【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について、比較例と比較した効果を説明する。表1には、実施例1〜20及び比較例1〜6の条件および結果が示されている。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例1)
鉛粉(原料)の酸化度を63%とし、第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を300℃、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を450℃とする条件に設定した。予備加熱では、2段式の加熱炉を用い、本加熱では、連続式(4段式)の加熱炉を用いた。
【0040】
(実施例2〜8)
鉛粉の酸化度を、65%、67.5%、69.5%、74.5%、76.5%、78%、82%とした以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
【0041】
(実施例9)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を300℃としたこと等、実施例1と同じ条件に設定した。
【0042】
(実施例10〜13)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を310℃、320℃、325℃、330℃、とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0043】
(実施例14〜16)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を340℃とし、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を375℃、450℃、480℃とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0044】
(実施例17)
第1の加熱工程(予備加熱)において、加熱温度を325℃とし、入口温度が加熱温度より低くならないように温度を調節した。なお、予備加熱における撹拌の回転数は、50rpm(一定)に設定した。
【0045】
(実施例18)
第1の加熱工程(予備加熱)において、撹拌の回転数を100rpm(一定)に設定した以外は実施例17と同じ条件に設定した。
【0046】
(実施例19)
第1の加熱工程(予備加熱)において、第1のセグメント(入口部分)の温度を320℃とし、第2のセグメント(中央部分)及び第3のセグメント(出口部分)の温度を310℃にした以外は、実施例18と同じ条件に設定した。
【0047】
(比較例1)
鉛粉(原料)の酸化度を70%とし、予備加熱を行わずに、鉛丹化のための本加熱を450℃で行う。本加熱では、連続式(4段式)の加熱炉を用いた。比較例1は、鉛粉から鉛丹を製造する従来の方法に相当する。
【0048】
(比較例2)
鉛粉の酸化度を70%とした以外は、比較例1と同じ条件に設定した。
【0049】
(比較例3)
鉛粉の酸化度を60%に調整した以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
【0050】
(比較例4及び5)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を250℃、340℃とした以外は、実施例9と同じ条件に設定した。
【0051】
(比較例6)
第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を340℃とし、第2の加熱工程(本加熱)における加熱温度を300℃とした以外は、実施例13と同じ条件に設定した。
【0052】
また、表1において、各種条件および結果の確認は、以下のように行った。
【0053】
[鉛粉の酸化度(%)]
鉛粉の酸化度は、酢酸滴定により測定する。酢酸滴定は、以下の手順で行う。酢酸水溶液(比重1.010/35℃)80mlをメスシリンダで計量し、このメスシリンダを加温槽で35±2℃の範囲に調整する。一方、水分計(株式会社エー・アンド・デイ製、MX−50)にアルミカップを載せ、測定用の鉛粉4gを計量する。計量したメスシリンダの酢酸とアルミカップの鉛粉をビーカーに移して攪拌する。撹拌は、鉛粉がダマにならないように鉛粉を潰しながら、金属鉛が凝集してビーカー内の溶液が透明になるまで行う。なお、約2〜3分間の撹拌で、溶液は透明になる。溶液が透明になったら、上澄みを除去し、水分計(測定条件:130℃で15分間加熱)で水分を除去した後の金属鉛の質量を測定する。
【0054】
[予備加熱の加熱温度]
加熱炉3(ドラム5)の表面温度(第1の加熱温度)を、予備加熱の加熱温度として測定した。なお、予備加熱は、ドラム5内を撹拌しながら行う。撹拌方式には、パドルによる攪拌方式を採用する。
【0055】
[本加熱の加熱温度]
加熱炉内の雰囲気温度(加熱炉がドラム式の場合はドラム5内の温度)およびドラム5の表面温度を本加熱の加熱温度として測定する。なお、炉内の雰囲気温度は、設定温度以下に維持する。ドラム表面温度は、設定温度以上となるように制御する。本加熱でもパドルによる撹拌方式を採用した撹拌を行う。
【0056】
[鉛丹化度]
鉛丹化度(%)は、焼成物中のPb
3O
