特許第6617596号(P6617596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6617596シクロヘキセン環を有する液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617596
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】シクロヘキセン環を有する液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/225 20060101AFI20191202BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20191202BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20191202BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   C07C43/225 CCSP
   C09K19/30
   C09K19/42
   C09K19/54 B
   C09K19/54 C
   C09K19/32
   C09K19/34
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/18
   C09K19/14
   G02F1/13 500
【請求項の数】16
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2016-27629(P2016-27629)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-183145(P2016-183145A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-62459(P2015-62459)
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅秀
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/129268(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/125911(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/150963(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0314582(US,A1)
【文献】 特開平10−204016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式(1)において、
は、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;


、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−(CH−、または−CHCH=CHCH−であり;
は、水素、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)において、
は、炭素数1から10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;


、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
は、水素、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)、および式(1−4)のいずれか1つで表される、請求項1または2に記載の化合物。


式(1−1)から式(1−4)において、
は、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;


、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
は、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項4】
請求項3に記載の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)、および式(1−4)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;


、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、または−CHCH−であり、;
は、フッ素、−CF、または−OCFであり;
がフッ素であり、Lが水素またはフッ素である、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)のいずれか1つで表される、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項6】
請求項5に記載の式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)において、L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり、L、L、L、およびLの少なくとも2つがフッ素である、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
式(1−2a)、式(1−2b)、および式(1−2c)のいずれか1つで表される、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−2a)、式(1−2b)、および式(1−2c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項8】
式(1−2d)、式(1−2e)、および式(1−2f)のいずれか1つで表される、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−2d)、式(1−2e)、および式(1−2f)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項9】
式(1−1a)、式(1−1b)、および式(1−1c)のいずれか1つで表される、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−1a)、式(1−1b)、および式(1−1c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【請求項11】
式(2)から(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR11およびR12において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【請求項12】
式(5)から(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10または11に記載の液晶組成物。


式(5)から(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR13において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項13】
式(8)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR14において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Dが複数有る場合は同じであっても、異なっていてもよく;
17は、独立して、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり、Z17が複数有る場合は同じであっても、異なっていてもよく;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項14】
式(9)から(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(9)から(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR15およびR16において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、環E、環E、環E、および環Eのそれぞれが複数有る場合は同じであっても、異なっていてもよく;
環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり、Z18、Z19、Z20、およびZ21のそれぞれが複数有る場合は同じであっても、異なっていてもよく;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項15】
重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された少なくとも1つの添加物をさらに含有する、請求項10から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、シクロヘキセン環とCFO結合基とを有する液晶性化合物、この化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用されている。この素子は、液晶性化合物の光学異方性、誘電率異方性などの物性を利用したものである。液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、PSA(polymer sustained alignment)などのモードがある。
【0003】
このような液晶表示素子では、適切な物性を有する液晶組成物が使われている。素子の特性をさらに向上させるには、この組成物に含まれる液晶性化合物が、次の(1)から(8)で示す物性を有するのが好ましい。(1)熱や光に対する高い安定性、(2)高い透明点、(3)液晶相の低い下限温度、(4)小さな粘度(η)、(5)適切な光学異方性(Δn)、(6)大きな誘電率異方性(Δε)、(7)適切な弾性定数(K)、(8)他の液晶性化合物との優れた相溶性。
【0004】
液晶性化合物の物性が素子の特性に及ぼす効果は、次のとおりである。(1)のように、熱や光に対する高い安定性を有する化合物は、素子の電圧保持率を上げる。これによって、素子の寿命が長くなる。(2)のように、高い透明点を有する化合物は、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(3)のように、ネマチック相、スメクチック相などのような液晶相の低い下限温度、特にネマチック相の低い下限温度を有する化合物も、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(4)のように、粘度の小さな化合物は、素子の応答時間を短くする。
【0005】
素子の設計に応じて、(5)のように、適切な光学異方性、すなわち大きな光学異方性または小さな光学異方性、を有する化合物が必要である。素子のセルギャップを小さくすることにより応答時間を短くする場合には、大きな光学異方性を有する化合物が適している。(6)のように大きな誘電率異方性を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。これによって、素子の消費電力が小さくなる。一方、小さな誘電率異方性を有する化合物は、組成物の粘度を下げることによって、素子の応答時間を短くする。この化合物は、ネマチック相の上限温度を上げることによって素子の使用可能な温度範囲を広げる。
【0006】
(7)に関しては、大きな弾性定数を有する化合物は、素子の応答時間を短くする。小さな弾性定数を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。したがって、向上させたい特性に応じて適切な弾性定数が必要になる。(8)のように他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物が好ましい。これは、異なった物性を有する液晶性化合物を混合して、組成物の物性を調節するからである。
【0007】
これまでに、大きな誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた。大きな光学異方性を有する液晶性化合物も種々合成されてきた。新規な化合物には、従来の化合物にはない優れた物性が期待されるからである。新規な化合物を液晶組成物に添加することによって、組成物において少なくとも2つの物性の間で適切なバランスが得られると期待されるからである。このような状況から、上記の物性(1)から(8)に関して優れた物性と適切なバランスを有する化合物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第1996/011897号
【特許文献2】特開平10−204016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第一の課題は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。特に他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)で表される化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。

式(1)において、
は、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;

