(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可溶性鉄含有触媒と結合して、かつ、リン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸、及びそれらの混合物からなる群より選択される安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
タングステン層を有する基材を研磨するための化学機械研磨組成物を開示する。その組成物は、水系液体キャリアと、その液体キャリアに分散したコロイダルシリカ研磨粒子とを含む。30%以上のコロイダルシリカ研磨粒子は3個以上が凝集した一次粒子を含む。コロイダルシリカ研磨粒子は、少なくとも6mVの永久正電荷をさらに有する。研磨組成物は、任意選択で、1〜4wt%のコロイダルシリカ研磨粒子と、鉄含有促進剤と、酸化剤と、液体キャリアに溶解したアミン化合物とをさらに含み、3〜4の範囲のpH及び/又は100μS/cm未満の電気伝導率であることができる。コロイダルシリカ粒子の平均粒子サイズは、任意選択で、40nm〜70nmの範囲であることができる。
【0009】
タングステン層を含む基材を化学機械研磨するための方法を開示する。その方法は、基材を上で述べた研磨組成物と接触させる工程、基材に対して研磨組成物を動かす工程、及び、基材をすり減らして基材からタングステンの一部を除去して、それによって、基材を研磨する工程を含むことができる。二酸化ケイ素の除去速度は、研磨中のタングステン除去速度以上であることができる。
【0010】
研磨組成物は液体キャリア(例えば、水)中に懸濁した研磨剤コロイダルシリカ粒子の分散体を含有する。本明細書で使用する場合において、コロイダルシリカ粒子という用語は、構造的に異なる粒子を作り出す発熱プロセス又は火炎加水分解プロセスよりむしろ湿式プロセスを通じて調製されるシリカ粒子を言い表す。適切な分散体は、凝集及び非凝集両方のコロイダルシリカ粒子を含むことができる。当業者に公知であるように、非凝集粒子は、形状において球状又は略球状であることができるが、他の形状(例えば、略楕円、正方形、又は長方形の断面)もまた有することができる、個々に離散した粒子である。これらの非凝集粒子は一次粒子と言い表される。凝集粒子は、複数の離散した粒子(一次粒子)がクラスター化し又は一緒に結合して、一般的に不規則な形状を有する凝集体を形成する粒子である。開示する研磨組成物に使用されるコロイダルシリカ分散体は、分散体中の30%以上のコロイダルシリカ粒子が、3個以上が凝集した一次粒子を含むように少なくとも部分的に凝集している、と言うことができる。
【0011】
好ましくは、コロイダルシリカは沈降シリカ又は縮重合シリカであり、それらは当業者に公知の任意の方法を使用して、例えば、ゾルゲル法によって又はケイ酸イオン交換によって調製することができる。縮重合シリカ粒子はしばしばSi(OH)
4を縮合して、実質的に球状である粒子を形成することにより調製される。前駆体Si(OH)
4は、例えば、高純度アルコキシシランの加水分解によって又は水性のケイ酸溶液の酸性化によって得ることができる。米国特許第5230833号明細書では溶液中のコロイダルシリカ粒子を調製するための1つの方法を開示する。
【0012】
分散体中の30%以上のコロイダルシリカ粒子が、3個以上が凝集した一次粒子を含む部分凝集分散体は、例えば、米国特許第5230833号明細書に記載されるように、例えば、一次粒子が溶液中で最初に成長する複数工程のプロセスを使用して調製することができる。次いで、溶液のpHを所定の時間の間に酸性値に調整して凝集(又は部分凝集)を促進することができる。任意選択の最終工程では、凝集体(及び任意の残留一次粒子)の更なる成長を可能にすることがある。
【0013】
図1は、分散体中の30%以上のコロイダルシリカ粒子が、3個以上が凝集した一次粒子を含む分散体からの、例示のコロイダルシリカ粒子の透過電子顕微鏡像(TEM)である。例のTEM像では、一次粒子10と、2個の一次粒子を含む凝集体20と、3個以上の一次粒子を含む凝集体30とを示す。示される例のTEM像では12個のコロイダルシリカ粒子を含み、そのうち3個が一次粒子であり、そのうち2個が2個の一次粒子を含む凝集体であり、そのうちの残りの7個が3個以上の一次粒子を含む凝集体である。
【0014】
粒子の粒子サイズは、その粒子を取り囲む最小の球の直径である。部分凝集分散体は任意の適切な粒子サイズ、例えば、5〜150nmの範囲の平均粒子サイズ(凝集体サイズ)を有することができる。研磨粒子は、20nm以上(例えば、25nm以上、30nm以上、40nm以上、又は45nm以上)の平均粒子サイズ(凝集体サイズ)を有することができる。研磨粒子は100nm以下(例えば、90nm以下、80nm以下、70nm以下、又は65nm以下)の平均粒子サイズ(凝集体サイズ)を有することができる。したがって、研磨粒子は、20〜90nm(例えば、25〜90nm、又は30〜90nm)の範囲の平均粒子サイズ(凝集体サイズ)を有することができる。好ましくは、分散体は、40〜70nmの範囲又は45〜65nmの範囲の平均粒子サイズを有する。コロイダルシリカ粒子の粒子サイズは、Malvern Instruments(登録商標)(英国、ウスターシャー州)から入手可能なZetasizer(登録商標)のような動的光散乱ツールを使用して測定することができる。
【0015】
研磨組成物は、任意の適切な量のコロイダルシリカ粒子を含むことができる。研磨組成物は、典型的に、0.01wt%以上(例えば、0.05wt%以上)のコロイダルシリカを含む。より典型的には、研磨組成物は0.1wt%以上(例えば、1wt%以上、5wt%以上、7wt%以上、10wt%以上、又は12wt%以上)のコロイダルシリカ粒子を含むことができる。研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子の量は、典型的に、30wt%以下であり、より典型的には20wt%以下(例えば、15wt%以下、10wt%以下、5wt%以下、3wt%以下、又は2wt%以下)である。好ましくは、研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子の量は、0.01〜20wt%、より好ましくは0.05〜15wt%(例えば、0.1〜10wt%、0.1〜4wt%、0.1〜3wt%、0.1〜2wt%、又は0.2〜2wt%)の範囲である。
