特許第6616249号(P6616249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616249
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】レンズアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/44 20060101AFI20191125BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20191125BHJP
   H01Q 15/08 20060101ALI20191125BHJP
   H01Q 19/06 20060101ALI20191125BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01Q3/44
   H01Q21/20
   H01Q15/08
   H01Q19/06
   H01Q3/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-122137(P2016-122137)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-228856(P2017-228856A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 正孝
(72)【発明者】
【氏名】中津川 征士
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0372398(US,A1)
【文献】 特開2015−207799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のOAMモード用の複数のアレーアンテナと、
前記複数のアレーアンテナとのレンズ焦点距離が同一である一の誘電体レンズと、
を備え、
前記複数のアレーアンテナは、前記誘電体レンズから放射された前記OAMモードにおける各電磁波の最大利得の放射角が同一となるように、前記OAMモードに応じた各アンテナ開口径を有するレンズアンテナ装置。
【請求項2】
前記複数のアレーアンテナの各前記アンテナ開口径を設定可能な複数の素子が同一平面上に配置されたアンテナと、
前記アレーアンテナのアンテナ開口径を所定のアンテナ開口径に設定可能な所定の素子を、前記複数の素子の中から選択する素子選択部と、
をさらに備える請求項に記載のレンズアンテナ装置。
【請求項3】
複数のOAMモード用の複数のアレーアンテナと、
前記複数のアレーアンテナとのレンズ焦点距離がそれぞれ異なる一の誘電体レンズと、
を備え、
前記複数のアレーアンテナは、前記誘電体レンズから放射された前記OAMモードにおける各電磁波の最大利得の放射角が同一となるように、前記OAMモードに応じた、各前記レンズ焦点距離及び各アンテナ開口径を有するレンズアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のアレーアンテナは、全OAMモードで前記誘電体レンズに対して入射する各電磁波の入射角が同一となるような各前記アンテナ開口径を有する請求項に記載のレンズアンテナ装置。
【請求項5】
各前記アンテナ開口径と、各前記レンズ焦点距離を設定可能な複数の素子が3次元的に配置されたアンテナと、
前記誘電体レンズのレンズ焦点距離を所定のレンズ焦点距離に設定可能な所定の素子を、前記複数の素子の中から選択する素子選択部と、
をさらに備える請求項3又は請求項に記載のレンズアンテナ装置。
【請求項6】
各前記アレーアンテナに対して、中心角の変化とともにOAMのモードがL(整数)であれば2πLの位相差を与える位相制御部と、
各前記アレーアンテナに対して、OAMモード毎の利得差及び伝搬損失に基づいて、前記アレーアンテナに入力する入力電力を制御する電力制御部と、
をさらに備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレンズアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OAM(orbital angular momentum:軌道角運動量)伝送技術は、複数の電磁波に異なる値のOAMを与え、各々の電磁波を直交独立した電磁波として見通し環境でも多重伝送可能な大容量化技術のため、最近注目されている(例えば、非特許文献1、2参照)。ここで、OAMのモードは通常Lで表され、整数値をとる。例えば、OAMのモードがLであれば電磁波の進行方向に垂直な面内で2πLの位相を変化させる必要があり、Lが正であれば左回り、負であれば右回りの位相変化を意味する。L=1のOAMモードを有する電磁波(OAM波)を生成するために、非特許文献1では、オフセットパラボラアンテナの反射鏡を中心から放射方向に切断し、螺旋状に高さを0〜λ/2で変化させる(図7参照)。
【0003】
非特許文献2では、円状に配置したN個の素子の位相を0〜2πまで2π/Nずつ変化させることで位相差を与えている(図8参照)。また、非特許文献2では、OAM波の特徴として、OAMモードの絶対値(|L|)が1以上では最大利得の放射角(θmax)がθ=0度(Z軸)方向ではないこと、また、絶対値が大きくなるにしたがって最大放射角が大きくなることが知られている(図9参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”Encoding many channels on the same frequency through radio vorticity: first experimental test.”, Fabrizio Tamburini, et al., New Journal of Physics 14 (2012) 033001 (17pp), 1 March 2012.
