特許第6621026号(P6621026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621026
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】波長掃引光源の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20191209BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G01N21/01 D
   G01N21/17 630
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-173608(P2016-173608)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-40622(P2018-40622A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】上野 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄三
(72)【発明者】
【氏名】阪本 匡
(72)【発明者】
【氏名】品川 満
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−184767(JP,A)
【文献】 特開平08−195519(JP,A)
【文献】 特開2013−007571(JP,A)
【文献】 特開2012−088174(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/093654(JP,A1)
【文献】 特開2012−063264(JP,A)
【文献】 特開2015−142111(JP,A)
【文献】 特開2016−031294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0185054(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0140783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/51
G01M 11/00−11/08
H01S 3/00− 5/50
G02F 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価するシステムにおいて、
波長掃引光が入力され、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号を出力する光電気変換部と、
前記電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波、および、前記基本波の1つ以上の高調波の強度ゆらぎを求める周波数領域の信号強度測定部と、
前記基本波および前記1つ以上の高調波の各周波数における強度ゆらぎの分散値を求める分散算出部と、
前記分散値の平均値を求める平均算出部と
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記平均算出部からの前記平均値に基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを修正する命令を決定する安定性判定部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記信号強度測定部において、前記基本波、および、前記1つ以上の高調波に同調して時間領域の強度ゆらぎを求めるように測定周波数を設定する周波数設定部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する装置において、
波長掃引光が入力され、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号を出力する光電気変換部と、
前記電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波、および、前記基本波の1つ以上の高調波の強度ゆらぎを求める周波数領域の信号強度測定部と、
前記信号強度測定部において、前記基本波、および、前記1つ以上の高調波に同調して時間領域の強度ゆらぎを求めるように、前記信号強度測定部の測定周波数を設定する周波数設定部と、
前記基本波および前記1つ以上の高調波の各強度ゆらぎの分散値を求める分散算出部と、
前記分散値の平均値を求める平均算出部と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記波長掃引光源の前記基本波および前記1つ以上の高調波における前記分散値に関連付けられた前記波長掃引光源の安定性の基準データを含むデータ記憶部と、
前記安定性の基準データ、および、前記平均算出部からの前記平均値に基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを修正する命令を決定する安定性判定部
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する方法において、
前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波に、同調するステップと、
前記基本波の周波数である同調周波数の電気信号の強度を測定して、強度ゆらぎを求めるステップと、
前記同調周波数の強度ゆらぎの分散を求めるステップと、
前記同調周波数を、前記基本波に代えて前記基本波の1つ以上の高調波に順次同調し、前記1つ以上の高調波の各々における強度ゆらぎおよび当該強度ゆらぎの分散値をそれぞれ求めるステップと、
