(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図21に示した横軸斜流ポンプ100では、水中軸受111と主軸101のスリーブとの間の摩擦を低減することができる一方で、メンテナンスに手間がかかるという問題がある。具体的には、水中軸受111にグリースを一定で供給するための図示しないポンプ、グリース供給部112a、及びグリース排出部112bを作業員が定期的にメンテナンスする必要があり、またグリース排出部112bから排出されたグリースを処理する必要もある。また、グリースは消耗品であるので、そのコストもかかる。
【0007】
そこで、グリースを使用しない水中軸受として、セラミックからなる水中軸受や、樹脂材料からなる水中軸受が知られている。これらの水中軸受は、横軸ポンプの処理液を介して主軸のスリーブと摺動するので、潤滑のためのグリースが不要である。一方で、このような処理液はグリースに比べると潤滑性が劣るので、グリースを使用した水中軸受に比べて、水中軸受に対する摩擦力が増加する傾向がある。セラミックからなる水中軸受は一般的に耐摩耗性が良好であるので、摩擦による水中軸受の摩耗は大きな問題とならない。しかしながら、樹脂材料からなる水中軸受は、セラミックからなる水中軸受に比べて耐摩耗性が低いので、樹脂材料からなる水中軸受を用いる場合は、何らかの摩耗の対策を講じる必要がある。
【0008】
また、横軸ポンプは、様々な異物(スラリー)が含まれる処理液を処理することがある。このような場合、主軸のスリーブと水中軸受との間にスラリーを含む処理液が入り込むと、スリーブと、セラミック又は樹脂材料からなる水中軸受との間にスラリーが噛みこむことにより摩擦が増加し、スリーブと水中軸受が発熱する。スリーブと水中軸受が発熱すると熱膨張するので、スリーブと水中軸受との間の隙間(クリアランス)が小さくなる。スリーブと水中軸受との間の隙間が小さくなると、処理液に含まれるスラリーがその隙間に溜まりやすくなるので、スリーブと水中軸受との間の摩擦が増加し、さらにこれらが熱膨張する。
【0009】
このように、スリーブと水中軸受との熱膨張により上記隙間が小さくなり、スラリーがこの隙間に溜まると、隙間を処理液が流れにくくなり、スリーブ及び水中軸受の熱が処理液に吸収されず、スリーブ及び水中軸受に熱が溜まりやすくなる。また、上記隙間にスラリーが溜まると、スラリーが主軸の回転に対する抵抗となり、主軸を回転させるために必要な動力が増加するという問題もある。これらの問題は、スリーブ(主軸)と水中軸受との隙間からスラリー等が自由落下し難い横軸ポンプに特に顕著な問題であり、横軸斜流ポンプだけでなく横軸軸流ポンプにも生じ得る。
【0010】
本発明は上記問題の少なくとも一つに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、スリーブ(主軸)と水中軸受との間の処理液の流れを促進することのできる横軸ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態によれば、横軸ポンプが提供される。この横軸ポンプは、回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する筒状の水中軸受と、前記水中軸受の外周面を保持する軸受ケーシングと、前記回転軸の外周面に固定される軸受カバーと、を有する。前記軸受カバーは、前記軸受ケーシングの端面と所定の隙間を有して前記回転軸に固定される。横軸ポンプは、前記回転軸の回転により前記軸受カバーが回転して、前記回転軸と前記水中軸受との間の液体及び固体を、前記回転軸と前記水中軸受との間から排出するように構成される。
【0012】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受カバーは、前記軸受ケーシングの端面に対向する面に溝部又は羽根部を有する。
【0013】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受カバーと前記軸受ケーシングとの間の前記隙間は、0mm超3mm以下である。
【0014】
上記横軸ポンプの一形態において、前記水中軸受は、軸方向に沿った溝をその内周面に有する。
