特許第6617419号(P6617419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617419
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20191202BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191202BHJP
   C08F 220/68 20060101ALI20191202BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20191202BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J11/06
   C08F220/68
   C09J7/38
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-54529(P2015-54529)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-214677(P2015-214677A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-88871(P2014-88871)
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 直也
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−047296(JP,A)
【文献】 特開2013−040256(JP,A)
【文献】 特開2010−062541(JP,A)
【文献】 特開2015−189940(JP,A)
【文献】 特開2015−183177(JP,A)
【文献】 特開2014−043543(JP,A)
【文献】 特開平09−087609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)、及び、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)を含有する共重合成分(a)を共重合してなるアクリル系樹脂(A)を含有してなり、
エチレン性不飽和モノマー(a2)が、アルキル基の炭素数が9〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2−1)であり、
共重合成分(a)全体に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量が30〜95重量%、エチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量が5〜70重量%、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量が0.01〜10重量%であり、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と、エチレン性不飽和モノマー(a2)との含有割合(重量比)((a1)/(a2))が40/60〜95/5であり、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及び、エチレン性不飽和モノマー(a2)の合計量が、共重合成分(a)全体に対して、50〜99.9重量%であり、
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が−100〜−20℃である
ことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項4】
請求項記載の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系の粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シートに関し、更に詳しくは、高い粘着力を維持したまま、水蒸気バリア性に優れた粘着剤を形成する粘着剤組成物、それを用いてなる粘着剤、粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきた。また、有機デバイスで用いられる有機ELは、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けたものであり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されており、有機デバイスは、プラスチックフィルムを基板として用いることで、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するディスプレイとして期待されている。
【0003】
これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シートが使用されており、例えば、タッチパネルと各種表示装置や光学部材(保護板等)の貼り合わせには、透明な粘着シートが使用されている。また、有機EL素子内に酸素や水蒸気等が侵入してしまうと電極の酸化や有機物の変性を起こしてしまうため、これらを防止するために、有機EL素子を封止するための粘着シートが用いられている。
【0004】
上記のような目的で使用される粘着シートには透明性や、粘着シートとしての粘着特性に加え、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性の要求が高まっている。
【0005】
このようなガスバリア性を改善する粘着剤として、例えば、重量平均分子量50万のホモポリマーのカップ法で測定した40℃90%RHにおける水蒸気透過率が500g/m2・day以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%、水酸基を有するモノマー、窒素含有モノマーを含むモノマーを共重合させて得られる酸性基を実質的に有しない重量平均分子量が5万以上40万未満であるアクリル系ポリマーと架橋剤を含有する粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−47296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示技術は、透湿度の低いモノマーを使用しているが、アクリル樹脂としては、その他のモノマーとしてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアルキル基の炭素数が少ないモノマーや極性モノマーを多く共重合しているため、樹脂の透湿度は高いものになってしまい、技術の高度化に伴って要求されるバリア性を満足させるものではなく、まだまだ改良の余地が残るものであった。