前記基本波の前記分散値および、前記1つ以上の高調波の各々における前記分散値の平均値を求めるステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記基本波および前記1つ以上の高調波における前記分散値に関連付けられた前記波長掃引光源の安定性の基準データと、前記平均値とに基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを変更するかどうかを判定するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の各ステップを実行するコンピュータ実施可能な命令を備えたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、波長掃引光源の評価方法に関する。波長掃引光源は、光を利用したイメージング技術を用いた光学機器や電子機器に幅広く利用されている。例えばカメラやプリンタ、ファクシミリなどの民生用の電子機器に最もよく利用されており、さらに医療分野にも広がっている。生体内部の断層を非侵襲的にイメージングするために、低干渉光を利用して深さ方向の情報を高分解能で取得することができる光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherent Tomography)が注目されてきた。近年では、生体内での分子レベルおよび細胞レベルの生物学的事象を解明するためのモレキュラー(分子)イメージングの分野にも、OCTが利用されている。波長掃引光源は、後述するようにOCT技術を支える重要な基幹要素であり、OCT装置の性能にも大きな影響を与える。したがって、波長掃引光源の性能、波長掃引光信号の評価方法が重要である。
【0002】
上述のモレキュラーイメージングでは、光情報を利用してターゲット分子を高感度に検出する方法が主力となっており、OCT装置が利用されている。ここで、OCT装置の構成・動作を概観すれば以下の通りである。OCT装置で3次元情報を収集するためには、スーパールミネセンスダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)と呼ばれる低コヒーレンスな光源から出力される光ビームを、水平および垂直方向に走査する必要がある。この走査のために、OCT装置では、SLD光源からコリメータを介して出力された光ビームをビームスプリッタで参照光および測定光にまず分離する。そして、分離された測定光に対して2軸ガルバノミラーを利用して機械的に光ビームを水平・垂直方向に走査している。走査された測定光は、対物レンズを介して入力された測定対象物Tの各層で反射して、再びビームスプリッタまで戻る。測定対象物からの測定光は、ビームスプリッタにおいて、可動ミラーで反射されて戻ってきた参照光と再び合流し、光検出器(PD:Photo Detector)に入る。OCT装置に付随する信号処理装置は、測定光と参照光とが合流する際に生じる干渉現象に基づいて測定光の強度と時間ずれを検知し、空間的位置関係(3次元情報)を導いている。低コヒーレンス干渉を利用して断層イメージを取得するOCT装置には、時間領域OCT(TD−OCT:Time Domain Optical Coherence Tomography)と、フーリエ領域OCT(FD−OCT:Fourier Domain Optical Coherence tomography)がある。FD−OCTは、さらにスペクトル領域OCT(SD−OCT:Spectral Domain Optical Coherence Tomography)と波長掃引OCT(SS−OCT:Swept-Source Optical Coherence Tomography)に分類される。波長掃引光源を用いたSS−OCTは、高速な応答性の点で特に優れている。SS−OCTの応答性は光源の性能によって大きく律速されるため、種々の方式の高速広帯域光源の開発が加速している。
【0003】
図10は、SS−OCT装置の基本的な構成および動作を模式的に説明する図である。SS−OCT装置20では、例えば生体24に対して、光周波数(波長)掃引光源21から、時間に対して直線的にその光周波数(または波数)を掃引した光信号26を供給する。光周波数掃引光源21としては、例えば波長可変レーザが使用される。また、ミラー23はその位置を固定されている。ビームスプリッタ22の中心とミラー23との間の距離をLR、ビームスプリッタ22の中心と生体表面31との間の距離をLSとすると、LR=LSとなるように各要素が配置されている。
【0004】
このとき、参照光28と、生体内の反射面32からのそれぞれの反射光29bと、反射面33からのそれぞれの反射光29cとの光周波数の差は、時間に関係なく一定となる。これらの光周波数の差をf2およびf3とすれば、参照光28と反射光29b、29cとの干渉によって、反射面32および反射面33に対応したビート周波数f2、f3が混在した信号光が得られる。この信号光をフーリエ変換すると、ビート周波数f2、f3にピークのある反射光強度が得られる。光源21からの光周波数が直線的に掃引されれば、ビート周波数f2、f3と、深さd2、深さd3は正比例する。生体内では、各所から反射光が生じるため、干渉光をフーリエ変換することによって、光軸(z軸)方向に沿った、反射光強度の分布を得ることができる。x軸方向にもビームスキャンを行えば、x−z面内でのOCT断層イメージが得られる。
【0005】
SS−OCT装置では、光検出器25は、異なるビート周波数の干渉光が混在した信号光を単一の検出素子で検出すれば良いので、TD−OCTに必要だった並列ディテクタが不要となる。さらに、赤血球のヘモグロビンによる散乱がなく皮膚等の診断に好適で入手性も良い1.3μm帯域の掃引光源を使用することが可能となる。SS−OCT装置は、光ファイバカプラを使用した安定な構成、可動ミラーが不要なことによって高速イメージ取得できること、多様な光検出器の利用容易性から、眼科診療を始めとしてモレキュラーイメージングの領域において実用化が進められている。ここで、SS−OCT装置における波長掃引光源に必要な条件について考えてみる。
