(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3級アミンを有する鎖伸長剤が、2,2’-メチルイミノジエタノール,2,2’-エチルイミノジエタノール,2,2’-n−ブチルイミノジエタノール,2,2’-t-ブチルイミノジエタノール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール,3-(ジエチルアミノ)-1,2-プロパンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2に記載の研磨パッド。
前記3級アミンを有するポリウレタンは、前記3級アミンを有する鎖伸長剤と、高分子ジオールと、有機ジイソシアネートとを少なくとも含む前記ポリウレタン反応原料の反応物である熱可塑性ポリウレタンである請求項1〜5の何れか1項に記載の研磨パッド。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る研磨パッドの一実施形態を説明する。本実施形態の研磨パッドは、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上である研磨面を有する研磨パッドである。
【0024】
ここでゼータ電位とは、物質が液体と接したときに、物質の表面電荷に応じて、対イオンによって電気二重層表面(滑り面)に生じる電位である。本実施形態においては、研磨パッドの研磨面のゼータ電位は、例えば、電気泳動光散乱装置(ELS-Z、大塚電子(株)製)を使用し、pH10.0にNaOH水溶液で調整した10mM NaCl水溶液中に分散したモニターラテックス(大塚電子(株)製)を用いて測定することができる。
【0025】
本実施形態の研磨パッドは、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上であり、好ましくは+0.1〜+30mVであり、さらに好ましくは+1.0〜+27mVであり、とくに好ましくは+3.0〜+24mVであり、最も好ましくは+5.0〜+21mVである研磨面を有する。研磨パッドの研磨面のpH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV未満の場合には、研磨スラリーと研磨面が電気的に反発するために研磨速度が低くなる。一方、研磨面のpH10.0におけるゼータ電位が高すぎる場合には研磨面に保持される研磨スラリー量が多くなりすぎて、被研磨物の被研磨面にスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。
【0026】
また、本実施形態の研磨パッドは、pH4.0におけるゼータ電位が、+0.1mV以上、さらには+0.1〜+40mV、とくには+6.0〜+30mV、ことには+10.0〜+30mVである研磨面を有することが、上述したようなpH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上の研磨面を有する研磨パッドが得られやすい点から好ましい。
【0027】
以下、本実施形態の研磨パッドを実現するための材料及び研磨パッドの製造方法について詳しく説明する。
【0028】
本実施形態の研磨パッドの製造に用いられる材料
は、3級アミンを有するポリウレタンを含む、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上の研磨面を有する研磨パッドが得られる限り特に限定されない
。熱可塑性ポリウレタンや熱硬化性ポリウレタン等のポリウレタンは耐摩耗性に優れ、とくに熱可塑性ポリウレタンは高い硬度が得られることにより高い研磨速度と優れた研磨均一性を実現しやすい点から好ましい。
【0029】
また、高分子材料としては、50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率が50〜1200MPa、さらには100〜1100MPa、とくには200〜1000MPaであることが好ましい。高分子材料の50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率が低すぎる場合には研磨パッドが柔らかくなりすぎて研磨速度が低下し、高すぎる場合には被研磨物の被研磨面にスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。
【0030】
また、高分子材料は水との接触角が80度以下、さらには78度以下、とくには76度以下、ことには74度以下であることが好ましい。高分子材料の水との接触角が大きすぎる場合には、研磨パッドの研磨面の親水性が低下することによりスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。
【0031】
高分子材料としては発泡体でも非発泡体でもよいが、研磨特性が変動しにくく安定した研磨が実現できる点から非発泡体が特に好ましい。例えば、注型発泡硬化することによって製造される発泡ポリウレタンのような発泡体を用いた研磨パッドの場合には、発泡構造がばらつくことにより、平坦性や平坦化効率等の研磨特性が変動しやすくなる傾向があり、また、平坦化性能を向上させるための高硬度化が難しくなる傾向がある。
【0032】
pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上の研磨面を有する研磨パッドが得られ、且つ、上述したような好ましい特性を実現できる高分子材料として、3級アミンを有するポリウレタンについ
て詳しく説明する。
【0033】