【非特許文献2】”Orbital Angular Momentum in Radio−A System Study”, Siavoush Mohaghegh Mohammadi et al., IEEE Trans. on Antennas and Propagation, Vol. 58, No. 2, Feb. 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献2のように、OAMモードの絶対値が1,2,3,…と大きくなるにつれて最大利得の放射角も大きくなると、OAMモードを多重伝送する場合に、OAMモード毎に受信点が異なってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、OAMモードを多重伝送する場合に、OAMモード毎に受信点が異なることを抑制するレンズアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数のOAMモード用の複数のアレーアンテナと、前記複数のアレーアンテナとのレンズ焦点距離が同一である一の誘電体レンズと、を備え、前記複数のアレーアンテナは、前記OAMモードに応じた各前記アンテナ開口径を有するレンズアンテナ装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、前記複数のアレーアンテナは、前記誘電体レンズから放射された前記OAMモードにおける各電磁波の最大利得の放射角が同一となるように、前記OAMモードに応じた各前記アンテナ開口径を有する。
【0009】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、前記複数のアレーアンテナの各前記アンテナ開口径を設定可能な複数の素子が同一平面上に配置されたアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ開口径を所定のアンテナ開口径に設定可能な所定の素子を、前記複数の素子の中から選択する素子選択部と、をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様は、複数のOAMモード用の複数のアレーアンテナと、前記複数のアレーアンテナとのレンズ焦点距離がそれぞれ異なる一の誘電体レンズと、を備え、前記アレーアンテナは、前記OAMモードに応じた、各前記レンズ焦点距離及び各前記アンテナ開口径を有するレンズアンテナ装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、前記複数のアレーアンテナは、前記誘電体レンズから放射された前記OAMモードにおける各電磁波の最大利得の放射角が同一となるように、前記OAMモードに応じた、各前記レンズ焦点距離及び各前記アンテナ開口径を有する。
【0012】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、前記アレーアンテナは、全OAMモードで前記誘電体レンズに対して入射する各電磁波の入射角が同一となるような各前記アンテナ開口径を有する。
【0013】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、各前記アンテナ開口径と、各前記レンズ焦点距離を設定可能な複数の素子が3次元的に配置されたアンテナと、前記誘電体レンズのレンズ焦点距離を所定のレンズ焦点距離に設定可能な所定の素子を、前記複数の素子の中から選択する素子選択部と、をさらに備える。
【0014】
本発明の一態様は、上述のレンズアンテナ装置であって、各前記アレーアンテナに対して、中心角の変化とともにOAMのモードがL(整数)であれば2πLの位相差を与える位相制御部と、各前記アレーアンテナに対して、OAMモード毎の利得差及び伝搬損失に基づいて、前記アレーアンテナに入力する入力電力を制御する電力制御部と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、OAMモードを多重伝送する場合に、OAMモード毎に受信点が異なることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態におけるレンズアンテナ装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態におけるアンテナ開口径と最大利得の放射角との関係の例を示す図である。
図3】第2の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Aの概略構成の一例を示す図である。
図4】第3の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Bの概略構成の一例を示す図である。
図5】第3の実施形態における誘電体レンズ40のレンズ焦点距離と誘電体レンズ40から放射される電磁波の最大利得の放射角との関係の例を示す図である。
図6】第4の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Cの概略構成の一例を示す図である。
図7】非特許文献1におけるオフセットパラボラアンテナの概要を示す図である。
図8】非特許文献2におけるアレーアンテナの概要を示す図である。
図9】OAMモードの絶対値が1以上の放射パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0018】
