(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大容量の凍結紛体を短時間で昇華乾燥するには、大容量の高周波電源が必要になる。さらに、大容量の凍結紛体から放出される溶媒を短時間で乾燥するには大流量の真空排気機構が必要になる。このように、真空凍結乾燥装置については、大容量の凍結紛体を短時間で凍結真空乾燥することと、コスト低減とが相反する場合がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、短時間で凍結真空乾燥と、コスト低減とを実現させた凍結真空乾燥装置及び凍結真空乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る凍結真空乾燥装置は、噴霧部と、管部と、加熱部と、捕集部とを具備する。
上記噴霧部は、原料液を真空容器内に噴霧する。
上記管部は、非直線状であり、第1開口端と第2開口端とを有し、上記原料液が上記真空容器内へ噴霧して形成される液滴が自己凍結して形成される凍結粒子を上記第1開口端から捕捉する。
上記加熱部は、噴霧時に得た運動エネルギーによって上記第1開口端から上記第2開口端に向かって上記管部内を移動する上記凍結粒子を上記管部内で加熱することにより上記凍結粒子を昇華乾燥する。
上記捕集部は、上記凍結粒子が上記管部内で昇華乾燥することにより形成され、上記管部の上記第2開口端から放出される乾燥粒子を捕集する。
このような凍結真空乾燥装置によれば、原料液が非直線状の管部内で加熱部によって短時間で凍結真空乾燥され、乾燥粒子が捕集部に捕集される。凍結真空乾燥装置では、装置が小型となり、大型の排気機構を要さず、低コスト化が実現する。
【0008】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記管部は、上記噴霧部から上記捕集部に向かう方向に旋回軸を有し、上記噴霧部と上記捕集部の間で螺旋状に旋回してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、原料液が螺旋状の管部内で加熱部によって短時間で凍結真空乾燥され、乾燥粒子が捕集部に捕集される。
【0009】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記管部は、上記第1開口端と上記第2開口端との間において、上記凍結粒子が上記管部内を移動中に昇華乾燥することにより発生するガスを上記管部外に放出することが可能な開口部を少なくとも1つ有してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、管部が管部外にガスを放出する開口部を少なくとも1つ有するため、凍結粒子が昇華乾燥によって放出する水蒸気を効率よく管部外に放出することができる。
【0010】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記加熱部は、上記凍結粒子を高周波により加熱する加熱機構を有してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、凍結粒子の氷部分が高周波を吸収して、凍結粒子が効率よく昇華乾燥する。
【0011】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記加熱部は、上記凍結粒子を熱輻射により加熱する加熱機構を有してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、凍結粒子の氷部分が熱輻射によって加熱されて、凍結粒子が効率よく昇華乾燥する。
【0012】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記管部がガス透過性の樹脂で構成されてもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、乾燥したガスが効率よく管部外に放出される。
【0013】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記加熱部は、複数のユニットからなり、上記複数のユニットのそれぞれが独立して上記凍結粒子を加熱してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、管部の位置に応じて、加熱部から管部に投入する電力を独立して変えることができる。
【0014】
上記の凍結真空乾燥装置においては、上記捕集部を別の捕集部に交換することが可能な搬送機構をさらに具備してもよい。
