特許第6619328号(P6619328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6619328ピンチバルブおよびピンチバルブを備えた自動分析装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619328
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ピンチバルブおよびピンチバルブを備えた自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20191202BHJP
   F16K 7/04 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01N35/10 D
   F16K7/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-511962(P2016-511962)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060261
(87)【国際公開番号】WO2015152296
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-76622(P2014-76622)
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉部 好洋
(72)【発明者】
【氏名】坂下 敬道
(72)【発明者】
【氏名】神原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 健
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−130238(JP,A)
【文献】 特開2012−154354(JP,A)
【文献】 特開2007−198765(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0060655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
F16K 7/00−7/20
G01N 27/416−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通過させることが可能なチューブを保持する保持部と、
前記保持部にて保持されたピンチチューブと接触する面が曲面で形成された押さえ面と、
ピンチチューブをはさんで前記押さえ面と対向して設けられ、前記ピンチチューブと接触する部分の形状が前記押さえ面と略同一形状および略同一径で形成され、前記接触する部分の形状の幅dが当該ピンチチューブの厚みtの略1.5倍であるピンチロッドと、
前記押さえ面と前記ピンチロッドとの間の距離を可変とするように駆動させることにより、前記ピンチチューブの閉鎖あるいは開放させる駆動手段とを備え
前記押さえ面および前記ピンチロッドが前記ピンチチューブと接触する面の曲率Rは当該押さえ面および当該ピンチロッドが当該ピンチチューブと接触する面の幅dの略1/3以上であって、前記ピンチチューブが厚みt0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質である場合の前記曲率Rは略1.5であることを特徴とするピンチバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のピンチバルブにおいて、
当該ピンチバルブが閉鎖状態にある場合、
前記駆動手段は、面圧pがピンチチューブ内の内圧に対抗しうる封止圧力P1となる押しつぶし量H1となるよう、前記押さえ面と前記ピンチロッドの間の距離を制御することを特徴とするピンチバルブ。
【請求項3】
請求項2記載のピンチバルブにおいて、
前記ピンチチューブが、厚みt0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質である場合、押しつぶし量H1は略1.7〜2.0mmであることを特徴とするピンチバルブ。
【請求項4】
測定対象試料を分析する分析部と、
分析に使用する流体を通過させる流路と、
分析プロセスに応じて前記流路を開放および閉鎖するピンチチューブと、
ピンチバルブと、を備えた自動分析装置において、
前記ピンチバルブは、
前記ピンチチューブを保持する保持部と、
前記保持部にて保持されたピンチチューブと接触する面が曲面で形成された押さえ面と、
ピンチチューブをはさんで前記押さえ面と対向して設けられ、前記ピンチチューブと接触する部分の形状が前記押さえ面と略同一形状および略同一幅で形成され、前記接触する部分の形状の幅dが当該ピンチチューブの厚みtの略1.5倍であるピンチロッドと、
前記押さえ面と前記ピンチロッドとの間の距離を可変とするように駆動させることにより、前記ピンチチューブの閉鎖あるいは開放させる駆動手段とを備え
