特許第6619372号(P6619372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619372
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/08 20090101AFI20191202BHJP
   H04W 72/12 20090101ALI20191202BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20191202BHJP
【FI】
   H04W72/08
   H04W72/12
   H04W72/04 136
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-39128(P2017-39128)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-148299(P2018-148299A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】姜 聞杰
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/159851(WO,A1)
【文献】 越後 春陽 Haruhi Echigo,Massive MIMO における位置情報に基づく到来角と距離減衰を考慮したユーザ間で公平なパイロット割当,電子情報通信学会2017年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2017 IEICE GENERAL CONFERENCE,2017年 3月22日,B−5−115
【文献】 越後 春陽 Haruhi ECHIGO,Massive MIMOにおける位置情報に基づく到来角と距離減衰を考慮したユーザ間で公平なパイロット割当 Fair Pilot Assignment based on AOA and Pathloss with Location Information in Massive MIMO,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.117 No.103 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2017年 6月,第117巻
【文献】 L. Srikar Muppirisetty,Location-Aided Pilot Contamination Elimination for Massive MIMO Systems,IEEE GLOBECOM,IEEE,2015年12月 6日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルの各々に配置され、配置された前記各セル内の複数のユーザ端末と無線通信を行う複数の基地局を有する無線通信システムであって、
前記基地局は、
配置された前記セルである自セル内の前記複数のユーザ端末の各々、及び他のセルの前記複数のユーザ端末の各々について、前記ユーザ端末の位置を示す情報、及び前記ユーザ端末から到来する電磁波の到来角を示す情報を含む位置情報を収集する収集手段と、
前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対し、伝搬路の状態を示す伝搬路情報の推定に用いられるパイロット信号を当該ユーザ端末と共用する前記他のセルのユーザ端末として、前記他のセルからの前記パイロット信号との干渉が最小となるように、前記位置情報から算出した前記到来角の重なり具合と距離減衰とを組み合わせた第1指標値に基づいて前記他のセルの1のユーザ端末を割り当てる割当手段と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々における前記他のセルからの前記パイロット信号による干渉の影響の受け易さを示す第2指標値を、前記位置情報に基づいて算出し、算出した前記第2指標値に応じて、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対する前記割当手段による処理が実行される順番を決定する決定手段をさらに備え、
前記割当手段は、決定された前記順番で前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対し、前記第1指標値に基づいて前記他のセルの前記1のユーザ端末を割り当てる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記決定手段は、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々の前記位置情報を用いて、前記到来角と距離減衰とを組み合わせた前記第2指標値を、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々について算出する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
複数のセルの各々に配置され、配置された前記各セル内の複数のユーザ端末と無線通信を行う複数の基地局を有する無線通信システムの無線通信方法であって、
前記基地局が、
配置された前記セルである自セル内の前記複数のユーザ端末の各々、及び他のセルの前記複数のユーザ端末の各々について、前記ユーザ端末の位置を示す情報、及び前記ユーザ端末から到来する電磁波の到来角を示す情報を含む位置情報を収集する収集処理と
前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対し、伝搬路の状態を示す伝搬路情報の推定に用いられるパイロット信号を当該ユーザ端末と共用する前記他のセルのユーザ端末として、前記他のセルからの前記パイロット信号との干渉が最小となるように、前記位置情報から算出した前記到来角の重なり具合と距離減衰とを組み合わせた第1指標値に基づいて前記他のセルの1のユーザ端末を割り当てる割当処理と
を実行することを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
請求項に記載の無線通信方法において、
前記基地局が、
前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々における前記他のセルからの前記パイロット信号による干渉の影響の受け易さを示す第2指標値を、前記位置情報に基づいて算出し、算出した前記第2指標値に応じて、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対する前記割当処理が実行される順番を決定する決定処理をさらに実行し、
