特許第6621906号(P6621906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621906
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】二次電池の釘貫通試験装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20191209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20191209BHJP
   G01R 31/388 20190101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/48 P
   G01R31/388
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-502813(P2018-502813)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公表番号】特表2018-523273(P2018-523273A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】KR2016010101
(87)【国際公開番号】WO2017043890
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0127839
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジン−ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,セ−ウク
(72)【発明者】
【氏名】コ,ヨ−ハン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン−ソク
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0198673(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/082502(WO,A1)
【文献】 特開2005−327616(JP,A)
【文献】 特開2010−212183(JP,A)
【文献】 特開2009−158266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 10/48
G01R 31/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の釘貫通試験装置であって、
釘貫通試験の対象になる二次電池を固定するステージと、
前記二次電池を貫通する釘及び前記釘を上昇または下降させる釘昇降手段を含む釘貫通部と、
前記二次電池の電極に結合され、釘貫通試験の実行中に、二次電池の短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する電圧測定部と、
視覚的に情報を表示するディスプレイ部と、
前記電圧測定部と動作可能に結合された制御部とを備えてなり、
前記制御部は、
前記釘貫通部を制御して前記釘を下降させて二次電池を貫通させ、
前記電圧測定部から短絡電圧の入力を周期的に受けて、前記短絡電圧が入力される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記入力された短絡電圧を形成する短絡電流を決定し、
前記決定された短絡電流に対する値の経時的な変化様相を、前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されてなることを特徴とする、二次電池の釘貫通試験装置。
【請求項2】
前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を備えてなり、
前記複数の回路要素は相互直列で連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、下記〔数式8〕により、二次電池の短絡電流を決定するように構成されてなることを特徴とする、請求項2に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式8〕
〔上記数式8において、
shortは短絡電流であり、
shortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧であり、
RCは前記RC回路によって形成される電圧であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧であり、
0は前記直列抵抗の抵抗値である。〕
【請求項4】
前記制御部は、前記VRCを下記〔数式9〕により、時間アップデートするように構成されてなり、
前記制御部は、下記〔数式10〕により、二次電池の充電状態であるSOCを時間アップデートするように構成されてなり、
前記制御部は、前記時間アップデートされた充電状態と予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて前記時間アップデートされた充電状態に対応する二次電池の開放電圧VOCVを決定するように構成されてなることを特徴とする、請求項3に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
RC[k+1]=VRC[k]e-Δt/R*C+R(1−e-Δt/R*C)ishort[k]
〔数式9〕
〔上記数式9において、
kは時間インデックスであり、
RC[k]は時間アップデート直前のVRC値であり、
RC[k+1]は時間アップデートされたVRC値であり、
ΔtはVRCの時間アップデート周期であり、
RとCはそれぞれRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値及びキャパシタンス値であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流の予測値である。〕
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式10〕
〔上記数式10において、
kは時間インデックスであり、
SOC[k]は時間アップデート直前の充電状態であり、
SOC[k+1]は時間アップデートされた充電状態であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流であり、
Δtは充電状態SOCの時間アップデート周期であり、
cellは二次電池の容量である。〕
【請求項5】
前記制御部は、下記〔数式11〕を用いて、釘が貫通した地点の短絡抵抗であるRshortを決定し、
前記短絡抵抗の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=Vshort/ishort 〔数式11〕
〔上記数式11において、
shortは釘が貫通した地点の短絡抵抗であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
【請求項6】
前記制御部は、下記〔数式12〕を用いて、釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であるQshortを決定し、
前記短絡ジュール熱の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=ishort*Vshort 〔数式12〕
〔上記数式12において、
shortは釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
【請求項7】
前記制御部は、下記〔数式13〕を用いて、二次電池の貫通地点で二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱であるQcellを決定し、
前記抵抗ジュール熱の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式13〕
〔上記数式13において、
cellは釘が貫通した地点で二次電池の抵抗特性から発生するジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧の予測値である。〕
【請求項8】
二次電池の釘貫通試験方法であって、
(a)二次電池をステージに固定する段階と、
(b)二次電池を釘で貫通させる段階と、
(c)電圧測定部を用いて二次電池の電極を通じて短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する段階と、
(d)短絡電圧が測定される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記測定された短絡電圧を形成する短絡電流を決定する段階と、
(e)前記決定された短絡電流に対する変化様相を視覚的に出力する段階とを含んでなることを特徴とする、二次電池の釘貫通試験方法。
