特許第6620579号(P6620579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620579
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20191209BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20191209BHJP
   H01M 4/14 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 M
   H01M2/16 P
   H01M10/12 K
   H01M4/14 Q
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-21595(P2016-21595)
(22)【出願日】2016年2月8日
(65)【公開番号】特開2017-142888(P2017-142888A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 素子
(72)【発明者】
【氏名】荒城 真吾
(72)【発明者】
【氏名】柴原 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 富生
(72)【発明者】
【氏名】大越 哲郎
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/146919(WO,A1)
【文献】 特開2013−206571(JP,A)
【文献】 特開2005−183238(JP,A)
【文献】 特開2011−070904(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157311(WO,A1)
【文献】 特開2011−181436(JP,A)
【文献】 特開2005−190686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 4/14
H01M 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、
負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、
電解液と、
これらを収容する電槽と、を備え、
前記負極板の表面には、膜体が付設され、
前記膜体は、基材と、前記基材の表面を覆う親水皮膜と、を含み、
前記親水皮膜は、親水材料と、保持体材料と、を含み、
前記親水材料は、アルミナ又はシリカであり、
前記保持体材料は、アクリルアミド、シリカゾル又はシランカップリング剤であり、
前記基材の表面が親水性官能基よりも疎水性官能基を多く含む場合は、前記シランカップリング剤は、ビニル基、メタクリル基、アクリル基又はスチリル基を有し、前記基材の表面が疎水性官能基よりも親水性官能基を多く含む場合は、前記シランカップリング剤は、アミノ基又はエポキシ基を有し、
前記基材の繊維径は、10μmよりも小さく、
前記基材の空孔率は、90%よりも小さい、鉛蓄電池。
【請求項2】
前記親水材料は、アルミナ若しくはシリカの単体又はアルミナとシリカとの混合物からなる、請求項1記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記親水皮膜は、前記親水材料と前記保持体材料との固形成分の質量比が90:10〜70:30である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記親水皮膜は、厚さが10nm〜1000nmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記膜体は、厚さが0.03mm〜0.1mmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
前記セパレータの表面には、前記親水皮膜が形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用に広く用いられており、例えば自動車のバッテリー、バックアップ用電源、及び電動車の主電源に用いられる。近年の自動車では、炭酸ガス排出規制対策や低燃費化を目的として、発電制御や信号待ちの際にエンジンを停止するアイドリングストップアンドスタートシステム(以下、「ISS」と称する。)が採用されるようになった。
【0003】
アイドリングストップ中はオルタネータによる発電が行われないため、電動装備への電力は全て鉛蓄電池から供給され、鉛蓄電池は従来よりも深い充電が行われる。また、走行中もオルタネータの発電が制御されるため、充電不足の状態となる。
【0004】
特許文献1には、鉛蓄電池の正極と負極との間に、電解液に含まれるイオンを透過する孔を有するシート状部材を設け、このシート状部材を、基材である疎水性樹脂と、疎水性樹脂の表面に設けた多孔質の親水性被覆層とで構成する技術が開示されている。特許文献1には、親水性被覆層は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム又は二酸化チタンの粒子を含むことが望ましいことも記載されている。
【0005】
特許文献2には、電池用セパレータに関して、繊維直径が約3μmのポリプロピレン製の不織布に酸化チタン等の半導体粒子を担持させ、光を照射することにより親水性を付与する技術が開示されている。
【0006】
鉛蓄電池において深い放電と充電不足とが繰り返される場合、電解液の成層化が生じ、鉛蓄電池の短寿命化の要因として顕在化してきている。正極では、放電時に発生した水が電解液の混合を促進するため、成層化の影響は小さい。一方、負極では、そうした作用がないために、成層化が起こりやすい。ここで、成層化とは、充放電の繰り返しにより、電槽の上下で電解液の比重に差が生じる現象をいう。
【0007】
また、ISS車用鉛蓄電池では、電解液の成層化の抑制による長寿命化のほかに、エンジン始動性である高率放電性能、充電受入性等の電池性能の向上や、内部抵抗低減の技術開発も課題である。過酷な環境下で使用されるISS車用鉛蓄電池の高性能化には、長寿命化と電池性能の向上が必要不可欠である。電槽内の硫酸イオン濃度を均一に保ちながら硫酸イオンの拡散速度を向上させることで、これらの課題を解決することが可能であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−194911号公報
