特許第6615098号(P6615098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615098コポリカーボネートおよびこれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615098
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】コポリカーボネートおよびこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20191125BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08G64/18
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-541578(P2016-541578)
(86)(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公表番号】特表2017-525778(P2017-525778A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】KR2015009369
(87)【国際公開番号】WO2016036202
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年9月13日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0118991
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0109123
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0125111
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヒョン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ム−ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョン−チュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ビョン−キュ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン−チョン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ−チェ
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/087595(WO,A1)
【文献】 特開2014−080496(JP,A)
【文献】 特開2014−172938(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013846(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/159025(WO,A1)
【文献】 特開平07−173276(JP,A)
【文献】 特開平07−216080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/18
C08L 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリカーボネート、およびポリカーボネートを含む、ポリカーボネート組成物であって、
前記ポリカーボネートは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含み、
前記コポリカーボネートは、
下記化学式1で表される繰り返し単位、
下記化学式2で表される繰り返し単位、および
下記化学式3で表される繰り返し単位を含む、重量平均分子量1,000〜100,000g/molのコポリカーボネートであるポリカーボネート組成物。
【化15】

前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、C3-10シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOであり、
【化16】

前記化学式2において、
Raは、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
5は、それぞれ独立に、水素またはC1-13アルキルであり、
nは、25以上35以下の整数であり、
【化17】

前記化学式3において、
Rbは、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
6は、それぞれ独立に、水素またはC1-13アルキルであり、
mは、50以上65以下の整数である。
【化18】

前記化学式において、
R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、C3-10シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【請求項2】
前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートの重量比は、99:1〜1:99であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来することを特徴とする、請求項1または2に記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【化19】
【請求項5】
5は、それぞれ独立に、C1-6アルキルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項6】
6は、それぞれ独立に、C1-6アルキルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項7】
5およびR6が互いに同一であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項8】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−1で表されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【化20】
【請求項9】
前記化学式3で表される繰り返し単位は、下記化学式3−1で表されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【化21】
【請求項10】
