(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流路部を透過した光路上において前記複数の受光素子の前段側に設けられ、前記複数の受光素子の各々と、前記流路部内の集光領域を長さ方向に複数分割した分割集光領域と、を対応付けるように構成された集光レンズを備えたことを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。
前記レーザー光照射部から照射されるレーザー光について前記流体の流れ方向に見たときの一方側である第1のレーザー光の受光領域にて、光路の横断面における長手方向に配列された複数の第1の受光素子と、前記レーザー光照射部から照射されるレーザー光について前記流体の流れ方向に見たときの他方側である第2のレーザー光の受光領域にて、光路の横断面における長手方向に配列された複数の第2の受光素子と、を備え、
前記複数の受光素子の各々にて受光した光強度に対応する電気信号の信号レベルに応じた信号レベルは、前記複数の第1の受光素子の各々にて受光した光強度に対応する電気信号の信号レベルと前記複数の第2の受光素子の各々にて受光した光強度に対応する電気信号の信号レベルとの差分であることを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。
前記流路部を透過した光路上において前記複数の受光素子の前段側に設けられ、前記複数の受光素子の各々と、前記流路部内の集光領域を長さ方向に複数分割した分割集光領域と、を対応付けるように構成された集光レンズを用いることを特徴とする請求項7記載の異物検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の異物検出装置が適用された塗布、現像装置1の概略図である。この塗布、現像装置1は、被処理体である基板例えばウエハWに夫々薬液を供給して処理を行うレジスト塗布モジュール1A、1B、反射防止膜形成モジュール1C、1D、保護膜形成モジュール1E、1Fを備えている。これらのモジュール1A〜1Fは、ウエハWに薬液を供給して処理を行う薬液供給モジュールである。塗布、現像装置1は、これらモジュール1A〜1FにてウエハWに各種の薬液を供給し、反射防止膜の形成、レジスト膜の形成、露光時にレジスト膜を保護するための保護膜の形成を順に行った後、例えば液浸露光されたウエハWを現像する。
【0012】
上記のモジュール1A〜1Fは薬液の供給路を備えており、塗布、現像装置1はこの供給路を流通する薬液中の異物を検出できるように構成されている。上記の供給路を流通した薬液は、ウエハWに供給される。従って、ウエハWへの薬液の供給と異物の検出とが互いに並行して行われる。異物とは、例えばパーティクル、気泡、及び薬液を構成する正常なポリマーよりも粒径が大きい異常なポリマーなどである。異物の検出とは具体的には、例えば所定の期間中に薬液の流路の所定の検出領域を流れる異物の総数と各異物の大きさの検出である。
【0013】
塗布、現像装置1には、光供給部2が設けられ、
図2は光供給部2の構成を示している。光供給部2は、レーザー光を出力する光源21と、分光路形成部であるスプリッタ22と、を備えており、スプリッタ22により光源21から出力されたレーザー光は6つに分けられ、6本のファイバー23を介してモジュール1A〜1Fに設けられる異物検出ユニット4に各々導光される。
図1では点線の矢印で、このように分光されるレーザー光を示している。
【0014】
モジュール1A〜1Fは略同様に構成されており、ここでは
図1に示したレジスト塗布モジュール1Aの概略構成について説明する。レジスト塗布モジュール1Aは、例えば11本のノズル11A〜11Kを備えており、そのうちの10本のノズル11A〜11JはウエハWに薬液としてレジストを吐出し、塗布膜であるレジスト膜を形成する。ノズル11KはウエハWにシンナーを吐出する。シンナーは、レジストが供給される前のウエハWに供給され、レジストの濡れ性を高めるプリウエット用の薬液である。
【0015】
ノズル11A〜11Jには薬液の供給路をなす薬液供給管12A〜12Jの下流端が接続され、薬液供給管12A〜12Jの上流端は、バルブV1を介して、レジストの供給源13A〜13Jに夫々接続されている。各レジストの供給源13A〜13Jは、例えばレジストが貯留されたボトルと、ボトルから供給されたレジストをノズル11A〜11Jに圧送するポンプと、を備えている。レジスト供給源13A〜13Jの各ボトルに貯留されるレジストの種類は互いに異なり、ウエハWには10種類のレジストから選択された1種類のレジストが供給される。
【0016】
ノズル11Kには薬液供給管12Kの下流端が接続され、薬液供給管12Kの上流端はバルブV1を介して、供給源13Kに接続されている。供給源13Kはレジストの代わりに上記のシンナーが貯留されることを除いて、供給源13A〜13Jと同様に構成されている。即ち、ウエハWを処理するにあたり、薬液供給管12A〜12Kを薬液が流れるタイミングは互いに異なる。薬液供給管12A〜12Kは可撓性を有する材質、例えば樹脂により構成され、後述するノズル11A〜11Kの移動を妨げないように構成されている。薬液供給管12A〜12Kにおけるノズル11A〜11KとバルブV1との間にはキュベット15A〜15Kが介設されている。キュベット15A〜15Kは、異物の測定用の流路部として構成され、その内部を通過する異物について検出される。キュベット15A〜15Kについては後に詳述する。
【0017】
図3ではレジスト塗布モジュール1Aについて、より詳しい構成の一例を示している。図中31、31はスピンチャックであり、各々ウエハWの裏面中央部を水平に吸着保持すると共に、保持したウエハWを鉛直軸回りに回転させる。図中32、32はカップであり、スピンチャック31、31に保持されたウエハWの下方及び側方を囲み、薬液の飛散を抑える。
【0018】
図中33は鉛直軸回りに回転する回転ステージであり、回転ステージ33上には、水平方向に移動自在で垂直な支柱34と、ノズル11A〜11Kのホルダ35とが設けられている。36は支柱34に沿って昇降自在な昇降部であり、37は昇降部36を支柱34の移動方向とは直交する水平方向に移動自在なアームである。アーム37の先端には、ノズル11A〜11Kの着脱機構38が設けられている。回転ステージ33、支柱34、昇降部36及びアーム37の協働動作により、各スピンチャック31上とホルダ35との間でノズル11A〜11Kが移動する。
【0019】
上記の回転ステージ33及びカップ32の側方に、移動するアーム37や支柱34に干渉しないように異物検出ユニット4が設けられている。この異物検出ユニット4と、上記の光供給部2と、後述の制御部6と、によって本発明の異物検出装置が構成されている。
