特許第6619370号(P6619370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619370
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】光反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20191202BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20191202BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20191202BHJP
   B01J 27/14 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 31/0352 20060101ALI20191202BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20191202BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20191202BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   C02F1/461 101Z
   B01J19/12 C
   B01J35/02 H
   B01J27/14 M
   H01L31/04 342B
   B82Y30/00
   H01L29/06 601N
   C25B9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-24024(P2017-24024)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-130642(P2018-130642A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】舘野 功太
(72)【発明者】
【氏名】小野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一英
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−519057(JP,A)
【文献】 特開平04−188774(JP,A)
【文献】 特開2014−107441(JP,A)
【文献】 特開平06−204541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01J 19/12
B82Y 30/00
C02F 1/461
C25B 9/00
H01L 29/06
H01L 31/0352
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族化合物半導体から構成されたpin型ダイオード構造の第1部分と、前記第1部分に直列に接続されてIII−V族化合物半導体から構成されたpin型ダイオード構造の第2部分とを備えるナノワイヤと、
前記ナノワイヤの一端に形成されて酸化反応を促進する触媒材料から構成された第1電極と、
前記ナノワイヤの他端に形成されて還元反応を促進する触媒材料から構成された第2電極と
前記第1電極および前記第2電極以外の前記ナノワイヤを覆う保護層と
を備え、
前記pin型ダイオード構造のi型の半導体のバンドギャップエネルギーは、太陽光の可視域および赤外域のいずれかの波長に対応していることを特徴とする光反応装置。
【請求項2】
請求項記載の光反応装置において、
前記保護層は、太陽光を透過する樹脂から構成されて前記ナノワイヤが各々接触することなく複数分散され、
前記複数のナノワイヤの各々の前記第1電極は、前記保護層の一方の面より露出し、
前記複数のナノワイヤの各々の前記第2電極は、前記保護層の前記一方の面に相対する他方の面より露出している
ことを特徴とする光反応装置。
【請求項3】
請求項記載の光反応装置において、
前記保護層は、一方の面から他方の面に気体は透過せずにプロトンを透過するプロトン透過構造を備える
ことを特徴とする光反応装置。
【請求項4】
請求項記載の光反応装置において、
前記プロトン透過構造は、プロトンが透過する材料から構成されていることを特徴とする光反応装置。
【請求項5】
請求項のいずれか1項に記載の光反応装置において、
隣り合う前記ナノワイヤの前記第1電極同士、および隣り合う前記ナノワイヤの前記第2電極同士の少なくとも一方は、非導通とされている