【請求項9】
前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を備えてなり、
前記複数の回路要素は相互直列で連結されていることを特徴とする、請求項8に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
【請求項10】
前記(d)段階は、二次電池の短絡電流を、下記〔数式8〕を用いて決定する段階であることを特徴とする、請求項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式8〕
〔上記数式8において、
shortは短絡電流であり、
shortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧であり、
RCは前記RC回路によって形成される電圧であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧であり、
0は前記直列抵抗の抵抗値である。〕
【請求項11】
前記(d)段階は、
(d1)前記VRCを下記〔数式9〕によって時間アップデートする段階と、
(d2)二次電池の充電状態であるSOCを下記〔数式10〕によって時間アップデートする段階と、
(d3)前記時間アップデートされた充電状態と予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて前記時間アップデートされた充電状態に対応する二次電池の開放電圧であるVOCVを決定する段階とを含んでなることを特徴とする、請求項10に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
RC[k+1]=VRC[k]e-Δt/R*C+R(1−e-Δt/R*C)ishort[k]
〔数式9〕
〔上記数式9において、
kは時間インデックスであり、
RC[k]は時間アップデート直前のVRC値であり、
RC[k+1]は時間アップデートされたVRC値であり、
ΔtはVRCの時間アップデート周期であり、
RとCはそれぞれRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値及びキャパシタンス値であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流の予測値である。〕
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式10〕
〔上記数式10において、
kは時間インデックスであり、
SOC[k]は時間アップデート直前の充電状態であり、
SOC[k+1]は時間アップデートされた充電状態であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流であり、
Δtは充電状態SOCの時間アップデート周期であり、
cellは二次電池の容量である。〕
【請求項12】
釘が貫通した地点の短絡抵抗であるRshortを下記〔数式11〕によって決定する段階と、
前記短絡抵抗の変化様相を視覚的に出力する段階とをさらに含んでなることを特徴とする、請求項8〜11の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=Vshort/ishort 〔数式11〕
〔上記数式11において、
shortは釘が貫通した地点の短絡抵抗であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
【請求項13】
釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であるQshortを、下記〔数式12〕を用いて決定する段階と、
前記短絡ジュール熱の変化様相を視覚的に出力する段階とをさらに含んでなることを特徴とする、請求項8〜12の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=ishort*Vshort 〔数式12〕
〔上記数式12において、
shortは釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
【請求項14】
二次電池の貫通地点で二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱であるQcellを、下記〔数式13〕を用いて決定する段階と、
前記抵抗ジュール熱の変化様相を視覚的に出力する段階と、をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜13の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式13〕
〔上記数式13において、
cellは釘が貫通した地点で二次電池の抵抗特性から発生するジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧の予測値である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の釘貫通試験装置及び方法に関し、より詳しくは、二次電池の等価回路を用いて二次電池に釘が貫通したとき、内部に流れる短絡電流の変化様相を容易に予測できる釘貫通試験装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2015年9月9日出願の韓国特許出願第10−2015−0127839号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、電気化学的な酸化及び還元反応を通じて電気エネルギーを生成するものであって、幅広い範囲で多様な用途で用いられる。例えば、携帯電話、ラップトップパソコン、デジカメ、ビデオカメラ、タブレットパソコン、電動工具などのように持ち運び可能な装置;電気自転車、電気バイク、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気船、電気飛行機などのような各種電気駆動動力装置;新再生エネルギーを用いて発電した電力や余剰発電電力を貯蔵するときに使用される電力貯蔵装置;サーバーコンピューターと通信用基地局を含む各種情報通信装置に電力を安定的に供給するための無停電電源供給装置などに至るまで、二次電池の使用領域はますます拡がっている。
【0004】
二次電池は、外装材内に電極組立体を電解質とともに封止し、極性の異なる2個の電極端子を外部に露出させた構造を有する。前記電極組立体は複数の単位セルを含み、単位セルは少なくとも多孔性の分離膜が介在された負極板と正極板を含む。前記負極板及び正極板には活物質がコーティングされ、活物質と電解質との電気化学的反応によって二次電池が充電または放電する。
【0005】
一方、二次電池は金属材質の尖った物体から大きい衝撃が加えられたとき、該当物体が外装材を貫通し、電極組立体内の異なる極性の電極板まで貫通することがある。この場合、異なる極性の電極板が金属物体によって電気的に連結されて短絡回路が形成され、非常に大きい短絡電流が金属物体とそれによって貫通された電極板との間で数秒以内に流れるようになる。短絡電流が流れれば、電極板から多量の熱が発生し、該熱によって電解質が急激に分解されながら多量のガスが発生する。電解質の分解反応は発熱反応に該当するため、釘が貫通した地点を中心に二次電池の温度が局所的に急上昇し、結局二次電池が発火し燃焼するようになる。
【0006】
したがって、新たな二次電池が開発されれば、商用化の前に釘貫通試験を通じて二次電池の貫通安全性を検証する。釘貫通試験は、二次電池の温度と電圧を測定可能な試験装置に二次電池をロードした後、予め用意した多様な直径の尖った金属釘で二次電池を貫通して意図的に二次電池の内部に短絡を誘発させ、釘の直径と貫通速度による二次電池の温度や電圧の変化を測定し、二次電池の発火如何を目視で確認する試験である。
【0007】
しかし、従来の釘貫通試験装置は、二次電池が如何なる貫通条件で発火するかを確認するため、相当数の二次電池を不要に破損しなければならないという問題がある。
【0008】
また、二次電池の発火メカニズムを正確に究明するためには、釘が貫通した地点で流れる短絡電流の大きさの変化を経時的に測定して、短絡電流のために生じた熱の変化を定量的に計算しなければならない。
【0009】
また、貫通地点で発生する熱と二次電池の熱伝導特性を考慮して、釘が貫通した地点の温度が発火温度まで急激に上昇可能であるか否かを熱力学的に解釈してみる必要がある。
【0010】
しかし、短絡電流は釘が貫通した地点を通じて二次電池の内部で非常に短時間のみ局所的に流れるため、直接的な測定が事実上不可能である。
【0011】
