特許第6618995号(P6618995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618995
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】リセット可能な薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   A61M5/315 550R
   A61M5/315 550E
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-518868(P2017-518868)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-530801(P2017-530801A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】EP2015073442
(87)【国際公開番号】WO2016055634
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】14306598.5
(32)【優先日】2014年10月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/105910(WO,A1)
【文献】 特表2012−500067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の複数のユーザ可変用量を選択し、投薬するための薬物送達デバイスであって、
遠位端と近位端とを有するハウジング(10)と、
該ハウジング(10)の遠位端に解放可能に取り付けられたカートリッジホルダ(20)と、
ハウジングインサート(150)および駆動部材(40)と係合するピストンロッド(30)と、
用量設定および用量投薬中、用量設定部材(60)が回転することが可能であるようにハウジング(10)内で案内される用量設定部材(60)と、
駆動部材(40)および用量設定部材(60)を回転方向に連結するためのクラッチ(120)とを含み、
ハウジングインサート(150)は、ハウジング(10)に回転方向に拘束され、用量設定および投薬位置と、駆動部材(40)がハウジング(10)から回転方向にデカップリングされるリセット位置との間でハウジング(10)に対して駆動部材(40)と一緒に軸方向に可動であることを特徴とし、
ここで、ハウジングインサート(150)および駆動部材(40)は、ハウジングインサート(150)がハウジングインサート(150)の軸方向運動で駆動部材(40)を用量設定および投薬位置に移動させ、駆動部材(40)が駆動部材(40)の軸方向運動でハウジングインサート(150)をリセット位置に移動させるように連結される、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
ハウジングインサート(150)および駆動部材(40)をリセット位置に付勢する少なくとも1つのばね(130)をさらに備える、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
ハウジングインサート(150)およびカートリッジホルダ(20)は、ハウジング(10)にカートリッジホルダ(20)を取り付けたときカートリッジホルダ(20)がカートリッジホルダ(20)の軸方向運動でハウジングインサート(150)を移動させるように連結される、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
ハウジングインサート(150)は、ピストンロッド(30)の外側ねじ山(31)と係合する内側ねじ山(151)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
ナット(50)を備えた最終用量機構をさらに含み、ナットは、駆動部材(40)および用量設定部材(60)の一方とねじ係合し、駆動部材(40)および用量設定部材(60)の他方に対して回転方向に拘束されるが軸方向に可動である、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
ハウジング(10)に回転方向に拘束され、駆動部材(40)がハウジング(10)に回転方向に拘束される用量設定位置と、駆動部材(40)がハウジング(10)から回転方向にデカップリングされる用量投薬位置との間で、ハウジング(10)に対して軸方向に可動であるロッキング要素(100)をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
少なくとも1つのばね(130)は、ロッキング要素(100)をその用量設定位置に付勢する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
用量設定部材(60)は、ハウジング(10)に軸方向に拘束される、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
ハウジング(10)と用量設定部材(60)との間に間置された駆動ばね(90)をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
ハウジング(10)と用量設定部材(60)との間に径方向に間置されたゲージ要素(110)をさらに含み、ここで、該ゲージ要素(110)は、ハウジング(10)に対して軸方向に可動であり、用量設定部材(60)とねじ係合する、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
ハウジング(10)は、少なくとも1つのアパーチャ(11a、11b)を含み、ゲージ要素(110)は、少なくとも1つのアパーチャ(111)を含み、用量設定部材(60)は、その外側表面上にマーキングを含み、マーキングの少なくとも1つは、用量設定および用量投薬中、ゲージ要素(110)内のアパーチャ(111)およびハウジング(10)内のアパーチャ(11b)から見ることができる、請求項10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
ゲージ要素(110)は、最小用量回転止め具と、最大用量回転止め具とを含み、用量設定部材(60)は、最小用量回転対向止め具と、最大用量回転対向止め具とを含む、請求項10または11に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
クラッチは、駆動部材(40)上のクラッチ歯(42)と、対応するクラッチ歯(121)を備えた、用量設定部材(60)に回転方向に拘束されたクラッチ部材(120)とを備え、クラッチ部材(120)は、クラッチ部材(120)が用量設定部材(60)から回転方向にデカップリングされる、リセット位置へ、ハウジング(10)に対して駆動部材(40)と一緒に軸方向に可動である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
薬剤を含むカートリッジを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬剤の複数のユーザ可変用量を選択し、投薬するための薬物送達デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
