(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは鋭意検討の結果、疎水性粉体、カルボン酸変性シリコーン、塩基性化合物及び水を組み合わせることによって、カルボン酸変性シリコーンの界面活性剤又は分散剤としての作用により水相中に疎水性粉体を良好に分散可能であること、並びに、これを皮膚に塗布すると皮膚自体の弱酸性によってカルボン酸変性シリコーンのカルボン酸変性部位がカルボン酸塩から遊離カルボン酸に変化して界面活性能・分散能が低下して、疎水性粉体が皮膚上に堆積可能となり、疎水性の被膜を皮膚上に形成することを見出し、本発明を完成した。
【0032】
特に、疎水性粉体、カルボン酸変性シリコーン、多価アルコールを均一に混合し、更に、塩基性化合物及び水を添加して、pH6.5〜14.0の範囲に調整することで、分散性及び長期保存安定性に優れた化粧料を好適に得ることができる。
【0033】
本発明の化粧料が油剤を含む場合は、本発明の化粧料を皮膚に塗布すると疎水性粉体と共に油剤も皮膚上に堆積して疎水性の被膜を形成して、その密着性を高めることができる。本発明の化粧料が油剤を含む場合は、乳化剤として界面活性剤を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の化粧料が高級脂肪酸の塩を含む場合は、皮膚塗布前は、当該塩の界面活性作用により疎水性粉体の水相中での分散をより良好なものとすることができる。更に、本発明の化粧料が油剤を含む場合は、前記高級脂肪酸の塩が良好な乳化剤として機能する一方、皮膚塗布後は、当該塩が遊離の高級脂肪酸に変化し、疎水性粉体(及び油剤)と共に皮膚上に堆積して、より耐水性に優れた疎水性被膜を形成することができる。
【0035】
本発明の化粧料が多価アルコール及び/又は水溶性増粘剤を含む場合は、水相中の疎水性粉体の分散性を更に高めることができる。
【0036】
本発明の化粧料がカルボン酸変性シリコーン以外の界面活性剤を含まない場合、また、本発明の化粧料が高級脂肪酸の塩を含む場合は、カルボン酸変性シリコーン及び前記高級脂肪酸の塩以外の界面活性剤を含まない場合は、本発明の化粧料により皮膚上に得られる化粧膜の耐水性をより高めることができる。
【0037】
本発明の化粧料に必須に含まれる界面活性剤成分((B)成分、或いは、(B)及び(F)成分)以外の界面活性剤は、特に限定されるものではないが、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の各種の界面活性剤が挙げられる。
【0038】
なお、本発明において、上記「含まない」とは、実質的に含まない、の意味であり、ここで「実質的に」とは、本発明の化粧料の全質量の5質量%以下までは含むことができることを意味する。但し、その含有量は少ない方が有利であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更により好ましい。本発明の化粧料には、必須に含まれる界面活性剤((B)成分、或いは、(B)及び(F)成分)以外の界面活性剤が全く含まれないことが最も好ましい。
【0039】
以下、本発明の化粧料について、更に詳細に説明する。
【0040】
[疎水性粉体]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(A)疎水性粉体を含む。
【0041】
本発明における「粉体」は、化粧料の成分として一般に使用されるものであり、白色及び着色顔料、紫外線散乱剤等の微粒子(いわゆるナノ粒子を含む)並びに、体質顔料を含む。白色及び着色顔料は化粧料の着色等に使用され、一方、体質顔料は、化粧料の感触改良等に使用される。本発明における「粉体」としては、化粧料に通常使用される白色及び着色顔料、並びに、体質顔料を特に制限なく使用することができる。1種類又は2種類以上の粉体を配合することが好ましい。
【0042】
粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、紡錘状等)、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、及び、粒子構造(多孔質、無孔質等)は何ら限定されるものではないが、平均一次粒子径が1nm〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0043】
粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられ、更に、これらを複合化したものも使用することができる。具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、シリコーンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン球状粉体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体 としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、ベンガラ、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等のタール系色素をレーキ化したもの、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等の天然色素をレーキ化したもの等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、雲母チタン、酸化鉄処理雲母チタン、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ステンレス等の金属粉末が挙げられる。
【0044】
本発明では疎水性の粉体が使用される。したがって、上記の粉体自体の表面が疎水性でない場合は、その表面に疎水化処理を施すことが好ましい。なお、これらの疎水性粉体同士を複合化してもよい。
【0045】
疎水化処理は、特に限定されるものではないが、前記粉体を各種の疎水化表面処理剤で処理することが挙げられ、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン(日本化粧品表示名称ではメチコン、)処理、(ジメチコン/メチコン)コポリマー(日本化粧品表示名称ではハイドロゲンジメチコン)処理、ジメチルポリシロキサン(日本化粧品表示名称ではジメチコン)処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理等のオルガノシロキサン処理;ステアリン酸亜鉛処理等の金属石鹸処理;シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理等のシラン処理;パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理等のフッ素化合物処理;N-ラウロイル-L-リジン処理等のアミノ酸処理;スクワラン処理等の油剤処理;アクリル酸アルキル処理等のアクリル処理等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
これらの処理の中でも、シリコーン化合物による処理が、耐水性とカルボン酸変性シリコーンによる分散のし易さの点から好ましく、中でも、メチルハイドロジェンポリシロキサン、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、ジメチルポリシロキサン、アルキルシランによる処理が特に好ましい。
【0047】
