(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程Bが、前記重合反応流路を流通する重合反応液と前記重合停止剤供給流路を流通する重合停止剤とを合流させ、次いで得られた混合溶液を重合停止反応流路に流通させて重合を停止させる工程であり、前記重合停止反応流路の長さが1m〜10mである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の重合体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という)は、フロー式反応によりα-アルキルスチレンモノマーである上記一般式(I)で表されるモノマーをアニオン重合するに際し、
上記一般式(I)で表されるモノマーと重合開始剤とを含み、液温が0℃〜50℃に調整された原料溶液を、重合反応流路を流通させながら液温を−10℃〜−50℃に冷却することによりアニオン重合させる工程Aと、
上記重合反応流路を流通する重合反応液と、重合停止剤供給流路を流通する重合停止剤とを合流させて重合反応を停止し、重合体を得る工程Bと、を含む。
すなわち、フロー式反応によりα-アルキルスチレンモノマーをアニオン重合するに際して、まず、モノマーと開始剤とを混合した原料溶液を重合可能温度領域ではない特定温度範囲に調整してモノマーを活性化する工程を行い、次いで、上記モノマーを活性化した原料溶液を流路に流通させながら重合可能な特定温度範囲に急速に冷却して重合させる工程を経ることに特徴がある。
本発明は上記の構成とすることで、高分子量で、且つ、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られるものと考えられる。
【0019】
本発明の製造方法においては、より高分子量で、且つ、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られる観点から、上記工程Aを、さらに下記(1)又は(2)のように構成することが好ましい。
(1)上記工程Aが、上記一般式(I)で表されるモノマーと重合開始剤とを含む原料溶液を原料供給流路に流通させて液温を0℃〜50℃に調整する工程Cと、
上記原料供給流路を経た液温0℃〜50℃の溶液を、上記原料供給流路と連結する上記重合反応流路を流通させながら液温を−10℃〜−50℃に冷却することによりアニオン重合させる工程Dと、を含む態様。
(2) 上記工程Aが、モノマー供給流路に上記一般式(I)で表されるモノマーを含む溶液を、重合開始剤供給流路に重合開始剤を含む溶液をそれぞれ導入し、各流路内に各液を流通させてから合流させて原料溶液を調製する工程Eと、
上記原料溶液を原料供給流路に流通させて液温を0℃〜50℃に調整する工程Fと、
上記原料供給流路と連結する上記重合反応流路に、上記原料溶液を流通させながら液温を−10℃〜−50℃に冷却することによりアニオン重合させる工程Gと、を含む態様。
【0020】
以下、本発明の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、本発明で規定する事項以外は、図面に示された形態に何ら限定されるものではない。例えば、合流部を構成する流路の等価直径は、その上流側又は下流側に位置する流路の等価直径より大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。また、各流路の等価直径は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
[フロー式システム]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る重合体の製造工程を示す概略図である。
図1に示すフロー式反応システム(100)は、上記一般式(I)で表されるモノマーと重合開始剤とを含む原料溶液を導入する導入口(1A)を備えた原料供給流路(1)、原料供給流路(1)の下流側端部に連結する重合反応流路(2)、重合停止剤を導入する導入口(1B)を備えた重合停止剤供給流路(3)、上記重合反応流路(2)と上記重合停止剤供給流路(3)とが合流する合流部(T
1A)、上記合流部(T
1A)の下流側端部に連結する重合停止反応流路(4)、及び回収部(5)により構成されている。
また、原料供給流路(1)を流通する原料溶液は、恒温槽(6)により液温が0℃〜50℃となるように制御されている。原料供給流路(1)の下流側に位置する重合反応流路(2)を流通する液については、恒温槽(7)により液温が−10℃〜−50℃となるように制御されている。
導入口(1A)、導入口(1B)にはそれぞれ、シリンジポンプ等の送液ポンプが接続され、このポンプにより原料溶液及び重合停止剤が送液される。
なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、液体が流れる方向に対して用いられ、液体が導入される側(
図1の導入口(1A)(1B)側)が上流であり、その逆側が下流である。
【0022】
本発明において、上記フロー式システム内の流路の形状は特に制限されない。等価直径(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意の管内断面形状の配管ないし流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の管内断面の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の管内断面積、p:配管のぬれぶち長さ(内周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管の管内断面の直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、管内断面が一辺aの正四角形管ではdeq=4a
