特許第6616237号(P6616237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616237
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】容器詰め茹卵及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20191125BHJP
   A23B 5/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A23L15/00 Z
   A23B5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-97980(P2016-97980)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205030(P2017-205030A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沼田 夏美
(72)【発明者】
【氏名】小島 聡暁
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−257858(JP,A)
【文献】 特開平09−084563(JP,A)
【文献】 特開平07−215382(JP,A)
【文献】 特開平02−257826(JP,A)
【文献】 特開2015−070815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A23B 4/00− 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清水で2倍希釈したときの全光線透過率が15%以下である油脂含有溶液に浸漬された、
容器詰め茹卵であって、
当該容器詰め茹卵の、製造直後における前記油脂含有溶液の溶存酸素濃度が5%O以下
である、
容器詰め茹卵。
【請求項2】
請求項1に記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液中の油脂含有量が、前記油脂含有溶液に対して15%以上である、
容器詰め茹卵。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液が香辛料抽出物を含有する、
容器詰め茹卵。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液の粘度が30〜300Pa・sである、
容器詰め茹卵。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の容器詰め茹卵の製造方法であって、
脱殻した茹卵を前記油脂含有溶液とともに容器に充填・密封し、
65〜100℃で加熱する工程を有する、
容器詰め茹卵の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化劣化を抑制した容器詰め茹卵及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰め茹卵は、主に業務用製品として販売されてきたが、近年の「中食」の普及に伴い、一般消費者向けの家庭用製品としての販売が求められるようになった。
家庭用製品は、一般的に業務用製品よりも長い賞味期間を要求されるため、家庭用製品として展開するためには、賞味期間の延長が課題となる。
【0003】
食品を長期間保存すると、酸化により風味が劣化したり食品の色が退色してしまうことが知られている。特に卵は、酸化劣化を促進する鉄や脂質を卵黄中に多く含むために、酸化劣化がすすみやすい。酸化劣化がすすんだ茹卵は、卵白の色が退色して不自然な白色になり、風味も卵らしい美味しさが消え、独特の酸化劣化臭を生じ、場合によってはとても食べ物として適さない味にまで変化してしまう。
したがって、家庭用商品とするために賞味期限を延長するには、酸化劣化の防止が重要である。
【0004】
これまでの酸化劣化防止方法(例えば特許文献1)では、家庭用製品として求められるほどの期間、酸化劣化を防ぐことが困難であり、今後、家庭用製品が広く展開されるにあたって、全く新しい酸化劣化対策が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2‐257858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酸化劣化を抑制した容器詰め茹卵及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、保存液に酸化劣化の要因の1つである油脂をあえて含有させ、かつ、全光線透過率と溶存酸素濃度を特定の範囲に調製することにより、意外にも茹卵の酸化劣化が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)清水で2倍希釈したときの全光線透過率が15%以下である油脂含有溶液に浸漬された、
容器詰め茹卵であって、
当該容器詰め茹卵の、製造直後における前記油脂含有溶液の溶存酸素濃度が5%O以下である、
容器詰め茹卵、