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、粘着力に優れるうえ、ガスバリア性、とりわけ水蒸気バリア性に優れた粘着剤を形成する粘着剤組成物、更には粘着剤及び粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、鎖長の長いアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとホモポリマーとしてのガラス転移温度が低いモノマーを併用して共重合したアクリル系樹脂を用いることにより、粘着力と水蒸気バリア性の両方に非常にバランスよく優れた粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)、及び、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)を含有する共重合成分(a)を共重合してなるアクリル系樹脂(A)を含有してなり、エチレン性不飽和モノマー(a2)が、アルキル基の炭素数が9〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2−1)であり、共重合成分(a)全体に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量が30〜95重量%、エチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量が5〜70重量%、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量が0.01〜10重量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と、エチレン性不飽和モノマー(a2)との含有割合(重量比)((a1)/(a2))が40/60〜95/5であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及び、エチレン性不飽和モノマー(a2)の合計量が、共重合成分(a)全体に対して、50〜99.9重量%であり、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が−100〜−20℃である粘着剤組成物に関するものである。
【0011】
また、本発明では、前記粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤、およびそれを用いてなる粘着シートも提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、粘着力とガスバリア性にバランスよく優れた粘着剤を形成することができるものであり、これを用いてなる粘着剤、更に粘着シートは、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、太陽電池バックシート、食品包装用途、ガスバリア性フィルム用途、太陽電池バックシート用途、有機ELディスプレイ封止用途等に好適に用いられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸を、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0014】
まず、本発明の粘着剤組成物が必須成分として含有するアクリル系樹脂(A)について説明する。
アクリル系樹脂(A)は、アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)、及び、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)を含有する共重合成分(a)を共重合して得られるものであり、更には必要に応じて、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a4)を共重合成分(a)として含んでもよいものである。
【0015】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、アルキル基の炭素数が15以上というように鎖長の長いものであることが必要であり、好ましくは15〜35、特に好ましくは16〜25、更に好ましくは17〜20である。アルキル基の炭素数が少なすぎると透湿度が高くなり好ましくない。なお、かかる炭素数の上限は特に制限されないが、あまりにも多すぎると重合時の反応性が低下する傾向がある。
【0016】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の具体例としては、例えば、ペンタデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラコシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2−テトラデシル−オクタデカニル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも水蒸気バリア性の点でヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましく、特には重合性及び水蒸気バリア性の点でステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明で用いるエチレン性不飽和モノマー(a2)としては、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下となることが必要であり、好ましくは−100〜−25℃、特に好ましくは−80〜−30℃、更に好ましくは−70〜−35℃である。かかるガラス転移温度が高すぎると得られる樹脂自体が硬くなり粘着力が低下する傾向がある。なお、かかるガラス転移温度の下限は特に制限されないが、あまりにも低すぎると耐久性が低下する傾向がある。
【0018】
かかるエチレン性不飽和モノマー(a2)の具体例としては、例えば、ノルマルブチルアクリレート(Tg−56℃)、イソアミルアクリレート(Tg−45℃)、イソオクチルアクリレート(Tg−58℃)、2−エチルへキシルアクリレート(Tg−70℃)等のアルキル基の炭素数が8以下の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イソノニルアクリレート(Tg−67℃)、イソデシルアクリレート(Tg−60℃)、イソデシルメタクリレート(Tg−41℃)、ラウリルメタクリレート(Tg−65℃)、トリデシルアクリレート(Tg−55℃)、トリデシルメタクリレート(Tg−40℃)、イソミリスチルアクリレート(Tg−56℃)等のアルキル基の炭素数が9〜14の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2−1);メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート(Tg−50℃)、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート(Tg−70℃)、2−フェノキシエチルアクリレート(Tg−22℃)、フェノキシーポリエチレングリコールアクリレート(Tg−25℃)等が挙げられる。中でも、水蒸気バリア性の点及びガラス転移温度を低くできる点でアルキル基の炭素数が9〜14、特には10〜12の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。最も好ましくはラウリルメタクリレートである。
これらエチレン性不飽和モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明においては、エチレン性不飽和モノマー(a2)としてアルキル基の炭素数が9〜14の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2−1)が用いられる。
【0019】
本発明で用いる官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0020】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0021】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0022】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0024】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0025】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明においては、共重合成分(a)として、必要に応じて更に、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a4)を含有してもよい。