ペンタイプの薬物送達デバイスは、正式な医療訓練を受けていない人による定期的な注射が行われる場合に適用される。これは、糖尿病を有する患者の中では益々一般的になってきており、この場合、自己治療により、そのような患者は、自身の疾患の効果的な管理を行うことができる。実際、そのような薬物送達デバイスは、ユーザが、薬剤の複数のユーザ可変用量を個々に選択し、投薬することを可能にする。本発明は、設定用量を増減する可能性がない、所定の用量の投薬のみを可能にするいわゆる固定用量デバイスは対象とされない。
【0003】
基本的には、2つのタイプの薬物送達デバイス:すなわち、リセット可能な(すなわち再使用可能な)デバイスおよびリセットできない(すなわち使い捨ての)デバイスが存在する。たとえば、使い捨てのペン送達デバイスは、自己完結型デバイスとして供給される。そのような自己完結型デバイスは、着脱式の事前充填されたカートリッジを有さない。そうではなく、事前充填されたカートリッジは、そのデバイス自体を破壊しなければこれらのデバイスから取り外し、取り換えることはできない。その結果、そのような使い捨てのデバイスは、リセット可能な用量設定機構を有する必要はない。本発明は、デバイスのリセットおよびカートリッジの取り換えを可能にする再使用可能なデバイスを対象とする。デバイスのリセットは、通常、ピストンロッドまたは親ねじを伸張(遠位)位置から、すなわち用量投薬後の位置から、より後退された(近位)位置まで動かすことを伴う。
【0004】
これらのタイプのペン送達デバイス(これらがしばしば拡大された万年筆に似ているためにそのように名付けられる)は、一般的には、3つの主要要素:すなわち、ハウジングまたはホルダ内にしばしば含まれるカートリッジを含むカートリッジセクションと;カートリッジセクションの一方の端部に連結されたニードルアセンブリと;およびカートリッジセクションの他方の端部に連結された薬注セクションとを含む。(しばしばアンプルと称される)カートリッジは、通常、医薬品(たとえばインスリン)で充填されたリザーバと、カートリッジリザーバの一方の端部に位置する可動のゴムタイプの栓またはストッパと、他方のしばしば絞られた端部に位置する穿孔可能なゴム封止部を有する上部とを含む。通常、圧着された環状金属バンドを使用し、ゴム封止部を所定場所に保持する。カートリッジハウジングは、通常、プラスチックから作ることができ、カートリッジリザーバは、従来、ガラスから作られている。
【0005】
ニードルアセンブリは、通常、取り換え可能な両頭針アセンブリである。注射の前、取り換え可能な両頭針アセンブリは、カートリッジアセンブリの一方の端部に取り付けられ、用量が設定され、その後、設定用量が投与される。そのような着脱式ニードルアセンブリは、カートリッジアセンブリの穿孔可能な封止端部上にねじ込まれ、または押し込まれる(すなわちカチッと留められる)。
【0006】
薬注セクションまたは用量設定機構は、通常、用量を設定する(選択する)ために使用されるペンデバイスの部分である。注射中、用量設定機構内に含まれたスピンドルまたはピストンロッドは、カートリッジの栓またはストッパを押しつける。この力が、カートリッジ内に含まれた医薬品を、取り付けられたニードルアセンブリから注射する。注射後、ほとんどの薬物送達デバイスおよび/またはニードルアセンブリ製造者および供給者によって一般的に推奨されるように、ニードルアセンブリは、取り外され、破棄される。
【0007】
薬物送達デバイスタイプをさらに差別化することは、駆動機構を参照する:たとえばユーザが注射ボタンに力をかけることによって手動で駆動されるデバイス、ばねなどによって駆動されるデバイス、およびこれらの2つの概念を組み合わせたデバイス、すなわちユーザが注射力を及ぼすことを依然として必要とするばね支援式デバイスが存在する。ばねタイプデバイスは、事前に負荷がかけられたばねと、用量選択中、ユーザによって負荷がかけられるばねとを伴う。一部の蓄積エネルギーデバイスは、事前に負荷がかけられたばねと、たとえば用量設定中、ユーザによって与えられた追加のエネルギーとの組合せを使用する。
【0008】
手動で駆動される再使用可能な薬物送達デバイスは、たとえば、特許文献1および特許文献2から知られている。これらのデバイスは、カートリッジ内に残る薬剤の量を超える用量の設定を防止する最終用量機構を含む。カートリッジを取り換えることにより、ピストンロッドを投薬方向とは反対方向に押すことによってこの最終用量機構のリセットが可能になる。
【0009】
特許文献2に説明されるデバイスは、ハウジングと、ハウジングに解放可能に取り付けられたカートリッジホルダと、ハウジングインサートおよび駆動部材と係合するピストンロッドと、用量設定および用量投薬中、用量設定部材が回転することが可能であるようにハウジング内で案内される用量設定部材と、駆動部材および用量設定部材を回転方向に連結するためのクラッチとを含む。ハウジングインサートは、ピストンロッドとねじ係合する。ハウジングに回転方向に拘束されたロッキング要素は、ハウジングインサートの回転を防止するためにハウジングインサートと係合する近位位置と、ハウジングインサートをハウジングから係合解除する遠位リセット位置との間で、ハウジングに対して軸方向に可動である。このデバイスの最終用量機構は、カートリッジ内に残る薬剤の量を超える用量が設定された場合にピストンロッドの近位領域内の拡大された部分と係合する開口部を備えたスリーブを含む。したがって、ピストンロッドを押し戻すことは、同時に最終用量機構をリセットする。しかし、ピストンロッドを押し戻すだけのこのリセット手順は、最終用量機構が、ピストンロッドの軸方向位置によってトリガされないデバイスには適さない。
【0010】
上記で説明したデバイスにおけるもののような最終用量機構は、駆動スリーブの回転によって駆動されるナットを含む。しかし、これらはすべて、ピストンロッドの軸方向位置および駆動スリーブの回転位置の相対的タイミングが、維持されることを必要とし、すなわち、これらは、(最終用量ナットに対する)ピストンロッドの軸方向位置および駆動スリーブの回転位置の両方が一緒にリセットされることを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2014/033195A1号
【特許文献2】欧州特許第2274030B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、最終用量機構を、拘束をより少なくして、たとえば、ピストンロッドの軸方向位置とは無関係にリセットすることができる、改良されたリセット可能な薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって解決される。本発明によれば、ハウジングインサートは、ハウジングに回転方向に拘束され、好ましくは近位の用量設定および投薬位置と、駆動部材がハウジングから回転方向にデカップリングされる、好ましくは遠位のリセット位置との間で、ハウジングに対して駆動部材と一緒に軸方向に可動である。デバイスのリセット中、ハウジングに対する駆動部材の自由回転を可能にすることは、ハウジング内に巻き戻すことができるピストンロッドのリセットを可能にするだけでなく、駆動部材と相互作用する最終用量機構のリセットも可能にする。駆動部材が、ハウジングに対するその軸方向位置によって、デバイスがリセットモードにあるか、または用量設定および投薬モードにあるかを決定することが、本発明の重要な特徴である。好ましくは、駆動部材は、用量設定および用量投薬中、適所に軸方向に固定される。これは、ばねが駆動部材を軸方向当接部に逆らって付勢することによって、駆動部材を所定位置に保持することを含むことができる。
