(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空糸膜の外表面側に原液が供給され、中空糸膜の内表面側から濾液が取り出される外圧濾過方式で使用される中空糸膜モジュールの運転方法であって、中空糸膜を用いて原液を濾過する濾過工程と、中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程と、を行った後、その次の濾過工程との間で中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程を繰り返すことなく、中空糸膜の原液側を気泡で洗浄する気体洗浄工程と、モジュール内の液体を系外に排出する排水工程と、中空糸膜の原液側に液体を満たす充水工程とを、濾過工程とその次の濾過工程との間で二回以上繰り返す中空糸膜モジュールの運転方法。
一定回数以上前記濾過工程、前記加圧工程、気体洗浄工程、排水工程、充水工程を繰り返した後に、濾過工程とその次の濾過工程との間で前記気体洗浄工程と前記排水工程と前記充水工程とを二回以上繰り返して行う請求項1に記載の中空糸膜モジュールの運転方法。
前記中空糸膜モジュールとして、中空糸膜束の上端は一括で固定し、下端は中空糸膜が一本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプの中空糸膜モジュールを用いる請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの運転方法。
前記中空糸膜モジュールとして、前記中空糸膜エレメントの上端は一括で固定し、下端は中空糸膜が一本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプの中空糸膜モジュールが用いられている請求項4に記載の濾過装置。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜による分離技術の開発が進み、水の濾過をはじめ様々な用途に広く用いられている。しかし、中空糸膜による濾過の過程では、SSと呼ばれる原液中の懸濁物質等の固形物が中空糸膜表面に付着し、または微多孔に侵入し、経時的に透過流束の低下が生じる。そこで、安定して長期的に濾過運転を継続するためには、濾過条件の設定と同時に中空糸膜の洗浄方法並びに洗浄における濾過装置の運転方法の開発が不可欠とされている。
【0003】
従来、中空糸膜モジュールの洗浄方法として、種々の方法が提案されており、これらは物理的洗浄方法と化学的洗浄方法とに大別できる。
【0004】
物理的洗浄方法としては、水、濾過水等の液体を濾液側から原液側へ通過させる液体逆洗方法、加圧気体を濾液側から原液側へ通過させる気体逆洗方法(特許文献1、特許文献2など)、原液側でモジュール底部などから気泡を噴出させるバブリング方法、超音波法など、多種多様の方法が提案されている。また、化学的洗浄方法としては酸、アルカリ水溶液、酸化剤、洗浄剤などの薬液により、付着物を溶解または分解することで除去する方法が知られている。
【0005】
一般に、従来公知の物理的洗浄方法を用いた場合、その洗浄効果は必ずしも満足できるレベルにはなく、例えば濾過工程と洗浄工程とをシーケンスコントロールなどによって連続して運転した場合、数日から数ヶ月程度で透過流束が大きく低下するといった問題があった。この問題を解決するために、特許文献3において、中空糸膜の原液側から気泡が放出される圧力よりも小さい圧力の気体を中空糸膜の濾液側から導入する物理洗浄方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の物理洗浄方法を用いることで、SSが少ない原液、濾過による膜目詰まりが起こりにくい原液の濾過、あるいは低い濾過流束での濾過では、長期間の連続した濾過運転が可能になる。一方で、原液中のSSが多い高濁度原液の濾過、膜目詰まりを防止すべく凝集処理を行った原液の濾過、あるいは単位膜面積当たりの濾過流量である濾過流束を高く設定した濾過においては、膜濾過により中空糸膜の表面に付着したSSを物理的洗浄によって排出することができず、次第にSSが中空糸膜表面に堆積して濾過の抵抗となり、濾過流束の低下により濾過運転の継続が困難となる場合が多い。したがって、高濁度原液、前処理として凝集処理を必要とする原液、高濾過流束での濾過運転において長期間の連続した濾過運転を可能とするためには、物理洗浄における有効な運転方法の開発が必要である。
