特許第6621168号(P6621168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6621168ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621168
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 9/02 20060101AFI20191209BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20191209BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20191209BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20191209BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20191209BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01B9/02 Z
   C08K3/22
   C08K3/36
   C08L31/04
   H01B7/18 H
   H01B7/295
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-235120(P2014-235120)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-100140(P2016-100140A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年6月15日
【審判番号】不服-13328(P-13328/J1)
【審判請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴之
【合議体】
【審判長】 西村 泰英
【審判官】 山田 正文
【審判官】 五十嵐 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−534479(JP,A)
【文献】 特開2014−7042(JP,A)
【文献】 特開昭61−264034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B7/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、
前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなり、前記押えテープ層は、前記押えテープを前記送電ケーブルの軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されていることを特徴とする送電ケーブル。
【請求項2】
前記ベースポリマー100質量部に対して、前記金属水和物の添加量が130質量部以下となることを特徴とする請求項1に記載の送電ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い難燃性を有し、燃焼時に発生する有煙量を抑制したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有化合物を用いずに難燃性を付与する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの、燃焼時に腐食性ガスを発生しない金属水和物を用いる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
高い難燃性を有するノンハロゲン樹脂組成物を用いた電力ケーブルにおいては、一般に、電気特性を重視し、金属水和物を用いないか或いは低充填とした構成の絶縁層を用い、外層に位置するシース材料で難燃性を発現させる構成を採用し、シース層の難燃手法としては、樹脂に対して多量の金属水和物を添加する方法が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−6446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこの方法では、燃焼時に生成する燃え殻が脆弱となるため、電線内部に燃え広がり、内部可燃物の膨張、ガス化、不完全燃焼を招き難燃性や発煙特性を悪化させる問題点があった。
【0005】
上述の問題点を解決する方法としては、ガス化及びその揮散を抑制するために、高融点芳香族テープや不燃テープ、高難燃テープを用いたりする方法もあるがケーブル外径が太くなる問題点やコストが向上するため、未だ検討の余地があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、高難燃かつ低発煙量を実現したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブルを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、下記のノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブルを提供する。
【0008】
[1]導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、
前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなり、前記押えテープ層は、前記押えテープを前記送電ケーブルの軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されていることを特徴とする送電ケーブル。
[2]前記ベースポリマー100質量部に対して、前記金属水和物の添加量が130質量部以下となることを特徴とする請求項1に記載の送電ケーブル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記課題を解決し、高難燃かつ低発煙量を実現したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る送電ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[送電ケーブル]