【0015】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受カバーは、前記軸受ケーシングの端面に対
向する面からその反対側の面に連通する通水孔を有する。
【0016】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受カバーは、前記軸受ケーシングの端面に対向する面に羽根部を有し、前記羽根部は、前記軸受カバーの径方向内側に位置する第1羽根部と、前記軸受カバーの径方向外側に位置する第2羽根部とを含み、前記第1羽根部の軸方向の長さは、前記第2羽根部の軸方向の長さよりも長く形成される。
【0017】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受カバーは、前記軸受ケーシングの一端面と前記隙間を有して回転軸に固定される第1軸受カバーと、前記軸受ケーシングの他端面と所定の隙間を有して回転軸に固定される第2軸受カバーと、を有し、前記水中軸受及び前記軸受ケーシングは、前記回転軸と前記水中軸受との間の液体及び固体を排出するための排出孔を有する。
【0018】
上記横軸ポンプの一形態において、上記横軸ポンプは、前記回転軸の鉛直方向の変位を検知するように構成された変位センサを有する。
【0019】
上記横軸ポンプの一形態において、前記軸受ケーシングは、前記変位センサを取り付けるための取付部材をその一端面に有し、前記変位センサは、前記回転軸の前記水中軸受とは接触しない部分の変位を検知するように構成される。
【0020】
上記横軸ポンプの一形態において、前記変位センサは、第1変位センサ及び第2変位センサを含み、前記第1変位センサと前記第2変位センサは、前記回転軸の中心を向くように、前記回転軸の周方向に異なる位置にあり且つ前記回転軸の軸中心点で非対称となる位置に配置される。
【0021】
上記横軸ポンプの一形態において、上記横軸ポンプは、前記変位センサが検知した変位量のデータを受信可能に構成された制御装置を有し、前記制御装置は、前記変位量のデータと予め設定された閾値とを比較し、前記変位量のデータが前記閾値を超えたか否かを判定するように構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スリーブ(主軸)と水中軸受との間の処理液の流れを促進することができる横軸ポンプを提供することができる。これにより、スリーブと水中軸受との間を流れる処理液によって、スリーブ及び水中軸受の冷却を促進することができる。また、スリーブと水中軸受との間の処理液の流れを促進することでスラリーを排出することができるので、スリーブと水中軸受との間にスラリーが噛みこむことによる摩擦の増加を抑制することができる。したがって、この摩擦の増加によりスリーブと水中軸受が発熱することを抑制することができる。ひいてはスリーブと水中軸受の熱膨張に起因する主軸の回転に要する動力が増加すること、及びスリーブ及び水中軸受に熱が溜まることを抑制することができる。また、水中軸受が樹脂材料からなる場合は、スリーブと水中軸受との間のスラリーを排出することができるので、スラリーによる摩耗を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明の横軸ポンプの一例として横軸斜流ポンプが説明されるが、本発明は横軸軸流ポンプにも適用することができる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る横軸斜流ポンプを示す側断面図である。図示のように、横軸斜流ポンプ10は、湾曲した管路を有する吸込ケーシング12と、吸込ケーシング12の下流側にフランジ接続される管状の吐出ケーシング14とを有する。また、横軸斜流ポンプ10は、略水平方向に延在する主軸11(回転軸の一例に相当する)を有する。主軸11は、吸込ケーシング12を貫通し、吐出ケーシング14の内部まで延在する。主軸11と吸込ケーシング12との隙間は、軸封部13により液密に封止される。
【0026】
主軸11の先端側は、吐出ケーシング14内に配置される水中軸受40によって回転可能に支持される。水中軸受40は、その外周面が軸受ケーシング41により保持される。軸受ケーシング41は、複数の案内羽根18を介して吐出ケーシング14に固定された内部ケーシング(内筒)31内に、図示しないリブ等によって固定される。軸受ケーシング41には、後述する取付部材47(