したがって、従来の釘貫通試験装置は、二次電池が金属物体によって貫通されたときの発火メカニズムを正確に究明するには限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、二次電池の釘貫通試験において、二次電池の内部に流れる短絡電流の大きさの変化を予測し、釘貫通地点における発熱特性を定量的に解釈できる二次電池の釘貫通試験装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の釘貫通試験装置は、釘貫通試験の対象になる二次電池を固定するステージ;前記二次電池を貫通する釘及び前記釘を上昇または下降させる釘昇降手段を含む釘貫通部;前記二次電池の電極に結合され、釘貫通試験の実行中に、二次電池の短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する電圧測定部;並びに前記電圧測定部と動作可能に結合された制御部を含み、前記制御部は、前記釘貫通部を制御して前記釘を下降させて二次電池を貫通させ、前記電圧測定部から短絡電圧の入力を周期的に受けて、前記短絡電圧が入力される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記入力された短絡電圧を形成する短絡電流を決定し、前記決定された短絡電流に対する値の経時的な変化様相を視覚的に出力する。
<本発明の一の態様>
〔1〕 二次電池の釘貫通試験装置であって、
釘貫通試験の対象になる二次電池を固定するステージと、
前記二次電池を貫通する釘及び前記釘を上昇または下降させる釘昇降手段を含む釘貫通部と、
前記二次電池の電極に結合され、釘貫通試験の実行中に、二次電池の短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する電圧測定部と、
視覚的に情報を表示するディスプレイ部と、
前記電圧測定部と動作可能に結合された制御部とを備えてなり、
前記制御部は、
前記釘貫通部を制御して前記釘を下降させて二次電池を貫通させ、
前記電圧測定部から短絡電圧の入力を周期的に受けて、前記短絡電圧が入力される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記入力された短絡電圧を形成する短絡電流を決定し、
前記決定された短絡電流に対する値の経時的な変化様相を、前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されてなることを特徴とする、二次電池の釘貫通試験装置。
〔2〕 前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を備えてなり、
前記複数の回路要素は相互直列で連結されていることを特徴とする、〔1〕に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
〔3〕 前記制御部は、下記〔数式8〕により、二次電池の短絡電流を決定するように構成されてなることを特徴とする、〔2〕に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式8〕
〔上記数式8において、
shortは短絡電流であり、
shortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧であり、
RCは前記RC回路によって形成される電圧であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧であり、
0は前記直列抵抗の抵抗値である。〕
〔4〕 前記制御部は、前記VRCを下記〔数式9〕により、時間アップデートするように構成されてなり、
前記制御部は、下記〔数式10〕により、二次電池の充電状態であるSOCを時間アップデートするように構成されてなり、
前記制御部は、前記時間アップデートされた充電状態と予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて前記時間アップデートされた充電状態に対応する二次電池の開放電圧VOCVを決定するように構成されたてなることを特徴とする、〔3〕に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
RC[k+1]=VRC[k]e-Δt/R*C+R(1−e-Δt/R*C)ishort[k]
〔数式9〕
〔上記数式9において、
kは時間インデックスであり、
RC[k]は時間アップデート直前のVRC値であり、
RC[k+1]は時間アップデートされたVRC値であり、
ΔtはVRCの時間アップデート周期であり、
RとCはそれぞれRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値及びキャパシタンス値であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流の予測値である。〕
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式10〕
〔上記数式10において、
kは時間インデックスであり、
SOC[k]は時間アップデート直前の充電状態であり、
SOC[k+1]は時間アップデートされた充電状態であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流であり、
Δtは充電状態SOCの時間アップデート周期であり、
cellは二次電池の容量である。〕
〔5〕 前記制御部は、下記〔数式11〕を用いて、釘が貫通した地点の短絡抵抗であるRshortを決定し、
前記短絡抵抗の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする、〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=Vshort/ishort 〔数式11〕
〔上記数式11において、
shortは釘が貫通した地点の短絡抵抗であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
〔6〕 前記制御部は、下記〔数式12〕を用いて、釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であるQshortを決定し、
前記短絡ジュール熱の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
short=ishort*Vshort 〔数式12〕
〔上記数式12において、
shortは釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
〔7〕 前記制御部は、下記〔数式13〕を用いて、二次電池の貫通地点で二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱であるQcellを決定し、
前記抵抗ジュール熱の経時的な変化様相を前記ディスプレイ部を通じて視覚的に出力するように構成されたことを特徴とする、〔1〕〜〔6〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験装置。
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式13〕
〔上記数式13において、
cellは釘が貫通した地点で二次電池の抵抗特性から発生するジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧の予測値である。〕
〔8〕 二次電池の釘貫通試験方法であって、
(a)二次電池をステージに固定する段階と、
(b)二次電池を釘で貫通させる段階と、
(c)二次電池の電極を通じて短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する段階と、
(d)短絡電圧が測定される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記測定された短絡電圧を形成する短絡電流を決定する段階と、
(e)前記決定された短絡電流に対する変化様相を視覚的に出力する段階とを含んでなることを特徴とする、二次電池の釘貫通試験方法。
〔9〕 前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を備えてなり、
前記複数の回路要素は相互直列で連結されていることを特徴とする、〔8〕に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
〔10〕 前記(d)段階は、二次電池の短絡電流を、下記〔数式8〕を用いて決定する段階であることを特徴とする、〔8〕又は〔9〕に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式8〕
〔上記数式8において、
shortは短絡電流であり、
shortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧であり、
RCは前記RC回路によって形成される電圧であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧であり、
0は前記直列抵抗の抵抗値である。〕
〔11〕 前記(d)段階は、
(d1)前記VRCを下記〔数式9〕によって時間アップデートする段階と、