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルは、導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を1種類以上含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る送電ケーブルの正面図である。
【0013】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルは、導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えたものである。
【0014】
より具体的には、この送電ケーブル1は、撚り線からなる導体2と、導体2の外周に形成された内部半導電層3と、内部半導電層3の外周に形成された絶縁層4と、絶縁層4の外周に形成された外部半導電層5と、外部半導電層5の外周に半導電性テープ60を巻き付けて形成された半導電性テープ層6と、半導電性テープ層6の外周にワイヤー70を巻き付けて形成された遮蔽層7と、遮蔽層7の外周に押えテープ80を巻き付けて形成された押えテープ層8と、押えテープ層8の外周に形成されたシース層9とを備えるものを使用することができる。シース層9に用いるノンハロゲン難燃性樹脂組成物については後述する。
【0015】
導体2は、複数の素線を撚り合わせて形成されている。素線としては、例えばすずめっき軟銅線等の線材を用いることができる。導体2は、例えば7000V以上の高電圧を送電する。
【0016】
内部半導電層3及び外部半導電層5は、電界の集中を緩和させるために設けられており、例えば、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等のゴムにカーボン等の導電性粉末を分散して導電性を持たせたものを押出成形することにより形成される。
【0017】
絶縁層4は、例えばエチレンプロピレンゴム、塩化ビニル、架橋ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素系材料等の材料を押出成形することにより形成される。
【0018】
半導電性テープ層6は、外部半導電層5の外周に半導電性テープ60をケーブル長手方向に沿って螺旋状に例えばテープ幅の1/4以上1/2以下が重なるように重ね巻きして形成される。半導電性テープ60は、例えばナイロンまたはレーヨン、PET等からなる経糸と緯糸とを編み込んだ基布又は不織布にエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等のゴムにカーボン等の導電性粉末を分散したものを含浸させて形成され、例えば厚さ0.1mm以上0.4mm以下、幅30mm以上70mm以下のものを用いることができる。
【0019】
遮蔽層7は、半導電性テープ層6の外周にワイヤー70をケーブル軸方向に沿って螺旋状に巻き付けて形成されている。ワイヤー70は、例えば錫メッキ軟銅等の導電性材料から形成され、例えば直径0.4mm以上0.6mm以下の線材を用いることができる。遮蔽層7は、使用時にグランドに接続される。
【0020】
押えテープ層8は、遮蔽層7の外周に押えテープ80をケーブル軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されている。押えテープ80は、例えば、厚さ0.03mm以上0.2mm以下、幅50mm以上90mm以下のプラスチック又はレーヨンからなるテープを用いることができる。
【0021】
シース層9としては、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いる。
【0022】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルにおいて用いられるエチレン酢酸ビニル共重合体としては、その酢酸ビニルの含量が50重量%以上のものが用いられる。酢酸ビニル含量が50重量%未満であると、得られる燃え殻が脆化し、良好な難燃性、低発煙性は得られないためである。
【0023】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルにおいて用いられる金属水和物とシリカの合計量は、ベースポリマー100質量部に対して100質量部以上180質量部以下でなければ、高難燃性、低発煙性は実現しない。100質量部未満であると難燃性が不十分となり、180質量部を超えると発煙性が悪化するためである。高難燃性と低発煙性の両立の観点からより好ましくは、130質量部以上150質量部以下である。
【0024】
金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることができ、表面が脂肪酸やシラン化合物でカップリングされていることが好ましい。金属水和物の添加量は、130質量部以下とすることが好ましい。難燃性の観点からは90質量部以上130質量部以下が好ましく、発煙性の観点からは上述2種の金属水和物を併用して、金属水和物の添加量を100質量部以上120質量部以下とすることがより好ましい。
【0025】
これら2種の併用割合としては、重量比で水酸化マグネシウム:水酸化アルミニウム=40:60〜60:40であることが好ましい。これは、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物での燃焼開始後のケーブルの温度上昇抑制や燃え殻固化には、段階的脱水手法がより有効であることが判明したことによる。ここでいう段階的脱水とは水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの脱水開始温度を指す。夫々210℃付近、280℃付近となる。
【0026】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルにおいて用いられるシリカは、非結晶、結晶のどちらも使用することができる。シリカは燃焼時の燃え殻固化のために適用する。シリカを添加しない場合には、燃え殻が固化せず、低発煙化が実現しない。
【0027】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルの効果は、ケーブル外径(直径)が、30mm以上60mm以下であり、シース層の厚さが2mm以上4mm以下である送電ケーブルにおいて発現する。ケーブル外径が30mm未満では難燃性が不十分で、60mmを超える場合には金属水和物とシリカとの合計の添加量が180質量部以下であっても、高難燃性と低発煙性の両立が可能となる。
【0028】