疎水性粉体としてシリコーンエラストマー粉体を使用することもできる。シリコーンエラストマー粉体は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物であり、側鎖若しくは末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖若しくは末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー粉体は、T単位及びQ単位からなるシリコーン樹脂粉体に比して、柔らかく、弾力があり、また、吸油性に優れるため、肌上の油脂を吸収し、化粧崩れを防ぐことができる。
【0048】
シリコーンエラストマー粉体は、球状、扁平状、不定形状等種々の形状を取りうる。シリコーンエラストマー粉体は油分散体の形態であってもよい。本発明の化粧料には、粒子形状を有するシリコーンエラストマー粉体であり、電子顕微鏡を用いた観察による一次粒子径及び/又はレーザー回析/散乱法で測定された平均一次粒子径が0.1〜50μmの範囲に入り、且つ、一次粒子の形状が球状のシリコーンエラストマー粉体を好適に配合することができる。シリコーンエラストマー粉体を構成するシリコーンエラストマーは、JIS K 6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」のタイプAデュロメータによる硬さが80以下のものが好ましく、65以下のものがより好ましい。
【0049】
シリコーンエラストマー粉体はシリコーンレジン、シリカ等による表面処理が任意に施されていていてもよい。前記表面処理としては、例えば、特開平2−243612号公報、特開平8−12545号公報、特開平8−12546号公報、特開平8−12524号公報、特開平9−241511号公報、特開平10−36219号公報、特開平11−193331号公報、特開2000−281523号公報等に記載されているものが挙げられる。なお、シリコーンエラストマー粉体としては、「化粧品種別配合成分規格」収載の架橋型シリコーン末が該当する。シリコーンエラストマー粉体の市販品としては、例えば東レ・ダウコーニング社製のトレフィルE−506S、トレフィルE−508、9701 Cosmetic Powder、9702 Powder等が挙げられる。これらのシリコーンエラストマー粉体は表面処理がされていてもよく、表面処理剤の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、シリカ、酸化チタン等の無機酸化物、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物が挙げられる。
【0050】
これら疎水性粉体の中でも、疎水化処理された微粒子無機粉体が紫外線防止効果の点から好ましく用いられ、中でも疎水化微粒子酸化チタン及び/又は疎水化微粒子酸化亜鉛が好ましい。疎水化微粒子酸化チタン及び/又は疎水化微粒子酸化亜鉛の粒子径は1〜200nmであることが紫外線防止効果及び分散性の点から好ましく、より好ましくは10〜80nmである。更に、本発明においては、疎水化処理された無機顔料粉体、パール顔料粉体等を疎水性無機粒子として用いてもよく、上記の疎水化された微粒子無機粉体と疎水化処理された無機顔料粉体等を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の化粧料中の疎水性粉体の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、1〜40質量%が好ましく、2〜35質量%がより好ましく、3〜30質量%が更により好ましく、4〜25質量%が更により好ましく、5〜20質量%が更により好ましい。
【0052】
[カルボン酸変性シリコーン]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(B)カルボン酸変性シリコーンを含む。
【0053】
本発明の化粧料中のカルボン酸変性シリコーンは、後述する塩基性化合物の存在により、カルボン酸変性部位がアニオン化した状態で該化粧料中に存在する。したがって、前記カルボン酸変性シリコーンは界面活性剤又は分散剤として機能し、(A)疎水性粉体を本発明の化粧料中に良好に分散することができる。
【0054】
本発明の化粧料に含まれるカルボン酸変性シリコーンは、少なくとも1つのカルボキシル基含有有機基が側鎖又は末端に導入されたオルガノシロキサンであれば特に限定されない。好ましくは、カルボキシル基含有有機基はオルガノシロキサンの側鎖に導入される。
【0055】
したがって、カルボン酸変性シリコーンとしては、シリコーン主鎖にカルボキシル基含有有機基がグラフトしたもの、シリコーン主鎖の片末端にカルボキシル基含有有機基が付加したもの、シリコーン主鎖の両末端にカルボキシル基含有有機基が付加したもの、シリコーン主鎖の両末端にカルボキシル基含有有機基が付加し、更にカルボキシル基含有有機基がグラフトしたもの、シリコーン主鎖にシリコーン鎖(シルアルキレン結合により結合したシロキサンマクロモノマーを含む)とカルボキシル基含有有機基がグラフトしたもの、シリコーン主鎖又は末端に、カルボシロキサンデンドリマー構造を有するシロキサン変性基とカルボキシル基含有有機基を有するもの、任意で更に、炭素原子数6以上の長鎖のアルキル基を有するもの等が挙げられる。最も好適には、シリコーン主鎖にカルボキシル基含有有機基がグラフトしたものが挙げられる。なお、カルボン酸変性シリコーンが長鎖アルキル基を有することで、炭化水素油等の有機系油剤あるいは有機系化粧料原料(特に、UV吸収剤)との配合安定性が改善される場合がある。
【0056】
カルボキシル基とケイ素原子の間には連結基が存在してもよく、当該連結基としては、ヘテロ原子を有してもよいアルキレン基、ポリオキシアルキレン基等の2価以上の有機基が挙げられるが、特に制限されるものではない。また、n価の連結基(nは3以上の数)により、(n−1)個のカルボキシル基がケイ素原子に結合したカルボン酸変性シリコーンであってもよい。具体的には、以下の連結基を介してカルボキシル基をシリコーンの主鎖又は側鎖に有するシリコーンが、本発明のカルボン酸変性シリコーンに包含される。
【0057】
特表平11−504665号公報に記載の、下記のケイ素結合カルボキシル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン:
【化2】
(式中、RはC
1−C
12アルキレン基、C
1−C
12アルキレンオキシ基、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NR’−(R’はC
1−C
6アルキル基)又はこれらの組み合わせを含む二価基を示す)、
特開2002−114849号公報に記載の、以下のいずれかのカルボキシル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン:
【化3】
(式中、R
1〜R
24は、同一又は異なって、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数2〜22の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を示し、Xは−O−又はNH−を示し、Mは水素原子を示す)、
特表2005−524747号公報に記載の以下のカルボキシル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン:
【化4】
(式中、Bは、2〜30個の炭素原子を有し、任意に、1〜30個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基によって置換されたアルキレン残基を表し、
R’は、水素原子、又は1〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
Eは、存在しないか、又は1〜5個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有し、任意に、1〜30個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基によって置換されたアルキレン残基であり;Mは、水素原子である)、