図16参照)を介して、例えば渦電流式の変位センサ43が取り付けられる。変位センサ43は、配線43aを介して制御装置60と通信可能に接続され、変位センサ43が検知した主軸11の変位量が制御装置60に送信される。
【0027】
主軸11には、インペラ17がキー15によって固定される。これにより、主軸11の回転に伴ってインペラ17が回転する。インペラ17と内部ケーシング31により、水中軸受40を収容する空間である水中軸受室19が形成される。
【0028】
主軸11の後端側は、主軸11を回転させるためのエンジンやモータ等の原動機の軸継手20に接続される。また、軸継手20と軸封部13との間には、吸込ケーシング12の
外部において主軸11を回転可能に支持する外部軸受22が設けられる。
【0029】
図2は、
図1に示した主軸11の先端部の拡大側断面図である。
図2においては、便宜上、
図1に示した変位センサ43が省略されている。
図2に示すように、主軸11の外周面には、水中軸受40の内周面に対して摺動する円筒状のスリーブ11aが固定される。スリーブ11aは、例えばステンレス鋼等の金属から構成される。スリーブ11aは、主軸11が水中軸受40に直接摺動することによる主軸11の損傷を防止するための付加的な部材である。また、水中軸受40は、セラミック又は例えば特開2013−194769号公報に開示されているような、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維、及び不可避不純物を含む樹脂材料から構成される。主軸11のスリーブ11aの外周面と、水中軸受40の内周面との間には、非常に小さい隙間(クリアランス)が設けられる。
【0030】
主軸11の外周面には、略円盤状の軸受カバー42が固定される。軸受カバー42は、軸受ケーシング41の端面と所定の隙間を有して近接するように、軸受ケーシング41の後端側(
図2中左側)に配置される。軸受ケーシング41は、後端側が水中軸受40の端面から延在している。これにより、軸受ケーシング41の内周面と主軸11の外周面との間に、処理液が通過するための流路44が形成される。
【0031】
次に、
図2に示した軸受カバー42の形状について詳細に説明する。
図3Aは、軸受カバー42の正面図であり、
図3Bは、軸受カバー42の側断面図である。
図3Aは、
図2に示す矢視3−3から見た正面図である。即ち、
図3Aの正面図は、軸受カバー42の軸受ケーシング41の端面に対向する面を示す。
図3A及び
図3Bに示すように、軸受カバー42は、中央に主軸11が貫通する孔42aを有する。また、軸受カバー42は、一以上のねじ穴42bを有し、ねじ穴42bに例えばセットスクリュー等を挿入することで軸受カバー42が主軸11に固定される。軸受カバー42は、軸受ケーシング41の端面に対向する面に、その中央から外周に向かって放射状に形成された複数の溝部42cを有する。
【0032】
図4は、
図2に示した水中軸受40の一例を示す斜視図である。
図4に示す例では、水中軸受40は、全体的に円筒状をなしており、軸方向に沿った一以上の溝40aを有する。図示の例では、水中軸受40は4つの溝40aを有する。なお、本実施形態では、
図4に示す水中軸受40に限らず、
図5に示すような溝40aを有さない、円筒状の水中軸受40を採用することもできる。
【0033】
次に、本実施形態に係る横軸斜流ポンプ10を運転したときの作用について説明する。図示しない原動機によって主軸11が回転すると、主軸11に固定された軸受カバー42が回転する。軸受カバー42が回転すると、軸受カバー42と軸受ケーシング41の端面との隙間の処理液に、軸受カバー42と処理液との摩擦力によって、上記隙間から処理液が軸受カバー42の径方向外側に向かって押し出される流れが生じる(ポンプ効果)。このとき、軸受カバー42に形成された溝部42cによって、処理液を上記隙間から押し出すいっそう大きな力が生じる。
【0034】
上記隙間から処理液が押し出される流れが生じると同時に、軸受ケーシング41の逆の端面側(