図4は、この異物検出ユニット4の平面図を示している。異物検出ユニット4は、レーザー光照射部51と、受光部52と、流路アレイ16と、を備えている。上記のファイバー23の下流端は、コリメータ42を介してレーザー光照射部51に接続されており、コリメータ42はファイバー23から導光されたレーザー光を平行光としてレーザー光照射部51に導光する。ファイバー23は、この異物検出ユニット4内を引き回されている。
【0020】
例えば塗布、現像装置1の稼働中、光供給部2からは常時ファイバー23に光が供給され、後述するシャッタ41の光路の開閉によって、流路アレイ16へ光が供給された状態と、流路アレイ16へ光の供給が停止した状態とが切り替えられる。シャッタ41が、上記の遮蔽位置及び開放位置のうちの一方から他方へ移動する速度は、例えば100ミリ秒である。また、ファイバー23は、後述するレーザー光照射部51の移動を妨げないように可撓性を有している。
【0021】
流路アレイ16について、
図5の斜視図を参照して説明する。薬液の流路部をなす流路アレイ16は石英製であり、角形の横長のブロックとして構成され、上下方向に各々形成された11個の貫通口を備えている。各貫通口は流路アレイ16の長さ方向に沿って配列されており、各貫通口と当該貫通口の周囲の壁部とが上記のキュベット15A〜15Kとして構成されている。従って、キュベット15A〜15Kは起立したチューブとして構成されており、このキュベット15A〜15Kを構成する各貫通口を上方から下方へ向けて薬液が流れる。キュベット15A〜15Kの各貫通口を流路17A〜17Kとする。流路17A〜17Kは互いに同様に構成されており、既述のように薬液供給管12A〜12Kに各々介設される。
【0022】
流路17A〜17Kの配列方向を左右方向とすると、流路17A〜17Kの横断面は、左右方向及び前後方向に各辺が沿った長方形状に形成されている。各流路の17A〜17Kについて寸法の一例を示すと、左右方向の幅L1は2mm、前後方向の幅L2は200μm、高さH1は25mmである。また隣接する流路17間の幅L3は3mmである。
【0023】
図4に戻って説明を続ける。上記のレーザー光照射部51及び受光部52は、流路アレイ16を前後から挟んで互いに対向するように設けられる。
図4中43は、レーザー光照射部51と受光部52とを流路アレイ16の下方側から支持するステージであり、図示しない駆動機構によって左右方向に移動自在に構成されている。このようにステージ43が移動することによって、レーザー光照射部51はファイバー23から導光された光を流路17A〜17Kのうちの選択された一つの流路17に照射することができ、受光部52はそのように流路17に照射され、当該流路17を透過した光を受光する。つまり、薬液の流れ方向に対して交差するように流路17に光路が形成される。
【0024】
続いて、
図6を参照しながらレーザー光照射部51について説明する。説明の便宜上、レーザー光照射部51から受光部52へ向かう方向を後方とする。また、
図6では点線の矢印で光路を示している。レーザー光照射部51は光学系53を備えており、当該光学系53は、例えば集光部55によって構成されている。また、
図6では図示を省略しているが、
図4に示すようにレーザー光照射部51には、上記のシャッタ41が設けられている。
【0025】
上記のコリメータ42は、後方側に向けて水平方向にレーザー光を照射する。シャッタ41は、コリメータ42と光学系53との間の光路を遮蔽する遮蔽位置(
図4中に鎖線で表示している)と、当該光路から退避する開放位置(
図4中に実線で表示している)との間で移動し、当該光路を開閉する。
【0026】
集光部55は、コリメータ42から照射されたレーザー光をキュベット15に集光するように例えばレンズを含んでおり、このレンズとしては、例えばパウエルレンズまたはレーザーラインジェネレーターレンズと呼ばれるレンズが含まれる。この集光部55は、レンズ以外にも反射鏡やプリズムなどの部材を含んでいてもよい。また含まれるレンズは1つであってもよいし、複数であってもよい。ところで
図7は、レーザー光の進行中に、その光路の横断面が変化する様子を示している。この横断面は、光路の形成方向を横断する断面であり、さらに詳しく述べると、前後方向に見た当該光路の断面である。
図7の上段は、コリメータ42から集光部55に向かう光路の横断面を示しており、この横断面は例えば直径3mmの円形のスポットである。
【0027】
ところで、コリメータ42から照射されたレーザー光の上側半分を第1のレーザー光、下側半分を第2のレーザー光と呼ぶことにする、即ちレーザー光をキュベット15の薬液の流れ方向に見たときの一方側(上流側)、他方側(下流側)を夫々第1のレーザー光、第2のレーザー光と呼ぶことにすると、これら第1のレーザー光、第2のレーザー光は、後述する上段側受光素子45A、下段側受光素子45Bに夫々照射される。
図7の上段の円形のスポット中の点線は、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを区画する仮想の境界線を示している。なお、
図7の中段、下段は、後述するようにレーザー光照射部51から照射される光を示しているが、これらについても同様に、点線によって第1のレーザー光と第2のレーザー光との間の境界を示している。
【0028】
図7の中段は、集光部55から照射された光により形成される、キュベット15内における光路の横断面を示しており、当該横断面は長径が左右方向に沿った楕円形のスポットである。このように、集光部55は、薬液の流れ方向に対して薬液の流れ方向に直交する方向が長くなるように、レーザー光を扁平化する。そのように集光部55から照射される光の光路を
図8では概略的に表示している。この光路において、キュベット15の流路17に形成され、エネルギー密度が比較的高い領域が異物(図中にPとして表示している)の検出領域となる。つまり、薬液によって当該流路17を流れ、集光領域である当該検出領域に進入した異物Pに対して検出が行われる。
【0029】
図7で説明したようにキュベット15内のレーザー光のスポットは楕円形である。そして、光路方向(前後方向)に見たときに、このスポット内の中心部における横長の角形の領域が、上記の検出領域とされ、この検出領域の光が後述する受光素子45A、45Bに照射される。この検出領域を50とし、
図8では、この検出領域50にハッチングを付して示している。この検出領域50について、左右の幅L11は10μm〜200μm、この例では120μmである。高さH11は例えば1.88μmである。また、前後の幅L12は例えば15.6μmであり、このL12は、集光部55から照射されたレーザー光のレイリー長である。
【0030】
図9は、この検出領域50の左右方向のエネルギー分布を示すグラフである。グラフの横軸の各位置は、図中でグラフの上に示した光路の形成方向に見た検出領域50の左右の各位置に対応する。グラフの縦軸はエネルギーの大きさを示しており、縦軸の上方位置ほどエネルギーが大きい。このグラフに示すように、検出領域50の左右における各位置のエネルギー分布は概ね等しく、それによってエネルギー分布を示すグラフの波形が概ね矩形状になっている。このようなエネルギー分布を持つ横長の検出領域50を形成するのは、平面で見たときのキュベット15の流路17の面積に対する検出領域50の面積の割合を大きくし、流路17内を流れる異物Pの総数のうち検出される異物Pの数の割合を高くして、異物Pの検出精度を高くするためである。