【0014】
本発明は、駆動部材の相対回転が最終用量機構に使用されるデバイスにおいて特に有用であり、その理由は、ハウジングインサートおよび駆動部材は、用量投薬中、駆動部材の望ましくない動きを防止しながら、用量設定およびリセット中、駆動部材のそのような相対回転を可能にするためである。駆動部材の相対回転は、ハウジングに対する相対回転とすることができる。好ましくは、これは、用量設定部材に対する相対回転である。たとえば、最終用量ナットは、駆動部材と用量設定部材との間に間置されて設けることができ、その結果、駆動部材および用量設定部材の相対回転は、最終用量ナットを、これが最終用量止め具に到達するまで軸方向に移動させる。好ましい実施形態では、最終用量ナットは、駆動部材および用量設定部材の一方、好ましくは駆動部材とねじ係合し、駆動部材および用量設定部材の他方、好ましくは用量設定部材に対して回転方向に拘束されるが軸方向に可動である。
【0015】
薬物送達デバイスが、好ましくは、カートリッジ内に残された液体の量を超える用量の設定を防止するための最終用量保護機構を含む場合、これは、ユーザが、用量の送達を開始する前に、どれだけの量が送達されるかを把握するという利点を有する。これはまた、用量送達が、栓がカートリッジのネック部分、すなわち直径がより小さいところに入り結果として過小用量を生じさせることなく、制御された状態で停止することも確実にする。たとえば、最終用量保護機構が、駆動部材と、用量設定および用量投薬中に回転する任意の他の構成要素との間に間置されたナット部材を含む場合、ナット部材は、用量設定中、軸方向のみに動き、用量投薬中、この構成要素に対して固定されたままである。ナット部材は、フルナット、またはたとえばハーフナットなどのその一部とすることができる。
【0016】
好ましい実施形態では、デバイスは、さらに、ハウジングインサートおよび駆動部材をリセット位置に付勢する少なくとも1つのばねを含む。換言すれば、ハウジングインサートおよび駆動部材は、軸方向運動が、たとえばカートリッジホルダを取り外すことによって可能にされるとすぐに、ばねの作用下でリセット位置をとる。ハウジングインサートおよび駆動部材は、ハウジングインサートがハウジングインサートの軸方向運動で駆動部材を用量設定および投薬位置に移動させ、駆動部材が駆動部材の軸方向運動でハウジングインサートをリセット位置に移動させるように連結させることができる。たとえば、これは、駆動部材およびハウジングインサートの軸方向当接部によって達成することができる。本発明の実施形態は、駆動部材の管状遠位部分内に受け入れられるハウジングインサートのスリーブ様部分を含んで、軸方向当接をもたらすが、ハウジングインサートに対する駆動部材の自由回転を可能にすることができる。
【0017】
ハウジングインサートの遠位方向のさらなる付勢をもたらすようにハウジングとハウジングインサートとの間で作用する追加のばねを有することが、さらに有利であることができる(これは、ダイヤル設定ラチェットに対するクラッチばねの、その機能における力要求事項を、ハウジングインサートを遠位に十分に付勢し、リセット中、ユーザによって付与される軸方向力に反応するという要求事項から切り離す)。
【0018】
デバイスのリセットは、種々の方法で開始することができる。リセットは、通常、カートリッジを取り換えることを伴うため、カートリッジの取り換えを可能にするためにカートリッジホルダをハウジングから取り外すことによってリセットを開始することが、好ましい。好ましくは、ハウジングインサートおよびカートリッジホルダは、ハウジングにカートリッジホルダを(再度)取り付けたときカートリッジホルダがカートリッジホルダの軸方向運動でハウジングインサートを移動させるように、たとえば軸方向当接によって連結される。カートリッジホルダをハウジングから取り外すことは、次いで、駆動部材およびハウジングインサートの、たとえば、ばねによって引き起こされる軸方向変位を可能にする。
【0019】
ピストンロッドは、ハウジングインサートと恒久的にねじ係合することができる。たとえば、ハウジングインサートは、ピストンロッドの外側ねじ山と係合する内側ねじ山を含むことができ、一方で駆動部材は、ピストンロッドに回転方向に拘束される。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、ロッキング要素を含み、ロッキング要素は、ハウジングに回転方向に拘束され、駆動部材がハウジングに回転方向に拘束される、好ましくは近位の用量設定位置と、駆動部材がハウジングから回転方向にデカップリングされる、好ましくは遠位の用量投薬位置との間で、ハウジングに対して軸方向に可動である。ロッキング要素は、たとえばデバイスの近位端に位置する投薬ボタンまたはトリガに軸方向に拘束される。換言すれば、ロッキング要素の軸方向位置は、デバイスが用量設定モードにあるか、または用量投薬モードにあるかを規定する。好ましくは、少なくとも1つのばねは、ロッキング要素をその用量設定位置に付勢する。代替として、ロッキング要素をその用量設定位置に付勢する追加のばねを設けることができる。
【0021】
デバイスがダイヤル伸張を有さない場合、すなわち、用量設定のサイズに関係無く一定の長さを有する場合、取り扱いは、よりユーザに優しいものにすることができる。加えて、これは、汚れなどの侵入を防止することによってデバイスをより信頼高いものにすることができる。ダイヤル伸張を有さないデバイスの場合、用量設定部材は、ハウジングに軸方向に拘束される。
【0022】
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ばね駆動式デバイスである。駆動ばね、好ましくはねじりばねをハウジングと用量設定要素との間に間置することができる。用量投薬に必要とされる力またはトルクを生成する、ねじりばねなどの弾性駆動部材を設けることにより、用量投薬のためにユーザがかける力は低減される。これは、手先に問題があるユーザにとって特に役立つものである。加えて、必要とされる投薬ストロークの結果である、知られている手動駆動式デバイスのダイヤル伸張は、弾性部材を設けることによって省略することができ、その理由は、弾性部材を解放するには小さいトリガストロークだけが必要であるためである。駆動ばねは、少なくとも部分的に、事前にチャージすることができ、および/または用量設定中、ユーザによってチャージすることができる。
【0023】
この実施形態のさらなる開発では、用量設定部材と駆動部材との間のクラッチは、駆動部材上の第1のクラッチ歯と、クラッチ部材上の、たとえば、用量設定および用量投薬中、用量設定部材に回転方向に拘束されるクラッチプレートまたはリング上の第2のクラッチ歯とを備えた滑りクラッチである。たとえば、第1および/または第2のクラッチ歯は、歯のリングとして、好ましくは軸方向を向いて各々分散される。クラッチ機能および対応するクラッチ機能は、一揃えの歯、好ましくは鋸歯を各々が含むことができ、これらの歯は、互いに対して堅く押さえすぎなければ互いの上方を滑らされる。換言すれば、クラッチ機能は、スリーブおよび/またはクラッチ要素を少なくとも1つのばね(または代替的には別個のクラッチばね)の力に対して軸方向に並進運動させることを可能にすることにより、クラッチばねの付勢に逆らって緩められる。これは、係合解除とそれに続く次の戻り止め位置への再係合の連続により、スリーブおよび/またはクラッチ要素の振動する軸方向運動を引き起こすことになる。可聴クリックが、この再係合によって生成され、触覚フィードバックが、必要とされるトルク入力の変化によって提供される。
