(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の投写型表示装置の一実施形態であるHUD1を搭載する自動車2の概略構成を示す模式図である。HUD1は、自動車以外にも、例えば電車、重機、建機、航空機、船舶、又は、農作機械等の乗り物に搭載して用いることができる。
【0020】
図1に示すHUD1は、運転者Hが自動車2の運転席3に着席した状態で、運転室内の運転者Hの上方に配置される第一のユニット100と、運転室内の運転者Hの前方に配置される第二のユニット200と、を備える。この例では、第一のユニット100は車室の天井4に設けられ、第二のユニット200はダッシュボード5内に設けられている。
【0021】
第一のユニット100は、自動車2のウインドシールド6の前方に虚像Ivが表示されるように、運転室に設けられたコンバイナ7に画像光L1を投写する。第一のユニット100は虚像表示部を構成する。第二のユニット200は、自動車2のウインドシールド6に実像Irが表示されるように、ウインドシールド6に画像光L2を投写する。第二のユニット200は実像表示部を構成する。
【0022】
運転者Hは、ウインドシールド6の前方に表示された虚像Iv及びウインドシールド6に表示された実像Irを見ることで、自動車2の操作を支援するための絵又は文字等の情報を認識することができる。
【0023】
図2は、
図1に示すHUD1の概念図である。
【0024】
第一のユニット100と第二のユニット200は共にメイン制御部300に接続されている。メイン制御部300は、HUD1全体を統括制御するものであり、各種のプロセッサによって構成される。メイン制御部300は、車速計400により計測される自動車2の走行速度の情報を常時監視し、その時々の走行速度に応じた指令を第一のユニット100と第二のユニット200に与える。
【0025】
HUD1は、コンバイナ7を備えている。コンバイナ7は、虚像Ivを表示するための光が投写される投写面を構成する。コンバイナ7は、第一のユニット100から画像光L1が投写されると共に、その画像光L1を運転者Hのアイポイントへ一部反射することで虚像Ivを運転者Hに視認させる光学部材である。運転者Hは、第一のユニット100から投写された画像光L1に基づく虚像Ivを、ウインドシールド6を通して見える外界の景色に重ねて視認することができる。
【0026】
また、実像Irは、ウインドシールド6に設けられた実像用フィルムを画像光L2の投写面として、ウインドシールド6の広範囲に表示可能である。実像Irは、運転者Hに提示する情報のほか、娯楽コンテンツ等を助手席等の同乗者に提示する際にも表示される。
【0027】
図3は、HUD1を構成する第一のユニット100の内部構成を示す模式図である。
【0028】
第一のユニット100は、光源部110と、第一光変調部120と、第一投写光学系130と、ユニット制御部140と、を有する。
【0029】
光源部110は、光源制御部111と、赤色光を出射する光源であるR光源112rと、緑色光を出射する光源であるG光源112gと、青色光を出射する光源であるB光源112bと、ダイクロイックプリズム113と、R光源112rとダイクロイックプリズム113の間に設けられたコリメータレンズ114rと、G光源112gとダイクロイックプリズム113の間に設けられたコリメータレンズ114gと、B光源112bとダイクロイックプリズム113の間に設けられたコリメータレンズ114bと、を備えている。
【0030】
ダイクロイックプリズム113は、R光源112r、G光源112g、及びB光源112bの各々から出射される光を同一光路に導くための光学部材である。すなわち、ダイクロイックプリズム113は、コリメータレンズ114rによって平行光化された赤色光を透過させて第一光変調部120に出射する。また、ダイクロイックプリズム113は、コリメータレンズ114gによって平行光化された緑色光を反射させて第一光変調部120に出射する。さらに、ダイクロイックプリズム113は、コリメータレンズ114bによって平行光化された青色光を反射させて第一光変調部120に出射する。このような機能を持つ光学部材としては、ダイクロイックプリズムに限らない。例えば、クロスダイクロイックミラーを用いてもよい。
【0031】