【0031】
図6に戻って、受光部52について説明する。受光部52は光学系56を備えており、この光学系56は1つまたは複数の集光レンズにより構成される集光部57と、集光部57の後方側に設けられる光検出部58とにより構成されている。上記のようにレーザー光照射部51からキュベット15に照射されて、当該キュベット15を透過した光は集光部57により集光されて、光検出部58に照射される。集光部57は、上記の集光部55と同様に、レンズ以外にも反射鏡やプリズムなどの部材を含んでいてもよい。また、
図6に示すコリメータ42から光検出部58に至るまでの距離L4は、例えば100mm以下である。
図7の下段には、光検出部58上の光路の横断面を示している。
【0032】
光検出部58について、
図10の平面図を参照しながら説明する。光検出部58は、例えば各々フォトダイオードからなる64個の受光素子によって構成されている。受光素子は、例えば、2×32の行列をなすように互いに間隔をおいて配置されている。上側に配置された受光素子を上段側受光素子45A、下側に配置された受光素子を下段側受光素子45Bとすると、上記の第1のレーザー光の光路上、第2のレーザー光の光路上に、上段側受光素子45A、下段側受光素子45Bが夫々位置している。さらに詳しく述べると、複数の第1の受光素子である上段側受光素子45Aは、第1のレーザー光の受光領域において、当該第1のレーザー光の光路の横断面の長手方向に沿って配列され、複数の第2の受光素子である下段側受光素子45Bは、第2のレーザー光の受光領域において、当該第2のレーザー光の光路の横断面の長手方向に沿って配列されている。
【0033】
左右方向の同じ位置における上段側受光素子45A、下段側受光素子45Bは1つの組をなしている。この受光素子の組について、後方側に向かって見て左側から順に1チャンネル、2チャンネル、3チャンネル・・・32チャンネル(ch)として、チャンネル(ch)番号を付して示す場合が有る。また、1chの受光素子45A、45Bについて1番受光素子45A、45B、2chの受光素子45A、45Bについて2番受光素子45A、45B、3chの受光素子45A、45Bについて3番受光素子45A、45B・・・・32chの受光素子45A、45Bについて32番受光素子45A、45Bと記載する場合が有る
【0034】
異物検出ユニット4は、受光素子45A、45Bの各チャンネルに対応して各々設けられる計32個の回路部46を備えている。
図11を参照してこの回路部46について説明すると、回路部46は、受光素子45A、45Bの後段に夫々設けられるトランスインピーダンスアンプ(TIA)47A、47Bと、TIA47A、47Bの後段に設けられる差分回路48と、を備えている。受光素子45A、45Bは受光する光の強度に応じた電流をTIA47A、47Bに供給し、TIA47A、47Bは各々供給された電流に対応する電圧信号を差分回路48に出力する。差分回路48は、TIA47Aからの電圧信号とTIA47Bからの電圧信号との差分の電圧信号を後述の制御部6に出力する。
【0035】
制御部6は、そのように回路部46の差分回路48から出力される信号に基づいて異物の検出を行う。このように受光素子45A、45Bからの各出力の差分に対応する信号に基づいて異物の検出を行うのは、受光素子45A、45Bで共通に検出されるノイズを除去するためである。この回路部46についても、接続される受光素子45A、45Bのチャンネル番号と同じチャンネル番号を付して示す場合が有る。
【0036】
キュベット15の流路17を上側から下側に向けて薬液(レジストまたはシンナー)が流れ、この薬液の流れに乗って、
図12に示すように検出領域50に異物Pが進入すると、この検出領域50における異物Pの位置に応じた位置に干渉縞Sが発生する。それによって、この干渉縞Sの位置に対応するチャンネルの上段側受光素子45A及び下段側受光素子45Bが受光する光の強度が変化し、この変化に対応する電流信号が出力される。従って、この信号が出力される回数に基づいて異物Pの個数をカウントすることができる。また、このように異物Pによって上段側受光素子45A及び下段側受光素子45Bが受光する光の強度の変化の大きさは異物Pの粒径の大きさに対応しており、従って上段側受光素子45A及び下段側受光素子45Bから出力される電流信号の強度には異物Pの粒径についての情報が含まれるので、異物の粒径についても検出することができる。従って、検出された異物についての分級を行うことができる。つまり検出された異物が、粒子径について予め設定された複数の範囲のうちのどの範囲に含まれるかという情報及び各範囲における異物の数がいくつであるかという情報を取得することができる。
【0037】
受光素子45と検出領域50との関係について、
図13の模式図を用いてさらに詳しく説明する。この
図13ではキュベット15Aと、レーザー光照射部51及び受光部52を構成する各部とを上から見て示している。また、図中の2点鎖線の矢印は、コリメータ24の上側から出力された第1のレーザー光の光路を示している。キュベット15Aの流路17内の第1のレーザー光の光路において前方側に向かって見て集光領域である検出領域50を長さ方向に複数分割した分割集光領域の各々を、左端から順番に1番領域〜32番領域と呼ぶ。
図13では点線で隣接する分割集光領域の境界を示しており、L21で示す1つの分割集光領域の左右の幅は、例えば1μm〜10μmである。
【0038】
集光部57を構成する集光レンズは、1番領域と1番受光素子45Aとが1対1に対応し、2番領域と2番受光素子45Aとが1対1に対応し、3番領域と3番受光素子45Aとが1対1に対応し、同様に順番に同じ番号の領域と素子とが1対1に対応するように構成されている。即ち、1番受光素子45Aを例に挙げると、1番受光素子45Aには1番領域で異物と反応して生じた反応光(反応によって摂動を受けた光)のほぼ全部が受光され、2番受光素子45Aには2番領域で異物と反応して生じた反応光のほぼ全部が受光される。このように受光が行われるように、各番号の領域を透過したレーザー光の例えば85%以上が対応する番号の素子に受光される。例えば各番号の領域を透過したレーザー光が対応する番号の受光素子45Aだけに集光されずに他の番号の受光素子45Aに跨って入光されると、受光素子45Aに流れる電流レベルが低くなり、検出精度が低くなる。
【0039】