【0024】
好ましくは、駆動部材と用量設定部材との間のクラッチは、滑りクラッチであり、この滑りクラッチは、設定用量を増減させるための用量設定中、駆動部材と用量設定部材との間の両方向の相対回転を可能にする。デバイスがばね駆動式デバイスである場合、クラッチ歯は、相対回転の方向に応じて、クラッチに打ち勝つための異なる抵抗をもたらすように設計することができる。たとえば、ランプ角度は、より浅くして、用量増大方向により小さい抵抗を結果として生じさせることができ、また、より険しくして、用量低減方向により大きい抵抗を結果として生じさせることができる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、薬物送達デバイスは、さらに、外側ハウジングと用量設定要素との間に径方向に間置されたゲージ要素を含む。ゲージ要素は、外側ハウジングに対して軸方向に可動であり、用量設定要素とねじ係合する。外側ハウジングは、少なくとも1つのアパーチャを含むことができ、ゲージ要素は、少なくとも1つのアパーチャを含むことができる。用量設定要素が、その外側表面上にマーキングを含む数字スリーブである場合、マーキングの少なくとも1つは、用量設定および用量投薬中、ゲージ要素内のアパーチャおよび外側ハウジング内のアパーチャから見ることができる。アパーチャという用語は、外側ハウジングもしくはゲージ要素の簡単な開口部、または透明窓またはレンズを含むことができる。外側ハウジング内の窓は、「2ショット」成形技術を使用して組み込むことができる。たとえば、外側ハウジングは、半透明材料での「第1のショット」中に成形され、外側ハウジングの外側カバーは、不透明材料での「第2のショット」中に成形される。
【0026】
ゲージ要素は、用量設定要素の回転がゲージ要素の軸方向変位を引き起こすように、外側ハウジング内で軸方向に案内される。ゲージ要素の位置は、したがって、実際に設定されたおよび/または投薬された用量を特定するために使用することができる。ゲージ部材のセクションの種々の色は、ディスプレイ上の数字、記号などを読み取ることなく、設定されたおよび/または投薬された用量を特定することを容易にすることができる。ゲージ要素は、用量設定要素とねじ係合するため、用量設定要素の回転は、用量設定要素に対する、および外側ハウジングに対するゲージ要素の軸方向変位を引き起こす。ゲージ要素は、デバイスの長手方向に延びるシールドまたはストリップの形態を有することができる。代替として、ゲージ要素は、スリーブとすることができる。本発明の一実施形態では、用量設定要素は、らせん経路上に配置された連続数字または記号でマークされる。用量設定要素がゲージ要素の径方向に内方向に位置するとき、これにより、用量設定要素上の数字または記号の少なくとも1つをアパーチャまたは窓から見ることができることが可能になる。換言すれば、ゲージ要素は、用量設定要素の一部分を隠しまたは覆い、用量設定要素の限定された部分だけを見ることを可能にするために使用することができる。この機能は、ゲージ要素自体が実際に設定されたおよび/または投薬された用量を特定するまたは指示するのに適していることに付加されるものとすることができる。
【0027】
全体的に、ゲージ要素および用量設定要素の概念は、駆動ばねを有する、または有さないさまざまなタイプのデバイスに適用可能である。好ましい実施形態では、用量設定要素は、用量設定中、外側ハウジング内で外側ハウジングに対して回転運動だけを行うように適用される。換言すれば、用量設定要素は、用量設定中、並進運動を実行しない。これは、用量設定要素が外側ハウジングから巻き出されること、または外側ハウジングが、外側ハウジング内の用量設定要素を覆うために長くされなければならないことを防止する。
【0028】
ゲージ要素および用量設定要素の相対運動は、さらに、最小用量位置および最大用量位置を規定するために使用することができる。通常、最小設定可能用量はゼロ(0IUのインスリン製剤)であり、その結果、リミッタが用量投薬の最後にデバイスを停止させる。最大設定可能用量、たとえば60、80、または120IUのインスリン製剤は、種々の用量サイズを必要とする幅広い範囲の患者に依然として適しながらも、過剰投与のリスクを低減し、非常に高い用量を投薬するために必要とされるさらなるばねトルクを回避するために限定される。好ましくは、最小用量および最大用量の限界は、硬質の止め具機能によってもたらされる。たとえば、ゲージ要素は、最小用量回転止め具と、最大用量回転止め具とを含み、用量設定要素は、最小用量回転対向止め具と、最大用量回転対向止め具とを含む。それぞれの止め具および対向止め具の当接は、ゲージ要素と用量設定要素との間のさらなる相対運動を阻止する。用量インジケータは、用量設定中および用量投薬中、ゲージ要素に対して回転するので、これらの2つの構成要素は、信頼高く堅固なリミッタ機構を形成するのに適している。
【0029】
注射デバイスは、触覚および/または可聴フィードバックを生成するための少なくとも1つのクリッカ機構を含むことができる。フィードバックは、用量設定(用量の増大および/または低減)中、用量投薬中、および/または用量投薬の最後に生成することができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、用量は、ハウジングの近位端に位置するダイヤルグリップを回転させることによって設定される。用量の送達は、ボタンを押さえ、ボタンを軸方向に遠位方向に変位させることによって開始される。用量送達は、ボタンが押し下げられている間、設定用量がすべて送達されるまで続く。機構は、各々の用量の設定および送達の両方に対する可聴、視覚、および触覚フィードバックを提供する。好ましくは、機構は、ユーザがダイヤルグリップを回転させる作用によって用量の設定中にチャージされるエネルギーを蓄積するためのらせん駆動ばねを含む。ばねエネルギーは、機構が投薬のためにトリガされるまで蓄積され、この時点で、蓄積されたエネルギーは、薬剤をカートリッジからユーザまで送達するために使用される。好ましくは、任意の用量サイズをゼロから所定の最大増分の間で選択して、薬剤およびユーザプロファイルに適合させることができる。機構は、用量を選択するときとは反対方向のダイヤルグリップの回転により、いかなる薬剤も投薬せずに用量の取り消しを可能にする。
【0031】
さらなる実施形態では、駆動スリーブまたはロッキング要素いずれか上のスプライン歯は、ボタンが解放されたとき、スプライン歯の再係合が駆動スリーブを部分的に巻き戻すように角度付けされる。これは、ゼロ用量止め具当接部において数字スリーブとゲージ要素の係合を取り外し、それによって(たとえば公差による)機構内の隙間の影響を補償し、この隙間は、そうでなければ、デバイスがその後の用量のためにダイヤル設定されたとき(数字スリーブのゼロ用量止め具が、機構をもはや抑えず、その代わりにその抑止力は、駆動スリーブとハウジングとの間のスプラインに戻ることにより)、ピストンロッドのわずかな前進および薬剤投薬をもたらす可能性がある。
【0032】