【特許文献2】特開平9−289007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のシート状部材においては、鉛蓄電池の電解液の成層化を抑制する観点から、親水性被覆層を構成する酸化物粒子等が検討されている。しかしながら、シート状部材の繊維径はおよそ10〜20μm、空孔率は90〜98%である。したがって、シート状部材の比表面積が小さく、硫酸イオンを保持できる空間が少ないために、成層化の抑制効果は不十分であると考えられる。
【0010】
特許文献2に記載の電池用セパレータは、不織布の表面の官能基を親水性のものに化学変化させたものであり、不織布の表面の親水性が長期間にわたって維持されるものではない。言い換えると、耐久性が低いという問題がある。
【0011】
本発明は、電解液の成層化の抑制と内部抵抗の上昇の抑制とを両立し、かつ、親水皮膜の耐久性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に配置されたセパレータと、電解液と、これらを収容する電槽と、を備え、負極板の表面には、膜体が付設され、膜体は、基材と、基材の表面を覆う親水皮膜と、を含み、親水皮膜は、親水材料と、保持体材料と、を含み、親水材料は、アルミナ又はシリカであり、保持体材料は、アクリルアミド、シリカゾル又はシランカップリング剤であり、基材の繊維径は、10μmよりも小さく、基材の空孔率は、90%よりも小さい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電解液の成層化の抑制と内部抵抗の上昇の抑制とを両立し、かつ、親水皮膜の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の鉛蓄電池の全体構成を示す概略斜視図である。
図1B】実施形態の鉛蓄電池の電極群の一部を示す模式断面図である。
図1C】実施形態の鉛蓄電池における一対の正極及び負極の組合せを示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施例による鉛蓄電池の電極群の一部の構造、特に負極板周囲の構造を示す図である。
図3】基材の空孔率と実電池の内部抵抗との関係を示すグラフである。
図4】膜体の比表面積の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による鉛蓄電池は、次のような特徴を有する。二酸化鉛を含む正極板と、金属鉛を含む負極板と、正極板と負極板との間に配置されたセパレータと、希硫酸からなり、正極板と負極板とセパレータとからなる電極群が浸される電解液と、電極群と電解液とを収納する電槽と、負極板の周囲に配置された有機織布、有機不織布などの多孔性の膜体とを備える。基材の表面には、親水膜(以下「親水皮膜」ともいう。)が形成されている。親水皮膜は、SiO(シリカ)若しくはAl(アルミナ)からなる親水材料又はAlとSiOとの混合物からなる親水材料と、無機材料又は有機高分子材料からなる保持体材料(バインダ)と、から構成される。
【0016】
ISS用途のように大電流で充電する際には、極板から硫酸イオンが大量に放出されるため、膜体の硫酸イオンの保持能力は高い方が好ましい。基材の繊維径を10μmより小さくし(好ましくは繊維径数μm)、基材の空孔率を90%よりも小さくすることで膜体の比表面積が大きくなると共に、硫酸イオンを保持する空間を増やすことが可能となるため、膜体の硫酸イオンの保持能力を向上させることができる。なお、基材の繊維径を1μmより小さくすると、繊維が切れやすくなり、膜体が破れやすくなるため、耐久性に問題が生じる。よって、基材の繊維径は、1μm以上が望ましい。一方、基材の空孔率を40%よりも小さくすると、膜体における液の移動が妨げられ、硫酸イオンの拡散も不十分となり、内部抵抗が大きくなってしまう。よって、基材の空孔率は、40%以上が望ましい。
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(1)電解液の成層化
鉛蓄電池、特に液式鉛蓄電池における電解液の成層化は、電解液中の硫酸イオンと硫酸水素イオンが沈降して、電槽の上下で電解液の比重に差が生じる現象である。以下では、硫酸イオン(SO2−)と硫酸水素イオン(HSO)とを「硫酸イオン」と総称する。
後述するように、負極板の表面に膜体(有機織布、有機不織布または多孔質膜を基材とするもの)を密着した状態で設けることにより、電槽下部における硫酸イオンの蓄積を抑制し、電解液の成層化を抑制することができる。言い換えると、電槽内部の硫酸イオンの濃度を均一に保持することができる。
【0019】
(2)内部抵抗
鉛蓄電池の内部抵抗は、硫酸イオンの拡散速度に大きな影響を受ける。硫酸イオンの挙動を阻害する障害物が多い場合は、硫酸イオンの拡散速度が低下するため、内部抵抗は大きくなると考えられる。逆に障害物が少ない場合は、硫酸イオンの拡散速度は向上するため、内部抵抗は小さくなると考えられる。鉛蓄電池の高性能化のためには、内部抵抗の上昇を抑制する必要がある。このため、硫酸イオンの挙動を阻害しないような電池の構成を考案しなければならない。
【0020】
硫酸イオンの挙動に影響を及ぼす因子としては、セパレータと、負極板の表面に付設された膜体とが挙げられる。セパレータ及び膜体の孔径、目付け等(空孔率、密度)の構造特性によって硫酸イオンの拡散速度は大きく左右されるため、これらの構造の最適化が必要である。ここで、空孔率とは、膜体の単位体積あたりの隙間の割合を百分率で表したものをいう。
【0021】
(3)高率放電性能
高率放電性能は、膜体の基材に親水皮膜を設けた場合には、親水皮膜を設けない場合よりも優れていた。これは、硫酸イオンと親水皮膜との間に化学的な相互作用が働いているためと考えられる。親水皮膜に用いられるSiOやAlの表面には、−OH基が生成される。この−OH基は、電解液である硫酸水溶液中でプロトンが付与された結果、−OHの形で存在する。硫酸イオン(SO2−及びHSO)は、この−OHへ引き寄せられて化学的な相互作用を生じていると考えられる。
【0022】
すなわち、膜体の基材に設けられた親水皮膜は、硫酸イオンと相互作用を生じ、硫酸イオンを吸着して集め、電極へ供給すると考えられる。よって、親水皮膜から電極への硫酸イオンの供給効率が、高率放電性能に影響すると考えられる。
【0023】
そこで、親水皮膜から電極への硫酸イオンの供給効率を向上させるため、以下の点に基づき、親水皮膜の材質を検討した。
【0024】
親水皮膜の表面に存在する−OH基等の親水性官能基の量が多い場合、すなわち親水性が高い場合は、親水皮膜と硫酸イオンが相互作用する力が大きく働き、電槽内における硫酸の濃度分布が解消されるため、電極への硫酸イオンの供給速度が向上すると考えられる。
【0025】
このような親水皮膜表面を形成するには、親水皮膜表面の官能基の配向性を制御することが必要である。親水皮膜表面の官能基の配向性を制御しない場合は、親水材料表面が保持体材料由来の疎水性官能基で被覆されてしまう可能性があるため、好ましくない。