本実施形態におけるレンズアンテナ装置は、誘電体レンズアンテナから出射される電磁波の最大利得の放射角をOAM(orbital angular momentum:軌道角運動量)モードに依らず同一とする。これにより、本実施形態におけるレンズアンテナ装置は、OAMモードを多重伝送する場合に、OAMモード毎に受信点が異なることを抑制する。以下に、本実施形態におけるレンズアンテナ装置について、具体的に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるレンズアンテナ装置1の概略構成の一例を示す図である。第1の実施形態におけるレンズアンテナ装置1は、全OAMモードで同一の焦点距離とし、各OAMモードに応じたアンテナ開口径を有することを特徴する。
【0020】
レンズアンテナ装置1は、異なるOAMモードの電磁波を多重伝送する。図1に示すように、レンズアンテナ装置1は、複数のアレーアンテナ10(10−1,10−2,…,10−n)、複数の位相制御部20(20−1,20−2,…,20−n)、複数の電力制御部30(30−1,30−2,…,30−n)及び誘電体レンズ40を備える。
【0021】
複数のアレーアンテナ10(10−1,10−2,…,10−n)は、互いに異なるOAMモード用のアレーアンテナである。例えば、アレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nは、各OAMモードL1、L2、…、Lnの電磁波を生成するためにアンテナ開口径をそれぞれD1、D2、…、Dnに設定されている。すなわち、アレーアンテナ10−1は、OAMモードL1の電磁波を生成するために、アンテナ開口径をD1に設定されている。アレーアンテナ10−2は、OAMモードL2の電磁波を生成するために、アンテナ開口径をD2に設定されている。アレーアンテナ10−nは、OAMモードLnの電磁波を生成するために、アンテナ開口径をDnに設定されている。
【0022】
図2は、アンテナ開口径と最大利得の放射角との関係の例を示している。各OAMモードL、L、…、Lnの電磁波が同一の最大利得の放射角θで放射するためには、アレーアンテナ10のそれぞれのアンテナ開口径を図2に示すD、D、…、Dnに設定する必要がある。したがって、アレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nから誘電体レンズ40に入射する入射角θ11,θ12,…,θ1nの電磁波が、誘電体レンズ40から放射される場合には、その電磁波の放射角がθ12,θ22,…,θ2nが同一の最大利得の放射角θになるようにアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nのそれぞれのアンテナ開口径を図2に示すD、D、…、Dnに設定される。なお、本実施形態におけるアレーアンテナ10は、形状によって特に限定されず、例えば、円形の形状を有してもよい。
【0023】
図1に戻り、位相制御部20(20−1,20−2,…,20−n)は、各アレーアンテナ10に対して設けられている。位相制御部20−1,20−2,…,20−nは、それぞれアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nに対して、中心角(0〜360度)の変化とともにOAMのモードがL(整数)であれば2πLの位相差を与える機能を備えている。
【0024】
電力制御部30(30−1,30−2,…,30−n)は、各アレーアンテナ10に対して設けられている。電力制御部30−1,30−2,…,30−nは、それぞれアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nに対して、OAMモード毎の利得差及び伝搬損失に基づいてアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nの入力電力を制御する機能を備えている。なお、位相制御部20及び電力制御部30は、それぞれのアレーアンテナ10の位相および電力を制御できればよく、その個数には特に限定されない。
【0025】
誘電体レンズ40は、複数のアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nのそれぞれとの距離(以下、「レンズ焦点距離」という。)F,F,…,Fが同一である。
誘電体レンズ40は、アレーアンテナ10から誘電体レンズを介して出射された電磁波の放射角を絞る。誘電体レンズ40は、例えば、レイトレース法によって設計されたものであってもよいが、それに限定されない。
【0026】
上述したように、第1の実施形態におけるレンズアンテナ装置1は、誘電体レンズ40から出射された電磁波の利得が最大となる前記電磁波の放射角がOAMモードに依らず同一となるように、OAMモードに応じて、各アレーアンテナ10のアンテナ開口径D,D,…,Dnが設定されている。換言すれば、レンズアンテナ装置1は、モードLが最大であるOAMモード用のアレーアンテナ10から誘電体レンズ40を介して出射される電磁波の放射角に、その他のn−1個のアレーアンテナ10から誘電体レンズ40を介して出射された電磁波の放射角が等しくなるように、該n−1個のアレーアンテナ10の開口径が図2に従ってそれぞれ設定される。これにより、OAMモードに依らず最大利得の放射角を同一とすることができ、多重伝送された複数のOAMモードを同一の受信点で同時に受信することが可能になる。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Aの概略構成の一例を示す図である。第2の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Aは、第2の実施形態と比較して、後述する素子選択部が追加されている構成を有する。
