特許第6620895号(P6620895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620895
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用活物質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/57 20060101AFI20191209BHJP
   C01G 21/10 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01M4/57
   C01G21/10
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-550167(P2018-550167)
(86)(22)【出願日】2017年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2017039632
(87)【国際公開番号】WO2018088309
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-218354(P2016-218354)
(32)【優先日】2016年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】上田 博雅
(72)【発明者】
【氏名】向谷 一郎
(72)【発明者】
【氏名】北森 茂孝
(72)【発明者】
【氏名】畠中 俊和
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−270029(JP,A)
【文献】 特開平04−282859(JP,A)
【文献】 特開平02−262247(JP,A)
【文献】 特開2009−280462(JP,A)
【文献】 特開2009−016256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
C01G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化鉛と金属鉛を主成分とする鉛粉を加熱して、鉛蓄電池用の活物質材料として用いる鉛丹を製造する、鉛蓄電池用活物質材料の製造方法であって、
前記鉛粉を第1の加熱温度で加熱して、前記鉛粉中の金属鉛を酸化させる第1の加熱工程と、
前記第1の加熱工程で加熱した鉛粉を第2の加熱温度で加熱して、前記鉛粉を鉛丹化する第2の加熱工程とを含み、
前記第1の加熱工程で加熱する前の前記鉛粉は、金属鉛をボールミル法により粉砕して生成されたものであり且つ酸化度が63%以上であり、
前記第1の加熱温度が前記第2の加熱温度以下であり且つ300〜330℃であり、
前記第1の加熱工程は、加熱炉を用いて実行し、前記加熱炉は、
前記鉛粉を前記加熱炉内に投入する入口部分を構成する第1のセグメントと、
前記第1のセグメントに連続し、かつ前記加熱炉の中心部分を構成する第2のセグメントと、
前記第2のセグメントに連続し、かつ前記鉛粉を前記加熱炉外に排出する出口部分を構成する第3のセグメントとを含み、
前記第1の加熱温度は、前記第1のセグメントにおける加熱温度が、前記第2のセグメントにおける加熱温度および前記第3のセグメントにおける加熱温度よりも小さくならないように設定されており、
前記加熱炉内の第3のセグメントに供給される空気は、前記第3のセグメントから前記第2のセグメントそして前記第1のセグメントを通り抜けて前記加熱炉から排気されることを特徴とする鉛蓄電池用活物質材料の製造方法。
【請求項2】
記第1の加熱工程における前記鉛粉の加熱は、前記鉛粉を撹拌しながら行う、請求項1に記載の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法。
【請求項3】
前記鉛粉の酸化度が67%以上である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法。
【請求項4】
前記第2の加熱温度が375〜480℃である、請求項1,2または3に記載の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法。
【請求項5】
