特許第6621067号(P6621067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621067
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】光伝送システム、および、光伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/04 20060101AFI20191209BHJP
   H04B 10/2581 20130101ALI20191209BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20191209BHJP
【FI】
   H04J14/04
   H04B10/2581
   H04B10/61
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-238163(P2016-238163)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-98528(P2018-98528A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航平
(72)【発明者】
【氏名】小谷川 喬
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】那賀 明
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−198262(JP,A)
【文献】 特開2015−162805(JP,A)
【文献】 特開2016−040917(JP,A)
【文献】 特表2014−531149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/04
H04B 10/2581
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一心の光ファイバ中に複数の伝搬モードでそれぞれ信号光を伝搬可能なマルチモードファイバに向かって複数の信号光を送信する光マルチプレクサを有する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成され、
前記送信器の光マルチプレクサは、互いに同時期に送信される複数の信号光には、それぞれ別々の周波数を割り当てており、前記同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、
前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出す光デマルチプレクサと、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供する位相同期光源と、
前記光デマルチプレクサが取り出した信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換する、複数の信号光ごとのO/Eと、
前記O/Eが出力する電気信号に対して前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正する位相回転補償回路と、
前記位相回転補償回路が補正した電気信号と、前記位相回転補償回路が補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理を実行する波形等化回路と、
前記波形等化回路が出力する各電気信号を加算する加算回路とを含めて構成されることを特徴とする
光伝送システム。
【請求項2】
一心の光ファイバ中に信号光を伝搬する伝送路となるコアを複数形成したマルチコアファイバに向かって複数の信号光を送信する光マルチプレクサを有する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成され、
前記送信器の光マルチプレクサは、互いに同時期に送信される複数の信号光には、それぞれ別々の周波数を割り当てており、前記同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、
前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出す光デマルチプレクサと、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供する位相同期光源と、
前記光デマルチプレクサが取り出した信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換する、複数の信号光ごとのO/Eと、
前記O/Eが出力する電気信号に対して前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正する位相回転補償回路と、
前記位相回転補償回路が補正した電気信号と、前記位相回転補償回路が補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理を実行する波形等化回路と、
前記波形等化回路が出力する各電気信号を加算する加算回路とを含めて構成されることを特徴とする
光伝送システム。
【請求項3】
一心の光ファイバ中に向かって複数の信号光を空間多重により送信する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成され、