図2中右側)から、処理液が水中軸受40とスリーブ11aの間に入り込む流れが生じる。このとき、処理液に含まれるスラリーは、水中軸受40とスリーブ11aの間の処理液の流れによって、水中軸受40とスリーブ11aとの間及び流路44を通過して、軸受カバー42の回転により上記隙間から排出される。水中軸受40が
図4に示したように軸方向に沿った溝40aを有する場合は、比較的大きな径を有するスラリーであっても、水中軸受40とスリーブ11aとの間をよりスムーズに通過することができ、スラリーが水中軸受40とスリーブ11aとの間に溜まることがいっそう抑制される。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る横軸斜流ポンプ10によれば、軸受カバー42の回転によって、水中軸受40とスリーブ11aとの間の処理液の流れを促進させることができる。この水中軸受40とスリーブ11aとの間の処理液の流れを促進することにより、スリーブ11aと水中軸受40との間を流れる処理液によってスリーブ11a及び水中軸受40の冷却を促進することができる。また、スリーブ11aと水中軸受40との間の処理液の流れを促進することで、処理液に含まれるスラリーがスリーブ11aと水中軸受40との間に滞留することを抑制することができる。ひいては、スリーブ11aと水中軸受40の熱膨張とスラリーの滞留を抑制して、これらに起因する主軸11の回転に要する動力が増加すること、及びスリーブ11a及び水中軸受40に熱が溜まることを抑制することができる。また、水中軸受40が樹脂材料からなる場合は、スリーブ11aと水中軸受40との間のスラリーを含む処理液を排出することができるので、スラリーによる摩耗を低減することができる。
【0036】
なお、
図3A及び
図3Bに示した軸受カバー42は、溝部42cを有するものとして説明しているが、溝部42cは、上記隙間から処理液を押し出す力を向上させるためのものであって、溝部42cが無くても上記隙間から処理液を押し出す流れを生じさせることができる。また、上記隙間の大きさは、軸受カバー42の回転によって水中軸受40とスリーブ11aとの間の処理液の流れを促進させることができる範囲で任意の値をとり得るが、例えば、その大きさは0mm超3mm以下であることが好ましい。上記隙間が0mmであると軸受カバー42と軸受ケーシング41が接触して、主軸11の回転に対する抵抗が生じてしまう。また、上記隙間が3mm超であると、軸受カバー42と処理液を上記隙間から効率的に排出することが難しくなる。なお、ここでの隙間の大きさとは、軸受カバー42の端面と軸受ケーシング41の端面との最小距離をいう。
【0037】
次に、他の実施形態にかかる横軸斜流ポンプについて説明する。
図1ないし
図5に示した横軸斜流ポンプ10と同一の部分は説明を省略し、異なる部分のみ以下で説明する。
図6は、他の実施形態に係る横軸斜流ポンプの主軸11の先端部の拡大側断面図であり、
図7は、
図6に示す軸受カバー42の矢視7−7から見た正面図である。
【0038】
図6及び
図7に示すように、この実施形態に係る横軸斜流ポンプは、
図1ないし
図5に示した横軸斜流ポンプ10に比べて、軸受カバー42の形状が異なる。即ち、軸受カバー42は、その内周部に、処理液を通過させるための一以上の通水孔42dを有する。通水孔42dは、軸受カバー42の軸受ケーシング41の端面に対向する面からその反対側の面に連通するように構成される。なお、
図7に示す正面図では、通水孔42dは、主軸11が貫通する孔42aと一体に形成されているので、通水孔42dは、軸受カバー42の内周面に形成された溝とみなすこともできる。一方で、
図6に示すように、軸受カバー42が主軸11に取り付けられた状態では、軸受カバー42の孔42aに主軸11が嵌合されるので、主軸11の外周面と軸受カバー42の内周面とによって通水孔42dが画定される。通水孔42dの大きさ及び数は、スリーブ11aと水中軸受40との間のクリアランスの大きさに応じて適宜調節される。なお、
図6及び
図7に示す例では、軸受カバー42は6つの溝部42cを有している。
【0039】
図6及び