【0026】
一般に、親水性の指標として接触角が用いられるが、親水皮膜の水または硫酸に対する接触角が10°以下である場合に親水性は特に優れており、好ましい。ただし、例えばAlのように硫酸イオンの吸着力が高い親水材料を用いる場合には、接触角30°程度の一定レベルの親水性が得られていれば硫酸イオンの吸着と併せた相乗効果が得られるため、必ずしも接触角が10°以下である材料を選択しなければならないというわけではない。
【0027】
親水皮膜表面の官能基を制御するには、親水皮膜の基材である有機織布、有機不織布などの多孔性の膜体表面の官能基組成に合わせて、保持体材料を選定することが必要となる。
【0028】
以下、有機織布、有機不織布、親水材料及び保持体材料について詳細に説明する。
【0029】
親水皮膜は、親水材料と保持体材料とから構成されている。親水皮膜は、親水材料と保持体材料とからなる混合液を水溶性溶媒(例えばアルコール系溶媒や水)で希釈して得られた親水塗料を、基材の表面に塗布することで形成される。親水材料には、硫酸イオンと親水皮膜との間に働く化学的相互作用を考慮すると、SiO、Al、AlとSiOとの混合物、BaSO及びTiOのうちの少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0030】
Alを用いる場合には、親水材料として親水性アルミナゾルを利用することができ、AlとSiOとの混合物を用いる場合には、親水材料としてアルミナゾルとコロイダルシリカとの混合物を利用することができる。保持体材料には、無機材料または有機高分子材料を用いることができ、例えばシリカゾル、アクリルアミド又はアルコキシシランを用いることができる。
【0031】
膜体の厚さは、硫酸イオンの沈降の防止能力、電池反応への影響、強度等を考慮すると、0.03mm〜0.1mmが好ましい。基材として有機織布又は有機不織布を用いる場合には、有機織布又は有機不織布の繊維に応じて厚さを定めることができる。一方、基材として多孔質膜を用いる場合には、多孔質膜の孔径や材料に応じて厚さを定めることができる。
【0032】
有機織布及び有機不織布は、無機織布及び無機不織布に比べると製造が容易という利点を持つ。このため、本発明の鉛蓄電池においては、有機織布又は有機不織布を用いることが望ましい。膜体の孔径は、100nm〜100μmであることが好ましく、特に1μm〜50μmであることが更に好ましい。孔の構造は、有機織布の繊維と繊維との間に生じる規則的な構造でもよいし、有機不織布の繊維と繊維との間に生じるような不規則な構造でもよい。
【0033】
親水皮膜は、10nm〜1000nmの厚さで形成するのが好ましい。親水皮膜の厚さを10nm以上とすることにより、硫酸イオンを吸着して保持する効果を十分に発揮できる。親水皮膜の厚さを1000nm以下とすることにより、電池の内部抵抗の上昇を抑制できる。10nm〜500nmの範囲が電池の内部抵抗の観点からは特に好ましい。
【0034】
特に、本発明による鉛蓄電池では、親水皮膜を有する膜体をセパレータとは別に負極板の周囲に設けると、膜体が負極板に密着した状態で配置されるので、セパレータに成層化の抑制効果を持たせた場合よりも、成層化の抑制効果が高い。なお、ここで、「負極板の周囲」とは、「負極板の表面」又は「負極板とセパレータとの間」をいう。
【0035】
以下、本発明を適用した鉛蓄電池の構成について説明する。
【0036】
図1Aは、本発明の鉛蓄電池の全体構成を示す概略斜視図である。
【0037】
本図において、鉛蓄電池100は、外装部分として電槽1と端子2とを備えている。電槽1の内部には、極柱3と電極群4とが収容されている。極柱3は、端子2及び電極群4に接続されている。鉛蓄電池100は、通常、その上面に端子2を設けている。
【0038】
図1Bは、本発明の鉛蓄電池の電極群の一部を示す模式断面図である。
【0039】
電極群4は、金属鉛(Pb)を活物質として含む負極板5と、二酸化鉛(PbO)を活物質として含む正極板7と、負極板5と正極板7との間に配置されたセパレータ6とを備えている。負極板5及び正極板7は板状である。セパレータ6を介して負極板5と正極板7とが交互に積層された構造であり、これらが電極群4を構成している。電極群4は、希硫酸からなる電解液に浸されて電槽1内に収納され、鉛蓄電池を構成する。負極板5の表面には、膜体8(有機織布、有機不織布または多孔質膜を基材とするもの)が密着した状態で設けられている。
【0040】
なお、図1A及び1Bに示すように、負極板5及び正極板7は、水平方向に積層されている。よって、負極板5及び正極板7は、面積が大きい平面部が上下方向に広がっている。
【0041】
図1Cは、図1Bの電極群に含まれる一対の正極板及び負極板の組み合わせを示す概略斜視図である。
【0042】
本図に示すセパレータ6は、袋状であり、その内部に負極板5を収納している。よって、負極板5の両面は、1つのセパレータ6によって覆われている。本図においては、負極板5の片面を覆うセパレータ6が負極板5と正極板7との間に挟み込まれている。
【0043】
図2は、本発明の鉛蓄電池における一対の正極及び負極の組み合わせを模式的に示す斜視図、並びに負極板を覆う膜体8の繊維を示す模式拡大図である。
【0044】
本図においては、負極板5の表面には、膜体8(有機織布、有機不織布または多孔質膜を基材とするもの)が密着した状態で設けられている。セパレータ6は、板状でも袋状でもよく、負極板5の周囲に設けられた膜体8と正極板7との間に配置されている。セパレータ6が袋状の場合は、セパレータ6の内部には負極板5と膜体8とが収納されている。
【0045】
膜体8の拡大図は、糸状の繊維が不規則に絡み合った構成を有する有機不織布を示したものである。
【0046】
さらに、その繊維を拡大した図においては、膜体8は、基材18と、基材18の表面を覆う親水皮膜9と、で構成されている。そして、親水皮膜9は、親水材料10と保持体材料11とを含む。膜体8は、少なくともセパレータ6に対向する負極板5の面と、この面の裏側に当たる負極板5の面とに設けられている。さらに、膜体8は、負極板5の側面部(幅が小さい周縁部)にも設けてもよく、負極板5の底面に設けてもよい。
【0047】
例えば、膜体8は、負極板5に巻き付けることにより負極板5の全面に設けてもよい。
【0048】
また、膜体8の形状を袋状とし、負極板5を収納するようにしてもよい。親水皮膜9は、基材18のほかに、セパレータ6の表面にも形成してもよい。また、膜体8を負極板5の周囲に設けないで、セパレータ6の表面に親水皮膜9を形成してもよい。
【0049】