本実施形態の研磨パッドの製造に用いられる3級アミンを有するポリウレタンは、例えば、3級アミンを有する鎖伸長剤と、高分子ポリオールと、有機ポリイソシアネートとを少なくとも含むポリウレタン反応原料の反応物である。また、3級アミンを有する熱可塑性ポリウレタンは、3級アミンを有する鎖伸長剤と、高分子ジオールと、有機ジイソシアネートとを少なくとも含むポリウレタン反応原料を重合させた反応物である。また、ポリウレタン反応原料は、必要に応じて、3級アミンを有しない鎖伸長剤を含んでもよい。とくに3級アミンを有する熱可塑性ポリウレタンは、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上である表面を形成でき、上述したような50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率や水に対する接触角を与えやすい点から特に好ましい。
【0034】
3級アミンを有する鎖伸長剤の具体例としては、例えば、2,2’-メチルイミノジエタノール,2,2’-エチルイミノジエタノール,2,2’-n−ブチルイミノジエタノール,2,2’-t-ブチルイミノジエタノール,3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール,3-(ジエチルアミノ)-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、2,2’-エチルイミノジエタノールがpH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上の研磨面を有する研磨パッドを経済性良く製造できる点から好ましい。
【0035】
ポリウレタン反応原料中の3級アミンを有する鎖伸長剤の含有割合としては、0.1〜30質量%、さらには0.5〜28質量%、とくには1〜26質量%であることが好ましい。3級アミンを有する鎖伸長剤の含有割合が低すぎる場合には、研磨面のpH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV未満になって研磨速度が低下する傾向がある。
【0036】
また、ポリウレタン反応原料が3級アミンを有しない鎖伸長剤をさらに含む場合、3級アミンを有する鎖伸長剤と3級アミンを有しない鎖伸長剤との合計量に対する3級アミンを有する鎖伸長剤の割合(モル%)としては、5〜95モル%、さらには10〜90モル%であることが好ましい。
【0037】
3級アミンを有しない鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来用いられている、3級アミンを有さず、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が挙げられる。その具体例としては、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,1,2-プロパンジオール,1,3-プロパンジオール,2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール,1,2-ブタンジオール,1,3-ブタンジオール,2,3-ブタンジオール,1,4-ブタンジオール,1,5-ペンタンジオール,ネオペンチルグリコール,1,6-ヘキサンジオール,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオール,シクロヘキサンジメタノール(1,4-シクロヘキサンジメタノール等),ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート,1,9-ノナンジオール,m-キシリレングリコール,p-キシリレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール等のジオール類;エチレンジアミン,トリメチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ヘプタメチレンジアミン,オクタメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,デカメチレンジアミン,ウンデカメチレンジアミン,ドデカメチレンジアミン,2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン,2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン,3-メチルペンタメチレンジアミン,1,2-シクロヘキサンジアミン,1,3-シクロヘキサンジアミン,1,4-シクロヘキサンジアミン,1,2-ジアミノプロパン,ヒドラジン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジン,o-フェニレンジアミン,m-フェニレンジアミン,p-フェニレンジアミン,トリレンジアミン,キシレンジアミン,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジド,4,4’-ジアミノジフェニルメタン,4,4’-ジアミノジフェニルエーテル,4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル,4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル,1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン,1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン,1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン,3,4’-ジアミノジフェニルエーテル,4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン,3,4-ジアミノジフェニルスルフォン,3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン,4,4’-メチレン−ビス(2-クロロアニリン),3