2/4a=a、一辺aの正三角形管ではdeq=a/3
1/2、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0023】
<原
料供給流路(1)>
原
料供給流路(1)は、導入口(1A)から導入された原料溶液を、アニオン重合反応が行われる重合反応流路(2)へ供給する流路である。原
料供給流路(1)内を流通する原料溶液の液温は、上述の恒温槽(6)により、0℃〜50℃に制御される。この温度範囲にて、一般式(I)のモノマーと重合開始剤とからなる付加体(スチリルアニオン誘導体)と、一般式(I)のモノマーとが重合すること無く共存し、無水かつ無酸素の溶液を調整することができる。液温を0℃未満では、モノマーと重合開始剤の付加速度が遅く、また、重合反応が徐々に開始される。一方、温度が50℃を超えるとスチリルアニオン誘導体の分解が併発する。いずれにおいても、得られる重合体の分散度の観点から望ましくない。重合開始剤の付加速度とスチリルアニオン誘導体の分解の観点から、原
料供給流路(1)内を流通する原料溶液の液温を10℃〜40℃とすることが好ましい。
【0024】
原
料供給流路(1)は、等価直径が0.1mm〜1cm程度(好ましくは、0.5mm〜5mm)、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、50cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0025】
導入口(A)から原料供給流路(1)へ上記原料溶液を導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1ml/min〜1000ml/minが好ましく、5ml/min〜500ml/minがより好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な混合が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
【0026】
<重合反応流路(2)>
原料供給流路(1)を流通して液温を0℃〜50℃(好ましくは10℃〜40℃)に調整された原料溶液は、重合反応流路(2)に流通して瞬時に−10℃〜−50℃の温度範囲に冷却されることで、重合開始剤の付加体(スチリルアニオン誘導体)による一般式(I)のモノマーへの付加反応が一斉に開始され、重合反応流路(2)内を流通しながら重合反応が進行する。
重合反応流路(2)はチューブにより構成することができ、その等価直径は、流通する液の液温をより精密に制御する観点から1mm〜50mmが好ましく、1mm〜10mmがより好ましい。チューブの長さは等価直径と流量、所望する重合体の分子量に合わせて適宜調整すればよく、1m〜50mとするのが好ましく、1m〜30mがより好ましい。チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。耐薬品性、熱伝導性、耐圧の観点からチューブの材質はステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0027】
重合反応流路(2)中の原料溶液の液温としては、重合時の副反応が抑制され、実用的な重合速度が得られ、且つ工業的に実施可能な温度条件として−10℃〜−50℃である。この温度範囲であると、重合時の副反応を抑制しつつ簡易な構成の冷却装置を用いて迅速に重合体を製造することができ、製造コストを低減できる点で好ましい。なかでも、−10℃〜−30℃がより好ましい。
重合反応流路(2)内を流通する液の流速は、好ましくは5ml/min〜1000ml/minであり、より好ましくは10ml/min〜500ml/minである。流速が上記範囲内であると、圧損の観点からより実用性に優れ好ましい。
【0028】
<重合停止剤供給流路(3)>
重合停止剤供給流路(3)は、重合停止剤を合流部(T
1A)まで流通させる流路である。
重合停止剤供給流路(3)は、等価直径が0.1mm〜1cm程度(好ましくは、0.5mm〜5mm)、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、50cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0029】
導入口(1B)から重合停止剤供給流路(3)へ重合停止剤を導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1ml/min〜1000ml/minが好ましく、5ml/min〜500ml/minがより好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な混合が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
【0030】
<合流部(T
1A)>
重合反応流路(2)内を流通するアニオン重合後の重合反応液と重合停止剤供給流路(3)を流通する重合停止剤溶液は、合流部(T
1A)で合流する。合流部(T
1A)はミキサーの役割を有するものであり、重合反応流路(2)と重合停止剤供給流路(3)とを1本の流路に合流し、合流部(T
1A)の下流側端部に連結する重合停止反応流路(4)へと合流した溶液を送り出すことができれば特に限定されない。例えば、T字型やY字型の構造体等を用いることができる。
合流部(T
1A)を構成する流路の等価直径(合流部(T
1A)を構成する流路の等価直径とは、重合反応流路(2)と重合停止剤供給流路(3)との合流部の流路の等価直径である。)は、混合性能をより良好とする観点から、0.2mm〜10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1mm〜10mmがより好ましい。
合流部(T