本発明のさらなる独立的な態様は、薬物送達デバイス、たとえば、上記で説明したデバイスをリセットする方法であって、カートリッジホルダを緩めるステップと、新しいカートリッジによって、または手動でピストンロッドを押し戻すステップと、カートリッジホルダを新しいカートリッジと一緒に再取り付けるステップとを含む、方法を参照する。好ましくは、カートリッジホルダを緩めることは、トリガばねが、ハウジングインサート、駆動スリーブ、およびクラッチプレートを軸方向に遠位方向に動かすことを可能にする。この軸方向移動は、好ましくは、ロッキング要素と駆動スリーブとの間のスプライン、およびクラッチプレートと数字スリーブとの間のスプラインを連結解除するのに十分である。これはまた、トリガばねから一部の圧縮を取り除くこともできる。この方法の第2のステップでは、ユーザは、新しいカートリッジをカートリッジホルダに嵌入することができ、支承部およびピストンロッドは、機構内に押し戻される。ピストンロッドは、機構内に戻されるとき、ピストンロッドにおける回転が、ハウジングインサートとのねじインターフェースによって生成される。このピストンロッドの回転は、駆動スリーブをそれらのスプラインインターフェースによって回転させ、それによって最終用量ナットをその開始位置に巻き戻すように作用する。最後に、リセットの後半では、カートリッジホルダは、好ましくは、ハウジングインサートに接触し、この時点で、支承部、ピストンロッド、および最終用量ナットは、完全なリセット位置に到達している。カートリッジホルダの回転は、好ましくは、ハウジングインサートおよび駆動スリーブを近位方向に動かすように作用して、駆動スリーブとロッキング要素との間のスプライン、およびクラッチプレートと数字スリーブとの間のスプラインを再係合させる。
【0033】
薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジを含むことができる。本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0034】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0035】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0036】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0037】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0038】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0039】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0040】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0041】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0042】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0043】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0044】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0045】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0046】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0047】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0048】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0049】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0050】
本発明の非限定的な例示的な実施形態が、次に添付の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1a】最小用量位置にある本発明の薬物送達デバイスの上面図である。
図1b】96単位の用量がダイヤル設定されている、図1aの薬物送達デバイスの上面図である。
図2図1aのデバイスの構成要素の分解図である。
図3】用量設定モードにある図1aのデバイスの断面図である。
図4a】用量設定モードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図4b】用量設定モードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図5a】用量投薬モードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図5b】用量投薬モードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図6a】リセットモードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図6b】リセットモードにある図1aのデバイスの詳細断面図である。
図7a図1aのデバイスをリセットする順序を示す断面図である。
図7b図1aのデバイスをリセットする順序を示す断面図である。
図7c図1aのデバイスをリセットする順序を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1aは、注射ペンの形態の薬物送達デバイスを示す。デバイスは、遠位端(図1aの左端)と、近位端(図1aの右端)とを有する。薬物送達デバイスの構成要素部材は、図2に示される。薬物送達デバイスは、本体またはハウジング10と、カートリッジホルダ20と、親ねじ(ピストンロッド)30と、駆動スリーブ40と、ナット50と、用量インジケータ(数字スリーブ)である用量設定部材60と、ボタン70と、ダイヤルグリップまたは用量セレクタ80と、ねじりばね90と、ロッキング要素100と、ゲージ要素110と、クラッチ要素120と、クラッチばね130と、支承部140と、ハウジングインサート150と、キャップ160とを含む。針ハブおよび針カバーを備えた針配置(図示せず)を追加の構成要素として設けることができ、これは、上記で説明したように交換することができる。すべての構成要素は、図3に示す機構の共通の主軸Iの周りに同心で位置する。
【0053】
ハウジング10または本体は、全体的に管状の要素である。ハウジング10は、液体医薬品カートリッジおよびカートリッジホルダ20、用量インジケータ60上の用量数字を見せるための窓11a、11bおよびゲージ要素110、ならびにその外部表面上の、用量セレクタ80を軸方向に保持するための、たとえば円周方向溝などの機能の場所を提供する。ハウジング10は、さらに、ゲージ要素110を軸方向に案内するための少なくとも1つの内部の、軸方向に配向されたスロットなどを有する。さらに、ハウジングインサート150は、ハウジング10内で軸方向に案内され、その結果、相対回転が防止され、一方で好ましくは限定された軸方向の相対運動は可能にされる。加えて、ロッキング要素100は、ハウジング10内で軸方向に案内され、その結果、相対回転は防止され、一方で軸方向の相対運動は可能にされる。
【0054】