前記送信器は、同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、光デマルチプレクサと、位相同期光源と、O/Eと、DSPとを含めて構成され、
前記光デマルチプレクサは、前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出し、
前記位相同期光源は、前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供し、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光ごとの前記O/Eは、信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換し、
前記DSPは、各前記O/Eからの電気信号に対して、前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正した電気信号と、補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理
を実行し、その実行結果の各電気信号を加算することを特徴とする
光伝送システム。
【請求項4】
一心の光ファイバ中に向かって複数の信号光を空間多重により送信する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成される光伝送システムによって実行され、
前記送信器は、同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、光デマルチプレクサと、位相同期光源と、O/Eと、DSPとを含めて構成され、
前記光デマルチプレクサは、前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出し、
前記位相同期光源は、前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供し、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光ごとの前記O/Eは、信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換し、
前記DSPは、各前記O/Eからの電気信号に対して、前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正した電気信号と、補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理
を実行し、その実行結果の各電気信号を加算することを特徴とする
光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システム、および、光伝送方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信需要の増大に伴い、大容量トラヒックの伝送を可能とする光信号変調技術や光信号多重技術を用いた光伝送ネットワークが普及しつつある。特に1波当たりの伝送速度が100Gbps以上の超高速伝送システムにおいて、コヒーレント検波とデジタル信号処理技術を組み合わせたデジタルコヒーレント技術が広く用いられるようになってきた。ここで、受信側でコヒーレント検波された信号の後段にてデジタル信号処理を行うことで、優れた伝送特性が実現されている。
【0003】
光伝送を大容量化するアプローチとして、一心の光ファイバ中に同時に複数の信号光を送信可能とする空間多重技術が用いられる。光ファイバの空間の自由度を付加することで、従来のシングルモード形の光ファイバの限界を超える大容量光伝送が可能となる。
空間多重技術は、例えば、マルチモード、または、マルチコアである。マルチモードとは、一心の光ファイバを複数の伝搬モードに対応させることであり、光ファイバ内の信号光の伝搬角度が各伝搬モードで互いに異なっている。一方、マルチコアとは、一心の光ファイバ中に、屈折率の大きな領域(コア)を複数形成した光ファイバを用いる方式である。
【0004】
なお、空間多重技術において、ある空間伝送路(モード、コア)で送信される信号光は、別の空間伝送路で送信される信号光と干渉しないことが理想である。しかし、実際には、別々の空間伝送路であっても、ある信号光が別の空間伝送路と干渉してしまう、クロストーク(以下「XT」)が発生してしまう。
そこで、非特許文献1,2,3には、複数の空間伝送路でそれぞれ送信される信号光をもとに、デジタル信号処理技術(等化器)によりクロストークを補償することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Shibahara et. al.,「Dense SDM (12-core × 3-mode) transmission over 527 km with 33.2-ns mode-dispersion employing low-complexity parallel MIMO frequency-domain equalization」,Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC), 2015, Th5C.3