(2)(1)に記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液中の油脂含有量が、前記油脂含有溶液に対して15%以上である、
容器詰め茹卵、
(3)(1)又は(2)に記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液が香辛料抽出物を含有する、
容器詰め茹卵、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の容器詰め茹卵であって、
前記油脂含有溶液の粘度が30〜300Pa・sである、
容器詰め茹卵、
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の容器詰め茹卵の製造方法であって、
脱殻した茹卵を前記油脂含有溶液とともに容器に充填・密封し、
65〜100℃で加熱する工程を有する、
容器詰め茹卵の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化劣化を抑制した容器詰め茹卵及びその製造方法を提供し、
家庭用容器詰め茹卵のさらなる市場拡大に貢献することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の容器詰め茹卵を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明は、酸化劣化を抑制した容器詰め茹卵及びその製造方法であることに特徴を有する。
【0012】
<容器詰め茹卵>
本発明の容器詰め茹卵とは、茹卵と油脂含有溶液が容器に充填・密封され、加熱されたものをいう。
容器内において茹卵は、油脂含有溶液に浸漬された状態で存在し、茹卵の酸化劣化が抑制されやすいことから、茹卵の表面全体に油脂含有溶液が接触しているとよい。
茹卵の表面全体に油脂含有溶液を接触させる方法としては、容器の外部から手でなじませてもよいし、容器内の空気を取り除いて真空包装してもよい。
【0013】
<茹卵>
本発明の茹卵の原料として用いる殻付卵は、食用に供されるものであれば特に制限はなく、例えば、鶏卵、鶉卵、アヒル卵等が挙げられる。また、茹卵は、加熱凝固の程度が、卵白部の流動性が無い程度まで加熱凝固していればよい。したがって、本発明においては、卵黄部及び卵白部の流動性が無い程度まで加熱凝固した固茹での茹卵はもちろんのこと、卵白部は流動性が無い程度まで加熱凝固しているが、卵黄部の一部に流動性が残る程度までしか加熱凝固していない半熟状の茹卵を用いてもよい。
茹卵の酸化劣化は、卵黄中の鉄等によって促進されるため、本発明の容器詰め茹卵としては、卵黄部分が視認できるほどのひびや欠けがない茹卵を用いることで、より酸化劣化抑制効果が得られ易い。
【0014】
<茹卵の製造方法>
上記のような茹卵を製するには、具体的には、例えば、殻付卵をそのまま85〜100℃の熱水中で5〜30分間加熱処理して中身を加熱凝固させた後冷却し、殻を除去する方法等が挙げられる。前記加熱処理方法は、他の方法、例えば、マイクロ波加熱や蒸気加熱等を用いてもよい。
【0015】
<容器>
本発明で用いる容器としては、容器の材質、形状等は特に制限されず、例えば、PET、ポリスチレン等の硬質な容器、ポリエチレン、ポリプロピレン等の軟質な容器等が挙げられる。
なお、家庭用製品としては、少なくとも一部が透明な容器が食の安心安全の観点から好まれる傾向にある。そのような容器を用いると、酸化劣化がすすみやすくなるため、本発明では少なくとも一部が透明な容器を用いることで、酸化劣化を抑制する本願発明の効果をより顕著に感じることができる。
また、油脂含有液が茹卵全体を覆いやすいことから、容器の形状は底面を有するスタンディングパウチであるとよい。
【0016】
<油脂含有溶液>
本発明の油脂含有溶液は、清水で2倍希釈したときの全光線透過率が15%以下であり、油脂を含有する。また、容器詰め茹卵の製造直後における前記油脂含有溶液の溶存酸素濃度は5%O以下である。
油脂含有溶液の状態は特に限定しないが、清水で2倍希釈したときの全光線透過率が15%以下の油脂含有溶液が得られ易いことから、乳化しているとよく、特に水中油型に乳化しているとよい。
このような水中油型の油脂含有溶液としては、例えば、キユーピータマゴ社製の「ヨークランH−1」「ヨークランNo.2」等の油脂加工品を用いることができる。
【0017】
<油脂含有溶液の全光線透過率>
本発明の油脂含有溶液は、清水で2倍希釈したときの全光線透過率が15%以下であり、さらに10%以下であるとよい。
全光線透過率が前記上限を上回ると、酸化劣化が抑制された茹卵を得ることができない。また、全光線透過率の下限は特に限定されないが、数値に見合った効果が得られ難いことから、0.1%以上であるとよく、さらに1%以上であるとよい。
【0018】
<全光線透過率の測定方法>
本発明において、全光線透過率は、清水の全光線透過率に対する値である。すなわち、全光線透過率は、サンプルへの平行入射光束に対する、拡散成分を含む透過光束の割合であり、本発明におけるサンプルの全光線透過率は、対照である清水の透過率を100%とした場合のサンプルの透過率を示す。より具体的には、全光線透過率は、積分球式電光度法を用いた濁度測定により、波長390nm、光路長5mmで得られる数値であり、濁度測定器(型名「WA 2000N」、日本電色工業(株))を用い、油脂含有溶液を清水で2倍希釈し、必要に応じて撹拌することで均質な状態に調整したものをサンプルとして測定を行う。
