特許第6620935号(P6620935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620935
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】樹脂包埋試料およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/36 20060101AFI20191209BHJP
   G01N 1/32 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G01N1/36
   G01N1/32 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-33854(P2016-33854)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-62223(P2017-62223A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-187324(P2015-187324)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 公二
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−178651(JP,A)
【文献】 特許第4759533(JP,B2)
【文献】 特公昭60−006212(JP,B2)
【文献】 特開2004−347330(JP,A)
【文献】 特開2010−138954(JP,A)
【文献】 特開昭57−014746(JP,A)
【文献】 特開昭56−051649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である粒状試料、熱硬化性樹脂および固形潤滑剤を含む試料含有材料からなり、前記粒状試料および前記固形潤滑剤が前記熱硬化性樹脂に包埋されて構成される固化ペレットを備え
前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であり、
前記固形潤滑剤がグラファイトであることを特徴とする、樹脂包埋試料。
【請求項2】
前記固化ペレットは、分析面として、前記粒状試料が露出するように研磨されてなる研磨面を有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂包埋試料。
【請求項3】
前記固化ペレットの周囲に設けられ、当該固化ペレットを保持する充填部を備え、
前記充填部が、熱硬化性樹脂を含む充填材料からなり、前記固化ペレットと一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂包埋試料。
【請求項4】
前記粒状試料が粒状鉱石から構成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の樹脂包埋試料。
【請求項5】
分析対象である粒状試料、熱硬化性樹脂および固形潤滑剤を含む試料含有材料を加圧成形により固形化し、ペレット成形体を形成する固形化工程と、
前記ペレット成形体を加熱し、前記熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、前記粒状試料および前記固形潤滑剤が前記熱硬化性樹脂に包埋されて構成される固化ペレットを形成する溶融固化工程と、を有し
前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であり、
前記固形潤滑剤がグラファイトであることを特徴とする、樹脂包埋試料の作製方法。
【請求項6】
前記溶融固化工程の後、前記固化ペレットの表面を研磨することにより、分析面として、前記粒状試料が露出する研磨面を形成する研磨工程を有することを特徴とする、請求項に記載の樹脂包埋試料の作製方法。
【請求項7】
前記溶融固化工程では、前記ペレット成形体の周囲に、熱硬化性樹脂を含む充填材料を充填した後に、前記ペレット成形体とともに、前記ペレット成形体の周囲を充填する前記充填材料を加熱し、それぞれに含まれる前記熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、前記固化ペレットとともに、当該固化ペレットの周囲に設けられ前記固化ペレットを保持する充填部を前記固化ペレットと一体的に形成することを特徴とする、請求項5又は6に記載の樹脂包埋試料の作製方法。
【請求項8】
前記粒状試料は、粒状鉱石から構成されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の樹脂包埋試料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂包埋試料およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅、鉛、亜鉛、ニッケル等の非鉄金属、金等の貴金属は、工業的に極めて重要な材料である。このような金属は、自然界では、通常、当該金属元素を含む酸化物、硫化物等の化合物(鉱物)として存在している。これを鉱石として採掘し、破砕、選鉱、製錬等の各処理工程を経て、段階的に金属の純度を高めることにより、最終的に、たとえば、99.99%以上の純度を有する金属(地金)として得ることができる。