【0006】
非特許文献1を参照すれば、SS−OCT方式の干渉信号s(t)は以下のように表される。
【0007】
【数1】
【0008】
ここで、tは時間を、k(t)は光源光の波数を、A(k)は光の波数に対する光源光の電界強度を、zは基準面から観測対象中の反射面までの距離を、cは光速を、Psは合波されるサンプル側の反射光パワーを、Prは合波されるリファレンス側の反射光パワーを、γ(2z/c)はコヒーレンス関数をそれぞれ示している。
【0009】
ここで、波長掃引光源の出力光の波数が、時間に対して直線的に変化する場合、すなわち波数リニアな光源を考える。このときの波数k(t)は、次式で表される。
【0010】
【数2】
【0011】
ここでk´は、波長掃引光源の掃引波長幅をΔkとし、Δkだけ掃引する時間をΔtとしたとき、k´=Δk/Δtとなるkの時間に対する変化率を表し、k0はt=0の時のkの値である。
式(2)を適用すると、式(1)の干渉信号s(t)は以下のように表される。
【0012】
【数3】
【0013】
さらに式(3)をフーリエ変換すると、次式のように表される。
【0014】
【数4】
【0015】
ただし、次式はフーリエ変換を表し、添え字のfは周波数を表す。
【0016】
【数5】
【0017】
後述する点拡がり関数(PSF:Point Spread Function)を求める際にはオフセットであるk0の値は問題にならないため、k0=0とした。
【0018】
式(4)によると、干渉信号s(t)のフーリエ変換は電界強度の自乗A2(t)をフーリエ変換した形状をしており、その中心周波数は次式によって表される。
【0019】
【数6】
【0020】
式(4)に示したように、干渉信号s(t)をフーリエ変換した信号を、点拡がり関数(または点像分布関数:PSF)と言う。もしA2(t)がガウシアンのような対称な単峰性の関数であれば、PSFのピーク位置の周波数が、式(6)で表されるフーリエ変換後の干渉信号の中心周波数となる。
【0021】
上述のように、波長掃引光源の出力光の波数が式(2)で表されるような波数リニアに変化する光源を使用した場合、観測対象中の反射面の位置zは、干渉信号s(t)をフーリエ変換した信号であるPSFの位置を測定することによって求めることができる。特に、電界強度の自乗A2(t)がガウシアンのような対称な単峰性の関数であれば、PSFのピーク位置が反射面の位置zに対応する。反射面の位置zを算出する式は、以下のようになる。
【0022】
【数7】
【0023】
上述のようなSS−OCTにおける干渉光からイメージを取得する原理から、図10でも示したように、基準面からの距離zに比例して干渉信号の周波数が大きくなる。観測対象内に複数の反射面があっても、基準面からそれぞれの反射面までの距離に応じた周波数成分が干渉信号に含まれるので、周波数解析(フーリエ変換)することにより、複数の反射面を同時に測定できる。SS−OCTにおける反射面の検出は、光源の波長掃引1回毎に行われる。したがって、波長掃引光源の波長掃引時間が短いほど、つまり、波長掃引周波数が高いほど、観測対象の動きが早くても、ブレの少ない断層イメージを得ることができる。
【0024】
このようなブレの少ない断層イメージの取得を実現する波長掃掃引光源として、近年、KTN(KTa1-xNbx3)結晶またはKLTN(K1-yLiyTa1-xNbx3)結晶における屈折率制御の高速性を利用して、光偏向器を外部共振器に組み込んだ高速の波長掃引光源が注目されている。例えば特許文献1にも開示されているように、医療用光断層撮像システムの中で、KTN光偏向器は高速性を実現するためのキーデバイスである。光の進行方向を変える光偏向器の中で、KTN結晶またはKLTN結晶を用いた光偏向器(KTN偏向器と言う)は、ガルバノミラーやポリゴンミラー、MEMSミラー等と異なり、可動部を持たない固体素子である。KTN結晶は、比較的低い電圧を印加することによってその屈折率が大きく変わる電気光学効果が大きい物質として知られている。さらに、駆動電圧を印加するための電極としてTiやCrを用いると、KTN結晶内に電荷を注入することができる。この注入電荷によって生じる内部電界を利用することで、高速・広角な光偏向器を実現することができる。したがって、レンズ、プリズム、ミラーなどの一般的な光学部品が高速で動く必要がある用途では、これらの光学部品をKTNに置き換えることができる。
【0025】
上述のように波長掃掃引光源の高速性は、ブレのないOCT断層イメージを得るために必要であるが、加えて、OCT信号の信号対ノイズ比(SNR)も鮮明な画像を得るための重要な指標となる。例えば、光源ノイズや電気ノイズ等の様々なノイズが測定した干渉信号s(t)に入った場合、干渉信号s(t)から求めたk(t)にもノイズが残ることになる。SS−OCT装置の波長掃引光源では、実際には光の波長について線形なスキャンを行っている。したがって、SS−OCT装置のデータ処理では、式(2)に対応するように時間に対して波数が直線的に変化するデータに変換する必要がある。この変換処理は、リスケーリング処理と呼ばれている。
【0026】
上述のような様々なノイズが干渉信号s(t)に入ったとき、リスケーリング処理を行う際に、干渉信号の変換精度が落ちる問題が起こる。干渉信号の変換精度が落ちることによってPSFのピークが低くなるため、OCT断層イメージにおけるSNRが低下する問題が生じる。さらに、断層イメージのSNRが低くなるため、観測対象への入射光強度に対する感度が低くなる問題も生じる。したがって、SS−OCT装置の性能を上げるためには、波長掃掃引光源におけるSNRの評価を正確に行う必要があり、SNRの評価方法が極めて重要である。