【0008】
本発明の目的は、従来の方法に比較して中空糸膜へのSSの堆積を低減することが可能な中空糸膜モジュールの運転方法及び濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の中空糸膜モジュールの運転方法は、下記の特徴を有する。
【0010】
(1)中空糸膜の外表面側に原液が供給され、中空糸膜の内表面側から濾液が取り出される外圧濾過方式で使用される中空糸膜モジュールの運転方法であって、中空糸膜を用いて原液を濾過する濾過工程と、中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程と、を行った後、その次の濾過工程との間で
中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程を繰り返すことなく、中空糸膜の原液側を気泡で洗浄する気体洗浄工程と、モジュール内の液体を系外に排出する排水工程と、中空糸膜の原液側に液体を満たす充水工程とを、濾過工程とその次の濾過工程との間で二回以上繰り返すことを特徴としている。
【0012】
(
2)上記(1)において、一定回数以上
前記濾過工程、
前記加圧工程、気体洗浄工程、排水工程、充水工程を繰り返した後に、
濾過工程とその次の濾過工程との間で前記気体洗浄工程と、前記排水工程と、前記充水工程とを二回以上繰り返して行ってもよい。
【0013】
(
3)上記(1)〜(
2)の何れかにおいて、前記中空糸膜モジュールとして、中空糸膜束の上端は一括で固定し、下端は中空糸膜が一本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプの中空糸膜モジュールを用いてもよい。
【0014】
(4)また、本発明に係る濾過装置は、中空糸膜エレメントを有する中空糸膜モジュールと、前記中空糸膜モジュールに原液を供給する送液ポンプと、前記中空糸膜モジュールに加圧用の気体又は液体を供給する加圧装置と、前記送液ポンプ及び前記加圧装置の作動
制御を行う制御装置とを備える濾過装置である。前記制御装置は、中空糸膜を用いて原液を濾過する濾過工程と、中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程と、を行った後、その次の濾過工程との間で
中空糸膜の濾液側から気体または液体により加圧する加圧工程を繰り返すことなく、気体洗浄工程と、排水工程と、充水工程とを、濾過工程とその次の濾過工程との間で二回以上繰り返すように構成されていることを特徴とする。
【0015】
(
5)前記濾過装置において、前記中空糸膜モジュールとして、前記中空糸膜束の上端は一括で固定し、下端は中空糸膜が一本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプの中空糸膜モジュールが用いられていてもよい。
【0016】
本発明の中空糸膜モジュールの運転方法が、従来の運転方法に比較して優れた効果を発現する理由は定かではないが、本発明者らが現時点で推定している本発明の作用について、
図1に示す外圧濾過方式を例として、以下に説明する。
【0017】
図1は、外圧濾過方式における濾過工程、加圧工程、気体洗浄工程及び排水工程における中空糸膜表面へのSSの付着、剥離、排出を模式的に表す図である。原液中のSSは濾過により処理水と分離され、膜表面に付着する。膜表面に付着したSSは、続く加圧工程において中空糸膜モジュールの濾液側から液体または気体で加圧されることにより亀裂が生じ、膜表面から一部剥離する。さらに気体洗浄工程においてモジュール底部から気泡を噴出させることで、SSは膜表面から剥離し、排水工程においてモジュール外に排出される。ここで原液のSS濃度が高い場合、膜目詰まりを防止するために前処理として凝集を行っている場合、あるいは単位膜面積当たりの濾過流量である濾過流束が高く設定されている場合等には、濾過工程中に膜表面に付着するSS量が多くなる。このため、加圧工程、気体洗浄工程、排水工程でSSを完全に排出することができず、徐々に中空糸膜表面にSSが堆積して濾過抵抗となる。SSの堆積が進行すると濾過流束が徐々に低下し、濾過運転の継続が困難となる。