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル,4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド,2,6-ジアミノトルエン,2,4-ジアミノクロロベンゼン,1,2-ジアミノアントラキノン,1,4-ジアミノアントラキノン,3,3’-ジアミノベンゾフェノン,3,4-ジアミノベンゾフェノン,4,4’-ジアミノベンゾフェノン,4,4’-ジアミノビベンジル,2,2’−ジアミノ-1,1’-ビナフタレン,1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン,1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン,1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン等の1,n-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン(nは3〜10),1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン,9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン,4,4’-ジアミノベンズアニリド等のジアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、1,4-ブタンジオールが好ましい。
【0038】
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。また、熱可塑性ポリウレタンを製造する場合には、例えば、ポリエーテルジオール,ポリエステルジオール,ポリカーボネートジオール等の高分子ジオールが用いられる。これらは単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
以下、熱可塑性ポリウレタンを製造する場合の高分子ジオールについて詳しく説明する。
【0040】
高分子ジオールの数平均分子量としては、450〜3000、さらには500〜2700、とくには500〜2400であることが、剛性,硬度,親水性等の要求特性を維持しながら、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1〜+30mVである研磨面を有する研磨パッドが得られやすい点から好ましい。なお、高分子ジオールの数平均分子量は、JISK1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出された数平均分子量を意味する。
【0041】
ポリエーテルジオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール),グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、とくにはポリエチレングリコールが好ましい。
【0042】
また、ポリエステルジオールは、例えば、ジカルボン酸またはそのエステルや無水物などのエステル形成性誘導体と、低分子ジオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより得られる。
【0043】
ポリエステルジオールを製造するためのジカルボン酸の具体例としては、例えば、シュウ酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカンジカルボン酸,2-メチルコハク酸,2-メチルアジピン酸,3-メチルアジピン酸,3-メチルペンタン二酸,2-メチルオクタン二酸,3,8-ジメチルデカン二酸,3,7-ジメチルデカン二酸等の炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸;トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)およびこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸,イソフタル酸,オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、ダイマー酸および水添ダイマー酸の具体例としては、例えば、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
【0044】
また、ポリエステルジオールを製造するための低分子ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール,1,3-プロパンジオール,1,2-プロパンジオール,2-メチル-1,3-プロパンジオール,1,4-ブタンジオール,ネオペンチルグリコール,1,5-ペンタンジオール,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,7-ヘプタンジオール,1,8-オクタンジオール,2-メチル-1,8-オクタンジオール,1,9-ノナンジオール,1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール,シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、炭素数6〜12、さらには炭素数8〜10、とくには炭素数9のジオールが好ましい。
【0045】
ポリカーボネートジオールとしては、低分子ジオールと、ジアルキルカーボネート,アルキレンカーボネート,ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものが挙げられる。ポリカーボネートジオールを製造するための低分子ジオールとしては先に例示した低分子ジオールが挙げられる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等が挙げられる。また、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