このような凍結真空乾燥装置によれば、1つの捕集部に乾燥粒子が捕集されても、別の捕集部に交換されるので、1つの装置で大量の乾燥粒子を得ることができる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る凍結真空乾燥方法では、原料液が真空容器内に噴霧される。
第1開口端と第2開口端とを有する非直線状の管部が用いられ、上記原料液が上記真空容器内へ噴霧して形成される液滴が自己凍結して形成される凍結粒子が上記第1開口端から捕捉される。
噴霧時に得た運動エネルギーによって上記第1開口端から上記第2開口端に向かって上記管部内を移動する上記凍結粒子が上記管部内で加熱されることにより上記凍結粒子が昇華乾燥する。
上記凍結粒子が上記管部内で昇華乾燥することにより形成され、上記管部の上記第2開口端から放出される乾燥粒子が捕集される。
このような凍結真空乾燥方法によれば、原料液が非直線状の管部内で加熱部によって短時間で凍結真空乾燥され、乾燥粒子が捕集部に捕集される。凍結真空乾燥装置では、装置が小型となり、大型の排気機構を要さず、低コスト化が実現する。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、短時間で凍結真空乾燥ができ、コスト低減が図られた凍結真空乾燥装置及び凍結真空乾燥方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る凍結真空乾燥装置を示す模式的側面図である。本実施形態では、凍結真空乾燥装置100の上下方向をZ軸方向、横方向をX軸方向、前後方向をY軸方向としている。
【0020】
図1に示す凍結真空乾燥装置100は、真空容器10と、噴霧部20と、管部30Aと、加熱部40と、捕集部50と、冷却トラップ60と、排気機構70と、原料容器201とを具備する。凍結真空乾燥装置100においては、噴霧部20と捕集部50との間に、管部30A及び加熱部40が配置されている。本実施形態では、噴霧部20側を上側、捕集部50側を下側とする。
【0021】
真空容器10は、排気機構70によって、500Pa以下、好ましくは100Pa以下の減圧雰囲気に維持される。このような減圧雰囲気に維持された真空容器10内では、水は、水の相平衡状態図から温度70K(ケルビン)以上で固体(氷)または気体(水蒸気)のいずれか一方の相になる。すなわち、本実施形態における真空容器10内は、液体(水)が存在しにくく、固体(氷)または気体(水蒸気)が存在する環境になっている。
【0022】
噴霧部20は、本体部21と、ノズル部22とを有する。噴霧部20は、原料容器201に貯留された原料液200を真空容器10内に液滴210として噴霧する。例えば、原料容器201に貯留された原料液200は、管202を介して本体部21に供給される。本体部21に供給された原料液200は、ノズル部22から真空容器10内に液滴210となって噴霧される。ノズル部22の噴射口の孔径は、例えば、50μm以上400である。また、噴霧圧は、0.3MPa以下である。原料液200としては、粉末食品、粉末飲料、医薬品等を水等の溶媒に分散させたものが該当する。
【0023】
ノズル部22と管部30Aの開口端301(第1開口端)との距離は、少なくとも300mmである。液滴210は、例えば、噴霧部20から管部30Aに向かう方向に列状となって落下し、管部30Aの開口端301に落下する前に自己凍結する。すなわち、噴霧部20から柱状に液体が吐出され、その後、液体の表面張力の効果により列状の液滴210へと変化し、この液滴210が気化熱を奪われることで自己凍結する。例えば、ノズル部22の先端から下方に300mmの位置で、液滴210が自己凍結して凍結粒子220になる。液滴210が自己凍結して形成された凍結粒子220は、管部30Aの開口端301に落下する。液滴210が開口端301に落ちる前に自己凍結して形成される凍結粒子220は、列状となって噴霧部20から管部30Aに向かって落下する。凍結粒子220の平均粒径は、100μm以上600μm以下である。
【0024】
管部30Aは、噴霧部20と捕集部50との間に配置される。管部30Aは、Z軸方向において直線状に構成されているのではなく、非直線状に構成されている。例えば、
図1に示すように、管部30Aは、噴霧部20から捕集部50に向かう方向に旋回軸30rを有し、噴霧部20と捕集部50の間で螺旋状に旋回している。管部30Aは、非直線状であればよく、例えば、蛇行状でもよい。
【0025】
