(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618390
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】コルゲート型円偏波発生器
(51)【国際特許分類】
H01P 1/17 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
H01P1/17
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-39764(P2016-39764)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-158040(P2017-158040A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】柏 吉忠
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−006237(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/182243(WO,A1)
【文献】
実開昭58−161303(JP,U)
【文献】
実公昭48−014743(JP,Y1)
【文献】
英国特許出願公開第02044012(GB,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0170571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/17
H01P 1/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配列の突起の先端の包絡線が指数関数曲線に近似する形状とされたコルゲートを管内に形成した矩形導波管において、
上記コルゲートが形成された面に垂直な管内の面に、入出力部開口幅よりも指数関数曲線に近似する形状で小さくなる絞り部を設けたことを特徴とするコルゲート型円偏波発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円偏波発生器、特に超小型地球局を用いた衛星通信等に利用され、コルゲートを設けた矩形導波管により円偏波を発生させるコルゲート型円偏波発生器の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星と超小型地球局(VSAT)との間の衛星通信において、円偏波が利用される。例えばこの種の衛星通信では、アップリンク用周波数として30GHz帯、ダウンリンク用周波数として20GHz帯を使用し、超小型地球局側に送受信共用の矩形導波管からなる円偏波発生器が搭載される。
従来の円偏波発生器としては、導波管にコルゲートと呼ばれる連続した突起を設けた構造としたものや、金属ポスト、櫛型部品、金属板部品等の突起物を導波管内に挿入したもの等があり、これらは簡易構造で送受共用を実現した円偏波発生器として存在する。
【0003】
図4に、従来の円偏波発生器の構成が示されており、
図4のように、矩形導波管11の内部の上下面に、複数の櫛状突起の先端包絡線が指数関数曲線(山形)となるコルゲート12が形成される。
このような円偏波発生器では、導波管11の開口からコルゲート12に対して斜め45度で直線偏波を入力すれば、コルゲート構造に対して電界方向を垂直及び水平方向に分解したとき、垂直成分に対して水平成分の透過位相を相対的に遅らせることで、円偏波を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−49503号公報
【特許文献2】特開2013−21587号公報
【特許文献3】特開2004−266501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記円偏波発生器において、位相遅れが正確に90度となる場合に円偏波は真円となるが、送受両方において広帯域に良好な円偏波特性、つまり位相差90度を実現させることは困難である。
【0006】
従来のコルゲート等の突起構造を有する円偏波発生器にて広帯域化を図るためには、低域側位相速度の問題と高域側高次モードの問題を考慮しなければならない。帯域内での高次モード発生を避けるために、遮断すべき高次モードの周波数が帯域内に掛らないように導波管サイズを選択する必要があるが、この導波管サイズの大きさが小さいと、低域側基本伝送モードの透過位相に対する影響度が増し、低域側位相制御も難しくなり、導波管サイズの選択では問題を解消することができない。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高次モードの発生を避けつつ、広帯域化を図ることができるコルゲート型円偏波発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数配列の突起の先端の包絡線が指数関数曲線に近似する形状とされたコルゲートを管内に形成した矩形導波管において、上記コルゲートが形成された面に垂直な管内の面に、入出力部開口幅よりも指数関数曲線に近似する形状で小さくなる絞り部を設けたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、例えば内部上下面(壁面)に先端包絡線が略指数関数曲線となるコルゲートが形成された矩形導波管で、その内部の両側面に入出力部開口幅よりも略指数関数曲線で小さく絞られた絞り部が形成される。即ち、群速度の導波管サイズに対する依存性に注目し、導波管内の側面の形状を積極的に活用することで、水平成分の透過位相のみならず、垂直成分の透過位相についても制御するようにしたものであり、これによって広帯域化が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、導波管サイズの選択をすることなく、高次モードの発生を避けながら、広帯域化を図ることが可能となる効果がある。
従来の円偏波発生器は、コルゲートの高さ、幅、周期を調整することで、コルゲートに対して水平方向のみの透過位相を制御してきたが、本発明では、導波管壁面の形状を最適化することで、垂直方向の透過位相も制御可能となる。即ち、位相制御をコルゲートと壁面の形状という2つの形態をとることで、広範囲に位相制御が行えることになる。
更に、高次モードの遮断周波数ということに関しても、水平及び垂直の両方向の導波管サイズが導波管中央部で絞られるため、高次モードの遮断周波数を広域側へシフトさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施例のコルゲート型円偏波発生器の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のコルゲート型円偏波発生器を上側から見たときの断面図である。
【
図3】実施例のコルゲート型円偏波発生器の特性を示すグラフ図である。
【
図4】従来のコルゲート型円偏波発生器の構成を示し、図(A)は斜視図、図(B)は図(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2に、実施例のコルゲート型円偏波発生器の構成が示されており、
図1に示されるように、矩形導波管1の内部の上下面(対向する2面)に、櫛状突起からなるコルゲート2が設けられる。このコルゲート2の先端の包絡線は、
図4(B)と同様に、指数関数曲線を描く形状、即ち上下面から管中央に向けて盛り上がる山形となっている。円偏波発生器への入力波を、その電界方向について垂直(Ev)と水平(Eh)の2成分へ分解して考えると、上記コルゲート2により、水平成分の伝搬速度が垂直成分に対して遅延することで、円偏波が発生し、この遅延量は、コルゲート2の先端部の高さ、長さ、周期により調整される。
【0013】
そして、上記導波管1の側面(側壁)、即ちコルゲート2が配置された面に垂直な面に、指数関数曲線(又はこれに近似する)の形状の面からなる絞り部3を設けている。実施例の絞り部3は、
図2にも示されるように、導波管1の左右の同一厚さの側面板を、伝搬方向の2Lの長さにおいてWの量だけその開口幅から徐々に絞られた曲面板としている。そして、上記コルゲート2においても、その側面側端部は絞り部3の絞り曲線に合わせた長さ[水平(Eh)方向の長さ]とされる。このようなコルゲート2及び絞り部3を有する導波管1は、鋳型等を用いて製作することができる。
【0014】
このような構造によれば、コルゲート2により水平成分の伝搬速度の制御が可能となると共に、絞り部3の絞り量Wとその長さLを調整することにより、垂直成分についても伝搬速度の制御が可能となり、この水平(Eh)成分と垂直(Ev)成分の伝搬速度を夫々調整することで、使用対象の周波数範囲を広くすることができる。
【0015】
図3に、実施例の円偏波発生器の特性の1例が示されており、図示されるように、透過位相差と交差偏差識別度(X-pole)において、絞り部3を設けることにより、絞り部がない場合に比べて、特に低域側(受信帯)の特性点a,bが低域側に移動し、受信帯と送信帯の間隔も広がり、広帯域化が図られる結果となった。
【0016】
実施例では、導波管1の左右側面の両方において絞り部3を設けたが、この絞り部3は、左右側面の片方のみに形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1,11…導波管、
2,12…コルゲート、
3…絞り部。