【0016】
液体キャリアを使用して、研磨される(例えば、平坦化される)べき適切な基材の表面への研磨剤と任意の任意選択の化学添加剤との適用を容易にする。液体キャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水、及びそれらの混合物を含む任意の適切なキャリア(例えば、溶媒)であることができる。好ましくは、液体キャリアは、水、より好ましくは脱イオン水を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。
【0017】
コロイダルシリカ粒子は、研磨組成物中で少なくとも6mVの正電荷を有する。コロイダルシリカ粒子のような分散粒子上の電荷は、当技術分野においてゼータ電位(又は運動電位)と一般に言い表される。粒子のゼータ電位は、粒子周りのイオン電荷と研磨組成物のバルク溶液の電荷(例えば、液体キャリアとその中に溶解する任意の他の成分)との間の電位差を言い表す。ゼータ電位は典型的に水性媒体のpHに依存する。所与の研磨組成物については、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロであるpHとして規定される。pHが等電点から離れて増加又は減少した場合、表面電荷(及びしたがってゼータ電位)は、それに応じて減少又は増加する(ゼータ電位値を負にする又は正にする)。研磨組成物のような分散体のゼータ電位は、Dispersion Technologies,Inc(ニューヨーク、ベッドフォードヒルズ)から入手可能な、型式DT−1202の音響式及び電子音響式スペクトロメーターを使用して得ることができる。
【0018】
研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子は6mV以上(例えば、10mV以上、15mV以上、20mV以上、25mV以上、又は30mV以上)の永久正電荷を有する。研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子は50mV以下の永久正電荷(例えば、45mV以下、40mV以下、又は35mV以下)の永久正電荷を有することができる。好ましくは、コロイダルシリカ粒子は6〜50mV(例えば、10〜45mV、15〜40mV、又は20〜40mV)の範囲の永久正電荷を有する。
【0019】
永久正電荷に関して、シリカ粒子の正電荷は、例えば、フラッシング、希釈、濾過などにより容易に戻らない。永久正電荷は、例えば、粒子上及び/又は粒子中にカチオン性化合物を含むことの結果であることができる。カチオン性化合物としては、例えば、金属カチオン、アミンのような含窒素化合物、及び/又はホスホニウム化合物を挙げることができる。永久正電荷は、例えば、粒子とカチオン性化合物の間の共有結合性相互作用から生じるものもあり、例えば、粒子とカチオン性化合物の間の静電相互作用の結果であることができる可逆な正電荷であると対照的である。本開示が永久正電荷を得る任意の特定の方法に限定するものでないことが理解される。
【0020】
それにもかかわらず、本明細書で使用されるように、少なくとも6mVの永久正電荷は、コロイダルシリカ粒子のゼータ電位が以下の3回の工程の濾過試験の後に、6mV超のままであることを意味する。研磨組成物の容量(例えば、200ml)を、ミリポアウルトラセルの再生セルロース限外濾過ディスク(例えば、100000ダルトンのMWカットオフ及び6.3nmの孔サイズを有する)を通じて濾過する。残った分散体(限界濾過ディスクに残留した約65mlの分散体)を収集して、pHを調製した脱イオン水を補充する。脱イオン水は硝酸のような適切な無機酸を使用して、研磨組成物の初期のpHに調整される。この手順を、合計3回の濾過サイクルで繰り返す。次いで、3回濾過されて補充された研磨組成物のゼータ電位を測定して、初期の研磨組成物のゼータ電位と比較する。この3回の工程の濾過試験は、例(例6)によって以下にさらに例示される。
【0021】
理論によって拘束されることを望むものではないが、限外濾過ディスクに残留した分散体(残留分散体)は、シリカ粒子と、その粒子の表面に係合する(例えば、結合する、付着する、静電相互作用する、又は粒子表面と接触する)ことができる任意の化学成分(例えば、カチオン種)とを含むと考えられる。液体キャリア及びそれに溶解した化学成分の少なくとも一部は、限外濾過ディスクを通過する。残留分散体を初期の容量にまで補充するとは、初期の研磨組成物の平衡状態を壊して、粒子表面に関連する化学成分が新しい平衡状態に向かう傾向があると考えられる。粒子表面に強く係合する(例えば、共有結合する)成分は表面上に残り、一般に粒子の正のゼータ電位に変化はないかほとんどないようである。反対に、粒子表面とより弱い係合(例えば、静電相互作用)をした成分の一部は、系が新しい平衡状態に向かい、それによって正のゼータ電位の減少を引き起こす傾向があるため、溶液に戻ることがある。合計3回の限外濾過及び補充サイクルのためのこのプロセスを繰り返すことは、上で述べた効果を増幅すると考えられる。
【0022】
初期の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子と、上で述べた3回の工程の濾過試験後(濾過試験から生じたイオン強度の差を修正した後)の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子とのゼータ電位の差はほとんどないことが好ましい。例えば、初期の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位は、3回の工程の濾過試験後のコロイダルシリカ粒子と比べて、10mV未満大きい(例えば、7mV未満大きい、5mV未満大きい、又はさらに2mV未満大きい)ことが好ましい。
【0023】