ことを特徴とする光反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を用いて分解や合成などの反応を行う光反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な社会実現のために、水素を利用したエネルギー変換や資源生成の研究および開発が進められている。例えば、太陽光と半導体や光触媒を用いて水を電気化学的に分解し、酸素および水素を生成する技術があり、有望な水素生成技術となっている(非特許文献1参照)。
【0003】
光電気化学(PEC:Photo Electro Chemical)素子として半導体電極を用いるものでは、金属配線で陽極(アノード)と陰極(カソード)とを繋ぐ構成と、陽極と陰極とを繋がずに電極配線の無い一体型のものとで分けられる。後者は、電極配線部の抵抗によるロスがないため、より高い効率が期待され、更に作製が既存の半導体加工技術を用いて簡易化できるため、コストが下げられる。水の分解以外に、水溶液中のCO2を還元して炭水化物を生成しようとする人工光合成もこれらの系で研究は進んでいる。
【0004】
金属配線を用いない半導体電極を用いるPEC素子は、薄膜化し、かつ溶液を膜で分離することにより、例えば水の分解では、陽極で生成する酸素と陰極で生成する水素とを分離して収集することが可能である。このようなアイディアは既に報告されてはいるが(非特許文献1)、効率的なデバイスの具体的なものは示されておらず、また、実験的にも報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】F. E. Osterloh and B. A. Parkinson, "Recent developments in solar water-splitting photocatalysis", MRS BULLETIN, vol. 36, pp. 17-22, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の光反応装置は、分解や合成などの反応に必要な高い電圧が得にくいという問題があった。例えば、水の電気分解には、1.23Vと過電圧分を合わせた1.4〜1.9V程度の電圧が必要となる。しかしながら、このような高い電圧を、太陽光を利用して得ようとすると、例えば、バンドギャップの大きいGaNを用いることが考えられる。しかしながら、このように大きなバンドギャップの半導体を用いる場合、紫外域の光が対象となる。紫外域の光は、太陽光の中で光量が少なく、また、到達しにくいことなどから、紫外域の光を利用する場合効率が悪くなる。
【0007】
一方、より効率の高い可視域の光や赤外域の光を用いる場合、バンドギャップの小さいIII−V族化合物半導体を用いることになる。このように小さいバンドギャップの半導体を用いる場合、得られる電圧が1.4〜1.9Vに達しない。このように、従来では、半導体を用いた光反応素子において、太陽光を用いて高い効率で分解や合成などの反応に必要な高い電圧を得ることが容易ではないという問題があった。
【0008】
ところで、ダイオード構造をタンデムに積層して高い電圧を得ることは可能であり、既に高効率の太陽電池で知られている。しかしながら、水溶液中の光反応場においては、例えばゴミの付着や表面の凹凸などによって保護膜に欠陥が生じると、この欠陥部分からの溶液の侵入による腐食により素子特性が大きく劣化しやすいため、タンデム構造のような複雑な層構成の素子の適用は難しい。ナノワイヤ構造で独立したダイオードが形成されている場合、一部が劣化しても全体の特性が大きく劣化することはない。しかしながら、このようなダイオード構造のナノワイヤを溶液中の光反応に応用した例はない。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、半導体ナノワイヤをPEC素子として用いた光反応装置において、太陽光を用いて高い効率で分解や合成などの反応に必要な高い電圧を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光反応装置は、III−V族化合物半導体から構成されたpin型ダイオード構造の第1部分と、第1部分に直列に接続されてIII−V族化合物半導体から構成されたpin型ダイオード構造の第2部分とを備えるナノワイヤと、ナノワイヤの一端に形成されて酸化反応を促進する触媒材料から構成された第1電極と、ナノワイヤの他端に形成されて還元反応を促進する触媒材料から構成された第2電極とを備え、pin型ダイオード構造のi型の半導体のバンドギャップエネルギーは、太陽光の可視域および赤外域のいずれかの波長に対応している。
【0011】
上記光反応装置において、第1電極および第2電極以外のナノワイヤを覆う保護層を備える。
【0012】
上記光反応装置において、保護層は、太陽光を透過する樹脂から構成されてナノワイヤが各々接触することなく複数分散され、複数のナノワイヤの各々の第1電極は、保護層の一方の面より露出し、複数のナノワイヤの各々の第2電極は、保護層の一方の面に相対する他方の面より露出している。
【0013】