【非特許文献2】K. Igarashi et. al.,「114 Space-Division-Multiplexed Transmission over 9.8-km Weakly-Coupled-6-Mode Uncoupled-19-Core Fibers」,Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC), 2015, Th5C.4
【非特許文献3】坂本泰志,他「結合型マルチコアファイバを用いたMIMO伝送システムにおけるコア間群遅延差特性及び伝送特性の評価」、信学技報、OFT2014-55(2015-01)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ある空間伝送路には、本来その空間伝送路で送信されるべき信号光の主信号が存在するだけでなく、別の空間伝送路における信号光がXT信号として干渉してしまっている。非特許文献1,2,3においては、複数の空間伝送路でそれぞれ送信される信号光について、信号光の送信時の周波数は特に規定されていない。
【0007】
よって、複数の空間伝送路間で同じ周波数で信号光が送信された場合、主信号とXT信号とが同じ周波数で干渉してしまうため、クロストークの影響が大きくなってしまっていた。以下、図9図11を参照して、具体的な空間多重の光伝送システムとその課題について詳しく説明する。
【0008】
図9は、マルチモードとして3モードに対応した光伝送システムの構成図である。この光伝送システムは、送信器1xと、受信器2xとがマルチモードファイバ8aで接続されて構成される。
送信器1xは、デジタルコヒーレント方式として、送信対象のデジタル信号を位相変調した光信号を送信する。送信器1xの光MUX11xは、複数の光信号を1本のマルチモードファイバ8aで伝送するために波長多重を行うマルチプレクサ(Multiplexer)である。
受信器2xは、コヒーレント検波した光信号から、送信対象のデジタル信号を復元する。受信器2xの光DEMUX21xは、光MUX11xで多重化された光信号から複数の光信号を復元するデマルチプレクサ(Demultiplexer)である。
マルチモードファイバ8aは、一心の光ファイバにおいて複数の光伝送モードを許容する光ファイバである。
【0009】
カプラCPは、ダイオード光源Dから供給されたレーザ光をもとに生成した局発光をO/E(Optical/Electronic)23に供給する。この局発光は、送信された各波長信号と同一波長の光源が単純分岐されたものである。
O/E23は、光DEMUX21xが復元した光信号(ビート信号)ごとに、カプラCPから供給された局発光を用いて、光信号を電気信号に変換(コヒーレント検波)するコンバータである。
DSP(Digital Signal Processor)29xは、各O/E23が出力する各電気信号に対して、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)信号処理を行うことで、クロストーク(信号間の干渉)を補償する。
【0010】
なお、図9では、6本の波長信号L11〜L23が記載されている。ここで、波長信号Lnmの表記について、nは周波数番号を示す整数、mはモード番号を示す整数である。
例えば、波長信号L11〜L13は、それぞれn=1なので、互いに同じ光周波数で送信される。また、波長信号L21〜L23は、波長信号L11〜L13の光周波数とは別の光周波数で送信される。
また、波長信号L11,L21は、それぞれm=1なので、互いに同じモードで送信される。
【0011】
図10は、マルチコアとして3コアに対応した光伝送システムの構成図である。図9図10との違いは、空間多重技術として図9のマルチモードの代わりに、図10ではマルチコアが用いられる点である。
マルチコアファイバ8bは、マルチモードファイバ8aの代わりに用いられる。このマルチコアファイバ8bは、一心の光ファイバ中に、屈折率の大きな領域(コア)を複数形成した光ファイバである。
そして、送信器1yの光MUX11yは、送信器1xの光MUX11xから置き換わり、受信器2yの光DEMUX21yは、受信器2xの光DEMUX21xから置き換わる。
【0012】
光MUX11yは、マルチコアファイバ8bから光DEMUX21yに対して、6本の波長信号L11〜L23を送信する。ここで、波長信号Lnmの表記について、図9と同様に、nは周波数番号を示す整数、mはコア番号を示す整数である。例えば、波長信号L11,L21は、それぞれm=1なので、互いに同じコアで送信される。
DSP29yは、DSP29xと同様に、各O/E23が出力する各電気信号に対して、クロストークを補償する。
【0013】
図11は、空間多重度が3であるときの光スペクトルの分布グラフである。このグラフの横軸は波長信号の周波数を示し、グラフの縦軸は波長信号のパワーを示す。図9図10の波長信号Lnmのn=1の場合を図11の周波数「f11」とし、n=2の場合を周波数「f12」とする。
光MUX11x,11yは、3モードまたは3コアの波長信号L11〜L13の周波数「f11」をモード間またはコア間で同じ周波数として揃える。同様に、波長信号L21〜L23の周波数「f12」をモード間またはコア間で同じ周波数として揃える。
【0014】
これにより、波長信号L11は、第1のO/E23にて主信号(実線で図示)として大きなパワーで受信できるものの、第2,第3のO/E23にてXT信号(破線で図示)として小さなパワーで漏れてしまう。同様に、波長信号L12は、第2のO/E23にて主信号として大きなパワーで受信できるものの、第1,第3のO/E23にてXT信号として小さなパワーで漏れてしまう。