前記押さえ面および前記ピンチロッドが前記ピンチチューブと接触する面の曲率Rは当該押さえ面および当該ピンチロッドが当該ピンチチューブと接触する面の幅dの略1/3以上であって、前記ピンチチューブが、厚みt0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質である場合の前記曲率Rは略1.5であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の自動分析装置において、
前記分析部は生体由来試料中に含まれる測定対象成分を定量的または定性的に検出するフローセル検出部を有し、
前記ピンチバルブは、流体をフローセル検出部に連通させる流路上に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項4記載の自動分析装置において、
当該ピンチバルブが閉鎖状態にある場合、
前記駆動手段は、面圧pがピンチチューブ内の内圧に対抗しうる封止圧力P1となる押しつぶし量H1となるよう、前記押さえ面と前記ピンチロッドの間の距離を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記ピンチチューブが、厚みt0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質である場合、押しつぶし量H1は略1.7mmであることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流路を封止するためのピンチバルブおよび当該ピンチバルブを流路に設けた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、臨床検査室の分野において、血液や尿などに由来する生体試料を測定するための自動分析装置であって、測定用流路の制御を行うバルブを備えて流路を封止・開放を制御する自動分析装置が記載されている。流路制御のためのバルブとして主なものにピンチバルブが存在する。
【0003】
ピンチバルブは、コイルによりピンチロッドを稼動させ、ピンチロッドと押さえ面によりピンチチューブを押さえることにより、弁を閉じる。本ピンチバルブは、流路の切替えには粒子を含んだ液体および空気に対して詰まりが生じないため、例えば測定終了後の検体を廃液する廃流路切替部の用途に用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−300752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床検査室のように多検体を連続的に処理する必要がある自動分析装置の流路の開閉にピンチバルブを使用している場合、弁の開閉動作を繰り返すことにより、ピンチバルブのピンチロッドおよび押さえ面と接触するピンチチューブ周辺の表面が、規定メンテナンス期間を超過すると疲労き裂により破断する可能性がある。当該ピンチチューブは定期交換部品となっており、ピンチバルブを実装する装置は定期的なメンテナンスを必要とする。装置のユーザは定期メンテナンス実行中に分析を実行することができず、検査処理効率が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、ピンチチューブの疲労を防止し、装置のメンテナンス性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた本願発明の構成は以下の通りである。
【0008】
すなわち、流体を通過させることが可能なチューブを保持する保持部と、前記保持部にて保持されたピンチチューブと接触する面が曲面で形成された押さえ面と、ピンチチューブをはさんで前記押さえ面と対向して設けられ、前記ピンチチューブと接触する部分の形状が前記押さえ面と略同一形状および略同一径で形成され、前記接触する部分の形状の幅dが当該ピンチチューブの厚みの略1.5倍であるピンチロッドと、前記押さえ面と前記ピンチロッドとの間の距離を可変とするように駆動させることにより、前記ピンチチューブの閉鎖あるいは開放させる駆動手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成を備えることにより、ピンチチューブの疲労を低減しつつも確実に流路の閉鎖および開放を制御可能なピンチバルブ、および当該ピンチバルブを備えた自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動分析装置の一例を示す図である。
図2】本発明のピンチバルブを備えたフローセル検出器を含む流路構成図である。
図3】ピンチバルブの構成図である。
図4】従来技術における弁開時のピンチバルブのピンチチューブ押さえ面周辺拡大図である。
図5】従来技術における弁閉時のピンチバルブのピンチチューブ押さえ面周辺拡大図である。
図6A】接触面を曲面形状にした弁閉時のピンチバルブの拡大図である。
図6B】接触面を曲面形状にした弁閉時のピンチバルブの拡大図である。
図7】接触面の形状とピンチチューブ最大変形箇所の変形量の関係を示す模式図である。
図8A】接触面における曲面形状Rを3通りに変化させたときの、弁閉時のピンチバルブ拡大図である。