そこで上記物理洗浄の排水工程の後に再度原液を充水し、気体洗浄工程を行い、再度排水工程を実施することでSSの排出効果を高めることができる。また、濾過工程と物理洗浄の繰返しにより中空糸膜表面にSSが堆積した後であっても、モジュールに原液を充水し、気体洗浄工程を行い、排水工程を行う一連の運転を繰り返すことにより、膜表面に堆積したSSを剥離させ、排出することができる。すなわち、排水工程の後に再度原液を充水して洗浄工程の後に排水する、という方法は、濾液の回収効率が低下するという理由から従来採用されていなかった。しかしながら、SS付着量が多くなる原液を濾過する場合には、中空糸膜モジュールの交換頻度が高くなってしまうため、排水工程の後に再度原液を充水して洗浄工程の後に排水する、という方法を採用することにより、濾液の回収効率が低下するという欠点があるものの総合的なコスト低減に寄与することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の中空糸膜モジュールの運転方法及び濾過装置によって、SS付着量を低減することができ、長期間安定的に連続した濾過運転が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態で使用される中空糸膜としては、ポリビニルアルコール系樹脂により親水化処理されたポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、親水性高分子が添加されたポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、親水化処理されたポリエチレン系樹脂などの親水性素材からなるものが、高い親水性を有するためにSS成分の難付着性、付着したSS成分の剥離性に優れている点で好ましいが、他の素材で構成された中空糸膜を用いることもできる。例えば、ポリオレフィン系、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、酢酸セルロース系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリパーフルオロエチレン系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリエステル系、ポリアミド系などの有機高分子系の素材で構成された中空糸膜、セラミック系などの無機系の素材で構成された中空糸膜などを使用条件、所望する濾過性能などに応じて選択することができる。ここで、ポリビニルアルコール系樹脂により親水化処理されたポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、親水性高分子が添加されたポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂からなる中空糸膜は、上記した親水性に優れるのみならず、耐熱性にも優れることから、特に好ましい。有機高分子系の素材を使用する場合、30モル%以内の量で他成分を共重合したもの、または30重量%以内の量で他の素材をブレンドしたものであってもよい。
【0022】
有機高分子系の中空糸膜を使用する場合、中空糸膜の製造方法は特に限定されることはなく、素材の特性及び所望する中空糸膜性能に応じて、公知の方法から適宜選択した方法を選択することができる。一般的には溶融紡糸法、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法などが採用される。また、透水性の観点から中空糸膜は緻密層と支持層とを有する傾斜構造を持つことが好ましいが、一般に溶融紡糸法により製造される中空糸は対称構造となることから、乾湿式紡糸法などの相転換法により製造することが好ましい。
【0023】
本実施形態で使用される中空糸膜の孔径は特に限定されないが、0.001〜5ミクロンの範囲内であることが、高い透水性を有し、濾過効率が低下するおそれが小さいことから好ましい。なお、ここでいう孔径とは、コロイダルシリカ、エマルジョン、ラテックスなどの粒子径が既知の各種基準物質を中空糸膜で濾過した際に、その90%が排除される基準物質の粒子径をいう。孔径は均一であることが好ましい。限外濾過膜であれば、上記のような基準物質の粒子径に基づいて、孔径を求めることは不可能であるが、分子量が既知の蛋白質を用いて同様の測定を行ったときに、分画分子量が3000以上であるものが好ましい。