前記第2のセグメント内には前記鉛粉の加熱を妨げない位置に、前記空気が排気されるときに発生する空気流を遮って過度の熱排出を防止する間仕切り板が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用の活物質材料である鉛丹を製造するための鉛蓄電池用活物質材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の分野では、鉛蓄電池の化成効率を高めるため、活物質材料に鉛丹が用いられている(特許文献1及び特許文献2)。鉛丹は、鉛粉(金属鉛を含有する一酸化鉛)を原料として、この鉛粉を加熱または焼成することにより得られる。鉛粉の加熱には、従来から、生産管理が比較的容易なバッチ式の加熱装置が用いられている。しかし、バッチ式の加熱装置は、鉛丹の大量生産には不向きであるため、鉛丹の生産量を増やすニーズには沿わない。
【0003】
そのため、鉛丹の生産量を増やす場合は、連続式の加熱装置を用いるのが好ましい。しかし、連続式の加熱装置は、装置の構造が複雑で、生産ラインも長くなるため、加熱温度等の管理が難しい。その上、鉛丹の原料として用いられる鉛粉の処理量が増えるので、鉛粉に含まれる金属鉛も相対的に増える。その結果、鉛丹化のための加熱により金属鉛の酸化反応が激しくなって、装置内の温度が高くなり易い。そのため、連続式の加熱装置を導入した場合は、鉛丹化し難い酸化鉛の生成や、金属鉛等の溶融によって、鉛丹化度が低下し、鉛丹化のための処理時間が長くなるという、問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、連続式の加熱装置により鉛丹を大量生産する場合は、従来の鉛粉よりも酸化度が高い(金属鉛の含有量が少ない)鉛粉が鉛丹の原料として用いられている。例えば、図3に示すように、いわゆるバートンポット方式により、まず酸化度の高い鉛粉を生成し(ST101)、この鉛粉を鉛丹の原料として加熱し(ST102)、エージングし(ST103)、これを粉砕・整粒して(ST104)、鉛丹を生産する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−270029号公報(段落[0030]、[0031]等)
【特許文献2】特開2009−187776号公報(段落[0023]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原料として酸化度が高い鉛粉を用いて鉛丹を大量生産しようとすると、鉛粉を製造する際に鉛粉中に鉛丹化し難い一酸化鉛が生成され易い傾向がある。このような鉛丹化し難い一酸化鉛を含有する鉛粉を用いて鉛丹を大量生産しようとしても、鉛丹化に時間がかかり、単位時間あたりの鉛丹の生産量を増やすことができない。また、鉛粉中の金属鉛の含有量が少ないとはいえ、これを連続式の加熱装置により大量に加熱すれば、金属鉛の処理量は相対的に多くなり、加熱中に激しい酸化反応を起こして、加熱装置内の温度が高くなる。その結果、一部の金属鉛が溶融して、鉛粉の粒径が不均一になる等により、鉛丹化が十分に進まず、却って鉛丹化度が低下する。そのため、連続式の加熱装置を導入する際に鉛丹の原料として酸化度が高い鉛粉を用いた場合でも、結果的に鉛粉の投入量を増やすことができないため、鉛丹の生産量を十分に増やすことはできなかった。
【0007】
本発明の目的は、鉛蓄電池用活物質材料の性能(高い鉛丹化度)を維持しながら、該活物質材料(鉛丹)の生産量を増やすことができる、鉛蓄電池用活物質材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が改良の対象とする鉛蓄電池用活物質材料の製造方法は、一酸化鉛と金属鉛を主成分とする鉛粉を加熱して、鉛蓄電池用の活物質材料として用いる鉛丹を生産する方法である。本発明の製造方法は、第1の加熱工程と第2の加熱工程とを含んで構成されている。第1の加熱工程では、鉛粉を第1の加熱温度で加熱して鉛粉中の金属鉛を酸化させる。また、第2の加熱工程では、第1の加熱工程で加熱した鉛粉を第2の加熱温度で加熱して鉛丹化する。第1の加熱工程で加熱する前の鉛粉として、金属鉛をボールミル法により粉砕して生成した鉛粉を用いる。そして、第1の加熱工程における第1の加熱温度は、第2の加熱工程における第2の加熱温度以下に定められている。