螺旋状の管部30Aは、本体部310と、本体部310の両端に、開口端301と、開口端302(第2開口端)とを有する。開口端301は、ノズル部22の直下に位置する。管部30Aは、液滴210が自己凍結して形成された凍結粒子220を開口端301から捕捉する。開口端301近傍の入り口は、図示するように、噴霧部20に向かうほど内径が拡がるテーパ構造を有する。これにより、開口端301に向かって落下する凍結粒子220が確実に管部30A内に捕捉される。
【0026】
管部30A内に捕捉された凍結粒子220は、液滴210が噴霧されたときに得た運動エネルギーによって、管部30A外に飛散することもなく、開口端301から開口端302に向かって管部30A内を移動する。さらに、噴霧部20が上側、捕集部50が下側に配置された本構成では、凍結粒子220に重力も働く。すなわち、凍結粒子220は、液滴210が噴霧されたときに得た運動エネルギーまたは重力によって開口端301から開口端302に向かって管部30A内を移動する。
【0027】
従って、凍結粒子220は、開口端301の位置から開口端302の位置まで直線状に落下するのではなく、螺旋状の本体部310の存在によって開口端301の位置から迂回して開口端302の位置まで辿り着くことになる。
【0028】
加熱部40は、噴霧時に得た運動エネルギーによって開口端301から開口端302に向かって管部30A内を移動する凍結粒子220を管部30A内で加熱することにより凍結粒子220を昇華乾燥する。
図1の例では、加熱部40は、凍結粒子220を高周波により加熱する加熱機構を有する。例えば、加熱部40は、内部電極411と、外部電極412と、高周波電源420とを有する。
【0029】
内部電極411は、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの内側に配置される。内部電極411の中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。外部電極412は、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの外側に配置される。外部電極412の中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。
【0030】
高周波電源420は、内部電極411と外部電極412との間に高周波電界を印加する。例えば、高周波電源420によって内部電極411に正電位が印加された場合、外部電極412には、グランド電位(または、負電位)が印加され、外部電極412に正電位が印加された場合には、内部電極411には、グランド電位(または、負電位)が印加される。管部30Aの本体部310は、内部電極411と、外部電極412とに挟まれることから、本体部310には、高周波電界が満遍なく行き渡る。
【0031】
例えば、原料液200の溶媒が水の場合、高周波電源420から放出される高周波の周波数として、例えば、200kHzから13.56MHzが選択される。このような周波数の高周波電界は、凍結粒子220の氷(水結晶)に効率よく吸収される。これにより、凍結粒子220の氷部分が選択的に暖められる。従って、管部30A内では、凍結粒子220の氷部分が水蒸気となって昇華乾燥して、管部30A内で凍結粒子220から氷が除かれた乾燥粒子230が形成される。さらに、移動中の微粒子に対して交番電界を与えることから、容器、トレイ等に堆積したバルク状の微粒子への処理と比較すると、均一な加熱が実現できる。特に、浸透深さが低い高周波数の電源を利用する場合には、顕著な効果が得られる。
【0032】
管部30A内で発生した水蒸気は、開口端301または開口端302から放出されて、真空容器10内で冷却トラップ60に捕獲される。また、内部電極411と外部電極412とは、メッシュ電極であることから、水蒸気は、内部電極411及び外部電極412のそれぞれを通過することができ、電極内部での滞留が抑えられる。なお、
図1の例では、冷却トラップ60は、開口端301の近傍に設けられているが、開口端302の近傍に配置してもよい。冷却トラップ60は、開口端301及び開口端302のそれぞれの近傍に配置されてもよい。
【0033】
昇華乾燥によって管部30A内で形成された乾燥粒子230は、自らが持つ運動エネルギーまたは重力の影響によって管部30Aの開口端301から放出される。開口端301から放出された乾燥粒子230は、開口端301の下方に配置された捕集部50に落下し、この捕集部50に捕集される。
【0034】
捕集部50は、例えば、捕集容器51と、搬送機構52とを有する。搬送機構52は、開口端302下に位置する捕集容器51を別の捕集容器51に交換することできる。例えば、1つの捕集容器51に所定の量の乾燥粒子230が捕集された場合、搬送機構52によって新たな捕集容器51が開口端301の下方に配置される。この新たな捕集容器51によって乾燥粒子230が新たに捕集される。すなわち、凍結真空乾燥装置100においては、大量かつ長時間にわたって乾燥粒子230の捕集作業が可能になる。