【0024】
中空糸膜の力学的性質及びモジュールとしての膜面積の観点から、中空糸膜の外径は200〜30000ミクロンの範囲に設定することが好ましく、500〜2000ミクロンの範囲内であることがより好ましい。同様に中空糸膜の厚さは100〜600ミクロンの範囲内であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態において、該中空糸膜はモジュール化されて濾過に使用される。濾過方法、濾過条件、洗浄方法などに応じてモジュールの形態を適宜選択することができ、1本または複数本の中空糸膜エレメントを装着して中空糸膜モジュールを構成しても良い。モジュールの形態としては、例えば数十本から数十万本の中空糸膜を束ねてモジュール内でU字型にしたもの、中空糸繊維束の一端を適当なシール材により一括封止したもの、中空糸繊維束の一端を適当なシール材により一本ずつ固定されていない状態(フリー状態)で封止したもの、中空糸繊維束の両端を開口したものなどが挙げられる。また、中空糸膜モジュールの形態も特に限定されることはなく、例えば円筒状であってもスクリーン上であってもよい。本実施形態の洗浄方法では、SS排出性が重要となることから、中空糸繊維束の一端を1本ずつフリー状態で封止した「片端フリー」タイプのモジュールを用いることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態で使用される中空糸膜モジュールによる濾過の方式としては、外圧全濾過、外圧循環濾過などが挙げられ、所望の処理条件、処理性能に応じて適宜選択することができる。膜寿命の点では濾過と膜表面の洗浄を同時に行うことのできる循環方式が好ましく、設備の単純さ、設置コスト、運転コストの点では全濾過方式が好ましい。
【0027】
本実施形態においては、中空糸膜の濾液側から気体または液体で加圧する加圧工程を行うが、加圧工程に用いる気体としては空気、窒素などが挙げられ、液体としては純水、膜濾過水などが挙げられ、次亜塩素酸ナトリウム、酸、アルカリなどの薬液を添加してもよい。加圧工程に使用する気体または液体の圧力は中空糸膜の破裂圧力を超えない範囲内で選択されるが、破裂圧力が0.5MPaよりも大きい場合は加圧気体または液体の圧力が0.10MPa〜0.50MPaの範囲内にあることが好ましく、0.15MPa〜0.30MPaの範囲内にあることがより好ましい。
【0028】
気体または液体による加圧工程を実施する時間は、中空糸膜モジュールの濾液側の液体を完全に排出するか置き換えることが可能な時間以上である必要があるが、加圧気体または液体の単位時間当たりの導入量と中空糸膜モジュールの濾液側の体積により加圧工程に要する時間が異なる。また、中空糸膜の内部体積をも考慮して加圧時間を設定する必要がある。
【0029】
気体による加圧工程において、中空糸膜の原液側から気体が放出される圧力よりも小さい圧力の気体を中空糸膜の濾液側から導入した場合、加圧気体の注入部と中空糸膜モジュールとを接続する配管の中及び中空糸膜モジュールの中に満たされた濾液により、逆洗が行われる。例えば、該配管中の中間部に透過液タンクなどの滞留部を設けることにより、逆洗時の液量を増やすこともできる。
【0030】
本実施形態においては、中空糸膜モジュールの原液側に液体が満たされた状態で中空糸膜の原液側を気泡で洗浄するが、この気体洗浄工程で用いる気体として、空気、窒素などが挙げられる。気体の供給量は特に限定されないが、膜洗浄効果が高く、膜破損のおそれが小さいことから、気体の供給量が中空糸膜の面積1m
2あたり5〜1000ノルマルリットル/時の範囲内にあることが好ましく、10〜500ノルマルリットル/時、の範囲内にあることがより好ましい。上記した「片端フリー」タイプのモジュールを使用した場合、中空糸膜から剥離したSSが排出されやすく、気体による膜洗浄効果が極めて高くなる。
【0031】
逆洗浄後に中空糸膜を薬液洗浄して、中空糸膜に付着した有機物、無機物などを溶解除去することもできる。ここで、薬液洗浄の方法としては、有機物、無機物などを除去するために水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリで処理する方法、金属類を除去するために酸水溶液などの酸で処理する方法、洗浄剤で処理する方法、これらを組み合わせて連続的に行う方法があり、これによって中空糸膜の再生が可能である。