【0028】
レンズアンテナ装置1Aは、異なるOAMモードの電磁波を多重伝送する。図3に示すように、レンズアンテナ装置1Aは、複数のアレーアンテナ10(10−1,10−2,…,10−n)、複数の位相制御部20(20−1,20−2,…,20−n)、複数の電力制御部30(30−1,30−2,…,30−n)、誘電体レンズ40、アンテナ50及び素子選択部60(60−1,60−2,…,60−n)を備える。
【0029】
アンテナ50には、各OAMモードL1,L2,…,Lnの電磁波を生成するために、アレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nの各アンテナ開口径をD1,D2,…,Dnに設定可能な同一平面上に複数の素子が配置されている。
【0030】
素子選択部60(60−1,60−2,…,60−n)は、アンテナ50の同一平面上に配置された複数の素子の中から、所定の素子を選択する。例えば、素子選択部60は、アンテナ50の同一平面上に配置された複数の素子の中から所定のアンテナ開口径となる素子を選択する。したがって、第2の実施形態では、素子選択部60により、アンテナ50の同一平面上に配置された複数の素子の中から所定のアンテナ開口径となる素子を選択することで、アレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nの各アンテナ開口径を所定のアンテナ開口径に調整可能となる。この所定のアンテナ開口径は、各OAMモードに応じて設定可能となる。したがって、第2の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Aは、誘電体レンズ40から放射される電磁波の放射角がθ12,θ22,…,θ2nが同一の最大利得の放射角θになるようにアレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nのそれぞれのアンテナ開口径を設定することができる。これにより、OAMモードに依らず最大利得の放射角を同一とすることができ、多重伝送された複数のOAMモードを同一の受信点で同時に受信することが可能になる。
【0031】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Bの概略構成の一例を示す図である。第3の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Bは、全OAMモードで誘電体レンズ40に対する電磁波の入射角を同一の入射角とし、各OAMモードに応じたレンズ焦点距離を有することを特徴とする。
【0032】
レンズアンテナ装置1Bは、異なるOAMモードの電磁波を多重伝送する。図4に示すように、レンズアンテナ装置1は、複数のアレーアンテナ10B(10B−1,10B−2,…,10B−n)、複数の位相制御部20(20−1,20−2,…,20−n)、複数の電力制御部30(30−1,30−2,…,30−n)及び誘電体レンズ40を備える。
【0033】
複数のアレーアンテナ10B(10B−1,10B−2,…,10B−n)は、互いに異なるOAMモード用のアレーアンテナである。例えば、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nは、各OAMモードL1、L2、…、Lnの電磁波を生成するためにアンテナ開口径をそれぞれD1、D2、…、Dnに設定されている。すなわち、アレーアンテナ10B−1は、OAMモードL1の電磁波を生成するために、アンテナ開口径をD1に設定されている。アレーアンテナ10B−2は、OAMモードL2の電磁波を生成するために、アンテナ開口径をD2に設定されている。アレーアンテナ10B−nは、OAMモードLnの電磁波を生成するために、アンテナ開口径をDnに設定されている。
【0034】
図5は、誘電体レンズ40のレンズ焦点距離と誘電体レンズ40から放射される電磁波の最大利得の放射角との関係の例を示している。図5に示すように、各OAMモードL1、L2,…,Lnで同一の最大利得の放射角θにするためには、それぞれのOAMモードのレンズ焦点距離を図5に示すF、F,…,Fに設定する必要がある。
【0035】
したがって、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nから誘電体レンズ40に入射する入射角θ11,θ12,…,θ1nの電磁波が、同一の入射角θになるように、アレーアンテナ10−1,10−2,…,10−nのそれぞれがOAMモードに応じたアンテナ開口径を有する。そして、各OAMモードにおける誘電体レンズ40のレンズ焦点距離は、図5に示すF、F,…,Fに設定される。
【0036】
ここで、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nから誘電体レンズ40に入射する電磁波の入射角θ11,θ12,…,θ1nを同一の入射角θとするのは、複数のパラメータによる最大利得の放射角θの調整を、レンズ焦点距離という1つのパラメータによる調整に簡易化するためである。