前記コポリカーボネートは、重量平均分子量が15,000〜35,000g/molであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載のコポリカーボネート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2014年9月5日付の韓国特許出願第10−2014−0118991号、2015年7月31日付の韓国特許出願第10−2015−0109123号、および2015年9月3日付の韓国特許出願第10−2015−0125111号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、コポリカーボネートおよびこれを含む組成物に関し、より詳細には、経済的に製造され、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性が向上したコポリカーボネートおよびこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAのような芳香族ジオールとホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造され、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂は、最近、より多様な分野に適用するために、2種以上の互いに異なる構造の芳香族ジオール化合物を共重合し、構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入して所望の物性を得ようとする研究が多く試みられている。
【0005】
特に、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入させる研究も進められてはいるものの、ほとんどの技術が生産単価が高く、耐薬品性や衝撃強度、特に低温衝撃強度が増加すれば逆に流動性などが低下するという欠点がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、上記の欠点を克服し、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性が改善されたコポリカーボネートを鋭意研究した結果、後述するように、特定のシロキサン化合物をポリカーボネートの主鎖に導入したコポリカーボネートが上記を満足することを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性が改善されたコポリカーボネートを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートを含むポリカーボネート組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、前記コポリカーボネート、またはポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、
下記化学式1で表される繰り返し単位、
下記化学式2で表される繰り返し単位、および
下記化学式3で表される繰り返し単位を含む、重量平均分子量1,000〜100,000g/molのコポリカーボネートを提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、C3-10シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOであり、
【0013】
【化2】
【0014】
前記化学式2において、
Raは、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
5は、それぞれ独立に、水素またはC1-13アルキルであり、
nは、1〜40の整数であり、
【0015】
【化3】
【0016】
前記化学式3において、
Rbは、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
6は、それぞれ独立に、水素またはC1-13アルキルであり、
mは、41〜150の整数である。
【0017】
本発明に係るコポリカーボネートは、前記化学式1で表される繰り返し単位で形成されるポリカーボネート構造を含む。一般に、ポリカーボネートは、全般的な機械的物性に優れているが、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性が低下することから、これを改善するために、ポリカーボネート構造以外の他の構造が導入される必要がある。
【0018】
そこで、本発明では、前記化学式1で表される繰り返し単位のほか、前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位が形成するポリシロキサンがポリカーボネートに共重合された構造を有しており、これにより、従来のポリカーボネートに比べて常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性を大きく改善する特徴がある。
【0019】
特に、前記化学式2で表される繰り返し単位と前記化学式3で表される繰り返し単位は、各化学式内のシリコンオキシドの繰り返し単位数(nおよびm)が互いに異なる。後述する比較例および実施例によれば、前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位のうちのいずれか1つのみを含む場合に比べて、これを全て含む場合、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性の改善程度が著しく増加することを確認することができ、これは、それぞれの繰り返し単位によって物性の改善程度が相互補完的に作用した結果に起因する。
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
<化学式1で表される繰り返し単位>
前記化学式1で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0022】
前記化学式1において、好ましくは、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。また好ましくは、Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに好ましくは、Zは、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0023】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、およびa,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。
【0024】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0025】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表される。
【0026】
【化4】
【0027】
前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ−m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、およびビスハロホルメートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、トリホスゲンまたはホスゲンを使用することができる。
【0028】
<化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位>
前記化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位は、それぞれシロキサン化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0029】