【0032】
これまでに述べてきた、濾過工程、加圧工程、充水工程、気体洗浄工程及び排水工程の一連の工程は、制御装置によってシーケンスコントロールを行うようにすることが可能である。例えば、一定時間濾過を行い、加圧工程、充水工程、気体洗浄工程、排水工程を行った後に、再度充水工程、気体洗浄工程、排水工程を行い、続いて濾過工程を行うという一連の工程をシーケンスコントロールにより自動的かつ連続的に行うことが可能である。これにより、濾過と中空糸膜の洗浄工程とを交互に繰り返しながら長期間安定的に運転を継続することが可能となる。充水工程、気体洗浄工程、排水工程の繰り返し回数を変更することは可能である。繰り返し回数を増やすことで洗浄効果が高まるが、繰り返し回数を増やすことで濾液の回収率が低下するため、2回〜5回の範囲内にあることが好ましい。また、濾過工程、加圧工程、気体洗浄工程、排水工程を一定回数以上繰り返した後に、充水工程、気体洗浄工程、排水工程を2回以上繰り返す一連の工程もシーケンスコントロールにより行うことができる。濾過工程、加圧工程、気体洗浄工程、排水工程の繰り返し回数を変更することは可能である。繰り返し回数を減らすことで洗浄効果が高まるが、繰り返し回数を減らすことで濾液の回収率が低下するため、20回〜500回の範囲内にあることが好ましい。充水工程、気体洗浄工程、排水工程の繰り返し回数も変更することが可能であり、繰り返し回数を増やすことで洗浄効果が高まるが、繰り返し回数を増やすことで濾液の回収率が低下するため、5回〜30回の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
本実施形態の中空糸膜モジュールの洗浄方法は、中空糸膜を構成する素材、モジュールの形状を問わず、従来の洗浄方法よりも卓越した洗浄効果が発現されることから、極めて広範な用途において、従来よりも高い透過流束で長期間連続して安定的な濾過を行うことが可能である。例えば食品工業分野では、原料水の除菌・除濁・除鉄・除マンガン、洗浄用水の除菌・微粒子除去・回収、天然水の除菌・微粒子除去、醤油の除菌・精製、清酒の除菌・精製、食酢の除菌・精製、みりんの精製・調味料の除菌・精製、醸造折からの製品回収、糖液の除菌・微粒子除去・精製、ハチミツの精製、酵素・蛋白質の精製・濃縮、発酵液の精製、チーズポエーからの蛋白質の回収精製、ミルクの濃縮による高蛋白乳の製造、水産加工排水からの蛋白質回収、魚肉蛋白の濃縮、肉加工廃棄物からの肉蛋白質の回収、豚の血液からの赤血球の分離、血液中のアルブミンとグロブリンの濃縮精製、大豆ホエーからの生理活性物質の回収・精製、大豆煮汁からの蛋白質回収、あぶらな蛋白の毒素除去と蛋白質濃縮、じゃがいもでんぷん工業排水からの有用蛋白質の回収、天然色素の回収精製、バクテリア細胞及び代謝物質の回収による発酵液の精製などの用途で使用可能である。また、医療分野では、原液となる純水、超純水製造装置の前処理、逆洗用水のパイロジェン除去、注射用水製造、透析用水製造、透析液の精製、ワクチン・酵素・ビールス・核酸・蛋白質などの生理活性物質の分離・濃縮・精製・ホルモンの精製、人口血液の製造、多糖類の濃縮精製、病院手洗い水の除菌、手術器具洗浄水の除菌などの用途に使用可能である。また、電子工業分野では、逆浸透膜の前処理、超純水のファイナルフィルター、超純水のユースポイントフィルター、超純水のユニット組み込みフィルター、洗浄水の微粒子除去、研磨排水の回収、ダイシング排水の回収などの用途で使用可能である。また、化学工業分野では、塗料の濃縮・回収、油剤の分離・回収、エマルジョンの分離・回収、コロイドの分離・回収、微粉体の洗浄精製、洗浄水の微粒子除去、メッキ液の精製、電気透析の前処理等の用途で使用可能である。また、繊維・染色加工分野では、PVA糊抜き排水のクローズド化、繊維加工油剤の回収・再利用、洗毛排水からのラノリンの回収、絹糸加工排水からのセリシンの回収などの用途で使用可能である。また、鉄鋼・機械加工分野では、バレル研磨排水の回収、バフ研磨排水の回収、圧延油排水処理、水溶性切削油排水処理、動植物油加工排水の処理、脱脂専用排水からのエマルジョン除去・洗浄剤回収、リンス水のエマルジョン除去・リンス水回収、スクリーン版洗浄剤からのインク類の除去などの用途で使用することが可能である。