かかるエチレン性不飽和モノマー(a4)としては、例えば、ガラス転移温度が−20℃より大きい(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチルメタアクリレート、ラウリルアクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリル酸エステル;テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート等のピペリジル環含有(メタ)アクリル酸エステル;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0027】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能性モノマー等を併用することもできる。
【0028】
本発明において、アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量は、共重合成分(a)全体に対して、30〜95重量%であり、好ましくは40〜95重量%、には50〜90重量%、には65〜85重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると透湿度が高くなる傾向があり、多すぎるとアクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなり、密着性が低下する傾向がある。
【0029】
ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量は、共重合成分(a)全体に対して、5〜70重量%であり、好ましくは5〜60重量%、には10〜50重量%、には15〜35重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎるとアクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなり、密着性が低下する傾向があり、多すぎると透湿度が高くなる傾向がある。
【0030】
官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量は、共重合成分(a)全体に対して、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.05〜7.5重量%、には0.1〜5重量%、には0.5〜2重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると架橋剤との反応性が低下したり、架橋密度が低下し凝集力が低下する傾向があり、多すぎると透湿度が高くなり水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0031】
その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a4)の含有量は、共重合成分(a)全体に対して、0.1〜20重量%であることが好ましく、特には0.1〜15重量%、更には0.1〜10重量%、殊には0.1〜5重量%であることが好ましい。かかる含有量が多すぎると水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0032】
また、本発明においては、アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)との含有割合(重量比)((a1)/(a2))が、40/60〜95/5であり、水蒸気バリア性と密着性の点で、50/50〜90/10、特には60/40〜80/20であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると水蒸気バリア性が低下する傾向があり、高すぎると柔軟性が低下し、密着性が低下する傾向がある。
【0033】
更に、アルキル基の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及び、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が−20℃以下のエチレン性不飽和モノマー(a2)の合計量が、共重合成分(a)全体に対して、50〜99.9重量%であり、水蒸気バリア性の点で、50〜95重量%、特には60〜90重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0034】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、上記共重合成分(a)を所定の割合で配合し、有機溶媒中でラジカル重合させる如き、当業者周知の方法によって製造される。
【0035】
かかる重合に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0036】
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
本発明において、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常、5万〜300万が好ましく、より好ましくは20万〜150万、更に好ましくは30万〜100万、特に好ましくは40万〜80万である。重平均分子量が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、重量平均分子量が大きすぎると溶液粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0038】
アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、30以下であることが好ましく、特には20以下が好ましく、更には15以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向にある。なお、分散度の下限は通常2である。
【0039】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0040】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−100〜−20℃であり、好ましくは−80〜−25℃、特に好ましくは−70〜−30℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると耐熱性が低下する傾向があり、高すぎると密着性が低下する傾向がある。
【0041】
上記ガラス転移温度は、以下のFoxの式より算出されるものである。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・・・・Wk/Tgk
但し、Tgは共重合体のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,・・・・・・・・Tgkは各単量体成分の単独共重合体のTgであり、w1,w2,・・・・・・・・・・wkは各単量体成分の重量分率を表し、w1+w2+・・・・・・・・・wk=1である。
【0042】
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られ、かかるアクリル系樹脂(A)を用いて粘着剤組成物が得られる。
【0043】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含有することが好ましく、架橋剤(B)により架橋され、粘着剤となるものである。
【0044】
