶融物中の縮合によって行う。そのために、ジアミンおよびジカルボン酸をそれぞれ秤量導入して、続いて、次亜リン酸ナトリウム0.03質量%を触媒として添加する。含水率は、15質量%であった。前記オートクレーブを窒素で複数回洗浄した後、外部温度を345℃に調節する。前記オートクレーブの内部の圧力が40barに達した後、28分以内に、周囲圧力に放圧する。このようにして得られたポリマーを、15分間絶えず窒素流中で後縮合して、続いて、排出バルブを通してストランドとして排出して顆粒化する。
【0094】
第1表に含まれるガラス転移温度(Tg2)、融点(Tm2)、および融解熱(ΔH2)は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した。DSC測定は、前記ポリアミドそれぞれの定義された熱履歴を保証するために、同一の試料で、目的に応じて1回〜2回繰り返す。一般に、2回目の測定の値を示す。これは、測定値(Tg2)、(Tm2)、(ΔH2)の指数「2」で示されている。それぞれ20K/minの昇温および冷却速度で測定した。
【0095】
【表1】