R光源112r、G光源112g、及びB光源112bは、それぞれ、レーザ又はLED(Light Emitting Diode)等の発光素子が用いられる。本実施形態では、光源部110の光源として、R光源112rとG光源112gとB光源112bの3つの光源を含むものとしているが、光源の数は1つ、2つ、又は、4つ以上であってもよい。
【0032】
光源制御部111は、R光源112r、G光源112g、及びB光源112bの各々の発光量を予め決められた発光量パターンに設定し、この発光量パターンに従ってR光源112r、G光源112g、及びB光源112bから光を順次出射させる制御を行う。光源制御部111によるR光源112r、G光源112g、及びB光源112bの発光制御は、ユニット制御部140の制御下でなされる。
【0033】
第一光変調部120は、光変調素子121と駆動部122とを有する。
【0034】
光変調素子121は、ダイクロイックプリズム113から出射された光を空間変調し、その空間変調された光(赤色画像光、青色画像光、及び緑色画像光)を第一投写光学系130に出射する。
【0035】
光変調素子121としては、例えば、LCOS(Liquid crystal on
silicon)、DMD(Digital Micromirror Device)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、又は、液晶表示素子等を用いることができる。
【0036】
駆動部122は、ユニット制御部140から入力される第一画像データに従って光変調素子121を駆動することにより、第一画像データに応じた光(赤色画像光、青色画像光、及び緑色画像光)を第一投写光学系130に出射させる。
【0037】
第一投写光学系130は、光変調素子121によって空間変調された画像光をコンバイナ7に投写する光学系であり、コンバイナ7に投写された画像光に基づく画像が、コンバイナ7の前方において虚像として運転者に視認可能となるように光学設計がなされている。
【0038】
図3の例では、第一投写光学系130は、拡散板131と、反射ミラー132と、拡大鏡133と、虚像距離可変機構134と、を有する。
【0039】
拡散板131には、第一光変調部120の光変調素子121から出射された画像光L1が投写される。拡散板131は、投写された画像光L1を拡散させて面光源化する。
【0040】
反射ミラー132は、拡散板131で拡散された画像光L1を反射させて拡大鏡133に入射させる。
【0041】
拡大鏡133に入射された画像光L1がコンバイナ7に拡大投写されることにより、自動車2のウインドシールド6の前方に虚像Ivが表示される。
【0042】
虚像距離可変機構134は、拡散板131を光軸方向に移動させることにより、画像光L1がコンバイナ7に達するまでの光路長を変更する。画像光L1がコンバイナ7に達するまでの光路長を変更することにより、運転者Hから虚像Ivまでの距離(虚像距離)を変更することができる。虚像距離可変機構134の動作制御は、ユニット制御部140の制御下でなされる。
【0043】
ユニット制御部140は、第一のユニット100全体を統括制御するものであり、各種のプロセッサによって構成される。ユニット制御部140は、メイン制御部300からの指令に従って各種制御処理を実行する。
【0044】
ユニット制御部140は、メイン制御部300から画像光投写指令を受けると、第一画像データを駆動部122に入力して、この第一画像データに基づく画像光L1をコンバイナ7に投写させる。ユニット制御部140は、第一画像データを制御することで、表示させる虚像を変更する。ユニット制御部140は第一制御部として機能する。
【0045】
図4は、
図1に示すHUD1を構成する第二のユニット200の内部構成を示す模式図である。
図4において
図3と同じ構成要素には同一符号を付してある。
【0046】
第二のユニット200は、
図3に示した第一のユニット100において、第一光変調部120を第二光変調部220に変更し、第一投写光学系130を第二投写光学系230に変更し、ユニット制御部140をユニット制御部240に変更した構成となっている。
【0047】
第二光変調部220は、第一光変調部120と同じ構成である。
【0048】
第二投写光学系230は、第二光変調部220の光変調素子121によって空間変調された画像光をウインドシールド6に投写するための光学系であり、ウインドシールド6に投写された画像光に基づく画像が、ウインドシールド6において実像として運転者に視認可能となるように光学設計がなされている。