シース層の厚さは2mm未満であると難燃性、低発煙性とも発現しない。4mmを超えると、金属水和物とシリカとの合計の添加量が180質量部以下であっても、高難燃性と低発煙性の両立が可能となる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルは、導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えたものである。燃焼時に生成するシース層の燃え殻が適度に強靭で、適度に空孔度を所有しているためである。強靭な燃え殻は、燃焼熱による絶縁体などの膨張による応力を緩和し送電ケーブル内部への炎の侵入を防ぐ断熱層として働き、一方で空孔度は、燃焼熱による送電ケーブル内部からのガス成分をシース層側に放出させ不完全燃焼を抑制する方向に働くと考えられる。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係る送電ケーブルに使用するノンハロゲン難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、マレイン酸等で変性されたポリオレフィン樹脂やシランカップリング剤、架橋反応促進剤、酸化防止剤、その他の滑剤、着色剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。
【0031】
(製造方法)
次に、送電ケーブル1の製造方法の一例について説明する。
【0032】
導体2の外周に、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5をこの順序で押出成形する。次に、外部半導電層5の外周に半導電性テープ60をケーブル軸方向に沿って螺旋状に巻き付けて半導電性テープ層6を形成し、半導電性テープ層6の外周にワイヤー70をケーブル軸方向に沿って螺旋に巻き付けて遮蔽層7を形成し、遮蔽層7の外周に押えテープ80をケーブル軸方向に螺旋状に沿って巻き付けて押えテープ層8を形成する。次に、押えテープ層8の外周にシース層9を押出成形する。その後、150℃以上180℃以下の雰囲気下の連続加硫装置に5min以上60min以下の条件で加硫を行い、このようにして送電ケーブル1が製造される。
【0033】
本発明の実施の形態に係る送電ケーブルの用途としては、例えば、鉄道車両用の特別高圧ケーブル等に使用することができる。
【0034】
[本発明の実施の形態の効果]
本発明は、導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなることで、高難燃かつ低発煙量を実現したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブルを得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示して本発明を、より具体的に説明する。かかる実施例は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲で任意に変更が可能である。
【0036】
(実施例)錫めっき軟銅撚線からなる導体上に、共押出〜連続加硫法によって、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層からなる3層押出被覆線を得た。その後、半導電性テープを巻き回し、ワイヤーを横巻きし、押えテープ(例えばPETテープとめり込み防止のスフテープを施し、ケーブル外径が異なるものを3種類作製した。この3種類はケーブル外径が32mm、37.7mm、50.7mmとなるよう調整した。
【0037】
シース層は、作製した3種類の構造のものに、厚さが2mm以上4mm以下となるように複数種、押出機により被覆し、その後バッチ式加硫法にて、送電ケーブルを得た。シース層の配合組成は、表1に示すものを適用した。
【0038】
(比較例)シース層の配合組成を表2に記載したとおりとし、ケーブル外径を30mm未満60mm以上、厚さを2mm未満4mmを超えるものとした以外は、実施例と同様の条件で、送電ケーブルを得た。
【0039】
得られた送電ケーブルについて、燃焼性と発煙性試験を下記の方法に基づいて検討を行った。
【0040】
燃焼性: EN50266−2−4に基づき、垂直トレイ燃焼試験(VTFT)を実施した。判定は試験後の炭化長250cm未満を合格とし、炭化長250cmを超えるものを不合格とした。
【0041】
発煙性: EN50268−2に基づき、3mキューブ発煙性試験を実施した。判定は透過率60%以上を合格とし、透過率60%未満を不合格とした。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1に示した結果から、実施例1乃至実施例8で得られた送電ケーブルは、難燃性、発煙性とも良好な結果が得られた。
【0045】
これに対して、表2に示した比較例1乃至比較例7は、難燃性、発煙性双方、或いはいずれかに問題点を生じた。
【0046】
比較例1においては、シース層の厚さが0.5mmであり薄いため、難燃試験及び発煙性試験ともに不合格であった。
【0047】
比較例2においては、シース層の厚さが0.5mmであり薄く、かつケーブル外径が25.0mmと細いものであったため、難燃試験及び発煙性試験ともに不合格であった。
【0048】
比較例3においては、金属水和物とシリカの添加量の合計が190.0質量部であり多すぎたため、発煙性試験が不合格であった。
【0049】
比較例4においては、金属水和物とシリカの添加量の合計が80.0質量部であり少なすぎたため、難燃試験が不合格であった。
【0050】
比較例5においては、VA量が41%と小さいため、難燃試験が不合格であった。
【0051】
続いて、実施例1と比較例3の発煙試験後の送電ケーブルを解体し、観察した。結果、比較例3では絶縁体が燃焼により損傷した部分が1800mm程確認されたが、実施例1は損傷部が確認されなかった。シース層の燃え殻は、実施例1の方が硬く、比較例3の方が空孔率が高いことが確認された。実施例1は金属水和物の脱水による空孔を適度に形成し、シース層自体の可燃ガスはシリカが起点となり希釈されたため、より硬い燃え殻が形成できて、絶縁体の損傷による発煙性の低下を抑制したものと推定する。一方、比較例3は、金属水和物の添加量が高いため吸熱効果により燃え殻の空孔率を高めた。しかし、それが燃え殻自体の脆化と絶縁体等の不完全燃焼ガスの放出を助長したものと推定する。
【符号の説明】
【0052】
1 送電ケーブル
2 導体
3 内部半導電層
4 絶縁層
5 外部半導電層
6 半導電性テープ層
7 遮蔽層
8 押えテープ層
9 シース層
60 半導電性テープ
70 ワイヤー
80 押えテープ
図1