研磨組成物は、7未満のpHを有して酸性である。研磨組成物は、典型的に、2以上(例えば、2.5以上、又は3以上)のpHを有する。好ましくは、研磨組成物は6以下(例えば、5以下、又は4以下)のpHを有する。より好ましくは、研磨組成物は、2〜6(例えば、2.5〜5、又は3〜4)の範囲のpHを有する。研磨組成物のpHは、任意の適切な手段によって達成及び/又は維持することができる。研磨組成物は、実質的に任意の適切なpH調整剤又は緩衝系を含むことができる。例えば、適切なpH調整剤としては、硝酸、硫酸、水酸化アンモニウムなどを挙げることができて、適切な緩衝剤としては、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0024】
開示する研磨組成物は、研磨組成物の電気伝導率が低い場合、より高い二酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を達成して、したがって、より低いW:TEOS選択性を達成することが観測された。したがって、例示の研磨組成物は、有利には、2000μS/cm未満(例えば、1500μS/cm未満、1000μS/cm未満、800μS/cm未満、又は600μS/cm未満)の電気伝導率を有することができる。
【0025】
研磨組成物の任意選択の実施形態では、鉄含有促進剤をさらに含むことができる。本明細書で使用されるような鉄含有促進剤は、タングステンCMP作業中にタングステンの除去速度を増加させる鉄含有化学化合物である。例えば、鉄含有促進剤は、米国特許第5958288号明細書及び同第5980775号明細書に開示されるような鉄含有触媒を含むことができる。そのような鉄含有触媒は液体キャリア中で可溶であることができ、例えば、第2鉄(鉄III)化合物又は第1鉄(鉄II)化合物、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化鉄(フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物、並びに、過塩素酸物、過臭素酸物、及び過ヨウ素酸物を含む)、並びに、有機鉄化合物、例えば、酢酸鉄、アセチルアセトン鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、フタル酸鉄、コハク酸鉄、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0026】
鉄含有促進剤としてはまた、米国特許第7029508号明細書及び同第7077880号明細書に開示されるようなコロイダルシリカ粒子の表面と関連する(例えば、被覆する又は結合する)鉄含有活性剤(例えば、フリーラジカル発生化合物)又は鉄含有触媒を挙げることができる。例えば、鉄含有促進剤は、コロイド状表面の粒子の表面上のシラノール基と結合することができる。1つの実施形態においては、鉄含有促進剤は、ホウ素含有安定剤及び鉄含有触媒を含むことができる。そのような実施形態において、安定剤及び触媒は、コロイダルシリカ粒子上の実質的にあらゆる割合の利用可能な表面サイト、例えば、1%超、50%超、又は80%超の利用可能な表面サイトを占有することができる。
【0027】
研磨組成物中の鉄含有促進剤の量は、使用する酸化剤及び促進剤の化学形態に応じて変えることができる。好ましい酸化剤の過酸化水素(又はそのアナログ)が使用され、可溶性鉄含有触媒(例えば、硝酸第2鉄)が使用された場合、触媒は、組成物の総質量に基づいて1〜3000ppmの範囲のFeを提供するのに十分な量で組成物中に存在することができる。研磨組成物は、好ましくは、2ppm以上(例えば、5ppm以上、10ppm以上、又は20ppm以上)のFeを含む。研磨組成物は、好ましくは、500ppm以下(例えば、200ppm以下、100ppm以下、又は50ppm以下)のFeを含む。したがって、研磨組成物は、2〜500ppm(例えば、3〜200ppm、5〜100ppm、又は10〜50ppm)の範囲のFeを含むことができる。
【0028】
鉄含有促進剤を含む研磨組成物の実施形態では、安定剤をさらに含むことができる。そのような安定剤がない場合、鉄含有促進剤及び酸化剤は、時間と共に急激に酸化剤を劣化させる態様で反応することがある。安定剤の追加が、鉄含有促進剤のその効果を減らす傾向にあり、研磨組成物に加えられる安定剤の種類と量の選択がCMP性能へ有意な影響を有することがある。安定剤の追加により、安定剤/促進剤の複合体が形成されて、それが、促進剤が酸化剤と反応することを阻害し、並びに、それと同時に促進剤の十分な活性を維持して、速いタングステン研磨速度を促進することができる。
【0029】
有用な安定剤としては、リン酸、有機酸、ホスホネート化合物、ニトリル類、及び、金属と結合して過酸化水素の分解へのその反応性を減らすその他の配位子、並びにそれらの混合物が挙げられる。酸性の安定剤を、それらの共役形態で使用することができ、例えば、カルボン酸塩をカルボン酸の代わりに使用することができる。本出願の目的において、用語「酸性」は、それが有用な安定剤を説明するのに使用される場合、酸性の安定剤の1つの(又は複数の)共役塩基をも意味する。例えば、用語「アジピン酸」は、アジピン酸及びその共役塩基を意味する。安定剤は単独で又は組み合わせで使用することができ、過酸化水素のような酸化剤が分解する速度を有意に減少させる。
【0030】
好ましい安定剤としては、酢酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、プロピレンジアミンテトラ酢酸(PDTA)、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい安定剤は、鉄含有促進剤に対して1当量から、3wt%以上までの範囲の量で、本発明の組成物及びスラリーに追加することができる。本明細書に使用される場合、用語「鉄含有促進剤に対する当量」とは、組成物中の鉄種あたりの1モルの安定剤を意味する。例えば、鉄含有促進剤に対して2等量とは、各鉄種について2モルの安定剤を意味する。
【0031】