【0037】
位相制御部20は、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nを構成する複数の素子に対して、中心角(0〜360度)の変化とともにOAMのモードがL(整数)であれば2πLの位相差を与える機能を備えている。
電力制御部30は、受信電力をOAMモードに依らず一定にするため、OAMモード毎にアンテナ開口径調整による放射角θにおける利得に差がある場合や伝搬損失に差がある場合、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nの入力電力を制御する機能を備えている。ここで、アレーアンテナ10Bの形状は円形であってもよいが、これに限定されない。
【0038】
上述したように、第3の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Bは、誘電体レンズ40から出射された電磁波の利得が最大となる前記電磁波の放射角がOAMモードに依らず同一となるように、OAMモードに応じて、各アレーアンテナ10のアンテナ開口径D,D,…,Dnが設定されている。換言すれば、レンズアンテナ装置1は、各アレーアンテナ10Bと誘電体レンズ40とのレンズ焦点距離がそれぞれ異なり、各アンテナ開口径がOAMモードに応じて設定される。これにより、OAMモードに依らず最大利得の放射角を同一とすることができ、多重伝送された複数のOAMモードを同一の受信点で同時に受信することが可能になる。
【0039】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Cの概略構成の一例を示す図である。第4の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Cは、第3の実施形態と比較して、後述する素子選択部が追加されている構成を有する。
【0040】
レンズアンテナ装置1Aは、異なるOAMモードの電磁波を多重伝送する。図6に示すように、レンズアンテナ装置1Cは、複数のアレーアンテナ10B(10B−1,10B−2,…,10B−n)、複数の位相制御部20(20−1,20−2,…,20−n)、複数の電力制御部30(30−1,30−2,…,30−n)、誘電体レンズ40、アンテナ50C及び素子選択部60(60−1,60−2,…,60−n)を備える。
【0041】
アンテナ50Cは、誘電体レンズ40に対する全OAMモードの電磁波の入射角が同一の入射角θとなるように各アレーアンテナ10Bのアンテナ開口径をD1,D2,…,Dnに設定可能で、且つ、各OAMモードL1,L2,…,Lnを生成するためにレンズ焦点距離をF,F、…、Fに設定可能な複数の素子を3次元的に配置されている。
【0042】
素子選択部60(60−1,60−2,…,60−n)は、アンテナ50Cに3次元的に配置された複数の素子の中から、所定のアンテナ開口径及び所定のレンズ焦点距離となる素子を選択するための機能を備える。したがって、第4の実施形態では、素子選択部60により、アンテナ50Cに対して3次元的に配置された複数の素子の中から所定のアンテナ開口径及び所定のレンズ焦点距離となる素子を選択することで、アレーアンテナ10B−1,10B−2,…,10B−nの各アンテナ開口径を所定のアンテナ開口径に調整可能になるとともに、各レンズ焦点距離を所定のレンズ焦点距離に調整可能となる。この所定のアンテナ開口径と所定のレンズ焦点距離とは、各OAMモードに応じて設定可能となる。したがって、第4の実施形態におけるレンズアンテナ装置1Cは、OAMモードに依らず最大利得の放射角を同一とすることができ、多重伝送された複数のOAMモードを同一の受信点で同時に受信することが可能になる。
【0043】
ここで、第1,2の実施形態に対する第3,4の実施形態のレンズアンテナ装置の利点は、給電回路の配置の容易さが挙げられる。上述の実施形態では、所定の位相差を与えるためにアレーアンテナ10の各素子に対し給電回路を設けるが、複数のOAMモード分の給電回路を同一平面上に配置することは難しい。しかしながら、第3,4の実施形態のレンズアンテナ装置におけるアレーアンテナ10Bは、スタック構造であるため、各平面上では1モード分のみ配置すればよい。
【0044】
なお、第3,4の実施形態のレンズアンテナ装置においては、最大利得の放射角θの調整の簡易化のため、全OAMモードで同一の入射角θとなるようにアンテナ開口径を各OAMモードに対応したD1,D2,…,Dnとしたが、使用するOAMモードを変更したい場合には、図4に示すように各アレーアンテナ10Bのアンテナ開口径を一度決定して作製すると、その後に任意のアンテナ開口径に変更できないことも考えられる。その場合には、任意の入射角においてもレンズ焦点距離と最大利得の放射角の間で図5に示すような特性が得られる。したがって、全OAMモードで同一の入射角θとなるようにアンテナ開口径を各OAMモードに対応したD1,D2,…、Dnに調整できない場合でも、最大利得の放射角をOAMモードに依らず同一とすることは可能である。
【0045】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 レンズアンテナ装置
10 アレーアンテナ
20 位相制御部
30 電力制御部
40 誘電体レンズ
50 アンテナ
60 素子選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9