図3は、膜体の空孔率と実電池の内部抵抗との関係を示すグラフである。負極板の周囲に有機不織布等の膜体を配置しない場合の内部抵抗を100(基準値)とした。膜体の厚さは一定とした。本図から、膜体の空孔率が小さくなると内部抵抗が増大することがわかる。
【0050】
図4は、膜体の比表面積の測定結果である。基材表面の官能基組成が親水的である基材A及び基材表面の官能基組成が親油的である基材BにSiO膜又はAl膜を形成した場合の比表面積を示している。比表面積は、窒素吸着によるBET法により測定した値である。
【0051】
表面処理前に比べると比表面積は増加していることが分かる。すなわち、このような膜体を用いることで硫酸イオンとの相互作用点を増加させ、基材18の繊維径、空孔径、空孔率を調整することで硫酸イオンを保持する能力をさらに向上させることが可能である。
【0052】
以上の実施形態における望ましい構成をまとめると、次のようになる。
【0053】
基材の表面の官能基は、実質的に疎水性官能基からなり、保持体材料は、ビニル基、メタクリル基、アクリル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤である。ここで、「実質的に疎水性官能基からなる」とは、基材の表面が疎水性を呈する状態をいう。
【0054】
基材の表面の官能基は、実質的に親水性官能基からなり、保持体材料は、エポキシ基を有するシランカップリング剤である。ここで、「実質的に親水性官能基からなる」とは、基材の表面が親水性を呈する状態をいう。
【0055】
後述のとおり、親水材料と保持体材料との固形成分の質量比が90:10〜70:30であることが望ましい。また、親水皮膜は、厚さが10nm〜1000nmであることが望ましい。
【0056】
膜体は、厚さが0.03mm〜0.1mmである。
【0057】
基材の表面には、親水皮膜が形成されている。
【0058】
基材は、有機織布、有機不織布又は多孔質膜である。後述の実施例においては、有機不織布を用いたが、電解液が浸透可能なものであれば、基材として有機織布又は多孔質膜を用いてもよい。
【0059】
膜体は、負極板の表面に密着している。ここで、「密着」とは、膜体の見かけ上の外表面が負極板の表面に隙間なく接触している状態をいう。この場合に、膜体が負極板の表面に固定されていることが望ましい。
【0060】
以下、本実施例による鉛蓄電池について説明する。
【0061】
〔1〕セパレータ
セパレータの材料の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。これらの材料で形成された織布、不織布、多孔質膜等の膜体にSiOやAl等の無機系粒子を付着させたものを用いても構わない。セパレータの厚さは、0.1mm〜0.5mmの範囲であることが好ましく、特に0.2mm〜0.3mmの範囲であることが更に好ましい。0.1mmよりも薄い場合はセパレータの強度が劣り、0.5mmよりも厚い場合は電池の内部抵抗が大きくなるため、好ましくない。また、セパレータの孔径範囲は10nm〜500nmであることが好ましく、孔径の平均が30nm〜200nmであることが特に好ましい。孔径が10nmよりも小さいと硫酸イオンの通過が困難となって硫酸イオンの拡散速度が大幅に低下し、孔径が500nmよりも大きいと鉛のデンドライトが成長して短絡を引き起こす可能性がある。本発明では、厚さ0.2mm、孔径範囲が30nm〜200nmであるセパレータを用いて検討した。
【0062】
〔2〕膜体
膜体は、基材である有機織布、有機不織布または多孔質膜の表面に親水皮膜を形成することにより作製したものである。有機織布、有機不織布または多孔質膜に用いられる材料の例としては、ポリプロピレン、セルロース、ポリエチレン、ナイロン、アラミド、ポリエステル等が挙げられる。基材に以下に述べる親水塗料を塗布し、加熱して熱硬化させることで、有機織布、有機不織布または多孔質膜の表面に親水皮膜を形成できる。基材は、無処理であっても親水化処理をしてあっても構わない。
【0063】
親水化処理は、ポリグリセリンやシリコーン系などの界面活性剤の塗布、プラズマ処理のような乾式の表面処理のどちらでも構わない。ただし、親水塗料に含まれる保持体材料は、基材の表面に存在する官能基の種類に合わせて選択するものとし、後述の〔3〕(b)保持体材料にて詳細に説明する。
【0064】
なお、膜体の表面に形成される親水皮膜の質量は、塗料濃度の調整や余分な塗料を除去する際の圧力を変化させることで調整可能である。
【0065】
〔3〕親水塗料
親水皮膜を形成するための親水塗料は、(a)親水材料、(b)保持体材料、および(c)溶媒から構成される。親水材料と保持体材料は、ともに、固形成分が一定の濃度で分散媒中に存在するものとする。親水材料の固形成分と保持体材料との固形成分の質量比は、90:10〜70:30であるのが好ましい。固形成分の質量比がこの範囲であると、親水材料と保持体材料とを混合して親水塗料を作製するのに好適である。親水材料が含まれる分散液と保持体材料が含まれる分散液とを混合した後、親水材料及び保持体材料各々の固形成分の合計濃度が、混合して得た分散液(混合分散液)に対して0.5質量%〜5質量%となるように、この混合分散液を溶媒で希釈する。固形成分の濃度が0.5質量%より小さいと親水皮膜の厚さが不均一になり、5質量%より大きいと親水皮膜が形成しづらくなり、どちらも好ましくない。
【0066】
(a)親水材料
酸性水溶液に浸漬しても溶け出さない無機材料は、親水性を長期間保てることから、親水材料として好ましい。このような無機材料として、親水性シリカ粒子や親水性アルミナゾルが挙げられる。具体的には、日産化学工業(株)製コロイダルシリカIPA−ST−UP、IPA−ST、ST−OXS、ST−K2およびLSS−35、日産化学工業(株)製アルミナゾルAS−200などが挙げられる。コロイダルシリカはアルコールを分散媒とし、アルミナゾルは水を分散媒としているため、これらは容易に混ぜ合わせることができる。
【0067】
コロイダルシリカは、比表面積が130m/g〜1000m/g程度である粒子を用いるのが好ましい。コロイダルシリカの形状が球形であると仮定すると、粒子径は2nm〜20nmである。アルミナゾルは、含まれているアルミナ粒子の比表面積が200m/g〜400m/g程度であるものを用いるのが好ましい。アルミナ粒子の形状が板状であると仮定すると、例えば寸法(縦、横および高さ)が10nm×10nm×100nmであるアルミナ粒子を含むアルミナゾルを用いることができる。
【0068】
(b)保持体材料
保持体材料には、有機高分子材料または無機材料を用いることができる。保持体材料に用いる有機高分子材料の例としては、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等を加熱して得られる重合体を挙げることができる。保持体材料に用いる無機材料の例としては、シリカゾルやシランカップリング剤のように加熱により保持体となる材料が挙げられる。シリカゾルの具体例としては、コルコート(株)のコルコートPXなどが挙げられる。