流路部内の第1のレーザー光の光路(上段側光路)について、集光領域を長さ方向に複数分割した分割集光領域の各々と、対応する受光素子45Aとの間の光路について述べたが、第2のレーザー光の光路(下段側光路)についても同様の関係にある。即ち、1番領域と1番受光素子45Bとが1対1に対応するといった具合に、順番に同じ番号の領域と受光素子45Bとが1対1に対応するように構成されている。なお、キュベット15Aに検出領域50が形成される場合の光路を例示したが、他のキュベット15B〜15Kに検出領域50が形成される場合も、同様に光路が形成される。
【0040】
このような構成によって、
図12で説明した干渉縞Sの発生に対応する信号は、基本的にいずれか一つのチャンネルの受光素子45A、45Bから発生する。なお、隣接する分割集光領域の境界で干渉縞が発生した場合には、隣接する2つのチャンネルの受光素子から干渉縞Sの発生に対応する信号が出力されることになり、1つの異物に対して異物の数が2つとして計数されるが、受光素子間のギャップ(不感領域)は受光素子のサイズに比較して非常に小さいので、そのように境界で干渉縞が発生する割合に比べて、いずれかの分割集光領域のみに干渉縞が発生する割合の方が極めて大きい。従って、そのように1つの異物を2つとして計数されることが、検出の精度を損なうものでは無い。
【0041】
ところで、既述の32チャンネルの受光素子45A、45Bを設ける代わりに、横長の受光素子45A、45Bを用いてチャンネル数を1つのみ設けることが考えられる。しかし、そのような構成とすると、1つあたりの受光素子が受けるレーザー光のエネルギーが大きくなってしまう。そして、受光素子に供給されるレーザー光の出力が大きくなるほど、当該レーザー光のフォトンの揺らぎに起因するショットノイズが増大し、S/Nが低下してしまうことが知られている。つまり、上記のように受光素子45A、45Bのチャンネルを複数設けることで、一つの受光素子に供給されるエネルギーを抑えることができ、それによってショットノイズに起因するS/Nの低下を抑え、異物の検出精度を高くすることができる。
【0042】
受光素子45A、45Bのチャンネルを複数としている他の理由について説明する。レジスト塗布モジュール1Aで異物が測定されるレジスト及びシンナーのうち、レジストにはポリマーが含まれている。上記のようにこのポリマーとしては、異物ではない粒径が比較的小さい正常なポリマーと、異物である粒径が比較的大きな異常なポリマーとが有る。正常なポリマーが検出領域50を流れると受光素子45A、45Bが受ける光の強度が僅かに変化し、受光素子45A、45Bからの出力信号にはノイズが含まれることになる。そして、受光素子45A、45Bによって検出が行われる領域を流れる正常なポリマーの数が多くなるほど、このノイズのレベルが大きくなり、S/Nが低下して異物の検出精度が低下してしまう。
【0043】
従って、上記のように受光素子45A、45Bのチャンネルを1つだけ設けて、検出領域50全体を流れる異物を検出しようとすると、受光素子45A、45Bからの出力信号に含まれるノイズのレベルが高くなり、異物の検出が困難になってしまう。それに対して
図13で説明したように受光素子45A、45Bのチャンネルを複数設け、各チャンネルで検出領域50のうちの互いに異なる分割集光領域について検出を行う構成では、そのように検出領域50が分割されることで、1つの分割集光領域を流れる正常なポリマーの数が抑えられ、それによって各受光素子45からの出力信号に含まれるノイズのレベルを抑えることができる。つまり、受光素子45のチャンネルを複数とすることで、正常なポリマーに起因するS/Nの低下を抑え、異物の検出精度を高くすることができる。このように異物の検出精度を高くするためには、検出領域50はより多くの数の分割集光領域に分割され、より多くのチャンネルの受光素子45で検出を行うことが好ましい。ただし分割集光領域の数及び受光素子45のチャンネル数が2以上であれば、本発明の権利範囲に含まれる。
【0044】
続いて、塗布、現像装置1に設けられる異物検出部である制御部6(
図1を参照)について説明する。制御部6は例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、各モジュールでのウエハWの処理、及び上記のように受光素子の各チャンネルから出力される信号に基づいた異物の検出、後述する搬送機構による塗布、現像装置1内でのウエハWの搬送などの各動作が行われるように命令(ステップ群)が組まれたプログラムが格納されている。当該プログラムによって、制御部6から塗布、現像装置1の各部に制御信号が出力されることで、上記の各動作が行われる。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0045】
図1に示したレジスト塗布モジュール1A以外のモジュールについても説明しておくと、レジスト塗布モジュール1Bは、モジュール1Aと同様に構成されている。反射防止膜形成モジュール1C、1D及び保護膜形成モジュール1E、1Fは、例えばレジスト及びシンナーの代わりに反射防止膜形成用の薬液、保護膜形成用の薬液を供給することを除いて、モジュール1A、1Bと同様に構成されている。反射防止膜形成用の薬液はレジストと同様にポリマーを含有している。例えばモジュール1C〜1Fにおいても、モジュール1A、1Bと同様に複数の薬液から、選択された一つの薬液がウエハWに供給される。
【0046】
続いて
図14のタイミングチャートを参照しながら、上記のレジスト塗布モジュール1Aにおいて行われるウエハWの処理及び異物の検出について説明する。このタイミングチャートでは、13A〜13Kのうちの一の供給源13におけるポンプの圧力が整定されるタイミング、11A〜11Kのうちの一の供給源13に対応する一のノズル11がアーム37により移動するタイミング、12A〜12Kのうちの一の供給源13に対応する供給管12のバルブV1が開閉するタイミング、レーザー光照射部51からレーザー光が照射される状態と当該レーザー光の照射が停止した状態とが切り替えられるタイミング、制御部6により光検出部58の各チャンネルからの信号が取得されるタイミングを夫々示している。上記のレーザー光が照射される状態と照射が停止した状態とが切り替えられるタイミングは、異物検出ユニット4のシャッタ41が開閉するタイミングとも言える。
【0047】
先ず、塗布、現像装置1に設けられる後述の搬送機構F3により、ウエハWがスピンチャック31上に搬送され、当該スピンチャック31に保持される。アーム37によりシンナーを供給するノズル11KがウエハW上に搬送されると共に、供給源13Kのポンプがシンナーの吸引を行い、それによって所定の圧力となるように整定が開始される(時刻t1)。例えばこのノズルの移動及びポンプの動作に並行して、レーザー光照射部51及び受光部52がキュベット15Kを挟む位置に移動する。このとき異物検出ユニット4のシャッタ41は閉じられている。
【0048】
ノズル11KがウエハW上で静止し(時刻t2)、続いて供給管12KのバルブV1が開かれ、ポンプからシンナーがノズル11Kへ向けて所定の流量で圧送されると共にシャッタ41が開かれ、レーザー光照射部51からレーザー光が照射され、キュベット15Kを透過して受光部52に供給される。即ち、キュベット15Kの流路17Kに、
