特許第6621803号(P6621803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許6621803抗菌性パエニバチルス株、フザリシジン型化合物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621803
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】抗菌性パエニバチルス株、フザリシジン型化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20191209BHJP
   C12P 17/18 20060101ALI20191209BHJP
   A01N 63/02 20060101ALI20191209BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20191209BHJP
   A61K 35/742 20150101ALN20191209BHJP
   A61P 31/00 20060101ALN20191209BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20191209BHJP
   A61K 38/12 20060101ALN20191209BHJP
【FI】
   C12N1/20 AZNA
   C12P17/18 C
   A01N63/02 P
   A01P3/00
   !A61K35/742
   !A61P31/00
   !A61K45/00
   !A61K38/12
【請求項の数】18
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2017-505833(P2017-505833)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-526351(P2017-526351A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015067925
(87)【国際公開番号】WO2016020371
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】14179620.1
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM26969
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM26970
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM26971
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100169579
【弁理士】
【氏名又は名称】村林 望
(72)【発明者】
【氏名】ジーペ,イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーサー,ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】クラパッハ,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,カール−ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】スプロアテ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゲ,ケルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブランツ,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】ティネス,エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】アンテロ,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】サンドジョ,ルイス ペルゴー
(72)【発明者】
【氏名】オパッツ,ティル
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/086645(WO,A1)
【文献】 Journal of Bacteriology,2011年,Vol.193, No.1,pp.311-312
【文献】 Biochemical and Biophysical Research Communications,2008年,Vol.365,pp.89-95
【文献】 Journal of Bacteriology,2010年,Vol.192, No.22,pp.6103-6104
【文献】 Beilstein J. Org. Chem.,2017年,Vol.13,pp.1430-1438
【文献】 Journal of Chromatography A,2019年,Vol.1586,pp.91-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 − 7/08
C12N 15/00 − 15/90
C12P 1/00 − 41/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/WPIDS/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)受託番号DSM26969でDSMZに寄託された株Lu16774、
b)受託番号DSM26970でDSMZに寄託された株Lu17007、及び
c)受託番号DSM26971でDSMZに寄託された株Lu17015
ら成る群から選択される、パエニバチルス(Paenibacillus)属の株。
【請求項2】
アルテルナリア属の種(Alternaria spp.)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)から成る群から選択される植物病原体のうち少なくとも2種に対する抗菌類活性を有する、請求項1記載のパエニバチルス属の株。
【請求項3】
少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、以下の化合物:
【化1】
のうち少なくとも1種を産生する、請求項1又は2に記載のパエニバチルス属の株。
【請求項4】
フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bから成る群から選択される少なくとも3種の化合物をさらに産生可能である、請求項に記載のパエニバチルス属の株。
【請求項5】
以下の化合物:
【化2】
のうち少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のパエニバチルス属の株。
【請求項6】
フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bから成る群から選択される少なくとも3種の化合物をさらに含む、請求項に記載のパエニバチルス属の株。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株の製された培養物。
【請求項8】
以下の化合物:
【化3】
のうち少なくとも1種を含む、請求項に記載のパエニバチルス属の株の全培養液又は細胞不含抽出物。
【請求項9】
式I
【化4】
[式中、
Rは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸及び12-グアニジノドデカン酸から選択され、
X1は、トレオニンであり、
X2は、イソロイシンであり、
X3は、チロシンであり、
X4は、トレオニンであり、
X5は、グルタミン及びアスパラギンから選択され、
X6は、アラニンであり、
矢印は、Rのカルボニル部分とアミノ酸X1のアミノ基の間又は1種のアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単アミド結合を規定し、
矢印の先端は、前記アミノ酸X1の、又は前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
矢頭のない単線は、X6のカルボニル基とX1のヒドロキシル基の間の単エステル結合を規定する]
で示される化合物又はその農業的に許容される塩。
【請求項10】
化合物1A及び1B
【化5】
又はその農業的に許容される塩から選択される、請求項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項又は10に記載の化合物又はその塩を調製する方法であって、請求項1〜のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株を培養すること、及び全培養液から前記化合物又はその塩を回収することを含む、前記方法。
【請求項12】
a)請求項1〜のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株、又は
b)請求項に記載の製された培養物、又は
c)請求項に記載の全培養液若しくは細胞不含抽出物、又は
d)請求項若しくは10に記載の式Iの化合物若しくはその塩、
及び補助物、
を含む組成物。
【請求項13】
殺有害生物剤をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
殺有害生物剤が、さらなるバイオ農薬である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1214のいずれか1項に記載の組成物を含むコーティングを有する植物繁殖材料。
【請求項16】
植物病原体を防除若しくは抑制するか又は植物病原体感染を防ぐための、又は有害微生物による侵襲及び破壊から材料を保護するための、請求項1214のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
植物病原体を防除、抑制するか又は植物病原体感染を防ぐ方法であって、植物病原体、その生息地、又は植物病原体攻撃から保護しようとする植物、又は土壌若しくは繁殖材料が、有効量の請求項1214のいずれか1項に記載の組成物を用いて処理される、前記方法。
【請求項18】
植物病原体及び/又は有害微生物が、有害菌類から選択される、請求項16に記載の使用又は請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌から元々単離され、広範囲の病原体に対して拮抗する活性を示し、抗菌代謝産物を産生可能である、パエニバチルス(Paenibacillus)属のメンバーである新規単離細菌株に関する。本発明はまた、このような新規細菌株のうち少なくとも1種、その全培養液又は細胞不含抽出物若しくは画分若しくはその少なくとも1種の代謝産物並びに/又は植物病原体に対して拮抗する活性を示す、それぞれの細菌株の同定特徴のすべてを有する前記新規細菌株のうち少なくとも1種の突然変異体若しくはその突然変異体の全培養液、細胞不含抽出物、画分及び/若しくは代謝産物を含む微生物性殺有害生物剤組成物に関する。本発明はまた、このような組成物を適用することによって、植物病原体を防除若しくは抑制する方法又は植物病原体感染を防ぐ方法に関する。本発明はまた、本発明の株によって産生される代謝産物である新規フザリシジン(fusaricidin)型化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物又は作物に影響を及ぼす植物病原性菌類を防除する技術分野では、例えば、胞子形成細菌のような細菌又は処理しようとする植物若しくは作物にとって有害ではない菌類から選択されるバイオ農薬を含む活性化合物組成物を適用することが周知であり、それらの生物学的防除剤は、植物病原体の有機化学的拮抗薬とさらに組み合わされ得る。
【0003】
バイオ農薬は、微生物(細菌、菌類、ウイルス、線虫など)又は天然物(生物学的供給源に由来する化合物又は抽出物)をベースとする殺有害生物剤の形態と定義されている(米国環境保護庁: http://www.epa.gov/pesticides/biopesticides/)。
【0004】
バイオ農薬は、通常、細菌及びその他の微生物、菌類、ウイルス、線虫、タンパク質などを含む、天然に存在する生物並びに/又はその代謝産物を増殖させ、濃縮することによって作製される。それらは、総合的病害虫管理(IPM: integrated pest management)プログラムの重要な成分であると考えられることが多く、化学的植物保護製品(PPP: plant protection product)を合成するための代用品として、多くの実務的な注目を集めてきた。
【0005】
バイオ農薬は、2つの主要なクラス、微生物性及び生化学的殺有害生物剤に分けられる:
(1)微生物性殺有害生物剤は、細菌、菌類又はウイルスからなる(細菌及び菌類が産生する代謝産物を含むことが多い)。昆虫病原性線虫も、多細胞性であるが、微生物性殺有害生物剤として分類される。
【0006】
(2)生化学的殺有害生物剤は、有害生物を防除する、又は以下に定義されるようなその他の作物保護用途を提供するが、哺乳動物にとって比較的非毒性である天然に存在する物質である。
【0007】
植物病原性菌類を防除するために、枯草菌などの胞子形成細菌を含むいくつかの微生物性殺有害生物剤が初期に説明されており、例えば、WO1998/050422;WO2000/029426;WO1998/50422及びWO2000/58442を参照されたい。
【0008】
WO2009/0126473には、水性/有機溶媒中に含有された細菌又は菌類胞子を含む農業的に許容される水性組成物が開示されており、それは、昆虫防除剤、殺有害生物剤、殺菌類剤又はそれらの組合せをさらに含み得る。バチルス属の細菌の胞子は、好ましい種である。
【0009】
WO2006/017361には、植物病原体を防除するための、少なくとも1種の有益な細菌、少なくとも1種の有益な菌類、少なくとも1種の栄養分及びこのような組成物の有効寿命を延長する少なくとも1種の化合物を含む組成物が開示されている。有益な細菌の群は各々、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)及びパエニバチルス・デュラム(Paenibacillus durum)の細菌を含む。
【0010】
欧州特許出願EP-A-1168922は、少なくとも2種の植物成長促進性根圏細菌(Rhizobacteria)株及びキチン質化合物を含む、植物成長に影響を及ぼし、及び/又は疾患耐性を付与するための組成物に関し、ここで、前記株は、バチルス(Bacillus)、パエニバチルス属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、ビルジバチルス(Virgibacillus)属、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属及びアニューリーニバチルス(Aneurinibacillus)属から選択される。しかし、特許請求される組合せを支持する特定のパエニバチルス属の株は例示されていない。
【0011】
WO1999/059412には、いくつかの植物病原性菌類に対して活性なパエニバチルス・ポリミクサ株PKB1(ATCC受託番号202127を有する)が開示されている。
【0012】
WO2006/016558には、パエニバチルス属の種(Paenibacillus sp.)の株BS-0048、BS-0074、BS-0277及びP.ポリミクサ株BS-0105並びに植物を菌類による感染から保護するためのフザリシジンA及びフザリシジンBが開示されている。ダイズ根圏からさらなる抗菌剤パエニバチルス属の株BRF-1が単離されている(African J. Microbiol. Res.第4巻(24号)、2692〜2698頁、2010年)。
【0013】
WO2011/069227には、病原性細菌、主に、食物由来ヒト病原性細菌に対して高度の阻害効果を有するP.ポリミクサ株JB05-01-1(ATCC受託番号PTA-10436を有する)が開示されている。
【0014】
Budiら(Appl Environ Microbiol、1999年、第65巻、5148〜5150頁)は、モロコシ(Sorghum bicolor)の菌根圏から、フィトフトラ・パラシチカ(Phytophthora parasitica)のような土壌由来の菌類病原体に対して拮抗する活性を有するパエニバチルス属の種の株B2を単離した。
【0015】
Cote d'Ivoireの土壌から、Delaporte, B.(Lab Cytol Veg、Paris、France)によって単離され、NRRL受託番号BD-62で農業研究局(Agricultural Research Service)、USDA、U.S.A.の公開コレクションに寄託されたパエニバチルス・ペオリエ(Paenibacillus peoriae)株11.D.3(Int. J. Syst Bacteriol.第46巻(4号)、988〜1003頁、1996年、本明細書において、以下、株BD-62とも呼ばれる)は、いくつかの植物病原性細菌及び菌類に対して抗菌類活性を示した(J. Appl. Microbiol. 第95巻、1143〜1151頁、2003年)。NRRLは、Agricultural Research Service Culture Collection、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく微生物株を寄託する目的の国際寄託機関の略語であり、住所は、National Center for Agricultural Utilization Research、Agricultural Research Service、U.S. Department of Agriculture、1815 North University Street、Peoria、Illinois 61604、USAである。
【0016】
多数の細菌、菌類及び酵母病原体に対する、多数のパエニバチルス属の株、中でもP.ペオリエ株の抗菌活性が別の場所で報告されている(Lett. Appl. Microbiol.第43巻、541〜547頁、2006年)。
【0017】
Razaら(Brazilian Arch. Biol. Techol.第53巻、1145〜1154頁、2010年;Eur. J. Plant Pathol.第125巻:471〜483頁、2009年)には、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対して有効なフザリシジン型化合物を産生するパエニバチルス・ポリミクサ株SQR-21が記載されていた。
【0018】
フザリシジンは、環状リポデプシペプチドのクラスに属する、パエニバチルス属の種(Paenibacillus spp.)から単離された抗生物質の群である。ファミリー中で保存されるその一般的構造特徴は以下の通りである:そのうち3個がL-Thr、D-アロ-Thr及びD-Alaである6個のアミノ酸残基からなる大環式環並びにアミド結合によってN末端L-Thr残基と結合している15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸テール(ChemMedChem 第7巻、871〜882頁、2012年;J. Microbiol. Meth.第85巻、175〜182頁、2011年、本明細書における表1)。これらの化合物は、N末端L-Thrヒドロキシル基とC末端D-Alaカルボニル基の間のラクトン橋によって環化される。デプシペプチド環内のアミノ酸残基の位置は、通常、それ自体、GHPD鎖を有する上記のL-Thrで出発して番号づけられ、C末端D-Alaで終わる。パエニバチルスから単離されたフザリシジンの限定されない例は、LI-F03、LI- F04、LI-F05、LI-F07及びLI-F08(J. Antibiotics 第40巻(11号)、1506〜1514頁、1987年;Heterocycles 第53巻(7号)、1533〜1549頁、2000年;Peptides 第32巻、1917〜1923頁、2011年)並びにフザリシジンA(LI-F04aとも呼ばれる)、B(LI-F04bとも呼ばれる)、C(LI-F03aとも呼ばれる)及びD(LI-F03bとも呼ばれる)(J. Antibiotics 第49巻(2号)、129〜135頁、1996年; J. Antibiotics 第50巻(3号)、220〜228頁、1997年)と名付けられている。フザリシジンのアミノ酸鎖は、リボソームによって作製されず、非リボソーム性ペプチドシンセターゼによって作製される。公知のフザリシジンの構造式は、表1に示されている(Biotechnol Lett. 第34巻、1327〜1334頁、2012年;本明細書における図1)。LI-F03a、LI-F03bからLI-F08a及びLI-F08bと名付けられた化合物は、フザリシジンファミリー内のその構造のために、本明細書において、フザリシジンLI-F03a、LI-F03bからLI-F08a及びLI-F08bとも呼ばれる(表1を参照のこと)。
【0019】
【0020】
【化1】
[式中、矢印は、GHPDのカルボニル部分とL-Thr(L-トレオニン)のアミノ基の間又は1種のアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単(アミド)結合を規定し、ここで、矢印の先端は、前記アミノ酸L-Thrの、又は前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
単線(矢頭のない)は、D-Ala(D-アラニン)のカルボニル基とL-Thrのヒドロキシル基の間の単(エステル)結合を規定し、GHPDは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸である]
【0021】
単離されたフザリシジン抗生物質の中でも、フザリシジンAは、種々の臨床上関連する菌類及び黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)(MIC値範囲:0.78〜3.12μg/ml)のようなグラム陽性菌に対して最も有望な抗菌活性を示した(ChemMedChem 第7巻、871〜882頁、2012年)。天然に存在するGHPDの代わりに12-グアニジノ-ドデカン酸(12-GDA)又は12-アミノ-ドデカン酸(12-ADA)を含有するフザリシジン類似体の合成が確立されているが、12-ADAによるGHPDの置換は、抗菌活性の完全喪失をもたらした一方で、12-GDAによるGHPDの置換は、抗菌活性を保持した(Tetrahedron Lett. 第47巻、8587〜8590頁、2006年;ChemMedChem 第7巻、871〜882頁、2012年)。
【0022】
フザリシジンA、B、C及びDはまた、フザリウム・オキシスポラム、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)及びペニシリウム・トミー(Penicillum thomii)などの植物病原性菌類を阻害すると報告されている(J. Antibiotics 第49巻(2号)、129〜135頁、1996年;J. Antibiotics 第50巻(3号)、220〜228頁、1997年)。Li-F05、LI-F07及びLI-F08などのフザリシジンは、フザリウム・モニリフォルム(Fusarium moniliforme)、F.オキシスポラム(oxysporum)、F.ロゼウム(roseum)、ジベレラ・フジクロイ(Giberella fujkuroi)、ヘルミントスポリウム・セサマム(Helminthosporium sesamum)及びペニシリウム・エクスパンザム(Penicillium expansum)などの種々の植物病原性菌類に対して特定の抗菌類活性を有するとわかった(J. Antibiotics 第40巻(11号)、1506〜1514頁、1987年)。フザリシジンはまた、黄色ブドウ球菌を含むグラム陽性菌に対する抗菌活性も有する(J. Antibiotics 第49巻、129〜135頁、1996年;J. Antibiotics 第50巻、220〜228頁、1997年)。さらに、フザリシジンは、セイヨウアブラナの黒色根腐れ病を引き起こすレプトスフェリア・マクランス(Leptosphaeria maculans)に対する抗菌類活性を有する(Can. J. Microbiol. 第48巻、159〜169頁、2002年)。さらに、特定のパエニバチルス株によって産生される、フザリシジンA及びB並びにD-アロ-Thrがエステル橋を使用してそのヒドロキシル基を介してさらなるアラニンと結合しているその2種の関連化合物は、培養パセリ細胞において耐性反応を誘導し、フザリウム・オキシスポラムの増殖を阻害するとわかった(WO2006/016558;欧州特許出願EP1788074A1)。
【0023】
WO2007/086645には、その酵素がフザリシジンA、B、C、D、LI-F03、LI-F04、LI-F05、LI-F07及びLI-F08の合成に関与しているパエニバチルス・ポリミクサ株E681から単離されたような、フザリシジンシンセターゼ酵素及びそれをコードする遺伝子が記載されている。
【0024】
これまでに、いくつかのパエニバチルス・ポリミクサ株のゲノムが公開されている:とりわけ、株M-1(NCBI受託番号NC_017542; J. Bacteriol. 第193巻(29号)、5862〜63頁、2011年; BMC Microbiol. 第13巻、137頁、2013年)、株CR1(GenBank受託番号CP006941; Genome Announcements 第2巻(1号)、1頁、2014年)及び株SC2(GenBank受託番号CP002213及びCP002214; NCBI受託番号NC_014622; J. Bacteriol. 第193巻(1号)、311〜312頁、2011年)について、さらなる株については、本明細書における図12の説明文を参照のこと。P.ポリミクサ株M-1は、受託番号CGMCC7581でChina General Microbiological Culture Collection Center(CGMCC)に寄託されている。
【0025】
Montefuscoらは、Int. J. Systematic Bacteriol. (第43巻、388〜390頁、1993年)において、バチルス属の新規の細菌種を記載し、例えば、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、B.コアギュランス(coagulans)、B.ポリミクサなどのようなその他のバチルス株から区別され得る名称バチルス・ペオリエ(Bacillus peoriae)を示唆している。前記新規バチルス株は、胞子を産生し、グラム陽性であり、オキシダーゼを産生せずにカタラーゼを産生すると報告されている。さらなる生化学的特徴は、そこに要約されている。土壌又は腐敗している植物質から単離され得るその株は、BD-57と名付けられ、Agricultural Research Service、USDA、U.S.A.にNRRL B-14750として、また、DSMZ(以下を参照のこと)に株DSM8320として寄託された。さらなる生化学的及び遺伝的解析に基づいて、前記株は後に、パエニバチルス・ペオリエとして再度名付けられた(Int. J. Systematic Bacteriol. 第46巻、988〜1003頁、1996年を参照のこと)。PCR-DGGE法を使用する、トウモロコシ根圏におけるパエニバチルス属の種の多様性のより最近の評価が、J. Microbiol. Methods 第54巻、213〜231頁、2003年に記載された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
作物疾患に対して使用するためのバイオ農薬は、種々の作物で既にその地位を確立している。例えば、バイオ農薬は、ベト病疾患の防除において既に重要な役割を果たしている。その利点として、0日の収穫前間隔及び中程度から重度の疾患圧力下で使用する能力が挙げられる。
【0027】
バイオ農薬の主要な成長領域は、種子処理及び土壌回復の領域においてである。バイオ殺有害生物性種子処理は、例えば、種子腐敗、立枯病、根腐れ及び実生枯病を引き起こす土壌由来菌類病原体を防除するために使用される。それらはまた、内部の種子由来菌類病原体並びに種子の表面にある菌類病原体を防除するために使用され得る。多数のバイオ殺有害生物性製品はまた、植物宿主防御と、処理された作物を、種々の生物的及び非生物的ストレスに対してより耐性にし得るその他の生理学的プロセスとを刺激する能力を示す。
【0028】
しかし、特定の条件下ではバイオ農薬は、高い特異性(有害生物/病原体の正確な同定及び複数の製品の使用を必要とする)、遅い作用速度(したがって、有害生物激増が作物に対する即時脅威である場合には、それらを適していないものにする)、種々の生物的及び非生物的因子の影響による可変有効性(バイオ農薬は、通常、標的昆虫内で有害生物/病原体を増幅させることによって有害生物/病原体防除を起こす、生存している生物であるので)並びに耐性発現などの不利点を有し得る。
【0029】
したがって、すべてのクラスの植物病原性菌類に対する活性の広いスペクトルを特徴とする、植物病原性微生物、特に、菌類と拮抗するさらなる細菌株及びさらなる抗菌代謝産物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記問題は、驚くべきことに、例えば、アルテルナリア属の種(Alternaria spp.)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)及び菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)から選択されるような植物葉病原体にも及ぶ植物病原性菌類に対する拮抗する活性の独特のプロフィールを特徴とするパエニバチルス属の細菌の新規株を提供することによって解決された。前記細菌株は、International Depositary Authority: Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstrasse 7 B、38124 Braunschweig、Germany (hereinafter DSMZ)に寄託されている。
【0031】
さらに、これらの細菌株の全培養液、培養培地及び細胞不含抽出物は、少なくともアルテルナリア属の種、灰色かび病菌及びジャガイモ疫病菌に対して阻害活性を示した。有機抽出物の生理活性によって誘導される分画は、2種の新規フザリシジン型化合物(化合物1A及び1B)の単離につながり、その構造は、1D-及び2D-NMR分光法並びに質量分析によって解明された。
【0032】
したがって、本発明は、以下の株の1種の同定特徴のうち少なくとも1つを有する、パエニバチルス科のメンバーである単離された微生物に関する:
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu17007及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu17015。
【0033】
本明細書において、用語パエニバチルス属の種の株は、用語パエニバチルス属の株と同一である。
【0034】
本明細書において、「単離菌」とは、単一微生物コロニーを培養することによって得られた単離菌のような、その天然起源から分離された純粋微生物培養物を指す。単離菌は、微生物の不均一な、野生集団から導いた純粋培養物である。
【0035】
本明細書において、「株」とは、同一系統に属し、同一種の他の単離菌又は株のものとは別個の表現型形質、生理学的形質、代謝形質及び/又は遺伝子型形質を示す単離菌又は単離菌の群を指す。
【0036】
さらなる実施形態は、好ましくは、少なくとも1種の植物病原体に対して拮抗する活性を示す、上記で定義されたような少なくとも1種の微生物の全培養液、上清又は細胞不含抽出物又は画分又は少なくとも1種の代謝産物に関する。