【0069】
シランカップリング剤は、信越化学工業(株)などで市販されているシランカップリング剤を用いればよい。なお、シランカップリング剤は、実際には有機材料に分類される物質が多いが、本明細書においては、基材に親水性官能基を付与するために用いるため、無機材料として記載している。この中でも酸性水溶液中の長期安定性が優れているのは、アクリルアミド、シリカゾル及びシランカップリング剤である。特にシランカップリング剤は、シランカップリング剤を構成する官能基の種類によって保持体材料の配向性を以下のように制御できるため、好ましい。
【0070】
保持体材料は、基材の表面の官能基の種類に合わせて以下のように選択するものとする。
【0071】
基材が無処理の場合は、疎水性官能基が多い表面になっていると考えられる。疎水性官能基として、メチル基、メチレン基等が挙げられる。その場合には、ビニル基、メタクリル基、アクリル基またはスチリル基等の官能基を持つシランカップリング剤を保持体材料として選択すると、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、スチリル基等が基材の表面側に配向し、加水分解反応で生じたシラノール基は逆側に配向すると考えられる。
【0072】
一方、基材が親水化処理されている場合は、親水性官能基が多い表面になっていると考えられる。親水性官能基として、水酸基(−OH基)、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。その場合にはアミノ基またはエポキシ基を持つシランカップリング剤を保持体材料として選択すると、アミノ基またはエポキシ基が基材の表面の官能基と反応するため、加水分解で生じたシラノール基は逆側に配向すると考えられる。特に、アミノ基は、水酸基と水素結合を作りやすいため、シラノール基を親水皮膜の最表面側に配向させやすいことから特に好ましい。
【0073】
このように基材の表面の官能基の種類に合わせて保持体材料を選択することで、官能基の配向性を制御でき、親水皮膜の外面(電解液に接する面)にシラノール基すなわち−OH基を形成することができる。
【0074】
特に、無処理の基材と、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、スチリル基等の官能基を持つシランカップリング剤を保持体材料として選択するのは、基材の親水化処理が不要であるために、工程を短縮できることから特に好ましい。
【0075】
(c)溶媒
親水材料と保持体材料との混合分散液を希釈するために用いられる溶媒は、親水材料及び保持体材料の分散性及び相溶性が良く、熱硬化の際に揮発しやすいものが望ましい。これらの条件を満たす溶媒としては、アルコール系の溶媒や水が好ましい。さらに、基材の耐熱性を考慮すると、沸点は100℃以下であることが更に好ましい。溶媒の具体例として、水、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールが挙げられる。
【0076】
表1は、実施例の鉛蓄電池の構成、並びに電解液の成層化の抑制効果及び内部抵抗の評価を示したものである。本表には、鉛蓄電池の構成として、負極を覆う膜体の空孔率及び繊維径、並びに膜体の表面に形成した親水皮膜の組成及び膜体の比表面積を記載している。また、本表には、比較例として作製した鉛蓄電池についても記載した。
【0077】
以下の実施例及び比較例2〜4では、負極板5の周囲に膜体8を設けた。実施例1〜9及び比較例2〜4では、親水皮膜9形成前の基材18の厚さは0.1mm、材質はポリプロピレン(表面官能基:−CH基、−CH基)に統一した。
【0078】
基材の繊維径(不織布を形成する繊維の直径)については、SEM画像(倍率200倍)を用いて繊維径を測定し、5か所の平均値をその代表値と定義した。本明細書においては、この平均値を基材の繊維径と呼ぶ。なお、基材の繊維径は、親水皮膜を形成した後も変化しない。
【0079】
基材18の空孔率は、基材18を適当な大きさに切り取り、下記の式に従い実際の体積と見かけの体積とから算出した。
【0080】
空孔率(%)={1−(実際の体積/見かけの体積)}×100 …(式1)
実際の体積(cm)=重量の実測値(g)/密度(g/cm) …(式2)
なお、基材18を5cm角に切り取ったときの見かけの体積は下記の式3により算出できる。
【0081】
見かけの体積(cm)=5(cm)×5(cm)×厚さの実測値(cm) …(式3)
また、親水皮膜9の膜厚は100nmに統一した。実施例の条件で作製した親水皮膜の膜厚がおよそ100nmであることは、親水皮膜を形成した基材のSEM観察により確認した。また、膜体8の比表面積は、窒素を用いたガス吸着BET多点法による測定及びBET理論により算出した。
【0082】
実施例1〜5では、基材18の空孔率及び繊維径の範囲と、基材18の表面に形成した親水皮膜9の材料組成を変化させた。
【0083】
表1は、本発明の実施例による鉛蓄電池の構成と、電解液の成層化の抑制効果の評価と、内部抵抗の評価を示す表である。鉛蓄電池の構成として、負極板上部/下部周囲に配置する基材18の空孔率、基材18に形成した親水皮膜9の種類と膜厚を記載した。
【0084】
また、表1には、比較例として作製した鉛蓄電池についても記載した。以下の実施例と比較例2では、負極板5の周囲に膜体8を設けた。実施例1〜5と比較例2では、基材18の厚さは0.1mmに、親水膜形成前の基材18の材質はポリプロピレンとし、PP(表面官能基:−CH基、−CH基)に統一した。
【0085】
次に説明する実施例1〜5では、基材18の空孔率と繊維径の範囲と基材18上に形成した親水皮膜9の材料組成を変化させた。
【実施例1】
【0086】
実施例1による鉛蓄電池には、図2に示すように親水皮膜9が形成されたPP製の膜体8が負極板5の周囲に配置されている。基材18の空孔率は70%、基材18を形成する繊維径は5μmとした。膜体8の比表面積は20m/gであった。
【0087】
基材18としては、無処理のポリプロピレン(PP)製を用いた。親水材料としてはコロイダルシリカ(SiO)のみを用い、保持体材料としてはシリカゾルを用いた。すなわち、親水材料には100質量%のコロイダルシリカ(SiO)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとして日産化学工業(株)製のコロイダルシリカIPA−ST−UPを、保持体材料としてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0088】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が80:20になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0089】