【0003】
採掘される鉱石は破砕されると、ある程度の粒度を有する鉱石粒子となる。当該鉱石粒子は、1つの鉱物から構成される鉱石粒子(単体鉱)と、複数の鉱物から構成される鉱石粒子(結合鉱)と、に分けることができる。通常、鉱石中に所望の金属が含まれる割合(品位)は非常に小さく、たとえば、数%以下である。そのため、鉱石の選鉱処理では、鉱石粒子(単体鉱および結合鉱)から、所望の金属が含まれる鉱物(有用鉱物)と、所望の金属が含まれない鉱物(不用鉱物)と、を分離選別して、有用鉱物を出来る限り多く回収することにより、品位が数%以下の鉱石を、品位が数十%程度の精鉱とする必要がある。
【0004】
選鉱工程では、鉱物の物性を利用して鉱物の分離・回収を行う方法が行われている。具体的な選鉱処理として、鉱物の濡れ性を利用して分離・回収を行う浮遊選鉱、鉱物間の比重差を利用して分離回収を行う比重選鉱等が知られている。
【0005】
選鉱工程における精鉱の品位、回収率等は、処理対象の鉱石に含まれる鉱物の存在状態(種類、含有量、粒度分布、結合状態、単体鉱の存在割合(単体分離度)等)に左右される。したがって、選鉱処理前には、鉱物の存在状態に応じて、処理条件を決定する必要がある。また、選鉱処理後の精鉱における鉱物の存在状態を把握して、選択した処理条件の検証を行う必要もある。そこで、選鉱処理前後の鉱石から、試料としてサンプリングした鉱石を分析して、鉱物の存在状態を定量的に評価し、これを選鉱工程にフィードバックしている。
【0006】
鉱物の存在状態を定量的に分析する方法として、MLA(Mineral Liberation Analyzer)のような分析装置を用いて、鉱物を構成する元素の化学的情報等を取得して分析する方法、あるいは、光学顕微鏡を用いて目視観察により鉱物の光学的情報等を取得して分析する方法(たとえば、特許文献1および2を参照)がある。どちらの方法においても、分析に供する前に、試料を断面研磨して、鉱石粒子の断面が露出した平滑な面、すなわち、鉱石粒子に包含されている鉱物が露出した平滑な面(研磨面)を得る必要がある。
【0007】
試料は破砕あるいは選鉱された鉱石であるため、当該試料の大きさは粉状、顆粒状から魁状と様々である。たとえば、試料が粉状である場合は、粉状の試料を樹脂で包埋して、試料を樹脂に固定してから断面研磨を行う。樹脂包埋には、主剤と硬化剤とを混合して硬化させる2液混合タイプのエポキシ樹脂が一般的に用いられている。試料が配置された試料作製用の容器内に、エポキシ樹脂を注入して、所定の温度で所定時間(例えば、12時間)加熱して硬化させることにより、試料が樹脂に包埋された樹脂包埋試料が得られる(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−347330号公報
【特許文献2】特開2000−28604号公報
【特許文献3】特開2013−167525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、粉状の鉱石(鉱石粒子)を樹脂包埋すると、液状樹脂が硬化するまでの間、鉱石粒子は固定されずに樹脂中を移動(沈降)してしまう。選鉱処理前後の鉱石粒子には比重の異なる多種多様な鉱物が存在し、かつ鉱石粒子の粒度にばらつきがあるため、液状樹脂中の鉱石粒子の移動速度(沈降速度)にも差が生じる。その結果、硬化後の樹脂包埋試料を断面研磨すると、研磨面における鉱石粒子の分布が、選鉱工程における鉱石粒子の分布からずれ、偏りが生じてしまうという問題があった。
【0010】
このような偏りが生じてしまうと、研磨面における鉱物の存在状態(種類、含有量、粒度分布、結合状態、単体鉱の存在割合(単体分離度)等)も変化するため、作製した試料は、実際の選鉱工程における鉱物の存在状態を正しく反映していないことになる。そうすると、当該試料を分析して得られる結果は、選鉱処理条件を決定するための情報、あるいは選鉱処理条件の検証を行うための情報としての価値が低くなってしまい、ひいては、選鉱の処理条件の最適化ができず、選鉱の品位、回収率等に大きな影響を与えてしまう。
【0011】
このような問題に対処する方法としては、粒状試料(鉱石粒子)を、液状樹脂を硬化させた樹脂ではなく、加熱により溶融固化する熱硬化性樹脂で包埋する方法が考えられる。具体的には、まず、粒状試料を熱硬化性樹脂に混合して組成物を形成する。続いて、組成物を加圧成形して成形体を形成する。そして、その成形体を加熱し、熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、樹脂包埋試料を作製する。この方法によれば、液状樹脂を硬化させて樹脂包埋試料を作製する場合と比べて、試料に含まれる鉱石粒子の比重差に起因した偏りを抑制することができ、分析対象である鉱石粒子の存在状態を正しく保持することが可能となる。
【0012】
しかしながら、熱硬化性樹脂を用いて樹脂包埋試料を作製する場合、以下のように樹脂包埋試料の作製効率が低くなるという問題がある。すなわち、粒状試料と熱硬化性樹脂との混合物を、例えば加圧装置のダイスに充填してパンチにより加圧成形すると、混合物が加圧とともにダイスとパンチとのわずかな隙間に侵入し、パンチとダイスとが固着してしまうことがある。この場合、混合物にかかる圧力が不十分となり、成形体の固形化が進まないため、その強度が低くなってしまう。成形体の強度が低いと、加圧成形の後、成形体をダイスから取り出す際に成形体が破砕するおそれがある。成形体が破砕してしまった場合、再度、混合からやり直す必要があるため、作製効率が低くなってしまう。また、強度の低い成形体を溶融固化させて得られる樹脂包埋試料は、強度が低く、脆いため、研磨しにくい傾向がある。
