(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、モニタ18と、コンソール19とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続されるとともに、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、観察対象の体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられた湾曲部12c及び先端部12dとを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cは湾曲動作する。この湾曲動作によって、先端部12dが所望の方向に向けられる。
【0021】
また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、モード切替SW(モード切替スイッチ)12fと、ズーム操作部12g(撮像倍率変更操作部)とが設けられている。モード切替SW12fは、観察モードの切り替え操作に用いられる。内視鏡システム10は、観察モードとして通常モードと測定モードとを有している。通常モードは、照明光に白色光を用いて観察対象を撮像して得た自然な色合いの画像(以下、通常画像という)をモニタ18に表示する。測定モードは、観察対象に含まれる血管の血管指標値を測定し、この血管指標値に基づいた画像(以下、特殊画像という)をモニタ18に表示する。ズーム操作部12gは、観察対象を拡大表示した拡大観察と、拡大観察をしない非拡大観察との間で、後述する撮像光学系30bに対して撮像倍率の変更を指示する撮像倍率変更指示を入力するために用いられる。
【0022】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びコンソール19と電気的に接続される。モニタ18は、観察対象の画像や、観察対象の画像に付帯する情報などを出力表示する。コンソール19は、機能設定などの入力操作を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像や画像情報などを記録する外付けの記録部(図示省略)を接続してもよい。
【0023】
図2に示すように、光源装置14は、光源20と、光源20を制御する光源制御部21とを備えている。光源20は、例えば、複数の半導体光源を有し、これらをそれぞれ点灯または消灯し、点灯する場合には各半導体光源の発光量を制御することにより、観察対象を照明するための照明光を発する。本実施形態では、光源20は、V−LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B−LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G−LED(Green Light Emitting Diode)20c、及びR−LED(Red Light Emitting Diode)20dの4色のLEDを有する。
【0024】
図3に示すように、V−LED20aは、中心波長405nm、波長帯域380nm〜420nmの紫色光Vを発する紫色半導体光源である。B−LED20bは、中心波長460nm、波長帯域420nm〜500nmの青色光Bを発する青色半導体光源である。G−LED20cは、波長帯域が480nm〜600nmに及ぶ緑色光Gを発する緑色半導体光源である。R−LED20dは、中心波長620nm〜630nmで、波長帯域が600nm〜650nmに及び赤色光Rを発する赤色半導体光源である。なお、V−LED20aとB−LED20bの中心波長は、±5nmから±10nm程度の幅を有する。
【0025】
光源制御部21は、各LED20a〜20dに対して独立に制御信号を入力することによって、各LED20a〜20dの点灯や消灯、点灯時の発光量などを独立に制御する。本実施形態では、通常モード及び測定モードのどちらの観察モードでも、光源制御部21は、V−LED20a、B−LED20b、G−LED20c、及びR−LED20dを全て点灯させる。このため、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rを含む白色光が、通常モード及び測定モードの照明光として用いられる。
【0026】
各LED20a〜20dが発する各色の光は、ミラーやレンズなどで構成される光路結合部23を介して、挿入部12a内に挿通されたライトガイド25に入射される。ライトガイド25は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と、光源装置14及びプロセッサ装置16を接続するコード)に内蔵されている。ライトガイド25は、光源20が発した照明光を、内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。