【0037】
本明細書において、「全培養液」とは、培養培地に懸濁された栄養細胞及び/又は胞子並びに任意選択で、それぞれの微生物によって産生された代謝産物を含有する微生物の液体培養物を指す。
【0038】
本明細書において、「培養培地」とは、前記培地、好ましくは、液体培養液中で微生物を培養することによって得られる、培地中で増殖した細胞が除去された際に残っている培地、例えば、液体培養液中で増殖した細胞が、遠心分離、濾過、沈降又は当技術分野で周知のその他の手段によって除去された際に残っている、例えば、それぞれの微生物によって産生され、培養培地中に分泌された代謝産物を含む上清を指す。「培養培地」はまた、約2〜30℃の温度で(より好ましくは、4〜20℃の温度で)、約10〜60分間(より好ましくは、約15〜30分間)、約5,000〜20,000×gで(より好ましくは、約15,000×gで)遠心分離によって得ることができる「上清」を指すこともある。
【0039】
本明細書において、「細胞不含抽出物」とは、栄養細胞、胞子の抽出物及び/又は溶媒ベースの(例えば、時には、適した塩と組み合わせたアルコールなどの有機溶媒)、温度ベースの、せん断力の適用、超音波を用いる細胞破壊などの当技術分野で公知の細胞破壊法によって得ることができる、それぞれの微生物によって産生された細胞性代謝産物を含む微生物の全培養物を指す。所望の抽出物は、乾燥、蒸発、遠心分離又は同様のものなどの従来の濃縮技術によって濃縮され得る。粗抽出物に、好ましくは、使用に先立って、有機溶媒及び/又は水ベースの媒体を使用する特定の洗浄ステップも適用してもよい。
【0040】
本明細書において、用語「代謝産物」とは、殺有害生物活性又は植物成長、植物の水利用効率、植物の健康、植物の外観若しくは本明細書における植物活性を取り巻く土壌中の有益な微生物の集団の改善などの本明細書において記載されるような任意の有益な効果を有する微生物(菌類及び細菌、特に、本発明の株など)によって産生された、任意の成分、化合物、物質又は副生成物(限定されるものではないが、小分子二次代謝産物、ポリケタイド、脂肪酸シンターゼ生成物、非リボソーム性ペプチド、リボソーム性ペプチド、タンパク質及び酵素を含む)を指す。
【0041】
本明細書において、「単離菌」とは、単一微生物コロニーを培養することによって得られた単離菌のような、その天然起源から分離された純粋微生物培養物を指す。単離菌は、微生物の不均一な、野生集団から導いた純粋培養物である。
【0042】
本明細書において、「株」とは、同一系統に属し、同一種の他の単離菌又は株のものとは別個の表現型形質及び/又は遺伝子型形質を示す単離菌又は単離菌の群を指す。
【0043】
さらなる実施形態は、式I
【0044】
【化2】
[式中、
Rは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸(GHPD)及び12-グアニジノドデカン酸(12-GDA)から選択され、
X1は、トレオニンであり、
X2は、イソロイシンであり、
X3は、チロシンであり、
X4は、トレオニンであり、
X5は、グルタミン及びアスパラギンから選択され、
X6は、アラニンであり、
矢印は、Rのカルボニル部分とアミノ酸X1のアミノ基の間又は1種のアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単(アミド)結合を規定し、矢印の先端は、前記アミノ酸X1の、又は前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
単線(矢頭のない)は、X6のカルボニル基とX1のヒドロキシル基の間の単(エステル)結合を規定する]
で示される新規化合物又はその農業的に許容される塩及び本発明の式Iの化合物を調製する方法に関し、この方法は、本発明の株を培養すること、及び全培養液から式Iの前記化合物を単離することを含む。
【0045】
さらなる実施形態によれば、本発明はさらに、式Iである化合物1A及び1Bに関し、式中、RがGHPDであり、化合物1Aの場合にはX5がアスパラギンであり、化合物1Bの場合にはX5がグルタミンである:
【0046】
【化3】
【0047】
本発明はさらに、株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は本発明の式Iの化合物及びその塩を含む組成物、並びに植物病原体の防除若しくは抑制又は植物病原体感染の予防のための、又は有害微生物による侵襲破壊に対する物質の保護のためのその使用、並びに有効量の本発明の組成物、株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は式Iの化合物及びその塩を用いて、病原体、その生息地又は病原体攻撃に対して保護される材料若しくは植物又は土壌若しくは繁殖材料を処理することを含む対応する方法に関する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態を、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面において開示する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1-1】化合物1A、1B、2A、2B、3、4A、4B、5A及び5Bを示す図である。
図1-2】図1−1の続きである。
図2】化合物1Bの重要なNOESY及びCOSY相関を示す図である。
図3】化合物1BのHMBC相関を示す図である。
図4】a)化合物1Aの、及びb)化合物1Bのフラグメンテーションパターンを示す図である。
図5】a)化合物2A(フザリシジンC)の、及びb)化合物2B(フザリシジンD)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
図6】化合物3(LI-F08b)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
図7】a)化合物4A(LI-F06a)の、及びb)化合物4B(LI-F06b)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
図8】a)化合物5A(フザリシジンA)の、及びb)化合物5B(フザリシジンB)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
図9-1】多重配列アラインメント後の関連分類群に対する、本発明のパエニバチルス属の株の完全16S rDNA配列の同一性パーセンテージを示す図である。説明文: *株番号:1=パエニバチルス属の株Lu16774;2=パエニバチルス属の株Lu17015;3=パエニバチルス属の株Lu17007;4=パエニバチルス・ペオリエNRRL BD-62;5=パエニバチルス・アネリカヌス(Paenibacillus anaericanus)MH21;6=パエニバチルス・ブラジリエンシス(Paenibacillus brasiliensis)PB172;7=パエニバチルス・カンピナセンシス(Paenibacillus campinasensis)324;8=パエニバチルス・チベンシス(Paenibacillus chibensis)JCM 9905;9=パエニバチルス・グルカノリチカス(Paenibacillus glucanolyticus)DSM 5162;10=パエニバチルス・フマネンシス(Paenibacillus hunanensis)FeL05;11=パエニバチルス・ジャミレ(Paenibacillus jamilae)CECT 5266;12=パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kribbensis)AM49;13=パエニバチルス・ラクチス(Paenibacillus lactis)MB 1871;14=パエニバチルス・ラウツス(Paenibacillus lautus)JCM 9073;15=パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)IAM 12467;16=パエニバチルス・マシリエンシス(Paenibacillus massiliensis)2301065;17=パエニバチルス・パブリ(Paenibacillus pabuli)HSCC 492;18=パエニバチルス・ペオリエDSM 8320(BD-57);19=パエニバチルス・ピニ(Paenibacillus pini)S22;20=パエニバチルス・ポリミクサIAM 13419;21=パエニバチルス・プリスパチー(Paenibacillus purispatii)ES_MS17;22=パエニバチルス・セディミニス(Paenibacillus sediminis)GT-H3;23=パエニバチルス・テレ(Paenibacillus terrae)AM141; 24=パエニバチルス・テリゲナ(Paenibacillus terrigena)A35;25=パエニバチルス・チモネンシス(Paenibacillus timonensis)2301032;26=パエニバチルス・ツリセンシス(Paenibacillus turicensis)MOL722;27=パエニバチルス・ウリジニス(Paenibacillus uliginis)N3/975;28=コーネラ・サーモトレランス(Cohnella thermotolerans)CCUG 47242。株6〜28は、それぞれの種の基準株である。新規株の、パエニバチルス・ペオリエ(NRRL BD-62及びDSM 8320)との類似性が、太字で示されている。
図9-2】図9−1の続きである。
図10】本発明のパエニバチルス属の株の16S-rDNA配列の、その他の分類群との同一性%(図9)から算出された系統発生樹状図を示す図である。樹の樹根は、コーネラ・サーモトレランスの16S rRNA遺伝子配列を解析に含めることによって決定した。樹状図の下のスケールバーは、100ヌクレオチドあたり1ヌクレオチド置換を示す。
図11】RiboPrinter微生物特性決定システム及びそれから得られた系統発生樹状図を使用して、密接に関連するP.ペオリエ株 BD-62のサンプルに対する比較における本発明のパエニバチルス属の株のサンプルから得られたRiboPrintパターンを示す図である。
図12】は、多重配列アラインメント後の関連パエニバチルス属の株に対する、本発明のパエニバチルス属の株のdnaN遺伝子のDNA配列の同一性パーセンテージを示す。説明文:*株番号:1=パエニバチルス属の株Lu16774;2=パエニバチルス属の株Lu17007;3=パエニバチルス属の株Lu17015;4=P.ペオリエDSM 8320T=KCTC 3763T(GenBank受託番号AGFX00000000;J. Bacteriol. 第194巻、1237〜1238頁、2012年);5=P.ポリミクサ1-43(GenBank受託番号ASRZ01000000;寄託番号GCMCC 4965;CN 102352332 B);6=P.ポリミクサA18(GenBank受託番号JWJJ00000000.1;NCBI Project ID 225496);7=P.ポリミクサATCC 842T=DSM 36T=KCTC 3858T(GenBank受託番号AFOX00000000; J. Bacteriol. 第193巻(18号)、5026〜5027頁、2011年);8=P.ポリミクサCF05(GenBank受託番号CP009909;Genome Announc 第3巻(2号):e00198-15. Doi:10.1128/genomeA.00198-15);9=P.ポリミクサCICC10580(GenBank受託番号JNCB00000000;Genome Announc. 第2巻(4号):e00854-14. doi:10.1128/genomeA.00854-14);10=P.ポリミクサ DSM365(GenBank受託番号JMIQ00000000;J. Biotechnol. 第195巻、72〜73頁、2015年);11=P.ポリミクサE681(GenBank受託番号CP000154; GenomeNet参照配列NC_014483.2; J. Bacteriol. 第192巻(22号)、6103〜6104頁、2010年);12=P.ポリミクサM-1(GenBank受託番号HE577054.1;GenomeNet参照配列NC_017542.1);13=P.ポリミクサ NRRL B-30509(GenBank受託番号JTHO00000000;Genome Announc. 2015年3月〜4月;第3巻(2号):e00372-15);14=P.ポリミクサSC2(GenBank受託番号CP002213; J. Bacteriol. 第193巻(1号)、311〜312、2011年);15=P.ポリミクサSQR-21(GenBank受託番号CP006872;GenomeNet参照配列NZ_CP006872.1;Genome Announc. 2014年3月〜4月;第2巻(2号): e00281-14);16=P.ポリミクサSb3-1(GenBank受託番号CP010268;Genome Announc. 2015年3月〜4月;第3巻(2号):e00052-15);17=P.ポリミクサTD94(GenBank受託番号ASSA00000000);17=P.ポリミクサWLY78(GenBank受託番号ALJV00000000);P.テレHPL-003(GenBank受託番号CP003107;NCBI 参照配列NC_016641.1);P.ポリミクサCR1(GenBank受託番号CP006941;Genome Announc. 第2014 年1月〜2月;第2巻(1号):e01218-13)。
図13】多重配列アラインメント後の、本発明のパエニバチルス属の株の完全gyrB遺伝子のDNA配列の、関連パエニバチルス株に対する同一性パーセンテージを示す図である。株番号は、図12の説明文に記載されている。
図14】多重配列アラインメント後の、本発明のパエニバチルス属の株の完全recF遺伝子のDNA配列の、関連パエニバチルス属の株に対する同一性パーセンテージを示す図である。株番号は、図12の説明文に記載されている。
図15】多重配列アラインメント後の、本発明のパエニバチルス属の株の完全recN遺伝子のDNA配列の、関連パエニバチルス属の株に対する同一性パーセンテージを示す図である。株番号は、図12の説明文に記載されている。
図16】多重配列アラインメント後の、本発明のパエニバチルス属の株の完全rpoA遺伝子のDNA配列の、関連パエニバチルス属の株に対する同一性パーセンテージを示す図である。株番号は、図12の説明文に記載されている。
図17】P.ポリミクサ複合体の株の完全dnaN遺伝子配列に基づいた最尤樹状図を示す図である。示される0.1のスケールは、1%ヌクレオチド交換に対応する。
図18】P.ポリミクサ複合体の株の完全gyrB遺伝子配列に基づいた最尤樹状図を示す図である。示される0.1のスケールは、1%ヌクレオチド交換に対応する。
図19】P.ポリミクサ複合体の株の完全recF遺伝子配列に基づいた最尤樹状図を示す図である。示される0.1のスケールは、1%ヌクレオチド交換に対応する。
図20】P.ポリミクサ複合体の株の完全recN遺伝子配列に基づいた最尤樹状図を示す図である。示される0.1のスケールは、1%ヌクレオチド交換に対応する。
図21】P.ポリミクサ複合体の株の完全rpoA遺伝子配列に基づいた最尤樹状図を示す図である。示される0.1のスケールは、1%ヌクレオチド交換に対応する。
図22】実施例2.5に従って実施されたP.ポリミクサ複合体の代表的ゲノムのアミノ酸指数(AAI)マトリックスを示す図である。株番号は、図12の説明文に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、微生物株
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu17007及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu17015
に関する。
【0051】
株Lu16774、Lu17007及びLu17015は、独国を含む種々の欧州の場所から得た土壌サンプルから単離され、BASF SE、Germanyによって2013年2月20日にブダペスト条約基づき、上記の受託番号でDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ)に寄託されている。
【0052】
パエニバチルス属(以前は、rRNA群3バチルス)は、
- グラム陽性構造の桿状細胞、
- グラム染色を用いて弱い反応、さらに負に染色することもある、
- 胞子嚢(母細胞)を明確に膨張させる、楕円体内生胞子への分化、
- 硝酸塩が存在するか否かに関わらず空気の不在下で強力に増殖する通性嫌気性増殖、
- 種々の糖の発酵、
- グルコースを含む種々の糖からの酸及びガスの形成、
- アドニトール及びソルビトールからの酸生成はない、
- ウレアーゼ陰性(P.バリダス(P.validus)を除く)、
- アルギニンジヒドロラーゼ陰性、
- クエン酸の利用なし、
- 10%塩化ナトリウムの存在下で増殖なし、
- DNA、タンパク質、デンプンを分解する多数の細胞外加水分解酵素の分泌;並びに/又は
- 40%〜54%のDNAのG+C含量
によって、表現型によって、及び生理学的に特性決定されている(Antonie van Leeuwenhoek 第64巻、253〜260頁(1993年))。
【0053】
パエニバチルス属(以前は、rRNA群3バチルス)はまた、
- 16S rDNAの可変領域V5中に特異的な22塩基の配列(5'から3'):TCGATACCCTTGGTGCCGAAGTを有する(Antonie van Leeuwenhoek 第64巻、253〜260頁(1993年)、その表3も参照のこと);
及び/又は
- BG3プローブ(5'-TCGATACCCTTGGTGCCGAAGT-3')を用いる、単離された、若しくはPCR増幅された染色体DNAのハイブリダイゼーションによって(Antonie van Leeuwenhoek 第64巻、253〜260頁(1993年)を参照のこと)
16S rDNA解析によって特性決定されている(Antonie van Leeuwenhoek 第64巻、253〜260頁(1993年))。
【0054】
本発明の寄託された株Lu16774、Lu17007及びLu17015は、以下の形態学的及び生理学的観察結果:
- 桿状細胞、
- 楕円体胞子、
- 膨張した胞子嚢、
- 嫌気性増殖、
- 酸形成を伴う、グルコース、アラビノース、キシロース、マンニット、フルクトース、ラフィノース、トレハロース及びグリセロールを含む種々の糖の発酵、
- グルコースからのガスの生成、
- アルギニンジヒドロラーゼ陰性、
- クエン酸の利用なし、
- 5%以上の塩化ナトリウムの存在下で増殖なし、
- デンプン、ゼラチン、カゼイン及びエスクリンを分解する細胞外加水分解酵素の生成
に基づいてパエニバチルス属に属すると決定された(本明細書における実施例2.3を参照のこと)。
【0055】
さらに、本発明の寄託された株Lu16774、Lu17007及びLu17015はまた、16S rDNA(5'から3')中にパエニバチルス属に特異的な22塩基の配列:
5'-TCGATACCCTTGGTGCCGAAGT-3'
を有することによって16S rDNA解析によってパエニバチルス属に属すると決定された(本明細書における配列表中の、配列番号1(ヌクレオチド840〜861)、配列番号2(840〜861)、配列番号3(844〜865)及び配列番号4(840〜861)を参照のこと)。
【0056】
さらに、24種の異なるパエニバチルス属の株の比較における完全16S rDNAの配列決定は、パエニバチルス・ブラシリエンシス、P.クリベンシス、P.ジャミラエ(jamilae)、P.ペオリエ及びP.ポリポリミクサの基準株との、より好ましくは、P.ペオリエ、特に、パエニバチルス・ペオリエ株BD-62に対する(本明細書における図1及び2を参照のこと)、寄託された株Lu16774、Lu17007及びLu17015のクラスタリングをもたらした。P.ポリミクサ及びP.ペオリエが、99.6〜99.7%の16S rDNA 配列同一性の値を有することが知られている(J. Gen. Appl. Microbiol. 第48巻、281〜285頁(2002年))。
【0057】
例えば、プログラムAE2(Alignment Editor 2)を用いる手作業によるアラインメント後に算出される同一性(ある程度同様の配列について)など、2種のヌクレオチド配列間の「同一性パーセント」又は「類似性パーセント」は、アラインされた配列の完全長にわたる残基の同一性パーセントを意味し、2種の配列間の局所アラインメントの長さによって規定される比較ウィンドウにわたって2種の最適に局所的にアラインされた配列を比較することによって決定される。2種の配列間の局所アラインメントは、アラインメントを実施するために使用されるアルゴリズム(例えば、AE2、BLAST、rRNA分子の二次構造又は同様のもの)に応じて変わる基準に従って十分に同様であると思われる各配列のセグメントのみを含む。同一性パーセンテージは、両配列中に同一核酸が生じる位置の数を決定して、対応する位置の数を得、対応する位置の数を、比較ウィンドウの位置の総数で除し、結果に100を乗じることによって算出される。
【0058】
2種の核酸配列(例えば、表1のヌクレオチド配列の1種及びその同族体)の配列同一性パーセントを決定するために、最適比較目的で配列をアラインする(例えば、もう一方の核酸との最適アラインメントのために一方の核酸の配列中にギャップを導入してもよい)。次いで、対応する位置の塩基を比較する。一方の配列中の位置が、もう一方の配列中の対応する位置としての塩基によって占められる場合には、分子は、その位置で同一である。配列同一性を決定する目的上、DNA配列をRNA配列と比較する場合には、チミジンヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドと同等であると理解されなければならない。
【0059】
アラインメントのために、プログラムAE2(http://iubio.bio.indiana.edu/soft/molbio/unix/ae2.readme)に配列データを入力し、得られたrRNA分子の二次構造に従って手作業でアラインし、ファーミキューテス門(Firmicutes)に属する生物の代表的な16S rRNA遺伝子配列と比較した(Nucl. Acids Res. 第27巻、171〜173頁、1999年)。複数の配列の同一性%値を得るために、すべての配列を互いにアラインした(多重配列アラインメント)。さらに、多重アラインメントと比較して、アラインされた配列のより長いストレッチにわたる2種の配列間の同一性%の値を得るために、AE2(ペアワイズ配列アラインメント)を使用して上記のように手作業でのペアワイズ配列アラインメントを行った。
【0060】
さらに、標準化された、自動化されたリボタイピングは、制限酵素EcoRIを使用してP.ペオリエBD-62と比較して、パエニバチルス属の株Lu16774、Lu17007及びLu17015を用いてQualicon RiboPrintersystemを使用して実施された結果、3種の新規株すべての、P.ペオリエBD-62に対する0.24から0.5の間の類似性が得られた(実施例2.2及び図12を参照のこと)。
【0061】
要約すると、株は以下の分類学的群に指定されている。
【0062】
パエニバチルス属の株Lu16774及びLu17007は両方とも、パエニバチルス・ポリミクサの種に属する。
【0063】
したがって、本発明は、微生物株
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス・ポリミクサ株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス・ポリミクサ株Lu17007及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の種の株Lu17015
に関する。
【0064】
本明細書において提示される系統発生解析の結果(図12〜22)及びProfessor Borriss、Germanyの公開されていない結果によれば、異種起源の種パエニバチルス・ポリミクサは、2種の亜種:1)パエニバチルス・ポリミクサ亜種ポリミクサ及び2)パエニバチルス・ポリミクサ亜種プランタラム(plantarum)及び3)新規種パエニバチルス新規亜種エピフィチカス(Paenibacillus nov. spec. epiphyticus)への新規分類学的分類を必要とすると提案される。
【0065】
基準株P.ポリミクサDSM36は、P.ポリミクサ株SQR-21、CF05、CICC10580、NRRL B-30509及びA18と一緒に、5種の保存されたハウスキーピング遺伝子(dnaN、gyrB、recA、recN及びrpoA)について分析された最尤樹状図の各々において、別個のクラスターを形成する(図17〜21)。
【0066】
細菌種の間の系統発生関係の決定のために頻繁に使用される平均アミノ酸同一性(AAI)の決定によって、極めて類似した結果が得られている。この方法は、アミノ酸レベルでのコアゲノムの平均同一性の算出に基づいている(Proc. Natl. Acad. USA 第102巻、2567〜2572頁、2005年)。図22における得られたAAIマトリックスによれば、P.ポリミクサDSM36は、P.ポリミクサSQR-21株と一緒に、そこで示される2つの他のサブクラスターとは異なるサブクラスターを形成する。
【0067】
株Lu16674及びLu17007は、株P.ポリミクサM-1、1-43、SC2及びSb3-1と一緒に、5種の保存されたハウスキーピング遺伝子(dnaN、gyrB、recA、recN及びrpoA)について解析された最尤樹状図の各々において第2のサブクラスターを形成する(図17〜21)。コアゲノムの解析に基づく、図22におけるAAIマトリックスによれば、この第2のサブクラスターは、その代表株Lu16674及びLu17007によって、P.ポリミクサM-1及びSC2株と一緒に確認される。
【0068】
2種のサブクラスター間の相違は、新規種を正当化するためにそれほど重要ではないが、両クラスターの代表間のAAI同一性レベルは約97.5%であり、これが、2種の別個の亜種への分類を正当化する。
【0069】
したがって、種類P.ポリミクサ株DSM36Tパエニバチルス・ポリミクサ亜種ポリミクサに従って第1のサブクラスターを推薦することが提案される。株DSM36に加えて、P.ポリミクサ株SQR-21、CF05、CICC10580、NRRL B-30509及びA18は、亜種パエニバチルス・ポリミクサ亜種ポリミクサに属すると予想される。
【0070】
さらに、新規亜種パエニバチルス・ポリミクサ亜種プランタラムとして第2のサブクラスターを推薦することが提案される。さらに、Lu16674及びLu17007のほかにも、P.ポリミクサ株M-1、1-43、SC2及びSb3-1は、パエニバチルス・ポリミクサ亜種プランタラムが属すると予想される。
【0071】
株Lu17015は、基準株パエニバチルス・ポリミクサDSM36=ATCC842と、コアゲノムの遺伝子間で94.9%の同一性(AAI)しか有さない(図22)。したがって、株Lu17015は、種パエニバチルス・ポリミクサにも、任意のその他の公知のパエニバチルス属の種にも指定され得なかった。株E681(94.7%)及びCR2(94.9%)についても同様の値が見出された。これら3種の株は、互いの間で、少なくとも98.1%の同一性(AAI)を有する。Konstantinides及びTiedjeの種の定義によれば(Proc Natl. Acad. Sci. USA. 第102巻、2567〜2572頁、2005年)、株Lu17015並びにまた株E681及びCR2は、新規種に指定され得る。したがって、これにより新規種パエニバチルス属の新規種エピフィチカスが提案される。結果として、パエニバチルス株Lu17015は、パエニバチルス・エピフィチカス(Paenibacillus epiphyticus)に属する。前記株は、基準株であるべきであると提案される。同様に、5種のハウスキーピング遺伝子の配列比較(図17〜21)に基づく樹状図は、すべての他のP.ポリミクサ株と離れているこのクラスターを示す。Lu17015に加えて、P.ポリミクサ株E681、CR2 TD94、DSM365及びWLY78は、パエニバチルス属の新規種エピフィチカスに属すると提案される。
【0072】
したがって、本発明は、微生物株
4)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス・ポリミクサ種プランタラム株Lu16774、
5)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス・ポリミクサ種プランタラム株Lu17007、
6)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス・エイフィチカス株Lu17015
に関する。
【0073】
本発明は、株Lu16774、Lu17007及びLu17015に加えて、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のいずれかの元の寄託物に物理的に由来するか、又は独立に単離されたかにかかわらず、寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、Lu17007及びLu17015の同定特徴の少なくとも1つを保持する限り、任意のパエニバチルス属の株に関する。本発明のこのようなパエニバチルス属の株は、前記株の突然変異体を含め、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のいずれかの任意の後代を含む。
【0074】
用語「突然変異体」とは、直接突然変異体選択によって得られた微生物を指すが、さらに突然変異されている、又はそうでなければ遺伝子操作されている(例えば、プラスミドの導入によって)微生物も含む。したがって、実施形態は、それぞれの微生物の突然変異体、変異体又は誘導体、天然に存在する突然変異体及び人工的に誘導された突然変異体の両方を含む。例えば、突然変異体は、従来法を使用して、微生物を、X線、UV照射又はN-メチル-ニトロソグアニジンなどの公知の突然変異誘発要因に付すことによって誘導され得る。前記処理に続いて、所望の特徴を示す突然変異株のスクリーニングが実施され得る。
【0075】
突然変異株は、直接突然変異体選択、化学的突然変異誘発又は遺伝子操作(例えば、プラスミドの導入による)などの当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、このような突然変異体は、X線、UV照射又はN-メチル-ニトロソグアニジンなどの公知の突然変異誘発要因を適用することによって得ることができる。前記処理に続いて、所望の特徴を示す突然変異株のスクリーニングが実施され得る。