図8、
図9で説明した光路による検出領域50が形成される(時刻t3)。そして、圧送されたシンナーはキュベット15Kを通過し、ノズル11KからウエハWの中心部へ吐出される。バルブV1の開度が上昇して、所定の開度になると開度の上昇が停止する(時刻t4)。然る後、制御部6による
図11で説明した各チャンネルの回路部46からの出力信号の取得が開始される(時刻t5)。
【0049】
シンナーと共に異物が流路17Kを流れ、検出領域50を上方から下方に流れて干渉縞が発生すると、異物が流れた箇所に対応するチャンネルの受光素子45Aまたは45Bから、この干渉縞に対応する信号が出力され、回路部46からの出力信号のレベルが変化する。その後、制御部6による各チャンネルの受光素子45からの出力信号の取得が停止し(時刻t6)、続いてシャッタ41が閉じられてレーザー光照射部51からの光照射が停止すると共に供給管12KのバルブV1が閉じられ(時刻t7)、ウエハWへのシンナーの吐出が停止する。そして、ウエハWが回転し、遠心力によりシンナーがウエハWの周縁部に展伸される。
【0050】
上記の時刻t5〜t6間において、各チャンネルの回路部46から取得された出力信号のレベルが予め設定された閾値に対して比較され、当該閾値よりも出力信号のレベルが大きくなったときには干渉縞が発生したものとして、受光素子のチャンネル毎の異物の計数が行われる。従って、この閾値はシンナー中の異物により干渉縞が発生したときの電気信号の信号レベルに対応する閾値である。また、このように閾値を超えたときの出力信号に基づいて、異物の粒径が測定されて、分級が行われる。つまり、粒径について設定された複数の範囲毎に、異物の数がカウントされる。
【0051】
チャンネル毎に検出された異物の数は合計され、検出領域50全体で検出された異物の数(異物の総数とする)が算出される。然る後、異物の総数がしきい値以上であるか否かの判定と、所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であるか否かの判定とが行われる。そして、上記の異物の総数がしきい値以上であると判定された場合または所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であると判定された場合、アラームが出力されると共に、モジュール1Aの動作が停止し、ウエハWの処理が中止される。このアラームは、具体的には、例えば制御部6を構成するモニターへの所定の表示や、制御部6を構成するスピーカーからの所定の音声の出力である。また、このアラームの出力には、例えば15A〜15Kのうち異常が検出されたキュベット15をユーザーに報知するための表示や音声の出力が含まれる。異物の総数がしきい値以上ではないと判定され、且つ所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上では無いと判定された場合、アラームの出力は行われず、モジュール1Aの動作の停止も行われない。なお、上記の各演算及び各判定は、計数部をなす制御部6により行われる。
【0052】
続いて、ウエハWへのレジストの吐出及びこのレジスト中の異物の検出が、上記のシンナーの吐出及びシンナー中の異物の検出と同様に、
図14のタイミングチャートに沿って行われる。例えば供給源13AのレジストがウエハWに吐出されるものとして説明すると、シンナーが塗布されたウエハW上にノズル11Aが移動すると共に、供給源13Aのポンプの圧力が整定される(時刻t1)。その一方で、レーザー光照射部51及び受光部52がキュベット15Aを挟む位置に移動する。ノズル11Aが静止し(時刻t2)、その後、供給管12AのバルブV1が開かれ、ポンプからレジストがノズル11Aへ向けて圧送されると共にシャッタ41が開かれ、キュベット15Aを介してレーザー光照射部51と受光部52との間に光路による検出領域50が形成される(時刻t3)。
【0053】
レジストがキュベット15Aを通過し、ウエハWの中心部へ吐出され、バルブV1の開度が所定の開度になると(時刻t4)、受光素子45からの出力信号の取得が開始される(時刻t5)。出力信号の取得が停止した後(時刻t6)、シャッタ41が閉じられると共にバルブV1が閉じられ、ウエハWへのレジストの吐出が停止する(時刻t7)。ウエハWが回転し、遠心力によりレジストがウエハWの周縁部に展伸されて、レジスト膜が形成される。そのようにレジスト膜が形成される一方で、ウエハWにシンナーを供給する場合と同様に、時刻t5〜t6間に取得された出力信号に基づいて異物の総数及び異物の粒径について算出されこの異物の総数及び異物の粒径に基づいて、アラームを出力してモジュール1Aの動作を停止するか、あるいはアラームを出力せずにモジュール1Aの動作を継続するかが決定される。
【0054】
ウエハWに供給源13A以外に含まれるレジストが吐出される場合も、供給源13Aとは異なる供給源のポンプが動作すること、供給管12Aとは異なる供給管12AのバルブV1が開閉すること、キュベット15Aとは異なるキュベットに光が照射されることを除いて、レジスト塗布モジュール1Aにおいて供給源13Aのレジストが塗布される場合と同様の動作が行われる。
【0055】
上記の
図14のチャートで説明した異物の検出では、キュベット15Kの液流が安定した状態での異物の検出を行うことで測定精度を高めるために、上記のようにバルブV1を開閉するタイミングと、制御部6が出力信号の取得を開始及び終了するタイミングとが互いにずれている。例えば上記の時刻t4〜t5間は10ミリ秒〜1000ミリ秒であり、時刻t6〜t7間は10〜100ミリ秒である。代表してモジュール1Aの動作について説明したが、他のモジュール1B〜1Fについてもモジュール1Aと同様に、ウエハWへの薬液の供給及び異物の検出が行われる。
【0056】
この塗布、現像装置1に設けられるモジュール1A〜1Fによれば、光供給部2からファイバー23によって供給されるレーザー光をキュベット15における薬液の流れ方向に交差する方向に長くなるように扁平化する光学系53を備えたレーザー光照射部51と、キュベット15の後方側に光路の横断面における長手方向に配列された複数の受光素子45のチャンネルと、が設けられている。そして、受光素子45のチャンネルの各々にて受光した光の強度に対応する電気信号の信号レベルに応じた信号レベルと、所定の閾値とに基づいて異物を検出するようにしている。従って、キュベット15の流路17を薬液の流れ方向に見て、当該流路17内に形成される集光領域である検出領域50の面積を比較的大きくすることができ、且つ受光素子45からの出力信号にショットノイズや薬液中のポリマーに起因するノイズが含まれることを抑制することができる。その結果として、粒径が小さな異物を精度よく検出することができる。
【0057】