【0019】
<油脂含有溶液の溶存酸素>
本発明の容器詰め茹卵の製造直後における油脂含有溶液溶存酸素濃度は5%O以下であるとよく、さらに3%O以下であるとよい。
溶存酸素濃度が前記値以下であることにより、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易い。溶存酸素濃度の下限は特に限定されないが、0.01%O以上、さらに0.05%O以上とすることができる。
なお、油脂含有溶液の溶存酸素濃度は通常10%O以上であるが、これを加熱することにより、溶存酸素濃度を低減することができ、結果として、保存期間初期における茹卵の酸化劣化を抑制することができる。
【0020】
<溶存酸素の測定方法>
本発明の油脂含有溶液中の溶存酸素濃度は、Fibox3(タイテック社製)によって測定した値とする。測定は、製造直後の油脂含有液を15℃にして行うものとする。
【0021】
<油脂>
本発明の油脂含有溶液に用いる油脂は、食用に適するものであれば、その種類については何ら限定がなく、例えばパーム油、ヤシ油、大豆油、菜種油、ゴマ油などがあげられ、中でも、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易いことから、大豆油、菜種油、ごま油を含有するとよい。
これらを単独で用いても良いし、あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0022】
<油脂の含有量>
本発明の油脂含有溶液中の油脂含有量は、15%以上であることができ、さらに、50%以上であるとよい。油脂含有溶液中の油脂含有量が前記下限以上であることにより、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易い。
また、上限は特に限定されないが、添加量に見合った効果が得難いことから、90%以下であるとよく、さらに85%以下であるとよい。
【0023】
<油脂含有溶液の粘度>
本発明の油脂含有溶液の粘度は、30〜300Pa・sであることができ、さらに50〜200Pa・sであるとよい。
油脂含有溶液の粘度が前記範囲内であることにより、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易い。
なお、油脂含有溶液の粘度は、油脂の含有量を調整したり、増粘多糖類等を用いたりすることで、調整することができる。
【0024】
<粘度の測定方法>
本発明における粘度は、BH型粘度計を用い、下記の条件で測定したものである。
測定温度:6℃
ローター:No.6
回転速度:2rpm
【0025】
<香辛料抽出物>
本発明の油脂含有溶液は、香辛料抽出物を含有するとよい。
本発明における香辛料抽出物とは、原料より水、エタノール、二酸化炭素又は有機溶剤で抽出して得られたものであり、原料としては、アサノミ、オレガノ、オールスパイス、カショウ、カモミール、カラシナ、カルダモン、クチナシ、クミン、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サンショウ、タイム、タマネギ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニンニク、バジル、パセリ、パプリカ、ローズマリー等が挙げられる。
中でも、茹卵の酸化劣化を抑制するため、コショウ、ゴマ又はニンニク抽出物を用いるとよい。
【0026】
<香辛料抽出物の含有量>
本発明の油脂含有溶液中の香辛料抽出物含有量は、油脂含有溶液に対して0.001〜1%であることができ、さらに0.0015〜0.5%、さらに0.005〜0.1%であるとよい。油脂含有溶液中の香辛料抽出物含有量が前記範囲内であることにより、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易い。
【0027】
<油脂含有溶液のその他の成分>
本発明の油脂含有溶液には、本発明の効果を損ねない範囲で、上述した以外の材料を用いることができる。
具体的には、
醤油、砂糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、
グリシン、ナイシン等の静菌剤、
グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、卵黄、サポニン等の乳化剤、
酢酸、酢酸塩等のpH調整剤等をあげることができる。
【0028】
<油脂含有溶液の量>
本発明の油脂含有溶液の量は、茹卵1部に対して0.2部以上であることができ、さらに0.4部以上であるとよい。油脂含有溶液の量が前記下限以上であることにより、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易い。
また、上限は特に限定されないが、油脂含有溶液の量に見合った効果が得難いことから、3部以下であるとよく、さらに2部以下であるとよい。
【0029】
<製造方法>
本発明の容器詰め茹卵の製造方法は、常法に則り製造することができる。例えば、脱殻した茹卵を油脂含有溶液とともに容器に充填後、真空包装し、加熱することにより得られる。