【0076】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015の16S rDNA配列のいずれか1種に対して、すなわち、配列番号1、配列番号2及び配列番号3である配列表中に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1種に対して、少なくとも少なくとも99.6%、好ましくは、少なくとも99.8%、さらにより好ましくは、少なくとも99.9%、特に、100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0077】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015の16S rDNA配列のうちいずれか1種に対して、すなわち、配列番号1、配列番号2及び配列番号3である配列表中に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1種に対して、100%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0078】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、その完全16S rDNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、配列番号1及び配列番号2の配列のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.6%の同一性又は配列番号3に対して少なくとも99.8%の同一性、好ましくは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.8%の同一性、より好ましくは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.9%の同一性、さらにより好ましくは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のうち少なくとも1種に対して99.9%を超える、特に、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のうち少なくとも1種に対して100%の同一性を有するものである。
【0079】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、
a)受託番号DSM26969でDSMZに寄託された株Lu16774、
b)受託番号DSM26970でDSMZに寄託された株Lu17007、
c)受託番号DSM26971でDSMZに寄託された株Lu17015、及び
d)d1)DNA配列配列番号4若しくは配列番号9に対して少なくとも99.6%のヌクレオチド配列同一性、又は
d2)DNA配列配列番号14に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d3)DNA配列配列番号5若しくは配列番号10に対して少なくとも99.9%のヌクレオチド配列同一性、又は
d4)DNA配列配列番号15に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性、又は
d5)DNA配列配列番号6若しくは配列番号11に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性、又は
d6)DNA配列配列番号16に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d7)DNA配列配列番号7若しくは配列番号12に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d8)DNA配列配列番号17に対して少なくとも99.3%のヌクレオチド配列同一性、又は
d9)DNA配列配列番号8若しくは配列番号13に対して100.0%のヌクレオチド配列同一性、又は
d10)DNA配列配列番号18に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性
を示すDNA配列を含む株
からなる群から選択される。
【0080】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、DNA配列配列番号4若しくは配列番号9に対して少なくとも99.6%のヌクレオチド配列同一性を示すdnaN DNA配列を含むもの又はDNA配列配列番号14に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0081】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、その完全dnaN DNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、DNA配列配列番号4及び配列番号9のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.6%の同一性又は配列番号14に対して少なくとも99.8%の同一性、好ましくは、配列番号14に対して少なくとも99.9%の同一性、特に、配列番号14に対して100%の同一性を有するものである。
【0082】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のdnaN DNA配列のいずれか1種に対して、すなわち、それらのDNA配列配列番号4、配列番号9及び配列番号14のうちいずれか1種に対して少なくとも99.8%、特に、100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0083】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、DNA配列配列番号5若しくは配列番号10に対して少なくとも99.9%のヌクレオチド配列同一性を示すgyrB DNA配列を含むもの又はDNA配列配列番号15に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0084】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、その完全gyrB DNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、DNA配列配列番号5及び配列番号10のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.9%の同一性又は配列番号15に対して少なくとも99.9%の同一性、好ましくは、配列番号15に対して少なくとも99.9%の同一性、特に、配列番号15に対して100%の同一性を有するものである。
【0085】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のgyrB DNA配列のうちいずれか1種に対して、すなわち、それらのDNA配列配列番号5、配列番号10及び配列番号15のうちいずれか1種に対して100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0086】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、DNA配列配列番号6若しくは配列番号11に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性を示すrecF DNA配列を含むもの又はDNA配列配列番号16に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0087】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、その完全recF DNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、DNA配列配列番号6及び配列番号11のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.2%の同一性又は配列番号16に対して少なくとも99.8%の同一性、好ましくは、配列番号16に対して少なくとも99.9%の同一性、特に、配列番号16に対して100%の同一性を有するものである。
【0088】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のrecF DNA配列のうちいずれか1種に対して、すなわち、それらのDNA配列配列番号6、配列番号11及び配列番号16のうちいずれか1種に対して少なくとも99.8%、特に、100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0089】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、DNA配列配列番号7若しくは配列番号12に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性を示すrecN DNA配列を含むもの又はDNA配列配列番号17に対して少なくとも99.3%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0090】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、recN DNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、DNA配列配列番号7及び配列番号12のうち少なくとも1種に対して少なくとも99.8%の同一性又は配列番号17に対して少なくとも99.3%の同一性、好ましくは、配列番号17に対して少なくとも99.6%の同一性、特に、配列番号17に対して100%の同一性を有するものである。
【0091】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のrecN DNA配列のうちいずれか1種に対して、すなわち、それらのDNA配列配列番号7、配列番号12及び配列番号17のうちいずれか1種に対して少なくとも99.8%、特に、100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0092】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、DNA配列配列番号8若しくは配列番号13に対して100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すrpoA DNA配列を含むもの又はDNA配列配列番号18に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0093】
さらなる実施形態によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、その完全rpoA DNA配列が、アラインされる配列ウィンドウ内の最適アラインメント後に、DNA配列配列番号8及び配列番号13のうち少なくとも1種に対して100.0%の同一性又は配列番号18に対して少なくとも99.8%の同一性、好ましくは、配列番号17に対して少なくとも99.9%の同一性、特に、配列番号18に対して100%の同一性を有するものである。
【0094】
本発明のパエニバチルス属の株は、特に、株Lu16774、Lu17007及びLu17015のrpoA DNA配列のうちいずれか1種に対して、すなわち、それらのDNA配列配列番号8、配列番号13及び配列番号18のうちいずれか1種に対して100.0%のヌクレオチド配列同一性を示すDNA配列を含むものである。
【0095】
さらなる実施形態は、以下の株の1種の同定特徴のうち少なくとも1つを有する、パエニバチルス科のメンバーである単離された微生物に関する:
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007又は
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015。
【0096】
さらなる実施形態は、
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託された株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託された株Lu17007、並びに
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託された株Lu17015、
4)前記株Lu16774、Lu17007及びLu17015の1種の同定特徴のうち少なくとも1つを有する株
からなる群から選択されるパエニバチルス属の株に関する。
【0097】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の植物病原体に対して拮抗する活性を示し、少なくとも1種のフザリシジン型化合物を産生可能である、
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007、及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015
又は前記能力を保持する、すなわち、少なくとも1種の植物病原体に対する前記拮抗する活性を保持し、少なくとも1種のフザリシジン型化合物を産生する前記能力を保持するその突然変異株
から選択される、単離された微生物に関する。
【0098】
さらなる実施形態は、以下から選択される微生物に関する:
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007、及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015
又は前記株の1種のすべての同定特徴を有するその突然変異株。
【0099】
寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、Lu17007及びLu17015の同定特徴は、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iの化合物を産生可能である、特に、それぞれの株の代謝産物である化合物1A及び1B並びにその農業的に許容される塩を産生可能であることである。
【0100】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、少なくとも1種の式Iの化合物を産生可能である、より好ましくは、化合物1A又は1Bを産生可能である、特に、化合物1A及び1B並びにその農業的に許容される塩を産生可能である。
【0101】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、少なくとも1種の式Iの化合物を産生可能である、より好ましくは、化合物1A又は1Bを産生可能である、特に、化合物1A及び1B並びにその農業的に許容される塩を産生可能である。
【0102】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、少なくとも1種の式Iの化合物を産生する、より好ましくは、化合物1A又は1Bを産生する、特に、化合物1A及び1B並びにその農業的に許容される塩を産生する。
【0103】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の植物病原体に対して拮抗する活性を示し、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生可能である、特に、化合物1A及び1Bを産生可能である、
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007、及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015
又は前記能力を保持する、すなわち、少なくとも1種の植物病原体に対する前記拮抗する活性を保持し、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生する、特に、化合物1A及び1Bを産生する前記能力を保持するその突然変異株
から選択される、単離された微生物に関する。
【0104】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の植物病原体に対して拮抗する活性を示し、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生可能である、特に、化合物1A及び1Bを産生可能である、
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007、及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015
又は前記能力を保持する、すなわち、少なくとも1種の植物病原体に対する前記拮抗する活性を保持し、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生する、特に、化合物1A及び1Bを産生する前記能力を保持するその突然変異株
から選択される、単離された微生物に関する。
【0105】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の植物病原体に対して拮抗する活性を示し、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生する、特に、化合物1A及び1Bを産生する、
1)受託番号DSM26969でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、
2)受託番号DSM26970でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17007、及び
3)受託番号DSM26971でDSMZに寄託されたパエニバチルス属の株Lu17015
又は前記能力を保持する、すなわち、少なくとも1種の植物病原体に対する前記拮抗する活性を保持し、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物を産生する、特に、化合物1A及び1Bを産生する前記能力を保持するその突然変異株
から選択される単離された微生物に関する。
【0106】
寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、Lu17007及びLu17015又はその突然変異株のさらなる同定特徴は、それらが、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iの化合物を産生する、特に、化合物1A及び1Bを産生するその能力に加えて、フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を産生可能であることである。
【0107】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iのフザリシジンを産生可能である、特に、本明細書において開示されるような化合物1A及び1Bを産生可能であり、またフザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を産生可能である。
【0108】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iのフザリシジンを産生可能である、特に、本明細書において開示されるような化合物1A及び1Bを産生可能であり、またフザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bからなる群から選択される少なくとも3種の化合物を産生可能である。
【0109】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iのフザリシジンを産生可能である、特に、本明細書において開示されるような化合物1A及び1Bを産生可能であり、また、フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bからなる群から選択される少なくとも5種の化合物を産生可能である。
【0110】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、好ましくは、化合物1A及び1Bから選択される、少なくとも1種の式Iのフザリシジンを産生可能である、特に、本明細書において開示されるような化合物1A及び1Bを産生可能であり、また、フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD及びLI-F08bを産生可能である。
【0111】
寄託されたパエニバチルス属の株のさらなる同定特徴は、その抗菌類活性である。特に、これらの株は、アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌を含む植物病原体への感染(infestion)に対して有効であるとわかり、ここで、アルテルナリア属の種は、好ましくは、A.ソラニ(A. solani)及びA.アルテルナタ(A. alternata)、特に、A.ソラニから選択される。
【0112】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、特に、アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌からなる群から選択される植物病原体に対する抗菌類活性を有し、ここで、アルテルナリア属の種は、好ましくは、A.ソラニ及びA.アルテルナタ、特に、A.ソラニから選択される。より詳しくは、本発明のパエニバチルス属の株は、前記病原体のうち少なくとも2種に対する又は4種すべてに対する抗菌類活性を有する。
【0113】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、植物病原体アルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌に対する抗菌類活性を有する。
【0114】
植物病原体に対するパエニバチルス属の株の拮抗する活性は、アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌などの所望の植物病原性菌類を使用するin-vitro対比アッセイにおいて示され得、ここで、アルテルナリア属の種は、好ましくは、A.ソラニ及びA.アルテルナタ、特に、A.ソラニから選択される。
【0115】
これらの植物病原性菌類のための増殖培地として、1リットルあたり、10gの麦芽抽出物(Sigma Aldrich、70167)、4gのBacto酵母抽出物(Becton Dickinson、212750)、4gのグルコース一水和物(Sigma Aldrich、16301)、20gの寒天(Becton Dickinson、214510)を含むISP2培地、pH約7、再蒸留水が使用される。PHYTINのための増殖培地として、1リットルあたり、200mlの野菜ジュース、3gの炭酸カルシウム(Merck Millipore、1020660250)、30gの寒天(Becton Dickinson、214510)を含むV8培地、pH6.8、再蒸留水が使用される。
【0116】
パエニバチルス属の株は、寒天プレートの片側に点播種される。1種の活発に増殖する植物病原体を含有する寒天ブロック(およそ0.3cm2)を、プレートの中心に置いた。約25℃で7〜14日間インキュベートした後、とりわけ、阻害領域について植物病原体の増殖を調べる。以下の拮抗効果が、評価され得る:抗生作用は、菌類不含領域(阻害の領域)の直径の評価によってスコア化される。競合は、細菌株を有するプレート上の菌類病原体の増殖の直径を、対照プレートと比較することによってスコア化される。菌類寄生は、細菌が菌類病原体を過増殖させ、また病原体に真菌寄生する場合に実証され得る。これは、顕微鏡によって可視化され得る。
【0117】
寄託されたパエニバチルス属の株Lu16774、Lu17007及びLu17015の別の同定特徴は、それらが、特に、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、好ましくは、キチナーゼ、セルラーゼ及びアミラーゼ(実施例6を参照のこと)、さらにより好ましくは、少なくともキチナーゼ及びセルロースから選択される、少なくとも1種の溶解酵素を産生及び分泌可能であることである。
【0118】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明のパエニバチルス属の株は、特に、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、好ましくは、キチナーゼ、セルラーゼ及びアミラーゼ、さらにより好ましくは、少なくともキチナーゼ及びセルロースから選択される少なくとも1種の溶解酵素を産生及び分泌可能である。
【0119】
より詳しくは、本発明は、寄託された株Lu16774、Lu17007及びLu17015及び寄託された株の同定特徴のうち1つ又は複数を有する任意のパエニバチルス株に関し、ここで、同定特徴は、以下からなる群から選択される:
(a)アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌からなる群から選択される植物病原体に対する抗菌類活性であって、アルテルナリア属の種が、好ましくは、本明細書において開示されるようなA.ソラニ及びA.アルテルナタ、特に、A.ソラニから選択される抗菌類活性、
(b)少なくとも1種のフザリシジン型の式Iの化合物、特に、本明細書において開示されるような化合物1A及び/又は1Bを産生する能力、
(c)本明細書において開示されるようなフザリシジンA、B、C、D、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を産生する能力、並びに
(d)本明細書において開示されるようなキチナーゼ、セルロース及びアミラーゼからなる群から選択される少なくとも1種の溶解酵素を産生及び分泌する能力。
【0120】
より好ましくは、前記パエニバチルス属の株は、本明細書において定義されるような少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で(b)、(c)及び(d)と呼ばれる能力を有する。
【0121】
特に、本発明のパエニバチルス属の株は、寄託された株の同定特徴のうち2種以上を有し、少なくとも特徴(a)及び(b)を有する株が特に好ましい。例えば、好ましい具体例によれば、本発明の株は、(a)アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌からなる群から選択される植物病原体に対する抗菌類活性を有し、ここで、アルテルナリア属の種は、好ましくは、A.ソラニ及びA.アルテルナタ、特に、A.ソラニから選択され、(b)少なくとも1種の式Iの化合物、特に、化合物1Bを産生可能である。さらなる好ましい実施形態によれば、本発明の株は、(a)アルテルナリア属の種、灰色かび病菌、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌からなる群から選択される植物病原体のうち3種に対する又はすべてに対する抗菌類活性を有し、ここで、アルテルナリア属の種は、好ましくは、A.ソラニ及びA.アルテルナタ、特に、A.ソラニから選択され、(b)少なくとも1種の式Iの化合物を産生可能である、より好ましくは、化合物1A又は1Bを産生可能である、特に、化合物1A及び1Bを産生可能である。
【0122】
本発明の実施形態によれば、本発明の株は、単離された、又は実質的に精製された形態で提供される。
【0123】
用語「単離された」又は「実質的に精製された」は、本発明の株が、天然環境から回収されており、単離又は分離されており、天然に関連していたその他の成分を、少なくとも60%含まない、好ましくは、少なくとも75%含まない、より好ましくは、少なくとも90%含まない、さらにより好ましくは、少なくとも95%含まない、最も好ましくは、少なくとも99%含まないことを意味するものとする。単一微生物コロニーを培養することによって得られた単離物は、本発明の単離された株の一例である。
【0124】
本発明の株は、活性又は休止状態などの任意の生理学的状態で提供され得る。休止状態の株は、例えば、凍結、乾燥若しくは凍結乾燥されて、又は部分乾燥されて(部分的に乾燥された生物を製造するための手順は、WO2008/002371に示されている)又は胞子の形態で提供され得る。
【0125】
本発明の実施形態によれば、本発明の株は、胞子の形態で提供される。
【0126】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明の株は、本発明の株を含む全培養液として提供される。
【0127】
培養物は、好ましくは、単離された、又は実質的に精製された培養物である。
【0128】
「単離された培養物」又は「実質的に純粋な培養物」とは、株が増殖する及び/又は通常、株を得ることができる天然生息地に通常見られる相当な量のその他の材料を含まない本発明の株の培養物を指す。結果として、このような「単離された培養物」又は「実質的に精製された培養物」は、株が増殖する及び/又は通常、株を得ることができる天然生息地に通常見られるその他の材料を少なくとも60%含まない、好ましくは、少なくとも75%含まない、より好ましくは、少なくとも90%含まない、さらにより好ましくは、少なくとも95%含まない、最も好ましくは、少なくとも99%含まない。このような「単離された培養物」又は「実質的に精製された培養物」は、通常、本発明の株の複製を干渉するのに十分な量の任意のその他の微生物を含まない。しかし、本発明の単離された培養物は、本発明の株の混合培養物及びさらなるバイオ農薬、好ましくは、微生物性殺有害生物剤を調製するために組み合わされ得る。
【0129】
本発明は、本明細書に記載されるような抗病原体バイオ農薬の発酵製造のための方法に関する。
【0130】
本発明に従って使用されるような株は、バッチプロセスで又は反復フェドバッチプロセスで連続的又は不連続性に培養され得る。公知の培養法の概説は、Chmielによる教本(Bioprozesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik(Gustav Fischer Verlag、Stuttgart、1991))に、又はStorhasによる教本(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag、Braunschweig/Wiesbaden、1994))に見られる。
【0131】
微生物の培養のために使用される培地は、特定の株の必要条件を適当な方法で満たさなければならない。種々の微生物の培養培地の説明は、ハンドブック「Manual of Methods for General Bacteriology」of the American Society for Bacteriology(Washington D. C.、USA、1981)に示されている。
【0132】