このように、個々のXT信号は小さなパワーであっても、互いに同じ周波数で蓄積されていくため、モード数やコア数が増えたときには、主信号に対してXT信号が大きく影響してしまう。
【0015】
そこで、本発明は、空間多重化された光伝送システムにおいて、空間伝送路間のクロストークの影響を低減することを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明の光伝送システムは、以下の特徴を有する。
本発明の光伝送システムは、一心の光ファイバ中に複数の伝搬モードでそれぞれ信号光を伝搬可能なマルチモードファイバに向かって複数の信号光を送信する光マルチプレクサを有する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成され、
前記送信器の光マルチプレクサが、互いに同時期に送信される複数の信号光には、それぞれ別々の周波数を割り当てており、前記同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、
前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出す光デマルチプレクサと、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供する位相同期光源と、
前記光デマルチプレクサが取り出した信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換する、複数の信号光ごとのO/Eと、
前記O/Eが出力する電気信号に対して前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正する位相回転補償回路と、
前記位相回転補償回路が補正した電気信号と、前記位相回転補償回路が補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理を実行する波形等化回路と、
前記波形等化回路が出力する各電気信号を加算する加算回路とを含めて構成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光伝送システムは、一心の光ファイバ中に信号光を伝搬する伝送路となるコアを複数形成したマルチコアファイバに向かって複数の信号光を送信する光マルチプレクサを有する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成され、
前記送信器の光マルチプレクサが、互いに同時期に送信される複数の信号光には、それぞれ別々の周波数を割り当てており、前記同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器は、
前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出す光デマルチプレクサと、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供する位相同期光源と、
前記光デマルチプレクサが取り出した信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換する、複数の信号光ごとのO/Eと、
前記O/Eが出力する電気信号に対して前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正する位相回転補償回路と、
前記位相回転補償回路が補正した電気信号と、前記位相回転補償回路が補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理を実行する波形等化回路と、
前記波形等化回路が出力する各電気信号を加算する加算回路とを含めて構成されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の光伝送方法は、一心の光ファイバ中に向かって複数の信号光を空間多重により送信する送信器と、その送信器から送信された信号光を受信する受信器とを含めて構成される光伝送システムによって実行され、
前記送信器は、同時期に送信される複数の信号光に割り当てる別々の周波数について、各周波数どうしの所定の周波数間隔は、時間経過によらず一定の間隔を保ち続けることとし、
前記受信器が、光デマルチプレクサと、位相同期光源と、O/Eと、DSPとを含めて構成され、
前記光デマルチプレクサが、前記光ファイバから受信した複数の信号光を別々の信号光として取り出し、
前記位相同期光源が、前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光それぞれについて、信号光と同一周波数の局発光を提供し、
前記光デマルチプレクサが取り出した複数の信号光ごとの前記O/Eが、信号光の光信号および局発光の光信号を電気信号に変換し、
前記DSPが、各前記O/Eからの電気信号に対して、前記所定の周波数間隔の位相回転成分によって補正した電気信号と、補正していない電気信号とでそれぞれ波形等化処理を実行し、その実行結果の各電気信号を加算することを特徴とする。
さらに、本発明の光伝送システムは、前記光伝送方法を実行するものである。
【0021】
これにより、あるO/Eが主信号となる信号光に加えて、クロストークした別の信号光を検波したとしても、後段の位相回転によってクロストークした別の信号光を打ち消すような補正信号が生成される。よって、信号光と補正信号との加算によりクロストーク成分が低減されることで、クロストークの補償処理が実現される。