、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−(CH−、または−CHCH=CHCH−であり;
は、水素、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である。
【発明の効果】
【0011】
第一の長所は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。類似の化合物に比較して、大きな誘電率異方性と、優れた相溶性を有する(比較例1と2を参照)。第二の長所は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この長所は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の長所は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は、次のとおりである。「液晶性化合物」、「液晶組成物」、および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「化合物」、「組成物」、および「素子」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが、上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような組成物の物性を調節する目的で添加する化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0013】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この組成物に、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤または重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0014】
「透明点」は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。「ネマチック相の上限温度」は、液晶性化合物と母液晶との混合物または液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0015】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を化合物(1)と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。これらのルールは、他の式で表される化合物についても適用される。式(1)から(15)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどの環に対応する。六角形は、シクロヘキサンやベンゼンのような六員環を表す。六角形がナフタレンのような縮合環や、アダマンタンのような架橋環を表すことがある。
【0016】
成分化合物の化学式において、末端基Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのRが表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(1−1)のRがエチルであり、化合物(1−2)のRがエチルであるケースがある。化合物(1−1)のRがエチルであり、化合物(1−2)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、R11、Z11などの記号にも適用される。化合物(8)において、iが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において2つの環Dが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。iが2より大きいとき、任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0017】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数が任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つの‘A’が、‘B’、‘C’、または‘D’で置き換えられてもよい」という表現は、任意の‘A’が‘B’で置き換えられた場合、任意の‘A’が‘C’で置き換えられた場合、および任意の‘A’が‘D’で置き換えられた場合、さらに複数の‘A’が‘B’、‘C’、および/または‘D’の少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、「少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0018】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。液晶性化合物のアルキルは直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した左右非対称な二価基にも適用される。

【0019】
本発明は、下記の項などである。
【0020】
項1. 式(1)で表される化合物。

式(1)において、
は、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;

、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−(CH−、または−CHCH=CHCH−であり;
は、水素、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である。
【0021】
項2. 項1に記載の式(1)において、
は、炭素数1から10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;

、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
は、水素、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である、請求項1に記載の化合物。
【0022】
項3. 式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)、および式(1−4)のいずれか1つで表される、項1または2に記載の化合物。

式(1−1)から式(1−4)において、
は、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;

、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
は、フッ素、−CF、または−OCFであり;
およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0023】
項4. 項3に記載の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)、および式(1−4)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または1つもしくは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基であり;

、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、または−CHCH−であり、;
は、フッ素、−CF、または−OCFであり;
がフッ素であり、Lが水素またはフッ素である、項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【0024】
項5. 式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)のいずれか1つで表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0025】
項6. 項5に記載の式(1−3a)、式(1−3b)、および式(1−3c)において、L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり、L、L、L、およびLの少なくとも2つがフッ素である、項1から5のいずれか1項に記載の化合物。
【0026】
項7. 式(1−2a)、式(1−2b)、および式(1−2c)のいずれか1つで表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−2a)、式(1−2b)、および式(1−2c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
項8. 式(1−2d)、式(1−2e)、および式(1−2f)のいずれか1つで表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。

式(1−2d)、式(1−2e)、および式(1−2f)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;L、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0027】
項9. 式(1−1a)、式(1−1b)、および式(1−1c)のいずれか1つで表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。


式(1−1a)、式(1−1b)、および式(1−1c)において、Rは、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から10のアルコキシ、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から10のアルケニルオキシであり;Xは、フッ素、−CF、または−OCFであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0028】
項10. 項1から9のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0029】
項11. 式(2)から(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項10に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR11およびR12において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0030】
項12. 式(5)から(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項10または11に記載の液晶組成物。


式(5)から(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR13において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【0031】
項13. 式(8)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項10から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR14において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Dが複数有る場合は、同じであっても、異なっていてもよく;
17は、独立して、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり、Z17が複数有る場合は、同じであっても、異なっていてもよく;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0032】
項14. 式(9)から(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項10から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(9)から(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このR15およびR16において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、環E、環E、環E、および環Eが複数有る場合は、同じであっても、異なっていてもよく;
環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり、Z18、Z19、Z20、およびZ21が複数有る場合は、同じであっても、異なっていてもよく;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0033】
項15. 重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された少なくとも1つの添加物をさらに含有する、項10から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
項16. 項10から15のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0035】
本発明は、次の項をも含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された、1つ、2つ、または少なくとも3つの添加物をさらに含有する、上記の組成物。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.07以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、上記の液晶組成物。(c)液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス(AM)方式である、上記の液晶表示素子。
【0036】
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成法、液晶組成物、および液晶表示素子について、順に説明する。
【0037】
1.化合物(1)の態様
化合物(1)は、シクロヘキセン環とCFO結合基とを有するという特徴がある。化合物(1)は、類似の化合物に比較して、大きな誘電率異方性と優れた相溶性とを有する(比較例1と2を参照)。化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における末端基RおよびX、環Aから環A、結合基ZからZ、および置換基LからLの好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基を適切に組み合わせることによって、物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。なお、化合物(1)の記号の定義は、項1に記載したとおりである。