また、このように異物の検出を行うことで、ウエハWに供給する薬液の清浄度が監視される。そして薬液の清浄度が所定の基準より低下したときには、上記のようにモジュールの動作が停止され、それによって当該モジュールで後続のウエハWの処理が中止される。従って、当該後続のウエハWに清浄度が低い薬液が供給されることを防ぐことができるので、歩留りが低下することを防ぐことができる。さらに、薬液供給管12A〜12Kのうち、異物が検出された供給管12が特定されるため、塗布、現像装置1のユーザーは、モジュールの動作停止後のメンテナンスや修理を速やかに行うことができる。従って、モジュールの動作が停止している時間が長くなることを抑えることができ、その結果として、塗布、現像装置1における半導体製品の生産性の低下を抑えることができる。
【0058】
続いて、塗布、現像装置1の具体的な構成例について、
図15、
図16を参照しながら説明する。
図15、16は夫々当該塗布、現像装置1の平面図、概略縦断側面図である。この塗布、現像装置1は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックD3に露光装置D4が接続されている。キャリアブロックD1は、キャリアCを塗布、現像装置1内に対して搬入出し、キャリアCの載置台71と、開閉部72と、開閉部72を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構73とを備えている。
【0059】
処理ブロックD2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第6の単位ブロックE1〜E6が下から順に積層されて構成されている。各単位ブロックE1〜E6は互いに区画されると共に、搬送機構F1〜F6を夫々備え、各単位ブロックEにおいて互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。
【0060】
ここでは単位ブロックのうち代表して第3の単位ブロックE3を、
図15を参照しながら説明する。キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって搬送領域74が延びるように形成されており、当該搬送領域74には、上記の搬送機構F3が設けられている。また、キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって見て、搬送領域74の左側には棚ユニットUが配置されている。棚ユニットUは、加熱モジュールを備えている。また、キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって見て搬送領域74の右側には、上記のレジスト塗布モジュール1A、保護膜形成モジュール1Eが、搬送領域74に沿って設けられている。
【0061】
第4の単位ブロックE4は第3の単位ブロックE3と同様に構成されており、レジスト塗布モジュール1B及び保護膜形成モジュール1Fが設けられている。単位ブロックE1、E2には、レジスト塗布モジュール1A、1B及び保護膜形成モジュール1E、1Fの代わりに反射防止膜形成モジュール1C、1Dが夫々設けられることを除き、単位ブロックE3、E4と同様に構成される。単位ブロックE5、E6は、ウエハWに現像液を供給してレジスト膜を現像する現像モジュールを備える。現像モジュールは薬液としてウエハWに現像液を供給することを除いてモジュール1A〜1Fと同様に構成されている。
【0062】
処理ブロックD2におけるキャリアブロックD1側には、各単位ブロックE1〜E6に跨って上下に伸びるタワーT1と、タワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構75とが設けられている。タワーT1は互いに積層された複数のモジュールにより構成されており、単位ブロックE1〜E6の各高さに設けられるモジュールは、当該単位ブロックE1〜E6の各搬送機構F1〜F6との間でウエハWを受け渡すことができる。これらのモジュールとしては、各単位ブロックの高さ位置に設けられた受け渡しモジュールTRS、ウエハWの温度調整を行う温調モジュールCPL、複数枚のウエハWを一時的に保管するバッファモジュール、及びウエハWの表面を疎水化する疎水化処理モジュールなどが含まれている。説明を簡素化するために、前記疎水化処理モジュール、温調モジュール、前記バッファモジュールについての図示は省略している。
【0063】
インターフェイスブロックD3は、単位ブロックE1〜E6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えており、タワーT2とタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である搬送機構76と、タワーT2とタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である搬送機構77と、タワーT2と露光装置D4の間でウエハWの受け渡しを行うための搬送機構78が設けられている。
【0064】
タワーT2は、受け渡しモジュールTRS、露光処理前の複数枚のウエハWを格納して滞留させるバッファモジュール、露光処理後の複数枚のウエハWを格納するバッファモジュール、及びウエハWの温度調整を行う温調モジュールなどが互いに積層されて構成されているが、ここでは、バッファモジュール及び温調モジュールの図示は省略する。
【0065】
処理ブロックD2の上方に既述の光供給部2が設けられ、光供給部2から単位ブロックE1〜E4のモジュール1A〜1Fに接続されるように、ファイバー23が下方へ向けて引き回されている。また、処理ブロックD2の上方には上記の制御部6を構成し、既述の各チャンネルの回路部46からの出力信号に基づいたチャンネル毎の異物の数の算出、異物の総数の算出及び各異物の粒径の算出を行う演算部61が設けられており、図示しない配線により演算部61とモジュール1A〜1Fとが接続されている。
【0066】
この塗布、現像装置1におけるウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは、キャリアCから搬送機構73により、処理ブロックD2におけるタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送される。この受け渡しモジュールTRS0からウエハWは、単位ブロックE1、E2に振り分けられて搬送される。例えばウエハWを単位ブロックE1に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックE1に対応する受け渡しモジュールTRS1(搬送機構F1によりウエハWの受け渡しが可能な受け渡しモジュール)に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。またウエハWを単位ブロックE2に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックE2に対応する受け渡しモジュールTRS2に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。これらのウエハWの受け渡しは、搬送機構75により行われる。