【0027】
これまで波長掃掃引光源における波長掃掃引光のSNRを測定する場合、電気の信号発生器の評価と同様に、波長掃引光源から出力される光信号をフォトダイオードで電気信号に変換(包絡線検波)した後に、変換後の電気信号に対して評価を行っていた。例えば、非特許文献2や非特許文献3に示されているように、RFスペクトラムアナライザなどの周波数領域の測定器を用いて、基本波スペクトラム近傍の位相雑音(位相ゆらぎ)を評価したり、基本波スペクトラムから離れたノイズフロアを評価したり、基本波スペクトラムの強度ゆらぎを評価する手法がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2012−074597号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】上野雅浩、他, KTN光偏向器の広角化による200kHz KTN波長掃引光源の可干渉距離とSNRの改善, 信学技法, 2,014年、CPM2014-44, pp.7-12
【非特許文献2】J. A. Barns et al., “Characterization of frequency stability”, IEEE Trans. Instrum. Meas., IM-20, no. 2, 1971年, pp. 105-120
【非特許文献3】M. Shinagawa et al., “Jitter analysis of high-speed sampling systems”, IEEE J. Solid-State Circuits, SC-25, no. 1, 1990年, pp. 220-224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、従来技術の波長掃引光源のSNR評価方法は、依然として十分ものではなく、SS−OCT装置の性能の向上のために改善が望まれていた。波長掃引光源には、電気光学結晶、半導体レーザなどの光学的な機能デバイスが用いられている。また、波長掃引信号光は、波長掃引の繰り返し周波数を基本波とするとき、基本波成分およびその高調波成分を含む。基本波成分と高調波成分の各スペクトラム特性の関係や、従来の評価パラメータがそのまま妥当するのかどうかは明らかではなかった。したがって、電気の信号発生器のSNRを評価する場合のように基本波の各種の雑音パラメータだけを評価するのでは、波長掃引光源の不安定性を十分に正確に評価できていなかった。
【0031】
本発明はこのような従来技術の問題に鑑みなされたものであって、目的とするところは、波長掃引光源の安定性のより正確な評価方法を確立し、SNRの低下を抑えたSS−OCT装置を実現する環境を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価するシステムにおいて、波長掃引光が入力され、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号を出力する光電気変換部と、前記電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波、および、前記基本波の1つ以上の高調波の強度ゆらぎを求める周波数領域の信号強度測定部と、前記基本波および前記1つ以上の高調波の各周波数における強度ゆらぎの分散値を求める分散算出部と、前記分散値の平均値を求める平均算出部とを備えたことを特徴とするシステムである。
請求項2に記載の発明は、請求項1のシステムであって、前記平均算出部からの前記平均値に基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを修正する命令を決定する安定性判定部をさらに備えたことを特徴とする。
【0033】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のシステムであって、前記信号強度測定部において、前記基本波、および、前記1つ以上の高調波に同調して時間領域の強度ゆらぎを求めるように測定周波数を設定する周波数設定部をさらに備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項4に記載の発明は、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する装置において、波長掃引光が入力され、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号を出力する光電気変換部と、前記電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波、および、前記基本波の1つ以上の高調波の強度ゆらぎを求める周波数領域の信号強度測定部と、前記信号強度測定部において、前記基本波、および、前記1つ以上の高調波に同調して時間領域の強度ゆらぎを求めるように、前記信号強度測定部の測定周波数を設定する周波数設定部と、前記基本波および前記1つ以上の高調波の各強度ゆらぎの分散値を求める分散算出部と、前記分散値の平均値を求める平均算出部とを備えたことを特徴とする装置である。
【0035】