この親水塗料に基材18を浸漬させた後、速度156mm/分にて基材18を引き上げた。キムタオル(登録商標)に親水塗料を塗布した膜体8を挟んで上から約5kg加圧しながらローラーを転がすことで膜体8に付着した余分な親水塗料を除去した後、膜体8を60℃に加温した恒温槽内に1時間置いて溶媒を除去した。
【0090】
このようにして、基材18上に親水皮膜9を形成して膜体8を作製した。 親水皮膜9が形成された膜体8を負極板5の周囲に配置し、電解液として希硫酸を用い、図1Aに示すような鉛蓄電池を作製した。ここで、鉛蓄電池は2V単セルであり、電池サイズはM42(Bサイズ)である。
【0091】
この鉛蓄電池に、まず、電解液の成層化を抑制する効果を評価した。
【0092】
サイクル試験では、5時間率電流(6A)にて30分間放電し、SOC(State Of Charge、電池の充電状態を示す指標)を90%に調整して6時間休止し、2.33V(上限100A)で10分間充電する工程を1サイクルとした。そして、SOCが90%〜100%の間で変動するようにして充放電サイクルを繰り返した。電界液の成層化が顕著に表れる初期のサイクル(50回目)における、電槽内の上部と下部での電解液の比重差を成層化の指標とした。すなわち、50回目のサイクルでの、電槽内の下部における電解液の比重と上部における電解液の比重とを測定し、これらの比重を求め、この比重差の値により、成層化の抑制効果を評価した。
【0093】
電槽内の上部とは電極群4の上端から1cm上の位置であり、電槽内の下部とは、電極群4の下端から1cm下の位置である。電極群4の高さは、電極群4の下部からセパレータ6の上端までの長さ116mmを指す。具体的な評価基準は、比重差が0.02以下の場合を「A」、0.02より大きく0.04以下の場合を「B」、0.04より大きく0.07以下の場合を「C」、0.07より大きい場合を「D」とした。この評価基準では、A、B、C、Dの順に成層化が抑制されていることになる。
【0094】
本実施例による鉛電池は電解液の比重差が0.03と小さく、評価Bとなり、成層化が抑制されていることが分かった。
【0095】
次に、鉛蓄電池の内部抵抗を評価した。内部抵抗は、1kHz交流mΩメータにより評価した。具体的な評価基準は、膜体8がない場合を100とした場合の内部抵抗の上昇率が5%未満の上昇率である場合を「A」、5%以上10%未満の上昇率である場合を「B」、10%以上20%未満の上昇率である場合を「C」、20%以上の上昇率である場合を「D」とした。この評価基準では、A、B、C、Dの順に内部抵抗の上昇を抑制していることになる。
【0096】
本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗の上昇率が104で評価Aとなった。すなわち、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗上昇の抑制と成層化の抑制が両立できることが分かった。
【実施例2】
【0097】
実施例2による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。
【0098】
本実施例による鉛蓄電池では、空孔率60%、繊維径5μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は22m/gであった。親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)のみを用い、保持体材料としてはシリカゾルを用いた。すなわち、親水材料には100質量%のコロイダルシリカ(SiO)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとして日産化学工業(株)製のコロイダルシリカIPA−ST−UPを、保持体材料としてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0099】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が80:20になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0100】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.02と小さく、評価Aとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が103で評価Aとなり、内部抵抗上昇の抑制と成層化の抑制とが両立できることが分かった。
【実施例3】
【0101】
実施例3による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。
【0102】
本実施例による鉛蓄電池では、空孔率70%、繊維径5μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は18m/gであった。親水材料としてアルミナゾル(Al)のみを用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。すなわち、親水材料には100質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、保持体材料としてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0103】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0104】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.03と小さく、評価Bとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が102で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例4】
【0105】
実施例4による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。
【0106】
本実施例による鉛蓄電池では、空孔率70%、繊維径5μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は15m/gであった。