カートリッジホルダ20は、取り換え可能なカートリッジを含み、ハウジングインサート150の遠位方向の軸方向移動を限定するように作用する。カートリッジホルダ20が取り外されたとき、トリガばね130は、ハウジングインサート150、駆動スリーブ40、およびクラッチプレート120を軸方向に遠位方向に強制して、ロッキング要素100と駆動スリーブ40との間のスプライン歯41、101およびクラッチプレート120と数字スリーブ60との間のスプライン歯を係合解除し、デバイスをリセットすることを可能にする。付勢ばね(図示せず)が設けられて、カートリッジを遠位方向に付勢するようにハウジング10とカートリッジとの間で作用することができる。着脱式キャップ160は、カートリッジホルダ20の上方に嵌合するように設けられ、ハウジング10上のクリップ機能によって保持することができる。
【0055】
ピストンロッド30は、外側ねじ山31および少なくとも1つの軸方向に延びるスプラインまたはリブを備えた細長い親ねじである。ピストンロッド30は、このスプライン連結されたインターフェースを介して駆動スリーブ40に回転方向に拘束される。回転したとき、ピストンロッド30は、ハウジング10に対して軸方向に、ハウジングインサート150とのねじ付きインターフェース31、151を通って動くように強制される。支承部140は、たとえばスナップ連結によって、ピストンロッド30の遠位端に取り付けられる。
【0056】
駆動スリーブ40は、ピストンロッド30を取り囲み、少なくとも部分的に用量設定部材60内に受けられる管状部材である。駆動スリーブ40は、(クラッチプレート120を介した)数字スリーブ60とのインターフェース42、121から、ロッキング要素100とのスプライン型歯インターフェース41、101まで下方に延びる。これは、用量設定中、駆動スリーブ40への回転拘束をもたらす。ボタン70が押さえられたとき、ロッキング要素100は軸方向に遠位方向に動かされ、その結果、これらのスプライン歯41、101は、係合解除され、駆動スリーブ40が駆動ばね90の作用下で回転することを可能にして、設定用量を投薬する。
【0057】
最終用量ナット50は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に位置する。これは、スプライン連結されたインターフェースを介して、数字スリーブ60に回転方向に拘束される。これは、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に相対回転が起こったとき、すなわちダイヤル設定およびリセット中のみ、ねじ付きインターフェースを介して駆動スリーブ40に対してらせん経路に沿って動く。
【0058】
用量設定部材60は、管状数字スリーブであり、その遠位端にあるクリップを介してハウジング10に拘束されて回転を可能にするが、軸方向の並進運動はすべての状態において可能にしない。数字スリーブ60は、ゲージ要素110内の開口部111およびハウジング10内のスロット様窓11bから見ることができる連続数字がマークされて、薬剤のダイヤル設定された用量を示す。図に示す実施形態では、用量設定部材60は、下側部分60aおよび上側部分60bを含み、これらの部分は、組み立て中、互いに固定される。下側部分60aには、数字が設けられ、ゲージ要素110と係合するねじ山が設けられる。上側部分60bは、クラッチプレート120とのスプライン連結されたインターフェース61、122を含む。
【0059】
ボタン70は、ダイヤル設定状態にあるときに数字スリーブ60の上側部分60bにスプライン連結される。このスプラインインターフェースは、ボタン70が投薬をトリガするために押さえられたとき、連結解除される。押し下げられたとき、ボタン70は、スプライン連結された係合を介してハウジング10に回転方向に拘束される。用量セレクタ80は、ハウジング10に径方向に拘束され、ボタン70に回転方向に拘束される。さらに、ボタン70は、用量投薬中、上側部分60b上のラチェット機能と相互作用する柔軟なクリッカアームを含む。
【0060】
ダイヤルグリップ80は、ハウジング10に径方向に拘束され、ボタン70に回転方向に拘束される。
【0061】
駆動ばね90は、一方の端部においてロッキング要素100に取り付けられ、他方の端部において数字スリーブ60に取り付けられる。駆動ばね90は、組み立てたときに事前に巻かれ、その結果、これは、機構がダイヤル設定されたゼロ単位にあるとき、トルクを数字スリーブ60にかける。用量を設定するために用量セレクタ80を回転させる作用は、数字スリーブ60をハウジング10に対して回転させ、駆動ばね90をチャージする。
【0062】
ロッキング要素100は、主に、アームまたはハーフシェルの形態を有し、すべての状態においてハウジング10に回転方向にスプライン連結され、ボタン70に軸方向に拘束される。これは、(駆動スリーブ40をハウジングにロックする)近位用量設定位置と、(駆動スリーブ40の回転を可能にする)遠位用量投薬位置との間で、ハウジング10に対して軸方向に可動である。ロッキング要素100は、その用量設定位置にあるときに駆動スリーブの対応する歯41と係合する歯101を有する。
【0063】
ゲージ要素110は、回転を防止するように拘束されるが、スプライン連結されたインターフェースを介した、ハウジング10に対する並進運動は可能にする。ゲージ要素110は、その内側表面上にらせん特徴を有し、このらせん特徴は、用量設定要素60内のらせんねじ山切断部と係合し、それにより、用量設定要素60の回転は、ゲージ要素110の軸方向並進運動を引き起こす。ゲージ要素110のこれらのらせん特徴はまた、用量設定要素60内のらせん切断部の端部に対して停止当接部を生み出して、設定することができる最小および最大の用量を限定する。開口部または窓111は、ゲージ要素110を通して用量設定部材60の一部分を見ることを可能にする。
【0064】
クラッチプレート120は、ダイヤル設定および投薬状態にあるとき、インターフェース61、122を介して数字スリーブ60の上側部分60bにスプライン連結される。リセット状態に入ると、クラッチプレート120は軸方向に遠位方向に動いて、数字スリーブ60の上側部分60bとのこのスプラインインターフェース61、122を連結解除する。クラッチプレート120はまた、ラチェットインターフェース42、121を介して駆動スリーブ40に連結され、これは、軸方向当接部上で行われる。ラチェットは、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に、各々の用量増分に対応する戻り止め位置をもたらし、時計回りおよび反時計回りの相対回転中、種々のランプ歯角度と係合する。
【0065】
クラッチまたはトリガばね130は、クラッチ120とボタン70との間に軸方向に間置される。静止位置では、トリガばね130は、付勢力をボタン70上に近位方向にかけて、ボタン70のスプラインが、数字スリーブ60の上側部分(60b)に係合されることを確実にする。
【0066】
支承部140は、ピストンロッド30に軸方向に拘束され、液体薬剤カートリッジ内の栓に対して作用する。
【0067】
ハウジングインサート150は、ハウジング10に回転方向にスプライン連結され、トリガばね130によってカートリッジホルダ20に対して遠位方向に付勢される。駆動スリーブ40およびクラッチプレート120の軸方向位置もまた、トリガばね130の作用によって規定され、このトリガばねは、付勢力を遠位方向にかけて、駆動スリーブ40のスプラインがロッキング要素100に係合され、駆動スリーブ40とクラッチプレート120との間のラチェット42、121が係合されることを確実にする。これらの構成要素の遠位方向の最大移動は、ハウジングインサート150とカートリッジホルダ20との間の停止面によって規定される。
【0068】