1A)の材質に特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどの材質からなるものを用いることができる。
合流部(T
1A)には、市販されているマイクロミキサーを用いることができる。例えばインターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター;インスティチュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサー及びキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);GLサイエンス社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);;Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Valco社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);swagelok社製T字コネクタ;マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー等が挙げられ、いずれも本発明の製造方法に使用することができる。
【0031】
<重合停止反応流路(4)>
重合反応液と重合停止剤を含む混合溶液は重合停止反応流路(4)内を流通しながら反応し、アニオンが失活して重合が完全に停止する。
重合停止反応流路(4)はチューブにより構成することができ、その等価直径は、流通する液の液温をより精密に制御する観点から、1mm〜50mmが好ましく、1mm〜10mmがより好ましい。重合停止反応流路(4)の長さは、等価直径、流量、所望する重合体の分子量に合わせて適宜調整すればよく、1m〜10mとするのが好ましく、1m〜5mがより好ましい。チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。耐薬品性、熱伝導性、耐圧の観点からチューブの材質はステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
重合停止反応流路(4)を流通する液の液温は特に限定されないが、
図1に示すように、重合反応流路(2)内を流通する液の液温と同じにすることが好ましい。また、重合停止剤供給流路(3)及び合流部(T
1A)の各流路を流通する液の液温も同様とすることが好ましい。
重合停止反応流路(4)内を流通する液の流速は、好ましくは5ml/min〜1000ml/minであり、より好ましくは5ml/min〜500ml/minである。流速が上記範囲内であると、副反応の2倍分子量体生成を抑制し、かつ圧損の観点からより実用性に優れ好ましい。なお、重合停止反応流路(4)の流速(単位:ml/min)は、重合停止剤供給流路(3)と重合反応流路(2)の流速の合計値となる。
【0032】
図2は、本発明の第二の実施形態に係る重合体の製造工程を示す概略図であり、
図1に示す第一の実施形態において、原料溶液の調製についてもフロー式反応システムに組み込んだ態様である。
図2に示すフロー式反応システム(200)は、上記一般式(I)で表されるモノマーを含む溶液を導入する導入口(2A)を備えたモノマー供給流路(21)、重合開始剤を含む溶液を導入する導入口(2B)を備えた重合開始剤供給流路(22)、上記モノマー供給流路(21)と上記重合開始剤供給流路(22)とが合流する合流部(T
2A)、上記合流部(T
2A)の下流側端部に連結する原料供給流路(23)、原料供給流路(23)の下流側端部に連結する重合反応流路(24)、重合停止剤を導入する導入口(2C)を備えた重合停止剤供給流路(25)、上記重合反応流路(24)と上記重合停止剤供給流路(25)とが合流する合流部(T
2B)、上記合流部(T
2B)の下流側端部に連結する重合停止反応流路(26)、及び回収部(27)により構成されている。
また、原料供給流路(23)を流通する原料溶液は、恒温槽(28)により液温が0℃〜50℃となるように制御されている。原料供給流路(23)の下流側に位置する重合反応流路(24)を流通する液については、恒温槽(29)により液温が−10℃〜−50℃となるように制御されている。
導入口(2A)、導入口(2B)、導入口(2C)にはそれぞれ、シリンジポンプ等の送液ポンプが接続され、このポンプにより原料溶液及び重合停止剤が送液される。
【0033】
<モノマー供給流路(21)>
モノマー供給流路(21)は、一般式(I)で表されるモノマーを含む溶液を合流部(T
2A)まで流通させる流路である。
モノマー供給流路(21)は、等価直径が0.1mm〜1cm程度(好ましくは、0.5mm〜5mm)、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、50cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0034】
導入口(2A)からモノマー供給流路(21)へモノマーを導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1ml/min〜1000ml/minが好ましく、5ml/min〜500ml/minがより好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な混合が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
【0035】
<重合開始剤供給流路(22)>
重合開始剤供給流路(22)は、重合開始剤を含む溶液を合流部(T
2A)まで流通させる流路である。