前記割当処理は、決定された前記順番で前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々に対し、前記第1指標値に基づいて前記他のセルの前記1のユーザ端末を割り当てる
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
請求項に記載の無線通信方法において、
前記決定処理、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々の前記位置情報を用いて、前記到来角と距離減衰とを組み合わせた前記第2指標値を、前記自セル内の前記複数のユーザ端末の各々について算出する
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性、小型化やモバイルアプリケーションの普及等の諸要因により、無線基地局およびスマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末が増加している。これに伴い、限られた電波資源の高効率な利用が求められている。
【0003】
複数の携帯通信端末(以下、“ユーザ端末”とも称される)が同時に通信できる新たなマルチアクセス技術として、基地局側が複数のアンテナを備えるマルチユーザMIMO(Multiuser MIMO(Multiple Input Multiple Output))の技術が提案されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
また、複数のアンテナの導入による空間マルチアクセス技術では、複数のユーザ端末が利用する電波資源を周波数軸や時間軸に沿って分割する代わりに、各基地局が電波資源全体を利用できるように、基地局やユーザ端末が、送信ウェイトや受信ウェイトを通じて、複数のユーザ端末の同時通信を実現している。特に、従来のMIMO技術より多くのユーザ端末の接続や、高い通信容量の達成が可能となる、基地局側が多数のアンテナ素子を備えた大規模マルチユーザMIMO(Massive MIMO)の技術が提案されている(例えば、非特許文献3、4参照)。
【0005】
MIMO技術による多数のユーザ端末との通信を実現するには、高精度な伝搬路情報に基づく正確な送信ウェイトの計算が必要不可欠である。しかしながら、移動通信環境では高精度の伝搬路情報の取得は決して容易ではない。特に、大規模マルチユーザMIMOの技術では、伝搬路情報がアンテナ数やユーザ数に比例して増加するため、伝搬路情報の取得がより困難となる。伝搬路情報の取得には大きく分けて推定した情報を基地局にフィードバックするFDD(Frequency Division Duplex)方式と基地局にパイロット信号を送信し直接推定するTDD(Time Division Duplex)方式とがある。なお、FDD方式の場合、大規模マルチユーザMIMOの技術において、基地局のアンテナ数に比例する膨大な伝搬路情報のフィードバックが必要となる。このため、FDD方式は、フィードバック不要なTDD方式に比べて、伝搬路情報の取得に時間がかかる。
【0006】
一方、TDD方式で伝搬路情報を取得する場合には、各セルのユーザ端末は、基地局との間で予め既知の情報を含むパイロット信号(またはトレーニング信号)を、ユーザ端末が位置するセルである自セルの基地局へ送信する。基地局は、受信したパイロット信号を用いて伝搬路情報を推定して取得する。なお、パイロット信号の数は、短い無線伝搬路のコヒーレンス期間、すなわち変動の少ない期間の中で伝送効率を優先する観点から制限されている。したがって、多数のユーザ端末を有する大規模マルチユーザMIMOの無線通信システムでは、同一周波数を利用する近接セル同士も同じパイロット信号の集合を共用する必要がある。この結果、同一周波数を利用するセル間のパイロット信号の干渉、すなわちパイロット汚染が発生し、基地局での伝搬路情報の推定精度の劣化、最終的に通信品質や伝送容量の低下を招く要因になる(例えば、非特許文献5参照)。
【0007】
パイロット汚染の対策として、伝搬路応答行列の共分散行列を用いてパイロット信号を共用する他セルからの干渉ユーザを割り当てることによりパイロット汚染の軽減を図る技術が提案されている(例えば、非特許文献6参照)。また、到来角(AoA:Angle of Arrival)の情報を利用して他セルからの共用パイロット信号による干渉が低減するような(パイロット共用する)干渉ユーザの割当を行う技術が提案している(例えば、非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Quentin H. Spencer, A. Lee Swindlehurst, and Martin Haardt, “Zero-Forcing Methods for Downlink Spatial Multiplexing in Multiuser MIMO Channels,” IEEE Trans. on Signal Processing, vol. 52, no. 2, pp. 461-471, February 2004.
【非特許文献2】David Gesbert, Marios Kountouris, Robert W. Heath Jr., Chan-Byoung Chae, and Thomas Salzer, “Shifting the MIMO Paradigm,” IEEE Signal Processing Magazine, vol. 24, no. 5, pp. 36-46, September 2007.
【非特許文献3】F. Rusek, D. Persson, B. K. Lau, E. G. Larsson, T. L. Marzetta, O. Edfors, and F. Tufvesson, “Scaling up MIMO: Opportunities and challenges with very large arrays,” IEEE Sig. Proc. Mag., vol. 30, no. 1, pp. 40-60, Jan. 2013.
【非特許文献4】E. G. Larsson, O. Edfors, F. Tufvesson, and T. L. Marzetta, “Massive MIMO for next generation wireless systems,” IEEE Comm. Mag., vol. 52, no. 2, pp. 186-195, Feb. 2014.