図7に示す軸受ケーシング41を有する横軸斜流ポンプを運転したときの作用について説明する。主軸11の回転に伴って軸受カバー42が回転すると、軸受カバー42と軸受ケーシング41の端面との隙間の処理液に、軸受カバー42と処理液との摩擦力によって、上記隙間から処理液が軸受カバー42の径方向外側に向かって押し出される流れが生じる。これに伴い、軸受カバー42の軸受ケーシング41に対して反対側の面(
図6中左側)から、スラリーを含む処理液が通水孔42dに流入する。通水孔42dに流入した処理液は、その一部が軸受カバー42の回転によって上記隙間から押し出され、その
残りは軸受カバー42の回転により流路44を通過してスリーブ11aと水中軸受40との間に押し出される。このとき、大きな径を有するスラリーは、その重量が比較的大きいので、上記隙間から径方向外側に向かって押し出される処理液の流れにより大きな遠心力を受け、優先的に上記隙間から排出される。
【0040】
したがって、この横軸斜流ポンプによれば、軸受カバー42の回転によって、水中軸受40とスリーブ11aとの間の処理液の流れを促進させることができるとともに、大きな径を有するスラリーがスリーブ11aと水中軸受40との間に入り込むことを抑制することができる。このため、スリーブ11aと水中軸受40との間を流れる処理液によってスリーブ11a及び水中軸受40の冷却を促進しつつ、スリーブ11aと水中軸受40との間に大きな径のスラリーが滞留することをいっそう抑制することができる。ひいては、スリーブ11aと水中軸受40の熱膨張とスラリーの滞留を抑制して、これらに起因する主軸11の回転に要する動力が増加すること、及びスリーブ11a及び水中軸受40に熱が溜まることを抑制することができる。また、水中軸受40が樹脂材料からなる場合は、スリーブ11aと水中軸受40との間に大きな径のスラリーが入り込むことが抑制されるので、スラリーによる摩耗を低減することができる。
【0041】
なお、
図7に示した軸受カバー42は、溝部42cがその中央から外周に向かって放射状に形成されているが、溝部42cの形状はこれに限られない。例えば、
図8に示すように、軸受カバー42の径方向に対して傾斜するように溝部42cを設けてもよい。
【0042】
続いて、さらに他の実施形態にかかる横軸斜流ポンプについて説明する。この横軸斜流ポンプのうち、
図6及び
図7で説明した横軸斜流ポンプと同一の部分は説明を省略し、異なる部分のみ以下で説明する。
図9は、他の実施形態に係る横軸斜流ポンプの主軸11の先端部の拡大側断面図であり、
図10は、
図9に示す軸受カバー42の矢視10−10から見た正面図である。
【0043】
図9及び
図10に示すように、この実施形態に係る横軸斜流ポンプは、
図6及び
図7に示した横軸斜流ポンプ10に比べて、軸受カバー42の形状が異なる。即ち、軸受カバー42は、
図7に示した溝部42cに代えて、軸受カバー42の表面から突起するように形成された一以上の羽根部42eを有する。図示の例では、軸受カバー42は6つの羽根部42eを有する。羽根部42eは、軸受カバー42の軸受ケーシング41の端面に対向する面に、その中央から外周に向かって放射状に形成される。
【0044】
図9及び
図10に示す軸受ケーシング41を有する横軸斜流ポンプを運転したときの作用及び効果は、
図6及び
図7に示した軸受ケーシング41を有する横軸斜流ポンプを運転したときの作用及び効果とほぼ同一であるので、説明を省略する。なお、
図10に示す羽根部42eは、
図8に示した溝部42cのように、軸受カバー42の径方向に対して傾斜するように設けてもよい。
【0045】
図11は、他の実施形態に係る横軸斜流ポンプの主軸11の先端部の拡大側断面図であり、
図12は、
図11に示す軸受カバー42の矢視12−12から見た正面図である。この横軸斜流ポンプ10のうち、
図9及び
図10で説明した横軸斜流ポンプ10と同一の部分は説明を省略し、異なる部分のみ以下で説明する。
【0046】
図11及び
図12に示すように、この実施形態に係る横軸斜流ポンプは、
図9及び
図10に示した横軸斜流ポンプ10に比べて、軸受ケーシング41の形状、軸受カバー42の形状、軸受カバー42の数、並びに軸受ケーシング41及び水中軸受40が排出孔46を有する点、が異なる。
【0047】
具体的には、軸受ケーシング41は、後端側だけでなく先端側(