【0035】
管部30Aの材料としては、接触した凍結紛体との摩擦係数が最少となる、樹脂製が望ましい。さらに、乾燥中のガス(蒸気)が透過しやすいガス透過性の樹脂が適用されることが望ましい。氷に対する樹脂の付着力は、金属の氷に対する付着力の1/10程度であり、樹脂製の管部30Aを用いることで凍結粒子220が管部30Aの内壁に付着しにくくなる。また、氷においては、その温度が高くなるほど樹脂に対する付着力が減少する傾向にある。このため、凍結粒子220を加熱部40によって加熱することで、凍結粒子220が管部30Aの内壁に付着しにくくなる。さらに、凍結粒子220から水分子が放出されるときには、凍結粒子220は、水分子から水分子が放出する方向とは逆の反跳力を受けることになり、管部30Aの内壁に付着しにくくなる。なお、管部30Aには、凍結粒子220の管部30Aへの付着を確実に抑制するために、超音波等の振動を印加してもよい。
【0036】
図2(a)は、凍結粒子の移動時間(横軸)と凍結粒子の温度(左縦軸)との関係、及び凍結粒子の移動時間と凍結粒子の重量(右縦軸)との関係を示すシミュレーション図である。
図2(b)は、凍結粒子の移動時間(横軸)と凍結粒子の速度(左縦軸)との関係、及び凍結粒子の移動時間と凍結粒子の旋回回数(右縦軸)との関係を示すシミュレーション図である。ここで、凍結粒子220の粒径は、300μm、管部30Aの螺旋径は、0.4m、管部30Aに供給される電力は、38Wとする。また、横軸の左端は、内部電極411(または、外部電極412)の上端の位置に相当する。
【0037】
図2(a)に示すように、管部30A内に捕集された凍結粒子220が管部30A内を移動しながら、加熱部40による加熱が開始されると、凍結粒子220の温度が凍結粒子220の移動時間とともに上昇する。そして、移動時間が1.3秒になった時点で、加熱部40の重量が急激に減少する。これは、凍結粒子220から氷部分が除去されて、凍結粒子220が乾燥粒子230となり、重量が急激に減少することを意味する。
【0038】
一方、
図2(b)に示すように、凍結粒子220の速度は、当初、20m/秒であったものの、移動時間の経過とともに徐々に遅くなり、重量が急激に減少した時点で6.5m/秒まで下がる。これは、凍結粒子220が螺旋状の管部30A内を移動することにともない、凍結粒子220が管部30Aから摩擦の負荷を受けるためである。但し、凍結粒子220の重量が急激に減少した時点でも、凍結粒子220の速度は、依然として6.5m/秒を維持し、凍結粒子220は、管部30Aの内部で停止しないことを示している。
【0039】
また、凍結粒子220の移動時間が経過するに応じて、凍結粒子220の旋回回数が増加する。これは、凍結粒子220の移動距離が長くなることに対応する。例えば、凍結粒子220の重量が急激に減少、すなわち、凍結粒子220が乾燥粒子230となるには、10回の旋回が要することが分かる。換言すれば、管部30Aの螺旋径を0.4mに設定したときには、管部30Aの本体部310を10回以上旋回させれば、凍結粒子220が確実に乾燥粒子230になることが分かる。
【0040】
従前の凍結真空乾燥装置では、例えば、原料液200を真空容器10内で凍結乾燥させ、管部30Aを介さず捕集容器51に凍結粒子を直接回収し、この凍結粒子を捕集容器51を支持する支持台から熱伝導方式で乾燥する方式が採られている。この方式では、例えば、10リットルの原料液200(濃度:10vol%)を真空容器10(圧力:10Paを維持)内で凍結乾燥させ、捕集容器51に凍結粒子を集めた後、乾燥粒子を作るには、1時間の乾燥で、9リットルの気体を発生することになり、電力として6.4kWを要することが分かっている。
【0041】
これに対して、凍結真空乾燥装置100を用いれば、直径200μmの凍結粒子が20m/秒の落下速度で噴霧され、1秒前後で乾燥されるので、6.3×10
−7(m
3/sec)の気体発生量となり、所要電力は、1.6kW程度になることが分かっている。
【0042】
このように、凍結真空乾燥装置100によれば、真空容器10内へ噴霧された液滴210が自己凍結して形成された凍結粒子220が非直線状の管部30A内に誘導されて加熱部40によって管部30A内で昇華乾燥する。そして、管部30A内で凍結粒子220が乾燥粒子230となり、乾燥粒子230が捕集部50に捕集される。
【0043】