本発明に従って使用され得るこれらの培地は、一般に、1種以上の炭素の供給源、窒素の供給源、無機塩、ビタミン及び/又は微量元素を含む。好ましい炭素の供給源は、モノ-、ジ-又はポリサッカライドなどの糖である。炭素の極めて良好な供給源として、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン又はセルロースがある。糖はまた、モラセス又は精糖からのその他の副生成物などの複合化合物によって培地に添加され得る。また、炭素の種々の供給源の混合物を添加することが有利である場合もある。その他のあり得る炭素の供給源は、ダイズオイル、ヒマワリオイル、ピーナッツオイル及びココナッツオイルなどのオイル及び脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸又はリノール酸などの脂肪酸、グリセロール、メタノール又はエタノールなどのアルコール並びに酢酸又は乳酸などの有機酸である。窒素の供給源は、通常、有機若しくは無機窒素化合物又はこれらの化合物を含有する材料である。窒素の供給源の例として、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム若しくは硝酸アンモニウムなどのアンモニアガス又はアンモニウム塩、硝酸、尿素、アミノ酸又はコーンスティープリカー、ダイズ粉、ダイズタンパク質、酵母抽出物、肉抽出物及びその他などの窒素の複合供給源が挙げられる。窒素の供給源は、別個に、又は混合物として使用され得る。培地中に存在し得る無機塩化合物として、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅及び鉄の塩化物塩、リン酸塩又は硫酸塩が挙げられる。無機硫黄含有化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物だけでなく、メルカプタン及びチオールなどの有機硫黄化合物も、硫黄の供給源として使用され得る。リン酸、リン酸二水素カリウム若しくはリン酸水素二カリウム又は対応するナトリウム含有塩が、リンの供給源として使用され得る。溶液中の金属イオンを維持するために、キレート化剤が培地に添加され得る。特に適したキレート化剤は、カテコール若しくはプロトカテキュエート(protocatechuate)などのジヒドロキシフェノール又はクエン酸などの有機酸を含む。本発明に従って使用される発酵培地はまた、ビタミン又は成長促進物質などのその他の増殖因子を含有し得、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸及びピリドキシンが挙げられる。増殖因子及び塩は、酵母抽出物、モラセス、コーンスティープリカーなどといった培地の複合成分に由来することが多い。さらに、培地に適した前駆体が添加されることもある。培地中の化合物の正確な組成は、特定の実験に強く左右され、各特定の場合について個々に決定されなければならない。培地最適化に関する情報は、教本「Applied Microbiol. Physiology、A Practical Approach」(Publ. P.M. Rhodes、P.F. Stanbury、IRL Press (1997) p. 53-73、ISBN 0 19 963577 3)に見出すことができる。増殖培地はまた、Standard 1(Merck)又はBHI(Brain heart infusion、DIFCO)などといった商業的供給業者から得ることができる。
【0133】
本発明に従って使用され得る好ましい増殖培地は、L-アラビノース、N-アセチル-D-グルコサミン、D-ガラクトース、L-アスパラギン酸、D-トレハロース、D-マンノース、グリセロール、D-グルコン酸、D-キシロース、D-マンニトール、D-リボース、D-フルクトース、α-D-グルコース、マルトース、D-メリビオース、チミジン、α-メチル-D-ガラクトシド、α-D-ラクトース、ラクツロース、スクロース、ウリジン、α-ヒドロキシグルタル酸-γ-ラクトン、β-メチル-D-グルコシド、アドニトール、マルトトリオース、2-デオキシアデノシン、アデノシン、クエン酸、粘液酸、D-セロビオース、イノシン、L-セリン、L-アラニル-グリシン、D-ガラクツロン酸、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、デキストリン、イヌリン、ペクチン、アミグダリン、ゲンチオビオース、ラクチトール、D-メレジトース、α-メチル-D-グルコシド、β-メチル-D-ガラクトシド、β-メチル-D-キシロシド、パラチノース、D-ラフィノース、スタキオース、ツラノース、γ-アミノ酪酸、D-グルコサミン(gluosamine)、D-乳酸、L-リシン、3-ヒドロキシ 2-ブタノンから選択される1種以上の炭素の供給源並びにアンモニア、亜硝酸化合物、硝酸塩、L-アラニン(alaninie)、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-グルタミン(glutamie)、グリシン、アミノ酸二量体(aminoacid dimes): Ala-Asp、AlaGln、Ala-Glu、Ala-His、Gly-Gln、Gly-Glu、Gly-Met及びMet-Ala;特に、硝酸から選択される1種以上の窒素の供給源を含む。これらの培地は、無機塩及びビタミン及び/又は微量元素を補給され得る。株は、これらの増殖培地中で化合物1A及び1Bを産生可能である。
【0134】
培地のすべての成分は、加熱(2.0バール及び121℃で20分)、又は滅菌濾過のいずれかによって滅菌される。成分は、一緒に、又は必要に応じて別個に滅菌され得る。培地のすべての成分は、増殖の開始時に存在してもよく、任意選択で、連続的に若しくはバッチ投入によって添加されてもよい。
【0135】
培養物の温度は、通常、15℃から36℃の間、好ましくは、25℃から33℃の間であり、一定に維持される場合も、実験の間に変更される場合もある。培地のpH値は、5〜8.5の範囲、好ましくは、およそ7.0になければならない。増殖のためのpH値は、増殖の間、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア若しくはアンモニア水などの塩基性化合物又はリン酸若しくは硫酸などの酸性化合物を添加することによって制御され得る。起泡を制御するために、消泡剤、例えば、脂肪酸ポリグリコールエステルが使用され得る。プラスミドの安定性を維持するために、培地に、選択作用を有する適した物質、例えば、抗生物質が添加され得る。好気性条件を維持するために、培養物中に酸素又は酸素含有ガス混合物、例えば、周囲空気が供給される。培養物の温度は、通常、20℃〜45℃である。培養は、最大の目的生成物が形成されるまで継続される。これは、通常、10時間〜160時間内に達成される。
【0136】
特に、本発明の株は、Luria-Bertani培養液(LB)、トリプチケース-ソイ培養液(TSB)、酵母抽出物/麦芽抽出物/グルコース培養液(YMG、ISP2)などの中間の種々の標準微生物学培地で、15℃〜36℃で18〜360時間の間、液体培地で、又はペトリディッシュ上の寒天で固形化された培地で培養され得る。通気が必要である場合もある。細菌細胞(栄養細胞及び胞子)は、洗浄され、濃縮され得る(例えば、7,000×gで約15〜30℃の温度で約15分間の遠心分離によって)。
【0137】
本発明はまた、本発明の株を培地中で培養すること、及び培地を培養液から分離すること(したがって、培地中で増殖した細胞が全培養液から回収される場合には、残すこと)、例えば、培養液中で増殖した細胞及びその他の細片が、遠心分離、濾過、沈降又は当技術分野で周知その他の手段によって除去される場合には、全培養液の上清、すなわち、液体培養液を残すことによって得ることができる培養培地に関する。上清は、例えば、約2〜30℃の温度で(より好ましくは、4〜20℃の温度で)、約10〜60分間(より好ましくは、約15〜30分)、約5,000〜20,000×gで(より好ましくは、約15,000×gで)遠心分離することによって得ることができる。
【0138】
このような培養培地は、培養された株によって産生される殺有害生物代謝産物を含有する。
【0139】
本発明はまた、本発明の株の細胞不含抽出物に関する。細胞不含抽出物を製造するために、本発明の株は、上記のように培養され得る。細胞は、高周波超音波によって、高圧によって、例えば、フレンチプレッシャーセルにおいて、浸透圧溶解(osmolysis)によって、界面活性剤、溶解酵素若しくは有機溶媒の作用によって、ホモジナイザーによって、又は列挙された方法のいくつかの組合せによって破壊され得る。抽出は、好ましくは、有機溶媒又は溶媒混合物、より好ましくは、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノールなど)を用いて、さらにより好ましくは、2-プロパノール(例えば、培養容量に対して1:1の比で)を用いて実施され得る。相分離は、NaClなどの塩の添加によって増強され得る。有機相が集められ得、溶媒又は溶媒混合物が、従来の蒸留及び/又は乾燥とそれに続く、メタノールでの再懸濁及び濾過によって除去され得る。
【0140】
このような抽出物は、培養された株によって産生される殺有害生物代謝産物を含有する。
【0141】
本発明の株に特異的である殺有害生物代謝産物は、特に、本発明の株が上記のように培養された場合に、従来の方法に従うこのような培地又は抽出物から回収され得る。
【0142】
本発明の方法は、個々の殺有害生物代謝産物を回収するステップをさらに含み得る。
【0143】
用語「回収すること」は、化合物を培養培地又は細胞不含抽出物から抽出、収集、単離又は精製することを含む。化合物を回収することは、それだけには限らないが、従来の樹脂(例えば、陰イオン又は陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)を用いる処理、従来の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)を用いる処理、pHの変更、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどといった従来の溶媒を用いる)、蒸留、透析、濾過、濃度、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などを含む当技術分野で公知の任意の従来の単離又は精製方法に従って実施され得る。例えば、代謝産物は、第1に微生物を除去ことによって回収され得る。次いで、残りの培養液を、陽イオン交換樹脂に、又は陽イオン交換樹脂上に通して、不要の陽イオンを除去し、次いで、陰イオン交換樹脂に、又は陰イオン交換樹脂上に通して、不要の無機陰イオン及び有機酸を除去する。
【0144】
新規パエニバチルス属の株の全培養液中に、いくつかの代謝産物が見られた。9種の代謝産物が、詳細に研究され、同定されている(実施例7、図1を参照のこと)。それらのうち2種が、新規であるとわかった(化合物1A及び化合物1B)。化合物1A及び1Bは、本発明の3種のパエニバチルス属の株すべてによって産生されるとわかった(表17を参照のこと)が、それらのうち、関連するパエニバチルス・ペオリエ株NRRL BD-62の全培養液において見られるものはなかった。
【0145】
したがって、本発明はまた、式I
【0146】
【化4】
[式中、
Rは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸(GHPD)及び12-グアニジノドデカン酸(12-GDA)から選択され、
X1は、トレオニンであり、
X2は、イソロイシンであり、
X3は、チロシンであり、
X4は、トレオニンであり、
X5は、グルタミン及びアスパラギンから選択され、
X6は、アラニンであり、
矢印は、Rのカルボニル部分とアミノ酸X1のアミノ基の間又は1種のアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単(アミド)結合を規定し、矢印の先端は、前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
単線(矢頭のない)は、X6のカルボニル基とX1のヒドロキシル基の間の単(エステル)結合を規定する]
で示される化合物及びその農業的に許容される塩に関する。
【0147】
さらなる実施形態によれば、式I中、X1は、好ましくは、L-トレオニンである。
【0148】
さらなる実施形態によれば、式I中、X2は、好ましくは、D-イソロイシン又はD-アロ-イソロイシンである。
【0149】
さらなる実施形態によれば、式I中、X3は、好ましくは、L-チロシンである。
【0150】
さらなる実施形態によれば、式I中、X4は、好ましくは、D-アロ-トレオニンである。
【0151】
さらなる実施形態によれば、式I中、X5は、好ましくは、D-グルタミン又はD-アスパラギンである。
【0152】
さらなる実施形態によれば、式I中、Rは、好ましくは、GHPDである。
【0153】
式Iの化合物の式Iの略図はまた、以下のように表され得る:
【0154】
【化5】
[式中、
Xは、-NH-(C=O)-CH2-CH(OH)-(CH2)12-NH-C(=NH)NH2及びNH-(C=O)-(CH2)11-NH-C(=NH)NH2から選択され、
R1は、1-ヒドロキシエチルであり、
R2は、1-メチルプロピル(sec-ブチル)であり、
R3は、4-ヒドロキシベンジルであり、
R4は、1-ヒドロキシエチルであり、
R5は、カルバモイルエチル及びカルバモイルメチルから選択され、
R6は、メチルである]。
【0155】
同様に、式Iのこの代替略図に基づく好ましい実施形態は、以下の通りである:
この式I中、R1は、好ましくは、(1S,2R)-1-ヒドロキシエチルである。
この式I中、R2は、好ましくは、(1R,2R)-1-メチルプロピル又は(1R,2S)-1-メチルプロピルである。
この式I中、R3は、好ましくは、(S)-4-ヒドロキシ-ベンジルである。
この式I中、R4は、好ましくは、(1S,2R)-1-ヒドロキシエチルである。
この式I中、R5は、好ましくは、(R)-カルバモイルエチル及び(R)-カルバモイルメチルである。
この式I中、Xは、好ましくは-NH-(C=O)-CH2-CH(OH)-(CH2)12-NH-C(=NH)NH2である。
【0156】
さらなる実施形態によれば、本発明はさらに、式Iのものである化合物1A及び1Bに関し、式中、Rは、GHPDであり、X4は、化合物1Aの場合にはアスパラギンであり、X4は、化合物1Bの場合にはグルタミンである:
【0157】
【化6】
【0158】
本発明の株に由来する殺有害生物代謝産物は、好ましくは、特に、化合物1A及び1Bから選択される、RがGHPDである式Iの化合物から選択され、これらは、本発明の株の培養物、すなわち、全培養液からの抽出及び単離によって得ることができる。
【0159】
さらに、RがGHTDであるものを含む式Iのフザリシジン型化合物は、当技術分野で公知の方法と同様に合成され得る(Biopolymers 第80巻(4号)、541頁、2005年; J. Peptide Sci. 12S、219頁、2006年; Tetrahedron Lett. 第47巻(48号)、8587〜90頁、2006年; Biopolymers 第88巻(4号)、568頁、2007年; ChemMedChem 第7巻、871〜882頁、2012年)。
【0160】
本発明はまた、式Iの前記フザリシジン型化合物の農業的に許容される塩、特に、酸付加塩に関する。前記塩は、当技術分野で周知の従来の方法によって、例えば、本発明の化合物を、適した酸と反応させて、酸付加塩を形成することによって得ることができる。有用な酸付加塩の陰イオンとして、主に塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、硫酸水素、メチル硫酸、硫酸、リン酸二水素、リン酸水素、硝酸、重炭酸、炭酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、安息香酸塩、並びにまた、C1-C4-アルカン酸、好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸の陰イオンがある。
【0161】
結果として、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される、少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩を含む微生物の全培養液に関し、特に、前記全培養液は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0162】
さらなる実施形態によれば、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩を含む、パエニバチルス属の微生物の全培養液に関し、特に、前記全培養液は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0163】
さらなる実施形態によれば、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される、少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩を含む、上記の同定及び定義されるような本発明の少なくとも1種のパエニバチルス属の株の全培養液に関し、特に、前記全培養液は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0164】
前記フザリシジン型化合物は、それを産生可能であるそれぞれの微生物の培養培地中に分泌される。
【0165】
結果的に、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される、少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩を含む微生物の培養培地及び/又は細胞不含抽出物に関し、特に、前記培養培地及び/又は細胞不含抽出物は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0166】
さらなる実施形態によれば、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される、少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩を含む、パエニバチルス属の微生物の培養培地及び/又は細胞不含抽出物に関し、特に、前記培養培地及び/又は細胞不含抽出物は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0167】
さらなる実施形態によれば、本発明はまた、好ましくは、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩から選択される、少なくとも1種の式Iの化合物又はその農業的に許容される塩含む、上記で同定及び定義されるような、本発明の少なくとも1種のパエニバチルス属の株の培養培地及び/又は細胞不含抽出物に関し、特に、前記培養培地及び/又は細胞不含抽出物は、化合物1A及び1B又はその農業的に許容される塩を含む。
【0168】
本発明はさらに、以下に定義されるような補助物及び少なくとも1種以上の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地及び本発明の式Iの化合物をそれぞれ含む農薬組成物に関する。
【0169】
本明細書において、本発明の生成物(微生物菌株、薬剤又は製剤)に関連して「組成物」とは、成分の組合せを指し、ここで、「製剤化」は、製剤を形成するために添加される成分の組合せのためのレシピなどの処方を使用するプロセスである。このような組成物はまた、本明細書において、製剤とも呼ばれる。
【0170】
株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び本発明の組成物は、それぞれ、抗菌類剤又は殺菌類剤として適している。それらは、特に、ネコブカビ綱(Plasmodiophoromycetes)、ツユカビ綱(Peronosporomycetes)(別名、卵菌門(Oomycetes))、ツボカビ綱(Chytridiomycetes)、接合菌綱(Zygomycetes)、子嚢菌綱(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)及び不完全菌綱(Deuteromycetes)(別名不完全菌類(Fungi imperfecti))の綱に由来する土壌伝播性菌類を含む広域の植物病原性菌類に対する顕著な有効性によって区別される。一部は、浸透性に有効であり、それらは、葉面殺菌類剤、種子粉衣のための殺菌類剤及び土壌殺菌類剤のような、作物保護において使用され得る。さらに、それらは、とりわけ、木部又は植物の根に生じる有害菌類の防除にとって適している。
【0171】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、穀類、例えば、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、カラスムギ又はイネ;ビート、例えば、サトウダイコン又は飼料ビート;ナシ状果、核果又は柔らかい果実、例えば、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー又はグースベリーなどの果実;レンズマメ、エンドウマメ、アルファルファ又はダイズなどのマメ科植物;ナタネ、マスタード、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、カカオ豆、トウゴマ、アブラヤシ、ラッカセイ又はダイズなどの油脂植物;カボチャ、キュウリ又はメロンなどのウリ科植物;綿、亜麻、麻又はジュートなどの繊維植物;オレンジ、レモン、グレープフルーツ又はマンダリンなどの柑橘類;ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ウリ科植物又はパプリカなどの野菜;アボカド、シナモン又はカンファーなどのクスノキ科植物;トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、サトウキビ又はアブラヤシなどのエネルギー及び原料植物;トウモロコシ;タバコ;ナッツ;コーヒー;紅茶;バナナ;ブドウの木(卓上用ブドウ及びブドウジュースブドウワイン);ホップ;芝生;アマメシバ(ステビアとも呼ばれる);天然ゴム植物又は花、低木、広葉樹若しくは常緑樹、例えば、針葉樹などの観賞植物及び森林植物などの種々の栽培植物での;並びに、これらの植物の種子などの植物繁殖材料及び作物材料での多数の植物病原性菌類の防除において特に重要である。
【0172】
好ましくは、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物培養培地、式Iの化合物及び組成物は、それぞれ、ジャガイモ、サトウダイコン、タバコ、コムギ、ライムギ、オオムギ、カラスムギ、イネ、トウモロコシ、綿、ダイズ、ブドウ、ナタネ、マメ科植物、ヒマワリ、コーヒー若しくはサトウキビ;果物;ワイン;観賞植物;又はキュウリ、トマト、マメ若しくはカボチャなどの野菜などの農作物での多数の菌類の防除のために使用される。
【0173】
用語「植物繁殖材料」は、植物の繁殖のために使用され得る、種子などの植物の生殖部分並びに挿し木及び塊茎(例えば、ジャガイモ)などの栄養植物材料のすべてを示すと理解されるものとする。このようなものとして、種子、根、果実、塊茎、鱗茎、根茎、シュート、スプラウト並びに実生及び発芽後又は土壌からの出芽後に移植される幼植物を含む植物のその他の部分が挙げられる。これらの幼植物はまた、浸漬又は注入による全処理又は部分処理によって移植前に保護され得る。
【0174】
好ましくは、植物繁殖材料の、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物培養培地、式Iの化合物;及び組成物を用いる処理はそれぞれ、コムギ、ライムギ、オオムギ及びカラスムギ;イネ、トウモロコシ、綿及びダイズなどの穀類での多数の菌類の防除のために使用される。
【0175】
用語「栽培された植物」は、それだけには限らないが、市販の、又は開発中の農業的バイオテクノロジー製品を含む、育種、突然変異誘発又は遺伝子工学によって修飾された植物を含むと理解されるものとする(例えば、http://cera-gmc.org/、その中のGM作物データベースを参照のこと)。遺伝子修飾された植物は、天然環境下では、交配、突然変異又は自然組換えによって容易に得ることができない、組換えDNA技術の使用によって遺伝物質がそのように修飾された植物である。通常、植物の特定の特性を改善するために、遺伝子修飾された植物の遺伝物質中に1種以上の遺伝子が組み込まれている。このような遺伝子修飾はまた、それだけには限らないが、例えば、グリコシル化又はプレニル化、アセチル化若しくはファルネシル化部分又はPEG部分などのポリマー付加による、タンパク質(複数可)、オリゴ-又はポリペプチドの標的化された翻訳後修飾も含む。
【0176】
育種、突然変異誘発又は遺伝子工学によって修飾されている植物は、例えば、育種又は遺伝子工学の従来法の結果としての、ジカンバ若しくは2,4-Dなどのオーキシン除草剤;ヒドロキシルフェニルピルベートジオキシゲナーゼ(HPPD)阻害剤若しくはフィトエン不飽和化酵素(PDS)阻害剤などの白化除草剤(bleacher herbicides);スルホニル尿素若しくはイミダゾリノンなどのアセト乳酸シンターゼ(ALS)阻害剤;グリホサートなどのエノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)阻害剤;グルホシネートなどのグルタミンシンセターゼ(GS)阻害剤;プロトポルフィリノーゲン-IXオキシダーゼ阻害剤;アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤などの脂質生合成阻害剤;又はオキシニル(oxynil)(すなわち、ブロモキシニル又はイオキシニル)除草剤などの特定のクラスの除草剤の適用に対して耐性にされている。さらに、植物は、グリホサート及びグルホシネートの両方に対する、又はグリホサート及びALS阻害剤、HPPD阻害剤、オーキシン除草剤若しくはACCアーゼ阻害剤などの別のクラスに由来する除草剤の両方に対する抵抗性など、多重遺伝子修飾によって複数のクラスの除草剤に対して抵抗性にされている。これらの除草剤抵抗性技術は、例えば、Pest Managem. Sci. 第61巻、2005年、246頁;第61巻、2005年、258頁;第61巻、2005年、277頁;第61巻、2005年、269頁;第61巻、2005年、286頁;第64巻、2008年、326頁;第64巻、2008年、332頁; Weed Sci. 第57巻、2009年、108頁;Austral. J. Agricult. Res.第58巻、2007年、708頁; Science 第316巻、2007年、1185頁;及びそれらの中で引用された参考文献に記載されている。いくつかの栽培された植物は、育種の従来法(突然変異誘発)によって除草剤に対して耐性にされている、例えば、イミダゾリノン、例えば、イマザモックスに対して耐性であるClearfield(登録商標)夏ナタネ(セイヨウアブラナ、BASF SE、Germany)又はスルホニル尿素、例えば、トリベニュロン(tribenuron)に対して耐性であるExpressSun(登録商標)ヒマワリ(DuPont、USA)。ダイズ、綿、トウモロコシ、ビーツ及びナタネなどの栽培された植物を、一部が、商標名RoundupReady(登録商標)(グリホサート耐性、Monsanto、U.S.A.)、Cultivance(登録商標)(イミダゾリノン耐性、BASF SE、Germany)及びLibertyLink(登録商標)(グルホシネート耐性、Bayer CropScience、Germany)で市販されているグリホサート及びグルホシネートなどの除草剤に対して耐性にするために、遺伝子工学法が使用されてきた。
【0177】
さらに、組換えDNA技術の使用によって、1種以上の殺虫性タンパク質、特に、δ-エンドトキシン、例えば、CryIA(b)、CryIA(c)、CryIF、CryIF(a2)、CryIIA(b)、CryIIIA、CryIIIB(b1)又はCry9cなどの、細菌属バチルス属由来の、特に、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の公知のもの;植物性殺虫性タンパク質(VIP)、例えば、VIP1、VIP2、VIP3又はVIP3A;線虫にコロニー形成する細菌、例えば、フォトラブダス(Photorhabdus)種又はゼノラブダス(Xenorhabdus)種の殺虫性タンパク質;サソリ毒、クモ毒、スズメバチ毒又はその他の昆虫特異的神経毒などの動物によって産生される毒素;ストレプトマイセテス(Streptomycetes)毒素のような菌類によって産生される毒素、エンドウマメ又はオオムギレクチンなどの植物レクチン;アグルチニン;トリプシン阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、パタチン、シスタチン又はパパイン阻害剤などのプロテイナーゼ阻害剤;リシン、トウモロコシ-RIP、アブリン、ラフィン(luffin)、サポリン又はブリオディン(bryodin)などのリボソーム不活性化タンパク質(RIP);3-ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイド-IDP-グリコシル-トランスフェラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、エクジソン阻害剤又はHMG-CoA-レダクターゼなどのステロイド代謝酵素;ナトリウム又はカルシウムチャネルのブロッカーなどのイオンチャネルブロッカー;幼若ホルモンエステラーゼ;利尿ホルモン受容体(ヘリコキニン受容体);スチルベン合成酵素、ビベンジル合成酵素、キチナーゼ又はグルカナーゼを合成可能である植物もまた、対象とされる。本発明に関連して、これらの殺虫性タンパク質又は毒素は、プレ毒素、ハイブリッドタンパク質、末端切断型又はそうでなければ修飾されたタンパク質として明確に理解されるものとする。ハイブリッドタンパク質は、タンパク質ドメインの新規組合せを特徴とする(例えば、WO02/015701を参照のこと)。このような毒素又はこのような毒素を合成可能である遺伝子修飾された植物のさらなる例は、例えば、EP-A374753、WO93/007278、WO95/34656、EP-A427529、EP-A451878、WO03/18810及びWO03/52073に開示されている。このような遺伝子修飾された植物を製造するための方法は、一般に、当業者に知られており、例えば、上記の刊行物に記載されている。遺伝子修飾された植物中に含有されるこれらの殺虫性タンパク質は、これらのタンパク質を産生する植物を、節足動物のすべての分類学的群に由来する有害な有害生物に対する、特に、カブトムシ(甲虫目(Coeloptera))、双翅目の昆虫(双翅目(Diptera))及びガ(鱗翅類(Lepidoptera))に対する、並びに線虫(線形動物門(Nematoda))に対する耐性を付与する。1種以上の殺虫性タンパク質を合成可能な遺伝子修飾された植物は、例えば、上記の刊行物に記載されており、YieldGard(登録商標)(Cry1Ab毒素を産生するトウモロコシ栽培品種)、YieldGard(登録商標)Plus(Cry1Ab及びCry3Bb1毒素を産生するトウモロコシ栽培品種)、Starlink(登録商標)(Cry9c毒素を産生するトウモロコシ栽培品種)、Herculex(登録商標)RW(Cry34Ab1、Cry35Ab1及び酵素ホスフィノトリシン-N-アセチルトランスフェラーゼ[PAT]を産生するトウモロコシ栽培品種);NuCOTN(登録商標)33B(Cry1Ac毒素を産生する綿栽培品種)、Bollgard(登録商標)I(Cry1Ac毒素を産生する綿栽培品種)、Bollgard(登録商標)II(Cry1Ac及びCry2Ab2毒素を産生する綿栽培品種);VIPCOT(登録商標)(VIP毒素を産生する綿栽培品種);NewLeaf(登録商標)(Cry3A毒素を産生するジャガイモ栽培品種);Bt-Xtra(登録商標)、NatureGard(登録商標)、KnockOut(登録商標)、BiteGard(登録商標)、Protecta(登録商標)、Bt11(例えば、Agrisure(登録商標)CB)及びSyngenta Seeds SAS、France製のBt176(Cry1Ab毒素及びPAT酵素を産生するトウモロコシ栽培品種)、Syngenta Seeds SAS、France製のMIR604(Cry3A毒素の修飾された版を産生するトウモロコシ栽培品種、WO03/018810を参照のこと)、Monsanto Europe S.A.、Belgium製のMON863(Cry3Bb1毒素を産生するトウモロコシ栽培品種)、Monsanto Europe S.A.、Belgium製のIPC531(Cry1Ac毒素の修飾された版を産生する綿栽培品種)及びPioneer Overseas Corporation、Belgium製の1507(Cry1F毒素及びPAT酵素を産生するトウモロコシ栽培品種)など、その一部は、市販されている。
【0178】