かかる架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の化学架橋を形成する架橋剤、多官能アクリレート系架橋剤等の物理架橋を形成する架橋剤が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性を向上させる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ架橋剤、および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1つが好適に用いられる。
【0045】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0046】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、1,3′−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。
【0047】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
なお、かかるアジリジン系架橋剤は、ポットライフが短く、変異原性があることから、粘着剤の使用用途によっては使用が好ましくない場合がある。
【0048】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0050】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0051】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0052】
これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
これらの中でも、アクリル系樹脂との相溶性の点からイソシアネート系化合物、とりわけ脂肪族系、脂環族系のイソシアネート系化合物を用いることが好ましく、特に好ましくはトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリオール化合物とのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、更に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのポリオール化合物とのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体である。
【0054】
上記架橋剤(B)の含有量は、通常アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜20重量部であることが好ましく、特には0.005〜10重量部、更には0.01〜5重量部であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が少なすぎると凝集力が低下する傾向があり、多すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0055】
なお、架橋反応は活性エネルギー線を照射することによって行なうこともできる。この場合、多官能(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、かかる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、活性エネルギー線照射による架橋は、架橋剤による架橋と併用することが好ましい。
【0056】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の各種添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。これら添加量は所望する物性が得られるように適宜設定すればよい。
【0057】
なお、本発明の粘着剤組成物を、ITOフィルム、ITOガラス等の透明電極膜や、電磁波シールド等のメッシュ等の耐腐食性が必要な用途に使用する場合は、アクリル系粘着剤組成物が実質的に酸を含まないことが好ましい。
実質的に酸を含まないとは、アクリル系樹脂(A)の共重合成分として酸性基を有するモノマーを使用せず、粘着剤組成物全体の酸価が好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/gであることを意味する。
【0058】
本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤のゲル分率は、通常、20〜98%、好
ましくは30〜95%、特に好ましくは50〜90%である。ゲル分率が低すぎると凝集
力が低下する傾向があり、高すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0059】
なお、粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること、組成物中の水酸基の組成比を調整すること等により達成される。また、かかる架橋剤と官能基量との割合は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
【0060】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0061】
つぎに、上記の本発明の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより粘着シートを作製することができる。すなわち、上記粘着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0062】
まず、所定の厚みとなるように支持基材の片面もしくは両面に上記粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥することにより粘着剤層を形成する。ついで、必要に応じて上記粘着剤層面に剥離シートを貼り合わせることにより粘着シートを作製することができる。また、得られた粘着シートには、必要に応じて、エージング処理を行なった後、使用時には、上記剥離シートを粘着剤層から剥離して使用に供される。このようにして、支持基材の片面もしくは両面に粘着剤層が形成され、さらにこの粘着剤層面に必要に応じて剥離シートが設けられた粘着シートが得られる。
【0063】
上記支持基材としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄等の金属箔;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルムまたはシート、上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等から選択される単層体または複層体があげられる。かかる支持基材の厚みとしては、通常1〜500μmであり、好ましくは5〜300μmである。
【0064】
さらに、上記剥離シートとしては、例えば、上記支持基材で例示した各種合成樹脂シート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。
また、剥離シートに上記アクリル系粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥することにより粘着剤層を形成し、粘着剤層に剥離シートを貼り合わせることにより、基材レスで粘着シートを作製することもできる。
【0065】
上記粘着剤組成物の塗工に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5〜80重量%、特に好ましく10〜70重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであればよく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが好適に用いられる。
【0066】
また、上記粘着剤組成物の塗工方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法があげられる。