【0009】
本発明の製造方法では、酸化度が比較的低い(金属鉛の含有率が比較的高い)鉛粉を、第2の加熱工程で加熱して鉛丹化する前に、第1の加熱工程で予備的に加熱(以下、予備加熱ともいう)して鉛粉中の金属鉛を可能な限り酸化しておき、第2の加熱工程において金属鉛が急激に酸化反応して装置内の温度が上昇するのを防ぐことができる。そのため、第2の加熱工程で鉛丹に転化し難い一酸化鉛の生成を防ぐことができる。ここで「鉛丹化し難い」とは、鉛丹化はするが、鉛粉の鉛丹化度が低いこと、または、鉛粉を鉛丹化するのに比較的長時間かかることを意味する。鉛丹化し難い要因としては、鉛粉中に斜方晶系の一酸化鉛(β型の一酸化鉛またはβ−PbOともいう)が多量に含まれていること、あるいは、鉛粉中の一酸化鉛または金属鉛が溶融して結合し、大きい粒子となって、鉛粉の比表面積が小さくなっていること等が考えられる。
【0010】
これに対して、金属鉛をボールミル法により粉砕して生成した鉛粉は、鉛丹化し易い鉛粉が生成され易い傾向がある。ここで「鉛丹化し易い」とは、比較的短時間で鉛粉が鉛丹化することを意味する。このような鉛丹化し易い鉛粉を、本発明のように鉛丹化の加熱の前に予備的に加熱することにより、鉛丹化度を低下させずに、しかも短い時間で鉛丹化することができる。したがって、本発明の製造方法を用いることにより、鉛丹化度を維持しながら、鉛丹化のための処理時間を短くすることができ、単位時間当りの鉛丹の生産量を増やすことができる(以下、本発明の基本的効果という)。
【0011】
また、上記の基本的効果を得るために、酸化度が63%以上の鉛粉を用いる。発明者らは、金属鉛をボールミル法により粉砕して生成した鉛粉の酸化度が63%以上の範囲で存在することを確認している。そのため、第1の加熱工程で加熱する前の鉛粉として、金属鉛をボールミルにより粉砕して生成したものに限らず、酸化度が63%以上の範囲に調整された鉛粉を用いることができる。
【0012】
なお、鉛粉の酸化度が63%に満たない場合は、鉛粉中の金属鉛の含有量が多いため、第1の加熱工程で酸化反応が激しく起こり、予備加熱の段階でβ型の一酸化鉛が生成され易く、金属鉛が溶融し易くなる。この状態で第2の加熱工程に進むと、加熱時間が長くなり(その結果、単位時間当たりの鉛丹の生産量が低下する)、また得られる鉛丹の鉛丹化度も低いものとなる。
【0013】
また、第1の加熱工程における第1の加熱温度は、300〜330℃に調整する。第1の加熱温度をこのような温度範囲に調整することにより、本発明の基本的効果を確実に得ることができる。なお、第1の加熱温度が、300℃に満たない場合は、鉛粉の酸化が十分ではなく、鉛粉中に金属鉛が残存して、第2の加熱工程で酸化反応が激しく起こり装置内の温度が高くなる。そのため、β型の一酸化鉛が生成され易く、金属鉛が溶融し易くなり、鉛丹化度が低くなる。一方、第1の加熱温度が330℃を超える場合は、鉛粉が激しく酸化反応を起こして、β型の一酸化鉛が生成され易くなり、金属鉛が溶融し易くなる。この状態で、第2の加熱工程に進んでも、加熱時間が長くなり(すなわち、単位時間当たりの鉛丹の生産量が低下する)、鉛丹化度も低いものとなる。
【0014】
第1の加熱工程における加熱は、鉛粉を撹拌しながら行ってもよい。本明細書において「撹拌」とは、第1の加熱工程を行う加熱炉の内部を一定の回転数で回転させることを意味する。このように撹拌しながら第1の加熱工程で加熱を行うと、鉛粉の酸化度を高くすることができ、単位時間当たりの鉛丹の生産量を増やすことができる。
【0015】
第1の加熱工程は、加熱炉を用いて実行することができる。この場合、加熱炉は、第1のセグメント、第2のセグメント、及び第3のセグメントからなる3つのエリアに分けてもよい。例えば、第1のセグメントは、鉛粉を加熱炉内に投入する入口部分を構成し、第2のセグメントは、第1のセグメントに連続し、かつ加熱炉の中心部分を構成し、第3のセグメントは、第2のセグメントに連続し、かつ鉛粉を加熱炉外に排出する出口部分を構成する。そして、第1の加熱温度は、第1のセグメントにおける加熱温度が、第2のセグメントにおける加熱温度および第3のセグメントにおける加熱温度よりも低くならないように設定する。具体的には、第1の加熱工程をこのような3つのセグメントで区分けした上で、第1の加熱工程の入口付近で、鉛粉の投入により温度が下がることを想定して、予め加熱温度を高く設定しておく。第1の加熱工程でこのような温度調整を行うことにより、第1の加熱工程全体で加熱温度を一定に保つことができる。そのため、第1の加熱工程における鉛粉の酸化反応を安定的に行うことができる。