図8B】接触面における曲面形状Rを3通りに変化させたときの、弁閉時のピンチバルブ拡大図である。
図8C】接触面における曲面形状Rを3通りに変化させたときの、弁閉時のピンチバルブ拡大図である。
図9】曲面形状である接触面の幅dとピンチチューブ最大変形箇所の変形量の関係を示す図である。
図10】ピンチチューブの厚みtとピンチチューブ表面の最大変形量が最小時の押さえ面幅d´の関係を示す図である。
図11A】ピンチロッドの面形状および押さえ面が同一の曲面形状である場合と非同一形状である場合の、弁閉時のピンチバルブ拡大図である。
図11B】ピンチロッドの面形状および押さえ面が同一の曲面形状である場合と非同一形状である場合の、弁閉時のピンチバルブ拡大図である。
図12】ピンチバルブが弁閉時におけるピンチバルブの拡大図である。
図13】ピンチバルブが弁閉時におけるピンチチューブ押しつぶし量とチューブ内面に付加される面圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を用いて、自動分析装置について説明する。
【0012】
本実施例における自動分析装置は、分析装置100の、ラック101には、サンプルを保持するサンプル容器102が架設されており、ラック搬送ライン117によって、サンプル分注ノズル103の近傍のサンプル分注位置まで移動させる。
【0013】
インキュベータディスク104には、複数の反応容器105が設置可能であり、円周方向に設置された反応容器105をそれぞれ所定位置まで移動させるための回転運動が可能である。
【0014】
サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、X軸,Y軸,Z軸の3方向に移動可能であり、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107,反応容器攪拌機構108,サンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109,サンプル分注チップ装着位置110、インキュベータディスク104の所定箇所、の範囲を移動し、サンプル分注チップおよび反応容器の搬送を行う。
【0015】
サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107には、未使用の反応容器とサンプル分注チップが複数設置されている。サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107の上方に移動し、下降して未使用の反応容器を把持した後上昇し、さらに、インキュベータディスク104の所定位置上方に移動し、下降して反応容器を設置する。
【0016】
次いで、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107の上方に移動し、下降して未使用のサンプル分注チップを把持した後、上昇し、サンプル分注チップ装着位置110の上方に移動し、下降してサンプル分注チップを設置する。
【0017】
サンプル分注ノズル103は、回動及び上下動可能であり、サンプル分注チップ装着位置110の上方に回動移動した後、下降して、サンプル分注ノズル103の先端にサンプル分注チップを圧入して装着する。サンプル分注チップを装着したサンプル分注ノズル103は、搬送ラック101に載置されたサンプル容器102の上方に移動した後、下降して、サンプル容器102に保持されたサンプルを所定量吸引する。サンプルを吸引したサンプル分注ノズル103は、インキュベータディスク104の上方に移動した後、下降して、インキュベータディスク104に保持された未使用の反応容器105に、サンプルを吐出する。サンプル吐出が終了すると、サンプル分注ノズル103は、サンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109の上方に移動し、使用済みのサンプル分注チップを廃棄孔から廃棄する。
【0018】
試薬ディスク111には、複数の試薬容器118が設置されている。試薬ディスク111の上部には試薬ディスクカバー112が設けられ、試薬ディスク111内部は所定の温度に保温される。試薬ディスクカバー112の一部には、試薬ディスクカバー開口部113が設けられている。試薬分注ノズル114は回転と上下移動が可能であり、試薬ディスクカバー112の開口部113の上方に回転移動した後に下降し、試薬分注ノズル114の先端を所定の試薬容器内の試薬に浸漬して、所定量の試薬を吸引する。次いで、試薬分注ノズル114は上昇した後に、インキュベータディスク104の所定位置の上方に回転移動して、反応容器105に試薬を吐出する。
【0019】
サンプルと試薬の吐出された反応容器105は、インキュベータディスク104の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、反応容器攪拌機構108へと搬送される。反応容器攪拌機構108は、反応容器に対して回転運動を加えることで反応容器内のサンプルと試薬を攪拌し、混和する。攪拌の終了した反応容器は、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、インキュベータディスク104の所定位置に戻される。