【0038】
式(1)において、Rは、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0039】
の例は、水素、フッ素、塩素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニルである。好ましいRは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、またはアルコキシアルケニルである。さらに好ましいRは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、またはアルケニルオキシである。さらに好ましいRは、アルキル、アルコキシ、アルケニル、またはアルケニルオキシでもある。特に好ましいRは、アルキルまたはアルケニルである。最も好ましいRは、アルキルである。
【0040】
好ましいアルキルは、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、または−C15である。
【0041】
好ましいアルコキシは、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、または−OC15である。
【0042】
好ましいアルコキシアルキルは、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、または−(CH−OCHである。
【0043】
好ましいアルケニルは、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、または−(CH−CH=CHである。
【0044】
好ましいアルケニルオキシは、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、または−OCHCH=CHCである。
【0045】
好ましいRは、水素、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、または−OCHCH=CHCである。さらに好ましいRは、−C、−C、−C11、−C13、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCHである。
【0046】
が直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。Rが分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。Rが光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、小さい粘度、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0047】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327、に詳細な説明がある。
【0048】
式(1)において、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Aは、式(Ch)、式(Cx)、および式(ch)のいずれか1つで表される二価基である。
【0049】
好ましい環A、環A、または環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルである。さらに好ましい環A、環A、または環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。特に好ましい環A、環A、または環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0050】
環A、環A、または環Aが1,4−シクロヘキシレンであるときは、透明点が高く、粘度が小さい。環A、環A、または環Aが1,4−フェニレンであるとき、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。環A、環A、または環Aがフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、誘電率異方性が大きい。
【0051】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−(CH−、または−CHCH=CHCH−である。
【0052】
好ましいZ、Z、Z、またはZの例は、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CFCF−、または−CF=CF−である。さらに好ましい例は、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、または−CH=CH−である。特に好ましい例は、単結合、−COO−、または−CHCH−である。最も好ましい単結合である。
【0053】
、Z、Z、またはZが単結合であるときは、化学的安定性が高く、そして粘度が小さい。Z、Z、Z、またはZが−CFO−であるときは、粘度が小さく、誘電率異方性が大きく、そして上限温度が高い。
【0054】
式(1)において、Xは、水素、フッ素、−CF、または−OCFである。好ましいXは、フッ素、−CF、または−OCFである。さらに好ましいXは、フッ素または−OCFである。特に好ましいXは、フッ素である。Xがフッ素であるときは、粘度が小さい。Xが−CFであるときは、誘電率異方性が大きい。Xが−OCFであるときは、他の液晶性化合物との相溶性が優れている。
【0055】
式(1)において、LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。好ましいLおよびLは、水素およびフッ素の組み合わせである。好ましいLおよびLは、フッ素およびフッ素の組み合わせである。LおよびLが水素およびフッ素の組み合わせであるときは、誘電率異方性が大きい。LおよびLがフッ素およびフッ素の組み合わせであるときは、特に誘電率異方性が大きい。
【0056】
式(1)において、a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0または1である。この和が0であるとき、化合物(1)は3環を有する。この化合物は粘度が小さい。この和が1であるとき、化合物(1)は4環を有する。この化合物は、透明点が高い。
【0057】
好ましい化合物(1)の例は、項3に記載した化合物(1−1)から(1−4)である。化合物(1−1)は、低い下限温度という観点から好ましい。化合物(1−2)は、高い上限温度の観点から好ましい。化合物(1−3)は大きな誘電率異方性と比較的低い粘度の観点から好ましい。化合物(1−4)は、優れた相溶性の観点から好ましい。これらの化合物において、化合物(1−3)は、物性間の適切なバランス観点からさらに好ましい。化合物(1−1)から(1−4)のさらに好ましい例は、項5から8に記載されている。
【0058】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法を説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることによって合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、「オーガニック・シンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0059】
2−1.結合基Zの生成
結合基ZからZを生成する方法に関して、最初にスキームを示す。次に、方法(1)から(11)でスキームに記載した反応を説明する。これらのスキームにおいて、MSG(またはMSG)は少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1J)は化合物(1)に相当する。
【0060】