重合開始剤供給流路(22)は、等価直径が0.1mm〜1cm程度(好ましくは、0.5mm〜5mm)、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、50cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質は特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0036】
導入口(2B)から重合開始剤供給流路(22)へ重合開始剤を導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1ml/min〜200ml/minが好ましく、0.5ml/min〜100ml/minがより好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な重合反応が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
【0037】
<合流部(T
2A)>
モノマー供給流路(21)を流通する一般式(I)のモノマーと重合開始剤供給流路(22)を流通する重合開始溶液とは、合流部(T
2A)で合流する。合流部(T
2A)はミキサーの役割を有するものであり、モノマー供給流路(21)と重合開始剤供給流路(22)とを1本の流路に合流し、合流部(T
2A)の下流側端部に連結する原料供給流路(23)へと合流した溶液を送り出すことができれば特に限定されない。例えば、T字型やY字型の構造体等を用いることができる。
合流部(T
2A)を構成する流路の等価直径(合流部(T
2A)を構成する流路の等価直径とは、モノマー供給流路(21)と重合開始剤供給流路(22)との合流部の流路の等価直径である。)は、混合性能をより良好とする観点から0.1mm〜10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から、0.2mm〜10mmの範囲がより好ましい。
合流部(T
2A)の材質や使用可能なマイクロミキサーについては、前述の合流部(T
1A)と同様のものを好ましく使用できる。
【0038】
図2に示す第二の実施形態の他の構成要素の材質、組成、定義及び好適態様等は、上述した第一の実施形態に示したものと同様であり、すなわち、
図2に示す原料供給流路(23)、重合反応流路(24)、重合停止剤供給流路(25)、合流部(T
2B)、重合停止反応流路(26)、回収部(27)、恒温槽(28)及び恒温槽(29)は、それぞれ
図1に示す原料供給路(1)、重合反応流路(2)、重合停止剤供給流路(3)、合流部(T
1A)、重合停止反応流路(4)、回収部(5)、恒温槽(6)及び恒温槽(7)にそれぞれ対応する。
【0039】
本発明の製造方法は、上述の実施形態に限定されることはなく、例えば、
図3に示すフロー式システム(300)を用いても行うことができる(第三の実施形態)。すなわち、一般式(I)で表されるモノマーと重合開始剤とを含み、0℃〜50℃に調整された原料溶液を予めバッチ方式で調整し、この溶液をフロー式システムに導入して重合体を製造する方法である。
図3に示すフロー式システム(300)は、原料溶液を導入する導入口(3A)を備えた重合反応流路(31)、重合停止剤を導入する導入口(3B)を備えた重合停止剤供給流路(32)、上記重合反応流路(31)と上記重合停止剤供給流路(32)とが合流する合流部(T
3A)、上記合流部(T
3A)の下流側端部に連結する重合停止反応流路(33)、及び回収部(34)により構成されており、重合反応流路(31)を流通する液については、恒温槽(35)により液温が−10℃〜−50℃となるように制御されている。
導入口(3A)、導入口(3B)にはそれぞれ、シリンジポンプ等の送液ポンプが接続され、このポンプにより、予め所定温度に調整された原料溶液、及び重合停止剤が送液される。
なお、
図3に示す第三の実施形態の構成要素の材質、組成、定義及び好適態様等は、上述した第一の実施形態で示したものと同様であり、すなわち、
図3に示す重合反応流路(31)、重合停止剤供給流路(32)、合流部(T
3A)、重合停止反応流路(33)、回収部(34)、恒温槽(35)は、それぞれ
図1に示す重合反応流路(2)、重合停止剤供給流路(3)、合流部(T
1A)、重合停止反応流路(4)、回収部(5)及び恒温槽(7)に対応する。
【0040】
導入口(3A)から重合反応流路(34)へ上記原料溶液を導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1ml/min〜1000ml/minが好ましく、5ml/min〜500ml/minがより好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な重合反応が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
図3に示すように、原料溶液を予めバッチ方式で調整し、この溶液をフロー式システムに導入して重合体を製造する場合には、原料溶液は0℃〜50℃に調整され、10℃〜40℃に調整されることが好ましい。
【0042】
(上記一般式(I)中、R
1はアルキル基を表し、Arはアリール基を表す。)
【0043】
R
1で表されるアルキル基は、炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がさらに好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基である。R
1で表されるアルキル基は、置換基を有することも好ましい。置換基の好ましい例としては、後述の置換基群W1から選ばれる基が挙げられる。
【0044】
(置換基群W1)
ニトロ基、フッ素原子、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)。