【0030】
<充填・密封後の加熱>
本発明の容器詰め茹卵の製造方法においては、脱殻した茹卵を油脂含有溶液とともに容器に充填・密封し、65〜100℃で加熱する工程を有することで、油脂含有溶液中の溶存酸素濃度を低減し、経時的な酸化劣化を抑制することができる。酸化劣化の抑制効果が得られ易いことから、充填・密封後の加熱温度は、80〜95℃であるとさらによく、充填・密封後の加熱時間は、5〜30分間、さらに10〜25分間であるとよい。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の容器詰め茹卵を実施例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0032】
[実施例1]
まず、殻付き卵を90℃で15分間加熱して茹卵を調製し、すぐに5℃に冷却し脱殻した。
また、菜種油70%、乳化剤(卵黄リゾレシチン)2%、清水25%の割合で原料をミキサーで混合して乳化物を得、さらに、乳化物100%に対してコショウ抽出物0.02%添加し、キサンタンガムを用いて粘度を150Pa・sに調整することで、油脂含有溶液を調製した。
続いて、茹卵1個(50g)と油脂含有溶液50gを無色透明のポリエチレン製容器に充填後、真空包装し、85℃60分間の加熱を行なうことで容器詰め茹卵を調製した。調製直後の油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、2.8%Oであった。さらに調製した容器詰め茹卵を蛍光灯照射下(3000ルクス)で30日間保存し、実施例1とした。
なお、実施例1で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が70%、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は3%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0033】
実施例1の容器詰め茹卵の酸化劣化臭と味について、官能評価を行った。
その結果、酸化劣化が大幅に抑制され、美味しい茹卵が得られた。
【0034】
[比較例1]
溶存酸素濃度と本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、比較例1を調製した。
具体的には、茹卵と油脂含有液を容器に充填・密封した後の加熱を行なわない以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、比較例1とした。加熱を行なわなかったため、調製直後の油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、13%Oであった。
【0035】
比較例1の容器詰め茹卵の酸化劣化臭と味について、官能評価を行った。
その結果、酸化劣化を感じ、美味しい茹卵は得られなかった。
【0036】
[試験例1]
油脂含有溶液の全光線透過率と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例1を行った。
具体的には、実施例1の乳化物を4倍希釈、8倍希釈したものを50g準備し、そこにコショウ抽出物0.01gを混合し、キサンタンガムで粘度を150Pa・sに調整することにより、油脂含有溶液を調製した以外は、実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、それぞれ実施例2、比較例2とした。
さらに、実施例2で調製した油脂含有溶液に、清水で2倍希釈したときの全光線透過率が3%、6.5%になるように、それぞれコメのリン酸架橋澱粉(松谷化学社製、商品名「パインホワイトR」)を適量加え、実施例3,4の保存液とした。
なお、実施例2乃至4及び比較例2の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%Oであった。
また、試験例1の実施例及び比較例に用いた油脂含有溶液の油脂含有量は、実施例2乃至4が17.8%、比較例2で8.8%、香辛料抽出物の含有量は共に0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0037】
続いて、実施例1と同様に官能評価を行った。評価は、下記評価基準をもとに行い、表1に結果を記載した。
【0038】
[表1]
【0039】
[評価基準]
◎:酸化劣化が大幅に抑制された。
〇:酸化劣化が抑制された。
△:酸化劣化を少し感じたが、問題のない範囲であった。
×:酸化劣化を感じた。
【0040】
表1より、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は15%以下であり、さらに10%以下であると酸化劣化が抑制されることが理解できる。
【0041】
[試験例2]
油脂含有溶液の油脂含有量と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例2を行った。