高分子ジオールとしては、30〜100質量%、さらには35〜100質量%、とくには40〜100質量%、ことには50〜100質量%の割合でポリエチレングリコールを含有することが好ましい。このような場合には、熱可塑性ポリウレタン中の高分子ジオールに由来するセグメントと有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤に由来するセグメントとの相分離の度合いが適切なものとなり、50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率が50〜1200MPaであるような熱可塑性ポリウレタンが得られやすくなる。また、親水性に富むポリエチレングリコールを含有することにより、水に対する接触角が80°以下のような親水性の高い熱可塑性ポリウレタンが得られやすくなる。高分子ジオール中のポリエチレングリコールの割合が低すぎる場合には水に対する接触角も高くなりすぎる傾向がある。
【0047】
また、有機ポリイソシアネートとしては、従来ポリウレタンの製造に用いられている有機ポリイソシアネートが特に限定なく用いられる。また、熱可塑性ポリウレタンを製造する場合には、有機ジイソシアネートが用いられる。有機ジイソシアネートの具体例としては、例えば、エチレンジイソシアネート,テトラメチレンジイソシアネート,ペンタメチレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート,2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート,ドデカメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,イソプロピリデンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート),シクロヘキシルメタンジイソシアネート,メチルシクロヘキサンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,リジンジイソシアネート,2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート,ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート,ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート,2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート,シクロヘキシレンジイソシアネート,メチルシクロヘキシレンジイソシアネート,ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロへキセンなどの脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート,p-フェニレンジイソシアネート,m-キシリレンジイソシアネート,p-キシリレンジイソシアネート,1,5-ナフチレンジイソシアネート,4,4’-ジイソシアナトビフェニル,3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル,3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン,クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートを挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、得られる研磨パッドの耐摩耗性に優れる点から4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートがとくに好ましい。
【0048】
また、熱可塑性ポリウレタンの場合、イソシアネート基に由来する窒素原子の含有率としては、4.5〜7.6質量%、さらには5.0〜7.4質量%、とくには5.2〜7.3質量%であることが50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率が50〜1200MPaである熱可塑性ポリウレタンが得られやすくなる点から好ましい。
【0049】
例えば熱可塑性ポリウレタンを製造する場合、上述したような反応原料を用い、公知のプレポリマー法またはワンショット法を用いたウレタン化反応により重合することにより得られる。好ましくは、実質的に溶剤の不存在下で、上述した各成分を所定の比率で配合して単軸又は多軸スクリュー型押出機を用いて溶融混合しながら連続溶融重合する方法によって得られる。
【0050】
連続溶融重合することにより得られる熱可塑性ポリウレタンは、例えば、ペレット化された後、押出成形法,射出成形法,ブロー成形法,カレンダー成形法などの各種の成形法によりシート状の成形体に成形される。とくには、Tダイを用いて押出成形することにより、厚さの均一なシート状の成形体が得られる点から好ましい。
【0051】
各成分の配合割合は目的とする特性に応じて適宜調整される。例えば、高分子ポリオールと3級アミンを有する鎖伸長剤と3級アミンを有しない鎖伸長剤とに含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.95〜1.3モル、さらには0.96〜1.10モル、とくには0.97〜1.05モルとなる割合で配合することが好ましい。有機ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の割合が低すぎる場合にはポリウレタンの機械的強度および耐摩耗性が低下して、研磨パッドの寿命が短くなる傾向がある。また、有機ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の割合が高すぎる場合には、ポリウレタンの生産性、保存安定性が低下し、研磨パッドの製造が困難になる傾向がある。