(d2)二次電池の充電状態であるSOCを下記〔数式10〕によって時間アップデートする段階と、
(d3)前記時間アップデートされた充電状態と予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて前記時間アップデートされた充電状態に対応する二次電池の開放電圧であるVOCVを決定する段階とを含んでなることを特徴とする、〔10〕に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
RC[k+1]=VRC[k]e-Δt/R*C+R(1−e-Δt/R*C)ishort[k]
〔数式9〕
〔上記数式9において、
kは時間インデックスであり、
RC[k]は時間アップデート直前のVRC値であり、
RC[k+1]は時間アップデートされたVRC値であり、
ΔtはVRCの時間アップデート周期であり、
RとCはそれぞれRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値及びキャパシタンス値であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流の予測値である。〕
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式10〕
〔上記数式10において、
kは時間インデックスであり、
SOC[k]は時間アップデート直前の充電状態であり、
SOC[k+1]は時間アップデートされた充電状態であり、
shortは直前計算周期で決定された短絡電流であり、
Δtは充電状態SOCの時間アップデート周期であり、
cellは二次電池の容量である。〕
〔12〕 釘が貫通した地点の短絡抵抗であるRshortを下記〔数式11〕によって決定する段階と、
前記短絡抵抗の変化様相を視覚的に出力する段階とをさらに含んでなることを特徴とする、〔8〕〜〔11〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=Vshort/ishort 〔数式11〕
〔上記数式11において、
shortは釘が貫通した地点の短絡抵抗であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
〔13〕 釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であるQshortを、下記〔数式12〕を用いて決定する段階と、
前記短絡ジュール熱の変化様相を視覚的に出力する段階とをさらに含んでなることを特徴とする、〔8〕〜〔12〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
short=ishort*Vshort 〔数式12〕
〔上記数式12において、
shortは釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。〕
〔14〕 二次電池の貫通地点で二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱であるQcellを、下記〔数式13〕を用いて決定する段階と、
前記抵抗ジュール熱の変化様相を視覚的に出力する段階と、をさらに含むことを特徴とする、〔8〕〜〔13〕の何れか一項に記載の二次電池の釘貫通試験方法。
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式13〕
〔上記数式13において、
cellは釘が貫通した地点で二次電池の抵抗特性から発生するジュール熱であり、
shortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧であり、
shortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値であり、
OCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧の予測値である。〕
【0014】
望ましくは、前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を含み、前記複数の回路要素は相互直列で連結することができる。
【0015】
望ましくは、前記制御部は、下記〔数式1〕によって二次電池の短絡電流を決定することができる。
【0016】
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式1〕
(ここで、ishortは短絡電流、Vshortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧、VRCは前記RC回路によって形成される電圧、VOCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧、R0は前記直列抵抗の抵抗値である。)
望ましくは、前記制御部は、下記〔数式1〕のVRCを下記〔数式2〕によって時間アップデートすることができる。
【0017】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の釘貫通試験装置は、釘貫通試験の対象になる二次電池を固定するステージ;前記二次電池を貫通する釘及び前記釘を上昇または下降させる釘昇降手段を含む釘貫通部;前記二次電池の電極に結合され、釘貫通試験の実行中に、二次電池の短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する電圧測定部;並びに前記電圧測定部と動作可能に結合された制御部を含み、前記制御部は、前記釘貫通部を制御して前記釘を下降させて二次電池を貫通させ、前記電圧測定部から短絡電圧の入力を周期的に受けて、前記短絡電圧が入力される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記入力された短絡電圧を形成する短絡電流を決定し、前記決定された短絡電流に対する値の経時的な変化様相を視覚的に出力する。
【0018】
望ましくは、前記等価回路は、複数の回路要素として、直列抵抗、少なくとも1つのRC回路、及び二次電池の充電状態に応じて電圧が変化する開放電圧源を含み、前記複数の回路要素は相互直列で連結することができる。
【0019】
望ましくは、前記制御部は、下記〔数式1〕によって二次電池の短絡電流を決定することができる。
【0020】
short=(Vshort−VRC−VOCV)/R0 〔数式1〕
(ここで、ishortは短絡電流、Vshortは前記電圧測定部によって測定された短絡電圧、VRCは前記RC回路によって形成される電圧、VOCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧、R0は前記直列抵抗の抵抗値である。)
望ましくは、前記制御部は、下記〔数式1〕のVRCを下記〔数式2〕によって時間アップデートすることができる。
【0021】
RC[k+1]=VRC[k]e-Δt/R*C+ (1−e-Δt/R*C)ishort[k]
〔数式1〕
(ここで、kは時間インデックス、VRC[k]は時間アップデート直前のVRC値、VRC[k+1]は時間アップデートされたVRC値、ΔtはVRCの時間アップデート周期、RとCはそれぞれRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値とキャパシタンス値、ishortは直前計算周期で決定された短絡電流の予測値である。)
望ましくは、前記制御部は、下記〔数式3〕によって二次電池の充電状態であるSOCを時間アップデートすることができる。また、前記制御部は、前記時間アップデートされた充電状態と予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて前記時間アップデートされた充電状態に対応する二次電池の開放電圧VOCVを決定することができる。
【0022】
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式3〕
(ここで、kは時間インデックス、SOC[k]は時間アップデート直前の充電状態、SOC[k+1]は時間アップデートされた充電状態、ishortは直前計算周期で決定された短絡電流、Δtは充電状態SOCの時間アップデート周期、Qcellは二次電池の容量である。)
一態様によれば、前記制御部は、下記〔数式4〕を用いて釘が貫通した地点の短絡抵抗であるRshortを決定でき、前記短絡抵抗の経時的な変化様相を視覚的に出力することができる。
【0023】
short=Vshort/ishort 〔数式4〕
(ここで、Rshortは釘が貫通した地点の短絡抵抗、Vshortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧、ishortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。)