特開2009−263643号公報に記載の、以下の平均組成式で表されるカルボキシル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン:
【化5】
[式中、R
1は炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数1〜30のフロロアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数6〜30のアラルキル基から選択される基であり、
R
2は下記式(2)で表される基であり、cが0の場合にはR
2は該オルガノポリシロキサンの少なくとも一の末端に結合されており、
【化6】
(式中、R
4は炭素原子数2〜20の、酸素原子を有する若しくは有しない2価の炭化水素基であり、R
5は水素原子であり、R
6は、互いに独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R
7は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である)
R
3は下記式(3)で表される基であり、
【化7】
(式中、R
2は上記のとおりであり、R
8は、互いに独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数1〜30のフロロアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数6〜30のアラルキル基から選択される基であり、QはC
dH
2d(但し、dは1〜5の整数、好ましくは2〜4の整数)又は酸素原子であり、kは0〜500、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜60の整数であり、hは0〜3の整数であり、好ましくは0である)。
【0058】
本発明において使用されるカルボン酸変性シリコーンとして、特に好適には、シリコーン主鎖の側鎖又は末端の少なくとも1つのケイ素原子が一般式:-R
1-(OR
2)p-(O)w-R
3-COOH(式中、R
1 は炭素数2〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表し、R
2 は炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表し、R
3 は結合手(−)又は炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を表し、pは0〜200の数を表し、wは0又は1の数を表す)で表わされるカルボキシル基含有有機基に結合したものが挙げられる。
【0059】
前記カルボキシル基含有有機基を表す一般式において、R
1 は炭素数2〜22の直鎖又は分岐鎖の、好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜10の直鎖のアルキレン基であり、例えばエチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等が挙げられる。
【0060】
また、R
2の炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキルレン基としては、例えばエチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレン基が挙げられ、特にエチレン基が好ましい。
【0061】
R
3の炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、例えばメチレン、エチレン、エチルエチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン等の基を挙げることができ、中でも炭素数1〜12、特にR
1とR
3の炭素数の和が2〜22となるものが好ましい。
【0062】
pは0〜200の数を示すが、0〜20の数が好ましく、特に0〜10の数が好ましい。また、wは0又は1の数を示すが、好ましくは0である。なお、p、wが共に0であるとき、当該カルボキシル基含有有機基は、構造式-(C
nH
2n)-COOHで示され、1個のカルボキシル基が、炭素数3〜44の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を介してケイ素原子に結合する構造を有することが好ましい。なお、式中、nは3〜44の数であり、3〜20の数であることが好ましく、特に、3〜16の数であることが好ましい。
【0063】
本発明において使用されるカルボン酸変性シリコーンとして、特に、下記構造式(A):
【化8】
(式中、Rcは、前記一般式:-R
1-(OR
2)p-(O)w-R
3-COOHで示されるカルボキシル基含有有機基を表し、Rは、同一又は異なり、炭素数1〜22のアルキル若しくはアルコキシ基又はフェニル基を表し、R´は、Rc又はRであり、a、bは各々0以上の範囲の数であり、a+bは0〜1000の範囲の数である。但し、b=0のとき、R´の少なくとも一方はRcである。)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。特に、特開平8-109263号公報に開示されたカルボン酸変性シリコーン、国際公開第2009/22621号等に開示されたカルボン酸変性シリコーンの一部(シロキサンデンドロン構造を有するもの以外)は、前記構造式(A)で表され、且つ、本発明において好適に使用されるカルボン酸変性シリコーンに含まれる。
【0064】
構造式(A)で表されるカルボン酸変性シリコーンであってより好適なものとしては、a+bが0〜500の範囲の数であり、特にb>0であって、シリコーン主鎖に前記一般式:-R
1-(OR
2)p-(O)w-R
3-COOHで示されるカルボキシル基含有有機基がグラフトしたカルボン酸変性シリコーン又はb=0であって、シリコーン主鎖の両末端のR´が、一般式:-R
1-(OR
2)p-(O)w-R
3-COOHで示されるカルボキシル基含有有機基であるカルボン酸変性シリコーンが挙げられる。本発明において、特に好適なカルボン酸変性シリコーンは、側鎖部分に多数のカルボキシル基含有有機基を有するものであり、b>aであることが好ましく、より好適には、b>0かつa=0である。b>aとは、側鎖部分の半数より多くのシロキサン単位がカルボキシル基含有有機基を有するものであり、a+bが1〜500の範囲の数であることが好ましい。また、a=0のとき、b>0であれば、側鎖部分のシロキサン単位は全てカルボキシル基含有有機基を有するものであり、bが1〜200の範囲の数又は1〜50の範囲の数であることが最も好ましい。
【0065】
構造式(A)において、Rは、メチル基、アルコキシ基又はフェニル基であることが好ましいが、炭化水素油等の有機系油剤あるいは有機系化粧料原料(特に、UV吸収剤)との配合安定性の観点から、一部に炭素原子数6〜22の長鎖アルキル基を有するものであっても良い。カルボキシル基含有有機基による変性率は、特に制限されるものではないが、a+bが0〜500の範囲の数であれば、シリコーン主鎖の両末端にカルボキシル基含有有機基が結合する場合を含め、分子中に平均して2〜100の前記カルボキシル基含有有機基を有することが好ましい。
【0066】
本発明において、かかるカルボン酸変性シリコーンは、公知の方法、例えばSi−H基を有するジメチルポリシロキサンと不飽和カルボン酸エステル化合物を白金触媒下で付加反応し、更にケン化により、カルボン酸にする方法;Si−H基を有するジメチルポリシロキサンと不飽和カルボン酸シリルエステル又はアリルオキシカルボン酸シリルエステルを白金触媒下で付加反応し、反応後加水分解にて目的物を得る方法;並びにビス(ヒドロキシカルボニルエチル)テトラメチルジシロキサンと環状シロキサン及び酸性触媒を用いて平衡化反応し、両末端カルボン酸変性シリコーンを得る方法(シリコーンハンドブック、伊藤邦雄編、日刊工業新聞社、166〜167頁)等により製造することができる。