【0052】
また、ポリウレタンは、必要に応じて、架橋剤,充填剤,架橋促進剤,架橋助剤,軟化剤,粘着付与剤,老化防止剤,発泡剤,加工助剤,密着性付与剤,無機充填剤,有機フィラー,結晶核剤,耐熱安定剤,耐候安定剤,帯電防止剤,着色剤,滑剤,難燃剤,難燃助剤(酸化アンチモンなど),ブルーミング防止剤,離型剤,増粘剤,酸化防止剤,導電剤等の添加剤を含有してもよい。ポリウレタンの添加剤の含有割合は特に限定されないが、50質量%以下、さらには20質量%以下、とくには5質量%以下であることが好ましい。
【0053】
熱可塑性ポリウレタンの成形体の密度としては、1.0g/cm
3以上、さらには1.1g/cm
3以上、とくには、1.2g/cm
3以上であることが好ましい。熱可塑性ポリウレタンの成形体の密度が低すぎる場合には、研磨パッドが柔らかくなってローカル平坦性が低下する傾向がある。また、熱可塑性ポリウレタンとしては非発泡の熱可塑性ポリウレタンが高い剛性と材料の均質さにより研磨安定性に優れる点から特に好ましい。
【0054】
本実施形態の研磨パッドは、上述したようなポリウレタンのシート状の成形体を切削,スライス,打ち抜き加工等により寸法、形状、厚さ等を調整することにより研磨パッドに仕上げられる。研磨パッドの厚さは特に限定されないが、0.3〜5mm、さらには1.7〜2.8mm、とくには2.0〜2.5mmであることが生産や取り扱いのしやすさ、研磨性能の安定性から好ましい。
【0055】
研磨パッドの硬度としては、JIS−D硬度で60以上、さらには、65以上であることが好ましい。JIS−D硬度が低すぎる場合には、被研磨面への研磨パッドの追従性が高くなってローカル平坦性が低下する傾向がある。
【0056】
本実施形態の研磨パッドの研磨面には、研削加工やレーザー加工により、同心円状のような所定のパターンで溝や穴のような凹部が形成されることが好ましい。このような凹部は、研磨面に研磨スラリーを均一かつ充分に供給するとともに、スクラッチ発生の原因となる研磨屑の排出や、研磨パッドの吸着によるウェハ破損の防止に役立つ。例えば同心円状に溝を形成する場合、溝間の間隔としては、1.0〜50mm、さらには1.5〜30mm、とくには2.0〜15mm程度であることが好ましい。また、溝の幅としては、0.1〜3.0mm、さらには0.2〜2.0mm程度であることが好ましい。また、溝の深さとしては、0.2〜1.8mm、さらには0.4〜1.5mm程度であることが好ましい。また、溝の断面形状としては、例えば、長方形,台形,三角形,半円形等の形状が目的に応じて適宜選択される。
【0057】
また、研磨パッドは研磨層のみからなる単層パッドとして用いても、研磨層である研磨パッドの研磨面の裏面にクッション層を積層した積層パッドとして用いてもよい。クッション層としては、研磨層である研磨パッドの硬度より低い硬度を有する素材を用いることが好ましい。クッション層の硬度が研磨層である研磨パッドの硬度よりも低い場合には、被研磨面の局所的な凹凸には硬質の研磨パッドが追従し、被研磨基材全体の反りやうねりに対してはクッション層が追従するためにグローバル平坦性とローカル平坦性とのバランスに優れた研磨が可能になる。
【0058】
クッション層として用いられる素材の具体例としては、不織布にポリウレタンを含浸させた複合体(例えば、「Suba400」(ニッタ・ハース(株)製));天然ゴム,ニトリルゴム,ポリブタジエンゴム,シリコーンゴム等のゴム;ポリエステル系熱可塑性エラストマー,ポリアミド系熱可塑性エラストマー,フッ素系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;発泡プラスチック;ポリウレタン等が挙げられる。これらの中では、クッション層として好ましい柔軟性が得られやすい点から、発泡構造を有するポリウレタンがとくに好ましい。
【0059】
クッション層の厚さは特に限定されないが、例えば0.5〜5mm程度であることが好ましい。クッション層が薄すぎる場合には、被研磨面の全体の反りやうねりに対する追従効果が低下してグローバル平坦化性能が低下する傾向がある。一方、クッション層が厚すぎる場合には、研磨パッド全体が柔らかくなって安定した研磨が難しくなる傾向がある。研磨層にクッション層を積層する場合には、研磨層になる研磨パッドの厚みが0.3〜5mm程度であることが好ましい。
【0060】
次に、本実施形態の研磨パッドを用いたCMPの一実施形態について説明する。
【0061】
CMPにおいては、例えば、
図1に示すような上面視したときに円形である回転定盤2と、スラリー供給ノズル3と、キャリア4と、パッドコンディショナー6とを備えたCMP装置10が用いられる。回転定盤2の表面に研磨面1aを有する研磨パッド1を両面テープ等により貼付ける。また、キャリア4は被研磨物5を支持する。
【0062】
CMP装置10においては、回転定盤2は図略のモータにより矢印に示す方向に回転する。また、キャリア4は、回転定盤2の面内において、図略のモータにより例えば矢印に示す方向に回転する。パッドコンディショナー6も回転定盤2の面内において、図略のモータにより例えば矢印に示す方向に回転する。
【0063】
はじめに、回転定盤2に固定されて回転する研磨パッド1の研磨面1aに蒸留水を流しながら、例えば、ダイアモンド粒子をニッケル電着等により担体表面に固定したCMP用のパッドコンディショナー6を押し当てて、研磨面1aのコンディショニングを行う。コンディショニングにより、研磨面1aを被研磨面の研磨に好適な表面粗さに調整する。次に、回転する研磨パッド1の研磨面1aにスラリー供給ノズル3から研磨スラリー7が供給される。またCMPを行うに際し、必要に応じ、研磨スラリーと共に、潤滑油、冷却剤などを併用してもよい。