【0013】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、粒状試料の比重差に起因する存在状態の偏りが小さく、かつ取り扱うのに十分な強度を有する樹脂包埋試料およびその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鉱石粒子などの粒状試料と熱硬化性樹脂との混合物に固形潤滑剤を配合することにより、混合物の滑り性を向上させ、混合物が加圧装置におけるダイスとパンチとの隙間に侵入することに起因する上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の態様は、
分析対象である粒状試料、熱硬化性樹脂および固形潤滑剤を含む試料含有材料からなり、前記粒状試料および前記固形潤滑剤が前記熱硬化性樹脂に包埋されて構成される固化ペレットを備えることを特徴とする、樹脂包埋試料が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様の樹脂包埋試料において、
前記固形潤滑剤がグラファイトである。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の樹脂包埋試料において、
前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかの樹脂包埋試料において、
前記固化ペレットは、分析面として、前記粒状試料が露出するように研磨されてなる研磨面を有する。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかの樹脂包埋試料において、
前記固化ペレットの周囲に設けられ、当該固化ペレットを保持する充填部を備え、
前記充填部が、熱硬化性樹脂を含む充填材料からなり、前記固化ペレットと一体的に形成されている。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の態様のいずれかの樹脂包埋試料において、
前記粒状試料が粒状鉱石から構成される。
【0021】
本発明の第7の態様は、
分析対象である粒状試料、熱硬化性樹脂および固形潤滑剤を含む試料含有材料を固形化し、ペレット成形体を形成する固形化工程と、
前記ペレット成形体を加熱し、前記熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、前記粒状試料および前記固形潤滑剤が前記熱硬化性樹脂に包埋されて構成される固化ペレットを形成する溶融固化工程と、を有する、樹脂包埋試料の作製方法が提供される。
【0022】
本発明の第8の態様は、第7の態様の樹脂包埋試料の作製方法において、
前記固形潤滑剤がグラファイトである。
【0023】
本発明の第9の態様は、第7又は第8の態様の樹脂包埋試料の作製方法において、
前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である。
【0024】
本発明の第10の態様は、第7〜第9の態様のいずれかの樹脂包埋試料の作製方法において、
前記溶融固化工程の後、前記固化ペレットの表面を研磨することにより、分析面として、前記粒状試料が露出する研磨面を形成する研磨工程を有する。
【0025】
本発明の第11の態様は、第7〜第10の態様のいずれかの樹脂包埋試料の作製方法において、
前記溶融固化工程では、前記ペレット成形体の周囲に、熱硬化性樹脂を含む充填材料を充填した後に、前記ペレット成形体とともに、前記ペレット成形体の周囲を充填する前記充填材料を加熱し、それぞれに含まれる前記熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、前記固化ペレットとともに、当該固化ペレットの周囲に設けられ前記固化ペレットを保持する充填部を前記固化ペレットと一体的に形成する。
【0026】
本発明の第12の態様は、第7〜第11の態様のいずれかの樹脂包埋試料の作製方法において、
前記粒状試料は、粒状鉱石から構成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、粒状試料の比重差に起因する存在状態の偏りが小さく、かつ取り扱うのに十分な強度を有する樹脂包埋試料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態に係る樹脂包埋試料の模式的な斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る樹脂包埋試料の作製方法を説明するための工程図である。
図3図3は、実施例1において加圧成形により形成されたペレット成形体の示す画像である。
図4図4は、実施例1にかかる樹脂包埋試料の研磨面についての光学顕微鏡観察像を示す画像である。
図5図5は、実施例1にかかる樹脂包埋試料の研磨面についての反射電子像を示す画像である。
図6図6は、比較例1において加圧成形により形成されたペレット成形体の示す画像である。