請求項5に記載の発明は、請求項4の装置であって、前記波長掃引光源の前記基本波および前記1つ以上の高調波における前記分散値に関連付けられた前記波長掃引光源の安定性の基準データを含むデータ記憶部と、前記安定性の基準データ、および、前記平均算出部からの前記平均値に基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを修正する命令を決定する安定性判定部をさらに備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項6に記載の発明は、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する方法において、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波に、同調するステップと、前記基本波の周波数である同調周波数の電気信号の強度を測定して、強度ゆらぎを求めるステップと、前記同調周波数の強度ゆらぎの分散を求めるステップと、前記同調周波数を、前記基本波に代えて前記基本波の1つ以上の高調波に順次同調し、前記1つ以上の高調波の各々における強度ゆらぎおよび当該強度ゆらぎの分散値をそれぞれ求めるステップと、前記基本波の前記分散値および、前記1つ以上の高調波の各々における前記分散値の平均値を求めるステップとを備えることを特徴とする方法である。
【0037】
請求項7に記載の発明は、請求項6の方法であって、前記基本波および前記1つ以上の高調波における前記分散値に関連付けられた前記波長掃引光源の安定性の基準データと、前記平均値とに基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを変更するかどうかを判定するステップとをさらに備えることを特徴とする。
【0038】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の各ステップを実行するコンピュータで実施可能な命令を備えたプログラムである。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明により、波長掃引光源の安定性のより正確な評価方法を確立し、SNRの低下を抑えたSS−OCT装置を実現する環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、KTNを用いた波長掃引光源の安定性を評価する測定系の構成を示すである。
図2図2は、波長掃引光源からの波長掃引光の代表的なスペクトラムを示した図である。
図3図3は、波長掃引光源からの波長掃引光のうち、1つの周波数成分近傍のスペクトラムを拡大して模式的に表した図である。
図4図4は、波長掃引光の高調波成分の強度ゆらぎの測定例を示す図である。
図5図5は、波長掃引光の別の高調波成分の強度ゆらぎの測定例を示す図である。
図6図6は、本発明の長掃引光源の評価方法における処理を概念的に説明する図である。
図7図7は、本発明波長掃引光源の評価方法を用い、安定性の計測結果を波長掃引光源にフィードバックするシステムの構成を示す図である。
図8図8は、本発明の波長掃引光源の評価方法を用い、安定性の計測結果を波長掃引光源にフィードバックする手順のフローチャートを示す図である。
図9図9は、半導体レーザを駆動するSOAの電流値と強度ゆらぎの分散の平均値との関係を実測したデータを示す図である。
図10図10は、SS−OCT装置の基本的な構成および動作を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の波長掃引光源の評価方法では、波長掃引光源の出力光を電気信号に変換した後で、波長掃引する繰り返し周波数の基本波成分およびその高調波成分の各強度ゆらぎを考慮して、強度ゆらぎの平均に基づいて光源の安定度を決定する。本発明は、波長掃引光源の評価システムまたは評価装置としても実施できる。また、波長掃引光源の評価方法を実施するコンピュータプログラムの発明としても実施できる。
【0042】
発明者らは、KTNを用いた波長掃引光源の出力光における基本波成分およびその高調波成分について、強度ゆらぎにおける電気信号の周波数掃引信号とは異なる挙動を見出した。波長掃引光源からの波長掃引出力光における、特有の強度ゆらぎの挙動を考慮したSNRの評価方法、波長掃引光源の安定性の評価方法を提案する。
【0043】
図1は、KTNを用いた波長掃引光源の安定性を評価する測定系の構成を示す図である。測定系10は、波長掃引光源部1、光電気変換器2、周波数領域の信号強度測定器3からなる。図1には示してないが、さらに通信インタフェースを備えることで波長掃引光源の安定性評価の自動化が可能な構成にすることも可能である。波長掃引光源部1から出力される評価対象となる光信号は、フォトダイオードなどの光電気変換器2により電気信号に変換(包絡線検波)される。変換された電気信号は、周波数領域の信号強度測定器によって、周波数成分ごとに電気信号強度が求められる。周波数領域の信号強度測定器は、典型的にはスペクトラムアナライザである。光電気信号変換器は、使用するスペクトラムアナライザの帯域に適合するように周波数変換するミキサ機能などを含んでも良い。
【0044】
図2は、波長掃引光源からの波長掃引光の代表的なスペクトラムを示した図である。光電気変換器2からの変換された電気信号には、波長掃引する繰り返し周波数を基本波とすると、基本波成分およびその整数n倍(n≧2)の高次高調波成分が含まれる。この変換された電気信号をRFスペクトラムアナライザなどの周波数領域の信号強度測定器2を用いて測定すると、図2に模式的に示したようなスペクトラム特性を示す。最も左側に位置する基本波成分と、周波数軸上で基本波成分の右側に位置し、強度が徐々に低下してゆく複数の高調波成分が観察される。
【0045】
図3は、波長掃引光源からの波長掃引光のうち、1つの周波数成分ピーク近傍のスペクトラムを拡大して模式的に表した図である。図3のスペクトラムを参照すると、波長掃引光源からの波長掃引光について、3つのゆらぎ成分を定義することができる(非特許文献2、非特許文献3)。第1に、ある周波数成分のピーク強度が時間的に変動しているものを強度ゆらぎと呼び、スペクトラムの尖頭値の時間変動を測定することで評価できる。第2に、尖頭値を示す周波数からわずかに離れた周波数領域に存在する雑音パワーを位相雑音または位相ゆらぎと呼び、周波数の時間的な変動を表す。位相雑音は波形の時間的なゆらぎを表すジッタとも呼ばれる。第3に、位相雑音の周波数領域からさらに離れ、周波数に対して雑音パワーが一定になる領域の雑音をノイズフロアと呼ぶ。これらの3つの雑音(不安定性)は、高調波ごとに評価することができる。