【0016】
鉛粉の酸化度は、好ましくは67%以上に調整する。このような範囲の酸化度を有する鉛粉を用いることにより、鉛丹化のための処理時間を短くし、かつ鉛丹の生産量を増やしながら鉛丹化度を高くすることができる。
【0017】
第2の加熱温度は、375〜480℃に調整するのが好ましい。この温度範囲は、第1の加熱工程で加熱した鉛粉を鉛丹化するのに適した温度範囲である。なお、第2の加熱温度が375℃に満たない場合は、鉛丹化が十分に進まないおそれがある。また、第2の加熱温度が480℃を超える場合は、鉛粉の酸化反応が激しくなり過ぎて、一酸化鉛がβ化し易くなり、また残存する金属鉛とともに溶融し易くなる。その結果、鉛粉の鉛丹化に時間がかかり、また得られた鉛粉も鉛丹化度が低いものとなるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る鉛蓄電池用活物質材料の製造方法の工程フローを示す。
図2】本発明の実施の形態における第1の加熱工程の概略構成を示す。
図3】本発明の実施の形態における第2の加熱工程の概略構成を示す。
図4】従来の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法の工程フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の鉛蓄電池用活物質材料の製造方法の実施の形態として鉛蓄電池用の正極活物質の材料となる鉛丹を製造する工程フローを示す図である。図1では、まず鉛丹の原料となる鉛粉を準備する。具体的には、鉛粉生成工程において、金属鉛のインゴットをボールミルで粉砕して鉛粉を生成する(ステップST1)。ボールミルによる粉砕は、得られる鉛粉の酸化度が63〜78%になるように行う。
【0020】
ステップST1で準備した鉛粉は、第1の加熱工程において第1の加熱温度で加熱する(ステップST2)。第1の加熱工程における加熱は、後述の第2の加熱工程(本加熱)に対して予備的に行う加熱(予備加熱)である。第1の加熱工程では、第1の加熱温度を鉛の融点付近の温度(300〜330℃)に調整して、鉛粉中の一酸化鉛および金属鉛が、鉛丹化し難い一酸化鉛(β型の一酸化鉛)に転化しないように、または鉛粉中の金属鉛や一酸化鉛が溶融しないように、鉛粉を加熱する。
【0021】
ステップST2で予備加熱が済んだ鉛粉(以下、予備加熱済み鉛粉という)を、第2の加熱工程において第2の加熱温度で加熱する(ステップST3)。第2の加熱工程における加熱は、鉛粉を鉛丹化するための本来的な加熱(本加熱)である。第2の加熱工程では、第2の加熱温度を鉛の融点付近の温度(375℃)から鉛の融点を大きく超えない温度(480℃)までの温度範囲に調整して、加熱済み鉛粉(主成分は一酸化鉛)が、鉛丹化し難いβ型の一酸化鉛に転化しないように、または鉛粉中の金属鉛等が溶融しないように、鉛粉を加熱する。なお、第2の加熱工程では、鉛粉を鉛丹化するための加熱(本加熱)を行う装置として、鉛丹の大量生産が可能な後述する連続式の加熱炉(多段式の加熱炉)を用いた。
【0022】
なお、本例では、第1の加熱工程による予備加熱に続けて第2の加熱工程による本加熱を行っているが、第1の加熱工程と第2の加熱工程の間にさらに第1の加熱工程と同じ予備加熱を1回以上実施してもよい。このように予備加熱を2回以上実施することにより、さらに効率の良い鉛丹化(鉛丹化度の向上、鉛丹生産量の増加)が可能となる。
【0023】
ステップST3で本加熱が済んだ鉛粉(以下、本加熱済み鉛粉という)を、エージング工程で、図示しないサイロにてエージングする(ステップST4)。
【0024】
ステップST4でエージングが済んだ本加熱済み鉛粉は、粉砕・整粒工程で、図示しないパルペライザ(粉砕ハンマおよびパンチングメタルを備える)を用いて粉砕し、粒径を揃える(ステップST5)。具体的には、粉砕ハンマにより本加熱済み鉛粉を粉砕し、粉砕された鉛粉がパンチングメタルにより整粒される。
【0025】
