特許第6619323号(P6619323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6619323-コメ産地推定方法 図000005
  • 特許6619323-コメ産地推定方法 図000006
  • 特許6619323-コメ産地推定方法 図000007
  • 特許6619323-コメ産地推定方法 図000008
  • 特許6619323-コメ産地推定方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619323
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】コメ産地推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20191202BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20191202BHJP
   G01N 33/10 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01N21/3504
   G01N27/62 V
   G01N27/62 G
   G01N33/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-245098(P2016-245098)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-100834(P2018-100834A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】保井 孝子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 了行
(72)【発明者】
【氏名】界 義久
(72)【発明者】
【氏名】酒井 歩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−041165(JP,A)
【文献】 特開2013−061184(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/124068(WO,A2)
【文献】 特開2006−189351(JP,A)
【文献】 特開2015−206706(JP,A)
【文献】 特開2005−140760(JP,A)
【文献】 Geographical Analysis of Olive Oil Samples Originating from Eight Countries Using Picarro's Novel Simultaneous 13C + D CM-CRDS Isotope Analyzer,PICARRO Application Note,米国,PICARRO, INC.,2011年,AN029,URL,http://www.picarro.com/support/library/documents/an029_geographical_analysis_of_olive_oil_samples_originating_from_right
【文献】 食の安全と信頼を支える新技術,日本獣医生命科学大学研究報告,日本,2014年,No. 63,pp. 151-153
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 27/62−27/70
G01N 33/10
G01N 33/18
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
J−STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象となるコメに含まれる、水素と炭素の安定同位体比を測定し、得られた測定結果に基づいて前記コメの産地を推定するコメ産地推定方法であって、
前記コメから選択した3つ以上のコメ粒を粉末化して均一に混合した粉サンプルを生成する粉末化ステップと、
前記粉サンプルを燃焼させて得られたガスに基づいて前記コメの安定同位体比を測定する安定同位体比測定ステップと、
前記コメに含まれるケイ素、カルシウム、亜鉛、モリブデン、およびバリウムからなる微量元素の元素量を定量分析する微量元素分析ステップと、
前記安定同位体比測定ステップで得られた安定同位体比測定結果と、前記微量元素分析ステップで得られた微量元素分析結果との組み合わせに基づいて、前記コメの産地を推定するコメ産地推定処理ステップと
を備え
前記安定同位体比測定ステップは、