【非特許文献5】Jubin Jose, Alexei Ashikhminl, Thomas L. Marzettal, and Sriram Vishwanath, “Pilot Contamination Problem in Multi-Cell TDD Systems”, IEEE ISIT 2009, Seoul, Korea, June 28 - July 3, 2009.
【非特許文献6】Haifan Yin, David Gesbert, Miltiades Filippou, and Yingzhuang Liu,“A Coordinated Approach to Channel Estimation in Large-Scale Multiple-Antenna Systems,” IEEE JOURNAL ON SELECTED AREAS IN COMMUNICATIONS, VOL. 31, NO. 2, FEBRUARY 2013, pp. 264-273.
【非特許文献7】L. Srikar Muppirisetty, Henk Wymeersch, Johnny Karout, and Gabor Fodor, “Location-Aided Pilot Contamination Elimination for Massive MIMO Systems,”IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM), 6-10 Dec. 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献6の技術は、共分散行列のサイズがアンテナ数のべき乗に比例し、伝搬路の時間変動にも依存するため、実用において困難である。
【0010】
また、非特許文献7の技術では、自セルのユーザ端末である所望ユーザが逐次に干渉ユーザ割当処理を実行する。このため、先に割当処理が実行される所望ユーザは、選択できる干渉ユーザの候補数が多く、後に割当処理が実行される所望ユーザほど、選択できる干渉ユーザの候補数が少なくなる。すなわち、非特許文献7では、割当処理が実行される順番に応じて割当の不公平が生じ、個々の所望ユーザが受ける共用パイロットによる干渉量がばらつき、所望ユーザ間に伝搬路情報の推定精度の格差が生じてしまう。
【0011】
本発明は、割当処理における所望ユーザ間の公平性を向上させ、所望ユーザが受ける他セルからのパイロット信号による干渉を低減し、伝搬路情報の推定精度を向上させることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、複数のセルの各々に配置され、配置された各セル内の複数のユーザ端末と無線通信を行う複数の基地局を有する無線通信システムであって、基地局は、配置されたセルである自セル内の複数のユーザ端末の各々、及び他のセルの複数のユーザ端末の各々について、ユーザ端末の位置を示す情報、及びユーザ端末から到来する電磁波の到来角を示す情報を含む位置情報を収集する収集手段と、自セル内の複数のユーザ端末の各々に対し、伝搬路の状態を示す伝搬路情報の推定に用いられるパイロット信号を当該ユーザ端末と共用する他のセルのユーザ端末として、他のセルからのパイロット信号との干渉が最小となるように、位置情報から算出した到来角の重なり具合と距離減衰とを組み合わせた第1指標値に基づいて他のセルの1のユーザ端末を割り当てる割当手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、自セル内の複数のユーザ端末の各々における他のセルからのパイロット信号による干渉の影響の受け易さを示す第2指標値を、位置情報に基づいて算出し、算出した第2指標値に応じて、自セル内の複数のユーザ端末の各々に対する割当手段による処理が実行される順番を決定する決定手段をさらに備え、割当手段は、決定された順番で自セル内の複数のユーザ端末の各々に対し、第1指標値に基づいて他のセルの1のユーザ端末を割り当てることを特徴とする。
【0015】
の発明は、第2の発明において、決定手段は、自セル内の複数のユーザ端末の各々の位置情報を用いて、到来角と距離減衰とを組み合わせた第2指標値を、自セル内の複数のユーザ端末の各々について算出することを特徴とする。
【0016】