【0020】
反応液吸引ノズル115は回転と上下移動が可能であり、サンプルと試薬の分注し、攪拌が終了し、インキュベータディスク104で所定の反応時間が経過した反応容器105の上方に移動し、下降し、反応容器105内の反応液を吸引する。反応液吸引ノズル115で吸引された反応液は、検出部ユニット116で分析される。
【0021】
反応液の吸引された反応容器105は、インキュベータディスク104の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、インキュベータディスク105からサンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109の上方に移動し、廃棄孔から廃棄する。
【0022】
図2は本発明のピンチバルブを備えた検出部ユニット116の流路構成図である。
【0023】
液体や空気を吸引或いは吐出するための反応液吸引ノズル201、測定対象物を検出するためのフローセル検出器202、液体や空気を吸引或いは吐出するための圧力差を発生させるためのシリンジ203、液体や空気を排出するためのドレイン204が、ノズルとフローセル検出器の入口接続部205を連絡する第一流路206、フローセル検出器の出口接続部207から第一弁208を経由して分岐部209へと連絡する第二流路210、次いで分岐部209を経由してシリンジへと連絡する第三流路211、分岐部209から第二弁212を経由してドレイン204へと連絡する第四流路213を備える。この流路構成において、シリンジ203の上下動作および第一弁208と第二弁212の開閉切替によって、反応液吸引ノズル114から液体や空気の吸引或いは吐出を実施する。本流路構成において第一弁208と第二弁212には、粒子を含んだ液体および空気を封止可能なピンチバルブが用いられる。
【0024】
図3はピンチバルブの構造を示す模式図である。
【0025】
ピンチバルブ301は、押さえ面302と、コイル部303と、コイルにより駆動する可動鉄心304と、可動鉄心が吸引される固定鉄心305と、前述した可動鉄心とともに動作するピンチロッド306と、ピンチチューブ307により構成される。ピンチバルブは、コイル部により可動鉄心を固定鉄心まで稼動させることにより、ピンチロッドをピンチチューブの方へ移動させ、封止対象のピンチチューブの上面308と下面309をそれぞれ押さえ面とピンチロッドで押さえることにより、ピンチチューブ内の流路を閉塞させる。
【0026】
図4は、従来技術における弁開時のピンチバルブ301、ピンチロッド306およびピンチチューブ307の押さえ面周辺を拡大した模式図である。
【0027】
なお、図4ではピンチチューブの単位面積あたりの形状変化に着目するため、ピンチチューブの上面308および下面309を厚み方向と長さ方向に等面区画で区切って表している。弁開時には、ピンチチューブの変形は生じないため、ピンチチューブの区画は全て同じ面積を有する。
【0028】
図5は、従来技術における弁閉時のピンチバルブとピンチチューブの押さえ面周辺を拡大した模式図である。
【0029】
弁閉時にはピンチチューブ内の流路を閉塞するよう、ピンチチューブの上面308の内面501と下面309の内面502とがそれぞれ接触するように、ピンチロッド306が上昇し、流路が封止される。
【0030】
ここで、ピンチチューブの上面501および下面502は、ピンチロッドおよび押さえ面の周縁部Aが接触する部分の変形量が最大となる。以下、本実施例では、押さえ面302の周縁部Aが接触するピンチチューブ上面の等面区画を、変形最大箇所aと称する。変形最大箇所aにはピンチバルブが開閉弁を繰り返す都度、大きな負荷がかかるため、ピンチバルブを長期間に亘り繰り返し使用することにより、変形最大箇所aが疲労き裂により破断する可能性があった。
【0031】
発明者は鋭意推考の結果、ピンチチューブの変形最大箇所aの変形量は以下3つの要因により決まることを見出した。
(1)押さえ面およびピンチロッドの形状
(2)他箇所変形による影響
(3)ピンチロッド駆動量
本発明では、押さえ面とピンチロッドの形状、および弁閉時のピンチロッド駆動量を最適化することで、弁閉時のピンチチューブの変形最大箇所における変形量を低減し、ピンチチューブへの疲労き裂負荷を減らして長寿命化することにより、上記課題を解決する。
【0032】
まず、押さえ面の形状を最適化する方法について説明する。
【0033】
図6A図6Bは、押さえ面がピンチチューブと接触する接触面を曲面にした場合の、弁閉時のピンチバルブ周辺を拡大したものである。図6Aは、ピンチチューブに接触する押さえ面の接触面内に平坦な領域401が存在し、その接触面の周縁部をR面取り形状(以後、このような形状を角形状と称する)としたピンチバルブで弁閉した場合の模式図である。図6Bは、接触面内に平坦な領域が存在せず、全体的に曲面で形成される押さえ面(以後、曲面形状と称する)としたピンチバルブで弁閉した場合の模式図を示す。