前記粉サンプルを燃焼させることにより前記ガスとして二酸化炭素および水蒸気を発生させる燃焼ステップと、
前記燃焼ステップで発生させた二酸化炭素および水蒸気に対してレーザ光を照射してレーザ分光することにより、前記粉サンプルに含まれる水素と炭素の安定同位体比を測定するレーザ分光式安定同位体比測定ステップと
を含むことを特徴とするコメ産地推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコメ産地推定方法において、
前記コメ産地推定処理ステップは、階層的クラスタリング処理により得られたクラスタ分析結果に基づいて、前記コメの産地を推定するステップからなることを特徴とするコメ産地推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体比分析に基づいてコメの産地を推定するためのコメ産地推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市販されているコメのうち、品種、さらには産地や産年が同一である単一銘柄米は、「ブランド米」と呼ばれ、味や食感が良いコメは高い人気がある。特に有名なブランド米として「魚沼産のコシヒカリ」などが挙げられる。
このようなブランド米は高価で取引されるため、ブランド米ではない商品を、産地を偽装して、ブランド米として高額で販売する産地偽装問題が表面化している。
【0003】
一般に、食品の産地は、流通過程において文書等による非科学的手法による管理が主であり、コメも同様である。このため、商品のすり替えが流通の途中で生じた際に、文書等にすり替えた事実が記載されていない限り、産地の偽装が行われたことを把握することができない。このため、流通過程の中で、簡単に商品の産地を科学的に判定できる手法が望まれている。
【0004】
従来より、コメなどの食品に含まれる酸素や水素の安定同位体比は、産地推定の手がかりになることが報告されている(非特許文献1)。このような水素安定同位体比分析を行う場合、安定同位体比質量分析法(IRMS:Isotope Ratio Mass Spectrometry)や核磁気共鳴分光法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy)を用いた、操作が複雑となる高価で大型の分析装置が必要となる。このため、分析に時間とコストがかかるという問題があり、これが普及を妨げる一つの要因となっていた。また、植物に含まれる炭素の同位体比は、植物の生育した日照環境の影響を受けるため、産地推定の手がかりになることが報告されている。
【0005】
近年、レーザ分光法における高感度化技術の進歩により、安定同位体比分析に利用できる高感度なレーザ分光装置が開発され注目されている。これを利用すると、安定同位体比分析を簡単に行うことができ、コメの産地判別への応用も期待される(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】鈴木・中下・伊永,"安定同位体比分析による国内産米の産地及び有機栽培判別の可能性",分析化学,Vol.58,No.12,pp.1053-1058,2009
【非特許文献2】吉村・神徳・藤井・阪本・界,"高感度レーザガスセンシング技術と安定同位体比分析応用",NTT技術ジャーナル,Vol.26,No.2,pp.27-30,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のレーザ分光装置では、単にコメ粒をそのまま燃焼させて発生させたガスから安定同位体比を測定しているため、同一産地のコメであっても測定により得られた安定同位体比にばらつきが生じるという問題点があった。このため、同一測定結果と対応する分布領域が広くなって、産地が地理的に近い地域間で分布が重なってしまうため、結果として、判別精度が低下するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、コメから測定される酸素、炭素、水素などの安定同位体比のばらつきを抑制でき、より高い精度でコメ産地を推定できるコメ産地推定技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかるコメ産地推定方法は、分析対象となるコメに含まれる、水素と炭素の安定同位体比を測定し、得られた測定結果に基づいて前記コメの産地を推定するコメ産地推定方法であって、前記コメから選択した3つ以上のコメ粒を粉末化して均一に混合した粉サンプルを生成する粉末化ステップと、前記粉サンプルを燃焼させて得られたガスに基づいて前記コメの安定同位体比を測定する安定同位体比測定ステップと、前記コメに含まれるケイ素、カルシウム、亜鉛、モリブデン、およびバリウムからなる微量元素の元素量を定量分析する微量元素分析ステップと、前記安定同位体比測定ステップで得られた安定同位体比測定結果と、前記微量元素分析ステップで得られた微量元素分析結果との組み合わせに基づいて、前記コメの産地を推定するコメ産地推定処理ステップとを備え、前記安定同位体比測定ステップは、前記粉サンプルを燃焼させることにより前記ガスとして二酸化炭素および水蒸気を発生させる燃焼ステップと、前記燃焼ステップで発生させた二酸化炭素および水蒸気に対してレーザ光を照射してレーザ分光することにより、前記粉サンプルに含まれる水素と炭素の安定同位体比を測定するレーザ分光式安定同位体比測定ステップとを含んでいる。
【0013】
また、本発明にかかる上記コメ産地推定方法の一構成例は、前記コメ産地推定処理ステップが、階層的クラスタリング処理により得られたクラスタ分析結果に基づいて、前記コメの産地を推定するステップからなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コメ粒自体を起源とする安定同位体比のばらつきが抑制されることになる。したがって、より高い精度でコメ産地を推定することができ、ブランド米に関する産地偽装を、科学的に容易かつ高い精度で判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コメ産地推定システムを示す説明図である。
図2】コメ粒数による安定同位体比のばらつきの影響を示すグラフである。
図3】産地ごとに測定したコメの水素と炭素の安定同位体比の測定結果を示すグラフである。
図4図3の測定結果に対するクラスタ解析結果を示すデンドログラムである。
図5図3の測定結果と微量元素分析結果との組み合わせに対するクラスタ解析結果を示すデンドログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[コメ産地推定システム]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるコメ産地推定システム1について説明する。図1は、コメ産地推定システムを示す説明図である。
【0018】
このコメ産地推定システム1は、コメの産地を推定する際に用いられて、サンプルに含まれる水素および炭素の安定同位体の比率を測定して推定するシステムである。
図1に示すように、コメ産地推定システム1は、主な構成として、粉末器10、安定同位体比分析装置20、誘導結合プラズマ質量分析計30、およびコメ産地推定処理装置40とを備えている。
【0019】
粉末器10は、全体として、コメ、ムギ、マメなどの穀物を粉末化する、フードミル、製粉機、粉砕機などの一般的な粉末化装置からなり、分析対象となる数個のコメ粒を粉末化してコメ粉末からなる粉サンプルSを生成する。
【0020】
安定同位体比分析装置20は、例えばPicarro社のB2221−iなど、一般的なレーザ分光式安定同位体比分析装置からなり、燃焼部21、レーザ光源22、ガスセル23、光検出器24、および安定同位体比測定部25が設けられている。
【0021】
燃焼部21は、水素置換容器10で水素置換されたサンプルSを粉末化したものを燃焼し、発生した水蒸気さらには二酸化炭素をガスセル23へ供給する機能を有している。
レーザ光源22は、可変波長のレーザ光Lをパルス状に出射する機能を有している。
【0022】
ガスセル23は、内部に複数のミラーが設けられており、レーザ光源22からのレーザ光Lをこれらミラーで繰り返し反射させて燃焼部21から供給された水蒸気さらには二酸化炭素に照射することにより、光学キャビティを形成する機能と、水蒸気さらには二酸化炭素を通過したレーザ光L’を外部に出力する機能とを有している。
【0023】
光検出器24は、フォトダイオードからなり、ガスセル23から出力されたレーザ光L’の光強度を検出する機能を有している。
安定同位体比測定部25は、光検出器24で検出された光強度に基づいて、レーザ光Lのパルス終端時に測定した減衰時間から吸収率を計算する機能と、得られた吸収率がピークとなる光吸収スペクトルに応じて、水蒸気さらには二酸化炭素に含まれる、水素、炭素、酸素の少なくともいずれか1つの安定同位体の種別と濃度を検出する機能と、これら検出結果から安定同位体比を測定する機能とを有している。
なお、具体的な安定同位体比計測方法については、前述したキャビティリングダウン分光法(CRDS:Cavity Ring-Down Spectroscopy)以外の公知の手法を用いてもよい。
【0024】