【0067】
このように振り分けられたウエハWは、TRS1(TRS2)→反射防止膜形成モジュール1C(1D)→加熱モジュール→TRS1(TRS2)の順に搬送され、続いて搬送機構75により単位ブロックE3に対応する受け渡しモジュールTRS3と、単位ブロックE4に対応する受け渡しモジュールTRS4とに振り分けられる。
【0068】
このようにTRS3(TRS4)に振り分けられたウエハWは、TRS3(TRS4)→レジスト塗布モジュール1A(1B)→加熱モジュール→保護膜形成モジュール1E(1F)→加熱モジュール→タワーT2の受け渡しモジュールTRSの順で搬送される。然る後、このウエハWは、搬送機構76、78により、タワーT3を介して露光装置D4へ搬入される。露光後のウエハWは、搬送機構78、77によりタワーT2、T4間を搬送されて、単位ブロックE5、E6に対応するタワーT2の受け渡しモジュールTRS15、TRS16に夫々搬送される。然る後、加熱モジュール→現像モジュール→加熱モジュール→受け渡しモジュールTRS5(TRS6)に搬送された後、搬送機構73を介してキャリアCに戻される。
【0069】
ところで、上記の単位ブロックE5,E6の現像モジュールに本発明を適用し、現像液中の異物の検出を行ってもよい。その他に、例えばウエハWに絶縁膜を形成するための薬液供給モジュール(薬液供給装置)や、ウエハWを洗浄するための薬液である洗浄液を供給する洗浄装置、複数のウエハWを互いに貼り合わせるための接着剤を薬液としてウエハWに供給する装置などの各薬液供給装置に本発明を適用することができる。なお、上記の洗浄装置においては、例えば純水、IPA(イソプロピルアルコール)、またはSC1と呼ばれるアンモニア水及びフッ酸の混合液が洗浄液としてウエハWに供給される。そこで、1つの流路アレイ16を構成する複数のキュベット15には、これら純水、IPA、SC1が夫々通流する構成であってもよい。また、1つの流路アレイ16の各キュベット15には、1つのモジュールで使用される薬液のみが通流することに限られず、例えばレジスト塗布モジュール1Aで使用されるレジストと、保護膜形成モジュール1Eで使用される保護膜形成用の薬液とが、1つの流路アレイ16の各キュベット15を通流するように構成されていてもよい。
【0070】
さらに、上記のように検出領域50を通流する異物の総数がしきい値以上であると判定された場合、及び/または、所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であると判定された場合の対処としては、アラームの出力及びモジュールの動作停止に限られない。例えば、そのように判定がなされたキュベット15に対応する薬液供給源13から、薬液を供給管12の洗浄液としてノズル11に供給し、薬液供給管12に含まれる異物をノズル11から除去するようにする。即ち、自動で供給管12が洗浄されるようにする。この動作後、後続のウエハWに対して処理が再開されるようにしてもよい。
【0071】
そして、このように供給管12の洗浄を行う場合、洗浄液のノズルへの供給中、ウエハWへ薬液を供給して処理を行う際と同様に、異物の検出を行い、制御部6が、異物の総数がしきい値以上であるか否かの判定と、所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であるか否かの判定を行うようにしてもよい。そして、これらの判定結果によって、制御部6が、薬液供給管12の洗浄を継続して行うか、終了するかの決定を行うようにしてもよい。このような構成によって、異常となったモジュールを速やかに使用可能な状態に回復させることができる。また、例えば装置を使用休止した後に再使用する際や組立てた後に、このような供給管12の洗浄を行うようにしてもよい。その場合には、比較的大きな粒径を持つ異物が減少してモジュールが使用可能になる時点を把握することができるので、モジュールによるウエハWの処理を速やかに開始することができる。
【0072】
また、本発明は、薬液供給装置に適用されることに限られない。例えば流路アレイ16に、薬液が通流するキュベット15とは別の気体通流用のキュベット15を設ける。そして、塗布、現像装置1における搬送領域74などのウエハWが搬送される領域の雰囲気を吸引ポンプなどにより、当該気体通流用のキュベット15に供給できるようにする。ウエハWが搬送される領域には、レジスト塗布モジュール1AなどのウエハWが処理される領域も含まれる。そして、薬液中の異物を検出する場合と同様に、気体通流用のキュベットを気体が通流中に、当該キュベットに光路を形成して異物の検出を行う。従って、本発明は、ウエハWに供給される流体に含まれる異物を検出することができる。
【0073】
上記のようにウエハの搬送雰囲気を形成する気体の他にウエハWの処理を行う気体中の異物の検出を行ってもよい。例えば、上記の現像モジュールにおいて、ウエハWへ現像液を供給し、表面洗浄用の純水を供給した後に、ノズルからウエハW表面を乾燥させるためのN
2(窒素)ガスが供給される。このノズルへの供給路を流れるN
2ガスに含まれる異物の検出を、上記のレジストに含まれる異物の検出と同様に行ってもよい。
【0074】
なお、各キュベット15は直線上に配置されることに限られず、曲線上に配置されるようにしてもよい。また、キュベット15毎にレーザー光照射部51及び受光部52を設けてもよい。ただし、上記のようにキュベット15の配列方向にレーザー光照射部51及び受光部52が移動して、複数のキュベット15に対してレーザー光照射部51及び受光部52が共用されることで、レーザー光照射部51及び受光部52の大型化を防ぐことができるので好ましい。また、上記の例では、所定の期間にキュベットを流れる異物の計数が行われるようにしているが、そのように計数を行わず、異物の有無のみが検出される場合も本発明の権利範囲に含まれる。なお、既述した各構成例は、互いに組み合わせたり置換したり変形したりすることができる。
【0075】
(評価試験)
続いて、本発明に関連して行われた評価試験について説明する。
評価試験1
評価試験1−1として上記の異物検出ユニット4の1つのキュベット15に、異物が含まれている割合及び当該異物の粒径が既知の試験液を供給し、キュベット15を流れる全ての粒子に対して検出される粒子の割合(計数効率)を調べた。ただし、この異物検出ユニット4におけるレーザー光照射部51の光学系53は、キュベット15内の集光領域における光路の横断面が1.2μmの概ね真円のスポットとなるように構成されている。上記の試験液としては、含まれている異物の粒径が、各々60nm、46nm、29nmである3種類の試験液を用い、上記の計数効率は試験液ごとに測定した。
【0076】