デバイスが、図1a、3、4aおよび4bに示すように静止状態にある、または用量設定モードにあるとき、数字スリーブ60は、ゲージ要素110とのそのゼロ用量当接部に接して位置し、ボタン70は、押し下げられない。数字スリーブ60上の用量マーキング「0」は、ハウジング10およびゲージ要素110の窓11bおよび111から見ることができる。デバイスの組み立て中、適用される事前に複数回巻かれた駆動ばね90は、トルクを数字スリーブ60にかけ、ゼロ用量当接部によって回転することが防止される。また、ゼロ用量止め具と駆動スリーブ40のスプライン歯の角度ずれとの間のずれによってこの機構をわずかに巻き戻すことも可能である。これは、用量がダイヤル設定され、ゼロ用量当接部が係合解除されるときに考えられるにじみを防止する効果を有する。
【0069】
ユーザは、用量セレクタ80を時計回りに回転させ、それによって数字スリーブ60において同一の回転を生成することによって液体薬剤の可変用量を選択する。数字スリーブ60の回転は、駆動ばね90のチャージを引き起こし、その中に蓄積されるエネルギーを増大させる。数字スリーブ60が回転するにつれて、ゲージ要素110は、そのねじ係合によって軸方向に並進運動し、それによってダイヤル設定された用量の値を示す。ゲージ要素110は、窓領域の両側にフランジを有し、このフランジは、ダイヤル設定された用量に隣接して数字スリーブ60上に印刷された数字を覆って、設定用量数字のみがユーザに見えることを確実にする。
【0070】
このタイプの機構の1つの特有の要素は、このタイプのデバイスに一般的な離散的な用量数字表示に加えて、視覚的なフィードバック機能を含めるものである。ゲージ要素110の遠位端112は、ハウジング10内の小さい窓11aを貫通する摺動スケールを生み出す(そうではあるが、これは、所望であれば、異なるらせんトラック上で数字スリーブ60と係合された別個の構成要素を使用して形成することができる)。用量がユーザによって設定されるとき、ゲージ要素110は、軸方向に並進し、その距離は用量設定の大きさに比例して動かされる。この機能は、用量設定の大まかなサイズに関する明確なフィードバックをユーザに与える。図1aおよび1bを比較することにより、ゲージ要素110の遠位端112が用量設定中、近位に動く様子が示される。自動注射器機構の投薬速度は、手動注射器デバイスのものより速く、そのためこれは、投薬中、数字用量表示を読み取ることはできない。ゲージ要素110の機能は、投薬中、用量数字自体を読み取る必要がなく、投薬進行に関するフィードバックをユーザに提供する。
【0071】
ゲージ要素110の表示は、下にある対照色の構成要素を露出させる不透明な摺動要素によって形成することができる。代替的には、隠された構成要素に、大まかな用量数字または他の指標が印刷されてより正確な解像度をもたらすことができる。加えて、ゲージ要素110の表示は、用量設定および投薬中、シリンジ作用をシミュレーションする。
【0072】
駆動スリーブ40は、ロッキング要素100の歯101とのスプライン型歯41の係合によって用量が設定されるときに回転することが防止され、クラッチプレート120は、数字スリーブ60とのスプライン型歯61、122の係合によって回転される。したがって、相対回転が、クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間で、ラチェットインターフェース42、121を介して起こるはずである。
【0073】
用量セレクタ80を回転させるのに必要とされるユーザトルクは、駆動ばね90を巻き上げるのに必要とされるトルクおよびラチェット機能42、121を緩めるのに必要とされるトルクの合計である。トリガばね130は、軸方向力をラチェット機能にもたらし、クラッチプレート120を駆動スリーブ40上に付勢するように設計される。この軸方向負荷は、クラッチプレート120および駆動スリーブ40のラチェット歯係合を維持するように作用する。ラチェット42、121を用量設定方向に緩めるのに必要とされるトルクは、トリガばね130によってかけられた軸方向負荷、ラチェット42、121の時計回りの傾斜角度、対合表面間の摩擦係数、およびラチェット機能42、121の平均半径の関数である。
【0074】
ユーザが、機構を1増分増加させるのに十分に用量セレクタ80を回転させるとき、クラッチプレート120は、駆動スリーブ40に対して1ラチェット歯分回転する。この時点で、ラチェット歯42、121は、再係合して次の戻り止め位置になる。可聴クリックが、ラチェットの再係合によって生成され、触覚フィードバックが、必要とされるトルク入力の変化によって与えられる。数字スリーブ60および駆動スリーブ40の相対回転は、最終用量ナット50をそのねじ付き経路に沿って、駆動スリーブ40上のその最終用量当接部に向かって移動させる。
【0075】
ユーザトルクが用量セレクタ80にかけられないとき、数字スリーブ60は、このとき、クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェット係合42、121のみによって、駆動ばね90によってかけられたトルクによって回転して戻ることが防止される。ラチェットを反時計回り方向に緩めるのに必要なトルクは、トリガばね130によってかけられた軸方向負荷、ラチェット42、121の反時計回りの傾斜角度、対合表面間の摩擦係数、およびラチェット機能の平均半径の関数である。ラチェットを緩めるのに必要なトルクは、駆動ばね90によって数字スリーブ60(故にクラッチプレート120)にかけられたトルクより大きくなければならない。ラチェット傾斜角度は、したがって、反時計回り方向に増大されて、ダイヤルアップトルクができるだけ小さいことを確実にしながらこのようになることを確実にする。
【0076】
ユーザは、ここで、用量セレクタ80を時計回り方向に回転させ続けることによって、選択用量を増大させるよう選択することができる。クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース42、121を緩めるプロセスは、用量増分ごとに繰り返される。追加のエネルギーが、用量増分ごとに駆動ばね90内に蓄積され、可聴および触覚フィードバックが、ラチェット歯42、121の再係合によって、ダイヤル設定された増分ごとに提供される。用量セレクタ80を回転させるのに必要とされるトルクは、駆動ばね90を巻き上げるために必要とされるトルクが増大するにつれて増大する。ラチェット42、121を反時計回り方向に緩めるのに必要とされるトルクは、したがって、最大用量に到達したときに駆動ばね90によって数字スリーブ60にかけられたトルクより大きくなければならない。
【0077】
ユーザが、選択用量を、最大用量限界に到達するまで増大させ続ける場合、数字スリーブ60は、ゲージ要素110上のその最大用量当接部と係合する。これは、数字スリーブ60、クラッチプレート120、および用量セレクタ80のさらなる回転を防止する。
【0078】
機構によってすでに送達された増分の数に応じて、用量選択中、最終用量ナット50は、図7aに示すように、その最終用量当接部を駆動スリーブ40に接触させることができる。この当接部は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間のさらなる相対回転を防止し、したがって、選択することができる用量を限定する。最終用量ナット50の位置は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対回転の総数によって決定され、この回転は、ユーザが用量を設定するたびに起こっているものである。
【0079】