【0067】
そして、上記加熱乾燥条件としては、粘着剤組成物を乾燥させることが可能であればよく、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜130℃で、1〜10分間程度、好ましくは1.5〜5分間程度の条件があげられる。
【0068】
上記エージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は、通常室温(25℃±5℃)〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0069】
さらに、得られる粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、通常1〜250μmが好ましく、より好ましくは5〜150μm、特に好ましくは10〜100μmである。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると乾燥が困難となり、発泡がおこりやすくなる傾向がある。
【0070】
このようにして得られる粘着シートの厚みは、用途に応じ適宜設定されるが、例えば、5〜300μmの範囲に設定することが好ましい。
【0071】
本発明における粘着シートの利用に際し、被着体の種類として、例えば、各種金属面を有する物品;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、シートまたは板があげられる。
【0072】
上記金属面を有する物品としては、金属面を有しており、この金属面に、直接、上記粘着シートが、少なくとも部分的にまたは全面的に貼り合わされる。このような金属面を有する物品において、上記粘着シートが貼り合わされる被着体(「金属面含有被着体」と称する場合がある)としては、少なくとも部分的に金属面を有していれば特に制限されない。このような金属面含有被着体において、金属面が形成されている部位は、上記粘着シートを直接貼付することが可能な部位であれば特に制限されず、外側の面であってもよく、また、内側の面等であってもよい。なお、1つの金属面含有被着体に金属面が複数形成されている場合、これらの複数の金属面は同一の金属材料により形成された面であってもよく、異なる金属材料により形成された面であってもよい。
【0073】
上記金属面含有被着体における金属面は、金属材料により形成された金属面含有被着体の表面であってもよく、また各種材料により形成された基材(または構造体)の表面に形成された金属層表面(特に、金属薄膜層表面)であってもよい。上記金属面は、いずれにせよ、金属材料による表面であればよい。
【0074】
上記金属薄膜層等の金属層は、各種材料により構成された基材(または構造体)の表面の所定の部位に形成することができる。このような金属層において、金属薄膜層の厚みとしては、金属面含有被着体の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上であってもよい。なお、金属薄膜層の厚みの上限としては、一般的に薄膜層とみなされる厚みであれば特に制限されない。
【0075】
上記金属面を形成するための金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、鉄、チタン、白金、ニッケル等の金属単体による金属材料;金合金(例えば、金−銅合金等)、銅合金〔例えば、銅−亜鉛合金(真鍮)、銅−アルミニウム合金等〕、アルミニウム合金(例えば、アルミニウム−モリブデン合金、アルミニウム−タンタル合金、アルミニウム−コバルト合金、アルミニウム−クロム合金、アルミニウム−チタン合金、アルミニウム−白金合金等)、ニッケル合金(例えば、ニッケル−クロム合金、銅−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金等)、スズ合金、ステンレス等の各種合金による金属材料等があげられる。これら金属材料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
なお、金属材料は、金属元素のみを含有する金属材料であってもよく、金属元素とともに非金属元素を含有する金属材料〔例えば、金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物等)、オキソ酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等)等の金属系化合物〕であってもよく、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)、CTO(酸化カドミウムスズ)等が挙げられる。
【0077】
具体的には、上記金属面含有被着体としては、例えば、透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体を有する光学的製品またはこの光学的製品を構成するための部材等があげられる。上記透明導電膜層を有する光学的製品としては、例えば、電子ディスプレイ(タッチパネル等)があげられる。金属薄膜層により形成された電磁波シールド層を有する光学的製品またはこの光学的製品を構成するための部材等があげられる。上記電磁波シールド層を有する光学的製品としては、例えば、電子ディスプレイ(プラズマディスプレイ等)等の光学機器や、デジタル万能ディスク等の光学的に記録可能なディスク(光学的記録ディスク)等があげられる。
【0078】
かくして、本発明の粘着剤並びに粘着シートは、コンピュータ、携帯電話、薄型テレビ等各種電子部材、精密電子部材に貼り合せて用いられる貼り合わせ用や情報ラベル、電子部材の固定用粘着剤、ガスバリア性フィルム用途、太陽電池のバックシート用粘着剤、有機EL素子の封止用粘着剤等として有用である。
【0079】
また、本発明の粘着剤組成物は、とりわけ有機溶剤含有タイプの粘着剤組成物として使用し、架橋剤存在下、熱により硬化させて粘着剤とすることで、中程度〜高程度の粘着力(約3N/25mm以上)を示し、中〜長期間(数ヶ月〜数年間)にわたり被着体と貼り合せることができる粘着剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0081】
・下記のようにして各種アクリル系樹脂溶液を調製した(表1参照。)。
なお、ガラス転移温度(Tg)の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0082】
また、固形分濃度の測定に関しては、アルミ箔にアクリル樹脂溶液1〜2gを取り、ケット(赤外線乾燥機、185W、高さ5cm)で45分間加熱乾燥し、乾燥前後の重量変化を測定し、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0083】
<アクリル系樹脂(A−1)溶液の調製>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)83部、ラウリルメタクリレート(a2)15部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1.8部、アクリル酸(a3)0.2部及びアセトン30部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(ガラス転移温度−26℃、固形分濃度49.5%、粘度2500mPa・s(25℃)、重量平均分子量47万、分散度3.2)を得た。
【0084】
<アクリル系樹脂(A−2)溶液の調製>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)68部、ラウリルメタクリレート(a2)30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1.8部、アクリル酸(a3)0.2部及びアセトン35部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(ガラス転移温度−34℃、固形分49.9%、粘度5600mPa・s(25℃)、重量平均分子量76万、分散度、12.3)を得た。