【0049】
図4の例では、第二投写光学系230は、拡散板231と、反射ミラー232と、拡大鏡233と、を有する。
【0050】
拡散板231には、第二光変調部220の光変調素子121から出射された画像光L2が投写される。拡散板231は、投写された画像光L2を拡散させて面光源化する。
【0051】
反射ミラー232は、拡散板231で拡散された画像光L2を反射させて拡大鏡233に入射させる。
【0052】
拡大鏡233に入射された画像光L2がウインドシールド6に拡大投写されることにより、自動車2のウインドシールド6には実像Irが表示される。
【0053】
ユニット制御部240は、第二のユニット200全体を統括制御するものであり、各種のプロセッサによって構成される。ユニット制御部240は、メイン制御部300からの指令に従って各種制御処理を実行する。
【0054】
ユニット制御部240は、メイン制御部300から画像光投写指令を受けると、第二画像データを第二光変調部220の駆動部122に入力してこの第二画像データに基づく画像光L2をウインドシールド6に投写させる。ユニット制御部240は、第二画像データを制御することで、表示させる実像を変更する。ユニット制御部240は第二制御部として機能する。
【0055】
本明細書における各種のプロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Prosessing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0056】
これら各種のプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0057】
メイン制御部300、ユニット制御部140、及びユニット制御部240の各々を構成するプロセッサは、各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0058】
図5は、メイン制御部300の機能ブロック図である。
【0059】
メイン制御部300は、速度情報取得部310と、警告要否判定部320と、低速時処理部330と、高速時処理部340と、光路長変更指令部350と、して機能する。
【0060】
メイン制御部300は、上述した各種のプロセッサによって構成されており、このプロセッサの実行するプログラムなどが記憶されるROM(Read Only Memory)と、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)等を更に含む。
【0061】
速度情報取得部310、警告要否判定部320、低速時処理部330、高速時処理部340、及び、光路長変更指令部350は、メイン制御部300のROMに記憶されるプログラムをメイン制御部300のプロセッサが実行することによって構成される。このプログラムは表示制御プログラムを含む。
【0062】
速度情報取得部310は、自動車2の走行速度の情報を車速計400から取得する機能ブロックである。
【0063】
警告要否判定部320は、自動車2の運転者Hに警告が必要か否かを判定する機能ブロックである。
【0064】
警告要否判定部320は、自動車2のシステム全体を統括制御する図示省略の自動車制御部から、自動車2に搭載された計器類の異常を示す情報、自動車2に搭載された図示省略のセンサ(超音波レーダ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、又は、ステレオカメラ等)によって検出される情報、このセンサの故障の有無を示す情報、又は、自動車2の車体に搭載された図示省略の撮像部により撮像して得られた自動車2の前方又は後方の撮像画像データ等の状況情報を取得する。
【0065】
警告要否判定部320は、この状況情報に基づいて、自動車2の運転者(運転席に座る人)に対して警告が必要な状態か否かを判定する。
【0066】
警告要否判定部320が警告を必要と判定する場合について以下に列挙するが、これに限定されるものではない。
【0067】
(1)警告要否判定部320は、上記センサによって測定される情報を解析し、この解析の結果、自動車2の前方に人又は車両等の障害物が横切っている場合には、警告が必要な状態と判定する。
【0068】