さらに、組換えDNA技術の使用によって、細菌性、ウイルス性又は菌類性病原体に対するそれらの植物の抵抗性又は耐性を増大するように、1種以上のタンパク質を合成可能である植物もまた、対象とされる。このようなタンパク質の例として、いわゆる「病理発生関連タンパク質」(PRタンパク質、例えば、EP-A392225を参照のこと)、植物疾患抵抗性遺伝子(例えば、メキシコ野生型ジャガイモソラナム・ブルボカスタナム(Solanum bulbocastanum)由来のフィトフトラ・インフェスタンスに対して作用する抵抗性遺伝子を発現するジャガイモ栽培品種)又はT4-リゾチーム(例えば、火傷病菌(Erwinia amylvora)などの細菌に対する抵抗性が増大した、これらのタンパク質を合成可能なジャガイモ栽培品種)がある。このような遺伝子修飾された植物を製造する方法は、一般に、当業者に公知であり、例えば、上記の刊行物に記載されている。
【0179】
さらに、それらの植物の生産性(例えば、バイオマス製造、穀粒収量、デンプン含量、オイル含量又はタンパク質含量)、乾燥、塩分若しくはその他の増殖制限環境因子に対する耐性又は有害生物及び菌類性、細菌性若しくはウイルス性病原体に対する耐性を増大するように、組換えDNA技術の使用によって、1種以上のタンパク質を合成可能な植物もまた、対象とされる。
【0180】
さらに、ヒト又は動物栄養を改善するように、組換えDNA技術の使用によって、内容物の物質又は内容物の新規物質の修飾された量を特別に含有する植物、例えば、健康促進性長鎖ω-3脂肪酸又は不飽和ω-9脂肪酸を産生する油脂作物(例えば、Nexera(登録商標)ナタネ、DOW Agro Sciences、Canada)もまた、対象とされる。
【0181】
さらに、原料製造を改善するように、組換えDNA技術の使用によって、内容物の物質又は内容物の新規物質の修飾された量を特別に含有する植物、例えば、アミロペクチンの増大した量を産生するジャガイモ(例えば、Amflora(登録商標)ジャガイモ、BASF SE、Germany)もまた、対象とされる。
【0182】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物は、それぞれ、以下の植物疾患を防除するために特に適している:
観賞植物でのアルブゴ(Albugo)種(白さび病)、野菜(例えば、A.カンジダ(A.candida))及びヒマワリ(例えば、A.トラゴポゴニス(A.tragopogonis));野菜、ナタネ(A.ブラシコラ(A.brassicola)又はブラシセ(A.brassicae))、サトウダイコン(A.テヌイス(A.tenuis))、果実、イネ、ダイズ、ジャガイモ(例えば、A.ソラニ又はA.アルテルナタ)、トマト(例えば、A.ソラニ又はA.アルテルナタ)及びコムギでのアルテルナリア属の種(アルテルナリア(Alternaria)斑点病);サトウダイコン及び野菜でのアファノミセス属の種(Aphanomyces spp.);穀類及び野菜でのアスコキタ属の種(Ascochyta spp.)、例えば、コムギでのA.トリティシ(A.tritici)(炭疽病)及びオオムギでのA.ホルデイ(A.hordei);ビポラリス属(Bipolaris)及びドレクスレラ属の種(Drechslera spp.)(有性世代:コキロボルス属の種(Cochliobolus spp.))、例えば、トウモロコシでのゴマ葉枯病(D.マイディス(D.maydis))又はすす紋病(B.ゼイコラ(B.zeicola))、例えば、穀類での斑点病(B.ソロキニアナ(B.sorokiniana))及び例えば、イネ及び芝生でのB.オリゼ(B.oryzae);穀類での(例えば、コムギ又はオオムギでの)ウドンコ病菌(Blumeria graminis)(以前は、Erysiphe graminis)(ウドンコ病);果物及びベリー(例えば、イチゴ)、野菜(例えば、レタス、ニンジン及びキャベツ)、ナタネ、花、つる植物、森林植物及びコムギでの灰色かび病菌(有性世代:灰色かび病菌(Botryotinia fuckeliana):灰色かび病);ブレミア・レクツカエ(Bremia lactucae)(ベト病);広葉樹及び常緑樹でのセラトシスチス(Ceratocystis)属(別名オフィオストマ(Ophiostoma)属)の種(青変病)、例えば、ニレでのC.ウルミ(ulmi)(ニレ立枯病);トウモロコシでのセルコスポラ属の種(Cercospora spp.)(セルコスポラ斑点病)(例えば、灰斑病:C.ゼアエ-マイディス(C.zeae-maydis))、イネ、サトウダイコン(例えば、C.ベチコラ(C.beticola))、サトウキビ、野菜、コーヒー、ダイズ(例えば、C.ソジナ(C.sojina)又はC.キクチー(kikuchii))及びイネ;トマト(例えば、C.フルバム(C.fulvum):葉枯病)及び穀類でのクラドスポリウム属の種(Cladosporium spp.)、例えば、コムギでのC.ヘルバルム(C.herbarum)(黒穂病(black ear));穀類での麦角菌(Claviceps purpurea)(麦角);コクリオボルス(Cochliobolus)属(無性世代:トウモロコシ(C.カルボナム(C.carbonum))、穀類(例えば、C.サチバス(C.sativus)、無性世代:B.ソロキニアナ)及びイネ(例えば、C.ミヤベアナス(C.miyabeanus)、無性世代:H.オリゼ)でのビポラリス属のヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属の種(斑点病);綿(例えば、C.ゴシピー(C.gossypii))、トウモロコシ(例えば、C.グラミニコラ(C.graminicola)でのコレトトリクム(Colletotrichum)属(有性世代:グロメレラ属の種(Glomerella spp.)(炭疽病):炭疽病倒伏(Anthracnose stalk rot))、柔らかい果実、ジャガイモ(例えば、C.ココデス(coccodes):黒点病)、マメ(例えば、C.リンデムチアヌム(C.lindemuthianum))及びダイズ(例えば、C.トルンカツム(C.truncatum)又はC.グロエオスポリオイデス(gloeosporioides));イネでのコルチシウム属の種(Corticium spp.)、例えば、C.ササキー(C.sasakii)(紋枯病);ダイズ及び観賞植物でのコリネスポラ・カシイコラ(Corynespora cassiicola)(斑点病);シクロコニウム属の種(Cycloconium spp.)、例えば、オリーブの木でのC.オレアギヌム(C.oleaginum);シリンドロカルポン属の種(Cylindrocarpon spp.)(例えば、果樹のがん腫病又は若いブドウの木の減衰、有性世代:果樹でのネクトリア属(Nectria)又はネオネクトリア属の種(Neonectria spp.))、ブドウの木(例えばC.リリオデンドリ(C.liriodendri)、有性世代:ネオネクトリア・リリオデンドリ(Neonectria liriodendri):黒足病)及び観賞植物;ダイズでのデマトフォラ(Dematophora)属(有性世代:ロゼリニア(Rosellinia))ネカトリックス(necatrix)(根枯及び茎枯病);ダイズでのジアポルテ属の種(Diaporthe spp.)、例えば、D.ファセオロラム(D.phaseolorum)(立枯病(damping off));トウモロコシ、オオムギ(例えばD.テレス(teres)、網斑病)及びコムギ(例えば、D.トリティシレペンチス(D.tritici-repentis):黄斑病)などの穀類、イネ及び芝生でのドレクスレラ属(Drechslera)(別名ヘルミントスポリウム属、有性世代:ピレノフォラ(Pyrenophora)属の種; ホルミチポリア(Formitiporia)属(別名フェリヌス(Phellinus)属)プンクタタ(punctata)によって引き起こされる、ブドウの木でのエスカ(Esca)属(胴枯れ、アポプレキシー(apoplexy))、F.ベジテラネア(F.mediterranea)フェオモニエラ・クラミドスポラ(Phaeomoniella chlamydospora)(初期は、ファエオアクレモニウム・クラミドスポラム(Phaeoacremonium chlamydosporum))、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeoacremonium aleophilum)及び/又はボトリスファエリア・オブツサ(Botryosphaeria obtusa);ナシ状果実(E.ピリ(E.pyri))、柔らかい果実(E.ベネタ(veneta):炭疽病)及びブドウの木(E.アンペリナ(E.ampelina):炭疽病)でのエルシノエ属の種(Elsinoe spp.);イネでのエンチロマ・オリゼ(Entyloma oryzae)(黒腫病);コムギでのエピコクム属の種(Epicoccum spp.)(黒かび病);サトウダイコン(E.ベタエ(betae))、ウリ科植物(例えば、E.シコラセアルム(E.cichoracearum))、キャベツ、ナタネ(例えば、E.クルシフェラルム(cruciferarum))などの野菜(例えば、E.ピシ(pisi))でのエリシフェ属の種(Erysiphe spp.)(ウドンコ病);果樹、ブドウの木及び観賞植物の木でのエウチパ・ラタ(Eutypa lata)(ユータイパ病又は胴枯れ、無性世代:シトスポリナ・ラタ(Cytosporina lata)、別名リベルテラ・ブレファリス(Libertella blepharis));トウモロコシ(例えば、E.ツルシクム(E.turcicum))でのエクスセロヒルム(Exserohilum)属(別名ヘルミントスポリウム属)の種;穀類(例えば、コムギ又はオオムギ)でのF.グラミネアルム(F.graminearum)又はF.クルモルム(F.culmorum)(根腐れ、痂皮病又は赤カビ病)、トマトでのF.オキシスポラム、ダイズで、各々、突然死症候群を引き起こす、F.ソラニ(f.の種グリシン(glycines)現在の別名F.ビルグリホルム(F.virguliforme))及びF.ツクマニエ(F.tucumaniae)及びF.ブラシリエンス(F.brasiliense)及びトウモロコシでのF.ベルチシロイデス(F.verticillioides)などの種々の植物でのフザリウム(Fusarium)属(有性世代:ジベレラ(Gibberella)属)の種(萎凋、根枯れ又は茎枯病);穀類(例えば、コムギ又はオオムギ)及びトウモロコシでのガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis)(立枯病(take-all));穀類(例えば、G.ゼア(G.zeae))及びイネ(例えば、G.フジクロイ(G.fujikuroi):馬鹿苗病)でのジベレラ属の種(Gibberella spp.);ブドウの木、ナシ状果実及びその他の植物でのグロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata)及び綿でのG.ゴシピー;イネでの穀物汚染複合体(Grainstaining complex);ブドウの木でのグイグナルジア・ビドウェリー(Guignardia bidwellii)(黒斑病);バラ科植物及びネズでのジムノスポランジウム属の種(Gymnosporangium spp.)、例えば、セイヨウナシでのG.サビネ(G.sabinae)(さび病);トウモロコシ、穀類及びイネでのヘルミントスポリウム属の種(Helminthosporium spp.)(別名ドレクスレラ属、有性世代:コキロボルス属);ヘミレイア属の種(Hemileia spp.)、例えば、コーヒーでのH.バスタトリックス(H.vastatrix)(コーヒー葉さび病);ブドウの木でのイサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora)(別名クラドスポリウム・ビチス(Cladosporium vitis));ダイズ及び綿でのマクロフォミナ・ファセオリナ(Macrophomina phaseolina)(別名ファセオリ(phaseoli))(根腐れ及び茎腐れ病);穀類(例えば、コムギ又はオオムギ)でのミクロドチウム(Microdochium)(別名フザリウム)ニバレ(nivale)(紅色雪腐病);ダイズでのミクロスファエラ・
ジフサ(Microsphaera diffusa)(ウドンコ病);核果及びその他のバラ科植物でのモニリニア属の種(Monilinia spp.)例えば、M.ラキサ(M.laxa)、M.フルクリコラ(M.fructicola)及びM.フルクチゲナ(M.fructigena)(花及び小枝枯病(bloom and twig blight)、褐色腐敗病);例えば、コムギでのM.グラミニオコラ(無性世代:セプトリア・トリティシ(Septoria tritici)、葉枯病(Septoria blotch))又はバナナでのM.フィジエンシス(M.fijiensis)(ブラックシガトカ病(black Sigatoka disease))などの穀類、バナナ、柔らかい果実及びラッカセイでのミコスファエレラ属の種(Mycosphaerella spp.);キャベツ(例えば、P.ブラシセ)、ナタネ(例えば、P.パラシチカ(P.parasitica))、タマネギ(例えば、P.デストルクトル(P.destructor))、タバコ(P.タバシナ(P.tabacina))及びダイズ(例えば、P.マンシュリカ(P.manshurica))でのペロノスポラ属の種(Peronospora spp.)(ベト病);ダイズでのダイズさび病菌(Phakopsora pachyrhizi)及びP.メイボミエ(P.meibomiae)(ダイズさび病);例えば、ブドウの木(例えば、P.トラケイフィラ(P.tracheiphila)及びP.テトラスポラ(P.Tetraspora))及びダイズ(例えば、P.グレガタ(P.gregata):茎腐れ病)でのでのフィアロフォラ属の種(Phialophora spp.);ナタネ及びキャベツでのフォマ・リンガム(Phoma lingam)(根腐れ及び茎腐れ病)及びサトウダイコンでのP.ベタエ(根腐れ、斑点病及び立枯病);ヒマワリ、ブドウの木(例えば、P.ビチコラ(P.viticola):つる割病(can and leaf spot))及びダイズ(例えば、茎腐れ病:P.ファセオリ、有性世代:ジアポルテ・ファセオロルム(Diaporthe phaseolorum)でのフォモプシス属(Phomopsis spp.);トウモロコシでのフィソデルマ・マイジス(Physoderma maydis)(褐斑病);パプリカ及びウリ科植物(例えば、P.カプシシ(P.capsici))、ダイズ(例えば、P.メガスペルマ(P.megasperma)、別名P.ソジェ(P.sojae))、ジャガイモ及びトマト(例えば、P.インフェスタンス(P.infestans):疫病(late blight))及び広葉樹(例えば、P.ラモルム(P.ramorum):サドンオークデス(sudden oak death))などの種々の植物でのフィトフトラ属の種(Phytophthora spp.)(萎凋、根腐れ、葉腐れ、果実腐れ及び茎腐れ病(wilt, root, leaf, fruit and stem root));キャベツ、ナタネ、ラディッシュ及びその他の植物でのプラスモジオフォラ・ブラシカエ(Plasmodiophora brassicae)(根コブ病);プラズモパラ属の種(Plasmopara spp.)、例えば、ブドウの木でのP.ビチコラ(ブドウベト病)及びヒマワリでのP.ハルステジー(P.halstedii);バラ科植物、ホップ、ナシ状果及び柔らかい果実でのポドスファエラ属の種(Podosphaera spp.)(ウドンコ病)、例えば、リンゴでのP.ロイコトリカ(leucotricha);例えば、オオムギ及びコムギなどの穀類(P.グラミニス(P.graminis))及びサトウダイコン(P.ベタエ)でのポリミクサ属の種(Polymyxa spp.)及びそれによって伝播されるウイルス疾患;穀類、例えば、コムギ又はオオムギでのシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)(眼紋病、有性世代:タペシア・ヤルンダエ(Tapesia yallundae));種々の植物でのシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)(ベト病)、例えば、ウリ科植物でのP.クベンシス(P.cubensis)又はホップでのP.フミリ(P.humili);ブドウの木でのシュードペジクラ・トラケイフィラ(Pseudopezicula tracheiphila)(赤色花火病(red fire disease)又は「ロットブレナー(rotbrenner)」、無性世代:フィアロフォラ(Phialophora));種々の植物でのプッキニア属の種(Puccinia spp.)(さび病)、例えば、P.トリティシナ(P.triticina)(褐色又は葉さび病)、P.ストリフォルミス(P.striiformis)(縞又は黄さび病)、P.ホルデイ(矮化さび病)、P.グラミニス(茎さび病又は黒さび病)又は例えば、コムギ、オオムギ若しくはライムギなどの穀類でのP.レコンジタ(P.recondita)(褐色さび病又は葉さび病)、サトウキビでのP.クエーニー(P.kuehnii)(赤さび病)及びアスパラガスでのP.アスパラギ(P.asparagi);コムギでのピレノフォラ(無性世代:ドレクスレラ・トリティシ-レペンチス(Drechslera tritici-repentis)(黄斑病)又はオオムギでのP.テレス(網斑病);ピリクラリア属の種(Pyricularia spp.)、例えば、イネでのP.オリゼ(P.有性世代:マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、イネイモチ病)及び芝生及び穀類でのP.グリセア(P.grisea);芝生、イネ、トウモロコシ、小麦、綿、ナタネ、ヒマワリ、ダイズ、サトウダイコン、野菜及び種々のその他の植物でのピチウム属の種(Pythium spp.)(立枯病)(例えば、P.ウルチムム(P.ultimum)又はP.アファニデルマツム(P.aphanidermatum));ラムラリア属の種(Ramularia spp.)、例えば、オオムギでのR.コロ-シグニ(R.collo-cygni)(ラムラリア斑点病、生理学的斑点病)及びサトウダイコンでのR.ベチコラ;綿、イネ、ジャガイモ、芝生、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜及び種々のその他の植物でのリゾクトニア属の種(Rhizoctonia spp.)、例えば、ダイズでのR.ソラニ(R.根腐れ及び茎腐れ病)、イネでのR.ソラニ(紋枯病)又はコムギ若しくはオオムギでのR.セレアリス(R.cerealis)(リゾクトニアの春枯病);イチゴ、ニンジン、キャベツ、ブドウの木及びトマトでのリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)(黒かび病、軟腐病);オオムギ、ライムギ及びライコムギでのリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis)(やけ病);イネでのサロクラジウム・オリゼ(Sarocladium oryzae)及びS.アテニュアツム(attenuatum)(葉鞘腐敗病);ナタネ、ヒマワリなどの野菜及び農作物でのスクレロチニア属の種(Sclerotinia spp.)(茎腐れ病又は白かび病)(例えば、S.スクレロチオルム(S.sclerotiorum))及びダイズ(例えば、S.ロルフシー(S.rolfsii)又はS.スクレロチオルム);種々の植物でのセプトリア属の種(Septoria spp.)、例えば、ダイズでのS.グリシン(褐斑病)、コムギでのS.トリティシ(セプトリア斑点病)及び穀類でのS.(別名.スタゴノスポラ(Stagonospora))ノドルム(nodorum)(スタゴノスポラ斑点病);ブドウの木でのウンキヌラ(Uncinula)(別名エリシフェ(Erysiphe))ネカトール(necator)(ウドンコ病、無性世代:オイジウム・ツケリ(Oidium tuckeri));トウモロコシでのセトスペリア属の種(Setospaeria spp.)(黒葉枯病)(例えば、S.ツルシウム、別名ヘルミントスプリウム・ツルシウム(Helminthosporium turcicum))及び芝生;トウモロコシでのスファセロテカ属の種(Sphacelotheca spp.)(黒穂病) (例えば、S.レイリアナ(S.reiliana):黒穂病(head smut))、ソルガム及びサトウキビ;ウリ科植物でのスファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)(ウドンコ病);ジャガイモでのスポンゴスポラ・スブテラネア(Spongospora subterranea)(粉状そうか病)及びそれによって伝播されるウイルス性疾患;穀類でのスタゴノスポラ属の種(Stagonospora spp.)例えば、コムギでのS.ノドルム(スタゴノスポラ斑点病、有性世代:レプトスファエリア(Leptosphaeria)[別名ファエオスファエリア(Phaeosphaeria)]ノドルム;ジャガイモでのシンチトリウム・エンドビオチクム(Synchytrium endobioticum)(ジャガイモイボ病);タフリナ属の種(Taphrina spp.)、例えば、モモでのT.デホルマンス(deformans)(葉巻病)及びスモモ類でのT.プルニ(pruni)(スモモ類膨らみ病);タバコ、ナシ状果物、野菜、ダイズ及び綿でのチエラビオプシス属の種(Thielaviopsis spp.)(黒色根腐れ病)、例えば、穀類でのT.バシコラ(T.basicola)(別名チャララ・エレガンス(Chalara elegans));チレチア属の種(Tilletia spp.)(なまぐさ黒穂病又は黒穂病(stinking smut))、例えば、T.トリティシ(別名T.カリエス(caries)、コムギなまぐさ黒穂病)及びコムギでのT.コントロベルサ(controversa)(萎縮黒穂病);オオムギ又はコムギでのチフラ・インカルナタ(Typhula incarnata)(灰雪かび病);ウロシスティス属の種(Urocystis spp.)、例えば、ライムギでのU.オキュルタ(U.occulta)(黒穂病(stem smut));マメ(例えば、U.アペンディクラツス(U.appendiculatus)、別名U.ファセオリ)及びサトウダイコン(例えば、U.ベタエ)などの野菜でのウロミセス属の種(Uromyces spp.)(さび病);穀類でのウスチラゴ属の種(Ustilago spp.)(裸黒穂病)(例えば、U.ヌダ(U.nuda)及びU.アバエナエ(U.avaenae))、トウモロコシ(例えば、U.マイディス:トウモロコシ黒穂病)及びサトウキビ;リンゴ(例えば、V.イナエクアリス(V.inaequalis))及びセイヨウナシでのベンツリア属の種(Venturia spp.)(そうか病);並びに果物及び観賞植物、ブドウの木、柔らかい果実、野菜及び農作物などの種々の植物でのベルチシリウム属の種(Verticillium spp.)(萎凋病)、例えば、位置後、ナタネ、ジャガイモ及びトマトでのV.ダーリアエ(V.dahliae)。
【0183】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、貯蔵製品又は収穫物の保護において、及び材料の保護において、有害病原体、特に、菌類の防除にも適している。
【0184】
用語「材料の保護」は、菌類及び細菌などの有害微生物による侵襲及び破壊に対する、接着剤、グルー、木材、紙及び板紙、繊維製品、皮、塗料分散物、プラスチック、冷却潤滑剤、繊維又は織物などの技術的材料及び非生存材料の保護を示すと理解されるものとする。木材及びその他の材料の保護については、以下の有害菌類に対して特別の注意が払われる:オフィオストマ属の種(Ophiostoma spp.)、セラトシスチス属の種(Ceratocystis spp.)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、スクレロフォマ属の種(Sclerophoma spp.)、ケトミウム属の種(Chaetomium spp.)、フミコラ属の種(Humicola spp.)、ペトリエラ属の種(Petriella spp.)、トリキュルス属の種(Trichurus spp.)などの子嚢菌綱;コニオフォラ属の種(Coniophora spp.)、コリオルス属の種(Coriolus spp.)、グロエオフィルム属の種(Gloeophyllum spp.)、レンチヌス属の種(Lentinus spp.)、プレウロツス属の種(Pleurotus spp.)、ポリア属の種(Poria spp.)、セルプラ属の種(Serpula spp.)及びチロマイセス属の種(Tyromyces spp.)などの担子菌綱、アスペルギルス属の種(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属の種、ペニシリウム属の種(Penicillium spp.)、トリコルマ属の種(Trichorma spp.)、アルテルナリア属の種、パエシロマイセス属の種(Paecilomyces spp.)などの不完全菌綱及びムコール属の種(Mucor spp.)などの接合菌綱。さらに、貯蔵製品及び収穫物の保護において、以下の酵母菌類が記載に値する:カンジダ属の種(Candida spp.)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)。
【0185】
本発明の処理の方法はまた、菌類及び微生物の攻撃に対する貯蔵製品又は収穫物を保護する分野において使用され得る。本発明によれば、用語「貯蔵製品」は、天然の生活環から取り出され、長期保護が望まれる、植物又は動物起源の天然物質及びその処理された形態を示すように理解される。植物又はその一部、例えば、葉柄、葉、塊茎、種子、果実若しくは穀粒などの作物植物起源の貯蔵製品は、新たに収穫された状態で、又は予備乾燥された、湿らされた、細分された、磨砕された、圧力がかけられた、若しくは焼かれたなどの処理された形態で保護され得、このプロセスは、収穫後処理としても知られる。また、貯蔵製品の定義に該当するものとして、構造材木、電気パイロン及び障壁などの粗材木の形態であるか、家具又は木製物などの完成品の形態であるかに関わらず、材木がある。動物起源の貯蔵製品として、皮、革、毛皮、毛などがある。本発明に従う組合せは、崩壊、変色又はかびなどの不利な作用を防ぐことができる。好ましくは、「貯蔵製品」は、植物起源の天然物質及びその処理された形態、より好ましくは、ナシ状果実、核果、柔らかい果実及び柑橘類の果実及びその処理された形態などの果実及びその処理された形態を示すと理解される。
【0186】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、植物の健康を改善するために使用され得る。本発明はまた、植物、その繁殖材料及び/又は遺伝子座を処理することによって植物の健康を改善するための方法に関し、ここで、植物は、有効量の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物を用いて増殖しているか、又は増殖するはずである。
【0187】
用語「植物の健康」は、収量(例えば、バイオマスの増大及び/又は有用な成分の含量の増大)、植物の勢い(例えば、植物成長の改善及び/又はより緑色の葉(「緑化効果」))、質(例えば、特定の成分の含量又は組成の改善)並びに非生物的及び/又は生物的ストレスに対する耐性など、いくつかの指標単独によって、又は互いに組み合わせて決定される、植物及び/又はその産物の状態を示すと理解されるものとする。植物の健康状態についての上記で同定された指標は、相互依存的であり得るか、又は互いに起因し得る。
【0188】
より健康な植物は、それらが、中でも、植物又は作物のより良好な収量及び/又はより良好な質、具体的には、収穫された植物の部分のより良好な質をもたらすので、望ましい。より健康な植物はまた、生物的及び/又は非生物的ストレスに対して、より良好に抵抗性である。生物的ストレスに対する高い抵抗性は、順に、当業者が、適用される殺有害生物剤の量を低減し、結果として、それぞれの殺有害生物剤に対する抵抗性の発生を減速することを可能にする。
【0189】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの上記の作用、すなわち、植物の健康の増強はまた、植物が生物的ストレス下にない場合に、特に、植物が有害生物の圧力下にない場合にも存在することが強調されなくてはならない。
【0190】
例えば、種子処理及び土壌適用について、菌類又は殺虫性攻撃に苦しんでいる植物は、発芽及び出芽の低減を示し、より不十分な植物又は作物の確立及び勢いにつながり、結果として、関連有害生物に対する治療的又は予防的処理に付された植物繁殖材料及び生物的ストレス因子によって引き起こされる損傷を伴わずに成長し得る植物繁殖材料と比較して収量の低下につながることが明白である。しかし、本発明の方法は、何らかの生物的ストレスの不在下でさえ、植物の健康の増強につながる。これは、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物の正の作用はそれぞれ、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの殺有害生物活性だけによって説明され得ず、さらなる活性プロフィールに基づいていることを意味する。したがって、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの適用は、有害生物の圧力の不在下で実施され得る。
【0191】
同等に好ましい一実施形態では、本発明は、前記植物繁殖材料から成長した植物の健康を改善するための方法に関し、ここで、植物繁殖材料は、有効量の少なくとも1種の本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物又は組成物を用いて処理される。
【0192】
収量、植物の勢い、質並びに非生物的及び/又は生物的ストレスに対する植物の耐性からなる群から選択される以下に列挙される各植物の健康の指標は、各々それ自体で、又は好ましくは、互いに組み合わせて本発明の好ましい実施形態として理解されるものとする。
【0193】
本発明によれば、植物の「収量の増大」は、それぞれの植物の産物の収量が、同一条件下であるが、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれを適用せずに産生された植物の同一産物の収量を上回って測定可能な量、増大することを意味する。
【0194】
例えば、接種材料及び/又は葉面処理形態としての種子処理について、収量の増大は、中でも、以下の植物の改善された特性を特徴とし得る:植物重量の増大、並びに/又は植物高の増大、並びに/又はより高い全新鮮重(FW)などのバイオマスの増大、並びに/又は植物あたりの花の数の増大、並びに/又はより高い穀粒及び/若しくは果実収量、並びに/又はより多い分げつ若しくは側芽(分岐)、並びに/又はより大きな葉、並びに/又は芽の成長の増大、並びに/又はタンパク質含量の増大、並びに/又はオイル含量の増大、並びに/又はデンプン含量の増大、並びに/又は色素含量の増大、並びに/又はクロロフィル含量の増大(クロロフィル含量は、植物の光合成速度と正の相関を有し、従って、クロロフィル含量が高いほど、植物の収量が高い)並びに/又は植物の質の増大。
【0195】
「穀粒」及び「果実」は、植物によって産生される経済的価値のあるものである、収穫後にさらに利用される任意の植物産物、例えば、その本来の意味での果実、野菜、ナッツ、穀粒、種子、木(例えば、造林植物の場合には)、花(例えば、園芸植物、観賞植物の場合には)などとして理解されるものとする。
【0196】
本発明によれば、収量は、少なくとも4%増大される。一般に、収量増大は、より高いものでさえ、例えば、5〜10%、より好ましくは10〜20%又はさらに20〜30%であり得る。
【0197】
本発明によれば、収量は、有害生物の圧力の不在下で測定される場合には、少なくとも2%増大される。一般に、収量増大は、より高いものでさえ、例えば、4%〜5%まで、又はさらにそれ以上であり得る。