【0034】
次に、本実施形態の濾過装置の一例を図面にて説明する。
図2は上記の洗浄方法を行うために使用することができる外圧型中空糸膜モジュールを用いた濾過装置の一例の概略構成図である。この濾過装置において、中空糸膜エレメント4が収納された中空糸膜モジュール1の内部は、上部が濾液側A、下部が原液側Bになるように接着端部2によって仕切られている。濾液側Aには、濾液出口5及び加圧気体導入口6が設けられており、原液側Bには、原液導入口7、気体排出口8、気体導入口9及び原液排水口10が設けられている。原液側Bには、中空糸膜エレメント4が配置されており、中空糸膜エレメント4の下側には散気板3が配置されている。原液導入口7から原液側B内に導入された原液は中空糸膜エレメント4を通過して濾液となり、濾液は濾液側Aに導出される。
【0035】
次いで、本実施形態の運転方法の一例を、加圧工程において気体で加圧する場合の外圧全濾過方式を例として
図3及び
図4にしたがって説明する。
図4には、
図3に例示した濾過装置の基本的な運転方法について、各工程と作動バルブの開閉との相関が示されている。ここで、
図4中、丸印が付されているときに当該バルブが開いていることを意味する。
【0036】
本実施形態の濾過装置は、中空糸膜モジュール1と、中空糸膜モジュール1に原液を供給する送液ポンプ29と、中空糸膜モジュール1内を加圧するための加圧装置としてのエアーコンプレッサー30と、制御装置40と、を備えている。制御装置40は、送液ポンプ29及びエアーコンプレッサー30の駆動制御と、各バルブの開閉制御とを行うことが可能である。制御装置40は、各工程をシーケンスコントロールによって順次実行するための制御を行う。なお、制御装置40を省略し、各工程を順次行うように、手動でバルブの切り換え等を順次行ってもよい。
【0037】
本実施形態の濾過装置において、全てのバルブを閉じた状態から、気体排出口バルブ24、原液導入口バルブ21を開き、送液ポンプ29を作動させる(充水工程)。これにより、濾過容器25の原液側B(中空糸膜モジュール1の原液側B)に原液が導入される。気体排出口8(気体排出口バルブ24)から原液があふれた後、濾液出口バルブ23を開き、気体排出口バルブ24を閉じて濾過を開始する(濾過工程)。濾過工程では、濾過時間の経過に伴い中空糸膜エレメント4の膜表面にはSS成分が付着し、濾過能力が低下するため、続いて物理洗浄を行う。
【0038】
すなわち、送液ポンプ29を停止した後、濾過工程で開いている原液導入口バルブ21及び濾液出口バルブ23を閉じて濾過を停止し、次いでエアーコンプレッサー30を作動させながら原液排出口バルブ27及び加圧気体導入口バルブ22を開き加圧気体(加圧流体)を加圧気体導入口6から濾過容器25の濾液側A(中空糸膜モジュール1の濾液側A)に導入して加圧工程を行う。この際、濾液側A及び中空糸膜内の濾液が、中空糸膜の壁面を通して原液側Bに押し出され、原液排水口10(原液排出口バルブ27)より外部へ排出される。
【0039】
続いて、濾液側圧抜きバルブ31を開けて濾液側Aの圧力を低下させ、加圧工程により低下した原液側Dの液面を上昇させるため、気体排出口バルブ24及び原液導入口バルブ21を開く。また、送液ポンプ29を作動させて再度原液側Bに原液を導入する(充水工程)。気体排出口8(気体排出口バルブ24)から原液があふれた後、送液ポンプ29を停止させ、原液導入口バルブ21を閉じて充水工程を停止する。
【0040】
さらに、気体導入口バルブ28を開いて気体洗浄工程(バブリング)を所定時間実施し、気体導入口バルブ28を閉じた後に原液排出口バルブ27を開いて原液側Bの原液を排出する排水工程を行う。
【0041】
そして、再度、送液ポンプ29を作動させて再度原液側Bに原液を導入する(充水工程)。気体排出口8(気体排出口バルブ24)から原液があふれた後、送液ポンプ29を停止させ、原液導入口バルブ21を閉じて充水工程を停止する。これにより、次の濾過工程を行うことができる。
【0042】