【0027】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ32を有しており、ライトガイド25によって伝搬された照明光は照明レンズ32を介して観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ42、ズームレンズ44、撮像センサ46を有している。照明光を照射したことによる観察対象からの反射光、散乱光、及び蛍光などの各種の光は、対物レンズ42及びズームレンズ44を介して撮像センサ46に入射する。これにより、撮像センサ46に観察対象の像が結像される。
【0028】
ズームレンズ44は、ズーム操作部12gからの撮像倍率変更指示に応じて、テレ端とワイド端との間を自在に移動することにより、撮像倍率を変更可能とする。ズームレンズ44がワイド端に移動すると、観察対象の像が拡大する。一方、ズームレンズ44がテレ端に移動すると、観察対象の像が縮小する。ズームレンズ44は、非拡大観察が行われる場合には、ワイド端に配置されており、ズーム操作部12gの操作によって拡大観察が行われる場合には、ワイド端からテレ端に移動される。
【0029】
撮像センサ46は、照明光で照明された観察対象を撮像するカラー撮像センサである。撮像センサ46の各画素には、
図4に示すB(青色)カラーフィルタ、G(緑色)カラーフィルタ、R(赤色)カラーフィルタのいずれかが設けられている。このため、撮像センサ46は、Bカラーフィルタが設けられたB画素(青色画素)で紫色から青色の光を受光し、Gカラーフィルタが設けられたG画素(緑色画素)で緑色の光を受光し、Rカラーフィルタが設けられたR画素(赤色画素)で赤色の光を受光する。そして、各色の画素から、RGB各色の画像信号を出力する。
【0030】
撮像センサ46としては、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサを利用可能である。また、原色の撮像センサ46の代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(緑)の補色フィルタを備えた補色撮像センサを用いても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力されるので、補色−原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換することにより、撮像センサ46と同様のRGB各色の画像信号を得ることができる。また、撮像センサ46の代わりに、カラーフィルタを設けていないモノクロの撮像センサを用いても良い。
【0031】
CDS/AGC(Correlated Double Sampling/Automatic Gain Control)回路51は、撮像センサ46から得られるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路51を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)コンバータ52により、デジタルの画像信号に変換される。A/D変換後のデジタル画像信号がプロセッサ装置16に入力される。
【0032】
プロセッサ装置16は、画像信号取得部54と、DSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ除去部58と、画像処理切替部60と、通常用画像処理部62と、測定用画像処理部64と、映像信号生成部66とを備えている。画像信号取得部54は、CDS/AGC回路51及びA/Dコンバータ52を介して、撮像センサ46からデジタル画像信号を取得する。
【0033】
DSP56は、取得した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理などの各種信号処理を施す。欠陥補正処理では、撮像センサ46の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理が施された画像信号から暗電流成分が除かれ、正確な零レベルが設定される。ゲイン補正処理では、オフセット処理後の画像信号に特定のゲインを乗じることにより信号レベルが整えられる。
【0034】
ゲイン補正処理後の画像信号には、色再現性を高めるためのリニアマトリクス処理が施される。その後、ガンマ変換処理によって明るさや彩度が整えられる。ガンマ変換処理後の画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、または同時化処理ともいう)が施され、各画素で不足した色の信号が補間によって生成される。このデモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。ノイズ除去部58は、DSP56でデモザイク処理などが施された画像信号に対してノイズ除去処理(例えば移動平均法やメディアンフィルタ法などによる)を施すことによってノイズを除去する。ノイズが除去された画像信号は、画像処理切替部60に送信される。