4の含有量(質量%)(鉛丹化率ともいう)である。この鉛丹化度は、ヨウ素滴定により測定する。ヨウ素滴定は、以下の手順で行う。まず、測定試料に酢酸−酢酸アンモニウム溶液と0.1Nのチオ硫酸ナトリウム溶液とを加えて撹拌し完全に溶解させる。次いで、この試料溶液に、デンプン溶液を加えて、0.1Nのヨウ素溶液を滴下し、ヨウ素デンプン反応による紫色の呈色を示した時点を終点として、溶液中に残っているチオ硫酸ナトリウムイオンを滴定する。空実験も同様に行い、滴定に使用したヨウ素溶液の量から次式を用いて、Pb
3O
4含有量(質量%)を算出する。
【0057】
Pb
3O
4含有量(質量%)=[0.3428×(b’−b)×f]/S×100
b’:空実験で滴定時に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
b:試料の滴定に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
f:ヨウ素溶液のファクター
S:試料の量(g)
[鉛丹化の処理時間(h)]
鉛丹化のための処理時間(h)は、一定(予備加熱:0.5h、本加熱:3.0h)にした。
【0058】
[鉛丹の生産量(kg/h)]
鉛丹の生産量(kg/h)は、上記処理時間(一定)内に生産できる鉛丹の量として300〜600kg/hを目安にした。
【0059】
[総合評価]
鉛丹化度および鉛丹の生産量(ベースは処理時間)の各評価結果から、総合評価を行った。総合評価は、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0060】
◎:極めて良好
○:良好
×:不良
なお、鉛丹化度が80%未満の場合または鉛丹の生産量が400kg/h未満の場合は総合評価を「不良×」とし、鉛丹化度が80%以上の場合かつ鉛丹の生産量が400kg/h以上の場合は総合評価を「良好○」とし、「良好○」の中でも特に鉛丹化度が85%以上の場合または鉛丹の生産量が500kg/h以上の場合は総合評価を「極めて良好◎」と判断した。
【0061】
以下、製造条件と結果との関係について説明する。
【0062】
[従来技術(ターゲット)の性能]
まず、表1に示されているように、予備加熱を行わずに鉛粉に直接本加熱を施して鉛丹化を行う従来技術(ターゲット)において、鉛粉の酸化度が高い場合(比較例1)は、鉛丹化度は維持されるものの、鉛丹化の加熱時間が長くなり、また生産量を増やすことはできなかった。また、酸化度が低い場合(比較例2)は、鉛丹化の加熱時間が長くなり、また生産量を増やすことができなかったことに加えて、鉛丹化度も低下した。
【0063】
これに対して、鉛粉に本加熱を施して鉛丹化を行う前に、鉛粉に予備加熱を施すことで、表1に示すように、鉛丹化度を維持しながら、しかも生産量が増えることを確認した。
【0064】
[鉛粉の酸化度との関係]
まず、第1の加熱工程(予備加熱)及び第2の加熱工程(本加熱)の条件を一定にして、投入する鉛粉の酸化度を変化させたところ、鉛粉の酸化度が63%〜78%の条件(実施例1〜8)で、鉛丹化度を低下させずに、さらに生産量を増やすことができた。特に、鉛粉の酸化度が約67%〜80%の条件(実施例3〜8)では、鉛丹化度が大幅に向上した。なお、鉛粉の酸化度が60%の条件(比較例3)では、鉛丹化度は低下した。
【0065】
[予備加熱の加熱温度との関係]
次に、第1の加熱工程(予備加熱)を行う前の鉛粉の酸化度及び第2の加熱工程(本加熱)の条件を一定にして、第1の加熱工程(予備加熱)における加熱温度を変化させたところ、予備加熱の加熱温度が300℃〜330℃の条件(実施例9〜13)で、鉛丹化度を低下させずに、しかも生産量を増やすことができた。特に、予備加熱の温度が320℃〜330℃の条件(実施例11〜13)では、生産量を大幅に増やすことができ、鉛丹化度を増加させることができた。なお、予備加熱の加熱温度が250℃の場合(比較例4)及び340℃の場合(比較例5)は、鉛丹化度が低下し、さらに生産量を増やすことはできなかった。
【0066】
[本加熱の加熱温度との関係]
また、鉛粉の酸化度及び第1の加熱工程(予備加熱)の条件を一定にして、第2の加熱温度(本加熱)における加熱温度を変化させたところ、本加熱の加熱温度が375℃から480℃の条件(実施例14〜16)で、鉛丹化度を低下させずに、しかも処理量を増やすことができた。これに対して、本加熱の加熱温度が300℃の場合(比較例6)は、鉛丹化度が低下し、さらに生産量を増やすことはできなかった。
【0067】
[撹拌の有無との関係]
鉛粉の酸化度、予備加熱の加熱温度、本加熱の加熱温度を一定にして、鉛粉を撹拌しながら予備加熱を行った場合(実施例17,18)は、鉛丹化度を増加させることができ、さらに生産量を大幅に増やすことができた。
【0068】
特に、撹拌の回転数を50min
-1一定(実施例17)から100min
-1一定(実施例18)に上げた場合には、連続運転において鉛粉投入量にバラツキが生じても高い鉛丹化度を維持することができることが判った。
【0069】
[予備加熱の入口温度との関係]
また、実施例12の条件において、予備加熱の加熱温度を、ドラム5の中央部分5b及び出口部分5cの温度に対して入口部分5aの温度が下回らないように(ドラム5の中央部分5b及び出口部分5cの温度と入口部分5aの温度とが同じになるように)予備加熱を行った場合(実施例18,19)、鉛丹化度を向上させることができ、単位時間あたりの生産量を大幅に増やすことができた。
【0070】
以上、本発明の実施の形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態及び実験例に限定されるものではない。例えば、第1の加熱工程で採用する加熱炉の条件等は任意に定めることができる。すなわち、上述の実施の形態および実験例に記載されている態様は、特に記載がない限り、本発明の技術的思想に基づく変更が可能であることは勿論である。