【0198】
植物の状態の別の指標として、植物の勢いがある。植物の勢いは、全体的な外観などのいくつかの態様において明らかとなる。
【0199】
葉面処理については、植物の勢いの改善は、中でも、以下の植物の改善された特性を特徴とし得る:植物の生命力の改善、並びに/又は植物成長の改善、並びに/又は植物発達の改善、並びに/又は外観の改善、並びに/又は植物立性の改善(より少ない植物転倒(plant verse)/倒伏及び/又はより大きな葉身、及び/又はより大きな大きさ、及び/又は植物高の増大、及び/又は分げつ数の増大、及び/又は側芽数の増大、及び/又は植物あたりの花の数の増大、及び/又は芽成長の増大、及び/又は光合成活性の増強(例えば、気孔伝導度の増大及び/又はCO2同化率の増大)に基づく)、並びに/又はより早期の開花、並びに/又はより早期の結実、並びに/又はより早期の穀粒成熟、並びに/又はより少ない非生産的分げつ、並びに/又はより少ない死滅した基底葉、並びに/又はより少ない必要とされる投入物(肥料又は水など)、並びに/又はより緑化した葉、並びに/又はより短縮された植物生育期間のもとでの完全成熟、並びに/又はより容易な収穫、並びに/又はより迅速なより均一な成熟、並びに/又はより長い保存可能期間、並びに/又はより長い穂、並びに/又は老化の遅延、並びに/又はより強力な及び/若しくはより多い生産的分げつ、並びに/又は成分のより良好な抽出能力、並びに/又は種子のより改善された質(種子製造のために次の季節に播種されるための)、並びに/又はエチレンの生成の低減並びに/又は植物によるその感知の阻害。
【0200】
植物の状態の別の指標として、植物及び/又はその産物の「質」がある。本発明によれば、質の増強は、特定の成分の含量又は組成などの特定の植物の特徴が、同一条件下であるが、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれを適用せずに産生された植物の同一因子を上回って測定可能な又は注目すべき量、増大又は改善されることを意味する。増強された質は、中でも、以下の植物又はその産物の改善された特性を特徴とし得る:栄養分含量の増大、及び/又はタンパク質含量の増大、及び/又はオイル含量の増大、及び/又はデンプン含量の増大、及び/又は脂肪酸の含量の増大、及び/又は代謝産物含量の増大、及び/又はカロテノイド含量の増大、及び/又は糖含量の増大、及び/又は必須アミノ酸の量の増大、及び/又は栄養分組成の改善、及び/又はタンパク質組成の改善、及び/又は脂肪酸の組成の改善、及び/又は代謝産物組成の改善、及び/又はカロテノイド組成の改善、及び/又は糖組成の改善、及び/又はアミノ酸組成の改善、及び/又は改善された若しくは最適な果実の色、及び/又は葉の色の改善、及び/又はより高い貯蔵能、及び/又は収穫された産物のより良好な加工性。
【0201】
植物の状態の別の指標として、生物的及び/又は非生物的ストレス因子に対する植物の耐性又は抵抗性がある。生物的及び非生物的ストレス、特に、長期間にわたるものは、植物に対して有害作用を有し得る。
【0202】
生物的ストレスは、生存している生物によって引き起こされ、非生物的ストレスは、例えば、環境的に極端なものによって引き起こされる。本発明によれば、「生物的及び/又は非生物的ストレス因子に対する耐性又は抵抗性の増強」とは、(1.)生物的及び/又は非生物的ストレスによって引き起こされる特定の負因子が、同一条件に曝露されるが、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれを用いて処理されていない植物と比較して、測定可能な又は注目すべき量、減少されること並びに(2.)負の作用が、ストレス因子に対する、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの直接作用によって、例えば、微生物又は有害生物を直接的に破壊するその殺菌類性又は殺虫性作用によって減少されないが、むしろ、前記ストレス因子に対する植物自身の防御反応の刺激によって減少されることを意味する。
【0203】
病原体及び有害生物などの生物的ストレスによって引き起こされる負の因子は、広く知られており、競合植物(例えば、雑草)、微生物(植物病原性菌類及び/又は細菌など)及び/又はウイルスなどの生存している生物によって引き起こされる。
【0204】
非生物的ストレスによって引き起こされる負の因子もまた周知であり、植物の勢い(上記を参照のこと)、例えば:
より少ない収量及び/又はより少ない勢いの低減として観察され得ることが多く、両作用の例は、中でも、焼けた葉、より少ない花、早発熟化、より遅い作物成熟度、栄養価の低下であり得る。
【0205】
生物的ストレスは、例えば、熱若しくは低温などの温度の極端なものによって引き起こされ得る(熱ストレス/低温ストレス)、並びに/又は温度の大きな変動、及び/若しくは特定の季節には稀な温度、及び/若しくは乾燥(乾燥ストレス)、及び/若しくは極端な湿気、及び/若しくは高い塩分(塩ストレス)、及び/若しくは照射(例えば、オゾン層の減少によるUV照射の増大による)、及び/若しくはオゾンレベルの増大(オゾンストレス)、及び/若しくは有機汚染(例えば、植物毒性量の殺有害生物剤による)、及び/若しくは無機汚染(例えば、重金属混入による)によって引き起こされ得る。
【0206】
生物的及び/又は非生物的ストレス因子の結果として、ストレスを受けた植物の量及び質は、低下する。質(上記で定義されたような)に関する限り、生殖発生は、普通、著しく影響を受け、果実又は種子にとって重要である、作物に対する結果を伴う。タンパク質の合成、蓄積及び貯蔵は、温度によって最も影響を受け、成長は、ほとんど全部の種類のストレスによって減速され、多糖合成は、構造的及び貯蔵の両方が低減されるか、又は修飾され、これらの作用は、バイオマス(収量)の減少及び産物の栄養価の変更をもたらす。
【0207】
上記で指摘したように、植物の健康状態の上記で同定された指標は、互いに相互依存的であり得、互いに起因し得る。例えば、生物的及び/又は非生物的ストレスに対する抵抗性の増大は、より良好な植物の勢い、例えば、より良好な及びより大きな作物に、従って、収量の増大につながり得る。逆に、より発達した根系は、生物的及び/又は非生物的ストレスに対する抵抗性の増大をもたらし得る。しかし、これらの相互依存性及び相互作用は、すべて公知であるわけでも、十分に理解されているわけでもなく、したがって、種々の指標は、別個に記載されている。
【0208】
一実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、植物又はその産物の収量の増大を実現する。別の実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、植物又はその産物の勢いの増大を実現する。別の実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、植物又はその産物の質の増大を実現する。さらに別の実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、生物的ストレスに対する植物又はその産物の耐性及び/又は抵抗性の増大を実現する。さらに別の実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、生物的ストレスに対する植物又はその産物の耐性及び/又は抵抗性の増大を実現する。
【0209】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、そのようなものとして、又は組成物の形態で、殺菌類的に有効な量の活性物質を用いて、菌類の攻撃から保護しようとする、菌類又は植物、種子などの植物繁殖材料、土壌、表面、材料又は部屋を処理することによって使用される。適用は、菌類による植物、種子などの植物繁殖材料、土壌、表面、材料又は部屋の感染の前及び後の両方で実施され得る。
【0210】
用語「有効量」とは、栽培された植物で有害菌類を防除するのに、又は材料の保護において十分であり、処理される植物に実質的な損傷をもたらさない量を示す。このような量は、広範囲で変更され得、防除される菌類の種類、処理される栽培された植物又は材料、気候条件並びに使用される本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地及び式Iの化合物又はその塩それぞれなどの種々の因子に応じて変更される。
【0211】
植物繁殖材料は、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれを用いて、定植若しくは移植時又はその前のいずれかに予防的に処理され得る。
【0212】
本発明の株は、植物のための接種材料として製剤化され得る。用語「接種材料」とは、本発明の単離された株及び任意選択で、生物学的に許容される媒体を含み得る担体を含む組成物を意味する。
【0213】
このような接種材料及びその他の適した組成物は、通常の手段によって、有効成分に加えて、少なくとも1種の補助物(不活性成分)を含む組成物として調製され得る(例えば、H.D. Burges: Formulation of Microbial Biopesticides、Springer、1998年を参照のこと)。
【0214】
乾燥製剤を製造するために、細菌細胞、好ましくは、胞子を、適した乾燥担体(例えば、粘土)に懸濁してもよい。液体製剤を製造するためには、細胞、好ましくは、胞子を、適した液体担体(例えば、水ベースの)に所望の胞子密度に再懸濁してもよい。mlあたりの胞子の胞子密度数は、約20〜約30℃の温度で数日間インキュベートした後に、寒天培地、例えば、ジャガイモデキストロース寒天上でコロニー形成単位(CFU)の数を同定することによって決定できる。
【0215】
一実施形態によれば、キットの一部又は二元若しくは三元混合物の一部などの本発明の組成物の個々の成分は、噴霧タンク又は適用に使用される任意のその他の種類の容器(例えば、種子処理装置ドラム、種子ペレット化機器、背負式噴霧器)中でユーザー自身によって混合され得、必要に応じてさらに補助物が添加され得る。本発明のパエニバチルス株などの生存している生物が、このようなキットの一部を形成する場合には、キットのその他の一部(例えば、化学的殺有害生物剤)及びさらなる補助物の選択及び量が、ユーザーによって混合される組成物中の微生物性殺有害生物剤の生存力に影響を及ぼしてはならないことに注意しなければならない。特に、殺菌剤及び溶媒について、それぞれの微生物性殺有害生物剤との適合性が考慮されなければならない。
【0216】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地及び/又は式Iの化合物は、通例の種類の農薬組成物、例えば、溶液、エマルション製剤、懸濁液、ダスト、粉末、ペースト剤、粒剤、加圧形成物、カプセル及びそれらの混合物に変換され得る。組成物の種類の例として、懸濁液(例えば、SC、OD、FS)、乳剤(例えば、EC)、エマルション製剤(例えば、EW、EO、ES、ME)、カプセル(例えば、CS、ZC)、ペースト剤、芳香錠、水和剤(wettable powder)又はダスト(例えば、WP、SP、WS、DP、DS)、加圧形成物(例えば、BR、TB、DT)、粒剤(例えば、WG、SG、GR、FG、GG、MG)、殺虫性品目(例えば、LN)、並びに種子などの植物繁殖材料の処理のためのゲル製剤(例えば、GF)がある。これらの及びさらなる組成物の種類は、「Catalogue of pesticide formulation types and international coding system」、Technical Monograph 第2巻、第6版、2008年5月、CropLife Internationalに定義されている。
【0217】
組成物は、Mollet and Grubemann、Formulation technology、Wiley VCH、Weinheim、2001年;又はKnowles、New developments in crop protection product formulation、Agrow Reports DS243、T&F Informa、London、2005年によって記載されるものなどの公知の方法で調製される。
【0218】
適した補助物として、溶媒、液体担体、固体担体又は増量剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、アジュバント、可溶化剤、浸透促進剤、保護性コロイド、接着剤、増粘剤、保水剤、忌避剤、誘引剤、摂食刺激剤、相溶化剤、殺菌剤、抗凍結防止剤、消泡剤、着色剤、粘着付与剤及び結合剤がある。
【0219】
適した溶媒及び液体担体として、水並びに中〜高沸点の粘着付与剤の鉱油画分などの有機溶媒、例えば、灯油、ディーゼル油;植物又は動物起源のオイル;脂肪族、環状及び芳香族炭化水素、例えば、トルエン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン;アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール;グリコール;DMSO;ケトン、例えばシクロヘキサノン;エステル、例えば、ラクテート、カーボネート、脂肪酸エステル、γ-ブチロラクトン;脂肪酸;ホスホネート;アミン;アミド、例えば、N-メチルピロリドン、脂肪酸ジメチルアミド;並びにそれらの混合物がある。
【0220】
適した固体担体又は増量剤として、土類鉱物(mineral earth)、例えば、ケイ酸、シリカゲル、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、粘土、白雲石、珪藻土、ベントナイト、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム;多糖、例えば、セルロース、デンプン;肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素;植物起源の産物、例えば、穀類粉末、樹皮粉末、木粉末、堅果の殻の粉末及びそれらの混合物がある。
【0221】
適した界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性界面活性剤などの表面活性化合物、ブロックポリマー、多価電解質並びにそれらの混合物がある。このような界面活性剤は、乳化剤、分散剤、可溶化剤、湿潤剤、浸透促進剤、保護性コロイド又はアジュバントとして使用され得る。界面活性剤の例は、McCutcheon's、第1巻: Emulsifiers & Detergents、McCutcheon's Directories、Glen Rock、USA、2008年(国際版又は北米版)に列挙されている。
【0222】
適したアニオン性界面活性剤として、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩のアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩及びそれらの混合物がある。スルホン酸塩の例として、アルキルアリールスルホン酸塩、ジフェニルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、脂肪酸及びオイルのスルホン酸塩、エトキシル化アルキルフェノールのスルホン酸塩、アルコキシル化アリールフェノールのスルホン酸塩、縮合ナフタレンのスルホン酸塩、ドデシル-及びトリデシルベンゼンのスルホン酸塩、ナフタレン及びアルキルナフタレンのスルホン酸塩、スルホスクシネート又はスルホスクシナメートがある。硫酸塩の例として、脂肪酸及びオイルの、エトキシル化アルキルフェノールの、アルコールの、エトキシル化アルコールの、又は脂肪酸エステルの硫酸塩がある。リン酸塩の例として、リン酸エステルがある。カルボン酸塩の例として、カルボキシル化アルキル及びカルボキシル化アルコール又はアルキルフェノールエトキシレートがある。
【0223】
適した非イオン性界面活性剤として、アルコキシレート、N置換脂肪酸アミド、アミンオキシド、エステル、糖ベースの界面活性剤、高分子界面活性剤及びそれらの混合物がある。アルコキシレートの例として、1〜50当量を有するアルコキシル化されている、アルコール、アルキルフェノール、アミン、アミド、アリールフェノール、脂肪酸又は脂肪酸エステルなどの化合物がある。アルコキシル化には、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、好ましくは、エチレンオキシドが使用され得る。N置換脂肪酸アミドの例として、脂肪酸グルカミド又は脂肪酸アルカノールアミドがある。エステルの例として、脂肪酸エステル、グリセロールエステル又はモノグリセリドがある。糖ベースの界面活性剤の例として、ソルビタン、エトキシル化ソルビタン、スクロース及びグルコースエステル又はアルキルポリグルコシドがある。高分子界面活性剤の例として、ビニルピロリドン、ビニルアルコール又は酢酸ビニルのホモ又はコポリマーがある。
【0224】
適したカチオン性界面活性剤として、1つ若しくは2つの疎水基を有する第四級界面活性剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、又は長鎖第一級アミンの塩がある。適した両性界面活性剤として、アルキルベタイン及びイミダゾリンがある。適したブロックポリマーとして、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックを含むA-B若しくはA-B-A型、又はアルカノール、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含むA-B-C型のブロックポリマーがある。適した多価電解質として、ポリ酸又はポリ塩基がある。ポリ酸の例として、ポリアクリル酸のアルカリ塩又はポリ酸くし型ポリマーがある。ポリ塩基の例として、ポリビニルアミン又はポリエチレンアミンがある。
【0225】
適したアジュバントは、それ自体では無視できるほどの殺有害生物活性しか有さないか、又は全く有さず、標的に対する細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物の生物学的性能を改善する化合物である。界面活性剤の例として、ミネラル又は植物油及びその他の補助物がある。さらなる実施例は、Knowles、Adjuvants and additives、Agrow Reports DS256、T&F Informa UK、2006年、第5章によって列挙されている。
【0226】
適した増粘剤として、多糖(例えば、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース)、無機粘土(有機修飾又は非修飾)、ポリカルボキシレート及びシリケートがある。
【0227】
適した殺菌剤として、ブロノポール並びにアルキルイソチアゾリノン及びベンゾイソチアゾリノンなどのイソチアゾリノン誘導体がある。適した凍結防止剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンがある。適した消泡剤として、シリコン、長鎖アルコール及び脂肪酸の塩がある。適した着色剤(例えば、赤、青又は緑で)として、低い水溶解度の顔料及び水溶性色素がある。例として、無機着色剤(例えば、酸化鉄、酸化チタン、鉄ヘキサシアノフェレート)及び有機着色剤(例えば、アリザリン-、アゾ-及びフタロシアニン着色剤)がある。適した粘着付与剤又は結合剤として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリペプチドアクリレート、生物学的又は合成ワックス及びセルロースエーテルがある。
【0228】
細胞又は胞子の形態の、本発明のパエニバチルス株などの生存している生物が、組成物の一部を形成する場合には、このような組成物は、通常の手段によって、有効成分に加えて、少なくとも1種の補助物(不活性成分)を含む組成物として調製され得る(例えば、H.D. Burges: Formulation of Microbial Biopesticides、Springer、1998年を参照のこと)。このような組成物の適した通例の種類として、懸濁液、ダスト、粉末、ペースト剤、粒剤、加圧形成物、カプセル及びそれらの混合物がある。組成物の種類の例として、懸濁液(例えば、SC、OD、FS)、カプセル(例えば、CS、ZC)、ペースト剤、芳香錠、水和剤(wettable powder)又はダスト(例えば、WP、SP、WS、DP、DS)、加圧形成物(例えば、BR、TB、DT)、粒剤(例えば、WG、SG、GR、FG、GG、MG)、殺虫性品目(例えば、LN)、並びに種子などの植物繁殖材料の処理のためのゲル製剤(例えば、GF)がある。本明細書において、各製剤の種類又は補助物の選択は、組成物の貯蔵の間、及び土壌、植物又は植物繁殖材料に最終的に適用される場合には、微生物の生存力に影響を及ぼしてはならないことが考慮されなければならない。適した製剤は、例えば、WO2008/002371、US6,955,912、US5,422,107に記載されている。
【0229】
適した補助物の例として、本明細書において先に記載されるものがあり、ここで、このような補助物の選択及び量が、組成物中の微生物性殺有害生物剤の生存力に影響を及ぼしてはならないことに注意しなければならない。特に、殺菌剤及び溶媒について、それぞれの微生物性殺有害生物剤のそれぞれの微生物との適合性が考慮されなければならない。さらに、微生物性殺有害生物剤を有する組成物は、安定剤又は栄養分及びUV保護剤をさらに含有し得る。適した安定剤又は栄養分として、例えば、α-トコフェロール、トレハロース、グルタメート、ソルビン酸カリウム、グルコース、スクロース、ラクトース及びマルトデキストリンのような種々の糖(H.D. Burges: Formulation of Microbial Biopesticides、Springer、1998年)がある。適したUV保護剤として、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化鉄顔料のような無機化合物又はベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール及びフェニルトリアジンのような有機化合物がある。組成物は、本明細書における化合物Iを含む組成物について記載された補助物に加えて、任意選択で、0.1〜80%の安定剤又は栄養分及び0.1〜10%のUV保護剤を含み得る。
【0230】
農薬組成物は、一般に、重量で、0.01から95%の間、好ましくは、0.1から90%の間、特に、0.5から75%の間の活性物質を含む。活性物質は、90%〜100%、好ましくは、95%〜100%(NMRスペクトルによる)の純度で使用される。
【0231】
組成物の種類及びその調製物の例として以下がある:
i)水溶性液剤(SL、LS)
10〜60重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物及び5〜15重量%湿潤剤(例えば、アルコールアルコキシレート)が、水に、及び/又は水溶性溶媒(例えば、アルコール)に溶解され、100重量%にされる。活性物質は、水で希釈すると溶解する。
【0232】
ii)分散性濃縮剤(DC)
5〜25重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物及び1〜10重量%の分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、有機溶媒(例えば、シクロヘキサノン)に溶解され、100重量%にされる。水での希釈は、分散物をもたらす。
【0233】
iii)乳剤(EC)
15〜70重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物及び5〜10重量%の乳化剤(例えば、カルシウムドデシルベンゼンスルホネート及びヒマシ油エトキシレート)は、水不溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)に溶解され、100重量%にされる。水での希釈は、エマルション製剤をもたらす。
【0234】
iv)エマルション製剤(EW、EO、ES)
5〜40重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物及び1〜10重量%の乳化剤(例えば、カルシウムドデシルベンゼンスルホネート及びヒマシ油エトキシレート)は、20〜40重量%の水不溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)に溶解される。この混合物は、乳化機器によって、水に入れられ、100重量%にされ、均一エマルション製剤にされる。水での希釈は、エマルション製剤をもたらす。
【0235】
v)懸濁液(SC、OD、FS)
撹拌されたボールミルにおいて、20〜60重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が細分され、2〜10重量%の分散剤及び湿潤剤(例えば、ナトリウムリグノスルホネート及びアルコールエトキシレート)、0.1〜2重量%の増粘剤(例えば、キサンタンゴム)及び水が添加され、100重量%にされ、微細な活性物質懸濁液が得られる。水での希釈は、活性物質の安定な懸濁液をもたらす。FS型組成物については、最大40重量%の結合剤(例えば、ポリビニルアルコール)が添加される。
【0236】
vi)顆粒水和剤及び水溶性粒剤(WG、SG)
50〜80重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が細かく磨砕され、分散剤及び湿潤剤(例えば、ナトリウムリグノスルホネート及びアルコールエトキシレート)が添加され、100重量%にされ、技術的電気機器(例えば、押出、噴霧塔、流動床)によって顆粒水和剤又は水溶性粒剤として調製される。水での希釈は、活性物質の安定な分散物又は溶液をもたらす。
【0237】
vii)水和剤及び水溶剤(WP、SP、WS)
50〜80重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物は、動静翼ミル中で磨砕され、1〜5重量%の分散剤(例えば、ナトリウムリグノスルホネート)、1〜3重量%の湿潤剤(例えば、アルコールエトキシレート)及び固体担体(例えば、シリカゲル)が添加され、100重量%にされる。水での希釈は、活性物質の安定な分散物又は溶液をもたらす。
【0238】
viii)ゲル(GW、GF)
撹拌されたボールミルにおいて、5〜25重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が細分され、3〜10重量%の分散剤(例えば、ナトリウムリグノスルホネート)、1〜5重量%の増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)及び水が添加され、100重量%にされ、活性物質の微細懸濁液が得られる。水での希釈は、活性物質の安定な懸濁液をもたらす。
【0239】
ix)マイクロエマルション製剤(ME)
5〜30重量%の有機溶媒ブレンド(例えば、脂肪酸ジメチルアミド及びシクロヘキサノン)、10〜25重量%の界面活性剤ブレンド(例えば、アルコールエトキシレート及びアリールフェノールエトキシレート)に、5〜20重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が添加され、水で100%とする。この混合物は、1時間撹拌されると、熱力学的に安定なマイクロエマルション製剤が自然発生的に生成する。
【0240】
x)マイクロカプセル剤(CS)
5〜50重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物、0〜40重量%の水不溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)、2〜15重量%のアクリル単量体(例えば、メチルメタクリレート、メタクリル酸及びジ-又はトリアクリレート)を含む油相が、保護性コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)の水溶液中に分散される。ラジカルイニシエーターによって開始されたラジカル重合が、ポリ(メタ)クリレートマイクロカプセル剤の形成をもたらす。
【0241】
あるいは、5〜50重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物、0〜40重量%の水不溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)及びイソシアネート単量体(例えば、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート(diisocyanatae))を含む油相が、保護性コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)の水溶液中に分散される。ポリアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)の添加は、ポリ尿素マイクロカプセル剤の形成をもたらす。単量体は、1〜10重量%に達する。重量%は、総CS組成物に関する。
【0242】
xi)粉剤(DP、DS)
1〜10重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が細かく磨砕され、固体担体(例えば、細かく分割されたカオリン)と密接に混合され、100重量%にされる。
【0243】
xii)粒剤(GR、FG)
0.5〜30重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物が細かく磨砕され、固体担体(例えば、シリケート)と関連付けられ、100重量%とされる。造粒は、押出、噴霧乾燥又は流動床によって達成される。
【0244】
xiii)微量散布用液剤(Ultra-low volume liquid)(UL)
1〜50重量%の本発明の全培養液、細胞不含抽出物、培養培地又は代謝産物は、有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)に溶解され、100重量%にされる。
【0245】
組成物種類i)〜xiii)は、任意選択で、0.1〜1重量%の殺菌剤、5〜15重量%の凍結防止剤、0.1〜1重量%の消泡剤及び0.1〜1重量%の着色剤などのさらなる補助物を含み得る。
【0246】
種子処理のための溶液(LS)、サスポエマルジョン(SE)、フロアブル剤(flowable concentrate)(FS)、乾燥処理のための粉末(DS)、スラリー処理のための水和剤(WS)、水溶剤(SS)、エマルション製剤(ES)、乳剤(EC)及びゲル(GF)が、通常、植物繁殖材料、特に、種子の処理目的で使用される。
【0247】
予混合組成物の種子処理製剤の種類又は土壌適用の好ましい例として、WS、LS、ES、FS、WG又はCSの種類のものがある。
【0248】
通常、種子処理適用のための予混合製剤は、0.5〜99.9パーセント、特に、1〜95パーセントの所望の成分及び99.5〜0.1パーセント、特に、99〜5パーセントの固体又は液体アジュバント(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、ここで、補助剤は、予混合製剤に基づいて0〜50パーセント、特に、0.5〜40パーセントの量の界面活性剤であり得る。市販の製品は、好ましくは、濃縮物(例えば、予混合組成物(製剤))として製剤化されるが、エンドユーザーは、通常、希薄製剤(例えば、タンク混合組成物)を使用する。
【0249】