【0107】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は80:20とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0108】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が80:20になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。
【0109】
この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。空孔率70%、繊維径5μmの膜体8を負極板5に対して配置した。
【0110】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.03と小さく、評価Bとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が102で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例5】
【0111】
実施例5による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率70%、繊維径2μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は18m/gであった。
【0112】
親水材料としてアルミナゾル(Al)のみを用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。すなわち、親水材料には100質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、保持体材料としてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0113】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0114】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.02と小さく、評価Aとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が102で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例6】
【0115】
実施例6による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率85%、繊維径8μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は14m/gであった。
【0116】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は90:10とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0117】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0118】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.02と小さく、評価Aとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が103で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例7】
【0119】
実施例7による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率85%、繊維径2μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は17m/gであった。
【0120】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は90:10とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0121】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0122】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.02と小さく、評価Aとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が102で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例8】
【0123】
実施例8による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率50%、繊維径8μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は16m/gであった。
【0124】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は90:10とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0125】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0126】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.03と小さく、評価Bとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が104で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【実施例9】
【0127】
実施例9による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率50%、繊維径2μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は18m/gであった。
【0128】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は90:10とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0129】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0130】
本実施例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.03と小さく、評価Bとなり、成層化が抑制されていることが分かった。また、本実施例による鉛蓄電池は、内部抵抗が103で評価Aとなり、内部抵抗の上昇を抑制できることが分かった。
【0131】
(比較例1)
比較例1による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみ説明する。
【0132】
本比較例による鉛蓄電池では、負極板5の周囲に膜体8を設けなかった。本比較例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.08と極めて大きく、評価Dとなり、成層化が抑制できないことが分かった。また、本比較例による鉛蓄電池は、負極板5の周囲に多孔質膜8を設けていないため、内部抵抗は評価基準の100である。
【0133】
本比較例と実施例1〜5により、負極板5の周囲に膜体8を設けることにより、電解液の比重差を小さくすることができ、電解液の成層化を抑制できることが確認できた。
【0134】
(比較例2)
比較例2による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみ説明する。
【0135】
本実施例による鉛蓄電池では、空孔率95%、繊維径20μmの膜体8を負極板5に対して配置した。親水材料としてはコロイダルシリカ(SiO)のみを用い、保持体材料としてはシリカゾルを用いた。すなわち、親水材料には100質量%のコロイダルシリカ(SiO)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとして日産化学工業(株)製のコロイダルシリカIPA−ST−UPを、保持体材料としてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0136】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)との固形成分の質量比(X:Y)が80:20になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0137】
本比較例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.05で評価Cとなり、内部抵抗は105で評価Bとなった。本比較例では、電解液の成層化の抑制の点でやや劣ることが示唆された。
【0138】
(比較例3)
比較例3による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率90%、繊維径8μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は14m/gであった。
【0139】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は80:20とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0140】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0141】
本比較例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.05と大きく、評価Cとなり、内部抵抗は104で評価Aとなった。本比較例では、電解液の成層化の抑制の点でやや劣ることが示唆された。
【0142】
(比較例4)
比較例4による鉛蓄電池は、実施例1による鉛蓄電池と同様の構成を備えるが、次の点が相違する。以下では、相違点のみを説明する。本実施例による鉛蓄電池では、空孔率80%、繊維径20μmの膜体8を負極板5に対して配置した。膜体8の比表面積は9m/gであった。
【0143】
親水材料としてコロイダルシリカ(SiO)とアルミナゾル(Al)を用い、保持体材料としてシリカゾルを用いた。親水材料において、アルミナゾルとコロイダルシリカの質量比は80:20とした。すなわち、親水材料には、80質量%のアルミナゾル(Al)が含まれる。具体的には、コロイダルシリカとしてIPA−ST−UPを、アルミナゾルとして日産化学工業(株)製のアルミナゾルAS−200を、シリカゾルとしてコルコート社製のコルコートPXを用いた。
【0144】
親水材料10(X)と保持体材料11(Y)の固形成分の質量比(X:Y)が90:10になるように、親水材料10と保持体材料11とを混合した。この混合液を、固形成分の濃度が5質量%になるようにエタノールで希釈することで、親水塗料を調製した。
【0145】
本比較例による鉛蓄電池は、電解液の比重差が0.05と大きく、評価Cとなり、内部抵抗は105で評価Bとなった。本比較例では成層化抑制度がやや劣ることが示唆された。
【0146】
【表1】
【0147】
以上の結果から、本比較例による鉛蓄電池は、成層化の抑制と内部抵抗上昇の抑制を両立できないことが分かった。さらに、本比較例と実施例1〜4により、基材18に親水皮膜9を形成した膜体8を負極近傍に配置することにより、成層化の抑制と内部抵抗上昇の抑制を両立可能であることを確認した。
【0148】
上述の実施例については、次の方法により親水皮膜の耐久性を確認した。
【0149】
親水皮膜を形成した後に電解液と同じ濃度の硫酸水溶液中に24時間浸漬した。その後、水洗し、接触角を測定した。
【0150】
ここで、接触角の測定は、一般的な液滴法を用いた。溶媒は33質量%硫酸水溶液(電解液濃度)を用い、滴下量は1.0マイクロリットルとした。同一試料の表面について5回測定し、最小値と最大値を除いたN=3の平均値を算出した。
【0151】
そして、硫酸に浸漬する前と同程度以上の親水性が得られた場合、すなわち、硫酸に浸漬した後において、硫酸に浸漬する前の接触角以下である場合、耐久性があると判断した。
【0152】
上記の実施例の場合、親水性に変化はなく、耐久性があることを確認した。
【0153】
一方、硫酸に浸漬する前の接触角よりも大きい場合、耐久性が低いと判断した。
【0154】
これに対して、従来のように不織布に乾式表面処理をした場合は、硫酸浸漬後の表面の親水性が低下すること、つまり、表面が変化し易いために耐久性が低いことを確認した。
【0155】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0156】
1:電槽、2:端子、3:極柱、4:電極群、5:負極板、6:セパレータ、7:正極板、8:膜体、9:親水皮膜、10:親水材料、11:保持体材料、18:基材、100:鉛蓄電池。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4