上記光反応装置において、保護層は、一方の面から他方の面に気体は透過せずにプロトンを透過するプロトン透過構造を備える。
【0014】
上記光反応装置において、プロトン透過構造は、プロトンが透過する材料から構成されている。
【0015】
上記光反応装置において、隣り合うナノワイヤの第1電極同士、および隣り合うナノワイヤの第2電極同士の少なくとも一方は、非導通とされている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことにより、本発明によれば、半導体ナノワイヤをPEC素子として用いた光反応装置において、太陽光を用いて高い効率で分解や合成などの反応に必要な高い電圧を得ることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る光反応装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態2に係る光反応装置の構成を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実際に作製したナノワイヤを走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
図4図4は、実際に作製したナノワイヤによるサンプルについて、光をON/OFFしながら、ポテンショスタットにおいて電圧を変えて電流を測定したリニアスイープボルタモグラムを示す特性図である。
図5A図5Aは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図5B図5Bは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための説明図である。
図5C図5Cは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図5D図5Dは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図5E図5Eは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図5F図5Fは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図5G図5Gは、実施の形態2における光反応装置の製造方法を説明するための各工程における状態を示す斜視図である。
図6図6は、実施の形態2における光反応装置の実施用例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る光反応装置について、図1の断面図を用いて説明する。この光反応装置は、ナノワイヤ101と、ナノワイヤ101の一端に形成された第1電極102と、ナノワイヤ101の他端に形成された第2電極103とを備える。また、実施の形態1では、第1電極102および第2電極103以外のナノワイヤ101を覆う保護層106を備える。
【0020】
ナノワイヤ101は、III−V族化合物半導体から構成された第1部分104と、第1部分104に直列に接続されてIII−V族化合物半導体から構成された第2部分105とを備える。第1部分104および第2部分105は、それぞれ、n型層,i型層,p型層によるpin型ダイオード構造を備える。各層は、III−V族化合物半導体から構成されている。
【0021】
少なくともpin型ダイオード構造のi型の半導体(i型層)のバンドギャップエネルギーは、太陽光の可視域および赤外域のいずれかの波長に対応している。例えば、第1部分104,第2部分105は、GaPから構成すればよい。n型層は、n型のGaPから構成し、i型層は、ノンドープのi型のGaPから構成し、p型層は、p型のGaPから構成すればよい。
【0022】
第1電極102は、ナノワイヤ101の一端に形成されている。また、第1電極102は、酸化反応を促進する触媒材料から構成されている。第1電極102は、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)から構成すればよい。第2電極103は、ナノワイヤ101の他端に形成されている。また、第2電極103は、還元反応を促進する触媒材料から構成されている。第2電極103は、例えば白金(Pt)から構成すればよい。
【0023】
保護層106は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂など、太陽光を透過する樹脂から構成されていればよい。
【0024】
実施の形態1における光反応装置は、例えば、水の中に浸漬した状態で太陽光を照射することで水の電気分解が行える。太陽光の照射によりナノワイヤ101において光電変換が起き、第1電極102と第2電極103との間で電位差が発生する。これにより、第1電極102では、酸化反応「H2O→1/2O2+2H++2e-」が起きる。一方、第2電極103では還元反応「2H++2e-→H2」が起きる。この結果、第1電極102より酸素ガスが発生し、第2電極より水素ガスが発生する。