【0061】
(1)単結合の生成
公知の方法で合成されるアリールホウ酸(21)とハロゲン化物(22)とを、炭酸塩およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成されるハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下でハロゲン化物(22)を反応させることによっても合成される。
【0062】
(2)−COO−の生成
ハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。公知の方法で合成される化合物(25)とカルボン酸(24)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて化合物(1B)を合成する。
【0063】
(3)−CFO−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理してチオノエステル(26)を得る。チオノエステル(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)はチオノエステル(26)をDAST((ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480. に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0064】
(4)−CH=CH−の生成
ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理してリンイリドを発生させる。このリンイリドをアルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0065】
(5)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0066】
(6)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、方法(4)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0067】
(7)−CHCH=CHCH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(30)を、アルデヒド(28)の代わりにアルデヒド(31)を用い、方法(4)の方法に従って化合物(1G)を合成する。反応条件によってはトランス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりトランス体をシス体に異性化する。
【0068】
(8)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、ハロゲン化物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(32)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(32)をハロゲン化物(22)と反応させて、化合物(1H)を合成する。
【0069】
(9)−CF=CF−の生成
ハロゲン化物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(33)を得る。ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(33)と反応させて化合物(1I)を合成する。
【0070】
(10)−OCH−の生成
アルデヒド(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(34)を得る。化合物(34)を臭化水素酸などで臭素化して臭化物(35)を得る。炭酸カリウムなどの塩基存在下で、臭化物(35)を化合物(36)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0071】
(11)−(CF−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414. に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF−を有する化合物を得る。
【0072】
2−2.環Aから環Aの生成
1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0073】
2−3.化合物(1)を合成する方法
化合物(1)を合成する方法を、下記のスキームに示した。これらの化合物において、R、環Aなどの記号の定義は、項1に記載した記号の定義と同一である。
2−3a.式(ch)で表される二価基を有する化合物
臭化物(41)は公知の方法で合成する。臭化物(41)から調製したグリニヤール試薬をケトン(42)に反応させてアルコール(43)を得る。アルコール(43)を、PTSA(パラトルエンスルホン酸一水和物)の存在下、脱水して化合物(1)を合成する。
【0074】
【0075】
2−3b.式(Cx)で表される二価基を有する化合物
公知の方法によりケトン(44)を合成する。ケトン(44)をNBS(N−ブロモスクシンイミド)とPTSAの存在下、臭素化して臭化物(45)を得る。臭化物(45)を炭酸リチウムと臭化リチウム存在で、脱臭化水素反応させてケトン(46)を得る。臭化物(47)から調製したグリニヤール試薬をケトン(46)に反応させてアルコール(48)を得る。アルコール(48)をトリエチルシランと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体存在下で還元して化合物(1)を合成する。
【0076】
【0077】
2−3c.式(Ch)で表される二価基を有する化合物
臭化物(47)から調製したグリニヤール試薬をケトン(44)に反応させてアルコール(49)を得る。アルコール(49)を、PTSAの存在下で脱水して化合物(1)を合成する。
【0078】
【0079】
3.液晶組成物
3−1.成分化合物
本発明の液晶組成物について説明をする。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含む。この組成物は、2つまたは3つ以上の化合物(1)を含んでもよい。組成物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを1重量%から99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。誘電率異方性が正である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5重量%から60重量%の範囲である。誘電率異方性が負である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は30重量%以下である。組成物は、化合物(1)と、本明細書中に記載しなかった液晶性化合物とを含んでもよい。
【0080】
この組成物は、化合物(1)を成分Aとして含み、下に示す成分B、C、D、およびEから選択された液晶性化合物をさらに含むことが好ましい。成分Bは、化合物(2)から(4)である。成分Cは化合物(5)から(7)である。成分Dは、化合物(8)である。成分Eは、化合物(9)から(15)である。この組成物は、化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を含んでもよい。この組成物を調製するときには、誘電率異方性の正負と大きさとを考慮して成分B、C、D、およびEを選択することが好ましい。成分を適切に選択した組成物は、熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、および適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)を有する。
【0081】
成分Bは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)から(2−11)、化合物(3−1)から(3−19)、および化合物(4−1)から(4−7)を挙げることができる。これらの化合物において、R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0082】
【0083】
成分Bは、小さな誘電率異方性を有する。成分Bは中性に近い。化合物(2)は、粘度を下げるまたは光学異方性を調整する効果がある。化合物(3)および(4)は、上限温度を上げることによってネマチック相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する効果がある。
【0084】
成分Bの含有量を増加させるにつれて組成物の粘度は小さくなるが誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0085】
成分Cは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)から(5−16)、化合物(6−1)から(6−113)、化合物(7−1)から(7−57)を挙げることができる。これらの化合物において、R13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFである。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、熱や光に対する安定性が非常に優れているので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0093】
成分Dは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(8)である。成分Dの好ましい例として、化合物(8−1)から(8−64)を挙げることができる。これらの化合物において、R14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0094】
【0095】
【0096】
成分Dは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。この成分Dを添加することにより、組成物の誘電率異方性を上げることができる。成分Dは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分Dは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0097】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Dの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0098】
成分Eは、化合物(9)から(15)である。これらの化合物は、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。成分Eの好ましい例として、化合物(9−1)から(9−8)、化合物(10−1)から(10−17)、化合物(11−1)、化合物(12−1)から(12−3)、化合物(13−1)から(13−11)、化合物(14−1)から(14−3)、および化合物(15−1)から(15−3)を挙げることができる。これらの化合物において、R15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;R17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0099】
【0100】
【0101】
成分Eは、誘電率異方性が負に大きい。成分Eは、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Eの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が−5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0102】
成分Eのうち、化合物(9)は二環化合物であるので、粘度を下げる、光学異方性を調整する、または誘電率異方性を上げる効果がある。化合物(10)および(11)は三環化合物であるので、上限温度を上げる、光学異方性を上げる、または誘電率異方性を上げるという効果がある。化合物(12)から(15)は、誘電率異方性を上げるという効果がある。
【0103】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分Eを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Eの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Eを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0104】
以上に述べた成分B、C、D、およびEを適切に組み合わせることによって熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。必要に応じて、成分B、C、D、およびEとは異なる液晶性化合物を添加してもよい。
【0105】
3−2.添加物
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0106】
PSA(polymer sustained alignment)モードを有する液晶表示素子では、組成物が重合体を含有する。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。電極間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して、重合性化合物を重合させることによって、組成物の中に重合体を生成させる。この方法によって、適切なプレチルトが達成されるので、応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善された素子が作製される。
【0107】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0108】
さらに好ましい例は、化合物(M−1)から(M−17)である。これらの化合物において、R25からR31は独立して、水素またはメチルであり;s、v、およびxは独立して、0または1であり;tおよびuは独立して、1から10の整数である。L21からL26は独立して、水素またはフッ素であり;L27およびL28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0109】
【0110】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0111】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0112】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0113】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0114】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。
【0115】
【0116】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名;BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などであり、具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99−2(商品名;BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0117】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)および(AO−6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名;BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名;BASF社)を挙げることができる。GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0118】
【0119】
化合物(AO−1)において、R40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR41、または−CHCHCOOR41であり、ここでR41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R43は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)であり;環Gは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;zは、1、2、または3である。
【0120】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックスで駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0121】
この組成物は、NCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子にも適しており、ここでは組成物がマイクロカプセル化されている。この組成物は、ポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)や、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。これらの組成物においては、多量の重合性化合物が添加される。一方、重合性化合物の添加量が液晶組成物の重量に基づいて10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。好ましい割合は0.1重量%から2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、0.2重量%から1.0重量%の範囲である。PSAモードの素子は、アクティブマトリックス、パッシブマトリクスのような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【実施例】
【0122】
実施例(合成例、使用例を含む)により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合することによって調製した組成物をも含む。
【0123】
1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0124】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0125】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC−2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1ml/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0126】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0127】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0128】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。
【0129】
化合物を母液晶と混合した試料を用いた場合は、次の式によって外挿値を算出し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉.
【0130】
母液晶(A):化合物の誘電率異方性がゼロまたは正であるときは、下記の母液晶(A)を用いた。各成分の割合を、重量%で表した。