図11中右側)も、水中軸受40の端面から延在している。これにより、軸受ケーシング41の内周面と主軸11の外周面との間に、処理液が通過するための流路45が形成される。
【0048】
また、この横軸斜流ポンプは、二つの軸受カバー42を有する。即ち、一方の軸受カバー42は、軸受ケーシングの一端面と所定の隙間を有して近接するように、軸受ケーシング41の後端側(
図11中左側)に配置される。また、他方の軸受カバー42は、軸受ケーシングの他端面と所定の隙間を有して近接するように、軸受ケーシング41の先端側(
図11中右側)に配置される。
【0049】
軸受カバー42は、
図9及び
図10に示した羽根部42eに代えて、軸受カバー42の径方向内側に位置する第1羽根部42gと、径方向外側に位置する第2羽根部42fとを有する。第1羽根部42gの軸方向(
図11中左右方向)の長さは、第2羽根部42fの軸方向の長さよりも長く形成されており、第1羽根部42gは、その一部が軸受ケーシング41と主軸11との間の流路44又は流路45に入り込むように構成される。
図12に示すように、第1羽根部42g及び第2羽根部42fの平面視の形状は、
図10に示す羽根部42eと同様である。
【0050】
また、水中軸受40及び軸受カバー42は、その軸方向略中央部に一以上の排出孔46を有する。排出孔46は、水中軸受40とスリーブ11aとの間の空間から軸受カバー42の外側の空間とを連通する。
【0051】
図11及び
図12に示す横軸斜流ポンプを運転したときの作用について説明する。主軸11の回転に伴って一対の軸受カバー42が回転すると、軸受カバー42と軸受ケーシング41の端面との隙間の処理液に、軸受カバー42と処理液との摩擦力によって、上記隙間から処理液が軸受カバー42の径方向外側に向かって押し出される流れが生じる。これに伴い、それぞれの軸受カバー42の軸受ケーシング41と反対側の面から、スラリーを含む処理液が通水孔42dに流入する。通水孔42dに流入した処理液は、その一部が軸受カバー42の回転によって上記隙間から押し出され、その残りは軸受カバー42の回転により流路44又は流路45を通過してスリーブ11aと水中軸受40との間に押し出される。このとき、大きな径を有するスラリーは、その重量が比較的大きいので、上記隙間から径方向外側に向かって押し出される処理液の流れにより大きな遠心力を受け、優先的に上記隙間から排出される。流路44及び流路45を通過してスリーブ11aと水中軸受40との間に押し出された処理液は、排出孔46から排出される。
【0052】
この横軸斜流ポンプは、
図9及び
図10の横軸斜流ポンプが有する効果に加えて以下の効果を有する。即ち、この横軸斜流ポンプは、軸受カバー42が流路44又は流路45に入り込んだ第1羽根部42gを有するので、軸受カバー42が回転することにより処理液を効率よく流路44又は流路45に押し出すことができ、水中軸受40とスリーブ11aとの間を通過する処理液の流速を向上させることができる。また、一対の軸受カバー42が軸受ケーシング41の両側に設けられるので、2つの軸受カバー42によって水中軸受40とスリーブ11aとの間に処理液を押し込むことができ、処理液の流速を向上させることができる。したがって、スリーブ11a及び水中軸受40の冷却をいっそう促進することができる。なお、水中軸受40とスリーブ11aとの間を通過する処理液の流速が向上することによって、水中軸受40とスリーブ11aとの間を通過するスラリーが増加することも考えられる。しかしながら、比較的大きなスラリーは軸受カバー42と軸受ケーシング41の端面との隙間から優先的に排出されるので、水中軸受40とスリーブ11aとの間には大きなスラリーが通過しない。また、水中軸受40とスリーブ11aとの間を通過するスラリーの速度が向上することから、早急に排出孔46からスラリーが排出される。したがって、水中軸受40とスリーブ11aとの間にスラリーが滞留することを充分
に抑制することができる。
【0053】
次に、以上で説明した横軸斜流ポンプに使用することのできる軸受カバー42の他の例を説明する。
図13Aは、軸受カバー42の他の例の側断面図であり、
図13Bは軸受カバー42の他の例の正面図である。
図13A及び
図13Bに示すように、この軸受カバー42は、