研磨組成物は酸化剤をさらに含むことができる。酸化剤は、スラリー製造プロセス中に又はCMP作業の直前に(例えば、半導体製作設備に置かれたタンクの中に)研磨組成物に加えることができる。好ましい酸化剤としては、無機又は有機の過化合物を挙げることができる。Hawley’s Condensed Chemical Dictionaryに規定される過化合物は、少なくとも1つのペルオキシ基(−O−−O−)を含有する化合物か又はその最も高い酸化状態の元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例としては、限定されないが、過酸化水素とその付加物、例えば、尿素過酸化水素及び過炭酸塩、有機過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酢酸、及びジ−tert−ブチルペルオキシド、モノ過硫酸(SO
5-)、ジ過硫酸(S
2O
8-)及び過酸化ナトリウムが挙げられる。その最も高い酸化状態を有する元素を含有する化合物の例としては、限定されないが、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸、過ホウ酸塩、及び過マンガン塩が挙げられる。最も好ましい酸化剤は過酸化水素である。
【0032】
酸化剤は、例えば、0.1〜10wt%の範囲の量で研磨組成物中に存在することができる。過酸化水素酸化剤及び可溶性鉄含有促進剤が使用される好ましい実施形態においては、酸化剤は0.1〜6wt%(例えば、0.2〜5wt%、0.3〜4wt%、又は0.5〜3wt%)の範囲の量で研磨組成物中に存在することができる。
【0033】
研磨組成物は、任意選択で、タングステンエッチングを阻害する化合物をさらに含むことができる。適切な阻害化合物は、固体タングステンが可溶性タングステン化合物に変化するのを阻害して、それと同時にCMP作業を通じて固体タングステンの有効な除去を可能にする。タングステンエッチングの有用な阻害剤である化合物の種類としては、窒素を含有する官能基、例えば、含窒素複素環、アルキルアンモニウムイオン、アミノアルキル、及びアミノ酸を有する化合物が挙げられる。有用なアミノアルキル腐食抑制剤としては、例えば、ヘキシルアミン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、オクチルアミン、ジエチレントリアミン、ジブチルベンジルアミン、アミノプロピルシラノール、アミノプロピルシロキサン、ドデシルアミン、それらの混合物、及び合成物、並びに、天然型アミノ酸、例えば、リシン、チロシン、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、及びグリシン(アミノ酢酸)が挙げられる。
【0034】
阻害化合物は、代替的に及び/又は追加的に液体キャリア中の溶液中にアミン化合物を含むことができる。1つの(又は複数の)アミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、又は第4級アミンを挙げることができる。アミン化合物としては、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラミン、又は多くの繰り返しアミン基(例えば、4つ以上のアミン基)を有するアミン系ポリマーをさらに挙げることができる。
【0035】
研磨組成物の幾つかの実施形態においては、アミン化合物は長鎖アルキル基を含むことができる。長鎖アルキル基に関して、アミン化合物は少なくとも10個の炭素原子(例えば、少なくとも12個の炭素原子又は少なくとも14個の炭素原子)を有するアルキル基を含むことを意味する。そのようなアミン化合物としては、例えば、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、N−メチルジオクチルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、コカミドプロピルアミンオキシド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ココアルキルメチル[ポリオキシエチレン(15)]アンモニウムクロリド、オクタデシルメチル[ポリオキシエチレン(15)]アンモニウムクロリドなどを挙げることができる。
【0036】
研磨組成物の幾つかの実施形態においては、アミン化合物はポリカチオン性アミンを含むことができる。ポリカチオン性アミン(その用語が本明細書内で使用される場合)は、各アミン基がカチオン性である(すなわち、正電荷を有する)複数の(2以上の)アミン基を有するアミン化合物である。したがって、ポリカチオン性アミンはポリ第4級アミンを含むことができる。ポリ第4級アミンに関して、アミン化合物は2〜4つの第4級アンモニウム基を含み、ポリ第4級アミンは、ジ第4級アミン、トリ第4級アミン、又はテトラ第4級アミンの化合物であることを意味する。ジ第4級アミン化合物としては、例えば、N,N’−メチレンビス(ジメチルテトラデシルアンモニウムブロミド)、1,1,4,4−テトラブチルピペラジンジイウムジブロミド、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチル−N−タロー−1,3−プロパン−ジアンモニウムジクロリド、N,N’−ヘキサメチレンビス(水酸化トリブチルアンモニウム)、デカメトニウムブロミド、ジドデシル−テトラメチル−1,4−ブタンジアミニウムジヨージド、1,5−ジメチル−1,5−ジアゾニアビシクロ(3.2.2)ノナンジブロミドなどを挙げることができる。トリ第4級アミン化合物としては、例えば、N(1),N(6)−ジドデシル−N(1),N(1),N(6),N(6)−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミニウムジヨージドを挙げることができる。テトラ第4級アミン化合物としては、例えば、メタンテトライルテトラキス(テトラメチルアンモニウムブロミド)を挙げることができる。ポリ第4級アミン化合物としては、長鎖アルキル基(例えば、10以上の炭素原子を有する)をさらに挙げることができる。例えば、長鎖アルキル基を有するポリ第4級アミン化合物としては、N,N’−メチレンビス(ジメチルテトラデシルアンモニウムブロミド)、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチル−N−タロー−1,3−プロパン−ジアンモニウムジクロリド、ジドデシル−テトラメチル−1,4−ブタンジアミニウムジヨージド、及びN(1),N(6)−ジドデシル−N(1),N(1),N(6),N(6)−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミニウムジヨージドを挙げることができる。