図7図7は、比較例1にかかる樹脂包埋試料の研磨面についての光学顕微鏡観察像を示す画像である。
図8図8は、比較例1にかかる樹脂包埋試料の研磨面についての反射電子像を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.樹脂包埋試料
1−1 固化ペレット
1−2 充填部
2.樹脂包埋試料の作製方法
2−1 準備工程
2−2 固形化工程
2−3 溶融固化工程
2−4 研磨工程
2−5 その他
3.樹脂包埋試料の分析
4.本実施形態の効果
5.変形例
【0030】
<1.樹脂包埋試料>
以下、本発明の一実施形態にかかる樹脂包埋試料について図を用いて説明をする。図1は、本発明の一実施形態にかかる樹脂包埋試料の模式的な斜視図である。
【0031】
本実施形態の樹脂包埋試料1は、粒状試料11(以下、単に試料11ともいう)を包埋する固化ペレット10と、固化ペレット10の研磨面10a以外の周囲を取り囲むように形成される充填部20とを備え、固化ペレット10の周囲を充填部20が覆う2層構造を有している。
【0032】
<1−1.固化ペレット>
固化ペレット10は、試料11と熱硬化性樹脂と固形潤滑剤とを含む試料含有材料をペレット成形体に固形化した後に加熱することにより、熱硬化性樹脂が溶融固化されて形成されるペレットである。この固化ペレット10においては、試料11が熱硬化性樹脂中に十分に保持されるように包埋されており、試料11と熱硬化性樹脂とが一体化されている。また、固化ペレット10には、試料11とともに、固形潤滑剤が含有されている。
【0033】
固化ペレット10は、表面の研磨により形成された研磨面10aを有している。この研磨面10aには、試料11の一部が露出しており、実際の選鉱工程中の鉱石粒子に含まれる鉱物の存在状態が反映されることになる。樹脂包埋試料1を鉱物分析に供する場合、この研磨面10aを被分析面として分析する。
【0034】
なお、固化ペレット10の形状は特に限定されないが、例えば、径が20mm程度、高が2〜6mm程度の円柱状とすることができる。
【0035】
(粒状試料)
粒状試料11は、例えば、鉱物分析に供される粒状鉱石から構成されており、単体鉱あるいは結合鉱からなる鉱石粒子の集合体である。鉱石粒子は種々の鉱物を包含しており、たとえば、銅鉱石は、黄銅鉱(Chalcopyrite:CuFeS2)、輝銅鉱(Chalcocite:Cu2S)、斑銅鉱(Bornite:Cu5FeS4)、黄鉄鉱(Pyrite:FeS2)、脈石(Gangue:珪酸塩鉱物、酸化鉱物等)等の鉱物を含んでいる。粒状鉱石は、粉状であってもよいし、粉よりも粒子径が大きな顆粒状であってもよい。なお、粒状鉱石には、たとえば、選鉱処理前の鉱石が含まれてもよいし、選鉱処理工程後の精鉱が含まれてもよい。
【0036】
試料11の粒子径は、破砕の程度、含まれる鉱物の種類等により変化するが、たとえば、10μmから200μm程度の粒度分布を有している。
【0037】
(熱硬化性樹脂)
固化ペレット10を構成する熱硬化性樹脂は、加熱により溶融固化して試料11を保持・固定するものである。熱硬化性樹脂によれば、加熱により溶融状態となった後に、さらに加熱することにより架橋反応等の3次元的な硬化反応が進行し、流動性を失って固化するため、溶融状態となっている時間を短時間にできる。つまり、液状樹脂と比べて固化するまでの時間を短くできる。そのため、試料11の沈降を抑制し、試料11の比重差に起因する存在状態の偏りを抑制することができる。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、フェノール樹脂であることが好ましい。フェノール系樹脂は、硬化後の硬度が研磨に適した硬度となっており、さらに分析に用いる電子線に強く、電子線が照射されても変形が生じないからである。固化ペレット10において、熱硬化性樹脂は試料11の隙間に一様に入り込んでいる。熱可塑性樹脂としてフェノール系樹脂を用いることにより、樹脂包埋試料1を、特にMLA等の自動分析装置を用いて分析する場合には、研磨面10aの分析結果(たとえば、反射電子像)において、試料11と、試料11の隙間を占めているフェノール系樹脂と、を比較すると、明確な差(たとえば、輝度、コントラスト等)が生じる。そのため、当該装置に付属の解析ソフトウェアが、分析対象である試料11のみを認識しやすく、フェノール系樹脂が鉱石粒子として誤検出されることはない。なお、熱可塑性樹脂の形態としては、試料11や固形潤滑剤と良好に混合する観点から粉状とすることが好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂は、例えば、粉状の形態で試料11と混合された後に溶融固化される。そのため、熱硬化性樹脂は試料11の隙間に十分行き渡ることができ、溶融固化後の研磨面10aにおいても、樹脂が存在していない部分、いわゆる「す」が存在しない。そのため、自動分析装置を用いて分析する場合に、「す」が鉱石粒子として誤検出されることを防止できる。
【0040】
(固形潤滑剤)