置換基群Wから選ばれる基がアリール基等の環構造を有する場合、この環構造はさらに置換基を有することも好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)が好ましい。
【0045】
Arで表されるアリール基は、炭素数6〜14のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基及びナフチル基である。Arで表されるアリール基は、置換基を有してもよい。置換基の好ましい例としては、後述の置換基群W2から選ばれる基が挙げられる。
【0046】
(置換基群W2)
ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)。
置換基群Wから選ばれる基がアリール基等の環構造を有する場合、この環構造はさらに置換基を有することも好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)が好ましい。
【0047】
上記一般式(I)で表されるα−アルキルスチレンモノマーとしては、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−4−クロロスチレン、p−t−ブトキシ−α−メチルスチレン等を例示することができる。
【0048】
上記一般式(I)で表されるα-アルキルスチレンモノマーは、後述する溶媒に可溶化された液体の状態で流路へ流通されることが好ましい。
モノマー溶液中のモノマーの濃度としては、特に制限はなく、ポンプ送液できる溶液粘度に応じて適宜選択されるが、0.1M〜4.0Mが好ましく、0.1M〜3.0Mがより好ましく、0.5M〜2.0Mが更に好ましい。濃度が上記範囲内であれば、単位時間当たりのポリマー生産量が良好に保たれるとともに、より効果的に重合反応熱を除去することができる。
【0049】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、特に制限はなく、モノマーの種類及び重合方式に応じて適宜選択することができる。
上記重合方式が、リビング重合方式のアニオン重合である場合の重合開始剤としては、例えば、有機リチウム化合物又は有機マグネシウム化合物が挙げられる。
【0050】
上記有機リチウム化合物としては、特に制限は無く、従来公知の有機リチウム化合物から適宜選択することができ、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。中でも、反応性が高いため、高速な開始反応を行える点で、アルキルリチウムがより好ましい。上記有機リチウム試薬は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
有機マグネシウム化合物としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−t−ブチルマグネシウム、ジ−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−エチルマグネシウム、ジ−n−アミルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム等が挙げられる。
【0052】
上記重合開始剤は、後述する溶媒に可溶化された液体の状態で流路へ流通されることが好ましい。
重合開始剤の濃度としては、特に制限はなく、上記モノマーの種類及び濃度に応じて適宜選択されるが、0.001M〜1.0Mが好ましく、0.002M〜0.75Mがより好ましく、0.01M〜0.5Mが更に好ましく、0.02M〜0.2Mが特に好ましい。濃度が上記範囲内であれば、重合開始剤が溶媒中に含まれる少量の水などにより分解することなく、重合反応が良好に進行する。
【0053】
上記モノマーと開始剤との当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、モノマーに対して、開始剤が1〜1,000当量が好ましく、5〜500当量がより好ましく、10〜200当量が特に好ましい。当量比が上記特に好ましい範囲であると、理論値と等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。
【0054】
[溶媒]
上記モノマー及び開始剤は、溶媒に可溶化された液体の状態で、フロー式反応システムに導入されることが好ましい。
溶媒としては、特に制限はなく、モノマー及び開始剤の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖、分岐鎖、環状炭化水素溶媒などが挙げられ、より具体的には、例えば、ブタン、ブテン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、テトラヒドロフラン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0055】
[原料溶液]
原料溶液中のモノマーの濃度としては、特に制限はなく、0.01M〜4.0Mが好ましく、0.1M〜3.0Mがより好ましく、0.5M〜2.0Mが更に好ましい。濃度が上記範囲内であれば、単位時間当たりのポリマー生産量が良好に保たれるとともに、より効果的に重合反応熱を除去することができる。
原料溶液中の重合開始剤の濃度としては、特に制限はなく、上記モノマーの種類及び濃度に応じて適宜選択されるが、0.001M〜1.0Mが好ましく、0.002M〜0.75Mがより好ましく、0.01M〜0.5Mが更に好ましく、0.01M〜0.2Mが特に好ましい。濃度が上記範囲内であれば、重合開始剤が溶媒中に含まれる少量の水などにより分解することなく、重合反応が良好に進行する。
原料溶液中のモノマーと開始剤との当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、モノマーに対して、開始剤が1〜1,000当量が好ましく、5〜500当量がより好ましく、10〜200当量が特に好ましい。当量比が上記特に好ましい範囲であると、理論値と等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。