また、互いに同時期に送信される複数の信号光の周波数は、互いに重ならないように配置されているので、ある信号光に対して別の信号光がクロストークしたとしても、信号光の周波数帯への影響は少ない。よって、空間多重化された光伝送システムにおいて、空間伝送路間のクロストークの影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空間多重化された光伝送システムにおいて、空間伝送路間のクロストークの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係わるマルチモードとして3モードに対応した光伝送システムの構成図である。
図2】本実施形態に係わるマルチコアとして3コアに対応した光伝送システムの構成図である。
図3】本実施形態に係わる図1および図2のDSPの詳細を示す構成図である。
図4】本実施形態に係わる図3の各O/Eから入力されるアナログ信号の光スペクトルの分布グラフである。
図5】本実施形態に係わる図4の分布グラフを説明するために、2信号の場合に限定したときの光スペクトルの分布グラフである。
図6】本実施形態に係わるマルチモードとして2モードに対応した光伝送システムの構成図である。
図7】本実施形態に係わるマルチコアとして2コアに対応した光伝送システムの構成図である。
図8】本実施形態に係わる図6図7の4入力形態において、1つの主信号波形と、3つのXT信号波形とが検波されたときの光スペクトルの分布グラフである。
図9】マルチモードとして3モードに対応した光伝送システムの構成図である。
図10】マルチコアとして3コアに対応した光伝送システムの構成図である。
図11】空間多重度が3であるときの光スペクトルの分布グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、マルチモードとして3モードに対応した光伝送システムの構成図である。
送信器1aの光MUX11aは、図9の送信器1xの光MUX11xから置き換わり、受信器2aの光DEMUX21aは、受信器2xの光DEMUX21xから置き換わる。光MUX11aは、マルチモードファイバ8aから光DEMUX21aに対して、6本の波長信号L31,L42,L53,L61,L72,L83を送信する。
DSP29は、DSP29xと同様に、各O/E23が出力する各電気信号に対して、クロストークを補償する。
【0026】
図9図1との主な相違点は、以下の3点である。
第1の相違点は、光MUX11aが送信する波長信号Lnmの波長配置(周波数配置)の違いである(詳細は図4で後記)。前記したように、nは周波数番号を示す整数、mはモード番号を示す整数である。図9では、波長信号L11〜L13に示すように、別々のモードであっても、同じ周波数(n=1)が割り当てられる。図1では、互いに同時期に送信される波長信号L31,L42,L53に示すように、別々の周波数(n=3,4,5)が割り当てられる。なお、m=3,n=3〜8(6種類)としたのは、あくまで一例であり、m,nは、任意の数を用いてもよい。
【0027】
第2の相違点は、局発光光源の違いである(詳細は図4で後記)。図9では、各O/E23に供給される局発光は、信号光と同一波長の光源(ダイオード光源DおよびカプラCP)が単純分岐されたものを用いる。図1では、図9のダイオード光源DおよびカプラCPの代わりに、位相同期光源22を用いて各O/E23に局発光を供給する。
この位相同期光源22は、信号光と同一波長の局発光の光源である点については、図9の光源(ダイオード光源DおよびカプラCP)と共通する。一方、第1の相違点で示したように、信号光の波長配置がモード間で別々の周波数を用いることに伴い、位相同期光源22は、信号光ごとに別々の周波数とした局発光を、各信号光を扱うO/E23へと供給する。
【0028】
第3の相違点は、DSP29とDSP29x,29yとの違いである(詳細は図3で後記)。図1のDSP29は、新たに、第1の相違点で割り当てた別々の周波数間の差分値(図4のΔfの位相回転成分)を用いて、主信号を補正する。その補正後の主信号をXT信号と加算することにより、XT信号のパワーを減少させることで、クロストークを補償する。
なお、図1では、送信器1aと受信器2aとを接続する制御線9がマルチモードファイバ8aとは別に用意される。この制御線9は、マルチモードファイバ8aでの光伝送で使用される各パラメータ(Δfなど)の送受信に使用される。
【0029】
図2は、マルチコアとして3コアに対応した光伝送システムの構成図である。図1図2との違いは、空間多重技術として図1のマルチモードの代わりに、図2ではマルチコアが用いられる点である。
送信器1bの光MUX11bは、図10の送信器1yの光MUX11yから置き換わり、受信器2bの光DEMUX21bは、受信器2yの光DEMUX21yから置き換わる。
マルチコアファイバ8bは、マルチモードファイバ8aの代わりに用いられる。マルチコアファイバ8bには、6本の波長信号L31,L42,L53,L61,L72,L83が送信される。ここで、波長信号Lnmの表記について、図10と同様に、nは周波数番号を示す整数、mはコア番号を示す整数である。
【0030】
なお、空間多重技術として、図1のマルチモード、および、図2のマルチコアをそれぞれ説明した。さらに、空間多重技術として、マルチモードおよびマルチコアを併用してもよい。つまり、マルチモードファイバ8aおよびマルチコアファイバ8bとして、マルチモード伝送が可能なコアを複数束ねた、光ファイバケーブルを用いてもよい。