固形潤滑剤は、試料11および熱硬化性樹脂を含む試料含有材料に配合することにより、その摩擦抵抗を低減し、滑り性を向上させるものである。固形潤滑剤としては、例えばグラファイトや二硫化モリブデン、滑石などがあるが、樹脂包埋試料1において試料11を明確に判別する観点からはグラファイトが好ましい。本発明者の検討によると、二硫化モリブデンや滑石などは、フェノール樹脂よりも構成元素の平均原子番号が大きく、MLA測定時の反射電子(BSE:Back Scattered Electron)像において、フェノール樹脂よりも輝度が高くなるため、鉱石粒子として誤検出されて、測定値に影響を及ぼすおそれがある。これに対して、グラファイトは、炭素からなるので、BSE像において、炭素を含むフェノール樹脂と同程度の輝度となり、測定に干渉することがない。また、グラファイトは、光学顕微鏡により試料11と判別することもできる。つまり、グラファイトによれば、試料11を、誤検出することなく、分析することが可能となる。なお、固形潤滑剤の形態としては、試料11や熱硬化性樹脂と均一に混合させる観点からは粉状であることが好ましい。
【0041】
(配合)
固化ペレット10を形成する試料含有材料において、試料11および固形潤滑剤それぞれの配合量は、以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、試料11は、体積で0.2ml以上3ml以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂と固形潤滑剤とは、その合計が、試料11に対して、体積割合で3倍以上10倍以下であることが好ましい。固形潤滑剤の体積割合は、熱硬化性樹脂よりも大きいことが好ましい。具体的には、固形潤滑剤の体積割合が、熱硬化性樹脂の体積割合の2〜4倍程度であることが好ましい。
【0042】
<1−2.充填部>
充填部20は、固化ペレット10を保持するものであり、熱硬化性樹脂を含む充填材料からなり、固化ペレット10と一体的に形成されている。本実施形態では、図1に示すように、研磨面10aを除く固化ペレット10の周囲に設けられる。
後述するように、樹脂包埋試料1は表面を研磨し、包埋する試料11を表面に露出させることで測定に供されるが、研磨時には樹脂包埋試料1を治具(ホルダー)などで保持するため、樹脂包埋試料1にはホルダーに固定できるような所定のサイズが必要とされる。ただし、樹脂包埋試料1の全体に試料11を含有させても、研磨されるのは数mm程度であるため、大部分は分析されず、無駄となってしまう。この点、図1に示すように、試料11を包埋する固化ペレット10のサイズを小さくするとともに、固化ペレット10を保持する充填部20を設けて樹脂包埋試料1を構成することにより、試料11の使用量を削減することが可能となる。しかも、試料11の使用量が少なくなることにより、熱硬化性樹脂と均一に混合しやすくなるので、作製効率を高めることができる。
【0043】
充填部20を形成する充填材料は、固化ペレット10を形成する熱硬化性樹脂と同種の熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。具体的には、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより、充填部20を固化ペレット10と一体的に形成しやすくなるとともに、充填部20の硬度を固化ペレット10の硬度と同程度にすることができるため、樹脂包埋試料1の研磨が容易となる。しかも、電子線にも強いため、変形が生じにくくなる。
【0044】
充填材料には、フィラーを含有させることが好ましい。後述するように、充填部20は、熱間埋込装置などを用いて充填材料を溶融固化させることにより形成されるが、充填材料が熱硬化性樹脂のみを含む場合、溶融固化後に熱硬化性樹脂が装置に付着し、作製された樹脂包埋試料1を装置から取り出しにくくなるおそれがある。この点、熱硬化性樹脂にフィラーを含有させることにより、樹脂包埋試料1の付着を抑制し、装置から取り出しやすくすることができる。なお、フィラーとしては、例えば、木粉や鉱物粉、ガラス繊維等を用いることができる。
【0045】
<2.樹脂包埋試料の作製方法>
次に、上記の樹脂包埋試料1を作製する方法について図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる樹脂包埋試料1の作製方法を説明するための工程図である。本実施形態の作製方法は、準備工程S10と、固形化工程S20と、溶融固化工程S30と、研磨工程S40と、を有する。以下、各工程について詳述する。
【0046】
(準備工程S10)
まず、固化ペレット10を形成する試料含有材料と、充填部20を形成する充填材料を準備する。
【0047】
試料含有材料は、分析を行う粒状試料11と、粒状試料11を包埋させる熱硬化性樹脂と、固形潤滑剤とを混合することにより調製する。本実施形態では、粒状試料11として粒状鉱石を、熱硬化性樹脂として粉状のフェノール樹脂を、そして、固形潤滑剤としてグラファイトを、それぞれ準備する。フェノール樹脂を粉状とするのは、粒状鉱石と均一に混合することができるからである。より均一に混合させる観点からは、粉状フェノール樹脂の粒度を、粒状鉱石の粒度と同程度とすることが好ましい。後述する溶融固化工程S30において熱硬化性樹脂を粒状鉱石の隙間に十分行き渡らせるために、熱硬化性樹脂の粒度は粒状鉱石の粒度分布の範囲内であることが好ましい。なお、フェノール樹脂の形態は、粉状に限定されず、粒状鉱石の形状に応じて適宜変更すればよく、例えば試料が顆粒状であれば、顆粒状とするとよい。
【0048】