【0131】
化合物と母液晶(A)との割合は、15重量%:85重量%にした。この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出した場合、化合物と母液晶(A)との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶(A)との割合は、15重量%:85重量%であった。
【0132】
母液晶(B):比較例2では、下記のフッ素系化合物を成分とする母液晶(B)も用いた。母液晶(B)の成分の割合を重量%で表した。

【0133】
化合物と母液晶(B)の割合は、20重量%:80重量%にした。この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶(B)との割合を15重量%:85重量%、10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶(B)との割合は、20重量%:80重量%である。
【0134】
測定方法:物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載されている。これを修飾した方法も用いた。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスタ(TFT)を取り付けなかった。
【0135】
(1)相構造:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0136】
(2)転移温度(℃):測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0137】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれをCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0138】
(3)低温相溶性:化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出したか否かを観察した。
【0139】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物(1)と成分B、C、Dのような化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0140】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0141】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0142】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0143】
(8)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0144】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0145】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0146】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0147】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子に25℃でパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0148】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。得られた結果をVHR−2の記号で示した。
【0149】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0150】
(15)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間であった。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間であった。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0151】
原料:ソルミックス(登録商標)A−11は、エタノール(85.5%)、メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
【0152】
[合成例1]
化合物(No.99)の合成

【0153】
第1工程:
マグネシウム(4.5g,186.5mmol)のTHF懸濁液(10ml)に、化合物(e−1)(30.0g,155.5mmol)のTHF溶液(90ml)を50℃以下に液温を保ちながらゆっくり滴下した。水浴で冷やしたグリニャール試薬に、化合物(e−2)(40.8g,171.0mmol)のTHF溶液(80ml)を50℃以下に液温を保ちながらゆっくり滴下した。反応混合物を室温で1時間攪拌したのち、塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(400ml)で抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去し、化合物(e−3)(48.4g,137.4mmol)を得た。
【0154】
第2工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−3)(48.4g,137.4mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(PTSA)(0.6g、3.2mmol)をトルエン(180ml)に加えて、17時間加熱環流した。反応混合物を25℃まで戻し、水(200ml)に注いだ。トルエン(100ml)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1、容積比)で精製して、化合物(e−4)(35.3g,104.9mmol)を得た。
【0155】
第3工程:
トルエン(100ml)とソルミックスA−11(100ml)との混合溶媒に化合物(e−4)(35.3g,104.9mmol)を溶解させ、さらにPd/C(1.8g)を加え、水素雰囲気下、室温で攪拌した。水素を吸収しなくなった後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1、容積比)で精製した。この化合物をN−メチルピロリドン(NMP;100ml)に溶解させ、t−BuOK(13.8g、123.2mmol)を加えて、24時間室温で攪拌した。反応混合物を水(200ml)注ぎ、トルエン(200ml)で抽出した。抽出液飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1、容積比)で精製した。さらに再結晶(2−プロパノール)により精製して、化合物(e−5)(19.5g、58.0mmol)を得た。
【0156】
第4工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−5)(19.5g、58.0mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)(3.7g、11.6mmol)をギ酸(100ml)、トルエン(100ml)の混合溶媒に加えて、24時間室温で攪拌した。水(100ml)を加え、重曹で中和した。反応混合物をトルエン(100ml)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1、容積比)で精製した。さらに再結晶(ヘプタン:トルエン=1:1、容積比)により精製して、化合物(e−6)(15.7g、53.6mmol)を得た。
【0157】
第5工程:
窒素雰囲気下、プロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2.0mol/L、29.5ml)を氷浴にて0℃に冷却した。そこへ化合物(e−6)(15.7g、53.6mmol)のTHF溶液(30ml)を滴下した。室温まで戻した後、さらに15時間攪拌した。1N−HCl水溶液でクエンチした後、酢酸エチル(150ml)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1、容積比)で精製して、化合物(e−7)(17.4g、51.7mmol)を得た。
【0158】
第6工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−7)(17.4g,51.7mmol)、PTSA(0.1g、0.6mmol)およびトルエン(60ml)の混合物を17時間加熱環流した。反応混合物を25℃まで戻し、水(100ml)に注ぎ、トルエン(50ml)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(e−8)(12.6g,39.7mmol)を得た。
【0159】
第7工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−8)(12.6g,39.7mmol)とTHF(100ml)とを反応器に入れて、−74℃まで冷却した。そこへ、n−ブチルリチウム(1.60M;n−ヘキサン溶液;29.7ml)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。次いでジブロモジフルオロメタン(9.9g、47.4mmol)のTHF(10.0ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻し、塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、水層をトルエン(200ml)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(e−9)(14.4g,32.1mmol)を得た。
【0160】