【0046】
上述の3つのゆらぎの定義は、電気信号の信号発生器における連続波(CW)および周波数掃引波でも使用されており、電気信号では高調波ごとの特性が非常に似ているために基本波のみを評価すれば良かった。しかしながら、KTNを用いた波長掃引光源では、波長掃引を実現するために、KTN電気光学結晶を用いた偏光機構および半導体レーザ発振器および光増幅などの機構を利用している。したがって、光信号に由来しない電気信号の周波数掃引信号とは異なる、様々な非線形性や歪みが生じている可能性がある。発明者らはこの点を踏まえて、波長掃引光から変換された電気信号の基本波および高調波における、3つの雑音・ゆらぎの挙動の差異に着目した。
【0047】
ここで、KTN電気光学結晶および半導体レーザを用いた波長掃引光源の強度ゆらぎに関する評価例について説明する。例えば、波長掃引の繰り返し周波数が200kHzであるときは、200kHzの整数倍の高調波にあたる周波数上に、尖頭特性のあるスペクトラムが測定される。RFスペクトラムアナライザのゼロスパン機能を用いて、ある周波数の尖頭値を一定時間測定した。ゼロスパン機能は、スペクトラムアナライザの掃引帯域幅を0Hzとして、測定中心周波数に設定された信号成分のみを測定する機能である。ゼロスパン機能は、スペクトラムアナライザにおいて、特定の同調周波数の時間波形を求めることが可能であって、同調周波数毎に時間領域の信号波形を測定することができる。ゼロスパン機能によって、図3に示した3つのゆらぎの内の強度ゆらぎを測定することができる。
【0048】
図4は、波長掃引光の高調波成分の強度ゆらぎの測定例を示す図である。横軸は時間(秒)を、縦軸はパワー(dBm)を表しており、波長掃引の繰り返し周波数を200kHzとした場合の28倍高調波(5.6MHz)の尖頭値の強度を50秒間観測した結果である。図4からは、強度ゆらぎの幅は1dB以下であり、繰り返し周波数200kHzで波長掃引を繰り返していても、5.6MHzの高調波成分のパワーレベルは非常に安定していることがわかる。
【0049】
図5は、波長掃引光の別の高調波成分の強度ゆらぎの測定例を示す図である。図4と同様に、横軸は時間(秒)を、縦軸はパワー(dBm)を表しており、波長掃引の繰り返し周波数を200kHzとした場合の34倍高調波(6.8MHz)の尖頭値の強度を50秒間観測した結果である。図4の5.6MHz成分における測定結果とは対照的に、最大12dBの幅の強度ゆらぎが測定されており、2つの高調波間ではゆらぎの大きさには10倍程度の差がある。図4および図5からわかるように、電気信号の信号発生器とは違って、波長掃引光源からの波長掃引光信号では高調波成分毎に強度ゆらぎ特性が異なることがわかった。したがって、波長掃引光源からの波長掃引光信号の安定性をより正確に評価するためには、電気信号の周波数掃引信号における基本波のみの評価とは異なるアプローチが必要であることが明らかとなった。
【0050】
本発明の波長掃引光源の評価方法では、以下説明するように、複数の周波数成分のスペクトラムでの評価を含む。高調波成分によって強度ゆらぎのレベルが異なるため、基本波および1つ以上の高調波成分に対して強度ゆらぎを考慮して、波長掃引光源を評価した。なお、位相雑音およびノイズフロアを各高調波において評価したところ、その特性には高調波間で大きな差はなかったので、以下では強度ゆらぎのみについて考慮した本発明の波長掃引光源の評価方法について説明する。
【0051】
実施形態1:
波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する際には、上述のように各高調波成分で強度ゆらぎの特性が異なるので、基本波または単一の高調波成分だけで強度ゆらぎを評価するのは誤った結果を導く可能性が高い。波長掃引光源の性能を正しく評価するには、複数の周波数成分のスペクトラムについて評価する必要がある。
【0052】
図6は、本発明の波長掃引光源の評価方法における処理を概念的に説明する図である。本発明の波長掃引光源の評価方法では、波長掃引光源を利用する装置(例えばSS−OCT装置)において必要な波長(波数)掃引の線形性のレベルを考慮して、光源の安定性を考慮すべき検出帯域内に入るすべての高調波成分を考慮する。図6の説明では、検出帯域を基本波から5倍の高調波成分までを含む帯域とした例を示している。本発明の評価方法では、図6に示したように、基本波(n=1)および2倍〜5倍(n=2〜5)高調波の尖頭値の強度ゆらぎを、所定の時間に渡ってスペクトラムアナライザなどによって求める。各周波数成分において求められた強度ゆらぎの分散を求める。検出帯域内のすべての周波数成分における各分散の平均値を求めて、これを波長掃引光源のゆらぎとする統計処理を行う。このように、従来技術のように単一の周波数成分のみの評価とは異なり、複数の周波数成分の強度ゆらぎを考慮した分散の平均値を波長掃引光源の安定性の指標とすることで、波長掃引光源の安定性をより正確に評価することができる。
【0053】
図6の説明では、強度ゆらぎを求めるのは検出帯域内のすべての高調波成分としたが、評価対象である波長掃引光源の構成や性質によって、特定の高調波成分のみに強度ゆらぎが現われることが事前に把握されていれば、不安定性が顕著に表れる複数の高調波成分について統計処理しても良い。n次高調波の強度ゆらぎの標準偏差をσnとすると、各高調波成分の分散を
【0054】
【数8】
【0055】
とすると、その平均値Aは式(8)で表される。
【0056】
【数9】
【0057】
実施形態2:
図7は、本発明の波長掃引光源の評価方法を用い、安定性の計測結果を波長掃引光源にフィードバックする評価システムの構成を示す図である。評価システム70は、波長掃引光源部71、光電気変換部72、周波数領域の信号強度測定器73を備え、これらは図1に示したKTNを用いた波長掃引光源の安定性を評価する測定系の構成と同一であり説明は省略する。評価システム70は、さらに、図6に示した本発明の波長掃引光源の評価方法を実施するための分散算出部74、平均算出部76、強度ゆらぎを測定する周波数領域の信号強度測定器73を設定する周波数設定部75を含む。図7では、信号強度測定器73における周波数設定を、平均算出部76からの周波数変更命令に応じて行うように示しているが、これだけに限定されない。評価システム70全体の動作を制御する中央演算装置(CPU)が、平均算出部76以外の評価システム70内のいずれのブロックにあっても、または、独立に制御部があっても良いし、図7に示さない評価システム70外部からの制御によっても良い。
【0058】
したがって本発明は、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価するシステム70において、波長掃引光が入力され、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号を出力する光電気変換部72と、前記電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波、および、前記基本波の1つ以上の高調波の強度ゆらぎを求める周波数領域の信号強度測定部73と、前記基本波および前記1つ以上の高調波の各周波数における強度ゆらぎの分散値を求める分散算出部74と、前記分散値の平均値を求める平均算出部76とを備えたことを特徴とするシステムとして実施できる。好ましくは、前記平均算出部からの前記平均値に基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを修正する命令を決定する安定性判定部77をさらに備えることができる。また、前記信号強度測定部において、前記基本波、および、前記1つ以上の高調波に同調して時間領域の強度ゆらぎを求めるように測定周波数を設定する周波数設定部75をさらに備えることもできる。
【0059】
評価システム70は、平均算出部76から得られる分散平均値Aに基づいて、波長掃引光源71の安定性を判定する安定性判定部77をさらに備えることができる。安定性判定部77は、波長掃引光源の種類や測定対象に応じた安定性の判断の基準データが格納されているデータベース78と協働して、算出された分散の平均値Aがデータベース内の基準値を満たすかどうかを判定することができる。安定性の基準を満たす場合は、波長掃引光源部71の調整を終了する。安定性の基準を満たさない場合は、波長掃引光源部71に用いられている半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)の電流・温度やKTN駆動電圧、KTN結晶の設定温度、光源筐体の温度などの波長掃引光源を制御するパラメータを変更して、再度、次に述べるように調整フローを実施する。
【0060】
上述の図7に示した評価システムは、波長掃引光源部71を除いて、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価するシステムは、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する装置としても実施できる。この装置において、データベースは必ずしも備えていなくとも良い。次に、評価システム70を用いて安定性の計測結果を波長掃引光源にフィードバックする処理手順のフローを説明する。
【0061】
実施形態3:
図8は、本発明の波長掃引光源の評価方法を用い、安定性の計測結果を波長掃引光源にフィードバックする手順のフローチャートを示す図である。図7に示したように、評価システム70では、波長掃引光源部71から光信号を光電気変換器72で電気信号に変換(包絡線検波)される。
【0062】
フローが開始する(ステップ80)と、まずn=1に設定される(ステップ81)。周波数領域の信号強度測定器73(RFスペクトラムアナライザ)を用い、周波数設定部75によりまず測定周波数が基本波f0に設定され(ステップ82)、基本波f0における強度ゆらぎが測定される(ステップ83)。ここでf0は、波長掃引光源部71における波長掃引光の掃引繰り返し周波数である。次に、分散算出部74において分散値が算出される(ステップ84)。n≧Nの判断が実施され(ステップ85)、所定の検出帯域内のすべての高調波成分の測定が行われたかどうかが判定される。n≧Nが偽(NO)であれば、n=n+1として、nの値が1つ増加される(ステップ90)。信号強度測定器73は、第2高調波である2f0に設定され、第2高調波2f0の強度ゆらぎの測定および分散値の算出が行われる。n≧Nの判断が真(YES)となるまで、ステップ81〜84が繰り返され、最大の高調波Nf0になるまで、分散を算出する。
【0063】
図8のフローにおいては、基本波から2番目〜N番目のすべての高調波を順次測定して、分散値を求めるものとして説明をしたが、これは、図6に示した検出帯域内のすべての高調波成分について強度ゆらぎを測定する例示的な場合である。例えば、高調波成分の内の特定の高調波成分のみで強度ゆらぎが観察されることが予め知られているような場合には、検出帯域内の一部の高調波についてのみ分散値を測定して、平均値Aを求めても良い。この場合には、nの値を1つ増加するステップ90において、特定のnについては、ステップ82からステップ84までをスキップするような処理を加えても良い。
【0064】