植物繁殖材料、特に、種子に対して、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物をそれぞれ適用又は処理するための種子処理方法は、当技術分野で公知であり、繁殖材料の粉衣、コーティング、フィルムコーティング、ペレット化及び浸漬適用法が挙げられる。このような方法はまた、本発明の組合せに適用可能である。好ましい実施形態では、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はそれぞれ、発芽が負に影響を受けないような方法によって植物繁殖材料に適用又は処理される。したがって、種子などの植物繁殖材料に適用(又は処理)するための適した方法の例として、種子粉衣、種子コーティング又は種子ペレット化などがある。
【0250】
植物繁殖材料が、種子、種子片(すなわち、柄)又は種子鱗茎であることが好ましい。
【0251】
本方法は、任意の生理学的状態では種子に適用され得ないと考えられているが、種子が、処理プロセスの間に損傷を受けない十分に耐久性のある状態にあることが好ましい。通常、種子は、現場から収穫された;植物から回収された;任意の穂軸、柄、外皮及び周囲の果肉又はその他の非種子植物材料から分離された種子となる。種子はまた、処理が種子に生物学的損傷を引き起こさない程度に生物学的に安定であることが好ましい。処理は、種子の収穫から種子の播種の間の任意の時間に、又は播種プロセスの間に種子に適用され得ると考えられている(種子を対象とする適用)。種子はまた、処理の前又は後のいずれかにプライム処理され得る。
【0252】
繁殖材料処理の間の、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの中の成分の均一な分布及びその種子への付着性が望まれる。処理は、元の大きさ及び/又は形状が中間の状態(コーティングなど)に認識可能である、種子などの植物繁殖材料上の、組合せ、例えば、有効成分(複数可)の混合物を含有する製剤の薄膜(粉衣)から、種子の元の形状及び/又は大きさがもはや認識できない、より厚い膜(種々の材料(担体、例えば、粘土、その他の有効成分などの種々の製剤、ポリマー、及び着色料など)の多数の層を用いるペレット化など)までさまざまであり得る。
【0253】
本発明の一態様は、植物繁殖材料上への本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの、全植物繁殖材料上又は片側若しくは片側の一部上のみを含むその一部上への、組合せでの成分の位置決めを含む標的化された様式での適用を含む。当業者の一人ならば、EP954213B1及びWO06/112700において提供される記載からこれらの適用方法を理解するであろう。
【0254】
本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物はまた、それぞれ、「丸剤」若しくは「ペレット」の形態で、又は適した基板の形態で、植物繁殖材料の隣に、処理される丸剤又は基板を配置又は播種して使用され得る。このような技術は、特に、EP1124414、WO07/67042及びWO07/67044において当技術分野で公知である。植物繁殖材料上への本明細書において記載される本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの適用はまた、1種以上の殺有害生物剤含有粒子を、殺有害生物剤によって処理される種子の隣に配置することによって、本発明の組合せを用いて処理された植物繁殖材料を保護することを含み、ここで、殺有害生物剤の量は、殺有害生物剤によって処理された種子及び殺有害生物剤含有粒子が一緒になって、殺有害生物剤の有効用量を含有し、殺有害生物剤によって処理された種子中に含有される殺有害生物剤用量が、殺有害生物剤の最大非植物毒性用量以下であるようなものである。このような技術は、特に、WO2005/120226において当技術分野で公知である。
【0255】
種子上への本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物それぞれの適用はまた、種子上の徐放性コーティングを含み。ここで、組合せの成分は、経時的に成分を放出する材料中に組み込まれる。徐放性種子処理技術の例は、一般に、当技術分野で公知であり、ポリマー膜、ワックス又はその他の種子コーティングを含み、ここで、成分は、徐放性材料中に組み込まれるか、又は材料の層の間に適用され得るか、又は両方であり得る。
【0256】
種子は、それに本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物をそれぞれ、任意の所望の順序で又は同時に適用することによって処理され得る。
【0257】
種子処理は、未播種種子に行われ、用語「未播種種子」は、種子の収穫から植物の発芽及び成長目的で地面に種子を播種する間の任意の期間の種子を含むものとする。
【0258】
未播種種子への処理は、有効成分が土壌に適用される実施を含まないものとするが、定植プロセスの間の種子を標的とする任意の適用実施を含む。
【0259】
好ましくは、処理は、播種された種子が、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物及び組成物をそれぞれ用いて前処理されているように、種子の播種の前に行われる。特に、種子コーティング又は種子ペレット化が好ましい。処理の結果として、成分が種子上に付着され、従って、有害生物防除に利用可能である。
【0260】
処理された種子は、その他の有効成分によって処理された種子と同様の方法で、貯蔵され、取り扱われ、播種され、耕され得る。
【0261】
特に、本発明は、植物繁殖材料を有害生物から保護し、及び/又は前記植物繁殖材料から成長される植物の健康を改善するための方法に関し、ここで、植物繁殖材料が播種される土壌は、有効量の本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物又は組成物をそれぞれ用いて処理される。
【0262】
特に、本発明は、植物繁殖材料の有害生物からの保護のための方法に関し、ここで、植物繁殖材料が播種される土壌は、有効量の本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物又は組成物をそれぞれ用いて処理される。
【0263】
特に、本発明は、植物繁殖材料の有害菌類からの保護のための方法に関し、ここで、植物繁殖材料は播種され、有効量の本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物又は組成物をそれぞれ用いて処理される。
【0264】
特に、本発明は、植物繁殖材料の動物有害生物(昆虫、コナダニ又は線虫)からの保護のための方法に関し、ここで、植物繁殖材料が播種される土壌が、有効量の本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物又は組成物をそれぞれ用いて処理される。
【0265】
ユーザーは、本発明の組成物を、通常、事前に投与量を設定できる(predosage)デバイス、背負式噴霧器、噴霧タンク、噴霧飛行機又は照射システムから適用する。通常、農薬組成物は、水、バッファー及び/又はさらなる補助物を用いて、所望の適用濃度に構成され、本発明のすぐに使えるスプレー液体又は農薬組成物は、このように得られる。通常、農業上有用な領域1ヘクタールあたり、20〜2000リットル、好ましくは、50〜400リットルのすぐに使えるスプレー液体が適用される。
【0266】
植物繁殖材料、特に、種子の処理に関しては、本明細書において開示される組成物は、2〜10倍希釈後に、すぐに使える調製物中で0.01〜60重量%、好ましくは、0.1〜40%の活性成分濃度が得られる。適用は、播種の前又は播種中に実施され得る。植物繁殖材料、特に、種子上への、本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物又は組成物をそれぞれ適用するための方法は、繁殖材料の粉衣、コーティング、ペレット化、散粉、浸漬及び畝中適用法を含む。好ましくは、本発明の株、全培養液、細胞不含抽出物、培養培地、式Iの化合物又は組成物はそれぞれ、発芽が誘導されないような方法によって、例えば、種子粉衣、ペレット化、コーティング及び散粉によって、植物繁殖材料上に適用される。
【0267】
本発明の株が、株が葉処理として、又は土壌に適用される、作物保護において使用される場合には、適用率は、通常、約1×106〜5×1015(以上)CFU/ha、好ましくは、約1×107〜約1×1013CFU/ha、さらにより好ましくは、1×109〜5×1012CFU/haの範囲である。
【0268】
本発明の株が種子処理に使用される場合には、植物繁殖材料に関して、適用率は、通常、約1×101〜1×1012(以上)CFU/種子、好ましくは、約1×103〜約1×1010CFU/種子、さらにより好ましくは、約1×103〜約1×106CFU/種子の範囲である。あるいは、植物繁殖材料に関して、適用率は、好ましくは、100kgの種子あたり約1×107〜1×1016(以上)CFU、好ましくは、100kgの種子あたり1×109〜約1×1015CFU、さらにより好ましくは、100kgの種子あたり1×1011〜約1×1015CFUの範囲である。
【0269】
細胞不含抽出物、培養培地及び/又は式Iの化合物が使用される場合には、固体材料(乾燥物質)が、例えば、液体製剤の場合には、抽出培地又は懸濁培地の乾燥又は蒸発後に得られる活性成分と考えられる。植物保護において使用される場合には、適用される活性成分の量は、望まれる効果の種類に応じて、ヘクタールあたり0.001〜2kg、好ましくは、ヘクタールあたり0.005〜2kg、より好ましくは、ヘクタールあたり0.05〜0.9kg、特に、ヘクタールあたり0.1〜0.75kgである。例えば、種子への散粉、コーティング又は浸すことによる、種子などの植物繁殖材料の処理では、100キログラムの植物繁殖材料(好ましくは、種子)あたり、0.1〜1000g、好ましくは、1〜1000g、より好ましくは、1〜100g、最も好ましくは、5〜100gの活性成分の量が、一般に、必要である。材料又は貯蔵製品の保護において使用される場合には、適用される活性成分の量は、適用領域の種類に、及び所望の効果に応じて変わる。材料の保護において通例適用される量は、処理される材料の立方メートルあたり0.001g〜2kg、好ましくは、0.005g〜1kgの活性成分である。
【0270】
一実施形態によれば、キットの一部又は二元若しくは三元混合物の一部などの本発明の組成物の個々の成分は、噴霧タンク又は適用に使用される任意のその他の種類の容器(例えば、種子処理装置ドラム、種子ペレット化機器、背負式噴霧器)中でユーザー自身によって混合され得、必要に応じてさらに補助物が添加され得る。
【0271】
本発明の株などの生存している微生物が、このようなキットの一部を形成する場合には、成分(例えば、化学的殺有害生物剤)の、及びさらなる補助物の選択及び量が、ユーザーによって混合される組成物中の微生物の生存力に影響を及ぼしてはならないことは注意しなければならない。特に、殺菌剤及び溶媒について、それぞれの微生物との適合性が考慮されなければならない。
【0272】
種々の種類のオイル、湿潤剤、アジュバント、肥料又は微量栄養素及びさらなる殺有害生物剤(例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌類剤、成長調節剤、毒性緩和剤、バイオ農薬)が、前もって混合したものとして、又は必要に応じて、使用直前に(タンク混合)、本発明の株、細胞不含抽出物、培養培地、代謝産物、式Iの化合物及び組成物それぞれに適用され得る。これらの薬剤は、本発明の組成物と、1:100〜100:1、好ましくは、1:10〜10:1の重量比で混合され得る。好ましくは、本発明の組成物は、さらなるバイオ農薬を含む。さらにより好ましくは、本発明の組成物は、補助物に加えて、少なくとも1種の式Iの化合物、微生物性殺有害生物剤を含む。
【0273】
殺有害生物剤は、一般に、その効果によって、有害生物を阻止し、無能力にし、死滅させるか、そうでなければ、妨げる、化学的又は生物学的薬剤である(ウイルス、細菌、抗菌剤又は殺菌剤など)。標的有害生物は、特性を破壊し、妨害を引き起こし、疾患を広げ、又は疾患の媒介性物である、昆虫、植物病原体、雑草、軟体動物、鳥、哺乳動物、魚、線虫(回虫)及び微生物を含み得る。用語、殺有害生物剤はまた、植物の予測される成長、開花又は繁殖率を変更する植物成長調節剤;通常、収穫を促進するために、植物から葉又はその他の茎葉を落とさせる落葉剤、不要な植物の先端などの生存している組織の乾燥を促進する乾燥剤、特定の有害生物に対する防御のために植物生理学を活性化する植物活性化剤、作物植物に対する殺有害生物剤の不要な除草作用を低減する毒性緩和剤、及び作物植物の収穫可能なものの植物成長、バイオマス、収量又は任意のその他の質パラメータを増大するように、植物生理学に影響を及ぼす植物成長促進物質も含む。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
a)受託番号DSM26969でDSMZに寄託された株Lu16774、
b)受託番号DSM26970でDSMZに寄託された株Lu17007、
c)受託番号DSM26971でDSMZに寄託された株Lu17015、及び
d)d1)DNA配列配列番号4若しくは配列番号9に対して少なくとも99.6%のヌクレオチド配列同一性、又は
d2)DNA配列配列番号14に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は d3)DNA配列配列番号5若しくは配列番号10に対して少なくとも99.9%のヌクレオチド配列同一性、又は
d4)DNA配列配列番号15に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性、又は d5)DNA配列配列番号6若しくは配列番号11に対して少なくとも99.2%のヌクレオチド配列同一性、又は
d6)DNA配列配列番号16に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は d7)DNA配列配列番号7若しくは配列番号12に対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d8)DNA配列配列番号17に対して少なくとも99.3%のヌクレオチド配列同一性、又は d9)DNA配列配列番号8若しくは配列番号13に対して100.0%のヌクレオチド配列同一性、又は
d10)DNA配列配列番号18に対して100%のヌクレオチド配列同一性
を示すDNA配列を含む、抗菌類活性を有する株
から成る群から選択される、パエニバチルス(Paenibacillus)属の株。
[項目2]
a)受託番号DSM26969でDSMZに寄託された株Lu16774、
b)受託番号DSM26970でDSMZに寄託された株Lu17007、
c)受託番号DSM26971でDSMZに寄託された株Lu17015、並びに
d)d1)DNA配列配列番号4、配列番号9及び配列番号14のいずれか1つに対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d2)DNA配列配列番号5、配列番号10及び配列番号15のいずれか1つに対して100.0%のヌクレオチド配列同一性、又は
d3)DNA配列配列番号6、配列番号11及び配列番号16のいずれか1つに対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性を示す、又は
d4)DNA配列配列番号7、配列番号12及び配列番号17のいずれか1つに対して少なくとも99.8%のヌクレオチド配列同一性、又は
d5)DNA配列配列番号8、配列番号13及び配列番号18のいずれか1つに対して100.0%のヌクレオチド配列同一性
を示すDNA配列を含む、抗菌類活性を有する株
から成る群から選択される、項目1に記載のパエニバチルス属の株。
[項目3]
アルテルナリア属の種(Alternaria spp.)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ジャガイモ疫病菌及び菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)から成る群から選択される植物病原体のうち少なくとも2種に対する抗菌類活性を有する、項目1又は2に記載のパエニバチルス属の株。
[項目4]
少なくとも1種の炭素の供給源及び1種の窒素の供給源を含む増殖培地中で、以下の化合物:
【化7】
のうち少なくとも1種を産生する、項目1〜3のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株。
[項目5]
フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bから成る群から選択される少なくとも3種の化合物をさらに産生可能である、項目4に記載のパエニバチルス属の株。
[項目6]
以下の化合物:
【化8】
のうち少なくとも1種を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株。
[項目7]
フザリシジンA、フザリシジンB、フザリシジンC、フザリシジンD、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08bから成る群から選択される少なくとも3種の化合物をさらに含む、項目6に記載のパエニバチルス属の株。
[項目8]
項目1〜7のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株の実質的に精製された培養物。
[項目9]
項目1〜7のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株の全培養液又は細胞不含抽出物。
[項目10]
式I
【化9】
[式中、
Rは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸及び12-グアニジノドデカン酸から選択され、
X1は、トレオニンであり、
X2は、イソロイシンであり、
X3は、チロシンであり、
X4は、トレオニンであり、
X5は、グルタミン及びアスパラギンから選択され、
X6は、アラニンであり、
矢印は、Rのカルボニル部分とアミノ酸X1のアミノ基の間又は1種のアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単アミド結合を規定し、
矢印の先端は、前記アミノ酸X1の、又は前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
矢頭のない単線は、X6のカルボニル基とX1のヒドロキシル基の間の単エステル結合を規定する]
で示される化合物又はその農業的に許容される塩。
[項目11]
化合物1A及び1B
【化10】
又はその農業的に許容される塩から選択される、項目10に記載の化合物。
[項目12]
項目10又は11に記載の化合物又はその塩を調製する方法であって、項目1〜7のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株を培養すること、及び全培養液から前記化合物又はその塩を回収することを含む、前記方法。
[項目13]
a)項目1〜7のいずれか1項に記載のパエニバチルス属の株、又は
b)項目8に記載の実質的に精製された培養物、又は
c)項目9に記載の全培養液若しくは細胞不含抽出物、又は
d)項目10若しくは11に記載の式Iの化合物若しくはその塩、
及び補助物、
を含む組成物。
[項目14]
殺有害生物剤をさらに含む、項目13に記載の組成物。
[項目15]
殺有害生物剤が、さらなるバイオ農薬である、項目14に記載の組成物。
[項目16]
項目13〜15のいずれか1項に記載の組成物を含むコーティングを有する植物繁殖材料。
[項目17]
植物病原体を防除若しくは抑制するか又は植物病原体感染を防ぐための、又は有害微生物による侵襲及び破壊から材料を保護するための、項目13〜15のいずれか1項に記載の組成物の使用。
[項目18]
植物病原体を防除、抑制するか又は植物病原体感染を防ぐ方法であって、植物病原体、その生息地、又は植物病原体攻撃から保護しようとする植物、又は土壌若しくは繁殖材料が、有効量の項目13〜15のいずれか1項に記載の組成物を用いて処理される、前記方法。
[項目19]
植物病原体及び/又は有害微生物が、有害菌類から選択される、項目17に記載の使用又は項目18に記載の方法。
【実施例】
【0274】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に記載する。以下の実施例は、例示目的であって、本発明の範囲を制限するよう意図されるものではない。
【0275】
[実施例1]
本発明の新規細菌株の単離
独国を含む種々の欧州の場所から得た土壌サンプルを収集した。本発明者らは、これらの土壌に一般に公知である微生物単離手順を適用することによって、種々の細菌を得、これらを、本明細書において記載されるような純粋な単離菌を提供するために従来の単離技術にさらに付した。
【0276】
各種類の細菌を単離するために標準微生物濃縮技術(C. A. Reddy、T. J. Beveridge、J. A. Breznak、G. A. Marzluf、T. M. Schmidt及びL. R. Snyder (編). Methods for General and Molecular Microbiology、Am. Soc. Microbiol.、Washington、District of Columbia)に従った。
【0277】
以下の株を単離し、2013年2月20日にブダペスト条約に基づきDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ)に寄託した:
a)受託番号DSM 26969を有するDSMZに寄託されたLu16774
b)受託番号DSM 26970を有するDSMZに寄託されたLu17007
c)受託番号DSM 26971を有するDSMZに寄託されたLu17015。
【0278】
[実施例2]
新規細菌株の特性決定
[実施例2.1]
16S-rDNA塩基配列決定法
DSMZ、Braunschweig、Germanyで、パエニバチルス株の16S rRNA遺伝子配列を、PCR増幅した16S rDNAの直接配列決定によって決定した。
【0279】
Epicentre Biotechnologies製のMasterPure(商標)グラム陽性DNA精製キットを、製造業者の使用説明書に従って使用して、ゲノムDNA抽出を実施した。16S rDNAのPCR媒介性増幅及びPCR産物の精製は、先に記載されたように実施した(Int. J. Syst. Bacteriol. 第46巻、1088〜1092頁、1996年)。BigDye(登録商標)Terminator v1.1 Cycle Sequencingキット(Applied Biosystems)を、製造業者のプロトコールにおいて指示されるように使用して、精製PCR産物を配列決定した。Applied Biosystems製の3500xL Genetic Analyzerを使用して、配列反応物を電気泳動した。配列曖昧性は、ゲノム内の異なる配列を有する16S rRNAをコードするいくつかのシストロンの存在によるものであり得る(J. Bacteriol. 第178巻(19号)、5636〜5643頁、1996年)。
【0280】
株から得られた配列データをアラインメントエディターAE2(http://iubio.bio.indiana.edu/soft/molbio/unix/ae2.readme)に入れ、得られたrRNA分子の二次構造に従って手作業でアラインし、ファーミキューテス門に属する生物の代表的な16S rRNA遺伝子配列と比較した(Nucl. Acids Res. 第27巻、171〜173頁、1999年)。比較のために、EMBL及びRDPデータベースから16S rRNA配列を得た。
【0281】
本発明の株の16S rDNA配列は、表2に示される配列表に示されている。
【0282】
【0283】
比較される配列のアラインメント内の配列のペアワイズ比較によって%での16S rDNA遺伝子同一性値を算出した。
【0284】
ペアワイズ配列アラインメントに基づいた2種の配列のみの実施された比較が、二元値として本明細書において示されている。その他の値は、比較内のすべての配列のうち複数の配列アラインメントに基づいている。マルチ配列比較から得られた高い同一性値は、比較される配列の配列データが、より短いアラインメントをもたらす異なる長さのものであったという問題に起因する。
【0285】
3種の新規株Lu16774、Lu17007及びLu17015の間の、完全rDNA配列のペアワイズ比較から得た同一性%は、99.5から99.9%の間であった(表3、二元値)。
【0286】
【0287】
3種の新規株Lu16774、Lu17007及びLu17015の完全16S rRNA配列の関連分類群との比較(図9を参照のこと)は、パエニバチルス・ペオリエ(基準株DSM 8320)に対して高い同一性のパーセンテージを示し、99.8%を有していた。P.ペオリエの、新規株とのペアワイズ配列アラインメントの二元値は、以下のとおりであった:それぞれ、Lu16774:99.5%、Lu17007:99.5%;及びLu17015:99.7%の同一性。
【0288】
新規のパエニバチルス株Lu16774、Lu17015及びLu17007が属する種の最終評価は、可能ではない16S rRNA配列データに基づいていた。
【0289】
パエニバチルス・ペオリエNRRL BD-62の完全rDNAの配列決定は、P.ペオリエ(基準株DSM8320)に対して100.0%の同一性をもたらし、この株BD-62の種指定P.ペオリエが確認された(図9を参照のこと)。
【0290】
3種の新規パエニバチルス株Lu16774、Lu17007及びLu17015すべての、P.ペオリエに対する密接な関係が、P.ペオリエ株BD-62の16S rRNA配列との比較によって確認され、これは99.8%の同一性値をもたらした(図9を参照のこと)。
【0291】
系統発生樹状図の構築のために、ARBパッケージの(Nucl. Acids Res. 第35巻、7188〜7196頁、2007年)の操作を使用した:進化距離値に基づいて、近隣結合法(Jukes, T. H. & Cantor C. R. (1969年). Evolution of protein molecules. In Mammalian protein metabolism、21〜132頁、H. N. Munro編、New York: Academic press)によって、Jukes及びCantorの補正(Mol. Biol. Evol. 第4巻、406〜425頁、1987年)を使用して系統発生樹を構築した。樹の樹根は、コーネラ・サーモトレランスの16S rRNA遺伝子配列を解析に含めることによって決定した。樹状図の下のスケールバーは、100ヌクレオチドあたり1ヌクレオチド置換を示す。結果は、図10に示されている。
【0292】
これらの配列の系統発生樹状図(図10)は、3種の新規株Lu16774、Lu17007及びLu17015が、互いに最も密接に関連していること及びそれらの各々に対する公知の、その最も近縁の種は、パエニバチルス・ペオリエ株NRRL BD-62であったということを示す。
【0293】
[実施例2.2]
RiboPrint解析
Qualicon RiboPrintersystemを使用して、標準化された自動化リボタイピングを実施する。RiboPrinterシステムは、独立型の自動化機器においてリボタイピングのための分子処理ステップを組み合わせる。手順は、細胞溶解、制限酵素EcoRIを用いる染色体DNAの消化、電気泳動による断片の分離、DNA断片のナイロンメンブレンへのトランスファー、大腸菌(E. coli)に由来するrrnBオペロンから作製したプローブに対するハイブリダイゼーション、rrnオペロン配列を含有する断片に対するプローブの化学発光検出、画像検出及びRiboPrintパターンのコンピュータ化された解析を含む(Food Technology 第50巻(1号)、77〜81頁、1996年;Proc. Natl. Acad. Sci. USA第92巻、5229〜5233頁、1995年;Int. Journ. Syst. Bact. 第44巻(3号)、454〜460頁、1994年)。
【0294】
リボタイピングは、制限酵素EcoRIを使用する、P.ペオリエ株BD-62に対する比較において新規パエニバチルス株Lu16774、Lu17007及びLu17015を用いて、DSMZ、Germanyによって実行した。得られたパターンは、RiboPrinterシステムのソフトウェア、統合DuPont同定ライブラリー並びにBioNumericsソフトウェア(Applied Maths、Belgium)を使用して比較した。
【0295】
3種の新規株すべての、BD-62に対する類似性は、0.24から0.5の間であった(図11)。3種の新規株は、2群になり、第1のものは、Lu17015を含むのに対し、第2の群は、株Lu16774及びLu17007を含む。新規株のうち、DuPont同定ライブラリー内の任意の株に対して0.84より高い類似性を有するものはなく、従って、自動的に同定されなかった。
【0296】
株BD-62は、DuPont同定ライブラリーの登録DUP-13142に基づいて(パエニバチルス・ペオリエDSM 8320に基づく登録)パエニバチルス・ペオリエとして同定された。
【0297】
[実施例2.3]
形態学的及び生理学的特性決定
株を、Gordon、R.E.、Haynes、W.C. & Pang. C.H.-N. (1973年):The Genus Bacillus, Agriculture Handbook427号、ワシントンDC:米国農務省に記載された方法に類似してDSMZで特性決定した。結果は、表4に示されている。
【0298】
【0299】
DSMZで実施された細胞性脂肪酸の解析は、すべての株が、パエニバチルス属の種の代表的なプロフィールを示すという結果となった。
【0300】
利用可能な遺伝的、生理学的及び生化学的データを使用することで、株Lu16774、Lu17007及びLu17015が、パエニバチルス属に属することが示される。株Lu16774、Lu17007及びLu17015並びにBD-62は、グルコースからガスを生成するので、それらの中に、パエニバチルス・ジャミレに属するものはない。
【0301】
パエニバチルス・ペオリエ及びパエニバチルス・ポリミクサ間の表現型分化は、特定の基質からの酸生成の特徴を使用して主に可能である(Int. J. Syst. Bacteriol.第43巻(2号)、388〜390頁、1993年;In. J. Syst. Bacteriol.第46巻(6号)、988〜1003頁、1996年)。新規株のうち、これら2種のいずれかに、完全に表4に概説されるその特徴を有して完全に対応するものはなかったが、入手可能な遺伝的、生理学的及び生化学的データを総じて、種パエニバチルス・ペオリエ及びP.ポリミクサを示すか、又は少なくともパエニバチルス・ペオリエ及びP.ポリミクサに極めて密接に関連する別の種を示す可能性が最も高い。
【0302】
これまでに記載された多数のパエニバチルス属の種(Paenibacillus species)のために、表4から得られる生理学的及び形態学的判定基準に基づいて、試験した3種の単離菌の正しい分類学的種を決定することは不可能である。(Rainer Borriss、Humboldt University Berlin、公開されていない結果)。
【0303】
それにもかかわらず、この属内の種を完全に決定することは可能ではなかった。最も密接に関連する種及び株は、16S-rDNA解析に基づいてパエニバチルス・ペオリエBD-62であるとわかった(例えば、図11を参照のこと)。
【0304】
[実施例2.4]
DnaN、GyrB、RecF、RecN及びRpoAをコードする遺伝子に基づく系統発生解析
DnaN、GyrB、RecF、RecN及びRpoAをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を、完全ゲノム配列から、又は公開データベースから抽出した(表28に概説されるような配列表)。
【0305】