の発明は、複数のセルの各々に配置され、配置された各セル内の複数のユーザ端末と無線通信を行う複数の基地局を有する無線通信システムの無線通信方法であって、基地局が、配置されたセルである自セル内の複数のユーザ端末の各々、及び他のセルの複数のユーザ端末の各々について、ユーザ端末の位置を示す情報、及びユーザ端末から到来する電磁波の到来角を示す情報を含む位置情報を収集する収集処理と、自セル内の複数のユーザ端末の各々に対し、伝搬路の状態を示す伝搬路情報の推定に用いられるパイロット信号を当該ユーザ端末と共用する他のセルのユーザ端末として、他のセルからのパイロット信号との干渉が最小となるように、位置情報から算出した到来角の重なり具合と距離減衰とを組み合わせた第1指標値に基づいて、他のセルの1のユーザ端末を割り当てる割当処理とを実行することを特徴とする。
【0017】
の発明は、第の発明において、基地局が、自セル内の複数のユーザ端末の各々における他のセルからのパイロット信号による干渉の影響の受け易さを示す第2指標値を、位置情報に基づいて算出し、算出した第2指標値に応じて、自セル内の複数のユーザ端末の各々に対する割当処理が実行される順番を決定する決定処理をさらに実行し、割当処理は、決定された順番で自セル内の複数のユーザ端末の各々に対し、第1指標値に基づいて他のセルの1のユーザ端末を割り当てることを特徴とする。
【0019】
の発明は、第の発明において、決定処理、自セル内の複数のユーザ端末の各々の位置情報を用いて、到来角と距離減衰とを組み合わせた第2指標値を、自セル内の複数のユーザ端末の各々について算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、割当処理における所望ユーザ間の公平性を向上させ、所望ユーザが受ける他セルからのパイロット信号による干渉を低減し、伝搬路情報の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】無線通信システムの一実施形態を示す図である。
図2図1に示した基地局における割当処理の一例を示す図である。
図3】指標値Mの説明の一例を示す図である。
図4図1に示した基地局における割当処理の別例を示す図である。
図5】所望ユーザにおける到来角の広がりを指標値とする場合の一例を示す図である。
図6】自セルにおける全ユーザの平均正規化推定誤差を示す図である。
図7】各ユーザの正規化推定誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0023】
図1は、無線通信システムの一実施形態を示す。
【0024】
図1に示した無線通信システムSYSは、例えば、大規模マルチユーザMIMOシステムである。無線通信システムSYSは、7つセルC(C1−C7)の各々に配置された基地局BS(BS(1)−BS(7))、および各セルCに2つのユーザ端末UT(UT11、UT12、UT21、UT22、UT31、UT33、UT41、UT42、UT51、UT52、UT61、UT62、UT71、UT72)を有する。なお、無線通信システムSYSは、7以外の複数の基地局BSを有してもよい。また、無線通信システムSYSは、各セルCに2以外の複数のユーザ端末UTを有してもよい。
【0025】
ユーザ端末UTは、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末であり、ユーザ端末UTが位置するセルC(自セル)の基地局BSとの間で無線通信を行う。
【0026】
基地局BSは、例えば、アクセスポイントやセルラ基地局等である。基地局BSは、基地局BSに含まれる複数のアンテナを介して、配置されたセルC(自セル)のユーザ端末UTの各々との間で無線通信を行う。
【0027】
また、基地局BSは、互いに直交する複数のパイロット信号の集合を、他のセルCの基地局BSと共有する。基地局BSは、自セルのユーザ端末UTの各々に対して、いずれかのパイロット信号を設定する。そして、ユーザ端末UTは、設定されたパイロット信号を自セルの基地局BSにTDD方式で送信し、基地局BSは、受信したパイロット信号を用いて、自セルのユーザ端末UTとの間における伝搬路の状態を示す伝搬路情報を推定する。
【0028】
しかしながら、パイロット信号の集合をセルC1−C7の各々で共有するため、例えば、基地局BS(1)は、図1に示すように、自セルC1のユーザ端末UT11から実線で示したパイロット信号s1を受信するとともに、セルC2のユーザ端末UT21から破線で示したパイロット信号s1を受信する。同様に、基地局BS(1)は、自セルC1のユーザ端末UT12から実線で示したパイロット信号s2を受信するとともに、セルC7のユーザ端末UT72から破線で示したパイロット信号s2を受信する。
【0029】