ステップST1〜ST5のうち、ステップST2の第1の加熱工程は、さらに図2に示す構成を備えている。図2は、第1の加熱工程を実行するための予備加熱装置の概略構成を示す図である。予備加熱装置1は、加熱炉3と、加熱炉の内部に配置されて両端が開口する中空のドラム5とを備えている。ドラム5の周方向にドラム5を加熱する図示しないヒータが配置されている。本例では、第1の加熱温度は、このドラムの表面温度(ヒータ温度)に対応する。なお、本例では、加熱炉3の主要部に円筒形のドラム5を用いたが、鉛粉を予備加熱ができる条件が確保できれば、ドラムの形状は任意であり、またドラム式の代わりにコンベア式の加熱炉を用いてもよい。
【0026】
ドラム5の一端5aには、原料の鉛粉を投入するための投入部7が設けられている。投入部7では、原料として準備した鉛粉を投入口7aから投入してドラム5に送る。ドラム5の他端5bには、予備加熱が済んだ鉛粉を取り出すための取出部9が設けられている。取出部9では、予備加熱済み鉛粉を取出口9aから取り出して第2の加熱工程へと送る。
【0027】
取出部9には、ドラム5内の温度を下げるために、および鉛粉の酸化反応に必要な酸素を供給するために、ドラム5内に空気を送り込む吸気口11が設けられている。一方、投入部7には、取出部9の吸気口11から供給された空気を外部に排気し、鉛粉を加熱した際にドラム5内で発生した粉塵を外部に排出する排出口13が設けられている。吸気口11及び排出口13を介した空気の吸排気は、ファン15,17により行われる。なお、排出口13から排出された粉塵は、図示しない集塵機により回収されるようになっている。
【0028】
ドラム5の内部は、回転するように構成されている。ドラム5の内部が、一定の回転数で回転することにより、鉛粉を撹拌しながら予備加熱を行うことができる。すなわち、鉛粉の撹拌は、予備加熱を行うドラム5が一定の回転数で回転することにより行われる。
【0029】
加熱炉3内のドラム5は、投入部7側から取出部9側に向かって、入口部分5a(加熱炉の第1のセグメント)、中央部分5b(加熱炉の第2のセグメント)及び出口部分5c(加熱炉の第3のセグメント)で構成されている。ドラム5の中央部分5bには、鉛粉の加熱を妨げない位置に間仕切り板19が設置されている。間仕切り板19は、吸気口11から供給された空気がドラム5の内部(出口部分5cから入口部分5a)を通り抜けて排出口13から排気されるときに発生する空気流を遮って、過度の熱排出を防止し、鉛粉に十分な酸素(空気)を供給して酸化を促進させる機能及び効果を有する。これにより、ドラム5内で、入口部分5aの温度が中央部分5b及び出口部分5cの温度よりも低くならないように調整される。なお、ドラム5の各部分5a〜5cには、各部分5a〜5cの温度を測定するための温度計21,23,25がそれぞれ設置されている。
【0030】
本例の第1の加熱工程では、図2に示した1段式の加熱炉を用いたが、鉛丹の製造量に応じて、図2の加熱炉を上下に2段以上重ねた多段式の加熱炉を用いて、予備加熱を行ってもよい。
【0031】
ステップST1〜ST5のうち、ステップST3の第2の加熱工程は、さらに図3に示す構成を備えている。図3は、第2の加熱工程(本加熱)を実行するための本加熱装置2の概略構成を示す図である。本加熱装置2は、加熱炉4と、加熱炉4内に配置された中空のドラム6とで構成されている。
【0032】
加熱炉4では、底部にヒータ(バーナー)8が、上部に炉内の排気ガスまたは熱を外部に排出するための排出口28が、それぞれ配置されている。
【0033】
ドラム6は、さらに上下4段に並ぶ4つの部分ドラム(第1の部分ドラム12、第2の部分ドラム14、第3の部分ドラム16、第4の部分ドラム18)で構成されている。各部分ドラム12,14,16,18の内部は、それぞれ回転するように構成されている。また、上下に並ぶ2つの部分ドラムは、それぞれ上下に延びる連通路(第1の連通路20、第2の連通路22、第3の連通路24)を介して連通する。
【0034】
第1の部分ドラム12には、第1の加熱工程で予備加熱が完了した鉛粉LPを投入するための投入口26が設けられている。なお、投入口26は、図2の予備加熱装置の取出口9aに連通して配置されている。また、第4の部分ドラム18には第2の加熱工程で本加熱が完了して生成された鉛丹RLを取り出す取出口28が設けられている。
【0035】