【0035】
画像処理切替部60は、モード切替SW12fの操作によって通常モードにセットされている場合には、画像信号を通常用画像処理部62に送信し、測定モードにセットされている場合には、画像信号を測定用画像処理部64に送信する。
【0036】
通常用画像処理部62は、画像処理切替部60から受信した画像信号に対して色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理を行い、通常画像を生成する。色変換処理では、画像信号に対して3×3のマトリクス処理、階調変換処理、及び3次元LUT(ルックアップテーブル)処理などにより色変換処理を行う。色彩強調処理は、色変換処理済みの画像信号に対して行われる。構造強調処理は、例えば血管やピットパターン(腺管)などの観察対象の構造を強調する処理であり、色彩強調処理後の画像信号に対して行われる。上記のように各種画像処理などを施した画像信号を用いたカラー画像が通常画像である。
【0037】
測定用画像処理部64は、画像処理切替部60から受信した画像信号が表す血管を指標化(数値化)した血管指標値を測定する。
図5に示すように、測定用画像処理部64には、距離取得部72と、距離比算出部74と、血管指標値算出部76と、指標値補正部78と、画像生成部80とが設けられている。画像処理切替部60からの画像信号は、距離取得部72、血管指標値算出部76、画像生成部80が受信する。
【0038】
距離取得部72は、画像処理切替部60から受信した画像信号から、
図6に示す内視鏡12の先端部12dと観察対象82の表面との間の観察距離である第1観察距離と、第1観察距離と異なる特定観察距離として第2観察距離を取得する。本実施形態では、ズーム操作部12gからの撮像倍率変更指示に基づいてズームレンズ44を駆動して、非拡大観察から拡大観察に変えられる例で説明を行う。
【0039】
具体的には、距離取得部72は、ズーム操作部12gから撮像倍率変更指示を受信し、この撮像倍率変更指示に基づいて、第1観察距離として、撮像倍率の変更が開始された時の観察距離である非拡大観察距離L1を取得する。また、第2観察距離として、撮像倍率の変更が終了した時の観察距離である拡大観察距離L2を取得する。なお、第2観察距離は、特定観察距離ともいう。例えば、非拡大観察距離L1を20(mm)、拡大観察距離L2を5(mm)とする。距離取得部72は、取得した非拡大観察距離L1と拡大観察距離L2を、距離比算出部74に送信する。
【0040】
なお、観察距離は、画像信号から得られる露光量や、画像信号の周波数解析などで取得できる。観察距離を画像信号から得られる露光量から取得する場合、撮像倍率の変更が開始された時の画像信号から得られる露光量に基づいて非拡大観察距離L1を取得し、撮像倍率の変更が終了した時の画像信号から得られる露光量に基づいて拡大観察距離L2を取得する。また、観察距離を画像信号の周波数解析によって取得する場合、撮像倍率の変更が開始された時の画像信号に対して周波数解析を行うことによって非拡大観察距離L1を取得し、撮像倍率の変更が終了した時の画像信号に対して周波数解析を行うことによって拡大観察距離L2を取得する。
【0041】
距離比算出部74は、第1観察距離と第2観察距離(特定観察距離)との比率を示す距離比を算出する。本実施形態では、第1観察距離を非拡大観察距離L1とし、第2観察距離を拡大観察距離L2とした場合の比率を示す第1の距離比Dを算出する。第1の距離比Dは、D=L1/L2とする。本実施形態では、L1=20(mm)、L2=5(mm)なので、第1の距離比Dは「4」である。距離比算出部74は、算出した第1の距離比D(距離比)を、指標値補正部78に送信する。
【0042】
血管指標値算出部76は、画像処理切替部60から受信した画像信号に表された血管の血管指標値を算出する。血管指標値は、画像信号が表す観察対象に含まれる血管の本数、太さ(または血管の太さの最大値である最大血管太さ)、長さ(または血管の長さの平均値である平均血管長)、高低差、傾き、面積、密度(単位面積中にある血管の割合)、深度、血管間隔などである。血管指標値算出部76では、これらの血管指標値のうち少なくとも1以上を算出する。例えば、血管指標値として、血管の密度、平均血管長、最大血管太さを算出する。
【0043】
また、血管指標値算出部76は、本実施形態では、非拡大観察距離L1で取得した画像信号から、この画像信号に対して設定された関心領域(ROI(Region of Interest))内の血管指標値を、非拡大観察距離L1の血管指標値として算出する。なお、平均血管長、最大血管太さに関しては、画面上の血管を示す画素の画素数(ピクセル:pix)で示
す。
【0044】