準備した粒状鉱石、粉状フェノール樹脂およびグラファイトを所定量秤量し混合することで、試料含有材料として、粉状の混合物を得る。混合時には、各成分が均一に混ざるようにし、かつ粒状鉱石に過剰な力を加えないようにする。粒状鉱石に過剰な力が加わると、粒状鉱石が砕かれて粒度が変わってしまうからである。粒状鉱石の配合量は、体積で0.2ml以上3ml以下とすることが好ましい。粉状フェノール樹脂とグラファイトとの合計が、粒状鉱石に対して、体積割合で3倍以上10倍以下であることが好ましい。また、グラファイトの体積割合が、粉状フェノール樹脂よりも大きいことが好ましい。具体的には、グラファイトの体積割合が、粉状フェノール樹脂の体積割合の4倍程度であることが好ましい。
【0049】
充填材料は、熱硬化性樹脂とフィラーとを混合することにより調製する。本実施形態では、熱硬化性樹脂として、上述の試料含有材料に含有される粉状フェノール樹脂よりも粒度の大きな、フレーク状や顆粒状のフェノール樹脂を用いる。これにより、後述する溶融固化工程S30において、熱間埋込装置を用いて、ペレット成形体の周囲に充填材料を充填し、溶融固化させる際に、充填材料が装置内部の稼動部に入り込むことを抑制することができる。
【0050】
(固形化工程S20)
続いて、固形化工程S20では、上記で混合した試料含有材料を成型用型(ダイス)に充填し、公知の加圧装置(プレス装置、パンチ、万力等)を用いて、加圧成形を行い、当該粉状の混合物が固形化されたペレット成形体を得る。
【0051】
本実施形態では、試料含有材料にグラファイトを含有させているため、試料含有材料は、摩擦抵抗が低く、滑り性に優れている。そのため、加圧装置にて、ダイスに充填した試料含有材料をパンチにより加圧成形するときに、ダイスとパンチとの隙間に試料含有材料が侵入したとしても、試料含有材料が滑ることにより、パンチとダイスとが固着してしまうことを抑制することができる。その結果、試料含有材料に対して十分に圧力をかけることが可能となり、取り扱うのに十分な強度を有するペレット成形体を形成することができる。このようなペレット成形体によれば、強度が高いので、ダイスから取り出す際に破砕することを抑制することができる。なお、加圧時の圧力は特に制限されず、固形化が可能であって、粒状鉱石が潰れない程度の圧力であればよい。
【0052】
このように、グラファイトを含有させた試料含有材料を固形化することにより、鉱物の存在状態をサンプリングした時点の状態で固定することができる。
【0053】
(溶融固化工程S30)
得られたペレット成形体は、実際の選鉱工程中の鉱物の存在状態が固定されているが、後述する研磨工程S40を行うには強度等が不十分であるため、分析に供される研磨面10aを作製できない。そこで、溶融固化工程S30において、ペレット成形体を加熱して粉状フェノール樹脂を溶融固化させることにより、固化ペレット10を形成する。フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるため、加熱により当該樹脂が溶融した(流動性が高くなった)後に、さらに加熱すると硬化反応により固化する。したがって、フェノール樹脂の溶融固化は短時間で終了する。フェノール樹脂の溶融固化時には、粒状鉱石が溶融した樹脂中に存在することになるが、鉱石の比重差に起因する沈降が生じる前に当該樹脂が固化するため、実際の選鉱工程における鉱物の存在状態を維持した状態で、粒状鉱石が樹脂に十分に固定される。これにより、鉱物分析に供する樹脂包埋試料1として好適な試料が得られる。
【0054】
具体的には、得られたペレット成形体を、熱間埋込装置を用いて溶融固化させる。ペレット成形体のみを溶融固化させてもよいが、本実施形態では、ペレット成形体の周囲に充填材料を充填し、ペレット成形体とともに充填材料を加圧しながら加熱するとよい。これにより、ペレット成形体および充填材料のそれぞれに含まれるフェノール樹脂を溶融固化させ、固化ペレット10とともに、固化ペレット10の周囲に設けられる充填部20を固化ペレット10と一体的に形成する。その後、冷却して、固化ペレット10と、固化ペレット10を保持する充填部20とを備える樹脂包埋試料1が得られる。
【0055】
このように固化ペレット10の周囲に充填部20を形成して2層構造とすることにより、粉状フェノール樹脂を含む試料含有材料を熱間埋込装置に接触させずに、かつ装置の稼動部に入り込まないように構成することができる。一方、充填材料は、装置と接触するものの、顆粒状やフレーク状などの粒度の大きなフェノール樹脂とともにフィラーを配合し、装置の稼動部に入り込まないように構成している。そのため、充填部20を装置に固着することを抑制でき、樹脂包埋試料1を装置から容易に取り出すことを可能とする。
【0056】
なお、熱間埋込装置としては公知の装置を用いればよい。また、加熱開始から冷却終了までの時間は、使用する樹脂に応じて適宜決定すればよいが、たとえば、15分程度である。
【0057】
(研磨工程S40)
溶融固化工程S30後の樹脂包埋試料1は、研磨工程S40において、その表面を、公知の研磨機により研磨され、分析対象である粒状鉱石が露出した平滑な面(研磨面10a)が形成される。研磨面10aには、固化ペレット10を構成するフェノール樹脂が少なくとも露出しており、固化ペレット10の周囲に形成されている充填材料と明確に区別することができる。
【0058】
(その他)