(2)警告要否判定部320は、自動車2に搭載された上記センサによって測定される情報を解析し、この解析の結果、自動車2と障害物との距離が閾値以下の場合には、警告が必要な状態と判定する。
【0069】
(3)警告要否判定部320は、運転に必要な上記センサの故障を検知した場合には、警告が必要な状態と判定する。
【0070】
(4)警告要否判定部320は、自動車2の計器類に異常がある場合には、警告が必要な状態と判定する。
【0071】
なお、以上の例では、警告要否判定部320が、状況情報を解析して警告が必要な状態か否かを判定している。しかし、自動車2を統括制御する自動車制御部がこの解析を行ってもよい。
【0072】
この場合は、自動車制御部が、この解析の結果、警告が必要な状態と判断した場合に、警告が必要な状態であることを示す要警告情報をメイン制御部300に入力する。そして、警告要否判定部320は、自動車制御部から入力されるこの要警告情報を取得し、この要警告情報に基づいて、警告が必要な状態であることを認識する。
【0073】
低速時処理部330は、速度情報取得部310によって取得された自動車2の走行速度が閾値TH以下の状況であり、且つ、自動車2の運転者Hに警告が必要と判定された場合に、警告情報を含む第二画像データに基づく画像光L2の投写指令を第二のユニット200のユニット制御部240に与えるとともに、第二のユニット200によって表示される実像Irに視線を誘導するための誘導情報を含む第一画像データに基づく画像光L1の投写指令を第一のユニット100のユニット制御部140に与える機能ブロックである。
【0074】
高速時処理部340は、速度情報取得部310によって取得された自動車2の走行速度が閾値THを超える状況であり、且つ、自動車2の運転者Hに警告が必要と判定された場合に、警告情報を含む第一画像データに基づく画像光L1の投写指令を第一のユニット100のユニット制御部140に与えるとともに、第一のユニット100によって表示される虚像Ivに視線を誘導するための誘導情報を含む第二画像データに基づく画像光L2の投写指令を第二のユニット200のユニット制御部240に与える機能ブロックである。
【0075】
警告情報とは、運転者Hに対して警告を行うための情報であり、具体的には、人又は他の乗り物等の障害物の存在を知らせる情報、障害物への接近を知らせる情報、上記のセンサ又は計器類の故障を知らせる情報、又は、スピードの出しすぎを知らせる情報などである。
【0076】
光路長変更指令部350は、速度情報取得部310によって取得された自動車2の走行速度が閾値THを超えたか否かに応じて、画像光L1がコンバイナ7に達するまでの光路長を変更するための指令を第一のユニット100のユニット制御部140に与える機能ブロックである。
【0077】
光路長変更指令部350は、自動車2の走行速度が閾値THを超えた場合には、光路長を第一の値に制御するように指令を与え、自動車2の走行速度が閾値TH以下の場合には、光路長を第一の値よりも短い第二の値に制御するように指令を与える。
【0078】
光路長を第一の値に制御したとき虚像距離は最長距離Dmaxになり、光路長を第二の値に制御したとき虚像距離は最短距離Dminになる。
【0079】
次に、
図6乃至
図9に基づいて、
図1に示すHUD1の動作を説明する
【0080】
図6は、メイン制御部300における処理の内容を例示するフローチャートである。
【0081】
HUD1が起動すると、メイン制御部300は、車速計400の計測信号に基づいて自動車2の走行速度の情報を取得する(ステップS1)。また、メイン制御部300は、自動車2の運転者Hに警告が必要か否かを判定する(ステップS2)。判定の結果、警告が必要でなければ(ステップS2:NO)、ステップS1に戻る。
【0082】
メイン制御部300は、警告が必要であれば(ステップS2:YES)、自動車2の走行速度が閾値TH以下であるか否か判定する(ステップS3)。自動車2の走行速度が閾値TH以下であれば(ステップS3:YES)、低速時処理(ステップS4)に進む。自動車2の走行速度が閾値THを超えていれば(ステップS3:NO)、高速時処理(ステップS5)に進む。
【0083】
図7は、
図6のステップS4の詳細を例示するフローチャートである。
【0084】
メイン制御部300は、低速時処理(ステップS4)を開始すると、先ず、第一のユニット100のユニット制御部140に、光路長を第二の値に制御するように指令を与えて、虚像距離を最短距離Dminに制御する(ステップS41)。
