【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって解決される。本発明によれば、ロッキング要素は、ロッキング要素が駆動部材に回転方向に拘束される、その近位用量設定位置から、遠位用量投薬位置へ、ハウジングに対して軸方向に可動であり、ロッキング要素がその遠位用量投薬位置またはその遠位リセット位置にあるとき、ロッキング要素が駆動部材から回転方向にデカップリングされる。本発明の主要な態様の1つは、それぞれの軸方向位置を想定することによってデバイスの用量設定モード、用量投薬モード、およびリセットモードを決定することができる、ロッキング要素を提供することである。
【0014】
本発明は、駆動部材の相対回転が最終用量機構に使用されるデバイスに特に有用であり、その理由は、ロッキング要素は、用量投薬中、駆動部材の望ましくない動きを防止しながら、用量設定およびリセット中、駆動部材のそのような相対回転を可能にするためである。駆動部材の相対回転は、ハウジングに対する相対回転とすることができる。好ましくは、これは、用量設定部材に対する、または少なくとも用量設定および用量投薬中、用量設定部材に回転方向に拘束することができるクラッチ部材に対する相対回転である。たとえば、最終用量ナットを駆動部材とクラッチまたは用量設定部材との間に間置して設けることができ、その結果、駆動部材およびクラッチまたは用量設定部材の相対回転は、最終用量ナットを、これが最終用量止め具に到達するまで軸方向に移動させる。好ましい実施形態では、最終用量ナットは、駆動部材およびクラッチまたは用量設定部材の一方、好ましくは駆動部材とねじ係合し、駆動部材およびクラッチまたは用量設定部材の他方、好ましくはクラッチまたは用量設定部材に回転方向に拘束されるが、これに対して軸方向に可動である。
【0015】
薬物送達デバイスが、好ましくは、カートリッジに残された液体の量を超える用量の設定を防止するための最終用量保護機構を含む場合、これは、ユーザが、用量送達を開始する前に、どれだけの量が送達されるかを把握するという利点を有する。これはまた、用量送達が、制御式に、栓がカートリッジのネック部分、すなわち直径がより小さいところに入り結果として過小用量を生じさせることなく、停止することも確実にする。たとえば、最終用量保護機構が、駆動部材と、用量設定および用量投薬中に回転する任意の他の構成要素との間に間置されたナット部材を含む場合、ナット部材は、用量設定中、軸方向のみに動き、用量投薬中、この構成要素に対して固定されたままである。ナット部材は、フルナット、またはハーフナットなどのその一部とすることができる。
【0016】
好ましくは、ロッキング要素の用量投薬位置およびそのリセット位置は、ハウジングに対する異なる遠位位置である。この異なる位置は、ロッキング要素がそのリセット位置にあるか、またはその投薬位置にあるかに応じて、1つまたはそれ以上のさらなるクラッチの連結および/またはデカップリングを可能にする。たとえば、駆動部材と用量設定部材との間のクラッチは、ロッキング要素の用量設定および用量投薬位置では連結させることができるが、リセット位置ではデカップリングされる。
【0017】
デバイスがダイヤル伸張を有さない場合、すなわち、用量設定のサイズに関係無く一定の長さを有する場合、取り扱いは、よりユーザに優しいものであることができる。加えて、これは、汚れなどの侵入を防止することによってデバイスをより信頼高いものにすることができる。ダイヤル伸張を有さないデバイスの場合、用量設定部材および/または駆動部材は、ハウジングに軸方向に拘束される。
【0018】
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ばね駆動式デバイスである。駆動ばね、好ましくはねじりばねをハウジングと用量設定要素との間に間置することができる。用量投薬に必要とされる力またはトルクを生成する、ねじりばねなどの弾性駆動部材を設けることにより、用量投薬のためにユーザがかける力は低減される。これは、手先に問題があるユーザにとって特に役立つものである。加えて、必要とされる投薬ストロークの結果である、知られている手動駆動式デバイスのダイヤル伸張は、弾性部材を設けることによって省略することができ、その理由は、弾性部材を解放するには小さいトリガストロークだけが必要であるためである。駆動ばねは、少なくとも部分的に、事前にチャージすることができ、および/または用量設定中、ユーザによってチャージすることができる。
【0019】
好ましくは、ハウジングインサートは、ハウジングに回転方向に拘束され、(たとえば近位の)用量設定位置と(たとえば遠位の)リセット位置との間で、ハウジングに対して軸方向に可動である。ピストンロッドは、ハウジングインサートと恒久的にねじ係合することができる。たとえば、ハウジングインサートは、ピストンロッドの外側ねじ山と係合する内側ねじ山を含むことができ、その一方で駆動部材は、ピストンロッドに回転方向に拘束される。
【0020】
トリガばねが、ロッキング要素とハウジングインサートとの間に間置されて、ロッキング要素をその用量設定位置に押し込むことができる。ロッキング要素は、この用量設定位置から、たとえばカートリッジホルダを取り外すことによってリセット位置に、またはたとえばトリガまたはボタンを押すことによって投薬位置にシフトすることができる。
【0021】
好ましい実施形態では、デバイスは、さらに、ハウジングとハウジングインサートとの間に間置された少なくとも1つのリセットばねを含む。カートリッジホルダがハウジングから取り外された場合、リセットばねは、ハウジングインサートおよびロッキング要素をリセット位置に押し込むことができる。好ましくは、ハウジングインサートは、ロッキング要素に連結され、その結果、ハウジングインサートの遠位運動は、ロッキング要素の遠位運動を引き起こす。これは、クリップ係合が、一方方向の相対軸方向運動を可能にし、反対方向の相対軸方向運動を防止することによって達成することができる。換言すれば、ハウジングインサートは、カートリッジホルダがハウジングから取り外されるときにロッキング要素を引っ張るが、カートリッジホルダがハウジングに取り付けられた場合、ロッキング要素は、ハウジングインサートに対して軸方向に自由に動く。