得られた樹脂包埋試料1を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等を用いて分析する場合、粒状鉱石が非導電体であるため、分析中に粒状鉱石に電子が溜まりチャージアップする可能性がある。チャージアップが生じると、正常なSEM観察ができないため、これを防ぐために、樹脂包埋試料1の研磨面10aに対して、カーボン等の導電性物質を蒸着すればよい。
【0059】
以上の工程を経ることにより、実際の選鉱工程中の鉱物の存在状態が維持された樹脂包埋試料1を得ることができる。
【0060】
<3.樹脂包埋試料の分析>
続いて、得られた樹脂包埋試料1を用いて、鉱物分析を行う。本実施形態では、鉱石に含まれる鉱物の種類を同定し(定性分析)、さらに、鉱物のサイズ、鉱物中の所望の金属元素の含有量、結合状態等を定量的に分析する。分析に用いる装置としては、たとえば、MLA(Mineral Liberation Analyzer)、光学顕微鏡等が例示される。
【0061】
MLAは、鉱物分析に特化した分析装置であり、エネルギー分散型X線分光分析(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)装置が付属する走査型電子顕微鏡(SEM)に、鉱物分析専用の解析ソフトウェアが組み込まれている。この装置によれば、試料の測定および解析を自動で行い、試料に含まれる鉱物に関する情報(種類、含有量、粒度、結合状態等)を分析結果として所定の形式で出力することができる。
【0062】
具体的には、MLAでは、まず、SEMにより、樹脂包埋試料1の研磨面10aの反射電子像を取得し、得られた反射電子像を画像解析することにより各鉱石粒子(粒状鉱石)を識別する。続いて、EDS装置により、各鉱石粒子についてEDSスペクトルを取得する。取得した反射電子像およびEDSスペクトルを解析し、MLAが有するデータベースと、EDSスペクトルと、を比較して、鉱物の同定を行い、さらに、鉱物に関する定量的な情報(含有量、粒度、結合状態等)を取得して、これらの情報を、表、グラフ、鉱物のマッピング画像等として出力することができる。
【0063】
光学顕微鏡を用いる場合には、樹脂包埋試料1の研磨面10aを所定の倍率で観察し、観察される鉱物の光学的な情報(色、光沢等)に基づいて鉱物の同定を目視で行い、鉱物に関する定量的な情報を得る。
【0064】
上記の分析により得られた結果は、選鉱工程にフィードバックされ、処理条件の決定、あるいは、選択された処理条件の検証に用いられる。
【0065】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0066】
選鉱処理前後の鉱石は、種々の鉱物を含み、かつ広い粒度分布を有しているため、当該鉱石に含まれる鉱物の存在状態を正しく把握して、処理条件の決定あるいは検証を行う必要がある。ところが、選鉱工程から粒状の鉱石粒子をサンプリングして鉱物の存在状態を分析する場合、この鉱石粒子を試料として液状樹脂で包埋すると、当該樹脂の硬化中に、鉱石の比重の違い等に起因して樹脂中を鉱石粒子が移動する(沈降する)距離に差が生じる。その結果、硬化後の樹脂を研磨して得られる研磨面において、鉱物の存在状態(種類、含有量、粒度、結合状態、単体分離度等)がサンプリングされた時点から偏りが生じ、実際の選鉱工程における鉱物の存在状態が反映されなくなってしまう。
【0067】
そこで、本実施形態では、粒状試料11である粒状鉱石とフェノール樹脂と固形潤滑剤とを混合した試料含有材料を固形化し、ペレット成形体を得ることにより、鉱物の存在状態をサンプリングした時点の状態で固定することができる。そして、このペレット成形体を加熱してペレット用樹脂を溶融固化することにより、各種鉱物の比重差に起因する沈降を生じさせることなく、実際の選鉱工程における鉱物の存在状態がそのまま維持された樹脂包埋試料1を得ることができる。
【0068】
その結果、当該樹脂包埋試料1を研磨して得られる研磨面10aにおいては、実際の選鉱工程中の鉱物の存在状態が反映されており、当該研磨面10aを鉱物分析に供して得られる分析結果も、当然、実際の選鉱工程中の鉱物の存在状態を反映した結果となっている。したがって、この結果に基づき、処理条件の決定あるいは検証を行うことにより、選鉱処理を最適化でき、精鉱品位の向上、回収率等の改善を図ることができる。
【0069】
しかも、熱硬化性樹脂を含む試料含有材料によれば、ペレット成形体に固形化した後、熱硬化性樹脂を加熱により溶融状態とし、さらには硬化反応により固化させることで、熱硬化性樹脂が溶融している状態、すなわち、粒状鉱石が移動(沈降)しやすい状態を短時間とすることができる。これにより、沈降による粒状鉱石の存在状態の偏りを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、試料含有材料に固形潤滑剤を含有させているため、試料含有材料を加圧成形するときに、十分な圧力をかけて固形化することができる。そのため、強度の高いペレット成形体が得られ、ひいては強度の高い固化ペレット10が得られる。また、ペレット成形体の強度を高くすることで、その破砕を抑制することができ、ペレット成形体から固化ペレット10を作製する効率を高めることができる。
【0071】