【0025】
上述した実施の形態1によれば、pin構造とした第1部分104,第2部分105によりナノワイヤ101で光反応装置を構成しているので、光照射時における第1電極102と第2電極103との間の電位差をより高くすることができる。実施の形態1では、2つのpin構造を直列に接続したが、更に多くのpin構造を直列に接続させることで、第1電極102と第2電極103との間の電位差を更に高くすることができる。このように、実施の形態1によれば、半導体ナノワイヤをPEC素子として用いた光反応装置において、太陽光を用いて高い効率で分解や合成などの反応に必要な高い電圧を得ることができるようになる。また、保護層106を備えることで、光反応環境におけるナノワイヤ101の劣化が抑制できるようになる。
【0026】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る光反応装置について図2の断面図を用いて説明する。この光反応装置は、複数のナノワイヤ101を保護層206に分散させている。また、複数のナノワイヤ101の各々の第1電極102は、保護層206の一方の面261より露出している。また、複数のナノワイヤ101の各々の第2電極103は、保護層206の一方の面261に相対する他方の面262より露出している。
【0027】
図2に示す例では、複数のナノワイヤ101の各々に第1電極102を形成し、複数のナノワイヤ101に共通して1つの第2電極103を形成している。この例では、隣り合うナノワイヤ101の第1電極102同士が非導通とされている。なお、複数のナノワイヤ101の各々に第2電極103を形成し、隣り合うナノワイヤ101の第2電極103同士を非導通としてもよい。また、保護層206は、太陽光を透過する樹脂から構成されている。また、複数のナノワイヤ101は、各々接触することなく保護層206の中に分散されている。
【0028】
なお、ナノワイヤ101,第1電極102,第2電極103は、前述した実施の形態1と同様であり、詳細は省略する。
【0029】
上述した実施の形態2によれば、複数のナノワイヤ101を備えるので、実効的な光受光面積を拡大することが可能となり、また、PEC素子の実効的な反応場を拡大することができる。また、保護層206を用いているので、ナノワイヤ101を保護するとともに、複数のナノワイヤ101を各々接触しない状態で固定することが可能となる。
【0030】
以下、実験の結果をもとに説明する。はじめに、実施した実験について説明する。
【0031】
まず、p−GaP(111)B基板を用意する。次に、電子ビーム(EB)蒸着装置を用い、用意した基板の上に、厚さ0.7nm程度にAuを蒸着してAu層を形成する。次に、Au層を形成した基板を、よく知られた有機金属気相成長(MOCVD)装置の処理室内に搬入して設置する。
【0032】
次に、処理温度を490℃とし、処理室内にトリエチルガリウム(TEGa)、ターシャリブチルフォスフィン(TBP)、ターシャリブチルクロライド(TBCl)、ジエチルジンク(DEZn)を導入し、よく知られた有機金属気相成長法により、基板の上にp−GaPナノワイヤを形成した。なお、各原料の導入条件は、TEGaは、6×10-6mol/min、TBPは、7×10-5mol/min、TBClは、1×10-6mol/min、DEZnは、3×10-7mol/minとした。また、成長時間を20分としたサンプル1と、成長時間を40分としたサンプル2とを作製した。
【0033】
上述したナノワイヤの成長において、処理温度を上昇させる過程で、蒸着したAu層より、直径が20−60nm程度の金微粒子が生じる。引き続き処理温度を上昇させていくと、Au微粒子を触媒としp−GaPの結晶が、Au微粒子の下(基板側)へ連続して成長し、ナノワイヤが形成される。
【0034】
また、比較のために、直径40nmのAu微粒子を含むコロイド水溶液を基板の上に塗布し、Au微粒子の密度が低い状態で、上述同様の成長(成長時間20分)によりナノワイヤを形成したサンプル3を作製した。サンプル1,サンプル2においては、Au微粒子の密度は、70−110μm-2であった。また、サンプル3においては、Au微粒子の密度は、0.4−0.9μm-2であった。
【0035】
作製したサンプル1,サンプル2について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図3に示す。図3の(a)は、サンプル1のSEM写真であり、図3の(b)は、サンプル2のSEM写真である。図3の(a)に示すように、成長時間20分では、ナノワイヤの長さは300−600nmであった。また、図3の(b)に示すように、成長時間40分では、ナノワイヤの長さは900−1400nmであった。この結果より、成長時間でナノワイヤの長さが制御できることがわかる。