【0031】
図3は、図1および図2のDSP29の詳細を示す構成図である。
DSP29は、A/D変換器31と、位相回転補償回路32と、波形等化回路33と、加算回路34と、タップ更新器35と、位相推定回路36と、識別回路37とを含めて構成される。
A/D変換器31は、各O/E23から入力されるアナログ信号をサンプリングすることで、デジタル化する。A/D変換器31の出力線を把握しやすくするため、図3では、第1O/E23経由の出力線(実線太線)と、第2O/E23経由の出力線(実線細線)と、第3O/E23経由の出力線(破線)とを区別して表記している。
【0032】
位相回転補償回路32は、A/D変換器31が出力するデジタル信号に対して、位相回転を作用させる。この位相回転に用いる位相回転成分を図3では、「+Δf」などで表記している。
波形等化回路33は、時間領域もしくは周波数領域でのFIR(Finite Impulse Response)フィルタから構成されており、そのタップ係数「h11,h12,h13…」は、タップ更新器35により更新される。
波形等化回路33は、偏波成分ごとの最尤推定によりFIRフィルタの適応信号処理を行う。なお、マルチモード伝送ではモード毎に群速度が異なることが知られている。その対応として、FIRフィルタの段数を非常に多く(群速度の遅延分の段数)設けてもよいし、FIRフィルタの前段で、モード群速度遅延を補償する機能ブロックを設けてもよい。
例えば左側の波形等化回路33には、以下の3つのデジタル信号が入力される。
・タップ係数h11への入力信号として、位相回転なしのデジタル信号(実線太線)。
・タップ係数h12への入力信号として、「+Δf」の位相回転ありのデジタル信号(実線細線)。
・タップ係数h13への入力信号として、「+Δ2f」の位相回転ありのデジタル信号(破線)。
【0033】
加算回路34は、波形等化回路33のタップ係数ごとの出力を加算することで、1つの出力信号に統合する。
タップ更新器35は、波形等化回路33のFIRフィルタのタップ更新アルゴリズムを動作させる。タップ更新アルゴリズムによりフィルタ形状が最適化されることで、偏波分離や残留分散補償、偏波分散補償が行われるとともにクロストーク成分が補償される。
なお、タップ更新アルゴリズムとしては、例えば、CMA(Constant Modulus Algorithm)やLMS(Least Mean Square)を用いることが可能である。これらのアルゴリズムの詳細を含む波形等化回路33やタップ更新器35の具体的な実装については、例えば、特開2015-65516号公報に記載されている。
【0034】
位相推定回路36は、波形等化回路33の出力信号に対して、信号光と局発光とによる位相雑音を除去し、正しい搬送波の位相基準を抽出(推定)する。
識別回路37は、位相推定回路36の出力信号に対して、ビット単位での誤りを訂正するなどの処理を行い、各チャンネルの送信信号をデジタルの電気信号として識別する。
【0035】
図4は、図3の各O/E23から入力されるアナログ信号の光スペクトルの分布グラフである。
「aij」は、第jO/Eで受信した周波数=i番目の主信号波形(a)を示す(実線表記)。その主信号波形の中心には、位相同期光源22が供給する局発光の基準周波数(f21〜f33)が縦の直線として示される。
なお、前記した「局発光は信号光と同一波長」という表現について、図4に例示するように、「同一波長」とは、信号光の波長a21がf21を中心にある程度の広がりをもって分布しており、局発光の波長f21がその中心に内包されることである。
「bij」は、第jO/Eで受信した周波数=i番目のXT信号波形(a)を示す(破線表記)。
ここで、図1の「第1の相違点」として説明したように、光MUX11aは、同時期に送信する主信号aijの周波数配置について、別々の周波数を割り当てる。この「別々の周波数」の一例として、図4では、互いにΔfの幅だけずらして配置した場合を例示した。
なお、Δfの幅だけずらして配置する例だけでなく、主信号aijどうしの周波数配置について、信号間のクロストークの影響を抑える程度にずらして配置してもよい。例えば、a21の主信号の周波数分布と、a22の主信号の周波数分布との重複部分が30%以下となるように、a21,a22間をずらして配置する。同様に、a22,a23間についても、重複部分が30%以下となるように配置する例が挙げられる。さらに、各主信号に割り当てる周波数(またはその周波数間の幅)は、時間経過によって一定でもよいし、可変としてもよい。
【0036】
なお、基準周波数そのものは時間経過に伴って多少変化が発生しても、位相同期光源22は、基準周波数どうしの周波数間隔(f22−f21、f23−f22)については時間経過しても一定の幅(Δf)を保ち続ける必要がある。各O/E23で受信した電気信号の位相回転成分を揃えて信号処理を可能とするためである。よって、周波数間隔が一定である光を出力可能な光源の一例として、位相同期光源22を用いている。
また、変調速度(f31,f21の周波数差分)に対して、波長間隔Δfを広く設定することにより、クロストーク量の重複部分を低減させることができる。一方、f31,f21の周波数差分を小さくすると、伝送容量は増加するものの、波長間隔Δfを狭く設定することにより、クロストーク量も増加してしまう。
【0037】