【0085】
<アクリル系樹脂(A'−1)溶液の調製>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)98部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)2部、及びアセトン27.5部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A'−1)溶液(ガラス転移温度−18℃、固形分52.9%、粘度1750mPa・s(25℃)、重量平均分子量30万、分散度2.5)を得た。
【0086】
<アクリル系樹脂(A'−2)溶液の調製>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル40部、AIBN0.06部を仕込み、加熱還流後、ラウリルメタクリレート(a2)98部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)2部、AIBN0.025部の混合溶液を2時間にわたって滴下し、適宜AIBNを追加しながら還流温度で7時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A'−2)溶液(ガラス転移温度−64℃、固形分61.8%、粘度8600mPa・s(25℃)、重量平均分子量26万、分散度2.4)を得た。
【0087】
【表1】
(注)ISTA:イソステアリルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
Aac:アクリル酸
(※)表中「--」は配合しなかったことを表す。表中(a1)〜(a3)の数字は重量部を表す。
【0088】
・架橋剤(B)として以下のものを用意した。
(B−1):イソホロンジイソシアネートの3量体(EVONIK製、商品名「VESTANAT T1890」)
【0089】
<実施例1〜2、比較例1〜3>
上記のようにして調製、準備した各配合成分を、下記の表2に示す割合で配合することにより粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて希釈し(粘度〔500〜10,000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
【0090】
上記で得られた粘着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。これらの結果を下記の表2に併せて示した。
【0091】
〔ゲル分率〕
上記粘着剤組成物溶液を軽剥離PETフィルム(東レ社製:ルミラーSP01−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、38μmPETフィルムに貼合し、40℃で3日間エージングすることで、粘着シートを得た。
得られた粘着シートを40×40mmに裁断した後、軽剥離PETフィルムを剥がし、粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の、トルエン浸漬前後の粘着剤層の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
【0092】
〔粘着力〕
上記粘着剤組成物溶液を軽剥離PETフィルム(東レ社製:ルミラーSP01−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、38μmPETフィルムに貼合し、40℃で3日間エージングすることで、粘着シートを得た。
得られた粘着シートを25mm×100mmに切断した後、軽剥離PETフィルムを剥がし、これを、被着体として無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」)及びステンレス板(日本テストパネル社製、「SUS304BA板」)に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを用いて2往復させることにより圧着し、試験片を作製した。この試験片を、同雰囲気下で、30分放置した後、剥離速度0.3m/分により、180度剥離試験を行い、粘着力を測定した(N/25mm)。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・5N/25mm以上
×・・・5N/25mm未満
【0093】
〔水蒸気バリア性〕
上記粘着剤組成物溶液を軽剥離PETフィルム(東レ社製:ルミラーSP01−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、重剥離PET(東レ社製:ルミラーSP03−38BU)を貼り合わせ40℃で3日間エージングを行った。エージング終了後、軽剥離PETを剥がしSUSメッシュ(400メッシュ)に貼合し透湿度測定用サンプルとした。
透湿度測定に関しては、JIS Z 0208に準じたカップ法で行い、メッシュに貼り合わせた粘着剤層が外気側になるように設置して40℃、90%RH雰囲気下で評価した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・150g/m2・day以下
×・・・150g/m2・dayより大きい
【0094】
〔基材蜜着性〕
上記粘着剤組成物溶液を軽剥離PETフィルム(東レ社製:ルミラーSP01−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、38μmPETフィルムに貼合し、40℃で3日間エージングすることで、粘着シートを得た。
得られた粘着シートから軽剥離PETフィルムを剥がし、粘着剤層の端部を含むように、セロハンテープを貼り合わせ、爪でこすりつけた後、勢いよく引き剥がし、粘着剤層がPETフィルムからはがれていないかを目視で観察した。評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
○・・・剥離なし
×・・・剥離あり
【0095】
【表2】
【0096】
上記結果から、本発明のアクリル系粘着剤を用いて得られる実施例1〜2の粘着シートは、粘着力及び基材密着性に優れるうえ、水蒸気バリア性にも優れたものであることがわかる。
一方、比較例1の粘着シートは、共重合成分(a2)を含有していないため、粘着力や基材密着性に劣るものであり、架橋剤を増やした比較例2においても、比較例1と同様の結果となり、比較例3の粘着シートは、共重合成分(a1)を含有していないため、ガラスへの粘着力に劣るうえ水蒸気バリア性にも劣るものであった。
以上から、共重合成分(a1)及び(a2)を併用することにより、粘着力と水蒸気バリア性にバランスよく優れた粘着剤となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の粘着剤組成物は、粘着力とガスバリア性にバランスよく優れた粘着剤を形成することができるものであり、これを用いてなる粘着剤、更に粘着シートは、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、太陽電池バックシート、食品包装用途、ガスバリア性フィルム用途、太陽電池バックシート用途、有機ELディスプレイ封止用途等に好適に用いられるものである。これを用いてなる粘着剤、更に粘着シートは、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、有機EL封止用、太陽電池バックシート、食品包装用、太陽電池バックシート、食品包装用途、ガスバリア性フィルム用途、太陽電池バックシート用途、有機ELディスプレイ封止用途等に好適に用いられるものである。