図7に示すように、血管の密度を算出する場合、非拡大観察距離L1で取得した画像信号84のROI85内において、特定の大きさ(単位面積)の領域を切り出し、その領域内の全画素に占める血管86の割合を算出する。これをROI85内の全画素に対して行うことで、ROI85の各画素の血管86の密度を算出する。血管86の平均血管長を算出する場合は、ROI85の各画素の血管86の長さを算出し、各画素の血管86の長さの平均値を算出する。血管86の最大血管太さを算出する場合は、ROI85の各画素の血管86の太さを算出し、各画素の血管86の太さの最大値を算出する。本実施形態では、非拡大観察距離L1の血管の密度を0.23
、平均血管長を18(pix)、最大血管太さを5(pix)とする。血管指標値算出部76は、算出した非拡大観察距離L1の血管指標値を、指標値補正部78に送信する。
【0045】
指標値補正部78は、第1観察距離の血管指標値を距離比に従って補正して、特定観察距離として第2観察距離の血管指標値を取得する。本実施形態では、第1観察距離は非拡大観察距離L1であり、距離比は非拡大観察距離L1と拡大観察距離L2との比率を示す第1の距離比Dである。したがって、指標値補正部78では、非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して、拡大観察距離L2の血管指標値を取得する。
図8に示すように、指標値補正部78は、送信先切換部90と、演算部92とを備える。
【0046】
送信先切換部90は、血管指標値算出部76から非拡大観察距離L1の血管指標値を受信し、この非拡大観察距離L1の血管指標値が距離不変血管指標値である場合には画像生成部80に送信し、距離不変血管指標値以外の血管指標値である場合には演算部92に送信するように、送信先を切り替える。血管指標値算出部76から受信する非拡大観察距離L1の血管指標値には、距離不変血管指標値と、距離不変血管指標値以外の血管指標値とが含まれている。距離不変血管指標値は、非拡大観察から拡大観察に変えられるなどで観察距離が変化することによって画像内の血管の長さや太さが変わった場合でも、その値に変化が無い、即ち、観察距離に対して不変の血管指標値である。
【0047】
例えば、距離不変血管指標値は、血管の密度である。非拡大観察距離L1で取得した画像信号84のROI85内で血管86が占める割合は、ROI85内の観察対象を拡大する拡大観察が行われた場合において拡大観察距離L2で取得した画像信号96内で血管97が占める割合と同じである。このため、血管の密度は、非拡大観察距離L1と拡大観察距離L2とで値が同じとなる。
【0048】
これに対して、血管の長さに関しては、非拡大観察距離L1で取得した画像信号84の血管86の長さよりも、拡大観察距離L2で取得した画像信号96の血管97の長さの方が長い(
図9参照)。このため、平均血管長は、非拡大観察距離L1よりも拡大観察距離L2の方が値が大きい。血管の太さに関しては、非拡大観察距離L1で取得した画像信号84の血管86の太さよりも、拡大観察距離L2で取得した画像信号96の血管97の太さの方が太い(
図9参照)。このため、最大血管太さは、非拡大観察距離L1よりも拡大観察距離L2の方が値が大きい。したがって、本実施形態では、血管の密度、平均血管長、最大血管太さのうち、血管の密度を距離不変血管指標値とする。そして、送信先切換部90は、血管の密度を画像生成部80に送信し、平均血管長、及び最大血管太さを演算部92に送信する(
図8参照)。
【0049】
演算部92は、送信先切換部90から受信した距離不変血管指標値以外の血管指標値と、距離比算出部74から受信した距離比とで演算を行うことによって、距離不変血管指標値以外の血管指標値を補正して特定観察距離の血管指標値を求める。具体的には、
図9に示すように、演算部92は、送信先切換部90から、非拡大観察距離L1の平均血管長、及び非拡大観察距離L1の最大血管太さを受信し、距離比算出部74から、第1の距離比Dを受信する。この非拡大観察距離L1の平均血管長に対して第1の距離比Dを乗算することによって、非拡大観察距離L1の平均血管長を補正して拡大観察距離L2の平均血管長を求める。同様に、非拡大観察距離L1の最大血管太さに対して第1の距離比Dを乗算することによって、非拡大観察距離L1の最大血管太さを補正して拡大観察距離L2の最大血管太さを求める。本実施形態では、非拡大観察距離L1の平均血管長は18(pix)、第1の距離比Dは「4」なので、拡大観察距離L2の平均血管長は72(pix)である。また、非拡大観察距離L1の最大血管太さは5(pix)なので、拡大観察距離L2の最大血管太さは20(pix)である。演算部92は、求めた拡大観察距離L2の血管指標値を、画像生成部80に送信する。
【0050】
なお、非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して取得される拡大観察距離L2の血管指標値と、拡大観察距離L2で取得した画像信号96に基づいて算出される拡大観察距離L2の血管指標値とは、値が異なる場合がある。
【0051】