第8工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−10)(3.6g,24.1mmol)、炭酸カリウム(13.3g,96.4mmol)、ジオキサン(50ml)を反応器に入れて、90℃に加熱し、0.5時間攪拌した。次いで、化合物(e−9)(14.4g,32.1mmol)のジオキサン溶液(50ml)を滴下し、100℃でさらに7時間攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらに再結晶(ヘプタン:ソルミックスA−11=1:1、容積比)により精製して、化合物(No.99)(7.8g,15.1mmol)を得た。
【0161】
H−NMR(δppm;CDCl):6.96(dd,2H)、6.83(d,2H)、5.41−5.36(m,1H)、2.50−2.46(m,1H)、2.08−1.76(m,7H)、1.46−1.09(m,13H)、0.88(t,3H).
【0162】
化合物(No.99)の物性は、次のとおりであった。転移温度:C 71.7 C 76.1 N 111.5 I.TNI=79.0℃;η=60.5mPa・s;Δn=0.097;Δε=25.4.
【0163】
[合成例2]
化合物(No.147)の合成
【0164】
第1工程:
合成例1の第1工程にて化合物(e−2)の代わりに化合物(e−11)を用い、合成例1の第3工程まで同様の合成を行い化合物(e−12)を得た。窒素雰囲気下、化合物(e−12)(26.8g,105.4mmol)とTHF(270ml)とを反応器に入れて、−74℃まで冷却した。そこへ、n−ブチルリチウム(1.65M;n−ヘキサン溶液;83.0ml)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。次いでジブロモジフルオロメタン(31.0g、147.6mmol)のTHF(30.0ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻し、塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、水層をトルエン(600ml)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1、容積比)で精製して、化合物(e−13)(34.2g,89.3mmol)を得た。
【0165】
第2工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−13)(34.2g,89.3mmol)、化合物(e−10)(15.9g,107.1mmol)、炭酸カリウム(14.8g,107.1mmol)、テトラブチルホスホニウムブロミド(TBPB)(18.2g,53.6mmol)、ヘプタン(35ml)、水(310ml)を反応器に入れて、化合物(e−13)が消失するまで加熱還流した。反応混合物を25℃まで冷却した後、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1、容積比)で精製して、化合物(e−14)(24.3g,54.0mmol)を得た。
【0166】
第3工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−14)(24.3g,54.0mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)(3.5g、10.8mmol)をギ酸(73ml)、トルエン(240ml)の混合溶媒に加えて、24時間室温で攪拌した。水(100ml)を加え、重曹で中和した。反応混合物をトルエン(100ml)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を再結晶(ヘプタン:トルエン=1:1、容積比)により精製して、化合物(e−15)(14.9g、36.7mmol)を得た。
【0167】
第4工程:
窒素雰囲気下、トリフェニルホスファイト(48.9g,156.9mmol)とクロロホルム(100ml)とを反応器に入れて、−74℃まで冷却した。そこへ、臭素(27.4g,171.2mmol)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。次いでトリエチルアミン(18.8g、185.4mmol)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、1時間攪拌した。さらに化合物(e−16)(20.0g、142.6mmol)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻し、2時間加熱還流した。反応混合物を25℃まで戻し、水(100ml)を加え、水層をクロロホルム(100ml)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(e−17)(25.0g,123.1mmol)を得た。
【0168】
第5工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−17)(3.0g,14.8mmol)とジエチルエーテル(40ml)とを反応器に入れて、−20℃まで冷却した。そこへ、t−ブチルリチウム(1.90M;n−ヘキサン溶液;18.1ml)を−22℃から−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃にて2時間攪拌した。次いで化合物(e−15)(4.0g,9.9mmol)のジエチルエーテル(10.0ml)溶液を−5℃から5℃の温度範囲で滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻し、塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、水層をトルエン(300ml)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1、容積比)で精製して、化合物(e−18)(4.8g,9.1mmol)を得た。
【0169】
第6工程:
窒素雰囲気下、化合物(e−18)(4.8g,9.1mmol)、トリエチルシラン(1.6g,13.6mmol)、ジクロロメタン(50ml)を反応器に入れて、−60℃まで冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(1.9g,13.6mmol)を−64℃から−58℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。反応混合物を25℃まで戻し、水(100ml)を加え、水層をジクロロメタン(50ml)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:ヘプタン=1:1、容積比)で精製した。さらに再結晶(ソルミックスA−11)により精製して、化合物(No.147)(0.8g,1.6mmol)を得た。
【0170】
H−NMR(δppm;CDCl):6.96(dd,2H)、6.84(d,2H)、5.40(s,1H)、2.52−2.51(m,1H)、2.12−1.60(m,10H)、1.52−1.14(m,10H)、0.89(t,3H).
【0171】
化合物(No.147)の物性は、次のとおりであった。転移温度:C 71.7 C 8.1 C 72.6 N 112.2 I.TNI=77.0℃;η=60.5mPa・s;Δn=0.104;Δε=24.2.
【0172】
[比較例1]
誘電率異方性の比較
比較するために、化合物(I)を選んだ。この化合物は、特開平10−204436に記載された化合物(3−2)に包含され、本発明の化合物に類似しているからである。
【0173】
【0174】
H−NMR(δppm;CDCl):6.95(dd,2H)、6.83(d,2H)、2.48−2.43(m,1H)、1.92−1.85(m,4H)、1.78−1.71(m,4H)、1.38−1.25(m,4H)、1.16−0.95(m,9H)、0.89−0.86(m,5H).
【0175】
比較化合物(I)の物性は、次のとおりであった。転移温度:C 84.3 N 165.5 I.TNI=112.4℃;η=62.4mPa・s;Δn=0.112;Δε=21.2.
【0176】
【0177】
実施例1で得られた化合物(No.99)と比較化合物(I)の物性を表1にまとめた。表1から、化合物(No.99)は、誘電率異方性が大きい点で優れていることが分かった。
【0178】
[比較例2]
低温相溶性の比較
15重量%の化合物(No.99)と85重量%の母液晶(A)とから組成物(X−1)を調製した。10mlのバイアル瓶に組成物(X−1)(0.5ml)とガラス製の毛細管を入れ、窒素気流下でキャップをした。キャップ部分をパラフィルムで密閉した後、−20℃のフリーザー中に保管した。次に、10重量%の化合物(No.99)と90重量%の母液晶(B)とから組成物(X−2)を調製した。この組成物を同様の手順でバイアル瓶に密閉し、−20℃のフリーザー中に保管した。30日後に2つの組成物を観察したところ、ネマチック相を維持しており、スメクチック相の出現または結晶の析出を確認できなかった。
【0179】
15重量%の比較化合物(S−1)と85重量%の母液晶(A)とから組成物(X−3)を調整した。10重量%の比較化合物(S−1)と90重量%の母液晶(B)とから組成物(X−4)を組成物(X−3)調製した。組成物(X−3)、組成物(X−4)を前述の手順と同様にして−20℃のフリーザー中に保管したところ、組成物(X−3)は8日後に結晶の析出が確認された。また組成物(X−4)は10日後に結晶の析出が確認された。
【0180】
以上の結果を表2にまとめた。本発明の化合物(No.99)を含有する液晶組成物は、低温下でもネマチック相を維持することが可能であった。本発明の化合物は、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有することから、極めて有用であると結論できる。
【0181】
【0182】