【0034】
いずれの場合も、押さえ面302の接触面の周縁部と接触するピンチチューブの一部に変形最大箇所b,cが生じる。変形最大箇所b,cにおいて、矢印の向きは変形最大箇所の変形方向を、長さは変形量を示す。ここで、ピンチチューブは摩擦係数が大きいため、接触面にならって変形するのが通常である。よって、角形状よりも曲面形状の方がピンチチューブの変形がなだらかになる。
【0035】
また、平坦な領域401が存在する場合、押さえ面と接するピンチチューブ変形最大箇所bには、接触面にならった変形だけではなく、ピンチチューブの軸方向601に関して中心部より外側に押し出される変形がさらに付加される。そのため、押さえ面を曲面形状にした場合の図6Aにおける変形最大箇所cの変形量は、押さえ面を角形状とした場合の図6Bにおける変形最大箇所bの変形量に比べて減少する。
【0036】
図7は、押さえ面302の接触面の形状と最大変形箇所の変形量の関係を示す模式図である。なお、チューブの厚みtおよび押さえ面幅dは一定であるとする。押さえ面の周縁部に形成するRを大きくするにつれて、押さえ面の周縁部に接触して生じるピンチチューブの最大変形箇所の変形がなだらかになり、さらにピンチチューブを軸方向に押し出す変形を付加する平坦な領域がなくなるため、ピンチチューブ表面の変形量を低減することができる。なお、Rは1/3d以上になった場合に、ピンチチューブを軸方向に押し出す変形が少なくなるため、ピンチチューブ表面の最大変形量は小さくなる。また、Rは、1/2dとなった場合に、ピンチチューブ表面の変形最大量がもっとも小さくなる。
【0037】
次に、押さえ面302の幅dを最適化する方法について説明する。
【0038】
図8A図8Cは、押さえ面の幅dを三通りに変化させ、弁閉した際のピンチバルブの押さえ面周辺を拡大したものである。図8Aから図8Cになるにつれて幅dは大きいとする。
【0039】
幅dが最も大きい図8Cの場合、図8A図8Bの場合に比べて押さえ面中心部に接するピンチチューブ変形箇所eは、ピンチチューブの軸方向に関して中心部より外側に押し出されるように変形する。このとき、押さえ曲面と接するピンチチューブ変形最大箇所eには、押さえ面の周縁部に沿った接触面にならった変形だけではなく、軸方向に関して中心部より外側に押し出される変形がさらに付加されるため、ピンチチューブ表面の変形量は増大する。
【0040】
押さえ面302が曲面形状である場合の幅dと変形最大量との関係を図9に示す。ここで、ピンチチューブの材質は汎用的なシリコーンゴムであり、硬度が約50〜70であるとする。
【0041】
ピンチチューブの厚みtに対して、押さえ面の幅dが小さい場合(図8Aの場合)には、押さえ面の周縁部に沿ったピンチチューブの変形が急峻となるため、変形最大量は大きくなる。一方、ピンチチューブの厚みtに対して押さえ面の幅dが大きい場合(図8Cの場合)には、曲面の接触面にならった変形だけではなく軸方向801に関して中心部外側へ押し出される変形が付加されるため、変形最大量は大きくなる。以上より、それぞれのピンチチューブの厚みtに対してピンチチューブの変形を最もなだらかにし、かつそれ以外の軸方向に関する変形を最小化し、ピンチチューブの変形最大箇所の変形量が最小となる押さえ面の幅dが存在する。
【0042】
具体例として、チューブ厚みtが0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質のピンチチューブを使用した場合の曲面形状Rを検討した。有限要素法を用いた超弾性シミュレーションを実施し、ピンチチューブの変形最大箇所の変形量(ひずみ量)を算出した。その結果、R=1.0以下の場合において、ピンチチューブの変形が急峻となり、変形最大量が大きくなることが分かった。また、R=5.0以上の場合において、軸方向に関して中心部外側へ押し出される変形が負荷されるため、変形最大量が大きくなることが分かった。さらに、R=約1.5の場合において、ピンチチューブの変形最大箇所の変形量が最小となることが分かった。R=1.5の場合において、従来技術のピンチバルブを使用した場合と比較して、ピンチチューブの最大変形箇所の変形量を約0.5倍とおよそ半減させることができ、ピンチチューブの疲労を防ぐことができる。
【0043】
また、発明者は鋭意検討の結果、ピンチチューブ厚みtと、ピンチチューブに対して最も最大変形量を小さくするような押さえ面の幅d‘は比例関係にあり(図10)、曲面Rの径がピンチチューブ厚みtの約1.5倍となるとき、ピンチチューブの最大変形箇所の変形量は最も低減することができることを見出した。
【0044】
次に、押さえ面と対向した位置に配置されるピンチロッドの形状について検討する。
【0045】
図11Aは、押さえ面302を曲面形状とし、ピンチロッド306を角形状としたときの弁閉時のピンチバルブ、図11Bは、押さえ面302およびピンチロッド306を同一の曲面形状とした場合の弁閉時のピンチバルブである。
【0046】