具体的には、拡大観察の場合、内視鏡12や観察対象による僅かな動きでも画像中の血管の視認性に影響が及ぶため、血管像を高解像度で取得することが難しい。このため、拡大観察時の拡大観察距離L2で取得した画像信号は、血管の解像が不十分で血管がボケ易いので、血管指標値を正確に算出することが困難となることが多い。これに対して、非拡大観察の場合、内視鏡12や観察対象が僅かに動いても、血管像を高解像度で取得できる。このため、非拡大観察距離L1で取得した画像信号に基づいて取得される拡大観察距離L2の血管指標値は、拡大観察距離L2で取得した画像信号から算出される拡大観察距離L2の血管指標値よりも正確である。例えば、拡大観察距離L2で取得した画像信号96から血管97の血管指標値を算出した場合、拡大観察距離L2の血管指標値は、血管の密度が0.24
、平均血管長が73(pix)、最大血管太さが21(pix)となり、
図9に示す演算部92が算出した拡大観察距離L2の血管指標値に対して、異なった値となる。
【0052】
画像生成部80は、画像信号と血管指標値とに基づいて特殊画像信号を生成する。特殊画像信号を用いた画像が特殊画像である。例えば、画像生成部80は、画像信号に対して、色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理を行い、ベース画像信号を生成する。次に、ベース画像信号に対して、血管指標値に基づく情報をオーバーラップ処理することにより、特殊画像信号を生成する。オーバーラップ処理では、ベース画像信号に対して血管指標値に応じて色付け処理を行うことにより、血管指標値が一定値以上の領域を疑似カラーで表示させる。これにより、疑似カラーの特殊画像信号を得る。例えば、
図10に示す特殊画像信号98において、血管指標値が一定値以上の領域99が疑似カラーで表示される。この疑似カラーの領域99を、血管指標値に応じて異なる色で表示させても良い。また、ベース画像信号に対して、血管指標値の値そのものを示す情報をオーバーラップ処理して、特殊画像を生成しても良い。例えば、
図11に示すように、モニタ18上の右上領域100などに、血管指標値を示す情報を表示する。
【0053】
映像信号生成部66は、通常用画像処理部62または測定用画像処理部64から受信した画像信号を、モニタ18で表示可能な画像として表示するための映像信号に変換し、モニタ18に順次出力する。これにより、モニタ18には、通常画像信号が入力された場合は通常画像を表示し、特殊画像信号が入力された場合は特殊画像を表示する。
【0054】
次に、本発明の作用について、
図12に示すフローチャートに沿って説明する。まず、測定モードにセットされた場合(S11)、非拡大観察でスクリーニングが行われる(S12)。このスクリーニング時に、ブラウニッシュエリアや発赤などの病変の可能性がある部位(以下、病変可能性部位という)を発見すると(S13)、ドクターは、病変可能性部位を拡大観察するためにズーム操作部12gを操作して、撮像倍率の変更を開始させる(S14)。
【0055】
撮像倍率の変更が開始されると、非拡大観察距離L1の取得が行われる(S15)。また、非拡大観察距離L1の画像信号を取得し(S16)、この非拡大観察距離L1で取得した画像信号から、非拡大観察距離L1の血管指標値を算出する(S17)。算出する非拡大観察距離L1の血管指標値は、血管の密度、血管の長さ(または平均血管長)、血管の太さ(または最大血管太さ)、血管の本数、血管の高低差、血管の傾き、血管の深さのうち、少なくとも1以上である。そして、ドクターは、病変可能性部位が拡大観察されるとズーム操作部12gの操作を止めて、撮像倍率の変更を終了させる(S18)。
【0056】
撮像倍率の変更が終了されると、拡大観察距離L2の取得が行われる(S19)。取得した非拡大観察距離L1と拡大観察距離L2とから、第1の距離比D(距離比)を算出する(S20)。そして、非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して(S21)、拡大観察距離L2の血管指標値を取得する(S22)。
【0057】
以上のように、本発明は、非拡大観察距離L1の血管指標値を、非拡大観察距離L1と拡大観察距離L2とで求めた第1の距離比Dに従って補正して、拡大観察距離L2の血管指標値を取得するので、予め定められた診断基準に用いられる特定観察距離の血管指標値を取得できる。
【0058】
また、拡大観察距離L2で取得した画像信号は、血管がボケて写ることがあり、この場合には、拡大観察距離L2の血管指標値を正確に求めることが困難である。これに対して、本発明では、非拡大観察距離L1で取得した高解像度の画像信号から非拡大観察距離L1の血管指標値を求め、この非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して拡大観察距離L2の血管指標値を取得するため、拡大観察距離L2の血管指標値が正確である。
【0059】