誘導結合プラズマ質量分析計30は、例えばAgilent社の7700eなど、一般的な誘導結合プラズマ質量分析計からなり、分析対象となるコメ粒から整調して得られた試薬溶液に含まれるケイ素Si、カルシウムCa、亜鉛Zn、モリブデンMo、およびバリウムBaからなる微量元素を、アルゴンガスのプラズマでイオン化し、これらイオンを質量分析することにより、これら微量元素の元素量を測定する機能を有している。
【0025】
コメ産地推定処理装置40は、全体としてサーバ装置やPCなどの情報処理装置からなり、安定同位体比分析装置20で得られた水素、炭素、酸素に関する安定同位体比の測定結果、さらには誘導結合プラズマ質量分析計30で得られた微量元素元素量の測定結果に基づいて、予め得られた各産地のコメに関する安定同位体比や微量元素元素量に関する基準値(標本値)との比較、さらには階層的クラスタリング処理を行うことにより、コメの産地を推定する機能を有している。
【0026】
[発明の原理]
次に、本発明の原理について説明する。
コメ粒に含まれている水素や炭素の安定同位体比を測定する場合、一般的には前述したようなレーザ分光法が用いられる。このレーザ分光法は、サンプルのガスにレーザ光を照射して得られた光吸収スペクトルに基づいて安定同位体比を測定する方法である。このため、コメ粒に含まる水素や炭素の安定同位体比を測定する場合、コメ粒を燃焼させて水素や炭素を水蒸気や二酸化炭素としてガス化する必要がある。
【0027】
このようなガスを生成する場合、コメを1粒燃焼させれば測定に必要となる十分な量が得られる。しかしながら、一般的には、1本の稲穂には50粒以上ものコメ粒が実り、1平米あたりでは3万粒以上のコメ粒が収穫される。コメ産地は、地区、町、市などの比較的広範囲を1つのコメ産地としているため、このようなコメ産地で生産されたコメ粒は膨大な数となる。
【0028】
一方、コメ粒に含まれる水素や炭素は、同一産地であるからといって一律ではなく、栽培地や栽培条件などの環境によって左右される。したがって、比較的広範囲にわたるコメ産地で生産された膨大な数のコメ粒から、いずれか1粒のコメを選択して安定同位体比を測定した場合、得られた測定結果にある程度のばらつきが含まれると考えられる。本発明は、このような個々のコメ粒自体を起源とするばらつきが、コメ産地の判別精度を低下させている原因であると推定し、複数のコメ粒を粉末化してサンプルを生成し、これを燃焼させて得られたガスに基づいて安定同位体比を測定するようにしたものである。
【0029】
図2は、コメ粒数による安定同位体比のばらつきの影響を示すグラフである。個々のコメ粒自体を起源とするばらつきを検証するため、同一産地のコメを用いて、コメ粒数と安定同位体比のばらつきとの関連性を調べる実験を行った。ここでは、まず、コメを1粒ごとに粉末化して粒サンプルSを多数用意し、これら粒サンプルSから、1,3,5,10,20,40粒数分の粒サンプルSを任意に選択して均一に混合して粉サンプルを、粒数ごとに12サンプルずつ作製し、これら粉サンプルSについてそれぞれ水素安定同位体比を測定した。
【0030】
なお、本発明において測定する炭素、水素および酸素の安定同位体比は、炭素、水素、酸素おまたはその両方の天然に存在する非放射性同位体についての比を用いればよく、炭素安定同位体比としては12Cと13Cの比を用いればよく、水素安定同位体比としては1HとD(2H)の比を、酸素安定同位体比としては16Oと18Oの比を用いればよい。これらの安定同位体比は、通常、絶対比ではなく、標準試料の同位体比からの千分偏差としてそれぞれ以下の数式で示されるδ値で表現される。
【0031】
炭素同位体比は、次の式(1)で示すことができ、水素安定同位体比は、次の式(2)、酸素安定同位体比は、次の式(3)で示すことができる。なお、これら式中、SAMPは試料における同位体比を示し、STDは標準試料における同位体比を示す。
【0032】
【数1】
【数2】
【数3】
【0033】
安定同位体比の標準試料は、水素安定同位体比及び酸素安定同位体比の標準試料としては、通常、標準平均海水(Vienna Standard Mean Ocean Water:VSMOW)を用いて表記される。炭素安定同位体比の標準試料としては、通常は、PeeDee層のヤイシ類の化石(Vienna Pee Dee Belemnite:VPDB)を用いて表記される。
【0034】
図2に示すように、1粒分の粉サンプルSでは、得られた水素安定同位体比のばらつきが約30‰あったのに対して、3粒分の粉サンプルSでは約11‰までばらつきが減少した。また、5,10,20,40粒分の粉サンプルSのばらつきは、それぞれ11‰,10‰,8‰,8‰であった。特に1粒分に比較して3粒分でばらつきが大きく減少し、20粒分以上でばらつきが収束する傾向があることが分かった。また、炭素や酸素の安定同位体比でも同様の傾向が見られることが分かった。