【0022】
好ましくは、デバイスは、さらに、ハウジングの近位端に設けられたボタンを含む。ロッキング要素は、ボタンに軸方向に拘束される。こうして、ロッキング要素は、ボタンが作動したとき、すなわちボタンが軸方向に動いたとき、軸方向に動かされる。ロッキング要素のリセット位置への軸方向運動が、クラッチ、たとえば用量設定部材と駆動部材との間のクラッチを連結またはデカップリングするためにボタンを引っ張るために使用される場合、ボタンをロッキング要素に連結させることは、さらに有益なものとすることができる。ロッキング要素は、たとえばボタンを介してクラッチに連結することができ、その結果、ロッキング要素がその近位用量設定位置からその遠位リセット位置に動かされるとき、クラッチがハウジングに対して軸方向に動かされ、それにより用量設定部材および駆動部材が回転方向にデカップリングされる。
【0023】
たとえば用量設定部材とクラッチとの間に間置されたクラッチばねは、ボタンまたはトリガが起動されない、またはデバイスがリセットモードにない場合、駆動部材と用量設定部材との間の回転方向に連結された状態を維持するために使用することができる。特にばね駆動式デバイスでは、このクラッチは、駆動ばねによって及ぼされた力またはトルクに、用量設定と用量投薬との間で、または静止状態において耐えるために使用することができる。
【0024】
この実施形態の別の開発では、用量設定部材と駆動部材との間のクラッチは、駆動部材上の第1のクラッチ歯と、用量設定および用量投薬中、用量設定部材に回転方向に拘束されるクラッチスリーブ上の第2のクラッチ歯とを備えた滑りクラッチである。たとえば、第1および/または第2のクラッチ歯は、歯のリングとして、好ましくは軸方向を向いて各々分散される。クラッチ機能および対応するクラッチ機能は、一揃えの歯、好ましくは鋸歯を各々が含み、これらの歯は、互いに対して堅く押さえすぎなければ互いの上方を滑らされる。換言すれば、クラッチ機能は、スリーブおよび/またはクラッチ要素をクラッチばねの力に対して軸方向に並進運動させることを可能にすることにより、クラッチばねの付勢に逆らって緩められる。これは、係合解除とそれに続く次の戻り止め位置への再係合の連続により、スリーブおよび/またはクラッチ要素の振動する軸方向運動を引き起こすことになる。可聴のクリックが、この再係合によって生成され、触覚フィードバックが、必要とされるトルク入力の変化によって与えられる。
【0025】
好ましくは、駆動部材と用量設定部材との間のクラッチは、滑りクラッチであり、この滑りクラッチは、設定用量を増減させるための用量設定中、駆動部材と用量設定部材との間の両方向の相対回転を可能にする。デバイスがばね駆動式デバイスである場合、クラッチ歯は、相対回転の方向に応じて、クラッチに打ち勝つための異なる抵抗をもたらすように設計することができる。たとえば、傾斜角度は、より浅くして、用量増大方向により小さい抵抗を結果として生じさせることができ、また、より険しくして、用量低減方向により大きい抵抗を結果として生じさせることができる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、薬物送達デバイスは、さらに、外側ハウジングと用量設定要素との間に径方向に間置されたゲージ要素を含む。ゲージ要素は、外側ハウジングに対して、用量設定要素とねじ係合して軸方向に可動である。外側ハウジングは、少なくとも1つのアパーチャを含むことができ、ゲージ要素は、少なくとも1つのアパーチャを含むことができる。用量設定要素が、その外側表面上にマーキングを含む数字スリーブである場合、マーキングの少なくとも1つは、用量設定および用量投薬中、ゲージ要素内のアパーチャおよび外側ハウジング内のアパーチャから見ることができる。アパーチャという用語は、外側ハウジングもしくはゲージ要素の簡単な開口部、または透明窓またはレンズを含むことができる。外側ハウジング内の窓は、「2ショット」成形技術を使用して組み込むことができる。たとえば、外側ハウジングは、半透明材料による「第1のショット」中に成形され、外側ハウジングの外側カバーは、不透明材料での「第2のショット」中に成形される。
【0027】
ゲージ要素は、用量設定要素の回転がゲージ要素の軸方向変位を引き起こすように、外側ハウジング内で軸方向に案内される。ゲージ要素の位置は、したがって、正確に設定されたおよび/または投薬された量を特定するために使用することができる。ゲージ部材のセクションの種々の色は、ディスプレイ上の数字、記号などを読み取ることなく、設定されたおよび/または投薬された用量を特定することを容易にすることができる。ゲージ要素は、用量設定要素とねじ係合するため、用量設定要素の回転は、用量設定要素に対する、および外側ハウジングに対するゲージ要素の軸方向変位を引き起こす。ゲージ要素は、デバイスの長手方向に延びるシールドまたはストリップの形態を有することができる。代替として、ゲージ要素は、スリーブとすることができる。本発明の一実施形態では、用量設定要素は、らせん経路上に配置された連続数字または記号でマークされる。用量設定要素がゲージ要素の径方向に内方向に位置するとき、これにより、用量設定要素上の数字または記号の少なくとも1つをアパーチャまたは窓から見ることができることが可能になる。換言すれば、ゲージ要素は、用量設定要素の一部分を隠すまたは覆い、用量設定部材の限定された部分だけを見ることを可能にするために使用することができる。この機能は、ゲージ要素それ自体が正確に設定されたおよび/または投薬された用量を特定するまたは指示するのに適していることに付加されるものである。