なお、上記実施形態では、指標値補正部78は、血管指標値算出部76から非拡大観察距離L1の血管指標値を受信し、この非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して拡大観察距離L2の血管指標値を取得しているが、
図13に示す記憶部102に記憶した非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して、拡大観察距離L2の血管指標値を取得しても良い。記憶部102は、非拡大観察中に、血管指標値算出部76で非拡大観察距離L1の血管指標値が算出された場合、この非拡大観察距離L1の血管指標値を順次記憶する。なお、記憶部102は、プロセッサ装置16内に設けても良いし、プロセッサ装置16に接続する外付けタイプでも良い。
【0060】
このように、非拡大観察中に算出された非拡大観察距離L1の血管指標値を記憶部102に記憶させておくことによって、撮像倍率の変更が開始された時に算出された非拡大観察距離L1の血管指標値以外の非拡大観察距離L1の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して、拡大観察距離L2の血管指標値を取得できる。
【0061】
また、記憶部102は、距離比算出部74で第1の距離比Dが算出された場合に、この第1の距離比Dを更に記憶しても良い。この場合には、距離比算出部74によって第1の距離比Dを算出するステップが省略される。
【0062】
上記実施形態では、非拡大観察から拡大観察に変えているが、拡大観察から非拡大観察に変えても良い。この場合、距離取得部72は、ズーム操作部12gからの撮像倍率変更指示に基づいて、撮像倍率の変更が開始された時の観察距離を拡大観察距離L2(第1観察距離)として取得し、撮像倍率の変更が終了した時の観察距離を非拡大観察距離L1(第2観察距離)として取得する。距離比算出部74は、第1の距離比Dを、D=L2/L1とする。血管指標値算出部76は、拡大観察距離L2で取得した画像信号から、拡大観察距離L2の血管指標値を算出する。指標値補正部78は、算出された拡大観察距離L2の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正して、非拡大観察距離L1の血管指標値を取得する。
【0063】
また、特定観察距離の血管指標値(拡大観察距離L2の血管指標値)の単位は、画素数(pix)で表されているが、画素数とは異なる特定の単位に変換しても良い。
【0064】
図14に示すように、測定用画像処理部110には、測定用画像処理部64の各構成に加えて、血管指標値の画素数を特定の単位に変換する単位変換部112が新たに設けられる。単位変換部112は、予め定められた単位変換用観察距離Ltと、この単位変換用観察距離Ltにおける1(pix)に相当する特定の単位の血管指標値とを関連付けて記憶している。そして、単位変換部112は、指標値補正部78によって画素数で表される拡大観察距離L2の血管指標値が取得された場合、拡大観察距離L2と、単位変換部112に記憶された単位変換用観察距離Ltとの比率を示す変換比率Tを求める。次に、この変換比率Tと、拡大観察距離L2の血管指標値とに基づく演算を行うことによって、拡大観察距離L2の血管指標値を、画素数から特定の単位に変換する。特定の単位は、例えば、ミリメートル(mm)である。具体的には、拡大観察距離L2が5(mm)、拡大観察距離L2の最大血管太さが20(pix)、単位変換用観察距離Ltが10(mm)、単位変換用観察距離Ltにおける1(pix)が0.1(mm)である場合には、変換比率Tは、T=L2/Ls=0.5と求められる。この変換比率T(=0.5)に、画素数で表される拡大観察距離L2の最大血管太さ20(pix)を乗ずる(0.5×20)。これにより、拡大観察距離L2の最大血管太さが、1(mm)に変換される。
【0065】
なお、上記実施形態では、第1観察距離を取得し、且つ特定観察距離として第2観察距離を取得し、第1観察距離と第2観察距離との比率を示す第1の距離比Dを求めて、第1観察距離の血管指標値を第1の距離比Dに従って補正することによって、第2観察距離の血管指標値を取得しているが、特定観察距離として予め定められた基準観察距離Lsを設定し、第1観察距離と基準観察距離Lsとの比率を示す第2の距離比Dsを求めて、第1観察距離の血管指標値を第2の距離比Dsに従って補正することによって、基準観察距離Lsの血管指標値を取得しても良い。
【0066】
図15に示すように、測定用画像処理部120には、測定用画像処理部64の各構成に加えて、基準観察距離Lsを設定する基準観察距離設定部122が新たに設けられる。基準観察距離設定部122は、コンソール19などのユーザインタフェースと接続されており、コンソール19から基準観察距離Lsが入力された場合に、この基準観察距離Lsを距離比算出部74に送信する。基準観察距離Lsは、例えば、10(mm)とされる。
【0067】