これにより、基地局BS(1)において、ユーザ端末UT11からパイロット信号s1とユーザ端末UT21からパイロット信号s1とは互いに干渉する。このパイロット信号の干渉が、パイロット汚染であり、基地局BS(1)は、自セルC1のユーザ端末UT11との間における伝搬路情報を推定することが困難となる。同様に、基地局BS(1)は、ユーザ端末UT12からパイロット信号s2とユーザ端末UT72からパイロット信号s2との干渉により、自セルC1のユーザ端末UT12との間における伝搬路情報を推定することが困難となる。そこで、基地局BSは、パイロット汚染を低減するために、図2に示すパイロット信号の割当処理を実行する。
【0030】
図2は、図1に示した基地局BS(1)における割当処理の一例を示す。図2に示した処理では、基地局BS(1)が配置されたセルC1(自セル)と、パイロット信号を共用する他のセルCとのセル数は、L(=7)個とする。また、各セルCには、K(=2)個のユーザ端末UTがあるとする。
【0031】
また、図2に示した処理は、基地局BS(1)に含まれるプロセッサ等の演算処理装置が、ハードディスク装置等の記憶装置に記憶されるプログラムを実行することにより実現される。すなわち、図2に示した処理は、無線通信方法の一実施形態である。なお、プログラムは、演算処理装置が読み取り可能な記憶媒体に記憶して頒布されてもよく、ネットワークを介して頒布されてもよい。また、基地局BS(2)−BS(7)は、基地局BS(1)と同一または同様の処理を実行する。
【0032】
ステップS100では、基地局BS(1)は、自セルC1のユーザ端末UTの位置情報を、自セルC1のユーザ端末UTの各々から収集する。また、基地局BS(1)は、他のセルCのユーザ端末UTの位置情報を、他のセルCのユーザ端末UTからそれぞれ収集する。
【0033】
次に、ステップS110では、基地局BS(1)は、自セルC1のK個のユーザ端末UTである所望ユーザに対して、個々が使用するパイロット信号を割り当てる。
【0034】
次に、ステップS120では、基地局BS(1)は、自セルC1のK個のユーザ端末UT11からユーザ端末UT1Kの所望ユーザに対して、逐次に各所望ユーザが受ける他のセルCからのパイロット信号の干渉が最小となるように、位置情報に基づいて他のセルC内のユーザ端末UTである干渉ユーザを割り当てる。
【0035】
例えば、基地局BS(1)は、ステップS100で取得した位置情報と式(1)および式(2)とを用いて、干渉ユーザ割当に用いる指標値(メトリック)Mを算出する。
【0036】
【数1】
【0037】
図3は、指標値Mの説明の一例を示す。図3では、基地局BS(1)の位置を座標原点とし、自セルC1内のK個の所望ユーザのうち、i番目のユーザ端末UT1iと、他のセルCj(以下、“他セルj”とも称される)内のm番目のユーザ端末UTjmとを示す。なお、jは2からLの整数であり、mは1からKの整数である。
【0038】
図3に示すように、θmin(i)およびθmax(i)は、自セルC1のユーザ端末U1iから到来する電磁波の最小の到来角および最大の到来角を示す。θmin(j,m)およびθmax(j,m)は、他セルjのユーザ端末Ujmから到来する電磁波の最小の到来角および最大の到来角を示す。なお、各到来角を示す情報は、ステップS100で取得した位置情報に含まれる。
【0039】
基地局BS(1)は、他セルjのK個の干渉ユーザのうち、自セルC1の所望ユーザとの到来角との重なりが少なく、指標値Mが最大となるような干渉ユーザを割り当てる。すなわち、基地局BS(1)は、各他セルjから自セルC1の所望ユーザとパイロット信号を共有する1つだけの干渉ユーザを割り当てる。
【0040】
なお、基地局BS(1)は、式(2)とともに到来角と距離減衰とを組み合わせた式(3)を用いて、指標値Mを求めてもよい。
【0041】
【数2】
【0042】
ここで、xは、基地局BS(1)の位置のXY座標を示し、xjmは、他セルjのm番目の干渉ユーザであるユーザ端末UTjmの位置のXY座標を示す。γは、無線通信システムSYSのシステム設計において可変なパラメータである。
【0043】
基地局BS(1)は、他セルjの個々の干渉ユーザと所望ユーザ端末局との到来角の重なり具合および基地局BS(1)との距離減衰の両方を考慮してパイロット信号を共用する干渉ユーザの割当を行う。例えば、基地局BS(1)は、到来角が重なる、あるいは重なる割合が多い場合、基地局BS(1)との距離が遠い(距離減衰が多い)干渉ユーザを優先的に割り当てる。一方、基地局BS(1)は、到来角が重ならない、あるいは重なる割合が少ない場合、基地局BS(1)との距離が近い(距離減衰が少ない)干渉ユーザを優先的に割り当てる。
【0044】
すなわち、基地局BS(1)は、指標値Mを到来角のみの1次元情報から到来角と距離減衰との2次元情報に拡大することにより、所望ユーザ間の公平性を従来と比べてより保つことができる。