【0037】
ポリカチオン性アミンはまた、各アミン基がプロトン化された(したがって正電荷を有する)ようなポリカチオン性であることができる。例えば、テトラメチル−p−フェニレンジアミンのようなジカチオン性アミンは、アミン化合物のpKaより小さい研磨組成物のpH値でプロトン化される(したがって正に帯電する)ことができる2つの第3級アミン基を含む。
【0038】
研磨組成物の幾つかの実施形態においては、アミン化合物はアミン系ポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは4つ以上のアミン基を含む。アミン系ポリマーとしては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、並びに以下のアミン含有官能基、メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアリールジメチルアンモニウムクロリド、及びメタクリルアミド−プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを含むポリマーを挙げることができる。
【0039】
研磨組成物は、実質的に任意の適切な濃度のアミン化合物を含むことができる。一般に、その濃度は、正確なエッチ阻害を提供するのに十分高いが、組成物が可溶性であり、かつ、タングステン研磨速度が許容レベルより下に減ることが無いように、十分低いことが望ましい。可溶性に関して、化合物が液体キャリア中で完全に溶解するか又はそれが液体キャリア中でミセルを形成するか若しくはミセル中に担持されることを意味する。多くのかつ様々な要素、例えば、アミン化合物の溶解度、アミン化合物中のアミン基の数、アミン化合物中のアルキル基の長さ、エッチ速度阻害と研磨速度阻害の間の関係、使用する酸化剤、酸化剤の濃度などに応じて、アミン化合物の濃度を変えることが必要である場合がある。幾つかの望ましい実施形態においては、研磨組成物中のアミン化合物の濃度は、0.1μM〜10mM(すなわち、10
-7〜10
-2モル)の範囲である。例えば、高分子量を有するアミン系ポリマーを利用する実施形態においては、濃度は範囲の下限限界(例えば、10
-7〜10
-4モル)であることができる。比較的単純なアミン化合物(数個のアミン基及びより低い分子量を有する)を利用するその他の実施形態においては、濃度は範囲の上限限界(例えば、10
-5〜10
-2モル)であることができる。
【0040】
研磨組成物は、任意選択で、殺生物剤をさらに含むことができる。殺生物剤としては任意の適切な殺生物剤、例えば、イソチアゾリノン殺生物剤を挙げることができる。研磨組成物中の殺生物剤の量は、典型的に、1〜50ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲である。
【0041】
研磨組成物は、任意の適切な技術を使用して調製することができて、それらの多くは当業者に公知である。研磨組成物はバッチプロセスか又は連続プロセスで調製することができる。一般的に、研磨組成物は任意の順序でそれらの成分を組み合わせることで調製することができる。用語「成分」は、本明細書で使用する場合は、個々の成分(例えば、コロイダルシリカ、鉄含有促進剤、アミン化合物など)を含む。
【0042】
コロイダルシリカは水性の液体キャリア中に分散させることができる。次いで、鉄含有促進剤及び安定剤のような他の成分を加えて、その成分を研磨組成物に組み込むことができる任意の方法で混合することができる。酸化剤を研磨組成物の調製中の任意の時に加えることができる。例えば、研磨組成物は、CMP作業の直前(例えば、CMP作業前の1分以内、10分以内、1時間以内、1日以内、又は1週間以内)に加えられる、酸化剤のような1つ又は複数の成分と共に、使用前に調製することができる。研磨組成物はまた、CMP作業中に、基材の表面(例えば、研磨パッド上)で成分を混合することで調製することができる。
【0043】
研磨組成物は、少なくとも6mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカと、アミン化合物と、任意選択の鉄含有促進剤及び安定剤と、任意選択の殺生物剤と、水とを含む1つのパッケージシステムとして供給することができる。酸化剤は、研磨組成物の他の成分から分離して供給されて、例えばエンドユーザーによって、使用の直前(例えば、使用前1週間以内、使用前1日以内、使用前1時間以内、使用前10分以内、又は使用前1分以内)に研磨組成物のその他の成分と組み合わせることが望ましい。様々な他の2つの容器の、又は3つ若しくはそれ以上の容器の、研磨組成物の成分の組み合わせは当業者の知識の範囲内である。
【0044】
本発明の研磨組成物はまた、使用前に適切な量の水で希釈することを意図された濃縮物として提供することができる。そのような実施形態において、研磨組成物の濃縮物は、適切な量の水と、まだ適切な量で存在してない場合は酸化剤とで濃縮物を希釈した際に、研磨組成物の各成分が、各成分について上で示した適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するような量で、少なくとも6mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカと、アミン化合物と、任意選択の鉄含有促進剤及び安定剤と、任意選択の殺生物剤と、水とを含み、酸化剤を含むか又は含まないことができる。例えば、少なくとも6mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカと、アミン化合物と、任意選択の鉄含有促進剤及び安定剤とが、各成分について上に示した濃度よりも2倍(例えば、3倍、4倍、5倍、又はさらに10倍)である量で研磨組成物中にそれぞれ存在していることで、濃縮物が、適切な量の酸化剤と共に、等しい量の水(例えば、それぞれ、2倍量の水、3倍量の水、4倍量の水、又はさらに9倍量の水)で希釈された場合に、各成分が各成分について上で述べた範囲内の量で研磨組成物中に存在することができる。さらに、当業者によって理解されるように、濃縮物は最終研磨組成物中に存在する水の適切な一部分を含有することで、その他の成分が濃縮物中で少なくとも部分的に又は完全に溶解することを確実にすることができる。