前記化学式2において、Raは、好ましくは、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-4アルキレンであり、最も好ましくは、プロパン−1,3−ジイルである。さらに、R5は、好ましくは、それぞれ独立に、C1-6アルキルであり、より好ましくは、それぞれ独立に、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0030】
前記化学式3において、Rbは、好ましくは、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-4アルキレンであり、最も好ましくは、プロパン−1,3−ジイルである。さらに、R6は、好ましくは、それぞれ独立に、C1-6アルキルであり、より好ましくは、それぞれ独立に、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0031】
また好ましくは、RaおよびRbが互いに同一である。また好ましくは、R5およびR6が互いに同一である。
【0032】
また好ましくは、前記化学式2は、下記化学式2−1で表される。
【0033】
【化5】
【0034】
また好ましくは、前記化学式3は、下記化学式3−1で表される。
【0035】
【化6】
【0036】
また好ましくは、前記化学式1において、nは、10以上、15以上、20以上、または25以上で、35以下の整数である。また好ましくは、前記化学式2において、mは、45以上、50以上、または55以上で、100以下、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、または65以下の整数である。
【0037】
好ましくは、前記化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位は、それぞれ下記化学式2−2で表されるシロキサン化合物および下記化学式3−2で表されるシロキサン化合物に由来する。
【0038】
【化7】
【0039】
前記化学式2−2において、
Ra、R5およびnの定義は、先に定義した通りであり、
【0040】
【化8】
【0041】
前記化学式3−2において、
Rb、R6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0042】
前記「シロキサン化合物に由来する」の意味は、前記それぞれのシロキサン化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記それぞれの化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位を形成することを意味する。また、前記化学式2および3で表される繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0043】
前記化学式2−2で表されるシロキサン化合物および前記化学式3−2で表されるシロキサン化合物の製造方法は、それぞれ下記反応式1および2の通りである。
【0044】
【化9】
【0045】
前記反応式1において、
5およびnの定義は、先に定義した通りであり、Ra’は、C2-10アルケニルであり、
【0046】
【化10】
【0047】
前記反応式2において、
6およびmの定義は、先に定義した通りであり、Rb’は、C2-10アルケニルである。
【0048】
前記反応式1および反応式2の反応は、金属触媒下で行うことが好ましい。前記金属触媒としては、Pt触媒を使用することが好ましく、Pt触媒として、アシュビー(Ashby)触媒、カルステッド(Karstedt)触媒、ラモロー(Lamoreaux)触媒、スパイヤー(Speier)触媒、PtCl2(COD)、PtCl2(ベンゾニトリル)2、およびH2PtBr6からなる群より選択された1種以上を使用することができる。前記金属触媒は、前記化学式7または8で表される化合物100重量部を基準として、0.001重量部以上、0.005重量部以上、または0.01重量部以上で、1重量部以下、0.1重量部以下、または0.05重量部以下で使用することができる。
【0049】
また、前記反応温度は、80〜100℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜5時間が好ましい。
【0050】
また、前記化学式7または8で表される化合物は、オルガノジシロキサンとオルガノシクロシロキサンとを酸触媒下で反応させて製造することができ、前記反応物質の含有量を調節して、nおよびmを調節することができる。前記反応温度は、50〜70℃が好ましい。また、前記反応時間は、1時間〜6時間が好ましい。
【0051】
前記オルガノジシロキサンとして、テトラメチルジシロキサン、テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびヘキサフェニルジシロキサンからなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記オルガノシクロシロキサンは、一例として、オルガノシクロテトラシロキサンを使用することができ、その一例として、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0052】
前記オルガノジシロキサンは、前記オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、または2重量部以上で、10重量部以下、または8重量部以下で使用することができる。
【0053】
前記酸触媒としては、H2SO4、HClO4、AlCl3、SbCl5、SnCl4、および酸性白土からなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記酸触媒は、オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、0.5重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下で使用することができる。
【0054】
特に、前記化学式2で表される繰り返し単位と前記化学式3で表される繰り返し単位の含有量を調節して、コポリカーボネートの低温衝撃強度と流動性を同時に改善することができ、好ましくは、前記化学式2で表される繰り返し単位と前記化学式3で表される繰り返し単位の重量比は、99:1〜1:99、より好ましくは、80:20〜20:80である。前記繰り返し単位の重量比は、シロキサン化合物、例えば、前記化学式2−2で表されるシロキサン化合物および前記化学式3−2で表されるシロキサン化合物の重量比に対応する。
【0055】
<コポリカーボネート>
本発明に係るコポリカーボネートは、前記化学式1〜3で表される繰り返し単位を含み、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0056】
また好ましくは、本発明に係るコポリカーボネートは、重量平均分子量が15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量は、20,000g/mol以上、21,000g/mol以上、22,000g/mol以上、23,000g/mol以上、24,000g/mol以上、25,000g/mol以上、26,000g/mol以上、27,000g/mol以上、または28,000g/mol以上である。また、前記重量平均分子量は、34,000g/mol以下、33,000g/mol以下、または32,000g/mol以下である。