【0045】
ステップS130では、基地局BS(1)は、全ての他セルjの干渉ユーザを割り当てたか否かを判定する。全ての他セルjの干渉ユーザを割り当てた場合、基地局BS(1)の処理は、ステップS140に移る。一方、全ての他セルjの干渉ユーザを割り当てていない場合、基地局BS(1)の処理は、ステップS120に移る。
【0046】
ステップS140では、基地局BS(1)は、次の所望ユーザがあるか否かを判定する。次の所望ユーザがある場合、基地局BS(1)の処理は、ステップS120に移る。一方、次の所望ユーザがない場合、基地局BS(1)は、割当処理を終了する。
【0047】
なお、ステップS120とステップS130との処理は、図2に示すようにループ処理されてもよく、他セルj毎に並列に処理されてもよい。
【0048】
図1から図3に示した実施形態では、基地局BS(1)は、自セルC1のK個の所望ユーザに対して、逐次に各所望ユーザが受ける他セルjからのパイロット信号の干渉が最小となるように、位置情報に基づいて他セルjの干渉ユーザを割り当てる。すなわち、基地局BS(1)は、他セルjのK個の干渉ユーザのうち、自セルC1の所望ユーザとの到来角との重なりの少なく、式(1)または式(3)の指標値Mが最大となるような干渉ユーザを割り当てる。これにより、無線通信システムSYSは、割当処理における所望ユーザ間の公平性を向上させ、所望ユーザが受ける他セルからのパイロット信号による干渉を低減し、伝搬路情報の推定精度を向上させることができる。
【0049】
図4は、図1に示した基地局BS(1)における割当処理の別例を示す。なお、図4に示したステップの処理のうち、図2に示したステップと同一または同様の処理を示すものについては、同一のステップ番号を付す。また、図4に示した処理では、図2の場合と同様に、基地局BS(1)が配置されたセルC1(自セル)と、パイロット信号を共用する他のセルCとのセル数は、L(=7)個とする。また、各セルCには、K(=2)個のユーザ端末UTがあるとする。
【0050】
また、図4に示した処理は、基地局BS(1)の演算処理装置が、記憶装置に記憶されるプログラムを実行することにより実現される。すなわち、図4に示した処理は、無線通信方法の別の実施形態である。なお、基地局BS(2)−BS(7)は、基地局BS(1)と同一または同様の処理を実行する。
【0051】
基地局BS(1)は、ステップS100の処理を実行した後、ステップS110の処理とステップS115の処理とを並列に実行する。
【0052】
ステップS115では、基地局BS(1)は、ステップS100で取得した位置情報に基づいて、他セルからのパイロット信号の干渉の影響を受け易い所望ユーザの順序で、他セルの干渉ユーザの割当処理が実行されるように、自セルC1のK個の所望ユーザの各々に対する順番を決定する。
【0053】
例えば、基地局BS(1)は、順番を決定するにあたり、他セルからのパイロット信号の干渉の影響を受け易さを示す指標値(メトリック)を算出する。
【0054】
図5は、所望ユーザにおける到来角の広がりを指標値とする場合の一例を示す。図5では、基地局BS(1)の位置を座標原点とし、自セルC1内のK個の所望ユーザのうち、ユーザ端末UT11とユーザ端末UT1Kとを示す。
【0055】
図5に示すように、基地局BS(1)は、例えば、ステップS100で収集した自セルのユーザ端末UT1iの位置情報に含まれる、ユーザ端末UT1iから到来する電磁波の最大の到来角θmax(i)と最小の到来角θmin(i)との差分から、到来角の広がりΔθiを求める。なお、iは1からKの整数である。
Δθi=θmax(i)−θmin(i) …(4)
そして、基地局BS(1)は、例えば、到来角の広がりΔθが広い所望ユーザほど他セルからのパイロット信号との干渉を受け易く、到来角の広がりΔθが狭い所望ユーザほど他セルからのパイロット信号の干渉を受け難いとして、干渉ユーザの割当処理を実行する所望ユーザの順番を決定する。すなわち、基地局BS(1)は、求めた到来角の広がりΔθがΔθ1≧Δθ2≧…≧ΔθKとなる場合、ユーザ端末UT11を1番目の最初の所望ユーザに決定し、ユーザ端末UT1KをK番目の最後の所望ユーザに決定する。
【0056】
なお、基地局BS(1)は、式(5)を用いて、最大の到来角θmaxと最小の到来角θminと距離減衰とを組合せた到来角の広がりΔθを指標値として求めてもよい。
Δθi=(θmax(i)−θmin(i))/||x−x||γ …(5)