本例では、投入口26から投入した鉛粉LPを第1の部分ドラム12から第4の部分ドラム18まで加熱しながら送り出し、生成した鉛丹を取出口28から取り出す。このとき第1の部分ドラム12は380〜440℃に、第2の部分ドラム14は410〜440℃に、第3の部分ドラム16は420〜460℃に、第4の部分ドラム18は440〜480℃に調整されている。なお、第2の加熱温度は、各部分ドラム12,14,16,18の表面温度のうち最大温度に対応する。
【0036】
なお、本例では、円筒形の部分ドラムを用いたが、鉛粉の本加熱ができる条件が確保できれば、部分ドラムの形状は任意であり、またドラム式の代わりにコンベア式の加熱炉を用いてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について、比較例と比較した効果を説明する。表1には、実施例1〜20及び比較例1〜6の条件および結果が示されている。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例1)
鉛粉(原料)の酸化度を63%とし、第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を300℃、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を450℃とする条件に設定した。予備加熱では、2段式の加熱炉を用い、本加熱では、連続式(4段式)の加熱炉を用いた。
【0040】
(実施例2〜8)
鉛粉の酸化度を、65%、67.5%、69.5%、74.5%、76.5%、78%、82%とした以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
【0041】
(実施例9)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を300℃としたこと等、実施例1と同じ条件に設定した。
【0042】
(実施例10〜13)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を310℃、320℃、325℃、330℃、とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0043】
(実施例14〜16)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を340℃とし、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を375℃、450℃、480℃とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0044】
(実施例17)
第1の加熱工程(予備加熱)において、加熱温度を325℃とし、入口温度が加熱温度より低くならないように温度を調節した。なお、予備加熱における撹拌の回転数は、50rpm(一定)に設定した。
【0045】
(実施例18)
第1の加熱工程(予備加熱)において、撹拌の回転数を100rpm(一定)に設定した以外は実施例17と同じ条件に設定した。
【0046】
(実施例19)
第1の加熱工程(予備加熱)において、第1のセグメント(入口部分)の温度を320℃とし、第2のセグメント(中央部分)及び第3のセグメント(出口部分)の温度を310℃にした以外は、実施例18と同じ条件に設定した。
【0047】
(比較例1)
鉛粉(原料)の酸化度を70%とし、予備加熱を行わずに、鉛丹化のための本加熱を450℃で行う。本加熱では、連続式(4段式)の加熱炉を用いた。比較例1は、鉛粉から鉛丹を製造する従来の方法に相当する。
【0048】
(比較例2)
鉛粉の酸化度を70%とした以外は、比較例1と同じ条件に設定した。
【0049】
(比較例3)
鉛粉の酸化度を60%に調整した以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
【0050】
(比較例4及び5)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を250℃、340℃とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0051】