実施例1に記載された合成方法と同様の方法により以下に示す、化合物(No.1)〜(No.240)を合成することができる。付記したデータは前記した測定法に従って得られた値である。転移温度は化合物自体の測定値であり、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物を母液晶(A)に混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した物性値である。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
2.組成物の実施例
実施例により本発明の組成物を詳細に説明する。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。使用例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。使用例において記号の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0194】
【0195】
[組成例1]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 8%
3−HB−O2 (2−5) 10%
5−HB−CL (5−2) 13%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 7%
3−PyB(F)−F (5−15) 10%
5−PyB(F)−F (5−15) 10%
3−PyBB−F (6−80) 10%
4−PyBB−F (6−80) 10%
5−PyBB−F (6−80) 10%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 6%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 6%
NI=87.0℃;η=39.9mPa・s;Δn=0.178;Δε=9.7.
【0196】
[組成例2]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 7%
2−HB−C (8−1) 5%
3−HB−C (8−1) 11%
3−HB−O2 (2−5) 13%
2−BTB−1 (2−10) 3%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−1 (3−1) 7%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
3−HHB−3 (3−1) 12%
3−HHEB−F (6−10) 4%
5−HHEB−F (6−10) 4%
2−HHB(F)−F (6−2) 6%
3−HHB(F)−F (6−2) 7%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
【0197】
[組成例3]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 6%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HB−O2 (2−5) 7%
2−HHB(F)−F (6−2) 9%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
5−HHB(F)−F (6−2) 10%
2−HBB(F)−F (6−23) 9%
3−HBB(F)−F (6−23) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 13%
2−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB−F (6−22) 4%
5−HBB−F (6−22) 3%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 4%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 10%
【0198】
[組成例4]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 10%
5−HB−CL (5−2) 15%
3−HH−4 (2−1) 12%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−CL (6−1) 3%
4−HHB−CL (6−1) 4%
3−HHB(F)−F (6−2) 9%
4−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HHB(F)−F (6−2) 8%
7−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 3%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
NI=108.8℃;η=19.8mPa・s;Δn=0.089;Δε=5.4.
【0199】
[組成例5]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 9%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 8%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 6%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 6%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 18%
3−H2BB(F,F)−F (6−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHEBB−F (7−17) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
1O1−HBBH−4 (4−1) 3%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
【0200】
[組成例6]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 8%
5−HB−F (5−2) 10%
6−HB−F (5−2) 8%
7−HB−F (5−2) 7%
2−HHB−OCF3 (6−1) 6%
3−HHB−OCF3 (6−1) 7%
4−HHB−OCF3 (6−1) 7%
5−HHB−OCF3 (6−1) 4%
3−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (6−3) 4%
3−HH2B(F)−F (6−5) 3%
3−HBB(F)−F (6−23) 9%
5−HBB(F)−F (6−23) 9%
5−HBBH−3 (4−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (4−2) 3%
【0201】
[組成例7]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 7%
5−HB−CL (5−2) 10%
3−HH−4 (2−1) 8%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 19%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 9%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
5−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 6%
NI=81.2℃;η=24.1mPa・s;Δn=0.103;Δε=9.5.
【0202】
[組成例8]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 8%
3−HB−CL (5−2) 4%
5−HB−CL (5−2) 3%
3−HHB−OCF3 (6−1) 4%
3−H2HB−OCF3 (6−13) 4%
5−H4HB−OCF3 (6−19) 15%
V−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−HHB(F)−F (6−2) 5%
5−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 8%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (6−21) 6%
2−H2BB(F)−F (6−14) 5%
3−H2BB(F)−F (6−14) 10%
3−HBEB(F,F)−F (6−12) 5%
【0203】
[組成例9]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 5%
5−HB−CL (5−2) 15%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 5%
3−HB−O2 (2−5) 13%
3−HHB−1 (3−1) 8%
3−HHB−O1 (3−1) 6%
2−HHB(F)−F (6−2) 6%
3−HHB(F)−F (6−2) 6%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
【0204】
[組成例10]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 6%
5−HB−CL (5−2) 3%
7−HB(F)−F (5−3) 6%
3−HH−4 (2−1) 9%
3−HH−EMe (2−2) 22%
3−HHEB−F (6−10) 7%
5−HHEB−F (6−10) 7%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (6−103) 5%