【0067】
また、本発明においては、カルボン酸変性シリコーンの市販品をそのまま、又は溶媒を除去して使用することもでき、その具体例としてはSF8418、BY16−880、BY16−754、BY16−750、FV2056, FZ−3806(東レ・ダウコーニング株式会社製)、TSF 4770、TSF4771(株式会社モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)、X−22−162A、X−22−162C、X−22−3701E、X−22−3710(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0068】
本発明の化粧料は前記(B)カルボン酸変性シリコーンを疎水性粉体10質量部に対して0.01〜20質量部の範囲で含むことが好ましく、0.1〜15質量部の範囲で含むことが好ましく、1〜10質量部の範囲で含むことがより好ましい。
【0069】
[塩基性化合物]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(C)塩基性化合物を含む。
【0070】
本発明に用いられる塩基性化合物は、水中に溶解した際に塩基性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、各種の無機化合物及び有機化合物を使用することができる。1種類又は2種類以上の塩基性化合物を配合してもよい。
【0071】
有機化合物としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アルギニン、グアニジン等が挙げられる。
【0072】
無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、アンモニア等が挙げられ、これらのうち、水酸化カリウムを特に好適に用いることができる。
【0073】
本発明の化粧料中の塩基性化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、配合されるカルボン酸変性シリコーンに含まれるカルボン酸基1モルに対し1価の塩基の場合はカルボン酸基/1価の塩基(モル比)が1/0.5〜1/1.5が好ましい。具体的には化粧料の全質量を基準として、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜4質量%がより好ましく、0.05〜4質量%が更により好ましく、0.08〜3質量%が更により好ましい。
【0074】
[水]
本発明の化粧料は(D)水を含む。水は、本発明の化粧料中において水相を形成する。
【0075】
本発明の化粧料中の水の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、20〜95質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく、45〜70質量%が更により好ましく、47〜65質量%が更により好ましく、50〜60質量%が更により好ましい。
【0076】
本発明の化粧料のpHは弱アルカリ性であることが好ましく、具体的には、7.1〜9.5の範囲であることが好ましく、7.2〜8.5の範囲がより好ましい。
【0077】
本発明の化粧料のpHがアルカリ性の場合には、(B)カルボン酸変性シリコーンのカルボン酸変性部位がアニオン化することにより、該(B)カルボン酸変性シリコーンが界面活性剤としての機能を良好に発揮することができる。したがって、(A)疎水性粉体が水相中に良好に分散され、経時的に安定な分散状態を維持することができる。
【0078】
[多価アルコール]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(G)多価アルコールを含むことができる。
【0079】
多価アルコールを含むことにより、本発明の化粧料の保湿感、使用感を調整することができ、また、(B)成分と(A)成分の疎水性粉体を多価アルコールとともに事前に混合することで、水相に、より均一に分散させることができる。
【0080】
多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等を挙げることができ、これらの多価アルコールは単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。(B)成分と(A)成分の疎水性粉体とを多価アルコールとともに事前に混合する場合は、液状の多価アルコールが水相により均一に分散できる点で好ましく、中でもプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0081】
本発明の化粧料中の多価アルコールの配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、0.3〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%が更により好ましく、2〜20質量%が更により好ましく、3〜15質量%が更により好ましい。
【0082】
[油剤]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(E)油剤を含むことができる。
【0083】
本発明における「油剤」は、化粧料の成分として一般に使用されるものであり、特に限定されるものではない。油剤は、通常は室温で液体であるが、ワックスのような固形であってもよく、後述する高粘度かつ粘稠なガム状或いはペースト状であってもよい。
【0084】
油剤は、シリコーン油、非極性有機化合物及び低極性有機化合物からなる群から選択される5〜100℃で液状の少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
シリコーン油は疎水性であり、その分子構造は、環状、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。シリコーン油の25℃における粘度は、通常、0.65〜100,000mm
2/sの範囲であり、0.65〜10,000mm
2/sの範囲が好ましい。
【0086】
シリコーン油としては、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンが挙げられる。これらの中でも、揮発性の、直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0087】
より具体的には、直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(2mPa・sや6mPa・s等の低粘度〜100万mPa・s等高粘度のジメチルシリコーン)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体,トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニル(トリメチルシロキシ)シロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルキルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルアルキルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジエトキシポリジメチルシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−オクチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ドデシルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ヘキサデシルトリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、トリストリメチルシロキシアルキルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、テトラメチル−1,3−ジヒドロキシジシロキサン、オクタメチル−1,7−ジヒドロキシテトラシロキサン、ヘキサメチル−1,5−ジエトキシトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、ジメチコノール等が例示される。