ここで、気体洗浄工程、排出工程、充水工程を繰り返すことでSS成分の残留を低減することができる。一方で、濾過工程、加圧工程、充水工程、気体洗浄工程、排水工程、充水工程を一定回数以上繰り返した後に、気体洗浄工程、排水工程、充水工程を繰り返すことで一定回数内にモジュールに付着したSS成分の一部を排出させる事ができる。
【0043】
以上説明した基本的な運転方法に加えて、ドレン排出と充水とを繰り返して中空糸膜表面及び中空糸膜モジュール内部の洗浄を行う工程、あるいはフラッシング洗浄工程など、必要に応じて他の工程を追加することも可能である。
【0044】
なお、加圧工程の後の充水工程は、加圧工程実施後に中空糸膜の外表面側の原液の液位が低下した場合に必要に応じて行えばよく、加圧工程直後の充水工程を省略することも可能である。
【0045】
本実施形態の濾過装置を、イオン交換樹脂、イオン交換膜、逆浸透膜、活性炭吸着装置、活性汚泥処理装置などの用途に応じた後処理装置と組み合わせて、濾液の更なる浄化及び精製を行うことも可能である。また、本実施形態の濾過装置から排出される濃縮液またはドレンを、沈殿槽、凝集剤添加装置及び反応層からなる凝集装置、焼却装置などにより処理し、廃棄物量を低減することも可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明の一例をより詳細に説明する。以下に実施例及び比較例の結果から、本発明の一例によれば、長期間の安定的な濾過が可能であることが明らかである。
【0047】
<実施例1>
中空糸膜モジュールとして、ポリビニルアルコールにより親水化処理されたポリフッ化ビニリデン系樹脂からなり、平均孔径が0.02ミクロンである中空糸膜よりなる膜面積28m
2の片端フリータイプの中空糸膜モジュールを使用した。SS成分として水酸化第二鉄を160mg/L含むモデル水を原液として、前記中空糸膜モジュールにより、外圧全濾過方式で流量3500L/hの条件で定流量濾過を行った。シーケンスコントロールにより、濾過工程10分に1回、中空糸膜エレメントの洗浄を行う洗浄工程及び再洗浄工程を実施した。すなわち、濾過工程と濾過工程との間に膜エレメント再生工程を行った。
図5に示すように、洗浄工程では、中空糸膜モジュールの濾液側から圧力0.2MPaの圧縮空気を送り込んで中空糸膜モジュール内を加圧することにより10秒間加圧操作する加圧工程、原液側に原液を満たす充水工程、中空糸膜モジュールの原液側の下部から空気を1700NL/hの流量で30秒間噴出させる気体洗浄工程、及び原液側のドレンを排出する排水工程、及び原液側に原液満たす充水工程を行った。この洗浄工程の後、同様の条件で、気体洗浄工程、排水工程及び充水工程をさらに1回行う、再洗浄工程を行った。濾過運転期間中、中空糸膜エレメントへのSS付着量を定期的に測定し、7日間運転を継続したところ、SS付着量は乾重量で66gであった。
【0048】
<実施例2>
中空糸膜の洗浄において、濾過工程10分に1回、洗浄工程を行った。洗浄工程では、中空糸膜モジュールの濾液側に圧力0.2MPaの空気で加圧することにより10秒間加圧操作する加圧工程、充水工程、中空糸膜モジュールの原液側の下部から空気を1700NL/hの流量で60秒間噴出する気体洗浄工程、原液側のドレンを排出する排水工程を行った。濾過工程と上記洗浄工程を120回繰り返したところで、再洗浄工程を行った。再洗浄工程では、上記洗浄工程と同様の条件で、気体洗浄工程、排水工程及び充水工程を10回繰り返し行った。その他の条件は実施例1と同様にしてモデル水の濾過を行った。7日間運転を継続したところ、SS付着量は乾重量で58gであった。
【0049】
<比較例1>
中空糸膜の洗浄において、濾過工程10分に1回、洗浄工程を行った。洗浄工程では、中空糸膜モジュールの濾液側に圧力0.2MPaの空気で加圧することにより10秒間加圧操作する加圧工程、原液側に原液を満たす充水工程、中空糸膜モジュールの原液側の下部から空気を1700NL/hの流量で60秒間噴出させる気体洗浄工程、原液側のドレンを排出する排水工程のみを行った。再洗浄工程は行っていない。その他の条件は実施例1と同様にしてモデル水の濾過を行った。7日間運転を継続したところ、SS付着量は乾重量で397gであった。
【0050】
図8に示すように、比較例1では、SS付着量が次第に増加しているのに対し、実施例1及び2では、SS付着量が増大することなく長期間に亘って安定している。したがって、長期間安定的に連続した濾過運転が可能となっている。