ここで、xは、基地局BS(1)の位置のXY座標を示し、xは、自セルC1の所望ユーザであるユーザ端末UT1iの位置のXY座標を示す。γは、無線通信システムSYSのシステム設計において可変なパラメータである。
【0057】
これにより、基地局BS(1)は、式(4)を用いる場合と比べて、自セルC1の各所望ユーザの到来角の広がり具合および基地局BS(1)との距離減衰の両方を考慮して割当処理を実行する順番を決定することができる。
【0058】
そして、基地局BS(1)は、ステップS110とステップS115との並列処理を実行した後、ステップS125の処理を実行する。
【0059】
ステップS125では、基地局BS(1)は、ステップS115で決定した順番に従って、図2に示したステップS120の処理と同様に、逐次に自セルC1の各所望ユーザが受ける他のセルCからのパイロット信号の干渉が最小となるように、位置情報に基づいて他のセルC内のユーザ端末UTである干渉ユーザを割り当てる。
【0060】
基地局BS(1)は、ステップS125の処理の後、ステップS130およびステップS140の処理を実行し、割当処理を終了する。
【0061】
なお、ステップS125とステップS130との処理は、図4に示すようにループ処理されてもよく、他セルj毎に並列に処理されてもよい。
【0062】
図4および図5に示した実施形態では、基地局BS(1)は、取得した位置情報に基づいて、他セルjからのパイロット信号の干渉の影響を受け易い所望ユーザの順序で、他セルjの干渉ユーザの割当処理が実行されるように、自セルC1のK個の所望ユーザの各々に対する順番を決定する。これにより、無線通信システムSYSは、割当処理における所望ユーザ間の公平性を向上させることができる。
【0063】
また、基地局BS(1)は、自セルC1のK個の所望ユーザに対して、決定した順番に従って逐次に各所望ユーザが受ける他セルjからのパイロット信号の干渉が最小となるように、位置情報に基づいて他セルjの干渉ユーザを割り当てる。すなわち、基地局BS(1)は、他セルjのK個の干渉ユーザのうち、自セルC1の所望ユーザとの到来角との重なりの少なく、式(1)または式(3)の指標値Mが最大となるような干渉ユーザを割り当てる。これにより、無線通信システムSYSは、割当処理における所望ユーザ間の公平性を向上させ、所望ユーザが受ける他セルからのパイロット信号による干渉を低減し、伝搬路情報の推定精度を向上させることができる。
【0064】
図6および図7は、シミュレーションによる図1に示した無線通信システムSYSの定量評価の結果を示す。すなわち、図6は、自セルにおける全ユーザの平均正規化推定誤差を示し、図7は、各ユーザの正規化推定誤差を示す。なお、図6の横軸は、基地局BSが備えるアンテナ数を示し、縦軸は、正規化推定誤差MSEを示す。また、図7の横軸は、ユーザのインデックスを示し、縦軸は、対応する各ユーザの伝搬路情報の正規化推定誤差MSEを示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1は、本発明を評価するシミュレーションの諸元を示す。表1に示すように、各セルCの基地局BSに備えるアンテナの数は50であり、各セルCのアクティブなユーザ端末UTは10とする。
【0067】
図6および図7には、図2に示した本発明の干渉ユーザ割当(Proposed)とともに、従来の到来角(AoA)によるパイロット割当(AoA based)、推定距離情報だけによる干渉ユーザ割当(Distance based)およびランダムな干渉ユーザ割当(Random)の結果を示す。また、図6および図7には、セル間干渉なしの理想的な場合の定量特性(Interference free scenario)を示す。
【0068】
図6に示すように、本発明は、従来技術と比べて合計の伝搬路情報の推定誤差を抑制している。また、その傾向は、基地局BSが備えるアンテナ数とともに増加している。
【0069】
また、図7に示すように、本発明は、従来技術と比べてユーザ間の推定精度の格差を著しく低減している。すなわち、本発明によるパイロット信号を共用する干渉ユーザ割当の結果、所望ユーザ間の公平性が保たれている。
【0070】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
C1−C7…セル;BS(1)−BS(7)…基地局;s1,s2…パイロット信号;SYS…無線通信システム;UT11、UT12、UT21、UT22、UT31、UT33、UT41、UT42、UT51、UT52、UT61、UT62、UT71、UT72…ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7