用量が選択された状態に機構があるとき、ユーザは、この用量から任意の数の増分を選択解除することができる。用量を選択解除することは、ユーザが用量セレクタ80を反時計回りに回転させることによって達成される。ユーザによって用量セレクタ80にかけられたトルクは、駆動ばね90によってかけられたトルクと組み合わせたとき、クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェット歯42、121を反時計回り方向に緩めるのに十分である。ラチェットが緩められたとき、反時計回り回転が数字スリーブ60に(クラッチプレート120を介して)起こり、この反時計回り回転は、数字スリーブ60をゼロ用量位置に戻し、駆動ばね90を巻き出す。数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対回転は、最終用量ナット50を、そのらせん経路に沿って戻して、最終用量当接部から離す。
【0080】
機構が、用量が選択された状態にあるとき、ユーザは、機構を起動して用量の送達を開始することができる。用量の送達は、ユーザが図5aおよび5bに示すようにボタン70を軸方向に押し下げることによって開始される。
【0081】
ボタン70が押し下げられたとき、ボタン70と数字スリーブ60との間のスプラインは、係合解除され、ボタン70および用量セレクタ80を送達機構から回転方向に連結解除する。ボタン70上のスプラインはまた、ハウジング10上のスプラインと係合する(その結果、用量セレクタ80およびボタン70は、投薬中回転しない)。ボタン70の力は、ロッキング要素100に対して作用し、このロッキング要素は、軸方向に移動し、駆動スリーブ40とのスプライン連結された係合41、101を連結解除して、駆動スリーブ40が回転することが可能である。クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェット42、121上の力は、トリガばね130の圧縮によって増大されて、これらの構成要素を、数字スリーブ60を介して駆動ばね90によって駆動されてラチェット42、121を緩めるのではなく、一緒にスピンさせる。駆動スリーブ40の回転は、ピストンロッド30を、それらのスプライン連結された係合によって回転させ、ピストンロッド30は、次いで、ハウジングインサート150とのねじ係合31、151によって前進する。数字スリーブ60の回転はまた、ゲージ要素110をそのゼロ位置へと軸方向に横断させて戻し、それによってゼロ用量当接部は機構を停止させる。
【0082】
用量投薬中の触覚フィードバックは、ボタン70内に組み込まれた柔軟なカンチレバークリックアームを介して提供される。これは、クラッチプレート120上のラチェット機能と径方向にインターフェース連結する。投薬中、クラッチプレート120が回転し、ボタン70がハウジング10に回転方向に連結されるとき、ラチェット機能は、クリッカアームと係合して、各々の用量増分が送達されたときに可聴のクリックを生成する。
【0083】
用量の送達は、上記で説明した機械的相互作用を介して継続し、その間ユーザは、ボタン70を押し下げ続ける。ユーザがボタン70を解放した場合、トリガばね130は、ボタン70をその静止位置に戻し、駆動スリーブ40は回転方向に拘束され、用量の送達が止まる。
【0084】
用量の送達中、駆動スリーブ40および数字スリーブ60は一緒に回転し、それにより、最終用量ナット50に相対回転は起こらない。最終用量ナット50は、したがって、ダイヤル設定(およびリセット)中のみ駆動スリーブ40上で軸方向に移動する。
【0085】
用量の送達が、数字スリーブ60が、ゲージ要素110とのゼロ用量当接部に戻ることによって停止された後、ユーザは、ボタン70を解放することができ、それによって、駆動スリーブ40のスプライン歯41とロッキング要素100の歯101を再係合させる。機構は、次に、静止状態に戻される。
【0086】
機構は、カートリッジの後面に対して作用する付勢ばね(この実施形態には示さず)を組み込むことができる。これは、カートリッジが常に遠位に付勢され、カートリッジ長さ上の公差の影響および針がデバイスに嵌合されたときにカートリッジが近位に動く可能性を取り除くことを確実にするため、用量が正確になることを助ける。
【0087】
駆動スリーブ40またはロッキング要素100上のスプライン歯41、101に角度を付けることが可能であり、それにより、ボタン70が解放されたとき、スプライン歯41、101の再係合は、駆動スリーブ40を部分的に巻き戻し、それによって数字スリーブ60とゲージ要素110のゼロ用量止め具当接の係合を取り外す。これは、(たとえば公差による)機構内の隙間の影響を補償し、この隙間は、そうでなければ、デバイスがその後の用量のためにダイヤル設定されたとき(数字スリーブ60のゼロ用量止め具が、機構をもはや抑えず、その代わりにその抑止力は、駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプラインに戻ることにより)、ピストンロッド30のわずかな前進および薬剤投薬をもたらす可能性がある。
【0088】
機構をリセットするために、ユーザは、最初、カートリッジホルダ20を緩め、それによってトリガばね130がハウジングインサート150、駆動スリーブ40、およびクラッチプレート120を軸方向に遠位方向に動かすことが可能になる。この軸方向の移動は、ロッキング要素100と駆動スリーブ40との間のスプライン41、101およびクラッチプレート120と数字スリーブ60との間のスプライン61、122を連結解除するのに十分である。これはまた、トリガばね130から一部の圧縮を取り除く。
【0089】
ユーザは、次いで、新しいカートリッジをカートリッジホルダ20に嵌入することができ、支承部140およびピストンロッド30を機構内に押し戻すことができる。ピストンロッド30が機構内に戻されるとき、ピストンロッド30内の回転が、ハウジングインサート150とのねじインターフェース31、151によって生成される。このピストンロッド30の回転は、駆動スリーブ40をそのスプラインインターフェースによって回転させ、それによって最終用量ナット50をその開始位置に巻き戻すように作用する。
【0090】
リセットの後半では、カートリッジホルダ20は、ハウジングインサート150と接触し、この時点で、支承部140、ピストンロッド30、および最終用量ナット50は、完全なリセット位置に到達している。カートリッジホルダ20の回転は、ハウジングインサート150および駆動スリーブ40を近位方向に動かすように作用して、駆動スリーブ40とロッキング要素100との間のスプライン41、101およびクラッチプレート120と数字スリーブ60との間のスプライン61、122を再係合させる。
【符号の説明】
【0091】
10 外側ハウジング
11a 開口部(窓)
11b 開口部(窓)
20 カートリッジホルダ
30 ピストンロッド(親ねじ)
31 外側ねじ山
40 駆動スリーブ
41 歯
42 ラチェット歯
50 ナット
60 用量設定要素
61 スプライン
70 ボタン
80 用量セレクタ
90 ねじりばね
100 ロッキング要素
101 歯
110 ゲージ要素
111 開口部
112 遠位端
120 クラッチ
121 ラチェット歯
122 スプライン
130 トリガばね
140 支承部
150 ハウジングインサート
151 ねじ山
160 キャップ
I 長手方向軸
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c