図7に示した軸受カバー42に比べてより大きな通水孔42dを有する。この軸受カバー42によれば、横軸斜流ポンプを運転したときにより多くの処理液が通水孔42dを通過して、より多くの処理液を水中軸受40とスリーブ11aとの間に通過させることができる。したがって、スリーブ11a及び水中軸受40の冷却をいっそう促進することができる。
【0054】
図14Aは、軸受カバー42の他の例の側断面図であり、
図14Bは軸受カバー42の他の例の正面図である。
図14A及び
図14Bに示すように、この軸受カバー42は、軸方向に対して斜めに形成された通水孔42dを有する。
図14Aに示す矢印方向に主軸11及び軸受カバー42が回転することにより、効率よく処理液を通水孔42d内に取り込むことができ、より多くの処理液を水中軸受40とスリーブ11aとの間に通過させることができる。したがって、スリーブ11a及び水中軸受40の冷却をいっそう促進することができる。
【0055】
図15Aは、軸受カバー42の他の例の側断面図であり、
図15Bは軸受カバー42の他の例の正面図である。
図15A及び
図15Bに示すように、この軸受カバー42は、その内周面に形成された螺旋状の通水孔42hを有する。即ち、通水孔42hは、軸受カバー42の内周面に形成されたネジ溝の形態を有する。主軸11及び軸受カバー42が回転することにより、効率よく処理液を通水孔42h内に取り込むことができ、より多くの処理液を水中軸受40とスリーブ11aとの間に通過させることができる。したがって、スリーブ11a及び水中軸受40の冷却をいっそう促進することができる。
【0056】
次に、
図1に示した変位センサ43について詳細に説明する。
図16は、変位センサ43を備えた横軸斜流ポンプの主軸11の先端部の拡大側断面図である。横軸斜流ポンプは、主軸11が水平方向に延在しているので、主軸11の自重によって水中軸受40の内周面の鉛直方向下面が摩耗しやすい。水中軸受40の内周面の鉛直方向下面が摩耗すると、主軸11は下方に変位する。このため、変位センサ43は、主軸11の鉛直方向の変位を検知することで、間接的に水中軸受40の摩耗量を検知することができる。なお、
図16においては、
図1に示した制御装置60と変位センサ43を通信可能に接続する配線43aは図示省略されている。
【0057】
図16に示すように、軸受ケーシング41は、軸受カバー42が近接して配置されていない側の端面に、変位センサ43を取り付けるための取付部材47を有する。図示の例では、取付部材47は、軸受ケーシング41の鉛直方向上方及び下方の2点に取り付けられる。変位センサ43は、主軸11の軸中心を向いて配置され、主軸11の水中軸受40と接触しない部分の変位を検知する。図示の例では、変位センサ43は、主軸11の先端部分の変位を検知するように構成されるが、例えばスリーブ11aが主軸11の先端部分まで延在している場合は、スリーブ11aの変位を検知してもよい。スリーブ11aは主軸11と一体に構成されているので、スリーブ11aの変位を検知することは、主軸11の変位を検知することと同じことを意味する。
【0058】
水中軸受40が摩耗すると主軸11は鉛直方向下方に変位するので、鉛直方向上方に位置する変位センサ43は、この変位センサ43と主軸11との距離が大きくなることを検知することができる。一方で、鉛直方向下方に位置する変位センサは、この変位センサ43と主軸11との距離が小さくなることを検知することができる。なお、
図16に示す例
では、2つの変位センサ43が設けられているが、これに限らず、
図1に示すように、鉛直方向上方又は下方のいずれか一方に1つの変位センサ43を設けてもよい。
【0059】
図17及び
図18は、軸方向の他の位置に配置された変位センサ43を示す図である。
図17及び
図18に示すように、変位センサ43は、軸受ケーシング41及び水中軸受40の内部に埋め込まれてもよい。即ち、変位センサ43の主軸11の軸方向の位置は任意である。
図18に示すように、一対の軸受カバー42が主軸11に設けられて、軸受ケーシング41の端面に
図16に示した取付部材47を取り付けることができない場合には、変位センサ43を軸受ケーシング41及び水中軸受40の内部に埋め込むことが特に有効である。
【0060】
図19A−
図19Dは、変位センサ43の配置パターンを説明する図である。