【0057】
また、前記化学式1で表される繰り返し単位の重量と、前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位の総重量との重量比(化学式1:(化学式2+化学式3))は、1:0.04−0.07が好ましい。
【0058】
本発明に係るコポリカーボネートは、先に説明した芳香族ジオール化合物、化学式2−2で表される化合物、化学式3−2で表される化合物、およびカーボネート前駆体を含む組成物を重合する段階を含む製造方法で製造することができる。
【0059】
前記重合時、前記組成物中の、前記化学式2−2で表される化合物および化学式3−2で表される化合物の総量は、前記組成物100重量%に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、または1.5重量%以上で、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下が好ましい。
【0060】
また、前記芳香族ジオール化合物は、前記組成物100重量%に対して、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上で、80重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下で使用することができる。
【0061】
さらに、前記カーボネート前駆体は、前記組成物100重量%に対して、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%で、60重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下で使用することができる。
【0062】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0063】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0064】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0065】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0066】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0067】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0068】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0069】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0070】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0071】
ポリカーボネート組成物
また、本発明は、前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートを含む、ポリカーボネート組成物を提供する。前記コポリカーボネートを単独でも使用できるが、必要に応じて、ポリカーボネートを共に使用することによって、コポリカーボネートの物性を調節することができる。
【0072】
好ましくは、前記ポリカーボネートは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含む。
【0073】
【化11】
【0074】
前記化学式4において、
R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、C3-10シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0075】
前記化学式4で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。前記使用可能な芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体は、先に化学式1で表される繰り返し単位で説明したのと同じである。
【0076】
好ましくは、前記化学式4のR’1〜R’4およびZ’は、それぞれ先に説明した化学式1のR1〜R4およびZと同じである。
【0077】
また好ましくは、前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記化学式4−1で表される。
【0078】
【化12】
【0079】
前記ポリカーボネート組成物において、コポリカーボネートおよびポリカーボネートの重量比は、99:1〜1:99であることが好ましく、より好ましくは、90:10〜50:50、最も好ましくは、80:20〜60:40である。
【0080】
また、本発明は、前記コポリカーボネート、または前記ポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【0081】
好ましくは、前記物品は、射出成形品である。また、前記物品は、一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料、および染料からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0082】
前記物品の製造方法は、本発明に係るコポリカーボネートと酸化防止剤などのような添加剤とをミキサを用いて混合した後、前記混合物を押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後、射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0083】
上記で説明したように、本発明により特定のシロキサン化合物をポリカーボネートの主鎖に導入したコポリカーボネートは、常温衝撃強度、低温衝撃強度および流動性の物性が改善される効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明をこれらにのみ限定するものではない。
【0085】
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(AP−30)の製造
【0086】
【化13】
【0087】
オクタメチルシクロテトラシロキサン42.5g(142.8mmol)、テトラメチルジシロキサン2.26g(16.8mmol)を混合した後、この混合物を、酸性白土(DC−A3)をオクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比1重量部と共に3Lフラスコ(flask)に入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、これをエチルアセテートで希釈し、セライト(celite)を用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(n)は、1H NMRで確認した結果、30であった。