溶媒としては、上述のものを使用することができる。
【0056】
[重合停止剤]
重合停止剤としては、活性種であるアニオンを失活させる液であれば特に制限はなく、アルコール及び/又は酸性物質を含む水溶液や有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルターシャリーブチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン等)、ハロゲン化アルキルやクロロシラン等の求電子剤が用いられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0057】
酸性物質としては、例えば、酢酸、塩酸等が挙げられる。
ハロゲン化アルキルとしては、例えば、アルキルブロマイド、アルキルヨージド等が挙げられる。
重合停止剤中に含まれるアルコール、酸性物質、求電子剤の量は、重合体溶液と合流した混合液中において、重合開始剤1モルに対して、1モル〜100モルとなるのが好ましい。
【0058】
本発明の製造方法において、滞留時間(反応時間)は、20秒〜1800秒であることが好ましく、60〜1800秒であることが好ましい。滞留時間(反応時間)とは、物質が反応管(重合反応流路に導入されてから、重合停止反応流路を経過するまでの総流路)の中に存在する時間を意味し、断面積:S(m
2)、管の長さ:L(m)、流量:V(m
3s
-1)の時、滞留時間=(S×L)/Vで表される。滞留時間を上記範囲内にすることで、ポリマー分子量の制御が容易になる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
図1及び
図4(
図2に示す第二の実施形態の変形例に相当する。)に示す構成のフロー式反応システムによりアニオン重合反応を実施した。各部の詳細を下記に示す。
[実施例1]
図1に示す構成を有する反応装置にてアニオン重合を実施した。各部の詳細を下記に示す。
原料供給流路(1);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ100cmのSUS316チューブ
重合停止剤供給流路(3);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ100cmのSUS316チューブに外径3mm、内径2mm、長さ10cmのSUS316チューブをSUS316ユニオンで連結したもの
重合反応流路(2);
外径3mm、内径2mm、長さ10mのSUS316チューブ、ノリタケ製スタティックミキサー(Φ 3.4mm,L 14cm、エレメント27段)、外径3mm、内径2mm、長さ10mのSUS316チューブを順にSUS316ユニオンで連結したもの
合流部(T
1A);
スウェージロック社製T型ユニオンティー(SS−3M0−3、内径2.4mm)
重合停止反応流路(4);
外径3mm、内径2mm、長さ1mのSUS316チューブ
温度センサー;
アップチャーチ社製T−コネクター(U−429、内径1.0mm)にK型熱電対(シース型、径1.6mm)を取り付け、上記原料供給流路および重合停止剤供給流路の下流側末端より10cmに、重合反応流路および重合停止反応流路は上流側先端から10cmの位置に設置した。
【0061】
図1に示すように、原料供給流路(1)を構成するSUS316チューブを25℃に設定した恒温槽(6)に浸し、流路内の液温が25℃となるよう調整した。また、原料供給流路(1)より下流側、すなわち、重合反応流路(2)を構成する反応管、重合停止剤供給流路(3)を構成するSUS316チューブ、合流部(T
1A)、重合停止反応流路(4)を構成する反応管までの一式を、−15℃に設定した恒温槽(7)に浸し、各流路内の液温が−15℃となるよう調整した。
【0062】
2Lナスフラスコに、0.86Mのα−メチルスチレンのTHF溶液を1200ml調整し、これに25℃で0.1Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液6mlを加えた。溶液は直ちに赤色を呈した。20分攪拌して、α−メチルスチレンと開始剤の混合溶液を調整した。この溶液をHPLC(High performance liquid chromatography)送液ポンプ(株式会社島津製作所製 LC-6AD)により導入口(1A)から原料供給流路(1)へ12.6mL/minで送液した。
また、導入口(1B)から重合停止剤供給流路(3)へ0.3MのメタノールのTHF溶液をHPLC送液ポンプ(株式会社島津製作所製 LC-6AD)により12mL/minで送液した。
【0063】
上記条件における滞留時間(反応時間)は305秒である。
充分に系内が置き換わった後、回収部(5)から排出されるポリマー溶液をサンプル容器に採取した。
【0064】
採取したポリマー溶液を10倍容量のメタノールに滴下し、析出した白色沈殿を濾取した。白色沈殿の一部をTHFに溶解させ、分子量(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn))と分子量分布(分散度:Mw/Mn)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。GPCは下記の条件で測定した。
装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
検出器:示差屈折計(RI(Refractive Index)検出器)
プレカラム:TSKGUARDCOLUMN HXL−L 6mm×40mm(東ソー(株)製)
サンプル側カラム:以下3本を順に直結(全て東ソー(株)製)