【0045】
本発明の研磨組成物は任意の基材を研磨するのに使用することができるが、研磨組成物は、タングステンを含む少なくとも1つの金属及び少なくとも1つの誘電体材料を含む基材を研磨するのに特に有用である。タングステン層を1つ又は複数のバリア層、例えば、チタン及び窒化チタン(TiN)を含む層上に堆積することができる。誘電体層は、金属酸化物、例えば、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)から誘導される酸化ケイ素層、多孔質金属酸化物、多孔質若しくは非多孔質炭素ドープ酸化ケイ素、フッ素ドープ酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ化有機ポリマー、又は任意の他の適切な高k若しくは低k絶縁層であることができる。組成物は、タングステン及びTEOSの研磨速度についてほぼ等しくなる(すなわち、1:1:のW:TEOS選択性である)ことが望まれるタングステンCMPバフ研磨作業で使用するのに特に良く適する。例えば、組成物はタングステン研磨速度の少なくとも50%(例えば、タングステン研磨速度の少なくとも80%、タングステン研磨速度の少なくとも100%、タングステン研磨速度の少なくとも150%、又はさらにタングステン研磨速度の少なくとも200%)でTEOS研磨速度を達成するのに使用することができる。研磨組成物のW:TEOS選択性は、ブランケットウエハ測定又はパターンウエハ測定を通じて得ることができる。
【0046】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置と併せて使用するのに特に適する。典型的に、その装置は、使用中、動いていてかつ軌道運動、直線運動又は円運動から生ずる速度を有する定盤と、この定盤と接触し定盤が動くとそれと共に動く研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し動くことにより研磨されるべき基材を保持するキャリアとを含む。基材の研磨は、基材を研磨パッド及び本発明の研磨組成物と接触させて配置し、次いで研磨パッドを基材に対して動かして、基材の少なくとも一部(例えば、本明細書で説明したタングステン、チタン、窒化チタン、及び/又は誘電体材料)をすり減らして基材を研磨することによって行われる。
【0047】
基材は、任意の適切な研磨パッド(例えば、研磨表面)を用いて、化学機械研磨組成物で平坦化又は研磨することができる。適切な研磨パッドとしては、例えば、織布及び不織布の研磨パッドが挙げられる。さらに、適切な研磨パッドは、様々な密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮に対する反発能力、及び圧縮係数の任意の適切なポリマーを含むことができる。適切なポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成製品、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
以下の例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定する任意の方法として解されるべきではない。
【実施例】
【0049】
[例1]
様々な研磨組成物について、酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を本例で評価した。本例は、コロイダルシリカ粒子凝集体のTEOS研磨速度への影響を示す。Mirra(登録商標)CMPツール(Applied Materialsから入手可能)とIC1010研磨パッドとを使用して、1.5psiの下向きの力、100rpmの定盤速度、及び150ml/分のスラリー流量で、TEOS層を有する8インチウエハを研磨することでTEOS研磨速度を得た。3個のコロイダルシリカ粒子分散体を評価した。それぞれの分散体は20nmの一次粒子サイズを有していた。第1分散体(1A)は、主に非凝集初期コロイダルシリカ粒子からなるものであった。第2分散体(1B)は、50%超の凝集体が2個の一次粒子を含んだ、主に凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。第3分散体(1C)は、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。それぞれの分散体を脱イオン水で希釈して、1.5wt%のコロイダルシリカ研磨粒子を含めた。それぞれの研磨組成物は3.2のpHを有し、0.015wt%のベンゾトリアゾールと、0.015wt%の無水5−アミノ−1H−テトラゾール(ATA)と、0.010wt%のDLアラニンと、0.5wt%の過酸化水素とをさらに含んでいた。表1では、それぞれのコロイダルシリカ分散体について得られたTEOS研磨速度を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に記載される結果から明らかなように、コロイダルシリカ分散体1C(30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるもの)が、コロイダルシリカ分散体1A及び1Bと比較して、有意に増加したTEOS研磨速度を示した。
【0052】
[例2]