【0085】
その後、メイン制御部300は、第二のユニット200のユニット制御部240に指令を与えて、警告情報を含む第二画像データを駆動部122に入力させ、この警告情報を実像Irで表示させる(ステップS42)。
【0086】
メイン制御部300は、娯楽コンテンツなどの緊急性のない情報が実像Irにより表示中であった場合には、そのような緊急性のない情報の表示を終了させた後に、警告情報を実像Irで表示させる。
【0087】
そして、メイン制御部300は、第一のユニット100のユニット制御部140に指令を与えて、実像Irに運転者Hの視線を誘導するための誘導情報を含む第一画像データを駆動部122に入力させ、この誘導情報を虚像Ivで表示させる(ステップS43)。
【0088】
低速時処理(ステップS4)が実行されることにより、
図9に例示すように、ウインドシールド6には実像Irによる警告情報A1が表示され、ウインドシールド6の前方には虚像Ivによる誘導情報G1が表示される。
【0089】
図8は、
図6のステップS5の詳細を例示するフローチャートである。
【0090】
メイン制御部300は、高速時処理(ステップS5)を開始すると、先ず、第一のユニット100のユニット制御部140に、光路長を第一の値に制御するように指令を与えて、虚像距離を最長距離Dmaxに制御する(ステップS51)。
【0091】
その後、メイン制御部300は、第一のユニット100のユニット制御部140に指令を与えて、警告情報を含む第一画像データを駆動部122に入力させてこの警告情報を虚像Ivで表示させる(ステップS52)。
【0092】
さらに、メイン制御部300は、第二のユニット200のユニット制御部240に指令を与えて、虚像Ivに運転者Hの視線を誘導するための誘導情報を含む第二画像データを駆動部122に入力させてこの誘導情報を実像Irで表示させる(ステップS53)。
【0093】
メイン制御部300は、娯楽コンテンツなどの緊急性のない情報が実像Irにより表示中であった場合には、そのような緊急性のない情報の表示を終了させた後に、誘導情報を実像Irで表示させる。
【0094】
高速時処理(ステップS5)が実行されることにより、
図10に例示すように、ウインドシールド6の前方には虚像Ivによる警告情報A2が表示されると同時に、ウインドシールド6には実像Irによる誘導情報G2が表示される。
【0095】
以上のように、このHUD1によれば、自動車2が低速で走行している時に、運転者Hに警告を行う必要が生じた場合には、ウインドシールド6に実像Irによる警告情報A1が表示されると同時に、ウインドシールド6の前方に虚像Ivによる誘導情報G1が表示される。このため、実像Irによる警告情報A1が表示されたことを、誘導情報G1によって運転者Hに容易に気付かせることができる。
【0096】
低速走行時は市街地を走行中であることが多く、人又は自転車等の急な飛び出し等、自動車2の至近距離に警告要因が存在する。このため、広範囲に表示可能であり且つ低速走行時の運転者Hの目の焦点に比較的近いウインドシールド6に表示される実像Irで警告情報A1を表示することにより、効果的な運転支援を行うことができる。
【0097】
一方、自動車2が高速で走行している時に、運転者Hに警告を行う必要が生じた場合には、ウインドシールド6の前方に虚像Ivによる警告情報A2が表示されると同時に、ウインドシールド6に実像Irによる誘導情報G2が表示される。このため、虚像Ivによる警告情報A2が表示されたことを、誘導情報G2によって運転者Hに容易に気付かせることができる。
【0098】
高速走行時は警告要因が遠方に存在し、運転者Hの目の焦点も比較的遠方にあることが望ましい。したがって、ウインドシールド6の前方に表示される虚像Ivで警告情報A2を表示することにより、効果的な運転支援を行うことができる。
【0099】
このように、警告情報A1が実像Irで表示されているときには虚像Ivによる誘導情報G2を表示し、警告情報A2が虚像Ivで表示されているときには実像Irによる誘導情報G2を表示するようにしたことにより、虚像Ivによる警告情報A2の表示と、実像Irによる警告情報A1の表示を切り替える場合でも、両警告情報A1、A2の見落としを防止することができる。
【0100】