【0088】
環状オルガノポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1−ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1、1−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(p−ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−アクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(ラウロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0089】
分岐状オルガノポリシロキサンとしては、メチルトリストリメチルシロキシシラン、エチルトリストリメチルシロキシシラン、プロピルトリストリメチルシロキシシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、フェニルトリストリメチルシロキシシラン等が挙げられる。
【0090】
非極性有機化合物及び低極性有機化合物としては、炭化水素油及び脂肪酸エステル油が好ましい。これらは、特にメイクアップ化粧料の基材として広く用いられている成分である。
【0091】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、n−パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリイソブチレン、水素化ポリイソブチレン、ポリブテン、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレンワックス、スクワラン、スクワレン、プリスタン、ポリイソプレン等が例示される。
【0092】
脂肪酸エステル油としては、例えば、オクタン酸ヘキシルデシル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、ジオイレイン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリエチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、モノイソステアリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸エチル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、コハク酸ジオクチル、ステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルオクチル、パリミチン酸セチル、パルミチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、N − ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル) 、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイルサルコシンイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸イソトリデシル、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ネオデカン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸2−ブチル−2−エチル−1、3−プロパンジオール、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、水素添加ロジンペンタエリスリチル、トリエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、ノナイソステアリン酸ポリグリセリル−10 、デカ( エルカ酸/イソステアリン酸/リシノレイン酸)ポリグリセリル−8、(ヘキシルデカン酸/セバシン酸)ジグリセリルオリゴエステル、ジステアリン酸グリコール(ジステアリン酸エチレングリコール)、ダイマージリノール酸ジイソプロピル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、ダイマージリノール酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸) グリセリル、水添ロジントリグリセリド(水素添加エステルガム)、ロジントリグリセリド(エステルガム)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、酢酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、硬質ラノリン脂肪酸コレステリル、長鎖分岐脂肪酸コレステリル、長鎖α−ヒドロキシ脂肪酸コレステリル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、アボカド油脂肪酸エチル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、等が例示される。
【0093】
低極性有機化合物として、例えば、炭素原子数10〜30の高級アルコールを使用することもできる。高級アルコールを乳化安定化成分として用いる場合は、親水性の界面活性剤の量を減ずることができ、耐水性を更に向上することができる。前記高級アルコールは、飽和又は不飽和の一価脂肪族アルコールであって、その炭化水素基の部分は直鎖状、分岐状のいずれであっても構わないが、直鎖状であることがより好ましい。炭素原子数10〜30の高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール等が挙げられる。なお、本発明においては、単独で融点40〜80℃の高級アルコールを用いるか、或いは、融点が40〜70℃になるように複数の高級アルコールの組み合わせることが好ましい。
【0094】
本発明の化粧料中の油剤の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、3〜60質量%が好ましく、4〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が更により好ましく、6〜30質量%が更により好ましく、7〜20質量%が更により好ましい。
【0095】
[高級脂肪酸の塩]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(F)高級脂肪酸の塩を含むことができる。
【0096】
高級脂肪酸の塩は、乳化剤として使用可能である。塩の形成に用いられる高級脂肪酸成分は液状高級脂肪酸だけで構成しても、また、液状高級脂肪酸と固体状高級脂肪酸の混合系として構成してもよいが液状高級脂肪酸を含むことが好ましい。固体状高級脂肪酸のみの場合には、伸びや広がりが十分でなくなり、また、石けんによる洗い落とし性が低下する。液状高級脂肪酸の含有率は、高級脂肪酸の全質量中、少なくとも30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、更により好ましくは90質量%以上であり、その比率が高いほど伸びや広がりがよくなり、石けんでの洗い落とし性が高まる。また、高級脂肪酸成分が液状高級脂肪酸のみであると、化粧料の調製にあたって加熱工程を設ける必要がなくなるため、経済的に有利であり、化粧料の品質も安定する。