様々な研磨組成物について、酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を本例で評価した。本例では、コロイダルシリカ粒子凝集体のTEOS研磨速度への影響を示す。Mirra(登録商標)CMPツール(Applied Materialsから入手可能)とIC1010研磨パッドとを使用して、0.75、1.5、及び3.0psiの下向きの力、100rpmの定盤速度、及び150ml/分のスラリー流量で、TEOS層を有する8インチウエハを研磨することでTEOS研磨速度を得た。2個のコロイダルシリカ粒子分散体を評価した。それぞれの分散体は20nmの一次粒子サイズを有していた。第1分散体(2A)は、50%超の凝集体が2個の一次粒子を含んだ、主に凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。第2分散体(2B)は、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。それぞれの分散体を脱イオン水で希釈して、示した質量%のコロイダルシリカ粒子を含めた。それぞれの研磨組成物は3.0のpHを有し、0.0267wt%のマロン酸と、0.02wt%のアミン修飾高分岐ポリマーと、2wt%の過酸化水素とをさらに含んでいた。表2では、それぞれの組成物について得られたTEOS研磨速度を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に記載される結果から明らかなように、コロイダルシリカ分散体2B(30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるもの)が、コロイダルシリカ分散体2Aと比較して、有意に増加したTEOS研磨速度を示した。例えば、半分の固形分(1%:2%)及び半分の研磨の下向きの力(1.5psi:3psi)で、分散体2Bが分散体2Aより高いTEOS研磨速度(880Å/分:770Å/分)を示した。比較の固形分(2%)及び下向きの力(1.5psi)の分散体2Bが、分散体2Aより約2倍のTEOS研磨速度(1130Å/分:640Å/分)を示した。
【0055】
[例3]
様々な研磨組成物について、酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を本例で評価した。本例では、コロイダルシリカ粒子凝集体サイズのTEOS研磨速度への影響を示す。それぞれのコロイダルシリカの凝集体サイズを、Malvern Instruments(登録商標)から入手可能なZetasizer(登録商標)を使用して測定した。Mirra(登録商標)CMPツール(Applied Materialsから入手可能)とIC1010研磨パッドとを使用して、1.5psiの下向きの力、100rpmの定盤速度、及び150ml/分のスラリー流量で、TEOS層を有する8インチウエハを研磨することでTEOS研磨速度を得た。コロイダルシリカ分散体を調製して、その分散体が30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。平均凝集体サイズは25〜88nmの範囲であった。それぞれの分散体を脱イオン水で希釈して、3.0wt%のコロイダルシリカ研磨粒子を含めた。それぞれの研磨組成物は4.0のpHを有し、0.0025wt%のDowfax(登録商標)C10L(Dow Chemical Companyから入手可能)と、0.1wt%の無水5−アミノ−1H−テトラゾールと、0.03wt%の酢酸と、0.0014wt%のKathon(登録商標)殺菌剤(Dow Chemical Companyから入手可能)と、0.25wt%の過酸化水素とをさらに含んでいた。表3では、それぞれの組成物について得られたTEOS研磨速度を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に記載される結果から明らかなように、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであったコロイダルシリカ分散体が、凝集体サイズ50nmである場合に最大のTEOS研磨速度を示した。TEOS研磨速度は、40〜70nm又は45〜65nmの凝集体サイズの範囲で最も高かった。
【0058】
[例4]
様々な研磨組成物について、酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を本例で評価した。本例では、研磨組成物のpHのTEOS研磨速度への影響を示す。Mirra(登録商標)CMPツール(Applied Materialsから入手可能)とIC1010研磨パッドとを使用して、4及び5psiの下向きの力、100rpmの定盤速度、及び250ml/分のスラリー流量で、TEOS層を有する8インチウエハを研磨することでTEOS研磨速度を得た。コロイダルシリカ分散体を調製して、その分散体が30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。分散体に2%の固形分を希釈して、pH値を硝酸を使用して2.2、2.5及び3.0に調整した。表4では、それぞれの組成物について得られたTEOS研磨速度を示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表4に記載される結果から明らかなように、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであったコロイダルシリカ分散体が、pHが2.5超の場合に有意に増加したTEOS研磨速度を示した。
【0061】
[例5]
様々な研磨組成物について、タングステン研磨速度、タングステンエッチ速度、及び酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を本例で評価した。本例は、研磨組成物のpH、鉄濃度、及び伝導率の、タングステン研磨速度、タングステンエッチ速度、及び酸化ケイ素(TEOS)研磨速度への影響を示す。Logitech ModelII CDP研磨機(Logitech Ltd,グラスゴー、英国)とIC1010研磨パッドとを使用して、3psiの下向きの力、100rpmの定盤速度、及び125ml/分のスラリー流量で、タングステンか又はTEOS層のいずれかを有する8インチウエハを研磨することで、タングステン及びTEOSの研磨速度を得た。コロイダルシリカ分散体を調製して、分散体が30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであった。これらの分散体を、マロン酸と、硝酸第2鉄9水和物(Fe(NO