また、自動車2の低速走行時には最短距離Dminの位置に虚像Ivが表示され、自動車2の高速走行時には最長距離Dmaxの位置に虚像Ivが表示される。このため、低速走行時と高速走行時のどちらの状況においても、ウインドシールド6の前方の運転者Hの目の焦点に近い位置に虚像Ivによる誘導情報G1又は警告情報A2を表示して、情報の視認性をより高めることができる。
【0101】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0102】
例えば、HUD1は、第一のユニット100からコンバイナ7に画像光L1を投写することによりウインドシールド6の前方に虚像Ivを表示するように構成されているが、コンバイナ7を省略し、第一のユニット100からウインドシールド6に画像光L1を投写することによりウインドシールド6の前方に虚像Ivが表示されるように構成してもよい。
【0103】
その場合、ウインドシールド6の前方に表示される実像Irの影響で虚像Ivの視認性が損なわれないように、第一のユニット100からの画像光L1の投写領域については、ウインドシールド6に設けられる実像表示用のフィルムを切り欠いておく、又は、画像光L1に含まれる波長のうち実像表示用のフィルムに反応する波長を予めカットしておくなどの対策を施すことが好ましい。
【0104】
また、HUD1は、第一のユニット100と第二のユニット200が、メイン制御部300の制御下で働くユニット制御部140、240をそれぞれ有しているが、ユニット制御部140、240の一方又は両方の機能をメイン制御部300に持たせ、これらを省略してもよい。この場合にはメイン制御部300が第一制御部と第二制御部の一方又は両方として機能する。
【0105】
また、HUD1の第一のユニット100では、第一投写光学系130の拡散板131を移動させることで画像光L1の光路長が変更されるものとしているが、他の光学素子を移動させることで画像光L1の光路長を変更したり、光変調素子121を移動させることで画像光L1の光路長を変更したりする構成であってもよい。また、画像光L1の光路長を可変とする機構は必須ではなく、虚像距離可変機構134は省略された構成であってもよい。
【0106】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0107】
(1) 乗り物に搭載される投写型表示装置であって、光源から出射される光を、入力された第一画像データに基づいて空間変調する第一光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第一画像データに基づく虚像を表示させる第一投写光学系と、を含む虚像表示部と、光源から出射される光を、入力された第二画像データに基づいて空間変調する第二光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第二画像データに基づく実像を表示させる第二投写光学系と、を含む実像表示部と、上記第一光変調部に入力する上記第一画像データを制御する第一制御部と、上記第二光変調部に入力する上記第二画像データを制御する第二制御部と、を備え、上記第一制御部は、上記第二画像データが上記乗り物の運転者に警告を行うための警告情報を含む場合には、上記実像表示部によって表示される実像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第一画像データを上記第一光変調部に入力し、上記第二制御部は、上記第一画像データが上記警告情報を含む場合には、上記虚像表示部によって表示される虚像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第二画像データを上記第二光変調部に入力する投写型表示装置。
【0108】
(2) (1)記載の投写型表示装置であって、上記乗り物の走行速度の情報を取得する走行速度情報取得部と、上記乗り物の運転者に警告が必要か否かを判定する警告要否判定部と、を更に備え、上記第一制御部は、上記走行速度が閾値を超える状況で上記警告が必要と判定された場合には、上記警告情報を含む上記第一画像データを上記第一光変調部に入力する投写型表示装置。
【0109】
(3) (1)記載の投写型表示装置であって、上記乗り物の走行速度の情報を取得する走行速度情報取得部と、上記乗り物の運転者に警告が必要か否かを判定する警告要否判定部と、を更に備え、上記第二制御部は、上記走行速度が閾値以下となる状況で上記警告が必要と判定された場合には、上記警告情報を含む上記第二画像データを上記第二光変調部に入力する投写型表示装置。