【0064】
研磨スラリーとしては、例えば、水やオイル等の液状媒体;シリカ,アルミナ,酸化セリウム,酸化ジルコニウム,炭化ケイ素等の研磨剤;塩基,酸,界面活性剤,酸化剤,還元剤,キレート剤等を含有しているCMPに用いられる研磨スラリーであれば特に限定なく用いられる。なお、研磨スラリーには、酸性のスラリー、アルカリ性のスラリー、中性のスラリーがあるが、本実施形態の研磨パッドは何れの液性の研磨スラリーでも用いられる。なお、本実施形態の研磨パッドは、pH7.0〜14.0、とくには、pH8.0〜14.0のアルカリ性の研磨スラリーを用いてCMPを行うときにおいて、高い研磨速度を維持できるという効果を発揮する。
【0065】
そして、研磨スラリー7が満遍なく行き渡った研磨面1aに、キャリア4に固定されて回転する被研磨物5の被研磨面を押し当てる。そして、所定の平坦度が得られるまで、研磨処理が続けられる。研磨時に作用させる押し付け力や回転定盤2とキャリア4との相対運動の速度を調整することにより、仕上がり品質が影響を受ける。
【0066】
研磨条件は特に限定されないが、効率的に研磨を行うためには、回転定盤とキャリアのそれぞれの回転速度は300rpm以下の低回転が好ましく、被研磨物にかける圧力は、研磨後に傷が発生しないように150kPa以下とすることが好ましい。研磨している間、研磨面ドには、研磨スラリーをポンプ等で連続的に供給することが好ましい。研磨スラリーの供給量は特に限定されないが、研磨面が常に研磨スラリーで覆われるように供給することが好ましい。
【0067】
そして、研磨終了後の被研磨物を流水でよく洗浄した後、スピンドライヤ等を用いて被研磨物に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。このように、被研磨面を研磨スラリーで研磨することによって、被研磨面全面にわたって平滑な面を得ることができる。
【0068】
このような本実施形態のCMPは、各種半導体装置、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の製造プロセスにおける研磨に好ましく用いられる。研磨対象の例としては、半導体基板上に形成された酸化膜等の絶縁膜の他、銅,アルミニウム,タングステン等の配線用金属膜;タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタン等のバリアメタル膜、特には、酸化膜等の絶縁膜を研磨するのに好ましく用いられる。金属膜として配線パターンやダミーパターン等のパターンが形成されたものを研磨することも可能である。パターンにおけるライン間のピッチは、製品により異なるが、通常は50nm〜100μm程度である。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
数平均分子量600のポリエチレングリコール[略号:PEG600]、2,2’-メチルイミノジエタノール[略号:MIDE]、1,4−ブタンジオール[略号:BD]、および4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート[略号:MDI]を、PEG600:MIDE:BD:MDIの質量比が26.6:18.2:1.5:53.6(MIDEとBDのモル比が90/10)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(以下、これをPU−1という)を製造した。そして、下記方法により、PU−1の、水に対する接触角および50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0071】
[水に対する接触角]
熱プレス法により厚さ300μmのPU−1のフィルムを作製した。そして得られたフィルムを20℃、65%RHの条件下に3日間放置した後、協和界面科学(株)製DropMaster500を用いて水に対する接触角を測定した。
【0072】
[50℃の水で飽和膨潤させた後の50℃における貯蔵弾性率]
幅5mm、長さ30mm、厚さ2mmのPU−1の射出成形シートを作製した。そして、射出成形シートを50℃の水に3日間浸漬した。そして水から取り出した射出成形シートの表面の水を拭いた後、動的粘弾性測定装置(「DVEレオスペクトラー」、(株)レオロジー製)を使用して、50℃における動的粘弾性率を周波数11Hzで測定することにより、貯蔵弾性率を求めた。
【0073】
そして、PU−1を用いて次のようにして研磨パッドを作成し、評価した。
【0074】
PU−1のペレットを単軸押出成形機に供給し、T−ダイを用いて押出成形することにより、厚さ2.0mmのシートを得た。そして、得られたシートの表面を研削して厚さ1.5mmの均一なシートとした後、幅1.0mm、深さ1.0mmの溝を6.5mm間隔で同心円状に形成し、直径が380mmの円形状に切り抜いて研磨パッドを作製した。
【0075】
[ゼータ電位の測定]
30mm×60mmに切り抜いた研磨パッドの表面を洗浄した。そして、電気泳動光散乱装置(ELS-Z、大塚電子(株)製)を使用し、平板測定用セルにサンプルを取り付け、pH10.0にNaOH水溶液で調整した10mM NaCl水溶液中に分散したモニターラテックス(大塚電子(株)製)を用いて測定した。同様に、pH4.0にHCl水溶液で調整した10mM NaCl水溶液中に分散したモニターラテックスを用いても測定を行った。
【0076】
そして、得られた研磨パッドの研磨性能を下記方法により評価した。
【0077】
[研磨性能]