他の態様によれば、前記制御部は、下記〔数式5〕を用いて釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱であるQshortを決定し、前記短絡ジュール熱の経時的な変化様相を視覚的に出力することができる。
【0024】
short=ishort*Vshort 〔数式5〕
(ここで、Qshortは釘が貫通した地点で発生する短絡ジュール熱、Vshortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧、ishortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値である。)
さらに他の態様によれば、前記制御部は、下記〔数式6〕を用いて二次電池の貫通地点で二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱であるQcellを決定し、前記抵抗ジュール熱の経時的な変化様相を視覚的に出力することができる。
【0025】
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式6〕
(ここで、Qcellは釘が貫通した地点で二次電池の抵抗特性から発生するジュール熱、Vshortは電圧測定部によって周期的に測定される二次電池の短絡電圧、ishortは周期的に測定される二次電池の短絡電圧に対応する短絡電流の予測値、VOCVは二次電池の充電状態に応じた開放電圧の予測値である。)
望ましくは、本発明による装置は、前記制御部と動作可能に結合されたディスプレイ部をさらに含み、前記制御部は、前記ディスプレイ部を通じて短絡電圧、短絡電流、短絡抵抗、短絡ジュール熱及び抵抗ジュール熱からなる群より選択された少なくとも1つの経時的な変化様相を視覚的に出力することができる。
【0026】
望ましくは、本発明による装置は、前記制御部と動作可能に結合されたメモリ部をさらに含み、前記制御部は、短絡電圧、短絡電流、短絡抵抗、短絡ジュール熱及び抵抗ジュール熱に対するデータを前記メモリ部に累積して保存することができる。
【0027】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の釘貫通試験方法は、二次電池をステージに固定する段階;二次電池を釘で貫通させる段階;二次電池の電極を通じて短絡電圧を時間間隔を置いて繰り返して測定する段階;短絡電圧が測定される度に、前記二次電池をモデリングした等価回路に基づいて前記等価回路の最外側ノードの間に前記測定された短絡電圧を形成する短絡電流を決定する段階;及び前記決定された短絡電流に対する経時的な変化様相を視覚的に出力する段階を含むことができる。
【0028】
選択的に、本発明による方法は、前記短絡電圧の経時的な変化様相を視覚的に出力する段階をさらに含むことができる。
【0029】
選択的に、本発明による方法は、前記短絡電圧及び前記短絡電流から決定された短絡抵抗の経時的な変化様相を視覚的に出力する段階をさらに含むことができる。
【0030】
選択的に、本発明による方法は、前記短絡電圧及び前記短絡電流から決定された短絡ジュール熱に対する経時的な変化様相を視覚的に出力する段階をさらに含むことができる。
【0031】
選択的に、本発明による方法は、前記短絡電圧、前記短絡電流、及び前記短絡電流を積算して得た充電状態から計算された開放電圧を用いて抵抗ジュール熱を計算し、前記抵抗ジュール熱の経時的な変化様相を視覚的に出力する段階をさらに含むことができる。
【0032】
上記の課題は、本発明による二次電池の釘貫通試験方法をプログラム化して書き込んだコンピューター可読の記録媒体によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、二次電池が釘によって貫通されたとき、電池内部で発生する短絡電流の大きさの変化を定量的に究明することができる。また、予測された短絡電流を用いて釘が貫通した地点の短絡抵抗または短絡ジュール熱の変化、若しくは二次電池の抵抗から発生する抵抗ジュール熱の変化も定量的に計算することができる。
【0034】
したがって、本発明は、二次電池が尖った物体によって貫通されたとき、貫通地点の熱的挙動と熱の発生原因、そして熱量の変化様相を定量的に究明し、さらに二次電池の貫通事故に備えた冷却メカニズムを開発するのに有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の一実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
図1】本発明の一実施例による二次電池の釘貫通試験装置の構成を概略的に示したブロック図である。
図2】釘貫通試験の対象になる二次電池の等価回路を示した回路図である。
図3】本発明の実施例によって、制御部が図2の等価回路を用いて釘が二次電池を貫通した直後に二次電池の内部に流れる短絡電流を決定する過程を示したフロー図である。
図4】本発明の実施例によって、制御部が図2の等価回路を用いて釘が二次電池を貫通した直後に二次電池の内部に流れる短絡電流を決定する過程を示したフロー図である。
図5】本発明の実験例において、釘が二次電池を貫通した後10秒間測定した短絡電圧(Vshort)のプロファイル(実線)、及び等価回路を用いて10秒間予測した短絡電流(ishort)のプロファイル(点線)を示したグラフである。
図6】本発明の実験例において、10秒間予測した短絡抵抗(Rshort)の経時的な変化を示した短絡抵抗プロファイルである。
図7】本発明の実験例において、10秒間予測した短絡ジュール熱(Qshort)の経時的な変化を示した短絡ジュール熱プロファイルである。
図8】本発明の実験例において、10秒間予測した抵抗ジュール熱(Qcell)の経時的な変化を示した抵抗ジュール熱プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0037】
図1は、本発明の一実施例による二次電池の釘貫通試験装置100の構成を概略的に示したブロック図である。
【0038】
図1を参照すれば、本発明による釘貫通試験装置100は、釘貫通試験の対象になる二次電池Bが載置されるステージ110を含む。前記ステージ110は、支持フレーム111上に設けられ、中央部位に貫通窓112を備えることができる。前記貫通窓112は、二次電池Bを貫通した釘121の先端が通過する空間を提供する。前記ステージ110は上部に釘貫通試験の対象になる二次電池Bを選択的に固定する複数のクランプ手段113を含むことができる。
【0039】
また、本発明による釘貫通試験装置100は、前記ステージ110の上部に先端が尖った釘121を二次電池Bに貫通させる釘貫通部120を含む。
【0040】
前記釘貫通部120は、二次電池Bを貫通する釘121、及び前記釘121を速い速度で下降させて前記ステージ110に固定された二次電池Bを貫通させ、釘貫通試験の終了後には釘121を本来の位置に復帰させる釘昇降手段122を含む。
【0041】
一実施例において、前記釘昇降手段122は、釘121の上端部が固定される固定フレームブロック1221、固定フレームブロック1221が取り付けられて摺動する昇降レール1222、前記固定フレームブロック1221を昇降レール1222上で所望の速度で上昇または下降させるリニアモーター1223、前記リニアモーター1223の回転RPMと回転方向を制御するモーター制御機1224を含む。
【0042】
一方、本発明は、釘昇降手段122の具体的な構成によって限定されないため、前記リニアモーター1223はリニアアクチュエーターなどで代替されても良い。
【0043】
また、本発明による釘貫通試験装置100は、二次電池Bが釘121によって貫通された直後に、前記二次電池Bの正極Pと負極Nとの間に印加される端子電圧を周期的に測定し、測定された端子電圧に対応する電圧測定信号を出力する電圧測定部130を含む。以下、前記端子電圧は短絡電圧とも称する。前記電圧測定部130は電圧計(voltmeter)であり得るが、本発明が電圧測定を行う装置の種類によって限定されることはない。
【0044】
また、本発明による釘貫通試験装置100は、二次電池Bが釘121によって貫通された後、前記電圧測定部130から電圧測定信号の入力を受けて二次電池Bの短絡電圧を決定し、二次電池Bの等価回路を用いて前記短絡電圧が前記等価回路の最外側ノードの間に形成されると仮定するとき、前記等価回路に流れる短絡電流を計算し、前記短絡電流の経時的な変化を示した短絡電流プロファイルを生成する制御部140を含む。
【0045】
前記制御部140は、選択的に、前記決定された端子電圧及び短絡電流から釘121が貫通した地点の短絡抵抗を決定し、前記短絡抵抗の経時的な変化を示した短絡抵抗プロファイルを生成することができる。
【0046】
また、前記制御部140は、選択的に、前記決定された端子電圧及び短絡電流から釘貫通地点で発生する局所的な短絡ジュール熱を決定し、前記短絡ジュール熱の経時的な変化を示した短絡ジュール熱プロファイルを生成することができる。
【0047】
また、前記制御部140は、前記決定された短絡電流を積算して二次電池の充電状態を決定した後、予め定義された「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を参照して充電状態に対応する開放電圧を決定し、決定された開放電圧、短絡電圧及び短絡電流から二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱を決定し、前記抵抗ジュール熱の経時的な変化を示した抵抗ジュール熱プロファイルを生成することができる。
【0048】
前記制御部140は、後述する多様な制御ロジッグを実行するために当業界に周知されたプロセッサ、ASIC(application−specific integrated circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。
【0049】
また、前記制御ロジッグがソフトウェアとして具現されるとき、前記制御部140はプログラムモジュールとして具現され得る。このとき、前記プログラムモジュールは記録媒体に記録され、プロセッサによって実行され得る。前記記録媒体はプロセッサの内部または外部にあり得、周知された多様なデータ送受信手段でプロセッサと連結され得る。
【0050】
また、本発明による釘貫通試験装置100は、前記制御部140の制御ロジッグを含む釘貫通試験プログラムを保存し、前記制御ロジッグの実行過程で生成されるデータが保存されるメモリ部150を含む。
【0051】
前記制御部140は、周期的に二次電池の短絡電圧が測定される度に、前記電圧測定部130から短絡電圧に対応する電圧信号の入力を受けた後、短絡電圧を決定し、そこから計算される短絡電流とともにメモリ部150に保存でき、前記メモリ部150に保存された複数の短絡電圧データと複数の短絡電流データを読み出して短絡電圧プロファイルと短絡電流プロファイルを生成することができる。
【0052】
また、前記制御部140は、前記端子電圧及び短絡電流が周期的に決定される度に、オームの法則に従って短絡抵抗を決定してメモリ部150に保存でき、前記メモリ部150に保存された複数の短絡抵抗データを読み出して短絡抵抗プロファイルを生成することができる。
【0053】
また、前記制御部140は、前記端子電圧及び短絡電流が周期的に決定される度に、熱量計算式を用いて釘貫通地点で発生する局所的な短絡ジュール熱を決定してメモリ部150に保存でき、前記メモリ部150に保存された複数の短絡ジュール熱データを読み出して短絡ジュール熱プロファイルを生成することができる。
【0054】
また、前記制御部140は、前記短絡電流が決定される度に、前記短絡電流を積算して二次電池Bの充電状態を決定し、「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を参照して決定された充電状態に対応する二次電池の開放電圧を決定して、決定された開放電圧、短絡電圧及び短絡電流から二次電池の抵抗特性から発生する抵抗ジュール熱を決定してメモリ部150に保存し、前記メモリ部150に保存された複数の抵抗ジュール熱データを読み出して抵抗ジュール熱プロファイルを生成することができる。
【0055】
前記メモリ部150は半導体メモリ素子であって、前記制御部140によって実行されるプログラムコードをローディングし、前記制御部140が各種制御ロジッグを実行する間に生成されるデータを記録、消去または更新することができる。前記プログラムコードは、前記制御部140によってアクセス可能な別途の電磁気的または光学的記録媒体に収録されていても良い。
【0056】
前記メモリ部150は、当業界に周知された半導体メモリ素子であれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記メモリ部150は、DRAM、SDRAM、フラッシュメモリ、ROM、EEPROM、レジスタなどであり得る。前記メモリ部150は、制御部140と物理的に分離されていても良く、前記制御部140と一体に統合されていても良い。
【0057】
また、本発明による釘貫通試験装置100は、ディスプレイ部160をさらに含むことができる。前記ディスプレイ部160は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)または有機発光ダイオードディスプレイ(Organic Light Emitting Diode Display)であり得る。しかし、本発明が必ずしもこれらに限定されることはない。したがって、当業界で情報を視覚的に表示できると知られたディスプレイ装置であれば、前記ディスプレイ部160の範疇に含まれ得る。
【0058】
前記制御部140は、オペレータの要請に応じて前記メモリ部150に保存されたデータを用いて短絡電圧プロファイル、短絡電流プロファイル、短絡抵抗プロファイル、短絡ジュール熱プロファイル及び抵抗ジュール熱プロファイルから選択された少なくとも1つを生成し、前記ディスプレイ部160を通じて視覚的に表示することができる。
【0059】
図示していないが、本発明による釘貫通試験装置100は、オペレータが釘貫通試験に必要な多様な制御命令を入力できる入力装置をさらに含むことができる。前記入力装置は、制御部140と動作可能に結合され得る。前記入力装置はキーボードとマウスを含み得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
また、前記釘貫通試験装置100は、オペレータが多様な制御命令を入力できるようにソフトウェアで具現されたユーザインターフェースを提供することができる。
【0061】
オペレータはユーザインターフェース上で釘貫通試験の条件を設定し、制御部140によって計算されたデータの経時的変化についての視覚的出力を要請して、ディスプレイ部160を通じて該当データの経時的変化を確認することができる。
【0062】
釘貫通試験の条件は、釘の昇降速度、短絡電流の予測に用いられる回路モデルを構成する回路素子の電気的パラメータ、例えば抵抗値、キャパシタンス値など、及び充電状態−開放電圧ルックアップテーブルを含む。
【0063】
図2は、釘貫通試験の対象になる二次電池Bの等価回路200を示した回路図である。
【0064】
図2を参照すれば、本発明の実施例による等価回路200は、二次電池Bの自体抵抗をモデリングする直列抵抗(R0)210、二次電池Bを通じて電流が流れるとき、電極の分極特性をモデリングする少なくとも1つのRC回路220a、220b、二次電池Bの充電状態(SOC)に応じて固有に決定される二次電池Bの開放電圧をモデリングする開放電圧源230を含む。
【0065】
望ましくは、前記等価回路200は、二次電池Bの正極と負極に対する分極特性を独立的にモデリングするため、2つのRC回路を含むことができる。勿論、RC回路の数は1つに減らしても良く、3つ以上に増やしても良い。
【0066】
以下では、説明の便宜上、左側のRC回路は正極の分極特性をモデリングするための回路であって第1のRC回路220aと称し、右側のRC回路は負極の分極特性をモデリングするための回路であって第2のRC回路220bと称することにする。
【0067】
前記等価回路200を構成する回路成分の抵抗値またはキャパシタンス値などは二次電池Bの種類によって変わり、実験を通じて適切にチューニングすることができる。また、開放電圧源230によって形成される電圧は、放電実験を通じて定義される「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて決定することができる。ここで、前記放電実験は、二次電池Bを満充電した後、定電流で放電しながら充電状態毎に開放電圧を測定する実験である。また、前記「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」は充電状態毎に対応する開放電圧をマッピングするか、又は、逆に開放電圧毎に充電状態をマッピングできるテーブル形態のデータ構造を有する。
【0068】
本発明は、二次電池Bが釘によって貫通されたとき、前記等価回路200を通じても二次電池Bの内部に流れる短絡電流(ishort)が同様に流れると仮定する。また、短絡電流(ishort)が流れる間、二次電池Bの正極と負極との間で測定される短絡電圧(Vshort)が前記等価回路200の最外側ノードの間にも同様に印加されると仮定する。
【0069】
このような仮定によれば、短絡電圧(Vshort)は、下記〔数式1〕のように、直列抵抗210に形成される電圧VR0、第1のRC回路220aに形成される電圧VRC1、第2のRC回路220bに形成される電圧VRC2及び開放電圧源230に形成される電圧VOCVの和によって計算することができる。
【0070】
short=VR0+VRC1+VRC2+VOCV 〔数式1〕
上記〔数式1〕でVR0はishort*R0であるため、上記〔数式1〕をishortに対して整理すれば、下記〔数式2〕が得られる。
【0071】
short = (Vshort − VRC1− VRC2−VOCV)/R0 〔数式2〕
上記〔数式2〕において、Vshortは二次電池Bの正極と負極との間で周期的に測定される電圧値を割り当てて測定アップデートすることができる。
【0072】