【0036】
なお、サンプル3のナノワイヤの長さは900nmであった。また、成長したナノワイヤは、いずれもウルツ鉱型であることをTEMで確認した。また、p−GaPからなるナノワイヤのキャリア濃度は、インピーダンス測定により1−6×1018cm-3程度であった。
【0037】
上述した各サンプルについて、基板の裏面にCu導線をInで接合してカソード電極を作製した。また、Pt板にCu導線を接続してアノード電極を形成した。作製したカソード電極およびアノード電極を、ポテンショスタットに接続し、次に示すように光起電力を測定した。参照電極は、可逆水素電極を用いた。導線や基板裏面は、樹脂で覆って絶縁し、0.5Mの硫酸水溶液中において、ソーラシミュレータを用いて太陽光の照射条件AM1.5Gで光を照射した。
【0038】
図4に、光をON/OFFしながら、ポテンショスタットにおいて電圧を変えて電流を測定したリニアスイープボルタモグラムを示す。サンプル3に比較し、サンプル1は、表面積で7.9倍大きく、表面積の増加に対応して光電流が大きくなった。また、サンプル2は、サンプル1よりも光電流が大きいことがわかった。これらの結果より、複数形成したナノワイヤの密度と、形成したナノワイヤの長さとにより、効率を制御できることがわかった。また、Au微粒子の大きさでナノワイヤの直径を変えることができる。ナノワイヤの直径を大きくすることにより、ナノワイヤでの光吸収量を増やし、効率を上げることが可能である。
【0039】
次に、実施の形態2における光反応装置の製造方法について図5A図5Gを用いて説明する。まず、図5Aに示すように、p型のGaAs(111)Bからなる基板301上に、複数のナノワイヤ101を形成する。図では、ナノワイヤ101の成長に用いたAu微粒子302がナノワイヤ101の上端に配置されている状態を示している。
【0040】
ナノワイヤ101の形成について詳細に説明する。基板301上に、直径40nmのAu微粒子を塗布し、次いで、MOCVD装置を用い、成長温度条件を500℃とし、原料としてTEGa(6×10-6mol/min)、TBP(7×10-5mol/min)、TBCl(1×10-6mol/min)、DEZn(3×10-7mol/min)を用い、有機金属気相成長法により、p−GaPからなるナノワイヤ状のp型層を5分成長させる。
【0041】
次に、同一装置内で、DEZnの供給を停止し、新たにジターシャリブチルサルファイド(DTBS)を用い、n−GaPからなるナノワイヤ状のn型層を3分成長する。引き続き、ドーパント無しでi−GaPからなるナノワイヤ状のi型層を15分成長する。
【0042】
引き続き、上述同様にすることで、p−GaPからなるp型層(5分成長)、n−GaPからなるn型層(3分成長)、i−GaPからなるi型層(15分成長)、p−GaPからなるp型層(5分成長)、n−GaPからなるn型層(3分成長)を成長する。各層の成長方向は、基板301から離れる方向であり、例えば、基板301の平面の法線方向である。
【0043】
作製したpin構造が多段のナノワイヤにおけるバンド構造を図5Bに示す。図5Bの(a)は、ナノワイヤに光を照射していない状態のバンド構造である。図5Bの(b)は、ナノワイヤに光を照射している状態のバンド構造である。光を照射すると、pin構造を一段とした場合に比較して、電位差が大きくなることが分かる。pin構造の段数を2段より更に増やすことで、両端の電位差を上げることができる。水の分解では1.4−1.9V程度が必要であり、pin構造が一段では電位が足りない。pin構造を多段として直列に接続することで、水分解に十分な電位を得ることができる。
【0044】
上述したように、基板301の上に複数のナノワイヤ101を形成した後、図5Cに示すように、複数のナノワイヤ101を埋め込む状態に、基板301の上に保護層206を形成する。例えば、エポキシ樹脂をもとに作られたネガ型のフォトレジストを、複数のナノワイヤ101が形成されている基板301の上に塗布して塗布膜を形成する。次に、形成した塗布膜に、例えば波長365nmの紫外線を照射することで硬化すれば、保護層206が形成できる。
【0045】
次に、保護層206をエッチバックすることで、図5Dに示すように、保護層206の上面よりナノワイヤ101のp型半導体からなる先端(一端)を露出させる。例えば、CF4ガスとO2ガスとを用いた反応性イオンエッチング(RIE)により保護層206をこの表面側からエッチングすればよい。
【0046】
次に、図5Eに示すように、保護層206の上、および露出しているナノワイヤ101の先端に、RuO2の層303を形成した。例えば、蒸着によりRuO2を厚さ1nm程度蒸着することで、層303を形成する。この蒸着において、処理温度を300℃程度とすることで、図示していないが、蒸着したRuO2は部分的に凝集して複数の微粒子が形成される。これにより、層303は、複数のRuO2微粒子から構成されたものとなる。