・TSK−GEL GMHXL 7.8mm×300mm
・TSK−GEL G4000HXL 7.8mm×300mm
・TSK−GEL G2000HXL 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:TSK−GEL G1000HXL 7.8mm×300mm
恒温槽温度:40℃
移動層:THF
サンプル側移動層流量:1.0mL/分
リファレンス側移動層流量:1.0mL/分
試料濃度:0.1重量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後5分〜45分
サンプリングピッチ:300msec
【0065】
その結果、数平均分子量(Mn)は11.5万、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。
【0066】
[実施例2]
実施例1において、重合反応流路(2)を外径3mm、内径2mm、長さ5mのSUS316チューブ、ノリタケ製スタティックミキサー(Φ 3.4mm,L 14cm、エレメント27段)、外径3mm、内径2mm、長さ5mのSUS316チューブを順にSUS316ユニオンで連結したものに変更した以外は実施例1と同様に実施した。本条件における滞留時間(反応時間)は156秒である。
GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は7.95万、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。
【0067】
[実施例3]
実施例1において、恒温槽(6)を0℃に変更した以外は実施例1と同様に実施した。GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は9.87万、分子量分布(Mw/Mn)は1.18であった。
【0068】
[実施例4]
図4に示す構成を有する反応装置にてアニオン重合を実施した。
図4は、本発明の第二の実施形態の変形例に相当し、
図2に示すフロー式システム(200)において原料供給通路(23)を、
図4に示すように上流側領域(43a)と下流側領域(43b)とに区分けし、上流側領域(43a)を構成するチューブまでを恒温槽(48)に浸し、下流側領域(43b)を構成するチューブを大気下に設置した以外は、
図2に示す第二の実施形態と同様の構成である。
【0069】
各部の詳細を下記に示す。
モノマー供給流路(41)、重合開始剤供給流路(42);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ100cmのSUS316チューブ
重合停止剤供給流路(45);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ100cmのSUS316チューブに外径3mm、内径2mm、長さ10cmのSUS316チューブをSUS316ユニオンで連結したもの
合流部(T
4A);
アップチャーチ社製T-コネクター(U−428、内径0.5mm)
合流部(T
4B);
スウェージロック社製T型ユニオンティー(SS−3M0−3、内径2.4mm)
原料供給流路(43);
原料供給流路は、
図4に示すように上流側領域(43a)を構成するチューブと下流側領域(43b)を構成するチューブを繋ぐことで構成した。
原料供給流路上流側領域(43a);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ50cmのSUS316チューブ
原料供給流路下流側領域(43b);
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ10cmのSUS316チューブを外径2mm、内径1/16インチ、長さ10cmのテフロン(登録商標)チューブで被覆したもの
重合反応流路(44);
外径3mm、内径2mm、長さ10mのSUS316チューブ、ノリタケ製スタティックミキサー(Φ 3.4mm, L 14cm、エレメント27段)、外径3mm、内径2mm、長さ10mのSUS316チューブを順にSUS316ユニオンで連結したもの
重合停止反応流路(46);
外径3mm、内径2mm、長さ1mのSUS316チューブ
アップチャーチ社製T−コネクター(U−429、内径1.0mm)にK型熱電対(シース型、径1.6mm)を取り付け、上記原料供給流路および重合停止剤供給流路の下流側末端より10cmに、重合反応流路および重合停止反応流路は上流側先端から10cmの位置に設置した。
【0070】
図4に示すように、モノマー供給流路(41)を構成するSUS316チューブ、重合開始剤流路(42)を構成するSUS316チューブ、合流部(T
4A)、原料供給流路の上流側領域(43a)を構成するSUS316チューブまで一式を、25℃に設定した恒温槽(48)に浸し、各流路内の液温が25℃となるよう調整した。また、原料供給流路の下流側領域(43b)より下流側、すなわち、重合停止剤供給流路(45)を構成するSUS316チューブ、重合反応流路(44)を構成する反応管、合流部(T
4B)、重合停止反応流路(46)を構成するSUS316チューブまでの一式を、−15℃に設定した恒温槽(49)に浸し、各流路内の液温が−15℃となるよう調整した。なお、原料供給流路(43)を流通する液温は、原料供給流路の上流側領域(43a)と下流側領域(43b)とで温度が一定となるように調整されている。
【0071】
導入口(4A)からモノマー供給流路(41)へ0.86Mのα−メチルスチレンのTHF溶液をHPLC送液ポンプ(株式会社GLサイエンス製PU716B)により12mL/minで送液した。
また、導入口(4B)から重合開始剤流路(42)へ0.01Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液をHPLC送液ポンプ(株式会社GLサイエンス製PU712)より、0.6mL/minで送液した。