図11Aに示すように、押さえ面の面形状とピンチロッドの形状が異なる場合、ピンチチューブの上面と下面の変形量が押さえ面側とピンチロッド面側で不均一となり、ピンチチューブの上面201は押さえ面側に膨張変形し、ピンチチューブ内面壁の変形箇所fの変形量が増大する。これにより、ピンチチューブ変形最大箇所gの変形量がさらに付加されるため、ピンチチューブ表面の変形量は増大する。
【0047】
一方、図11Bに示すように、ピンチロッドと押さえ面の形状が同一の曲面形状かつ同一幅dを有する場合、ピンチチューブの上面と下面は同程度に変形するため、ピンチチューブ内面に変形量が過度に増大する箇所は現れず、結果的にピンチチューブ表面の最大変形箇所fの変形量を低減することができる。
【0048】
次に、ピンチロッドの駆動量(弁閉時のピンチチューブ押しつぶし量)を最適化する方法について説明する。
【0049】
ピンチバルブは通常、ピンチチューブ内に液体または気体などの流体を流した状態で、ピンチロッドと押さえ面の間の距離を狭めることにより、ピンチチューブ内の流路を封止する構造である。そのため、ピンチバルブで漏れなく封止するためには、ピンチチューブの流路内圧に対して十分な封止圧力をピンチチューブ内面に付加する必要がある。
【0050】
図12は、押さえ面の面302とピンチロッド306がいずれも同一の曲面形状を有する場合の、弁閉時のピンチチューブ状態を示す模式図である。弁閉時には、ピンチチューブの上面501および下面502が接触する内面に、面圧pがかかる。
【0051】
図13は、図12の形状を有するピピンチバルブが弁閉状態における、ピンチチューブ押しつぶし量hとチューブ内面に付加される面圧pの関係を示すグラフである。なお、本グラフではピンチチューブの厚みtは一定である。
【0052】
押しつぶし量hがある程度増加すると面圧pが大きくなる。ピンチチューブ内の流路を十分に封止するためには、面圧pが流路内の内圧に対抗しうる封止圧力P1となるようにすればよく、面圧p=P1となるような押しつぶし量H1が最適な押しつぶし量であると決定することができる。このように押しつぶし量H1を決定することにより、弁閉時に過度の圧力をピンチチューブに加えることなく、最小の変形量でピンチバルブの閉弁が可能となる。
【0053】
具体例として、厚みtが0.5〜1.5mmのシリコーンゴム材質のピンチチューブを使用した場合の押し潰し量H1を検討する。ピンチバルブに求める流路閉塞時の封止圧力P1を約200kPaとする場合、安全率を5とすると、閉弁時のピンチチューブ内面に付加される面圧pは約1.0MPa以上となる必要がある。前述した有限要素法を用いた超弾性シミュレーションを実施した結果、押し潰し量H1が約1.7〜2.0mmとなったときに、面圧pは約1.0MPaとなり、十分に流路を封止することできることが分かった。従来技術における形状および押し潰し量と比較した場合、変形量(ひずみ量)は約0.16倍と約10分の1とすることができ、過度な力が集中的にかかることにより、ピンチチューブが早期に疲労する状態となることを防ぐことができる。
【0054】
なお、本発明におけるピンチチューブが適用される製品は、フローセルタイプの検出器を含む流路機構を備える自動分析装置があり、その検出原理や他の装置構成は実施例と異なっていても良い。例えば、試料中のNa,K,Clといったイオン濃度を測定するイオン選択性電極に対して、電極膜に試料を送液するための流路に設けられたピンチバルブであっても良い。また、ガスなどの気体中に含まれる成分を測定する装置において、気体を通過させる流路を閉鎖・開放させるためのピンチバルブであっても良い。
【符号の説明】
【0055】
100:分析装置
101:ラック
102:サンプル容器
103:サンプル分注ノズル
104:インキュベータディスク
105:反応容器
106:サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構
107:サンプル分注チップおよび反応容器保持部材
108:反応容器攪拌機構
109:サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔
110:サンプル分注チップ装着位置
111:試薬ディスク
112:試薬ディスクカバー
113:試薬ディスクカバー開口部
114:試薬分注ノズル
115:反応液吸引ノズル
116:検出ユニット
117:ラック搬送ライン
118:試薬容器
201:検出部
202:フローセル検出器
203:シリンジ
204:ドレイン
205:フローセル検出器入口接続部
206:第一流路
207:フローセル検出器出口接続部
208:第一弁
209:分岐部
210:第二流路
211:第三流路
212:第二弁
213:第四流路
301:ピンチバルブ
302:押さえ面
303:コイル
304:可動鉄心
305:固定鉄心
306:ピンチロッド
307:ピンチチューブ
308:ピンチチューブ上面
309:ピンチチューブ下面
401:平坦な領域
501:ピンチチューブ上面の内面
502:ピンチチューブ下面の内面
701:ピンチチューブ軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13