【0097】
高級脂肪酸の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ヘキシルデカン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられるが、炭素数9〜26のものが好ましく、炭素数11〜22のものがより好ましい。これらは単独で使用しても、また、2種以上を併用してもよい。
【0098】
これらの中でも、塩の乳化剤としての機能、酸化安定性及び使用感から、液状脂肪酸であるイソステアリン酸、ヘキシルデカン酸及びオレイン酸が好ましく、イソステアリン酸がより好ましい。
【0099】
本発明において、イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種又は2種以上の混合物を意味する。例えば、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、ついで水素添加反応及び酸化反応を行うことにより製造することができる(以下、「アルドール縮合型」という)。アルドール縮合型のイソステアリン酸は、例えば、日産化学工業社により市販されている。また、2−ヘプチルウンデカン酸は、ノニルアルコールをガーベット反応(Guerbet反応:ゲルベ反応ともいう)により、二量化し、次いで酸化することにより製造することができる。2−ヘプチルウンデカン酸は、例えば、三菱化学社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似化合物は、日産化学工業社より市販されている。更に、出発アルコールが直鎖アルコールではなく2箇所で分岐したタイプも、日産化学工業社より市販されている(以下、総じて「ガーベット反応型」という)。
【0100】
更に、エメリー型と称されているイソステアリン酸を使用することができる。エメリー型イソステアリン酸とは、オレイン酸からダイマー酸を合成する際に副生成する不飽和脂肪酸に水素添加して得られる、炭素数18であってメチル基を側鎖に有し、構造が不確定のイソステアリン酸を指し(例えば、J. Amer. Oil Chem. Soc. 51, 522(1974)参照)、その具体例として、米国エメリー社等から市販されているものや、高級アルコール工業社製のイソステアリン酸EXを挙げることができる。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸の出発物質にはオレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等が含まれる場合もある。本発明においては、特に、このエメリー型が好ましく用いられる。
【0101】
本発明において、液状高級脂肪酸と併用可能な固体状高級脂肪酸は、通常、炭素数10〜25のものであり、特に、炭素数11〜22のものが好ましく、その具体例としては、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0102】
上記の高級脂肪酸は、予め、塩基によって中和された高級脂肪酸塩として用いてもよいが、本発明の化粧料の製造工程において、上記の高級脂肪酸を(C)塩基性化合物と共に添加し、該製造工程内において両成分を中和して高級脂肪酸塩を形成してもよい。両成分を個別に添加する場合、高級脂肪酸成分と塩基性化合物は、通常、同等量となるように添加するが、必ずしも同等量でなくともよく、調製される化粧料の水相のpHが7.1〜9.5の範囲になるように、両者の配合量を、例えば、高級脂肪酸/塩基性化合物(モル比)が1/0.5〜1/1.5の範囲内で、適宜調整してもよい。
【0103】
本発明の化粧料中の高級脂肪酸塩の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、0.1〜12質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更により好ましい。
【0104】
[水溶性増粘剤]
本発明の化粧料は少なくとも1種の(H)水溶性増粘剤を含むことができる。
【0105】
水溶性増粘剤を含むことにより、本発明の化粧料の粘度、使用感を調整することができる上、保存安定性が更に向上する。
【0106】
水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、デキストラン、ベントナイト等が挙げられ、好ましくは、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。これらの水溶性増粘剤は、単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0107】
本発明の化粧料中の水溶性増粘剤の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全質量を基準として、0.01〜3質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が更により好ましく、0.3〜1.5質量%が更により好ましく、0.5〜1質量%が更により好ましい。
【0108】
[任意成分]
本発明の化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の化粧料に使用されるその他の成分:例えば、紫外線吸収剤、有機樹脂、親水性粉体、(G)成分以外の保湿剤、(H)成分以外の増粘剤、防腐剤、抗菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、(C)成分以外のpH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、生理活性成分(美白剤、細胞賦活剤、肌荒れ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等を添加することができる。その他の成分は特に限定されるものではない。
【0109】
[製造方法]
本発明の化粧料の製造工程は任意であり、前記各成分を混合して、(A)疎水性粉体、(B)カルボン酸変性シリコーン、(C)塩基性化合物及び(D)水からなり、(A)疎水性粉体が水相中に分散した化粧料を調製できる限り、特に限定されない。
【0110】
本発明の化粧料は、例えば、上記(A)〜(D)成分を混合することにより上記(A)成分が水相中に分散した水性分散体を製造する工程を経て製造することができる。必要に応じて、上記(E)、(F)、(G)及び(H)成分からなる群から選択される少なくとも1種を更に混合してもよい。
【0111】
本発明の化粧料の製造方法は、少なくとも、(A)成分及び(B)成分を含む混合物を水相に分散させる工程を含むことが好ましい。
【0112】
前記水性分散体のpHは6.5〜14.0の範囲であることが好ましく、7.0〜12.0の範囲であることがより好ましく、7.5〜10.0の範囲であることが更により好ましい。
【0113】
疎水性粉体の水相中への分散性の観点から、上記(A)〜(D)成分と共に(G)成分を混合することが好ましい。
【0114】
例えば、本発明の化粧料の製造方法は、(G)多価アルコール、(A)疎水性粉体及び(B)カルボン酸変性シリコーンを予め混合する工程(前駆体としてのスラリー組成物等)を含むことが好ましく、特に、前記予備混合工程により得られた(A)、(B)及び(G)成分を含む混合物と、(C)塩基性化合物及び(D)水を混合することにより、pH6.5〜14.0の、疎水性粉体が水相中に分散した水性分散体を製造する工程を含むことが更に好ましい。