【0088】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、2−アリルフェノール9.57g(71.3mmol)およびカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応ポリオルガノシロキサンは120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンは薄黄色オイルであり、繰り返し単位(n)は30であり、それ以上の精製は必要でなく、化学式1で表されるポリオルガノシロキサンの製造は1H NMRにより確認し、これをAP−30と名付けた。
【0089】
<製造例2:ポリオルガノシロキサン(AP−60)の製造>
【0090】
【化14】
【0091】
オクタメチルシクロテトラシロキサン57.5g(193.2mmol)、テトラメチルジシロキサン2.26g(16.8mmol)を混合した後、この混合物を、酸性白土(DC−A3)をオクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比1重量部と共に3Lフラスコ(flask)に入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、これをエチルアセテートで希釈し、セライト(celite)を用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(n)は、1H NMRで確認した結果、60であった。
【0092】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、2−アリルフェノール7.07g(60.6mmol)およびカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応ポリオルガノシロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンは薄黄色オイルであり、繰り返し単位(n)は60であり、それ以上の精製は必要でなく、化学式1で表されるポリオルガノシロキサンの製造は1H NMRにより確認し、これをAP−60と名付けた。
【0093】
<製造例3:ポリカーボネートの製造>
20Lガラス(Glass)反応器に、ビスフェノールA(BPA)978.4g、NaOH32%水溶液1,620g、蒸留水7,500gを入れて、窒素雰囲気でBPAが完全に溶けたことを確認した後、メチレンクロライド3,670gおよびp−tert−ブチルフェノール18.3gを投入して混合した。これにトリホスゲン542.5gを溶かしたメチレンクロライド3,850gを1時間滴加した。この時、NaOH水溶液をpH12に維持した。滴加完了後、15分間熟成し、トリエチルアミン195.7gをメチレンクロライドに溶かして投入した。10分後、1N塩酸水溶液でpHを3に合わせた後、蒸留水で3回水洗してから、メチレンクロライド相を分離した後、メタノールで沈殿させて、粉末状のポリカーボネート樹脂を得た。PCスタンダード(Standard)を利用したGPCで分子量を測定して、重量平均分子量が27,500g/molであることを確認した。
【0094】
<実施例1>
段階1)コポリカーボネートの製造
20Lガラス(Glass)反応器に、ビスフェノールA(BPA)978.4g、NaOH32%水溶液1,620g、蒸留水7,500gを入れて、窒素雰囲気でBPAが完全に溶けたことを確認した後、メチレンクロライド3,670g、p−tert−ブチルフェノール18.3g、先に製造したポリオルガノシロキサン55.2g(製造例1のポリオルガノシロキサン(AP−30)80wt%および製造例2のポリオルガノシロキサン(AP−60)20wt%の混合物)を投入して混合した。これにトリホスゲン542.5gを溶かしたメチレンクロライド3,850gを1時間滴加した。この時、NaOH水溶液をpH12に維持した。滴加完了後、15分間熟成し、トリエチルアミン195.7gをメチレンクロライドに溶かして投入した。10分後、1N塩酸水溶液でpHを3に合わせた後、蒸留水で3回水洗してから、メチレンクロライド相を分離した後、メタノールで沈殿させて、粉末状のコポリカーボネートを得た。得られたコポリカーボネートは、PCスタンダード(Standard)を利用したGPCで分子量を測定して、重量平均分子量が29,500g/molであることを確認した。
【0095】
段階2)射出試片の製造
前記段階1で製造したコポリカーボネートに、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.050重量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.010重量部、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.030重量部添加して、ベント付きΦ30mm二軸押出機を用いて、ペレット化した後、JSW(株)N−20C射出成形機を用いて、シリンダ温度300℃、金型温度90℃で試片を成形した。
【0096】
<実施例2>
前記実施例1と同様の方法で製造するが、ポリオルガノシロキサン55.2g(製造例1のポリオルガノシロキサン(AP−30)20wt%および製造例2のポリオルガノシロキサン(AP−60)80wt%の混合物)を使用して、コポリカーボネートおよびその試片をそれぞれ製造した。
【0097】
<実施例3>
前記実施例1の段階1で製造したコポリカーボネート80重量%と前記製造例3のポリカーボネート20重量%を、前記実施例1の段階2のコポリカーボネートの代わりに使用して、その組成物およびその試片を製造した。
【0098】
<比較例1>
前記実施例1と同様の方法で製造するが、ポリオルガノシロキサン55.2g(製造例1のポリオルガノシロキサン(AP−30)100wt%)を使用して、コポリカーボネートおよびその試片をそれぞれ製造した。
【0099】
<比較例2>
前記実施例1と同様の方法で製造するが、ポリオルガノシロキサン55.2g(製造例1のポリオルガノシロキサン(AP−60)100wt%)を使用して、コポリカーボネートおよびその射出試片をそれぞれ製造した。
【0100】
<比較例3>
前記製造例3のポリカーボネートを、前記実施例1の段階2のコポリカーボネートの代わりに使用して、その成形試片を製造した。
【0101】
<実験例:物性評価>
前記実施例で製造されたコポリカーボネートおよび比較例で製造されたポリカーボネート試片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記表1に示した。
【0102】
*重量平均分子量(g/mol):Agilent1200 seriesを用いて、PC standardで検量して測定した。
【0103】
*流動性(MI):ASTM D1238(300℃、1.2kgの条件)に基づいて測定した。
【0104】
*常温衝撃強度および低温衝撃強度(J/m):ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃と−30℃でそれぞれ測定した。
【0105】
*繰り返し単位:Varian500MHzを用いて、1H−NMRで測定した。
【0106】
*透明度(Haze):ASTM D1003に基づいて、3mmの厚さの試片で測定した。
【0107】
【表1】