得られた研磨パッドを(株)エム・エー・ティ製の研磨装置「MAT−BC15」に装着した。そして、(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサー(#100−被覆率80%、直径19cm、質量1kg)を用い、蒸留水を150mL/分の速度で流しながら、ドレッサー回転数140rpm、プラテン回転数100rpm、1時間の条件でパッド表面のコンディショニングを行った。次に、CabotMicroelectronics社製の研磨スラリー「SS−25」を2倍に希釈して調整したpH12の研磨スラリーを準備した。そして、プラテン回転数100rpm、ヘッド回転数99rpm、研磨圧力27.6kPaの条件において、120mL/分の速度で研磨スラリーを研磨パッドの研磨面に供給しながら膜厚1000nmの酸化ケイ素膜を表面に有する直径4インチのシリコンウェハを60秒間研磨した。そして、60秒間の研磨後、研磨パッドのコンディショニングを30秒間行った。そして、別のシリコンウェハを再度研磨し、さらに、30秒間コンディショニングを行った。このようにして10枚のシリコンウェハを研磨した。
【0078】
そして、10枚目に研磨したシリコンウェハの研磨前および研磨後の酸化ケイ素膜の膜厚をウェハ面内で各49点測定し、各点における研磨速度を求めた。そして、49点の研磨速度の平均値を研磨速度とした。また、研磨均一性は下式(1)により求めた不均一性により評価した。不均一性の値が小さいほど、ウェハ面内で銅膜が均一に研磨されており研磨均一性が優れている。
【0079】
不均一性(%)=(σ/R)×100 (1)
(ただし、σ:49点の研磨速度の標準偏差、R:49点の研磨速度の平均値を表す。)
【0080】
また、10枚目に研磨したウェハについて(株)キーエンス製レーザー顕微鏡「VKX−200」を用いて対物レンズ倍率50倍で観察してスクラッチの有無を確認した。
【0081】
以上の結果を下記表1にまとめて示す。
【0082】
【表1】
【0083】
[実施例2]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−2)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
PEG600、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:MIDE:BD:MDIの質量比が29.0:9.9:7.5:53.6(MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合して、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られたた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−2)を製造した。
【0085】
[実施例3]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−3)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0086】
PEG600、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:MIDE:BD:MDIの質量比が31.3:1.9:13.1:53.6(MIDEとBDのモル比が10/90)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−3)を製造した。
【0087】
[実施例4]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−4)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
数平均分子量2000のポリエチレングリコール[略号:PEG2000]、MIDE、BD、およびMDIを、PEG2000:MIDE:BD:MDIの質量比が25.3:12.0:9.1:53.6(MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−4)を製造した。
【0089】
[実施例5]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−5)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
PEG600、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:MIDE:BD:MDIの質量比が52.0:4.4:3.3:40.2(MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−5)を製造した。
【0091】
[実施例6]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−6)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
PEG600、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:MIDE:BD:MDIの質量比が13.7:13.5:10.2:62.6(MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−6)を製造した。
【0093】
[実施例7]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−7)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
PEG600、数平均分子量850のポリテトラメチレングリコール[略号:PTG850]、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:PTG850:MIDE:BD:MDIの質量比が17.6:10.7:10.3:7.8:53.6(PEG600とPTG850のモル比が70/30、MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−7)を製造した。