距離比算出部74は、非拡大観察距離L1と基準観察距離Lsとの比率を示す第2の距離比Ds(=L1/Ls)を算出する。指標値補正部78は、非拡大観察距離L1の血管指標値に第2の距離比Dsを乗算することによって、非拡大観察距離L1の血管指標値を補正して基準観察距離Lsの血管指標値を取得する。例えば、第2の距離比DsはDs=20/10=2であり、非拡大観察距離L1の平均血管長は18(pix)なので、基準観察距離Lsの平均血管長は36(pix)である。また、非拡大観察距離L1の最大血管太さは5(pix)なので、基準観察距離Lsの最大血管太さは10(pix)である。
【0068】
このように、第1観察距離と基準観察距離Lsとで求められる第2の距離比Dsを用いて第1観察距離の血管指標値を補正することによって、第1観察距離を基準観察距離Lsに合わせなくとも、基準観察距離Lsの血管指標値を取得できる。なお、基準観察距離Lsは、血管指標値などの生体情報に応じた診断基準が定められている観察距離とすることが好ましい。この場合には、正確な基準観察距離Lsの血管指標値を取得できるため、より確実な診断が可能となる。また、基準観察距離設定部122に基準観察距離Lsをプリセットしておいても良い。更に、プリセットされた基準観察距離Lsをコンソール19などで変更可能にしても良い。
【0069】
また、第1観察距離の血管指標値を第2の距離比Dsに従って補正して、基準観察距離Lsの血管指標値を取得する場合には、単位変換部112は、基準観察距離Lsにおける1(pix)に相当する特定の単位の血管指標値を記憶するようにしても良い。これにより、変換比率Tの算出が省略されて、基準観察距離Lsの血管指標値の単位を、画素数とは異なる特定の単位に簡単に変換できる。
【0070】
なお、距離比算出部74は、拡大観察距離L2と基準観察距離Lsとの比率を第2の距離比Dsとして算出しても良い。この場合は、拡大観察距離L2の血管指標値を第2の距離比Dsに従って補正することによって、基準観察距離Lsの血管指標値を取得できる。
【0071】
[第2実施形態]
第2実施形態では、上記第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、レーザ光源と蛍光体を用いて観察対象の照明を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0072】
図16に示すように、第2実施形態の内視鏡システム200では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dの代わりに、中心波長445±10nmの青色レーザ光を発する青色レーザ光源(
図16では「445LD」と表記)204と、中心波長405±10nmの青紫色レーザ光を発する青紫色レーザ光源(
図16では「405LD」と表記)206とが設けられている。これら各光源204、206の半導体発光素子からの発光は、光源制御部208により個別に制御されており、青色レーザ光源204の出射光と、青紫色レーザ光源206の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0073】
光源制御部208は、通常モードの場合には、青色レーザ光源204を駆動させる。これに対して、測定モードの場合には、青色レーザ光源204と青紫色レーザ光源206の両方を駆動させるとともに、青色レーザ光の発光比率を青紫色レーザ光の発光比率よりも大きくなるように制御している。以上の各光源204、206から出射されるレーザ光は、集光レンズ、光ファイバ、合波器などの光学部材(いずれも図示せず)を介して、ライトガイド25に入射する。
【0074】
なお、青色レーザ光又は青紫色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、青色レーザ光源204及び青紫色レーザ光源206は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオードなどの発光体を用いた構成としてもよい。
【0075】
照明光学系30aには、照明レンズ32の他に、ライトガイド25からの青色レーザ光又は青紫色レーザ光が入射する蛍光体210が設けられている。蛍光体210は、青色レーザ光によって励起され、蛍光を発する。また、青色レーザ光の一部は、蛍光体210を励起させることなく透過する。青紫色レーザ光は、蛍光体210を励起させることなく透過する。蛍光体210を出射した光は、照明レンズ32を介して、観察対象の体内を照明する。
【0076】
ここで、通常モードにおいては、主として青色レーザ光が蛍光体210に入射するため、
図17に示すような、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体210から励起発光する蛍光を合波した白色光によって観察対象が照明される。一方、測定モードにおいては、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体210に入射するため、