〔数式2〕において、VRC1及びVRC2は離散時間モデル(Time−Discrete Model)を適用して下記〔数式3〕によって時間アップデートすることができる。
【0073】
RC1[k+1]=VRC1[k]e-Δt/R1*C1+R1(1−e-Δt/R1*C1)ishort[k]
RC2[k+1]=VRC2[k]e-Δt/R2*C2+R2(1−e-Δt/R2*C2)ishort[k]
〔数式3〕
〔数式3〕において、Δtは時間アップデート周期であり、kとk+1は時間インデックスである。VRC1[k]及びVRC2[k]は時間アップデートされる直前の電圧値であり、VRC1[k+1]及びVRC2[k+1]は時間アップデートされた後の電圧値である。R1とC1は第1のRC回路220aに含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値とキャパシタンス値であって、実験を通じて適切な値にチューニングすることができる。同様に、R2とC2は第2のRC回路220bに含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値とキャパシタンス値であって、実験を通じて適切な値にチューニングすることができる。ishort[k]は時間アップデートされる直前に予測された短絡電流値である。
【0074】
釘が二次電池Bを貫通した直後は短絡電流が無視できるほど小さいため、VRC1[1]、VRC2[1]、ishort[1]を0に初期化することができる。
【0075】
〔数式2〕において、VOCVは、下記〔数式4〕を用いて等価回路200を通じて流れる短絡電流を積算することで二次電池Bの充電状態を時間アップデートし、「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を参照して充電状態に対応する開放電圧をルックアップする方式で決定することができる。
【0076】
SOC[k+1]=SOC[k]+100*ishort[k]△t/Qcell
〔数式4〕
〔数式4〕において、Δtは充電状態の時間アップデート周期であり、Qcellは二次電池Bの容量である。釘が二次電池Bを貫通した直後は短絡電流が無視できるほど小さい。したがって、初期条件に該当するSOC[1]には、釘が二次電池Bを貫通する前に測定した二次電池Bの開放電圧を用いて「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」から得た充電状態を初期値として割り当てる。そして、SOC[2]からは〔数式2〕で得た短絡電流を〔数式4〕に代入して充電状態を時間アップデートして決定する。
【0077】
以下、二次電池Bが釘によって貫通されたとき、制御部140が上記〔数式〕を用いて周期的に等価回路200に流れる短絡電流を決定する過程をより具体的に説明する。
【0078】
図3及び図4は、本発明の実施例によって制御部140が図2の等価回路200を用いて、釘が二次電池Bを貫通した直後に二次電池Bの内部に流れる短絡電流を決定する過程を示したフロー図である。
【0079】
図示されたように、まず釘貫通試験が始まれば、前記制御部140は電圧測定部130を用いてステージ110の上部に固定された二次電池Bの開放電圧を測定し、測定された開放電圧をメモリ部150に保存する(S100)。その後、前記制御部140は測定された開放電圧をVOCVの初期値として割り当てる(S115)。
【0080】
次いで、前記制御部140は、時間インデックスkを1に初期化し(S110)、等価回路200の第1のRC回路220aに形成される電圧VRC1、第2のRC回路220bに形成される電圧VRC2及び等価回路200に流れる短絡電流(ishort)の初期値として0を割り当て、段階S100で測定した二次電池Bの開放電圧と「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて二次電池Bの充電状態であるSOCを初期化する(S120)。
【0081】
次いで、前記制御部140は、オペレータが設定した釘貫通速度に従って釘貫通部120を制御し、ステージ110上に固定された二次電池Bに向かって釘を下降させて二次電池Bを貫通させる(S130)。
【0082】
次いで、前記制御部140は、貫通時点を基準に予め設定された時間Δtが経過したか否かを判断する(S140)。ここで、Δtは実質的に短絡電流の計算周期に該当し、例えば100ms以下の時間値を有し得る。
【0083】
もし、段階S140でΔtが経過していないと判断されれば、前記制御部140はプロセスの進行を待機する。一方、段階S140でΔtが経過したと判断されれば、前記制御部140は段階S150に進む。
【0084】
段階S150において、前記制御部140は、電圧測定部130を用いて二次電池Bの短絡電圧を測定してメモリ部150に保存し、測定された短絡電圧をVshort値に割り当てる。
【0085】
次いで、前記制御部140は、段階S150で決定されたVshort値、段階S115で決定されたVOCV値、段階S120で初期化されたVRC1及びVRC2値を〔数式2〕に代入して短絡電流(ishort)を決定する(S160)。
【0086】
次いで、前記制御部140は、予め設定された釘貫通試験時間が経過したか否かを判断する(S170)。一例として、前記釘貫通試験時間は数十秒以内に設定できる。
【0087】
もし、段階S170で釘貫通試験時間が経過したと判断されれば、前記制御部140は本発明によるプロセスを終了する。一方、段階S170で釘貫通試験時間が経過していない場合は、前記制御部140は段階S180(図4を参照)に進む。
【0088】
段階S180において、前記制御部140は、段階S120で決定されたVRC1及びVRC2の初期値、段階S160で決定されたishort値を〔数式3〕に代入して、第1のRC回路220aに形成される電圧VRC1及び第2のRC回路220bに形成される電圧VRC2をそれぞれ時間アップデートする。
【0089】
RC1[2]=VRC1[1]e-Δt/R1*C1+R1(1−e-Δt/R1*C1)ishort[1]
RC2[2]=VRC2[1]e-Δt/R2*C2+R2(1−e-Δt/R2*C2)ishort[1]
〔数式3〕
次いで、前記制御部140は、段階S160で決定されたishort値及びS120段階で決定された二次電池Bの充電状態SOCの初期値を〔数式4〕に代入して二次電池Bの充電状態SOCを時間アップデートする(S190)。
【0090】
SOC[2]=SOC[1]+100*ishort[1]△t/Qcell
〔数式4〕
次いで、前記制御部140は、段階S190で決定されたSOCの時間アップデート値及び「充電状態−開放電圧ルックアップテーブル」を用いて時間アップデートされたSOCに対応する開放電圧を決定し、決定された開放電圧を用いてVOCV値を時間アップデートする(S200)。
【0091】
次いで、前記制御部140は時間インデックスkを1ほど増加させ(S210)、プロセスを段階S140に戻す。その後、前記制御部140は時間Δtの経過条件が再び満たされれば、電圧測定部130を用いて二次電池Bの短絡電圧を再び測定してメモリ部150に保存し、Vshort値を新たに測定された短絡電圧値をもって測定アップデートする。
【0092】
次いで、前記制御部140は、段階S180及び段階S200で時間アップデートされたVRC1、VRC2及びVOCV、段階S150で測定アップデートされたVshortを〔数式2〕に再び代入して、現在の時間インデックスを基準にした二次電池Bの短絡電流(ishort)を決定する(S160)。
【0093】
このようにして決定された短絡電流(ishort)は、段階S170で釘貫通試験時間の経過条件が成立しない以上、段階S180、S190及びS200でVRC1、VRC2、SOC及びVOCVを時間アップデートするのに用いられる。
【0094】
上述した〔数式3〕及び〔数式4〕を活用したVRC1、VRC2、SOC及びVOCVの時間アップデート、そして二次電池Bの短絡電圧測定を通じたVshort値の測定アップデートは、釘貫通試験時間が経過するまで時間インデックスkが増加しながら周期的に繰り返され、アップデートされた電圧値、すなわちVRC1、VRC2及びVshortが〔数式2〕に代入される度に二次電池Bの短絡電流(ishort)値が時間アップデートされる。
【0095】
望ましくは、前記制御部140は、段階S150で周期的に測定アップデートされるVshort値をメモリ部150に累積して保存することができる。また、前記制御部140は、オペレータの要請がある場合、前記メモリ部150に保存された複数の短絡電圧(Vshort)データを用いて短絡電圧プロファイルを生成し、生成された短絡電圧プロファイルをディスプレイ部160を通じて視覚的に表示することができる。
【0096】
また、前記制御部140は、段階S160で〔数式2〕を用いて周期的に時間アップデートされる短絡電流(ishort)値をメモリ部150に累積して保存することができる。また、前記制御部140は、オペレータの要請がある場合、前記メモリ部150に保存された複数の短絡電流(ishort)データを用いて短絡電流プロファイルを生成し、生成された短絡電流プロファイルをディスプレイ部160を通じて視覚的に表示することができる。