所定の検出帯域内のすべての高調波成分の測定が行われ分散値が求まり、n≧Nの判断が真(YES)となると、フローは式(8)に基づいて、分散の平均値Aを算出する(ステップ86)。データベース78には、波長掃引光源の種類や測定対象に応じた安定性の基準データが格納されている。フローは、データベースとの照合へ進み(ステップ87)、ステップ86で算出された分散の平均値Aがデータベース内の基準値を満たすかどうかが安定性判定部によって判定される。算出された分散の平均値Aが所定の基準を満たしている場合は、波長掃引光源部71の調整を終了する(ステップ91)。算出された分散の平均値Aが所定の基準を満たさない場合は、波長掃引光源部71に用いるSOA電流やKTN駆動電圧、KTNの設定温度などの波長掃引光源を制御するパラメータを変更する(ステップ89)。このとき、図7に示したように、安定性判定部77から波長掃引光源部71へパラメータ変更命令が送られて、波長掃引光源を制御するパラメータを変更することができる。尚、安定性判定部77における判断結果を波長掃引光源部71の制御パラメータにフィードバックするためのパラメータ変更命令は、安定性判定部77とは別の制御部によって供給されても良い。また、データベース78の使用は、必ずしも必要ではなく、評価システム70の内外の記憶手段に記憶された安定性の基準データや、図8の各ステップを実施するためのプログラム内の固定値として含まれていても良い。
【0065】
安定性の基準データとしては、図7のシステム構成からもわかるように、光強度に関するデータを利用することができる。例えば、強度ゆらぎの分散の平均値Aの上限データであっても良いし、分散値でも良い。これらのデータを光源のタイプごとに備えていても良い。したがって、波長掃引光源の安定度を判断するための関連する閾値データであれば、様々なものを利用できる。
【0066】
したがって本発明の別の実施形態では、波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する方法において、前記波長掃引光から光−電気変換された電気信号の、波長掃引繰り返し周波数を持つ基本波に、同調するステップと、前記基本波の周波数である同調周波数の電気信号の強度を測定して、強度ゆらぎを求めるステップと、前記同調周波数の強度ゆらぎの分散を求めるステップと、前記同調周波数を、前記基本波に代えて前記基本波の1つ以上の高調波に順次同調し、前記1つ以上の高調波の各々における強度ゆらぎおよび当該強度ゆらぎの分散値をそれぞれ求めるステップと、前記基本波の前記分散値および、前記1つ以上の高調波の各々における前記分散値の平均値を求めるステップとを備えることを特徴とする方法としても実施できる。好ましくは、前記基本波および前記1つ以上の高調波における前記分散値に関連付けられた前記波長掃引光源の安定性の基準データと、前記平均値とに基づいて、前記波長掃引光源の制御パラメータを変更するかどうかを判定するステップとをさらに備えることもできる。
【0067】
尚、本発明の評価システム、評価装置、評価方法は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、例えば、上述の波長掃引光源からの波長掃引光の安定性を評価する方法の各ステップを実行する命令を含むコンピュータ実施可能なプログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0068】
フィードバックを行う制御パラメータとしては、前述のように、KTN結晶の設定温度、KNT結晶に加える駆動電圧の大きさ、レーザ発振器やSOAの駆動電流・温度、光源筐体全体の温度などが考えられるが、これらだけに限定されない。本発明の波長掃引光源の評価方法、評価システム70では、波長掃引光から変換された電気信号の基本波および複数の高調波の分散を求めて、分散の平均値に基づいて、波長掃引光源の安定性を評価する。基本波および複数の高調波の分散の平均値に基づいて、波長掃引光源の制御パラメータに変更を加えるフィードバック動作を行う点で、基本波のみに対して強度ゆらぎ等を評価していた従来技術と異なっている。
【0069】
図9は、半導体レーザを駆動するSOAの電流値と強度ゆらぎの平均値Aとの関係を実測したデータを示す図である。波長掃引光源の半導体レーザを駆動するSOAの駆動電流を変えて、検出帯域内の高調波の強度ゆらぎ(分散)の平均値Aを求めたものである。強度ゆらぎ(分散の平均値)がSOA駆動電流に依存していることがわかる。図9の結果から、波長掃引光源のスペクトラムの不安定性の原因として、半導体レーザの特性が関連していることが確認できる。よって、図9に示したような分散の平均値をモニタしながら、SOA電流を最適化することが可能である。同様の光源の制御パラメータとして、KTN結晶の駆動条件(温度、駆動電圧)などを最適化し得る。
【0070】
以上説明したように、本発明に波長掃引光源の評価方法により、特定の検出帯域内に入る複数成分のスペクトラムのそれぞれの強度ゆらぎを一定時間観測し、それらの強度ゆらぎ(分散)の平均を指標とすることで、波長掃引光源の不安定性をより正確に評価することができる。波長掃引光源からの波長掃引光信号に特有の挙動を考慮した評価方法を利用することで、SS−OCT装置のOCTイメージのSNRを改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、一般的に波長掃引光源に利用することができる。特に、OCT装置に適用可能な波長掃引光源に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、21、71 波長掃引光源部
2、72 光電気変換器
3、73 周波数領域の信号強度測定器
10 波長掃引光源の評価測定系
20 SS−OCT装置
22 ビームスプリッタ
23 ミラー
24 生体(測定対象)
25 光検出器(PD)
70 評価システム
74 分散算術部
75 周波数設定部
76 平均算出部
77 安定性判定部
78 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10