(比較例6)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を340℃とし、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を300℃とした以外は、実施例13と同じ条件に設定した。
【0052】
また、表1において、各種条件および結果の確認は、以下のように行った。
【0053】
[鉛粉の酸化度(%)]
鉛粉の酸化度は、酢酸滴定により測定する。酢酸滴定は、以下の手順で行う。酢酸水溶液(比重1.010/35℃)80mlをメスシリンダで計量し、このメスシリンダを加温槽で35±2℃の範囲に調整する。一方、水分計(株式会社エー・アンド・デイ製、MX−50)にアルミカップを載せ、測定用の鉛粉4gを計量する。計量したメスシリンダの酢酸とアルミカップの鉛粉をビーカーに移して攪拌する。撹拌は、鉛粉がダマにならないように鉛粉を潰しながら、金属鉛が凝集してビーカー内の溶液が透明になるまで行う。なお、約2〜3分間の撹拌で、溶液は透明になる。溶液が透明になったら、上澄みを除去し、水分計(測定条件:130℃で15分間加熱)で水分を除去した後の金属鉛の質量を測定する。
【0054】
[予備加熱の加熱温度]
加熱炉3(ドラム5)の表面温度(第1の加熱温度)を、予備加熱の加熱温度として測定した。なお、予備加熱は、ドラム5内を撹拌しながら行う。撹拌方式には、パドルによる攪拌方式を採用する。
【0055】
[本加熱の加熱温度]
加熱炉内の雰囲気温度(加熱炉がドラム式の場合はドラム5内の温度)およびドラム5の表面温度を本加熱の加熱温度として測定する。なお、炉内の雰囲気温度は、設定温度以下に維持する。ドラム表面温度は、設定温度以上となるように制御する。本加熱でもパドルによる撹拌方式を採用した撹拌を行う。
【0056】
[鉛丹化度]
鉛丹化度(%)は、焼成物中のPb34の含有量(質量%)(鉛丹化率ともいう)である。この鉛丹化度は、ヨウ素滴定により測定する。ヨウ素滴定は、以下の手順で行う。まず、測定試料に酢酸−酢酸アンモニウム溶液と0.1Nのチオ硫酸ナトリウム溶液とを加えて撹拌し完全に溶解させる。次いで、この試料溶液に、デンプン溶液を加えて、0.1Nのヨウ素溶液を滴下し、ヨウ素デンプン反応による紫色の呈色を示した時点を終点として、溶液中に残っているチオ硫酸ナトリウムイオンを滴定する。空実験も同様に行い、滴定に使用したヨウ素溶液の量から次式を用いて、Pb34含有量(質量%)を算出する。
【0057】
Pb34含有量(質量%)=[0.3428×(b’−b)×f]/S×100
b’:空実験で滴定時に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
b:試料の滴定に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
f:ヨウ素溶液のファクター
S:試料の量(g)
[鉛丹化の処理時間(h)]
鉛丹化のための処理時間(h)は、一定(予備加熱:0.5h、本加熱:3.0h)にした。
【0058】
[鉛丹の生産量(kg/h)]
鉛丹の生産量(kg/h)は、上記処理時間(一定)内に生産できる鉛丹の量として300〜600kg/hを目安にした。
【0059】
[総合評価]
鉛丹化度および鉛丹の生産量(ベースは処理時間)の各評価結果から、総合評価を行った。総合評価は、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0060】
◎:極めて良好
○:良好
×:不良
なお、鉛丹化度が80%未満の場合または鉛丹の生産量が400kg/h未満の場合は総合評価を「不良×」とし、鉛丹化度が80%以上の場合かつ鉛丹の生産量が400kg/h以上の場合は総合評価を「良好○」とし、「良好○」の中でも特に鉛丹化度が85%以上の場合または鉛丹の生産量が500kg/h以上の場合は総合評価を「極めて良好◎」と判断した。
【0061】
以下、製造条件と結果との関係について説明する。
【0062】
[従来技術(ターゲット)の性能]
まず、表1に示されているように、予備加熱を行わずに鉛粉に直接本加熱を施して鉛丹化を行う従来技術(ターゲット)において、鉛粉の酸化度が高い場合(比較例1)は、鉛丹化度は維持されるものの、鉛丹化の加熱時間が長くなり、また生産量を増やすことはできなかった。また、酸化度が低い場合(比較例2)は、鉛丹化の加熱時間が長くなり、また生産量を増やすことができなかったことに加えて、鉛丹化度も低下した。