つまり、凍結真空乾燥装置100では、凍結粒子220は、捕集部50に直接的に落下するのではなく、捕集部50に捕集される前に非直線状の管部30Aによって迂回され、長い距離での移動中に加熱部40によって加熱される。そして、加熱手法としては、氷に吸収される周波数帯域の高周波電界が用いられので、凍結粒子220は、効率よく昇華乾燥する。その乾燥時間は、数秒以内である。また、加熱電力も低く抑えられる。
【0044】
従って、凍結真空乾燥装置100では、原料液200が短時間で凍結真空乾燥され、捕集容器51を順次入れ替えることで大量の乾燥粒子230を得ることができる。また、凍結真空乾燥装置100では、装置の小型化が可能になり、大型の排気機構70を要さない。これにより、低コスト化が実現する。
【0045】
例えば、螺旋径が0.4mで10回旋回させた管部30Aの長さは、およそ10mである。非直線状の管部30Aを用いないで凍結真空乾燥装置100と同じ作用をさせるには、噴霧部20と捕集部50との間の距離を10m程度離間させる必要がある。なぜなら、凍結粒子220が10m移動することで、乾燥粒子230となるからである。このため、このような装置構成では、装置が大型になるとともに、大型の排気機構が必要になり、コスト上昇を招来する。
【0046】
また、凍結真空乾燥装置100では、凍結粒子220は、昇華乾燥中に管部30A内を移動するので、真空容器10内での凍結粒子220の飛散が抑制される。また、凍結粒子220が乾燥した後の乾燥粒子230が捕集容器51に捕集されるので、捕集容器51からの捕集容器51の飛散が起きにくくなる。これにより、乾燥粒子230の回収率が向上する。例えば、トレイに凍結粒子220を収容し、トレイを支持する支持台から熱伝導方式で凍結粒子220を乾燥すると、凍結粒子220は、凍結粒子220から飛び出す水蒸気の反跳とガスとの流れを受けてトレイから真空容器10内に飛散する可能性がある。
【0047】
次に、凍結真空乾燥装置の変形例を説明する。
【0049】
図3は、本実施形態に係る凍結真空乾燥装置の変形例1を示す模式図である。
図3には、変形例1に係る凍結真空乾燥装置101の管部30Bが例示されている。管部30B以外の凍結真空乾燥装置101の構成は、凍結真空乾燥装置100と同じである。
【0050】
管部30Bにおいては、開口端301と開口端302との間において、開口部320が少なくとも1つ設けられている。開口部320は、管部30Bの一部に設けられ管部30Bの外径よりも内径が大きい第1継手部321に、管部30Bの一部に設けられ第1継手部321に対向する第2継手部322が挿入されることで構成される。第1継手部321は、第2継手部322よりも下流に設けられる。
【0051】
第1継手部321と第2継手部322との間に隙間が設けられることにより、開口部320が形成される。開口部320からは、凍結粒子220が管部30B内を移動中に昇華乾燥することにより発生するガス(例えば、水蒸気)が放出する。
【0052】
また、第1継手部321と第2継手部322との間には、ガス(水蒸気)のみを管部30B外に放出し、凍結粒子220を管部30B外に放出しないフィルタ部材が設けられてもよい。フィルタ部材は、例えば、金属網、ポーラス材等で構成される。
【0053】
凍結真空乾燥装置101によれば、管部30Bが管部30B外にガスを放出する開口部320を少なくとも1つ有するため、管部30B内で凍結粒子220が昇華乾燥によって放出する水蒸気が効率よく管部30B外に放出される。これにより、乾燥時間がさらに短くなる。また、管部30B内の水蒸気圧は、管部30A内の水蒸気圧に比べて低くなるので、管部30Bに高周波電界によって水蒸気が電離して形成されるプラズマが発生しにくくなる。
【0055】
図4は、本実施形態に係る凍結真空乾燥装置の変形例2を示す模式的側面図である。
【0056】
図4に示す凍結真空乾燥装置102においては、加熱部43が凍結粒子220を熱輻射により加熱する加熱機構を有する。例えば、加熱部43は、内部ヒータ431と、外部ヒータ432とを有する。管部30Aは、管部30Bに替えてもよい。
【0057】
内部ヒータ431は、例えば、円筒状であり、管部30Aの内側に配置される。内部ヒータ431の中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。外部ヒータ432は、例えば、円筒状であり、管部30Aの外側に配置される。外部ヒータ432の中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。内部ヒータ431及び外部ヒータ432は、例えば、炭素製のヒータである。また、凍結真空乾燥装置102においては、管部30Aがガラス、石英等によって構成される。これにより、内部ヒータ431及び外部ヒータ432から発せられる輻射熱が管部30Aの内部にまで伝導する。