また、評価試験1−2として、キュベット15内の集光領域における光路の横断面のスポットが発明の実施形態で示したように楕円形になるように光学系53を構成した他は、評価試験1−1と同様の条件で計数効率を調べた。この楕円形のスポットの長径は40μm、短径は1.2μmである。このスポットにおける単位面積あたりのエネルギー密度は各箇所で同一になるようにレーザー光照射部51の光学系53が構成されている。
【0077】
評価試験1−1において、異物の粒径が60nm、46nm、29nmである試験液を用いたとき、計数効率は夫々0.02%、0.004%、0.0003%であった。評価試験1−2において、異物の粒径が60nm、46nm、29nmである試験液を用いたとき、計数効率は夫々1%、0.2%、0.002%であった。この結果から、発明の実施の形態で説明したように横長の検出領域50が形成されるように光学系53を構成することで、異物の計数効率を高くすることができるので、異物の測定精度を高くすることができることが分かる。
【0078】
評価試験2
評価試験2として異物検出ユニット4において、含まれるポリマーの濃度が互いに異なる薬液をキュベット15に供給し、各チャンネルの回路部46から出力される信号強度を測定した。この異物検出ユニット4では、発明の実施の形態で説明したように、キュベット15内の集光領域における光路の横断面が、左右方向に沿った長径を持つ楕円形のスポットとなるようにレーザー光照射部51の光学系53が構成されている。ただし、このスポット内の各部ではエネルギー分布に比較的大きな差が有り、スポットの中心部に向かうほどエネルギーが高いという点で既述の構成例と異なっている。つまり、
図13で説明した検出領域50中の各分割集光領域間で、エネルギーの分布が異なる。薬液としては、所定の濃度のポリマーを含有するレジストと、ポリマーであるポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を夫々5%、1.25%、0.5%、0%含有する第1の薬液、第2の薬液、第3の薬液、第4の薬液と、を用いた。上記の信号強度の測定は、使用する薬液毎に行った。
【0079】
図17のグラフは、この評価試験2の結果を示している。グラフの横軸は回路部46のチャンネル番号を示しており、グラフの縦軸は各回路部46から出力された信号強度を示している。このグラフより、ポリマーが含まれるレジスト及び第1〜第3の薬液を用いた場合において、分割集光領域におけるエネルギーが低いほど、当該分割集光領域に対応するチャンネルの回路部46から出力される信号強度が低くなる傾向があることが分かる。また、第1〜第4の薬液を用いた場合の結果から、薬液に含まれるポリマーの割合が大きくなるほど、チャンネル間における信号強度の差が大きくなることが分かる。
【0080】
検出対象となる異物の粒径が小さいほど、この異物によって回路部46から出力される検出信号の強度は小さくなる。従って、この評価試験2で出力信号の強度が比較的低いチャンネルでは、より異物の粒径が小さい薬液を用いた場合には、異物の検出を行えないおそれが有る。そこで、発明の実施の形態で説明したように、スポット中の各部のエネルギー分布の差が抑えられるようにレーザー光照射部51の光学系53を構成し、さらに横長の楕円形の中心部を検出領域50として、
図9で説明したように検出領域50内の左右方向でエネルギー分布が略均一になる、即ち各分割集光領域間でエネルギーが略均一になるように光学系53を構成することが有効である。
【0081】
ところで、この
図17のグラフについてさらに考察する。上記のように当該グラフは、受光素子45のチャンネル毎に、ポリマーを含む各種の薬液から検出された当該ポリマーの検出信号強度を示している。この各薬液がキュベット15を流れるとき、各分割集光領域を通過するポリマーのサイズは、各分割集光領域間で概ね同一となるはずであるが、
図17のグラフに示されるように、検出された信号強度はチャンネル毎に異なっている。
【0082】
キュベット15内の集光領域における光路の横断面は、上記のように分割集光領域の配列方向を長径とする楕円である。
図17のグラフから、この楕円においてエネルギー密度が高い中心部に対応するチャンネルからは、エネルギー密度が低い楕円の周縁部に対応するチャンネルに比べて、より大きな強度の信号が出力されていることが分かる。このように信号が出力されることから、当該楕円の中心部に対応するチャンネルの最小可測粒径は、楕円の周縁部に対応するチャンネルの最小可測粒径よりも小さくなることが考えられる。
【0083】
各チャンネルにおいて均一で精度の高い検出を行い、測定の精度を高くするためには、このようなチャンネル間でのばらつきを避ける必要が有る。そのためには、上記の楕円の長径方向のエネルギー密度を均一化することが必要になる。つまり、分割集光領域のいずれにおいても比較的高く、適切なエネルギー密度を有するようにすることが必要になる。上記のパウエルレンズを含む集光部55はそのような集光を行えるように構成されている。
【0084】
ところで、この
図17のグラフから、薬液中に含まれるポリマーの濃度が高いほど検出信号強度が大きくなっていることが分かる。これは、薬液中に含まれるポリマーの濃度が高いほど、正常なポリマーに起因するバックグラウンドノイズ(ノイズフロア)が大きくなることを示す。つまり、受光素子45のチャンネルに対応する分割集光領域を流れる正常なポリマーの数が多いほど、ノイズフロアが上昇する。従って、受光素子45のチャンネル数を増やし、
図13を用いて説明したように1つの受光素子45のチャンネルに対応する分割集光領域を流れる正常なポリマーの数を減らすようにする。それによって、ノイズフロアが低減され、S/Nを向上させることができる。
【0085】
評価試験3
評価試験3として、発明の実施の形態で説明した異物検出ユニット4のキュベット15に、29nmを中心粒径として所定のばらつきを有する異物を多数含む試験液を供給し、当該異物についての検出を行った。
図18のグラフは、この検出の際に1つのチャンネルの回路部46から出力された信号の波形を示しており、グラフの横軸は時間(単位:μ秒)、グラフの縦軸は信号電圧(単位:V)である。グラフ中13μ秒〜14μ秒にて出現している比較的大きなピークを持つ波形は、異物によって発生した干渉縞に起因する波形である。
図19のグラフは、各チャンネルの回路部46から得られる波形について、ノイズフロアよりも大きなピークの値をプロットしたものである。
図19のグラフの横軸、縦軸は、
図18のグラフと同様に時間、信号電圧を夫々示している。グラフに示すように付されたプロットは多数であった。なおグラフ中の鎖線は上記のノイズフロアを示している。
【0086】
この評価試験3の結果から、異物検出ユニット4によれば、粒径が29nmと、極めて小さい異物について、検出が可能であることが確認された。なお、粒径が46nmの異物を含む試験液、粒径が60nmの異物を含む試験液を用いて評価試験3と同様の試験を行っているが、異物の検出が可能であることが確認されている。