【0095】
[実施例8]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−8)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0096】
PEG600、PTG850、MIDE、BD、およびMDIを、PEG600:PTG850:MIDE:BD:MDIの質量比が8.9:18.9:10.6:8.0:53.6(PEG600とPTG850のモル比が40/60、MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−8)を製造した。
【0097】
[実施例9]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−9)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0098】
PEG600、3−(ジメチルアミノ)―1,2−プロパンジオール[略号:DMAPD]、BD、およびMDIを、PEG600:DMAPD:BD:MDIの質量比が29.0:9.9:7.5:53.6(DMAODとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−9)を製造した。
【0099】
[実施例10]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−10)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
PTG850、MIDE、BD、およびMDIを、PTG850:MIDE:BD:MDIの質量比が27.3:10.9:8.2:53.6(MIDEとBDのモル比が50/50)となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−10)を製造した。
【0101】
[比較例1]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−11)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0102】
PEG600、BD、およびMDIを、PEG600:BD:MDIの質量比が31.9:14.5:53.6となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−11)を製造した。
【0103】
[比較例2]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−12)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0104】
数平均分子量4000のポリエチレングリコール[略号:PEG400]、BD、およびMDIを、PEG4000:BD:MDIの質量比が27.7:18.7:53.6となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−12)を製造した。
【0105】
[比較例3]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−13)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0106】
PEG600、BD、およびMDIを、PEG600:BD:MDIの質量比が60.5:3.8:35.8となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−13という)を製造した。
【0107】
[比較例4]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−14)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
PEG600、BD、およびMDIを、PEG600:BD:MDIの質量比が3.3:25.2:71.5となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−14)を製造した。
【0109】
[比較例5]
次のように製造された熱可塑性ポリウレタン(PU−15)をPU−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性ポリウレタンを評価し、また、研磨パッドを製造し、研磨性能を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
数平均分子量2000のポリブチレンアジペート[略号:PBA1000]、BD、およびMDIを、PBA1000:BD:MDIの質量比が23.1:18.8:58.1となる割合で配合し、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、熱可塑性ポリウレタンの連続溶融重合を行った。得られた熱可塑性ポリウレタンは、溶融状態でストランド状に水中に連続的に押出されて固化された後、ペレタイザーで細断されてペレットにされた。得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(PU−15)を製造した。
【0111】
表1から、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV以上である実施例1〜10で得られた研磨パッドによれば、pH12のアルカリ性の研磨スラリーを用いても高い研磨速度が得られたことがわかる。また、それらは研磨均一性にも優れ、スクラッチも発生しなかった。一方、pH10.0におけるゼータ電位が+0.1mV未満である比較例1〜5で得られた研磨パッドは、高い研磨速度が得られなかった。