【0097】
一方、前記制御部140は、選択的に、二次電池Bの貫通地点を基準で短絡抵抗を予測し、その変化をプロファイルとして生成することができる。
【0098】
すなわち、前記制御部140は、段階S150で測定アップデートされた短絡電圧(Vshort)値と段階S160で時間アップデートされた短絡電流(ishort)値を用いて、時間インデックスが増加する度に下記〔数式5〕によって貫通地点の短絡抵抗を決定し、決定された短絡抵抗値をメモリ部150に累積して保存することができる。
【0099】
short=Vshort/ishort 〔数式5〕
また、前記制御部140は、オペレータの要請がある場合、前記メモリ部150に保存された複数の短絡抵抗(Rshort)データを用いて短絡抵抗プロファイルを生成し、生成された短絡抵抗プロファイルをディスプレイ部160を通じて視覚的に表示することができる。
【0100】
また、前記制御部140は、選択的に、二次電池Bの貫通地点で発生する短絡ジュール熱を予測して、その変化をプロファイルとして生成することができる。
【0101】
すなわち、前記制御部140は、段階S150で測定アップデートされた短絡電圧(Vshort)値と段階S160で時間アップデートされた短絡電流(ishort)値を用いて、時間インデックスが増加する度に下記〔数式6〕によって短絡ジュール熱を決定し、決定された短絡ジュール熱値をメモリ部150に累積して保存することができる。
【0102】
short=ishort*Vshort 〔数式6〕
また、前記制御部140は、オペレータの要請がある場合、前記メモリ部150に保存された複数の短絡ジュール熱(Qshort)データを用いて短絡ジュール熱プロファイルを生成し、生成された短絡ジュール熱プロファイルをディスプレイ部160を通じて視覚的に表示することができる。
【0103】
また、前記制御部140は、選択的に、二次電池Bの釘貫通試験時の二次電池の抵抗、すなわち直列抵抗210、第1及び第2のRC回路220a、220bに含まれた抵抗によって発生する抵抗ジュール熱を予測して、その変化をプロファイルとして生成することができる。
【0104】
すなわち、前記制御部140は、段階S150で測定アップデートされた短絡電圧(Vshort)値、段階S160で時間アップデートされた短絡電流(ishort)値、そして段階S200で時間アップデートされたVOCV値を用いて、時間インデックスが増加する度に下記〔数式7〕によって抵抗ジュール熱を決定し、決定された抵抗ジュール熱値をメモリ部150に累積して保存することができる。
【0105】
cell=ishort*|Vshort−VOCV| 〔数式7〕
一方、前記制御部140によって行われる上述した制御ロジッグは少なくとも1つが組み合わせられ、組み合わせられた制御ロジッグはコンピューター可読のコード体系に作成されてコンピューター可読の記録媒体に書き込まれ得る。前記記録媒体はコンピューターに含まれたプロセッサによってアクセス可能なものであれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記記録媒体は、ROM、RAM、レジスタ、CD−ROM、磁気テープ、ハードディスク、フロッピーディスク及び光データ記録装置を含む群から選択された少なくとも1つを含む。また、前記コード体系はキャリア信号で変調されて特定時点に通信キャリアに含まれ得、ネットワークで連結されたコンピューターに分散して保存されて実行され得る。また、前記組み合わせられた制御ロジッグを具現するための機能的なプログラム、コード及びコードセグメントは本発明が属する技術分野のプログラマーによって容易に推論できる。
【0106】
<実験例>
以下、実験例を挙げて本発明の効果を説明する。本明細書で説明する実験例は本発明の理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実験例によって限定されないことは自明である。
【0107】
まず、容量が37Ah、充電状態が80%であるパウチ型リチウムポリマー二次電池を用意した。その後、用意した二次電池を本発明による釘貫通試験装置のステージにロードしてクランプ手段で固定した。そして、二次電池の正極と負極を電圧測定部(電圧計)に連結した。その後、断面が円形であって、直径が6mmである鋼鉄材質の釘を釘貫通部に装着し、20mm/sの速度で下降させて二次電池を貫通させてその状態を20秒間維持した。
【0108】
釘貫通試験が行われる間、前記電圧計を用いて100ms周期で二次電池の短絡電圧(Vshort)を繰り返して測定してメモリ部150に累積保存し、短絡電圧が測定される度に図3及び図4に示されたアルゴリズムを実行して、時間インデックスが増加する度に二次電池の短絡電流(ishort)、短絡抵抗(Rshort)、短絡ジュール熱(Qshort)及び抵抗ジュール熱(Qcell)を決定してそれぞれのデータをメモリ部に累積保存した。本実験例において、各パラメータの計算周期は短絡電圧の測定周期と実質的に同様に設定した。
【0109】
本実験例で使用された等価回路において、直列抵抗値は0.00102Ωにチューニングした。また、第1のRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値とキャパシタンス値は、それぞれ0.0003Ωと667Fにそれぞれチューニングした。また、第2のRC回路に含まれた抵抗とコンデンサの抵抗値とキャパシタンス値は、それぞれ0.0010Ωと2000Fにそれぞれチューニングした。
【0110】
<実験結果>
図5は、釘が二次電池を貫通した後、10秒間測定した短絡電圧(Vshort)の経時的な変化を示したプロファイル(実線)と、等価回路を用いて10秒間予測した短絡電流(ishort)の経時的な変化を示したプロファイル(点線)を示したグラフである。
【0111】
図5を参照すれば、釘が二次電池を貫通した1秒後に短絡電流(ishort)が急激に増加してから、2秒後に安定化することが確認できる。このような短絡電流(ishort)の変化様相は短絡電圧(Vshort)の変化様相と逆である。すなわち、短絡電圧(Vshort)は1秒後に急激に減少してから2秒後に安定化するが、短絡電圧(Vshort)が急激に減少する区間は短絡電流(ishort)が急激に増加する区間と一致する。このような実験結果は、等価回路を用いて予測した短絡電流(ishort)が実際釘が貫通した部位で流れる短絡電流をよく模写できることを示している。
【0112】
図6は10秒間予測した短絡抵抗(Rshort)の経時的な変化を示した短絡抵抗プロファイルであり、図7は10秒間予測した短絡ジュール熱(Qshort)の経時的な変化を示した短絡ジュール熱プロファイルであり、図8は10秒間予測した抵抗ジュール熱(Qcell)の経時的な変化を示した抵抗ジュール熱プロファイルである。
【0113】
図6図8を参照すれば、短絡抵抗(Rshort)は短絡電流(ishort)が急激に増加する時間区間で急激に減少するパターンを見せる。また、短絡ジュール熱(Qshort)と抵抗ジュール熱(Qcell)も短絡電流(ishort)が急激に増加する時間区間で急激に増加することが確認できる。さらに、抵抗ジュール熱(Qcell)は短絡ジュール熱(Qshort)と比べて1/100水準に小さいことが確認できる。
【0114】
このような実験結果は、二次電池が尖った物体によって貫通されたとき、貫通地点の熱的挙動と熱の発生原因、そして熱量の変化様相を定量的に究明し、さらには二次電池の貫通事故に備えた冷却メカニズムを開発するのに本発明による釘貫通試験装置が有用に活用できることを示唆している。
【0115】
本出願の多様な実施様態の説明において、「〜部」と称した構成要素は物理的に区分される要素ではなく、機能的に区分される要素であると理解せねばならない。したがって、それぞれの構成要素は他の構成要素と選択的に統合されるか、又は、それぞれの構成要素が制御ロジッグの効率的な実行のためにサブ構成要素に分割され得る。しかし、構成要素が統合または分割されても機能の同一性が認められれば、統合または分割された構成要素も本発明の範囲内に属すると解釈されねばならないことは当業者にとって自明である。
【0116】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、二次電池が釘によって貫通されたとき、電池内部で発生する短絡電流の大きさの変化を定量的に究明することができる。また、予測された短絡電流を用いて釘が貫通した地点の短絡抵抗または短絡ジュール熱の変化、若しくは二次電池の抵抗から発生する抵抗ジュール熱の変化も定量的に計算することができる。
【0118】
したがって、本発明は、二次電池が尖った物体によって貫通されたとき、貫通地点の熱的挙動と熱の発生原因、そして熱量の変化様相を定量的に究明し、さらに二次電池の貫通事故に備えた冷却メカニズムを開発するのに有用に活用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8