3)
3・9H
2O)と、水とを含む混合物に加えて、表5に示す研磨組成物を得た。研磨組成物のpHを、硝酸を使用して(示されるように)2,3、又は4に調整した。研磨組成物は、2wt%の過酸化水素をさらに含めた。表6では、それぞれの組成物から得られたタングステン研磨速度、タングステンエッチ速度、及び酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を示す。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
表5及び6に記載される結果から明らかなように、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ凝集コロイダルシリカ粒子からなるものであったコロイダルシリカ分散体の使用により、W及びTEOSの研磨速度を広い範囲にわたり調整させることができた。例えば、pH、鉄濃度、及び固形分濃度が変化することにより、W:TEOS選択性が0.4:1〜4:1の範囲にわたって達成することを可能とした。表5及び6に記載される結果からまた明らかなように、同等の研磨組成物5Dより高い伝導率を有する研磨組成物5Gは、有意により低いTEOS除去速度を有した。さらに、600μS/cm未満の電気伝導率を有する研磨組成物5A及び5Cが、1:1未満のW:TEOS選択性及び1500Å/分超のTEOS除去速度を有することを観測した。この比較によって、スラリーの伝導率を制御することが、TEOS除去速度及びW:TEOS選択性を制御するのに有用である場合があることを説明する。
【0065】
[例6]
濾過の前後に処理したシリカ試料について、ゼータ電位測定及び伝導率測定を得た。200ml容積のそれぞれの組成物を、ミリポアウルトラセルの再生セルロース限外濾過ディスク(例えば、100000ダルトンのMWカットオフ及び6.3nmの孔サイズを有する)を通じて濾過した。残った分散体(限界濾過ディスクに残留した分散体)を収集して、硝酸を使用して最初のpH3に調整した脱イオン水を使用して、初期の200ml容量まで補充した。この手順を、合計3回の限外濾過サイクル(それぞれのサイクルが限外濾過工程及び補充工程を含んだ)で繰り返した。3回の濾過サイクル後に、濾過した/補充した研磨組成物の伝導率を、塩化カリウムを使用して初期値に調整して戻した。研磨組成物のゼータ電位及び電気伝導率を、限外濾過手順の前後(すなわち、初期の研磨組成物及び3回の限外濾過後かつ補充後の研磨組成物)で測定した。ゼータ電位を型式DT1202の音響式及び電子音響式スペクトロメーター(Dispersion Technologiesから入手可能)を使用して測定した。
【0066】
表7では、研磨組成物6A及び6Bについて,測定したゼータ電位及び伝導率を示す。研磨組成物6Aが、30%超の凝集体が3個以上の一次粒子を含んだ、55nmのコロイダルシリカを含有していて、研磨組成物6Bが、水酸化テトラブチルアンモニウムで処理した55nmのコロイダルシリカを含有していた。上で述べたように、初期の組成物のゼータ電位及び電気伝導率を、上で述べた限外濾過手順の前後で測定した。
【0067】
【表7】
【0068】
表7に記載される結果から明らかなように、試料6Aのゼータ電位は、濾過によって本質的に変化しなく、コロイダルシリカが9mVの永久正電荷を有することを示した。試料6Bのゼータ電位は10mVから3mVに減少して、コロイダルシリカ上の正電荷が永久的でないことを示した。
【0069】
本明細書で引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が個別及び具体的に示されてその参照により組み込まれ、全体として本明細書に記載されているのと同じ程度に、その参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明を説明する中での(特に特許請求の範囲の中での)「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」ことを意味する)として解されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指摘がない限り、単に範囲内に入っているそれぞれ独立した値を個々に言及することの省略方法として機能することを意図しており、それぞれの独立した値は、まるでそれが本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本発明の範囲に関する限定をもたらすものではない。本明細書中の如何なる言語も、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を本発明の実施に必須であるものとして示すと解されるべきではない。
【0071】
本発明を実施するために、発明者らが知っている最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態が本明細書において記載されている。それらの好ましい実施形態の変形態様は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。発明者らは、当業者がそのような変形態様を適宜利用すると予期しており、発明者らは本明細書に具体的に記載したのと別の方法で、本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法によって容認されているように、特許請求の範囲に記載される主題の全ての改良及びそれと同等なものを包含する。さらに、それらの全ての可能な変形態様における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。