【0115】
(G)多価アルコール、(A)疎水性粉体及び(B)カルボン酸変性シリコーンを予め混合する工程により、(A)疎水性粉体の水相への初期分散性が改善される。また、前記予備混合工程により得られた混合物を含み、(A)疎水性粉体が水相中に分散した組成物(水性分散物)は、(C)成分等を用いてpHが6.5〜14.0に調整されることで、(A)疎水性粉体の水相中への長期分散安定性が改善される実益がある。前記組成物は化粧料自体であってもよく、化粧料の前駆体(プレミックス又は化粧料原料)として、別の化粧料の製造に用いられてもよい。
【0116】
一方、(G)多価アルコールを含まず、(A)疎水性粉体、(B)カルボン酸変性シリコーン、(C)塩基性化合物及び(D)水を含んでなる混合物(前駆体としてのスラリー組成物等)を化粧料原料として用いて、疎水性粉体が水相中に分散した化粧料を調製することもできる。
【0117】
また、(A)疎水性粉体、(B)カルボン酸変性シリコーン、(C)塩基性化合物及び(D)水を混合して、好ましくはpH6.5〜14.0の、(A)疎水性粉体が水相中に分散した水性分散体を製造する工程により得られた組成物(水性分散物)は化粧料自体であってもよく、又は、化粧料の前駆体(プレミックス若しくは化粧料原料)として別の化粧料の製造に用いられてもよい。
【0118】
本発明の化粧料が(F)成分を含む場合は、(F)成分の原料となる高級脂肪酸と(C)塩基性化合物を別々に添加し、該化粧料の製造工程中で、高級脂肪酸の塩を生成させることが操作性及び品質の安定性の点で好ましい。また、(F)成分の原料として液状高級脂肪酸のみを使用する場合は、固体状高級脂肪酸を使用する場合に必要となる加熱工程を省略することが可能となり、経済的に有利であると共に品質の安定化にも寄与する。
【0119】
[使用方法]
本発明の化粧料は、クリーム状、ゲル状、乳液状、液状のいずれの形態であってもよい、本発明の化粧料は、例えば、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧料、下地化粧料、サンスクリーン剤、ファンデーション、アイシャドー、アイライナー、水おしろい等のメイクアップ化粧料として使用することができ、また毛髪・頭皮用のサンスクリーン剤、一時染毛剤等として使用することもできる。
【0120】
本発明の化粧料を更に化粧料用の前駆体(プレミックス又は化粧料原料)として使用する場合は、(A)疎水性粉体として疎水性微粒子無機粉体を用いることにより、サンスクリーン剤やファンデーション用の原料として好適な水性分散体を得ることができる。
【0121】
本発明の化粧料は、水中油型乳化組成物の形態であることが好ましい。水中油型の場合には、連続相を構成する水が皮膚に直接接触するので、みずみずしく、さっぱりとした使用感をより強く与えることができる。また、本発明の水中油型乳化組成物は、従来技術では、分散性の関係から疎水性粉体を用いて設計することが難しかった処方において、疎水性粉体を、その分散安定性と化粧品の外観に優れた剤形で配合することができ、かつ、当該水中油型乳化組成物を肌上に塗布した場合、疎水性粉体に由来する優れた撥水性・耐水性を実現し、かつ化粧もち(ロングラスティング)に優れた化粧料を提供することができる。
【0122】
本発明の化粧料は弱酸性の皮膚上に塗布することが好ましく、例えば、pHが5.1〜7.0の皮膚上に塗布することが好ましい。
【0123】
また、本発明の化粧料を0.5mg/cm
2の塗布量で皮膚上に塗布した場合に、30分後の、塗布面のpHが7.0以下となることが好ましく、更には、pHが6.7以下となることがより好ましい。
【0124】
本発明の化粧料を皮膚に塗布すると、皮膚表面が固有に有する弱酸性によってカルボン酸変性シリコーンのカルボン酸変性部位が非イオン化して界面活性機能が低下し、疎水性粉体の分散機能が低下する。したがって、最早、疎水性粉体は水相中に安定に分散することができず皮膚上に堆積する。このようにして、疎水性の化粧被膜が皮膚上に形成される。
【0125】
本発明の化粧料が油剤を含む場合は、皮膚塗布時には、疎水性粉体と共に油剤も皮膚上に堆積して疎水性の化粧被膜を形成する。前記化粧被膜は疎水性粉体のみならず油剤をも含むので、より高い耐水性と密着性を有する。
【0126】
本発明の化粧料が高級脂肪酸の塩を含む場合は、通常は、カルボン酸変性シリコーンの界面活性作用に加えて、当該塩の界面活性作用により疎水性粉体の水相中での分散をより良好なものとすることができる。更に油剤を含む場合には高級脂肪酸の塩は良好な乳化剤として機能するが、皮膚塗布時には、当該塩が遊離の高級脂肪酸に変化し、疎水性粉体と共に高級脂肪酸も皮膚上に堆積して疎水性の化粧被膜を形成する。前記化粧被膜は疎水性粉体のみならず、高級脂肪酸をも含む(更に油剤を含む場合もある)ので、より高い耐水性を有する。
【0127】
このように、本発明の化粧料は、耐水性に優れた化粧膜を皮膚上に形成することができるので、汗、雨等による化粧崩れを起こしにくく、化粧持ちに優れている。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各成分の配合量は、特記しない限り「質量%」(「重量%」)を表す。
【0129】
[参考例]
イソステアリン酸2.5gと水酸化カリウム0.02gを100gの精製水に溶解しpH7.9のイソステアリン酸カリウム溶液を調製し、女性パネリストの前腕内側(塗布前のpHは5.4)及び人工皮膚(バイオスキンプレート;ビューラックス社製)上にゴム製指サックを装着した指で、0.5mg/cm
2の塗布量で塗布し、30分後のpHを皮膚用pH計スキンチェッカーMJ−120(佐藤商事社製)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
この結果から、皮膚が弱酸性であり、皮膚上に塗布された組成物も弱酸性となることが分かる。
【0132】
[実施例1及び2、並びに、比較例1〜4]:水中油型乳化化粧料(日焼け止め)
下記表2に示す各成分を以下の製造方法により混合し水中油型乳化化粧料を得た。
【0133】
(製造方法1):実施例1及び比較例1〜4
成分(1)〜(3)を加熱・混合し油相を形成した。また、成分(4)〜(9)を加熱・混合し水相を形成した。油相と水相を規定温度(80℃)にて混合・乳化した。乳化物に成分(10)〜(14)を予め混合したものを添加・混合し、次いで成分(15)を混合し、室温まで冷却し水中油型乳化化粧料を得た。なお、成分(14)の未処理の酸化チタンの量は成分(13)の疎水性粉体である酸化チタンの量と同一となるように調整された。
【0134】
(製造方法2):実施例2
成分(1)〜(3)を加熱・混合し油相を形成した。また、成分(4)〜(10)を加熱・混合し水相を形成した。油相と水相を規定温度(80℃)にて混合・乳化した。乳化物に成分(11)〜(14)を予め混合したものを添加・混合し、次いで成分(15)を混合し、室温まで冷却し水中油型乳化化粧料を得た。
【0135】
[カルボン酸変性シリコーン(A1)]
カルボン酸変性シリコーンとしては、下記構造式(A1)で表されるものを使用した。なお、構造式(A1)のカルボン酸変性シリコーンは、側鎖部分がSiH(CH
3)Oで示されるメチルハイドロジェンシロキシ単位のみからなり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサンとウンデシレン酸を、ケイ素原子結合水素原子に対するウンデシレン酸のモル比が1以上となる量で、白金触媒の存在下、ヒドロシリル化反応させることにより合成することができる。
【化9】
【0136】
以下の実験においては、特に断りがない限り、上記の構造式(A1)のカルボン酸変性シリコーンを用いている。
【0137】
【表2】
【0138】