図19A−
図19Dは、主軸11の軸方向から見たときの変位センサ43の位置を示す。
図19A及び
図19Bに示すように変位センサ43は、主軸11の軸中心を向くように、主軸11に対して鉛直方向上方又は下方にそれぞれ設けることができる。これにより、変位センサ43は、主軸11の鉛直方向の変位を検知することができる。
【0061】
また、
図19C及び
図19Dに示すように、2つの変位センサ43を、主軸11の軸中心を向くように、主軸11の軸中心よりも上方又は下方であって、周方向に異なる位置に配置してもよい。言い換えれば、2つの変位センサ43は、主軸11の軸中心を向くように、主軸11の周方向に異なる位置であり且つ主軸11の軸中心点で非対称となる位置に配置され得る。このように2つの変位センサ43が主軸11の2カ所の変位を検知することにより、主軸11の鉛直方向の変位を検知することができるとともに、主軸11の軸中心位置を検知することができる。
【0062】
次に、以上で説明した変位センサ43を用いて水中軸受40の交換時期を判定する方法について説明する。
図1に示したように、変位センサ43は、配線43aにより制御装置60と通信可能に接続される。変位センサ43は、連続的又は間欠的に主軸11の鉛直方向の変位を検知し、その変位量のデータを制御装置60に送信するように構成される。制御装置60は、変位センサ43から受信した変位量のデータに基づいて、水中軸受40の交換時期を判定する。
【0063】
図20は、変位センサ43が検知した変位量と横軸斜流ポンプの運転時間との関係の一例を示すグラフである。グラフの縦軸は、変位センサ43が検知した変位量(d)を示し、グラフの横軸は横軸斜流ポンプの運転時間(t)を示す。図示の例では、変位センサ43は、連続的に主軸11の鉛直方向の変位量を検知している。変位量(d)は運転時間(t)が増加するにつれて増加している。
【0064】
ここで、制御装置60には、予め主軸11の許容される変位量、即ち許容値d1が設定される。許容値d1としては、例えば、横軸斜流ポンプが正常に運転可能である水中軸受40の摩耗量に基づいて決定される。即ち、水中軸受40は、主軸11の変位量(d)が許容値d1を超える前に交換されることが望ましい。そこで、制御装置60には、水中軸受40を交換する目安を示す閾値として、交換値d2が予め設定される。交換値d2としては、例えば許容値d1の0.7〜0.8倍の値を設定することができる。
【0065】
制御装置60は、変位センサ43から取得した変位量のデータを、所定時間(Δt)毎に交換値d2と比較する。所定時間(Δt)は任意であるが、横軸斜流ポンプが常時運転ポンプである場合は、例えば1000時間〜2000時間であり、横軸斜流ポンプが非常用運転ポンプである場合は、例えば1年である。なお、変位センサ43から取得した変位量のデータを、モニタ等に表示することができる場合は、表示された変位量のデータが交
換値d2を超えているかどうかをオペレータが手動で確認してもよい。
【0066】
図示の例では、運転時間t1及びt2のときに、制御装置60が変位センサ43から取得した変位量のデータを交換値d2と比較する。制御装置60は、変位量(d)が交換値d2を超えていないと判定した場合(運転時間t1)、変位量の監視を継続する。制御装置60は、変位量(d)が交換値d2を超えたと判定した場合(運転時間t2)、水中軸受40の交換時期が到来したものとして、例えばモニタ等の表示装置、スピーカ等の発音装置、ランプ等の発光装置、バイブレーション機能を有する振動発生装置等により、オペレータに発報する。このようにして、制御装置60は、水中軸受40の交換時期を判定し、オペレータに交換時期が到来したことを知らせることができる。
【0067】
発報を確認したオペレータは、水中軸受40の交換準備をし、主軸11の変位量(d)が許容値d1に達する運転時間t3までに、水中軸受40を交換する。なお、オペレータ自身が、変位量のデータが交換値d2を超えているかどうかを手動で確認する場合も同様に、オペレータが変位量のデータが交換値d2を超えていることを認識したときに、水中軸受40の交換を行う。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。