5−HGB(F,F)−F (6−103) 5%
2−H2GB(F,F)−F (6−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (6−106) 5%
5−GHB(F,F)−F (6−109) 6%
NI=79.8℃;η=21.8mPa・s;Δn=0.066;Δε=6.7.
【0205】
[組成例11]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 7%
3−HB−O1 (2−5) 13%
3−HH−4 (2−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (9−1) 10%
5−HB(2F,3F)−O2 (9−1) 11%
2−HHB(2F,3F)−1 (10−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (10−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (10−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (10−1) 12%
3−HHB−1 (3−1) 5%
【0206】
[組成例12]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 9%
2−HH−5 (2−1) 3%
3−HH−4 (2−1) 13%
3−HH−5 (2−1) 3%
3−HB−O2 (2−5) 11%
3−H2B(2F,3F)−O2 (9−4) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (9−4) 13%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (10−12) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (10−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (10−7) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (10−7) 8%
3−HHB−1 (3−1) 3%
3−HHB−3 (3−1) 3%
3−HHB−O1 (3−1) 3%
【0207】
[組成例13]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 10%
2−HH−3 (2−1) 18%
3−HH−4 (2−1) 8%
1−BB−3 (2−8) 8%
3−HB−O2 (2−5) 3%
3−BB(2F,3F)−O2 (9−3) 8%
5−BB(2F,3F)−O2 (9−3) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 9%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 19%
5−HBB(2F,3F)−O2 (10−7) 4%
3−HHB−1 (3−1) 3%
3−HHB−O1 (3−1) 3%
5−B(F)BB−2 (3−8) 2%
NI=76.8℃;η=19.5mPa・s;Δn=0.101;Δε=−2.9.
【0208】
[組成例14]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 6%
2−HH−3 (2−1) 14%
7−HB−1 (2−5) 10%
5−HB−O2 (2−5) 7%
3−HB(2F,3F)−O2 (9−1) 16%
5−HB(2F,3F)−O2 (9−1) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (10−12) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (10−12) 3%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (10−12) 2%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (13−6) 4%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 10%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 10%
【0209】
[組成例15]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 10%
2−HH−3 (2−1) 5%
1−BB−3 (2−8) 8%
3−HH−V (2−1) 20%
3−BB(2F,3F)−O2 (9−3) 11%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 18%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 12%
3−HHB−1 (3−1) 7%
5−B(F)BB−2 (3−8) 5%
2−BB(2F,3F)B−3 (11−1) 4%
【0210】
[組成例16]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 9%
2−HH−3 (2−1) 6%
1−BB−3 (2−8) 5%
3−HH−V1 (2−1) 8%
1V2−HH−1 (2−1) 8%
1V2−HH−3 (2−1) 7%
3−BB(2F,3F)−O2 (9−3) 6%
5−BB(2F,3F)−O2 (9−3) 3%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (9−5) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (10−5) 16%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (10−3) 5%
3−HHB−1 (3−1) 3%
3−HHB−3 (3−1) 2%
2−BB(2F,3F)B−3 (11−1) 8%
NI=80.2℃;η=21.9mPa・s;Δn=0.106;Δε=−3.7.
【0211】
[組成例17]
3−CxHB(F,F)XB(F,F)−F (No.123) 5%
1V2−BEB(F,F)−C (8−15) 6%
3−HB−C (8−1) 16%
2−BTB−1 (2−10) 10%
5−HH−VFF (2−1) 26%
3−HHB−1 (3−1) 6%
VFF−HHB−1 (3−1) 6%
VFF2−HHB−1 (3−1) 11%
3−H2BTB−2 (3−17) 6%
3−H2BTB−3 (3−17) 4%
3−H2BTB−4 (3−17) 4%
【0212】
[組成例18]
3−chHB(F,F)XB(F,F)−F (No.147) 8%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−41) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 5%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 3%
3−HH−V (2−1) 39%
3−HH−V1 (2−1) 6%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 4%
V−HHB−1 (3−1) 4%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (5−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (6−97) 10%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
【0213】
[組成例19]
3−ChHB(F,F)XB(F,F)−F (No.99) 5%
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−57) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 6%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 3%
3−HH−V (2−1) 38%
3−HH−V1 (2−1) 6%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 4%
V−HHB−1 (3−1) 6%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (5−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (6−97) 5%
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (6−113) 5%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 4%
NI=84.6℃;η=15.6mPa・s;Δn=0.104;Δε=7.8.
【0214】
2.組成物の実施例
実施例により本発明の組成物を詳細に説明する。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。使用例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。使用例において記号の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明の液晶性化合物は、優れた物性を有する。この化合物を含有する液晶組成物は、パソコン、テレビなどに用いる液晶表示素子に広く利用できる。