【0063】
これに対して、鉛粉に本加熱を施して鉛丹化を行う前に、鉛粉に予備加熱を施すことで、表1に示すように、鉛丹化度を維持しながら、しかも生産量が増えることを確認した。
【0064】
[鉛粉の酸化度との関係]
まず、第1の加熱工程(予備加熱)及び第2の加熱工程(本加熱)の条件を一定にして、投入する鉛粉の酸化度を変化させたところ、鉛粉の酸化度が63%〜78%の条件(実施例1〜8)で、鉛丹化度を低下させずに、さらに生産量を増やすことができた。特に、鉛粉の酸化度が約67%〜80%の条件(実施例3〜8)では、鉛丹化度が大幅に向上した。なお、鉛粉の酸化度が60%の条件(比較例3)では、鉛丹化度は低下した。
【0065】
[予備加熱の加熱温度との関係]
次に、第1の加熱工程(予備加熱)を行う前の鉛粉の酸化度及び第2の加熱工程(本加熱)の条件を一定にして、第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を変化させたところ、予備加熱の加熱温度が300℃〜330℃の条件(実施例9〜13)で、鉛丹化度を低下させずに、しかも生産量を増やすことができた。特に、予備加熱の温度が320℃〜330℃の条件(実施例11〜13)では、生産量を大幅に増やすことができ、鉛丹化度を増加させることができた。なお、予備加熱の加熱温度が250℃の場合(比較例4)及び340℃の場合(比較例5)は、鉛丹化度が低下し、さらに生産量を増やすことはできなかった。
【0066】
[本加熱の加熱温度との関係]
また、鉛粉の酸化度及び第1の加熱工程(予備加熱)の条件を一定にして、第2の加熱温度(本加熱)における加熱温度を変化させたところ、本加熱の加熱温度が375℃から480℃の条件(実施例14〜16)で、鉛丹化度を低下させずに、しかも処理量を増やすことができた。これに対して、本加熱の加熱温度が300℃の場合(比較例6)は、鉛丹化度が低下し、さらに生産量を増やすことはできなかった。
【0067】
[撹拌の有無との関係]
鉛粉の酸化度、予備加熱の加熱温度、本加熱の加熱温度を一定にして、鉛粉を撹拌しながら予備加熱を行った場合(実施例17,18)は、鉛丹化度を増加させることができ、さらに生産量を大幅に増やすことができた。
【0068】
特に、撹拌の回転数を50min-1一定(実施例17)から100min-1一定(実施例18)に上げた場合には、連続運転において鉛粉投入量にバラツキが生じても高い鉛丹化度を維持することができることが判った。
【0069】
[予備加熱の入口温度との関係]
また、実施例12の条件において、予備加熱の加熱温度を、ドラム5の中央部分5b及び出口部分5cの温度に対して入口部分5aの温度が下回らないように(ドラム5の中央部分5b及び出口部分5cの温度と入口部分5aの温度とが同じになるように)予備加熱を行った場合(実施例18,19)、鉛丹化度を向上させることができ、単位時間あたりの生産量を大幅に増やすことができた。
【0070】
以上、本発明の実施の形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態及び実験例に限定されるものではない。例えば、第1の加熱工程で採用する加熱炉の条件等は任意に定めることができる。すなわち、上述の実施の形態および実験例に記載されている態様は、特に記載がない限り、本発明の技術的思想に基づく変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、酸化度の比較的低い鉛粉を、鉛丹化のための本加熱を行う前に、本加熱における加熱温度以下の温度で予備加熱を行うことにより、鉛丹化度を低下させずに、鉛丹化のための処理時間を短縮して生産量を増やすことが可能な、鉛蓄電池用活物質材料の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 予備加熱装置
3 加熱炉
5 ドラム
51 一端
52 他端
5a 入口部分
5b 中央部分
5c 出口部分
7 投入部
7a 投入口
9 取出部
9a 取出口
11 吸気口
13 排気口
15,17 ファン
19 間仕切り板
21,23,25 温度計
図1
図2
図3
図4