具体的には、実施例1の油脂含有量を35%に変更して清水に置き換え、キサンタンガムを用いて粘度を150Pa・sに調整し、さらにコメのリン酸架橋澱粉を適量加えて、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率が3%になるように調整した以外は、実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例5とした。
また、比較例2にコメのリン酸架橋澱粉を適量加えて、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率が3%になるように調整した以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例6とした。
ここで、実施例5,6の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%Oであり、また、実施例5,6で調製した油脂含有溶液は、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、実施例5,6は、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
続いて、実施例1と同様に官能評価を行った。評価は、試験例1で用いた評価基準をもとに行い、表2に結果を記載した。
【0042】
[表2]
【0043】
実施例1,5,6より、本発明の油脂含有溶液中の油脂含有量は、15%以上であるとよく、さらに、50%以上であるとよいことが理解できる。
【0044】
[試験例3]
油脂含有溶液の粘度と、本発明の容器詰め茹卵の酸化劣化の抑制との関係を調べるため、試験例3を行った。
具体的には、実施例1の油脂含有溶液を変更した以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例7,8とした。
実施例7で用いた油脂含有溶液は、下記配合表1にしたがって調製した。より詳細には、まず清水以外の材料をミキサーにて混合して均一なペーストを調整し、そこに清水を少しずつ加えるという順で調製した。
実施例8で用いた油脂含有溶液としては、実施例7の油脂含有溶液にキサンタンガムを適量加え、粘度を40Pa・sに調整したものを用いた。
ここで、実施例7,8の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%Oであり、実施例7,8で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が30〜40%、香辛料抽出物の含有量が0.01%であり、油脂は水中油型に乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は1〜10%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は0.8部であった。
なお、油脂含有溶液の粘度は表3に示した通りであるが、実施例6は、ほとんど清水に近い低粘度であった。
【0045】
[配合表1]
大豆油 16g
グリセリン 3.8g
乳化剤(卵黄リゾレシチン) 0.16g
ゴマ抽出物 0.04g
清水で 40g
【0046】
[表3]
【0047】
続いて、実施例7,8の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行い、結果を表3に示した。
表3より、油脂含有溶液の粘度が30Pa・s以上であることで、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易いことが理解できる。
【0048】
[実施例9]
香辛料抽出物が本発明に与える影響を調べるため、実施例9の容器詰め茹卵を調製した。
具体的には、実施例1の油脂含有溶液に含まれるコショウ抽出物を除いた以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、実施例9とした。
実施例9で調整した油脂含有溶液の溶存酸素濃度、油脂含有量、清水で2倍希釈したときの全光線透過率及び粘度、油脂含有溶液の量は実施例1と同様であった。
【0049】
続いて、実施例9の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行った。
その結果、実施例9は、酸化劣化を少し感じたが、問題のない範囲であった。
したがって、油脂含有溶液が香辛料抽出物を含有することで、酸化劣化が抑制された茹卵が得られ易いことが理解できる。
【0050】
[実施例10,11]
油脂含有溶液として、キユーピータマゴ社製の「ヨークランH−1」、「ヨークランNo.2」にコショウ抽出物を0.02%添加したものを用いた以外は実施例1と同様に容器詰め茹卵を調製し、それぞれ実施例10,11とした。
ここで、実施例10,11の容器詰め茹卵の調製直後における油脂含有溶液の溶存酸素濃度は、すべて2.8%Oであり、実施例10,11で調製した油脂含有溶液は、油脂含有量が60〜80%、粘度が30〜300Pa・s、香辛料抽出物の含有量が0.02%であり、油脂は乳化されていた。また、清水で2倍希釈したときの油脂含有溶液の全光線透過率は1〜10%であり、茹卵1部に対して油脂含有溶液の量は1部であった。
【0051】
続いて、実施例10,11の容器詰め茹卵を試験例1と同様に官能評価を行った。
その結果、実施例10,11は、酸化劣化が大幅に抑制されていた。