【0047】
RuO2微粒子は、ナノワイヤ101の先端にも形成される。ナノワイヤ101の先端に形成されるRuO2微粒子は、第1電極(アノード電極)となる。このように第1電極を形成することで、隣り合うナノワイヤ101の第1電極同士は、非導通となる。なお、電気化学的手法により、ナノワイヤ101の先端にRuO2を選択的にコートすることで、第1電極を形成してもよい。
【0048】
上述したように層303を形成した段階で、まず、GaAsからなる基板301の裏面に、Cuからなる第1導線をInで接合した。また、Pt板にCuからなる第2導線を接続して対極とするカソード電極を形成した。次に、第1導線および第2導線をポテンショスタットに接続した。各導線および基板301の裏面は樹脂で覆って絶縁し、0.5Mの硫酸水溶液中において、ソーラシミュレータを用いて太陽光の照射条件AM1.5Gで光を照射した。この結果、カソード側から水素が発生し、アノード側から酸素が発生することが確認された。
【0049】
次に、基板301を除去し、図5Fに示すように、保護層206の裏面を露出させる。例えば、保護層206の周囲に樹脂で枠を形成し、この状態で、GaAsからなる基板301を、HNO3/H22水溶液に浸漬する。HNO3/H22水溶液によりGaAsが選択的にエッチングされるので、上記処理により、基板301のみが除去される。なお、GaAsからなる基板301の除去には、GaAsが選択的に除去できるエッチング液を用いればよく、例えば、ピラニア(H2SO4/H22)を用いても良い。このように、基板301を除去することで、保護層206の裏面には、ナノワイヤ101の他端の上面が露出する状態となる。
【0050】
次に、図5Gに示すように、保護層206の裏面に、例えば蒸着によりTi層およびPt層を形成し、Pt/Ti電極からなる第2電極103を形成した。Ti層およびPt層は、合計で厚さ10nm程度蒸着すればよい。これにより薄膜で金属配線することのない一体型の光反応装置が作製される。
【0051】
ところで、保護層206に、一方の面から他方の面に気体は透過せずにプロトンを透過するプロトン透過構造を備えるようにしてもよい。例えば、まず、公知のリソグラフィーおよびエッチング技術により、保護層206に一方の面から他方の面に貫通する複数の貫通穴を形成する。次に、形成した貫通穴に、プロトンが透過する材料から構成されたプロトン透過膜を充填すればよい。このように、プロトン透過構造を備えることで、この光反応装置が浸漬される電解液での抵抗を減らすことができる。
【0052】
また、図6に示すように、実施の形態2における光反応装置の保護層206を丸めてチューブ構造300とすることによって、チューブ構造300の内側と外側で生成物(水素ガスと酸素ガス)を分離することが可能である。また、カソードの触媒としてCuを用い、CO2を飽和させたアルカリ電解液中で、カソード側でCO2からメタノールやメタンなどを生成させることもできる(光合成)。
【0053】
以上に説明したように、本発明では、III−V族化合物半導体から構成されたpin型ダイオード構造を多段に接続したナノワイヤの一端に、酸化反応を促進する触媒材料から構成された第1電極を形成し、他端に、還元反応を促進する触媒材料から構成された第2電極を形成した。この結果、本発明によれば、半導体ナノワイヤを光触媒とする光反応装置において、太陽光を用いて高い効率で分解や合成などの反応に必要な高い電圧を得ることができるようになる。
【0054】
本発明によれば、太陽光を利用することで、水を分解して得られる水素や、CO2の還元で生じるメタン、メタノールなどの有用な資源、原料を分離して収集することが可能であり、更に、システムを軽量、コンパクトにすることが可能であるため、各家庭まで広く普及する可能性がある。
【0055】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0056】
例えば、電極材料は本実施例で用いた材料に限らず、酸化、還元反応を促進する触媒として機能し、かつ、半導体ナノワイヤを腐食から保護する材料であればよく、例えば、第1電極は、Pt,Co,Ni,Fe,Ti,Mo,Mn,Rh,Cなどから構成してもよい。また、第2電極は、Pt,Co,Ni,Fe,Ti,Mo,Mn,Rh,C,Ru,Irなどから構成してもよい。
【0057】
また、III−V族化合物半導体は、GaPに限らず、InおよびAsなどとの三元混晶、四元混晶とし、より小さいバンドギャップのIII−V族化合物半導体としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
101…ナノワイヤ、102…第1電極、103…第2電極、104…第1部分、105…第2部分、106…保護層。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6