【0035】
この実験の結果、コメの水素や炭素の安定同位体比を測定する場合には、3粒以上のコメを粉末化したものをサンプルとすることが測定結果のばらつきを抑制するのに有効であることが分かった。また、20粒以上のコメを粉末化したものをサンプルとすると測定結果のばらつきを最小化できることが分かった。
【0036】
図3は、産地ごとに測定したコメの水素と炭素の安定同位体比の測定結果を示すグラフである。ここでは、前述と同様にして、産地ごとにコメ20粒分の粉サンプルSを作製し、水素および炭素の安定同位体比を測定することにより、ブランド米である「魚沼産コシヒカリ」の判別可否を検証した。
【0037】
「魚沼産コシヒカリ」は、新潟県の魚沼地域に存在する5市2町のエリアで収穫されたコシヒカリBLおよびコシヒカリであり、図3のサンプルでは、「JA魚沼みなみ/南魚沼市」産のサンプルや「JA魚沼みなみ/六日町」産のサンプルがこれに相当する。
図3では、これら「JA魚沼みなみ/南魚沼市」産のサンプルや「JA魚沼みなみ/六日町」産のサンプルが、他の産地のサンプルとはある程度異なる、水素および炭素の安定同位体比を示していることが分かる。
【0038】
図4は、図3の測定結果に対するクラスタ解析結果を示すデンドログラムである。ここでは、各サンプルの水素安定同位体比と炭素安定同位体比を、ウォード法(Ward’s method)により階層的クラスタリングした結果が示されている。
図4によれば、「兵庫県・豊岡市」産のサンプルとは同じクラスではあるが、「魚沼産コシヒカリ」に相当する「JA魚沼みなみ/南魚沼市」産のサンプルや「JA魚沼みなみ/六日町」産のサンプルが、他の産地のサンプルと、ある程度の距離(Height)を持って異なるクラスに属しており、判別可能であることが分かる。
【0039】
図5は、図3の測定結果と微量元素分析結果との組み合わせに対するクラスタ解析結果を示すデンドログラムである。ここでは、図3で用いたコメのサンプルごとに、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrom)を用いて、コメに含まれるSi,Ca,Zn,Mo,およびBaの元素量を定量分析し、得られた分析結果を前述した水素および炭素の安定同位体比の測定結果と組み合わせて、ウォード法により階層的クラスタリングした結果が示されている。
【0040】
図5によれば、「魚沼産コシヒカリ」に相当する「JA魚沼みなみ/南魚沼市」や「JA魚沼みなみ/六日町」のサンプルが、「兵庫県・豊岡市」産のサンプルをはじめとする他の産地のサンプルと、大きな距離(Height)を持って独立したクラスに属しており、極めて容易に判別可能であることが分かる。
【0041】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、分析対象となるコメから選択した3つ以上のコメ粒を粉末器10で粉末化して均一に混合することにより粉サンプルSを作製し、得られた粉サンプルSを安定同位体比分析装置20により燃焼させて得られたガスに基づいて、水素、炭素、酸素の少なくともいずれか1つに関する安定同位体比を測定し、得られた測定結果に基づいてコメの産地を推定するようにしたものである。
これにより、コメ粒自体を起源とする安定同位体比のばらつきが抑制されることになる。したがって、より高い精度でコメ産地を推定することができ、ブランド米に関する産地偽装を、科学的に容易かつ高い精度で判定することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態において、誘導結合プラズマ質量分析計30により、分析対象となるコメに含まれるSi,Ca,Zn,Mo,およびBaの元素量を定量分析し、得られた分析結果と安定同位体比の測定結果との組み合わせに基づいて、コメの産地を推定するようにしてもよい。
気候や緯度が同じような地域では、コメに含まれる酸素、水素、または炭素などの安定同位体比の差が小さく、産地推定精度が低下する傾向があるが、微量元素定量分析結果を考慮することにより、極めて高い精度でコメ産地を推定することができ、ブランド米に関する産地偽装を、科学的に容易かつ極めて高い精度で判定することが可能となる。
【0043】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…コメ産地推定システム、10…粉末器、20…安定同位体比分析装置、21…燃焼部、22…レーザ光源、23…ガスセル、24…光検出器、25…安定同位体比測定部、30…誘導結合プラズマ質量分析計、S…粉サンプル。
図1
図2
図3
図4
図5