各O/Eからの入力信号には、1つの主信号(a22)と、2つのXT信号(b21,b23)とが混在している。そこで、位相回転補償回路32により「-Δf」の位相回転を作用させた主信号(a21)を用いて、波形等化回路33および加算回路34は、同じ周波数帯のXT信号(b21)を除去する。
同様に、位相回転補償回路32により「+Δf」の位相回転を作用させた主信号(a23)を用いて、波形等化回路33および加算回路34は、同じ周波数帯のXT信号(b23)を除去する。
【0038】
なお、主信号(a22)に着目すると、2つのXT信号(b21,b23)は周波数帯の一部が重複している。このような重複部分が存在する信号間の関係を、周波数的に隣接しているので「隣接信号」と呼ぶ。
周波数的に「隣接信号」であっても、コアの配置が近接していない信号同士や、モードの結合率が低い信号同士は、クロストークの影響が弱いために、干渉の度合い(パワー)も弱くなる。そこで、隣接信号であってもクロストークの影響が弱い信号同士は、XT信号の除去処理を行わなくてもよい。また、隣接信号でなくてもクロストークの影響が強い信号同士に対しても、XT信号の除去処理を行ってもよい。
なお、第1O/E23からみて、第2O/E23との局発光の基準周波数の差分はΔfであり、第3O/E23との局発光の基準周波数の差分はΔ2fである。つまり、同一モードにおける隣接信号との周波数間隔(Δ2f)を、他モードの波長信号との周波数間隔(Δf)の整数倍(2倍)とするように配置する。位相同期光源22は、同一モードの隣接信号間においても局発光の光源として共用される。
【0039】
図5は、図4の分布グラフを説明するために、2信号の場合に限定したときの光スペクトルの分布グラフである。
周波数f21の局発光を用いて第1O/E23が受信した波長信号(a21,b22)は、E1_OE1である。
E1_OE1≒T1・E1・exp{j2π(f1-f21)t}
T1は波長信号E1がマルチモード伝送路で受ける伝達関数である。
f1は波長信号E1の周波数(複素ベクトル)である。
【0040】
周波数f22の局発光を用いて第2O/E23が受信した波長信号(a22,b21)は、E1_OE2である。
E1_OE2≒T2・E1・exp{j2π(f1-f22)t}
T2は波長信号E1がモード遷移を経て、第2O/E23で受信されるまでに伝送路で受ける伝達関数である。
DSP29(位相回転補償回路32)は、E1_OE1をΔf(=f22-f21)の位相回転成分によって補正する。そして、波形等化回路33および加算回路34は、補正後のE1_OE1(a21)を用いて、E1_OE2内のXT信号成分(b21)を除去する。
【0041】
図6は、マルチモードとして2モードに対応した光伝送システムの構成図である。図1のマルチモード形態との違いは、図6では、1つのDSP29が4入力に対応している点である。
図7は、マルチコアとして2コアに対応した光伝送システムの構成図である。図2のマルチモード形態との違いは、図7では、1つのDSP29が4入力に対応している点である。
【0042】
図8は、図6図7の4入力形態において、1つの主信号波形と、3つのXT信号波形とが検波されたときの光スペクトルの分布グラフである。
周波数f42の局発光を用いて第2O/E23が受信した波長信号(a42,b43など)は、E3_OE2である。
E3_OE2≒T3'・E3・exp{j2π(f3-f42)t}
T3’は波長信号E3がモード遷移を経て、第2O/E23で受信されるまでに伝送路で受ける伝達関数である。
f3は波長信号E3の周波数(複素ベクトル)である。
【0043】
周波数f43の局発光を用いて第3O/E23が受信した波長信号(a43,b42など)は、E3_OE3である。
E3_OE3≒T3・E3・exp{j2π(f3-f43)t}
T3は波長信号E3が伝送路で受ける伝達関数である。
DSP29(位相回転補償回路32)は、E3_OE3をΔf(=f43-f42)の位相回転成分によって補正する。そして、波形等化回路33および加算回路34は、補正後のE3_OE3(a43)を用いて、E3_OE2内のXT信号成分(b43)を除去する。
以上、図8のうちの1つのXT信号成分(b43など)の除去処理を説明した。同様にして、残り2つのXT信号波形も除去することにより、1つの主信号波形(a42など)を補償できる。
【0044】
以上説明した本実施形態では、マルチモードおよびマルチコアを用いた空間多重光通信において、図1の説明で示した第1の相違点(波長信号Lnmの波長配置(周波数配置)の違い)により、クロストークの影響を低減することができる。
さらに、図1の説明で示した第2の相違点(局発光光源の違い)および第3の相違点(DSP29の位相回転補正処理など)により、クロストークを補償することで、さらに、クロストークの影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b,1x,1y 送信器
2a,2b,2x,2y 受信器
8a マルチモードファイバ
8b マルチコアファイバ
9 制御線
11a,11b,11x,11y 光MUX(光マルチプレクサ)
21a,21b,21x,21y 光DEMUX(光デマルチプレクサ)
22 位相同期光源
23 O/E
29 DSP
31 A/D変換器
32 位相回転補償回路
33 波形等化回路
34 加算回路
35 タップ更新器
36 位相推定回路
37 識別回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11