また、導入口(4C)から重合停止剤供給流路(45)へ0.3MのメタノールのTHF溶液をHPLC送液ポンプ(株式会社GLサイエンス製PU716B)より12mL/minで送液した。
【0072】
上記条件における滞留時間(反応時間)は305秒である。
充分に系内が置き換わった後、回収部(47)から排出されるポリマー溶液をサンプル容器に採取した。
【0073】
採取したポリマー溶液を10倍容量のメタノールに滴下し、析出した白色沈殿を濾取した。白色沈殿の一部をTHFに溶解させ、分子量と分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。その結果、数平均分子量(Mn)は15.2万、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
【0074】
[実施例5]
実施例4において、重合反応流路(44)を外径3mm、内径2mm、長さ20mのSUS316チューブ、ノリタケ製スタティックミキサー(Φ 3.4mm, L 14cm、エレメント27段)、外径3mm、内径2mm、長さ20mのSUS316チューブを順にSUS316ユニオンで連結したものに変更した以外は実施例4と同様に実施した。GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は21.2万、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。上記条件における滞留時間(反応時間)は604秒である。
【0075】
[実施例6]
実施例4において、恒温槽(48)を0℃に変更した以外は実施例4と同様に実施した。GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は10.1万、分子量分布(Mw/Mn)は1.21であった。
【0076】
[比較例1]
実施例4において、恒温槽(48)を−15℃に変更した以外は実施例4と同様に実施した。GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は2.52万、分子量分布(Mw/Mn)は1.37であった。
【0077】
[比較例2]
実施例1において、恒温槽(7)を−80℃に変更した以外は実施例1と同様に実施したが、系内圧力が上昇し、送液不可能になった。
【0078】
[比較例3]
2Lナスフラスコに、0.86Mのα−メチルスチレンのTHF溶液を1200ml調整し、これに25℃で0.1Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液6mlを加えた。溶液は直ちに赤色を呈した。20分攪拌後、反応容器を−15℃の恒温槽にすばやく浸した(バッチ式)。2.5分後、メタノール5mlを滴下した。GPC測定の結果、生成したポリマーの数平均分子量(Mn)は0.3万、分子量分布(Mw/Mn)は1.43であった。
【0079】
[実施例7]
実施例1において、重合停止剤のメタノールを8−(4−bromobutoxy)−1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−tridecafluorooctane <化学式;CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2O(CH
2)
4Br>に変更した以外は実施例1と同様に実施した。数平均分子量(Mn)は12.0万、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。
19F−NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(CDCl
3, 内標:CF
3−C
6H
5)よりフッ素化封止剤が略定量的に導入されていることを確認した。
【0080】
[実施例8]
実施例4において、重合停止剤の0.3MのメタノールのTHF溶液を0.1mMの1,10−ジブロモデカンに変更し、流速を5.0mL/minで送液した以外は実施例4と同様に実施した。数平均分子量(Mn)は29.6万、分子量分布(Mw/Mn)は1.21であった。
【0081】
実施例1と実施例2との対比、実施例4と実施例5との対比から、本発明の製造方法によれば、重合反応流路(2, 44)の流路長をより長く設定して高分子量化を図っても、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られることが示された。
実施例1と実施例3との対比、実施例4と実施例6との対比から、原
料供給流路(1, 41)を流通する原料溶液の液温を10〜40℃とすることで、より高分子量で、且つ、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られることが示された。
実施例1と実施例4との対比から、原料溶液の調製の段階からフロー式システムに組み込むことにより、より高分子量で、且つ、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られることが示された。
実施例7の結果から、重合停止剤にフッ素原子を有する化合物を使用することで、高分子量で、且つ、分子量分布が高度に単分散化されたフッ素化封止材料を形成できることが示された。
実施例8の結果から、電子吸引性基を両末端に有する重合停止剤を用いることで、高分子量が倍でありながら、分子量分布が高度に単分散化された重合体が得られることが示された。
一方、原料供給流路(41)を流通する液の液温と重合反応流路(44)を流通する液の液温とをいずれも−15℃として重合した比較例1、バッチ式により重合した比較例3においては、得られた重合体の分子量は低く、且つ、分散度も大きかった。