【0110】
(4) (2)又は(3)記載の投写型表示装置であって、上記虚像表示部は、上記光が上記投写面に達するまでの上記光の光路長が変更可能であり、上記走行速度が閾値を超える場合には上記光路長が第一の値に制御され、上記走行速度が上記閾値以下の場合には上記光路長が上記第一の値よりも短い第二の値に制御される投写型表示装置。
【0111】
(5) 乗り物に搭載される投写型表示装置の表示制御方法であって、上記投写型表示装置は、光源から出射される光を、入力された第一画像データに基づいて空間変調する第一光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第一画像データに基づく虚像を表示させる第一投写光学系と、を含む虚像表示部と、光源から出射される光を、入力された第二画像データに基づいて空間変調する第二光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第二画像データに基づく実像を表示させる第二投写光学系と、を含む実像表示部と、を備え、上記第二画像データが上記乗り物の運転者に警告を行うための警告情報を含む場合には、上記実像表示部によって表示される実像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第一画像データを上記第一光変調部に入力し、上記第一画像データが上記警告情報を含む場合には、上記虚像表示部によって表示される虚像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第二画像データを上記第二光変調部に入力する投写型表示装置の表示制御方法。
【0112】
(6) (5)記載の投写型表示装置の表示制御方法であって、上記乗り物の走行速度の情報を取得する走行速度情報取得ステップと、上記乗り物の運転者に警告が必要か否かを判定する警告要否判定ステップと、を備え、上記走行速度が閾値を超える状況で上記警告が必要と判定された場合には、上記警告情報を含む上記第一画像データを上記第一光変調部に入力する投写型表示装置の表示制御方法。
【0113】
(7) (5)記載の投写型表示装置の表示制御方法であって、上記乗り物の走行速度の情報を取得する走行速度情報取得ステップと、上記乗り物の運転者に警告が必要か否かを判定する警告要否判定ステップと、を備え、上記走行速度が閾値以下となる状況で上記警告が必要と判定された場合には、上記警告情報を含む上記第二画像データを上記第二光変調部に入力する投写型表示装置の表示制御方法。
【0114】
(8) (6)又は(7)記載の投写型表示装置の表示制御方法であって、上記虚像表示部の上記第一投写光学系は、上記光が上記投写面に達するまでの上記光の光路長を変更可能であり、上記走行速度が閾値を超える場合には上記光路長を第一の値に制御し、上記走行速度が上記閾値以下の場合には上記光路長を上記第一の値よりも短い第二の値に制御する投写型表示装置の表示制御方法。
【0115】
(9) 乗り物に搭載される投写型表示装置の表示制御プログラムであって、上記投写型表示装置は、光源から出射される光を、入力された第一画像データに基づいて空間変調する第一光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第一画像データに基づく虚像を表示させる第一投写光学系と、を含む虚像表示部と、光源から出射される光を、入力された第二画像データに基づいて空間変調する第二光変調部と、上記空間変調された上記光を上記乗り物の投写面に投写して上記第二画像データに基づく実像を表示させる第二投写光学系と、を含む実像表示部と、を備え、上記第二画像データが上記乗り物の運転者に警告を行うための警告情報を含む場合には、上記実像表示部によって表示される実像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第一画像データを上記第一光変調部に入力し、上記第一画像データが上記警告情報を含む場合には、上記虚像表示部によって表示される虚像に視線を誘導するための誘導情報を含む上記第二画像データを上記第二光変調部に入力するステップをコンピュータに実行させるための投写型表示装置の表示制御プログラム。