【0028】
全体的に、ゲージ要素および用量設定要素の概念は、駆動ばねを有する、または有さないさまざまなタイプのデバイスに適用可能である。好ましい実施形態では、用量設定要素は、用量設定中、外側ハウジング内で外側ハウジングに対して回転運動だけを行うように適用される。換言すれば、用量設定要素は、用量設定中、並進運動を実行しない。これは、用量設定要素が外側ハウジングから巻き出されること、または外側ハウジングが、その中で用量設定要素を覆うために長くされなければならないことを防止する。
【0029】
ゲージ要素および用量設定要素の相対運動は、さらに、最小用量位置および最大用量位置を規定するために使用することができる。通常、最小設定可能用量はゼロ(0IUのインスリン製剤)であり、それにより、リミッタが用量投薬の最後にデバイスを停止させる。最大設定可能用量、たとえば60、80、または120IUのインスリン製剤は、種々の用量サイズを必要とする幅広い範囲の患者に依然として適しながらも、過剰投与のリスクを低減し、非常に高い用量を投薬するために必要とされるさらなるばねトルクを回避するために限定される。好ましくは、最小用量および最大用量の限界値は、硬質の止め具機能によって与えられる。たとえば、ゲージ要素は、最小用量回転止め具および最大用量回転止め具を含み、用量設定要素は、最小用量回転対向止め具および最大用量回転対向止め具を含む。それぞれの止め具と対向止め具の当接は、ゲージ要素と用量設定要素との間のさらなる相対運動を阻止する。用量インジケータは、用量設定中および用量投薬中、ゲージ要素に対して回転するので、これらの2つの構成要素は、信頼高く堅固なリミッタ機構を形成するのに適している。
【0030】
注射デバイスは、触覚および/または可聴フィードバックを生成するための少なくとも1つのクリッカ機構を含むことができる。フィードバックは、用量設定(用量の増大および/低減)中、用量投薬中、および/または用量投薬の最後に生成することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、用量は、ハウジングの近位端に位置するダイヤルグリップを回転させることによって設定される。用量の送達は、ボタンを押さえ、ボタンを軸方向に遠位方向に変位させることによって開始される。用量送達は、ボタンが押し下げられている間、設定用量がすべて送達されるまで続く。機構は、各々の用量の設定および送達の両方に対する可聴、視覚、および触覚フィードバックを提供する。好ましくは、機構は、ユーザがダイヤルグリップを回転させる作用によって用量の設定中にチャージされるエネルギーを蓄積するためのらせん駆動式ばねを含む。ばねエネルギーは、機構が、投薬のためにトリガされるまで蓄積され、この時点で、蓄積されたエネルギーは、薬剤をカートリッジからユーザまで送達するために使用される。好ましくは、任意の用量サイズをゼロから所定の最大増分の間で選択して、薬剤およびユーザプロファイルに適合させることができる。機構は、用量を選択するときとは反対方向のダイヤルグリップの回転により、いかなる薬剤も投薬せずに用量の取り消しを可能にする。
【0032】
薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジを含むことができる。本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0033】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0034】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0035】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0036】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0037】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0038】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0039】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0040】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0041】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0042】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0043】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0044】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0045】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0046】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0047】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0048】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0049】
本発明の非限定的な例示的な実施形態が、次に添付の図を参照して説明される。