【実施例】
【0031】
以下に本発明の容器詰め茹卵を実施例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0032】
[実施例1]
まず、殻付き卵を90℃で15分間加熱して茹卵を調製し、すぐに5℃に冷却し脱殻した。
また、菜種油70%、乳化剤(卵黄リゾレシチン)2%、清水25%の割合で原料をミキサーで混合して乳化物を得、さらに、乳化物100%に対してコショウ抽出物0.02%添加し、キサンタンガムを用いて粘度を150Pa・sに調整することで、油脂含有溶液を調製した。
続いて、茹卵1個(50g)と油脂含有溶液50gを無色透明のポリエチレン製容器に充填後、真空包装し、85℃60分間の加熱を行なうことで容器詰め茹卵を調製した。調製直後の油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、2.8%O
2であった。さらに調製した容器詰め茹卵を蛍光灯照射下(3000ルクス)で30日間保存し、実施例1とした。
なお、実施例1で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が70%、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は3%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0033】
実施例1の容器詰め茹卵の酸化劣化臭と味について、官能評価を行った。
その結果、酸化劣化が大幅に抑制され、美味しい茹卵が得られた。
【0034】
[比較例1]
溶存酸素濃度と本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、比較例1を調製した。
具体的には、茹卵と油脂含有液を容器に充填・密封した後の加熱を行なわない以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、比較例1とした。加熱を行なわなかったため、調製直後の油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、13%O
2であった。
【0035】
比較例1の容器詰め茹卵の酸化劣化臭と味について、官能評価を行った。
その結果、酸化劣化を感じ、美味しい茹卵は得られなかった。
【0036】
[試験例1]
油脂含有溶液の全光線透過率と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例1を行った。
具体的には、実施例1の乳化物を4倍希釈、8倍希釈したものを50g準備し、そこにコショウ抽出物0.01gを混合し、キサンタンガムで粘度を150Pa・sに調整することにより、油脂含有溶液を調製した以外は、実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、それぞれ実施例2、比較例2とした。
さらに、実施例2で調製した油脂含有溶液に、清水で2倍希釈したときの全光線透過率が3%、6.5%になるように、それぞれコメのリン酸架橋澱粉(松谷化学社製、商品名「パインホワイトR」)を適量加え、実施例3,4の保存液とした。
なお、実施例2乃至4及び比較例2の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%O
2であった。
また、試験例1の実施例及び比較例に用いた油脂含有溶液の油脂含有量は、実施例2乃至4が17.8%、比較例2で8.8%、香辛料抽出物の含有量は共に0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0037】
続いて、実施例1と同様に官能評価を行った。評価は、下記評価基準をもとに行い、表1に結果を記載した。
【0038】
[表1]
【0039】
[評価基準]
◎:酸化劣化が大幅に抑制された。
〇:酸化劣化が抑制された。
△:酸化劣化を少し感じたが、問題のない範囲であった。
×:酸化劣化を感じた。
【0040】
表1より、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は15%以下であり、さらに10%以下であると酸化劣化が抑制されることが理解できる。
【0041】
[試験例2]
油脂含有溶液の油脂含有量と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例2を行った。
具体的には、実施例1の油脂含有量を35%に変更して清水に置き換え、キサンタンガムを用いて粘度を150Pa・sに調整し、さらにコメのリン酸架橋澱粉を適量加えて、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率が3%になるように調整した以外は、実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例5とした。
また、比較例2にコメのリン酸架橋澱粉を適量加えて、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率が3%になるように調整した以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例6とした。
ここで、実施例5,6の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%O
2であり、また、実施例5,6で調製した油脂含有溶液は、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、実施例5,6は、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
続いて、実施例1と同様に官能評価を行った。評価は、試験例1で用いた評価基準をもとに行い、表2に結果を記載した。
【0042】
[表2]
【0043】
実施例1,5,6より、本発明の油脂含有溶液中の油脂含有量は、15%以上であるとよく、さらに、50%以上であるとよいことが理解できる。
【0044】
[試験例3]
油脂含有溶液の粘度と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例3を行った。
具体的には、実施例1の油脂含有溶液を変更した以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例7,8とした。
実施例7で用いた油脂含有溶液は、下記配合表1にしたがって調製した。より詳細には、まず清水以外の材料をミキサーにて混合して均一なペーストを調整し、そこに清水を少しずつ加えるという順で調製した。
実施例8で用いた油脂含有溶液としては、実施例7の油脂含有溶液にキサンタンガムを適量加え、粘度を40Pa・sに調整したものを用いた。
ここで、実施例7,8の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%O
2であり、実施例7,8で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が30〜40%、香辛料抽出物の含有量が0.01%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は1〜10%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は0.8部であった。
なお、油脂含有溶液の粘度は表3に示した通りであるが、実施例6は、ほとんど清水に近い低粘度であった。
【0045】
[配合表1]
大豆油 16g
グリセリン 3.8g
乳化剤(卵黄リゾレシチン) 0.16g
ゴマ抽出物 0.04g
清水で 40g
【0046】
[表3]
【0047】
続いて、実施例7,8の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行い、結果を表3に示した。
表3より、油脂含有溶液の粘度が30Pa・s以上であることで、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易いことが理解できる。
【0048】
[実施例9]
香辛料抽出物が本発明に与える影響を調べるため、実施例9の容器詰め茹卵を調製した。
具体的には、実施例1の油脂含有溶液に含まれるコショウ抽出物を除いた以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例9とした。
実施例9で調整した油脂含有溶液の溶存酸素濃度、油脂含有量、清水で2倍希釈したときの全光線透過率及び粘度、油脂含有溶液の量は実施例1と同様であった。
【0049】
続いて、実施例9の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行った。
その結果、実施例9は、酸化劣化を少し感じたが、問題のない範囲であった。
したがって、油脂含有溶液が香辛料抽出物を含有することで、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易いことが理解できる。
【0050】
[実施例10,11]
油脂含有溶液として、キユーピータマゴ社製の「ヨークランH−1」、「ヨークランNo.2」にコショウ抽出物を0.02%添加したものを用いた以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、それぞれ実施例10,11とした。
ここで、実施例10,11の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%O
2であり、実施例10,11で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が60〜80%、粘度が30〜300Pa・s、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は1〜10%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0051】
続いて、実施例10,11の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行った。
その結果、実施例10,11は、酸化劣化が大幅に抑制されていた。