【0058】
凍結真空乾燥装置102によれば、管部30A内を移動する凍結粒子220が内部ヒータ431及び外部ヒータ432から発せられる輻射熱(例えば、赤外線)によって加熱され、凍結粒子220が管部30A内で昇華乾燥する。そして、凍結真空乾燥装置102においても乾燥粒子230が捕集部50によって捕集される。
【0060】
図5は、本実施形態に係る凍結真空乾燥装置の変形例3を示す模式的側面図である。
【0061】
図5に示す凍結真空乾燥装置103においては、加熱部40が複数のユニットからなり、複数のユニットのそれぞれが独立して凍結粒子220を加熱することができる。例えば、加熱部40は、上部加熱部40Aと、下部加熱部40Bとを有する。なお、複数のユニットは、2つとは限らず、3つ以上でもよい。なお、管部30Aは、管部30Bに替えてもよい。
【0062】
上部加熱部40Aは、上部内部電極411A、上部外部電極412A、及び上部高周波電源420Aを有する。下部加熱部40Bは、下部内部電極411B、下部外部電極412B、及び下部高周波電源420Bを有する。上部加熱部40Aは、Z軸方向において、下部加熱部40Bとは離れている。
【0063】
上部内部電極411Aは、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの上部内側に配置される。ここで、上部とは、管部30Aの上半分とする。上部内部電極411Aの中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。上部外部電極412Aは、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの上部外側に配置される。上部外部電極412Aの中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。上部高周波電源420Aは、上部内部電極411Aと上部外部電極412Aとの間に高周波電界(200kHzまたは13.56MHz)を印加する。
【0064】
下部内部電極411Bは、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの下部内側に配置される。ここで、下部とは、管部30Aの下半分とする。下部内部電極411Bの中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。下部外部電極412Bは、例えば、円筒状のメッシュ電極であり、管部30Aの下部外側に配置される。下部外部電極412Bの中心軸は、管部30Aの螺旋軸30rと一致する。下部高周波電源420Bは、下部内部電極411Bと下部外部電極412Bとの間に高周波電界(200kHzまたは13.56MHz)を印加する。
【0065】
このような構成であれば、管部30Aに対して部分的に加熱部40から管部30Aに投入する電力を変えることができる。
【0066】
例えば、下部加熱部40Bよりも上部加熱部40Aによる投入電力を大きくするによって、管部30Aの上部における加熱温度を管部30Aの下部における加熱温度よりも高く設定することができる。例えば、凍結粒子220に氷が多く含まれる初期から中期の昇華乾燥では、上部加熱部40Aによって高めの投入電力で凍結粒子220を乾燥させ、凍結粒子220の氷が減ってきた中期以降の昇華乾燥では、下部加熱部40Bによって低め投入電力で凍結粒子220を昇華乾燥する。
【0067】
このような手法によれば、凍結粒子220に氷が多く含まれる初期から中期の段階での昇華乾燥の時間が短くなるとともに、氷が減ってきた中期以降の段階での凍結粒子220に含まれる水以外の物質に電力によるダメージを与えにくくなる。従って、より高品質な乾燥粒子230を得ることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【解決手段】凍結真空乾燥装置は、噴霧部と、管部と、加熱部と、捕集部とを具備する。上記噴霧部は、原料液を真空容器内に噴霧する。上記管部は、非直線状であり、第1開口端と第2開口端とを有し、上記原料液が上記真空容器内へ噴霧して形成される液滴が自己凍結して形成される凍結粒子を上記第1開口端から捕捉する。上記加熱部は、噴霧時に得た運動エネルギーによって上記第1開口端から上記第2開口端に向かって上記管部内を移動する上記凍結粒子を上記管部内で加熱することにより上記凍結粒子を昇華乾燥する。上記捕集部は、上記凍結粒子が上記管部内で昇華乾燥することにより形成され、上記管部の上記第2開口端から放出される乾燥粒子を捕集する。