実施例1及び2、並びに、比較例1〜4の各水中油型乳化化粧料について、以下の評価方法に従って、使用感(みずみずしさ、さっぱり感)、分散性及び耐水性を評価した。結果を併せて表2に示す。
【0139】
[使用感]
20名の女性パネリストの顔面に評価対象(下地化粧料)を塗布し、塗布時の使用感(みずみずしさ、さっぱり感)について、下記の基準に従って官能評価を行った。
◎:20名中16名以上が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
○:20名中11〜15名が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
△:20名中6〜10名が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
×:20名中5名以下が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
【0140】
[分散性]
評価対象を50℃の恒温槽中で30日間保管し、疎水性粉体の分散状態を目視観察し、下記の基準に従って、評価した。
◎:30日間保管しても疎水性粉体が均一に分散している
○:30日間経過後には疎水性粉体の凝集が生じる
△:15日間経過後に疎水性粉体の凝集が生じる
×:調製直後から疎水性粉体が凝集したままで水相に分散しない
【0141】
[耐水性]
20名の女性パネリストの前腕内側に評価対象を0.5mg/cm
2の塗布量で均一に塗布し、30分後に、精製水の水滴を静かに滴下して、表面に形成された水滴を写真撮影して、その形状に基づいて接触角をθ/2法で測定し、下記の基準で評価した。
◎:接触角の平均値が55°以上
○:接触角の平均値が40°以上55°未満
△:接触角の平均値が20°以上40°未満
×:接触角の平均値が20°未満
【0142】
実施例1及び2並びに比較例1〜4の評価結果から、疎水性粉体を、カルボン酸変性シリコーン及び塩基性化合物と共に水相中に含む実施例1及び2は疎水性粉体の分散性に優れており、また、使用感及び耐水性にも優れている一方、カルボン酸変性シリコーンを含まない比較例1では分散性が悪く均一な乳化物も得られなかった。疎水化処理をしない未処理酸化チタンを使用した比較例2及び4、並びに、カルボン酸変性シリコーンの代わりにポリエーテル変性シリコーンであるPEG−12ジメチコンを使用した比較例3は耐水性に劣るものだった。実施例1及び2を比較すると予め多価アルコールである1,3−ブチレングリコールと疎水性粉体及びカルボン酸変性シリコーンを混合した実施例1の方が分散性に優れたものであった。
【0143】
[実施例3]:水中油型乳化化粧料(日焼け止め)
下記表3に示す各成分を以下の製造方法により混合し水中油型乳化化粧料を得た。
【0144】
(製造方法)
A相(成分1〜5)を混合し、予め混合したB相(成分6〜12)を添加し、乳化した。乳化後、C相(成分13〜19)を添加・混合した。更に、予め混合したD相(成分20〜22)を添加・混合した後、E相(成分23)を添加・混合・脱気して、水中油型乳化化粧料を得た。
【0145】
【表3】
(注5)商品名:イソステアリン酸EX(高級アルコール工業社製)
【0146】
実施例3の水中油型乳化化粧料について、上記の評価方法・評価基準に従って、使用感(みずみずしさ、さっぱり感)、分散性及び耐水性を評価した。結果を併せて表3に示す。
【0147】
実施例3の評価結果から、高級脂肪酸(イソステアリン酸)の塩(水酸化カリウムの存在により塩の状態である)を含み、且つ、親水性界面活性剤(実施例1で使用されているセテアリルアルコール及びセテアリルグルコシド)を使用しない場合に、耐水性が更に改善することが分かる。
【0148】
[実施例4及び比較例5〜6]:水性ファンデーション(二層分離タイプ)
下記表4に示す各成分を以下の製造方法により混合し水性ファンデーションを得た。
【0149】
(製造方法);A相(成分1〜6)を混合し、水相を形成した。これにB相(成分7〜14)を予め混合したものを添加・混合した後、C相(成分15)を添加・混合して、水性ファンデーションを得た。
【0150】
【表4】
(注6)商品名:SA−チタンCR−50(100%)(三好化成株式会社製)
(注7)商品名:SA−レッドR−516PS(100%)(三好化成株式会社製)
(注8)商品名:SA−イエローLL−100P(100%)(三好化成株式会社製)
(注9)商品名:SA−ブラックBL−100P(100%)(三好化成株式会社製)
【0151】
実施例4の水性ファンデーションについて、以下の評価方法・評価基準に従って、使用感(みずみずしさ、さっぱり感)、分散性及び耐水性を評価した。結果を併せて表4に示す。
【0152】
[使用感]
20名の女性パネリストの顔面に評価対象(下地化粧料)を塗布し、塗布時の使用感(みずみずしさ、さっぱり感)について、下記の基準に従って官能評価を行った。
◎:20名中16名以上が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
○:20名中11〜15名が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
△:20名中6〜10名が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
×:20名中5名以下が、みずみずしい、さっぱりしていると回答
【0153】
[分散性]
評価対象を50℃の恒温槽中で30日間保管し、疎水性粉体の再分散性を目視観察し、下記の基準に従って、評価した。
◎:30日間保管しても10回以内の振とうにより速やかに均一に分散する。
○:30日間保管しても30回以内の振とうにより均一に分散する。
△:30日間保管後30回振とうしても均一に分散しない。
×:調製直後から疎水性粉体の凝集したまま水相に分散しない。
【0154】
[耐水性]
20名の女性パネリストの前腕内側に評価対象を0.5mg/cm
2の塗布量で均一に塗布し、30分後に、pH7.0の水の水滴を静かに滴下して、表面に形成された水滴を写真撮影して、その形状に基づいて接触角をθ/2法で測定し、下記の基準で評価した。
◎:接触角の平均値が55°以上
○:接触角の平均値が40°以上55°未満
△:接触角の平均値が20°以上40°未満
×:接触角の平均値が20°未満
【0155】
実施例4の水性ファンデーションは、静置・分離後の疎水性粉体の再分散性が優れており、耐水性も良好であった。カルボン酸変性シリコーンを含まない比較例5は、振とうしても疎水性粉体が均一に分散せず、肌に均一に塗布することができなかった。親水性の未処理の酸化チタンを用いた比較例6は水を弾かず、耐水性に劣るものだった。
【0156】
[実施例5]:水性分散体(日焼け止め化粧料用)
下記表5に示す各成分を以下の製造方法により混合し疎水化微粒子酸化チタンの水性分散体を得た。
【0157】
(製造方法)
成分4〜5を混合し、これに成分1〜3の混合物を加え混合・分散し、水性分散体を得た。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例5の水性分散体は、疎水化微粒子酸化チタンが、凝集することなく水相に均一に分散したものであった。
【0160】
[実施例6]:水性分散体を使用した水中油型乳化化粧料
実施例5の水性分散体を使用し、下記表6に示す各成分を以下の製造方法により混合し水中油型乳化化粧料を得た。
【0161】
(製造方法)
成分(1)〜(3)を加熱・混合し油相を形成した。また、成分(4)〜(9)を加熱・混合し水相を形成した。油相と水相を規定温度(80℃)にて混合・乳化した。乳化物に成分(10)を添加・混合し、次いで成分(11)を混合し、室温まで冷却し水中油型乳化化粧料を得た。
【0162】
【表6】
【0163】
実施例6の水中油型乳化化粧料は、水性分散体を使用することで簡易に疎水化微粒子酸化チタンを外水相に均一に分散させることが出来、且つ、耐水性を有するものであった。