図18に示すような、青紫色レーザ光、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体210から励起発光する蛍光を合波した特殊光によって観察対象が照明される。
【0077】
なお、蛍光体210は、青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl
10O
17)などの蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。本構成例のように、半導体発光素子を蛍光体210の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0078】
[第3実施形態]
第3実施形態では、上記第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、キセノンランプなどの広帯域光源と回転フィルタを用いて観察対象の照明を行う。また、カラーの撮像センサ46に代えて、モノクロの撮像センサで観察対象の撮像を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0079】
図19に示すように、第3実施形態の内視鏡システム300では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dに代えて、広帯域光源302、回転フィルタ304、フィルタ切替部305が設けられている。また、撮像光学系30bには、カラーの撮像センサ46の代わりに、カラーフィルタが設けられていないモノクロの撮像センサ306が設けられている。
【0080】
広帯域光源302はキセノンランプ、白色LEDなどであり、波長域が青色から赤色に及ぶ白色光を発する。回転フィルタ304は、内側に設けられた通常モード用フィルタ308と、外側に設けられた測定モード用フィルタ309とを備えている(
図20参照)。フィルタ切替部305は、回転フィルタ304を径方向に移動させるものであり、モード切替SW12fにより通常モードにセットされたときに、回転フィルタ304の通常モード用フィルタ308を白色光の光路に挿入し、測定モードにセットされたときに、回転フィルタ304の測定モード用フィルタ309を白色光の光路に挿入する。
【0081】
図20に示すように、通常モード用フィルタ308には、周方向に沿って、白色光のうち青色光を透過させるBフィルタ308a、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ308b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ308cが設けられている。したがって、通常モード時には、回転フィルタ304が回転することで、青色光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0082】
測定モード用フィルタ309には、周方向に沿って、白色光のうち特定波長の青色狭帯域光を透過させるBnフィルタ309aと、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ309b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ309cが設けられている。したがって、測定モード時には、回転フィルタ304が回転することで、青色狭帯域光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0083】
内視鏡システム300では、通常モード時には、青色光、緑色光、赤色光で観察対象が照明される毎にモノクロの撮像センサ306で観察対象を撮像する。これにより、RGBの3色の画像信号が得られる。そして、それらRGB色の画像信号に基づいて、上記第1実施形態と同様の方法で、通常画像が生成される。
【0084】
一方、測定モード時には、青色狭帯域光、緑色光、赤色光で観察対象が照明される毎にモノクロの撮像センサ306で観察対象を撮像する。これにより、Bn画像信号と、G画像信号、R画像信号が得られる。これらBn画像信号と、G画像信号、R画像信号に基づいて、特殊画像の生成が行われる。このように、特殊画像の生成には、B画像信号の代わりに、Bn画像信号が用いられる。それ以外については、第1実施形態と同様の方法で特殊画像の生成が行われる。
【0085】
なお、コンソール19などのユーザインタフェースによって血管指標値の選択を可能とし、選択された血管指標値について血管指標値の算出を行うようにしても良い。また、血管指標値算出部76は、全ての血管指標値、即ち、血管の本数、太さ(または最大血管太さ)、長さ(または平均血管長)、高低差、傾き、面積、密度、深度、血管間隔を算出しても良い。この場合には、コンソール19などで選択された血管指標値を算出するようにしても良い。