同一性の表(図12〜16)を、どの配列も、どのその他の配列ともアラインされる、すべて対すべてのアプローチを用いて作製した。配列アラインメントを、プログラムneedle(EMBOSSパッケージ6.6.0を用いて実施した;Trends in Genetics 第16巻(6号)、276〜277頁)。使用される標準パラメータ(ギャップ作製10.0;ギャップ伸長0.5)。同一性スコアは、ギャップはいずれも考慮せずにアラインメントに基づいて算出する。
【0306】
系統発生樹(図17〜21)については、Clustal Omega(バージョン1.2.0;Molecular Systems Biology 第7巻:539、doi:10.1038/msb.2011.75)を用いて実施された複数の配列アラインメント。系統発生樹は、ソフトウェアDnaml(Phylip 3.696パッケージにおいて実行される;Felsenstein 1981年、http://evolution.genetics.washington.edu/phylip.html)を用いて最尤法によって算出される。樹状図は、2(2)の転位-転換比を適用してF84距離モデルを使用して確立されている。樹は、ツールDendroscope(http://dendroscope.org/)を用いてプロットされる。
【0307】
【0308】
[実施例2.5]
コアゲノム比較及びAAIマトリックス
ゲノム比較を、Giessen大学のソフトウェアパッケージEDGAR(BMC Bioinformatics第10巻、154頁、2009年;(https://edgar.computational.bio.uni-giessen.de/cgi-bin/edgar.cgi)を使用して実施した。完全ゲノム配列及びAAIマトリックス値に基づいたコアゲノム、系統発生樹状図の決定は、ソフトウェアパッケージEDGARを使用して実施した。結果は、図22に示されている。
【0309】
[実施例3]
in-vivo試験のための株の増殖(発酵性)
温室及び現地試験のために、パエニバチルス株を、まず、ISP2プレート(BD[USA]製のすぐに使える寒天、カタログ番号277010)上で増殖させた。その後、液体ISP2培地を含有するバッフル付振盪フラスコに、寒天プレートから得たコロニーを播種し、150rpm及び25℃で5〜7日間インキュベートした。試験に応じて、全培養液又は遠心分離され、H2O洗浄された細胞ペレット又は上清のいずれかを植物に適用した。10Lの発酵槽へのスケールアップが可能であった。
【0310】
パエニバチルス株を、ISP2液体培地(10g/L麦芽抽出物、4g/L Bacto酵母抽出物、4g/Lグルコース一水和物)中、22℃、150rpmで6日間増殖させた。細菌増殖を示すOD600nmを、種々の時点で測定した。
【0311】
【0312】
[実施例4]
抗菌類活性についてのin-vitro対比アッセイ
植物病原体に対するパエニバチルス株の拮抗する活性が、in-vitro対比アッセイにおいて示されている。使用される植物病原性菌類は、スクレロチナ・スクレロチオラム(Sclerotina sclerotiorum)(SCLSCL)、灰色かび病菌(BOTRCI)、アルテルナリア属の種(Alternaria sp.)(ALTESP)及びジャガイモ疫病菌(PHYTIN)である。
【0313】
BOTRCI、ALTESP、SCLSCLの増殖培地として、1リットルあたり、10gの麦芽抽出物(Sigma Aldrich、70167);4gのBacto酵母抽出物(Becton Dickinson、212750);4gのグルコース一水和物(Sigma Aldrich、16301);20gの寒天(Becton Dickinson、214510)を含むISP2培地、pH約7、再蒸留水を使用する。PHYTINの増殖培地として、1リットルあたり、200mlの野菜ジュース、3gの炭酸カルシウム(Merck Millipore、1020660250)、30gの寒天(Becton Dickinson、214510)を含むV8培地、pH6.8、再蒸留水を使用する。
【0314】
パエニバチルス株を、寒天プレートの片側に点播種した。1種の活発に増殖する植物病原体を含有する寒天ブロック(およそ0.3cm2)を、プレートの中心に置いた。約25℃で7〜14日間インキュベートした後、とりわけ、阻害領域について植物病原体の増殖を調べた。
【0315】
その後、寒天プレートを、℃で約7〜14日間インキュベートし、その後、評価する。抗生作用を、菌類不含領域(阻害の領域)の直径の評価によってスコア化する。競合を、細菌株を有するプレート上の菌類病原体の増殖の直径を、対照プレートと比較することによってスコア化する。菌類寄生は、細菌が菌類病原体を過増殖させ、またその病原体に寄生する場合に実証され得る。これは、顕微鏡によって可視化され得る。
【0316】
新規のパエニバチルス株は、すべての試験された植物病原体に対する抗菌類活性を示した。
【0317】
【0318】
[実施例5]
植物病原性菌類に対する活性についてのガラス温室試験
使用例5.1:保護的適用を用いた、ジャガイモ疫病菌によって引き起こされるトマトでの葉枯病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いトマト実生(「Goldene Konigin」)を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)それぞれのパエニバチルス株の6日齢培養物の粗/全培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。株の培養条件は、実施例3に記載されている。適用の翌日、処理された植物に、ジャガイモ疫病菌(PHYTIN)の胞子嚢の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。未処理対照における菌類攻撃は、80〜100%の間であり、比較のため100%に設定した。
【0319】
【0320】
使用例5.2:保護的適用を用いた、灰色かび病菌によって引き起こされるコショウでの灰色かび病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いコショウ実生(「Neusiedler Ideal」)を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)それぞれのパエニバチルス株の6日齢培養物の粗/全培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。株の培養条件は、実施例3に記載されている。適用の翌日、処理された植物に、灰色かび病菌(BOTRCI)の胞子の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。未処理対照における菌類攻撃は、80〜100%の間であり、比較のため100%に設定した。
【0321】
【0322】
使用例5.3:保護的適用を用いた、アルテルナリア・ソラニによって引き起こされるトマトでの輪紋病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いトマト実生(「Goldene Konigin」)を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)それぞれのパエニバチルス株の6日齢培養物の粗/全培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。株の培養条件は、実施例3に記載されている。適用の翌日、処理された植物に、トマト輪紋病菌(ALTESO)の胞子の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。未処理対照における菌類攻撃は、80〜100%の間であり、比較のため100%に設定した。
【0323】
【0324】
使用例5.4:保護的適用を用いた、ダイズさび病菌によって引き起こされるダイズでのダイズさび病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いダイズ実生(「Mentor」)を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)パエニバチルス属の種の2〜6日齢培養物の粗培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。適用の翌日、処理された植物に、ダイズさび病菌(PHAKPA)の胞子の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。
【0325】
使用例5.5:保護的適用を用いた、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)によって引き起こされるコムギでの赤さび病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いコムギ実生を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)パエニバチルス属の種の2〜6日齢培養物の粗培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。株の培養条件は、実施例3に記載されている。適用の翌日、処理された植物に、フザリウム・グラミネアラム(GIBBZE)の胞子の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。
【0326】
使用例5.6:保護的適用を用いた、セプトリア・トリティシによって引き起こされるコムギでの斑点葉枯病に対する活性
記載された温室試験には、市販の若いコムギ実生を使用した。処理あたり2つの複製(各1個体の植物を有するポット)を使用した。植物を、温室中、およそ22℃で市販の基板(Universal、Floragard)において増殖させた。湿度は、特別なデバイスを使用して制御した(約90%の湿度)。噴霧キャビネットを使用して、(設定に応じて)パエニバチルス属の種の2〜6日齢培養物の粗培養液を用いて、植物に流出まで噴霧した。株の培養条件は、実施例3に記載されている。適用の翌日、処理された植物に、セプトリア・トリティシ(SEPTTR)の胞子の懸濁液を用いて接種した。接種後、試験植物を直ちに加湿チャンバーに移した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の21〜28日後に可視的に評価した。
【0327】
使用例5.7:保護的適用を用いた、種々の病原体に対する、パエニバチルス属の細胞の、及び上清の活性
パエニバチルス属の株Lu17007の6日齢培養物から得た全培養液を、使用例3に従って入手し、使用例5.1〜5.3の実験設定と同様に使用した。あるいは、このような全培養液を、0.2μmの孔径を有するフィルターを通して濾過して、培養培地及び粗細胞画分を得た。粗細胞画分は、元の容積のリン酸緩衝生理食塩水を用いて3回さらに洗浄して、洗浄された細胞を得てもよい。
【0328】
それぞれの病原体ジャガイモ疫病菌、灰色かび病菌及びアルテルナリア・ソラニについて、ガラス温室試験は、上記の使用例5.1、5.2及び5.3に記載されるように実施した。葉での菌類攻撃の程度は、接種の5〜7日後に可視的に評価した。未処理対照における菌類攻撃は、80〜100%の間であり、比較のため100%に設定した。
【0329】
【0330】
[実施例6]
酵素試験
使用例6.1:キチナーゼ
キチナーゼ試験固体培地:
2g/lのNaNO3、1g/lのK2HPO4、0.5g/lのMgSO4、0.5g/lのKCl、0.2g/lのペプトン、15g/lの寒天、10g/lのカニ殻由来のキチン(Sigma-Aldrich C7170)。
【0331】
試験固体培地をオートクレーブ処理し、9cmのペトリディッシュに入れる。パエニバチルス属の株を、プレートの中心に接種し、27℃で2日間インキュベートする。その後、プレートを、1:3希釈されたLugol溶液(Carl Roth N052.2)を用いて5〜10分間染色する。Lugol溶液を注ぎ出し、プレートの写真を撮り、評価する。種々の株の増殖は、5〜10mm未満であった。非染色領域(キチナーゼ活性と相関する)は、0mm(活性なし;表11中、「-」)から数cm(表11中、「+」)でさまざまであった。
【0332】
使用例6.2:セルラーゼ
セルラーゼ試験固体培地:
2g/lのNaNO3、1g/lのK2HPO4、0.5g/lのMgSO4、0.5g/lのKCl、0.2g/lのペプトン、15g/lの寒天、カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩(Sigma-Aldrich 419273)。
【0333】
培地をオートクレーブ処理し、9cmのペトリディッシュに入れる。パエニバチルス属の株を、プレートの中心に接種し、27℃で2日間インキュベートする。その後、プレートを、1:3希釈されたLugol溶液(Carl Roth N052.2)を用いて5〜10分間染色する。Lugol溶液を注ぎ出し、プレートの写真を撮る。
【0334】
使用例6.3:アミラーゼ
アミラーゼ試験固体培地:
2g/lのNaNO3、1g/lのK2HPO4、0.5g/lのMgSO4、0.5g/lのKCl、0.2g/lのペプトン、15g/lの寒天、10g/lの可溶性デンプン(Merck 1.01252)。
【0335】
培地をオートクレーブ処理し、9cmのペトリディッシュに入れる。パエニバチルス属の株を、プレートの中心に接種し、27℃で2日間インキュベートする。インキュベーション後、プレートを、1:3希釈されたLugol溶液(Carl Roth N052.2)を用いて5〜10分間染色する。Lugol溶液を注ぎ出し、プレートの写真を撮る。
【0336】
【0337】
[実施例7]
パエニバチルス属の株から得られたフザリシジン型代謝産物
[実施例7.1]
細菌単離菌の大規模培養及びフザリシジン型代謝産物の抽出
a)培養
パエニバチルス属の株を、GYM培地(10g/lのグルコース、4g/lの酵母抽出物、10g/lの麦芽抽出物;pH5.5、オートクレーブ処理の前に調整した)及び20g/lの寒天を含有する寒天プレートで培養した。培養は、室温で10〜20日間実施した。維持するために、同一培地を有する寒天スラントを使用し、4℃で保存した。
【0338】
小規模液体培養物(500mlフラスコ中の、250mlのGYM培地)に、4〜5片の十分に増殖した寒天培養物を接種し、120rpm、室温(20〜23℃)でオービタルシェーカーにおいて培養した。
【0339】
大規模発酵を、250mlの十分に増殖した液体培養物が接種された、15lのGYM培地(発泡のために発酵槽の総能力は、使用しなかった)を有する20lの発酵槽中で実施し、発酵は、室温(20〜23℃)で、撹拌(120rpm)及び通気(3l/分)しながら、5〜8日間実施した。
【0340】
b)抽出
全培養液に、1等容量のイソプロパノールを添加した(液体培養物からのバイオマスの分離は、実施しなかった)。2〜16時間の撹拌及びインキュベーション後、混合物に、一般的な卓上塩(塩化ナトリウム-100〜200g/l)を、有機相及び水相の相分離が見えるまで添加した。
【0341】
イソプロパノール相を真空濃縮した。依然として多量の塩を含有する得られた抽出物をメタノールに溶解し、塩残留物の良好な沈殿のために遠心分離し、有機相を再度濃縮した。塩沈殿がもはや存在しなくなるまで、このステップを反復した。
【0342】
c)精製
i)シリカゲルクロマトグラフィー
30グラムの抽出物を、メタノールに溶解し、50gのシリカゲル(Merck、K60、70-230 mesh)に結合させ、40℃で乾燥させ、1kgのシリカゲル(カラム10cmの直径、およそ30cmの高さ)上に積層した。
【0343】
溶出を以下の通りに4ステップで実施した:
ステップ1-4lの酢酸エチル
ステップ2-4lの酢酸エチル:メタノール(3:1、v/v)
ステップ3-7lの酢酸エチル:メタノール(1:1、v/v)
ステップ4-4lのメタノール
【0344】
活性化合物を含有する第3の画分(中間体1)を真空乾燥させ、0.1%ギ酸(FA)中、40%メタノール(MeOH)に溶解した(濃度:100mg/ml)。その他の画分を廃棄した。
【0345】
ii)Chromabond HR-X分画
20mlの中間体1を、先に平衡化した(0.1%FA中、40% MeOHを用いて)Chromabond HR-Xカートリッジ(Macherey-Nagel、1000mg、参照番号730941)上にロードした。カートリッジを、100mlの、0.1% FA中の40% MeOHを用いて洗浄し、60mlの、0.1% FA中の70% MeOHを用いて溶出した。次いで、この中間体1-1を、真空乾燥させた。
【0346】
iii)Sunfire C18カラムでの分取HPLC
中間体1-1を、DMSOに溶解し(濃度:200mg/ml)、300μlの中間体1-1を、以下の通りにSunfire C18カラム(19×250mm、5μm、Waters)でクロマトグラフィーに付した:
10ml/分で16分、イソクラティック70% 0.2FA;30%アセトニトリル(ACN)、
14ml/分で1分、65% 0.2% FAへの勾配;35% ACN、
14ml/分で5分、イソクラティック65% 0.2% FA;35% ACN。
【0347】
5画分が検出され得る。5種の得られた画分すべてを、真空乾燥し、DMSOに溶解した(濃度:125mg/ml)。同一カラム及び画分(実施あたり12.5mg)毎に調整されたイソクラティック条件(流動:10.5ml/分)を使用して、さらなる精製を実施した:
画分1:69% 0.2 FA;31% ACN;2つのピークが検出された(1-1及び1-2)
画分2:69% 0.2 FA;31% ACN;2つのピークが検出された(2-1及び2-2)
画分3:69% 0.2 FA;31% ACN;3つのピークが検出された(3-1、3-2及び3-3)
画分4/5:67% 0.2 FA;33% ACN;1つのピークが検出された(4/5)
画分6:65% 0.2 FA;35% ACN;2つのピークが検出された(6-1及び6-2)
【0348】
以下のサンプルの純度及び質は、NMR解析及び構造解明に十分であった:ピーク1-2、2-1、3-2、4/5及び6-1。
【0349】
[実施例7.2]
新規化合物1A及び1Bの構造解明
画分2のピーク2-1から、化合物1A及び1Bの混合物(比、約3:7)が褐色オイルとして得られた([α]D25=+20.9(c=0.6、DMSO-d6))。
【0350】
主要成分、化合物1Bの分子式C47H78N10O12が、m/z 975.5863 [M+H]+;ESI-MS:975.6(100%、[M+H]+)、488.4(51%、[M+2H]2+)にピークをもたらすHR-ESI-MSスペクトルから推定された。
【0351】
さらに、混合物はまた、微量成分として、より軽い相同体1Aも含有し、両化合物間の質量の相違は、14amuであった。この知見は、m/z 961.6でESI-MSスペクトルにおいて観察された第2のピークによって支持された。
【0352】
NMRスペクトル(表12)は、δ6.83と8.58の間の交換可能なプロトンのシグナルに加えて、ペプチドを示す、δ166.0〜174.5の範囲のカルボニルの共鳴及びδ47.8からδ60.4の間のメチンシグナルを含んでいた。
【0353】
化合物1Bの1D-及び2D-NMRデータの詳細な解析は、チロシン(Tyr)、グルタミン(Gln)、アラニン(Ala)、2個のトレオニン(Thr1及びThr2)及びイソロイシン(Ile)を含む6個のアミノ酸の存在を示した。アミド官能基にわたる2又は3つの結合相関を使用して、その順序がわかった。したがって、COSY、NOESY(図2)及びHMBC(図3)スペクトルは、δ8.58でのThr2の窒素-プロトンから、δ3.84でのThr2のメチンプロトン及びTyrのδ166.7でのカルボニルのシグナルへの相関を示したが、δ8.52でのTyrの窒素-プロトン及びδ2.60でのTyrのメチレンプロトン及びIleのδ170.4でのカルボニルのシグナルの間の同一関係が記された。さらに、δ4.16でのIleのメチン水素は、δ170.4でのIleのカルボニルシグナルとの強力な相関及びδ168.6でのThr1のものとの弱い接触を有しており;Thr1のδ5.30でのβ-メチンプロトンのシグナルは、Alaのδ170.4のカルボニルシグナルと相関していた。前記の相関によれば、Alaのδ7.27でのN-プロトンから同一アミノ酸のδ4.20のメチンプロトンでその他のものが示され、この後者のプロトンは、そのアミノのカルボニル及びGlnのものと同一相互作用を有していた。さらに、Glnのδ8.20の交換可能なプロトンから、Glnのδ3.87のメチン水素及びδ170.6のThr2のカルボニルにクロスピークが、示され;これらの上記のデータは、化合物1Bのシクロデプシペプチド構造を示した。
【0354】
このシクロデプシペプチド1Bは、δ4.39でのそのα-メチンプロトンのシグナルと、δ171.9のカルボニルの共鳴の間に重要な相関が観察され、HMBCが、δ171.9のそのカルボニルからδ2.35のα-メチレンプロトンに接触し、δ3.77のβ-メチンプロトンもまたδ3.03のメチレンプロトンとδ157.2のグアニジン炭素の間でさらに観察されたので、Thr1と結合している末端グアニジンβ-ヒドロキシ脂肪酸を含有していた。側鎖が、m/z256.2での親[M+H]+イオンのAPCI-MS-MSスペクトルにおいて観察されたフラグメントイオンに基づいて、β-ヒドロキシとグアニジン基の間に12個のメチレン基を含有すると推定された。同様に、このスペクトルは、アミノ酸の結合配列を確認し、図1に示されるような化合物1Bの構造を解明するようにつながる情報を提供した(図4b)。
【0355】
1D-及び2D-スペクトルにおける2.80、2.52/36.3でのCH2基のシグナルは、推定上、化合物1A中のアスパラギン(Asn)のβ-CH2基と相関していた。この結論は、m/z961.6の親ピークのMS/MSから得られたフラグメントと共に(図4a)、報告されたデータ(Heterocycles 53、1533〜1549頁、2000年)によって支持された。同様に、後者の解析は、両化合物におけるアミノ酸の結合配列を確認し、図1に示されるような化合物1A及び1Bの構造を解明するようにつながる情報を提供した(図4a、4b)。
【0356】
[実施例7.3]
フザリシジンC及びDとしての化合物2A及び2Bの構造同定
画分1のピーク1-2から、化合物2A及び2Bの混合物(比、約1:1)が、褐色のオイルとして得られた。より重い成分、化合物2Bの分子式は、低分解能質量分析に基づいてC46H76N10O12であると決定した。NMRデータの解析(表13)によって、化合物2BをフザリシジンDと同定することが可能であった。混合物のより軽い成分、化合物2Aを、同様に、フザリシジンCのGln残基がAsnによって置換されているフザリシジンCと同定した。
【0357】
化合物2B及び2Aそれぞれのm/z 961.6及び947.6の親イオンの質量分析のフラグメンテーションパターン(図5a、5b)によって、置換脂肪酸側鎖の長さが化合物1Bと同一であることが確認された。フザリシジンC及びDは、Kajimuraら(J. Antibiot. 第50巻、220〜228頁、1997年)によって以前に報告されている。
【0358】
[実施例7.4]
化合物3のLI-F08bとしての構造的同定
画分6のピーク6-1から、化合物3が褐色のオイルとして単離され、その低分解能は、m/z925.6[M+H]+のピークを提示し、これをNMRデータ(表14)と組み合わせて、分子式C44H80N10O11につながった。化合物3は、芳香族シグナルの存在を除いて、NMRスペクトルにおいて化合物1B及び化合物2B(フザリシジンD)と同様の特徴を示した(表14)。したがって、ペプチドの特徴的共鳴、すなわち、δ6.89と8.49の間の窒素と結合しているプロトンの10個のシグナル、δ168.1から174.3の間の範囲のカルボニルの8個の共鳴及びδ48.0から59.5の間に含まれるN-メチンの6個のシグナルが観察された。HMQC、COSY及びTOCSYスペクトルの詳細な解析は、Gln、2単位のThr、2単位のIle及びAlaを含む6個のアミノ酸の存在を示した。さらに、これらのスペクトルは、化合物1A、1B及びフザリシジンC(2A)及びD(2B)と同一の、末端グアニジンを有するβ-ヒドロキシル脂肪酸に起因する化学シフトを示した。この側鎖の位置は、Thr1のδ4.44でのN-メチンのプロトンシグナルと、脂肪酸のδ172.1でのカルボニルシグナルの間のHMBCスペクトルで見られる長距離相関に基づいて決定した。アミノ酸の順序は、NOESY相互作用及びフラグメンテーションパターンから推定した(図6)。
【0359】
NMRデータ(表14)及び質量分析を組み合わせて、代謝産物化合物3の、Kurodaら(Heterocycles 第53巻、1533〜1549頁、2000年)によって最初に報告された、本明細書において、フザリシジンLI-F08bとも呼ばれる、LI-F08bとしての同定につながった。
【0360】
[実施例7.5]
化合物4A及び4Bの、LI-F06a及びLI-F06bとしての、並びに化合物5A及び5Bの、フザリシジンA及びBそれぞれの構造的同定
画分4/5のピーク4/5から、2種のさらなる代謝産物、化合物4A及び4Bの混合物(比、約1:3)が得られ、これは、ESI-MSスペクトルにおいてm/z897.5(4A)及び911.6(4B)で2つのピークをもたらし、2種のさらなる相同シクロデプシペプチドを示唆した。そのNMRスペクトル(表15)においてペプチドを示す共鳴並びにグアニジン基で終結するβ-ヒドロキシル脂肪酸のものが観察された。化合物4A及び4Bについて見られた両親イオンのフラグメンテーションパターン(図7a、7b)によって、アミノ酸の順序を決定し、混合物の成分を、それぞれLI-F06a(4A)及びLI-F06b(4B)と同定することが可能であった。
【0361】
画分3のピーク3-2から得られた、化合物5A及び5Bの混合物(比、約1:3)を同様の方法で解析した。混合物のESI質量スペクトルは、m/z883.6(5A)及び897.5(5B)に2つのピークを示し、これらの親イオンのフラグメンテーションパターン(図8a、8b)は、NMRデータ(表16)とともに、成分をフザリシジンA(5A)及びフザリシジンB(5B)と同定することを可能にした。4A、4B、5A及び5Bについて見られたデータは、これまでに報告されたものと対応していた。(J. Antibiot.第50巻、220〜228頁、1997年;Heterocycles 第53巻、1533〜1549頁、2000年)。
【0362】
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
【0367】
構成アミノ酸の立体配置を調べるために、加水分解実験は実施しなかった。
【0368】
[実施例8]
パエニバチルス属の株によって産生された代謝産物
[実施例8.1]
パエニバチルス属の株による代謝産物の産生
フザリシジンの存在は、一般に、また特に、公知のフザリシジンA、B、C、D、LI-F06a、LI-F06b及びLI-F08b並びに新規フザリシジン型化合物1A及び1Bの存在は、パエニバチルス属の株について、上記の実施例7.1に記載されている手順ステップに従って決定した。
【0369】
【0370】
新規パエニバチルス属の株、Lu16774、Lu17007及びLu17015のすべての全培養液が、少なくとも1種の、実施例7において同定されたフザリシジン型代謝産物を含有していた(表17)。これらのフザリシジン型代謝産物のうち、P.ペオリエ株BD-62の全培養液において検出されたものはなかった。
【0371】
新規パエニバチルス株、Lu16774、Lu17007及びLu17015の全培養液はすべて、新規フザリシジン型化合物1A及び1Bを含有していた。さらに、新規パエニバチルス株、Lu16774、Lu17007及びLu17015の全培養液はすべて、フザリシジンA、B、C及びD並びにLI-F08bを含有していた。さらに、新規パエニバチルス属の株Lu17007及びLu17015の全培養液は、フザリシジンLI-F06a及びLI-F06bを含有していた。
【0372】
化合物1A及び1Bは、密接に関連するP.ペオリエ株BD-62の全培養液において検出されなかった。フザリシジンA、B、C及びD、LI-F06a、LI-F06b並びにLI-F08bもまた、P.ペオリエ株BD-62の全培養液中になかった。
【0373】
[実施例9]
種々の菌類病原体に対するパエニバチルス属の株による代謝産物の活性
化合物1A及び1B、フザリシジンA、B及びDを得、以下の実験において使用した。
【0374】
YBA[10gのBactoペプトン(Becton Dickinson 211677)、10gの酵母抽出物(Becton Dickinson 212750)、20gの酢酸ナトリウム、再蒸留水で1000mLまで添加]中、病原体灰色かび病菌(BOTRCI)又はYBG[10gのBactoペプトン(Becton Dickinson 211677)、10gの酵母抽出物(Becton Dickinson 212750)、20gのグリセリン99%、再蒸留水で1000mLまで添加]中、アルテルナリア・ソラニ(ALTESO)の胞子懸濁液を有する96ウェルプレートにおいて菌類増殖アッセイを実施した。フザリシジン及び化合物1A及び1Bを、DMSOに溶解し、希釈した。60μMから最低0.3μMの範囲の種々の濃縮物を、マイクロタイタープレートにピペットで入れた。104個の胞子/mlの水性懸濁液を添加した。プレートを約18℃でインキュベートした。胞子の接種の3及び7日後にマイクロプレートリーダーにおいて600nmの光学濃度を測定することによって菌類増殖を決定し、未処理対照(DMSO)と比較した。その後、IC50(菌類増殖の50%阻害に必要なそれぞれの代謝産物の濃度[μM])を決定した。
【0375】
特に、化合物1A及び1Bは、最高の抗菌剤有効性を示し、0.4〜0.6μMのIC50値を有していた(表18)。
【0376】
【0377】
さらに、それぞれの病原体灰色かび病菌(BOTRCI)、アルテルナリア・ソラニ(ALTESO)、ジャガイモ疫病菌(PHYTIN)、ダイズさび病菌(PHAKPA)及びフザリウム・グラミネアラム(GIBBZE)について、ガラス温室試験を、上記の使用例5.1〜5.5に記載されるような化合物1A及び1Bを用いて実施した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。
【0378】
特に、化合物1A及び1Bは、作物植物での重要な菌類疾患の防除において、7.2ppmほど低い用量レベルですでに有効であり、フザリシジンA、B及びDよりも高い抗菌有効性を示した(表19〜21)。
【0379】
【0380】
【0381】
【0382】
【0383】
[実施例10]
ガラス温室試験における種々の病原体に対する、本発明のパエニバチルス・ポリミクサ新種プランタラム株Lu16674及びLu17007の活性の、パエニバチルス・ポリミクサ新種プランタラムM-1との比較
使用例3に従って、パエニバチルス属の株Lu17007、Lu16674及びM1の6日齢培養物から全培養液を得、使用例5.1〜5.5の実験設定と同様に使用した。それぞれの病原体について、ガラス温室試験を上記の使用例5.1〜5.5に記載されるように実施した。葉での菌類攻撃の程度を、接種の5〜7日後に可視的に評価した。
【0384】
特に、パエニバチルス属の株、Lu16774及びLu17007は、高い希釈係数でさえ作物植物での重要な菌類疾患の防除において有効であり、密接に関連する株M-1よりも高い抗菌有効性を示した(表22〜27)。
【0385】
【0386】
【0387】
【0388】
【0389】
【0390】
【0391】
本明細書において引用されるような文書は、参照により組み込まれる。
【受託番号】
【0392】
DSM 26969
DSM 26970
DSM 26971
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]