また、ペレット成形体を溶融固化させる際に、充填材料をペレット成形体の周囲に充填することにより、充填材料が固化ペレット10の周囲の一部と一体化した2層構造の樹脂包埋試料1を得ることができる。このように構成することで、粒状鉱石の使用量を削減することができ、作業の効率化を実現できる。また、本実施形態では、充填材料に含まれる熱硬化性樹脂の粒度を、ペレット成形体に含まれる熱硬化性樹脂よりも大きくすることで、例えば、充填材料に顆粒状のフェノール樹脂を用いて、ペレット成形体に粉状のフェノール樹脂を用いることで、溶融固化工程で用いられる熱間埋込装置の稼働部に粒度の細かいフェノール樹脂が入り込むことを抑制するとともに、当該装置からの樹脂包埋試料1の取り出しが容易となる。
【0072】
<5.変形例>
上記の実施形態では、固化ペレット10の周囲に充填部20が形成されるように樹脂包埋試料1を作製したが、充填部20を形成せずに、鉱石粒子(粒状鉱石)と熱硬化性樹脂と固形潤滑剤を含む試料含有材料からなる固化ペレットのみで樹脂包埋試料を構成してもよい。この場合であっても、実際の選鉱工程中における鉱物の存在状態を反映した樹脂包埋試料を作製することができる。
【0073】
また、上記の実施形態では、選鉱処理前後の鉱石あるいは精鉱からサンプリングされた鉱石粒子を樹脂包埋試料としたが、製錬工程における中間物からサンプリングして樹脂包埋試料を作製してもよい。この場合であっても、実際の製錬工程中における所望の金属の存在状態を反映した樹脂包埋試料を作製することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0076】
(実施例1)
粒状試料としての粒状鉱石は、銅鉱石を選鉱処理して得られた粉状の銅精鉱からサンプリングした。まず、粉状の銅精鉱を0.5cc、粉状フェノール樹脂を1cc、粉状グラファイトを4cc、それぞれ量りとり、ヘラを用いて均一に混ざるまで混合し、試料含有材料を得た。続いて、得られた試料含有材料をダイスに充填し、パンチを用いて直径20mm、高さ3mm程度の円柱状に圧縮成形したペレット成形体を得た。得られたペレット成形体を図3に示す。
【0077】
得られたペレット成形体を、熱間埋込装置(丸本ストルアス社製)内に設置し、顆粒状フェノール樹脂と約2gのフィラーを含む充填材料をペレット成形体の周囲を覆うように充填した。その後、180℃、75barの条件で5分間加温加圧し、直径25mm、高さ6mm程度の円柱状の樹脂包埋試料を得た。得られた樹脂包埋試料をバフ研磨機によって断面研磨を施し、試料を構成する鉱石粒子の断面を露出させて研磨面を作製した。この研磨面を光学顕微鏡で観察したときの結果を図4に示す。
【0078】
その後、この研磨面にカーボン蒸着を施し、実施例1の樹脂包埋試料を作製した。作製した樹脂包埋試料を、FEI社製MLA装置内に設置し鉱物分析を行った。図5に、樹脂包埋試料の研磨面の反射電子(BSE:Back Scattered Electron)像を示す。
【0079】
実施例1では、図3に示すように、試料含有材料にグラファイトを含有させているため、ペレット成形体は、全体的に均一に圧密されていることが確認された。また、図4に示すように、研磨面を観察すると、微細な粉状のグラファイトが溶融固化したフェノール樹脂部全体に均一に存在していることが確認された。また、研磨面をMLAで分析したところ、図5に示すように、粉状のグラファイトは溶融固化したフェノール樹脂と同化しており、MLAの測定に干渉せずに、良好に測定できることが確認された。
【0080】
(比較例1)
比較例1では、粉状の銅精鉱と粉状フェノール樹脂とを混合する際に、グラファイトを配合しなかった以外は、実施例1と同様に試料含有材料を形成し、樹脂包埋試料を作製した。
【0081】
比較例1では、試料含有材料にグラファイトを配合しなかったため、加圧成形後にペレット成形体をダイスから取り出すときに、図6に示すように、ペレット成形体が破砕してしまった。これは、加圧成形するときにダイスとパンチとが固着し、樹脂含有材料に十分に加圧できず、ペレット成形体の強度が低くなったためと推測される。
【0082】
破砕しなかったペレット成形体を溶融固化させて固化ペレットを研磨し、その研磨面を観察したところ、図5に示すように、実施例1と同様に、微細な粉状のグラファイトが溶融固化したフェノール樹脂部全体に均一に存在していることが確認された。また、研磨面をMLAで分析したところ、図7に示すように、実施例1と同様に、粉状のグラファイトは溶融固化したフェノール樹脂と同化しており、MLAの測定に干渉せずに、良好に測定できることが確認された。
【0083】
以上のように、粒状鉱石と熱硬化性樹脂ともに固形潤滑剤を混合し、それを加圧成形する場合、十分な圧力をかけることができるので、強度の高いペレット成形体を形成することができる。そのため、加圧装置から、ペレット成形体を破砕させることなく取り出すことが可能であり、樹脂包埋試料を効率的に作製することができる。
また、固化ペレットに固形潤滑剤を含有させるものの、固形潤滑剤はMLAの測定に干渉せずに、良好に測定することができる。
また、粒状鉱石を熱硬化性樹脂で固定化することで、樹脂包埋試料における粒状鉱石の比重に起因する存在状態の偏りを抑制できる。この樹脂包埋試料によれば、サンプリング時の鉱物の存在状態が反映されているので、鉱物の情報を正確に把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 樹脂包埋試料
10 固化ペレット
10a 研磨面
11 粒状試料
20 充填部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8