(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621908
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】車両用バッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20191209BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20191209BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20191209BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20191209BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20191209BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20191209BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20191209BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M2/10 E
B60L3/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-503167(P2018-503167)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公表番号】特表2018-523893(P2018-523893A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】KR2017001549
(87)【国際公開番号】WO2017150818
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0025586
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ギ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】クァン・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・クォン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ユル・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム・ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】グン・ジョン・キム
【審査官】
佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0017421(US,A1)
【文献】
特開2008−166169(JP,A)
【文献】
特開2013−237355(JP,A)
【文献】
特開2011−173543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
B60L 3/00
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトランクルームに設けられ、複数の電池セルと電解質で設けられたバッテリーパック;
冷却水を循環させて前記車両に設けられたエンジンを冷却する冷却装置;及び、
前記バッテリーパックが設定温度以上上昇すれば、前記冷却装置の冷却水を前記バッテリーパックの内部に注入し、前記複数の電池セルを前記冷却水に含浸させることで前記バッテリーパックを冷却する安全装置を含み、
前記安全装置は、前記冷却装置の冷却水を前記バッテリーパックの内部に注入する注入管と、前記注入管を開閉する開閉バルブと、前記バッテリーパックの温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーによって検出された前記バッテリーパックの温度が設定温度以上であれば、前記冷却装置の冷却水が前記バッテリーパックの内部に注入されるように前記開閉バルブを開放させる制御部と、を含み、
前記注入管は、一端が冷却装置に連結され、他端がバッテリーパックに連結され、
前記注入管の他端が連結された前記バッテリーパックには電気伝導度を高める物質が備えられ、前記注入管を通過した冷却水が電気伝導度を高める物質を通過した後でバッテリーパックの内部に注入されるようになっており、
前記電気伝導度を高める物質は、前記注入管の他端全体をカバーできるよう、前記注入管の他端の直径より大きく形成されており、
前記バッテリーパックの内壁には注入管の他端をカバーする、伝導度を高める物質を固定する固定部材が備えられ、前記固定部材は、前記電気伝導度を高める物質の側面を支持する側面部と、前記電気伝導度を高める物質の前面を支持する前面部とで形成される「┐」状を有することを特徴とする車両用バッテリーシステム。
【請求項2】
前記電気伝導度を高める物質は、塩であることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリーシステム。
【請求項3】
前記電気伝導度を高める物質は、注入管が位置した前記バッテリーパックの内部に微細な孔が形成されている不織布に内蔵された状態で備えられることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリーシステム。
【請求項4】
前記バッテリーパックには、前記バッテリーパックの内部の空気を外部へ放出するチェックバルブが備えられることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年3月3日付韓国特許出願第10−2016−0025586号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、車両用バッテリーシステムに関し、特に車両のエンジンを冷却する冷却水を介してバッテリーパックの発火を防止して安全性を高めた車両用バッテリーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、二次電池(secondary battery)とは、充電が不可能な一次電池とは異なって、充電及び放電が可能な電池のことであり、かかる二次電池は、フォン、ノートパソコン、カムコーダ及び電気自動車などに広く用いられている。そのうち電気自動車に用いられる二次電池は、二つまたはそれ以上の電池セルを並列または直列に連結した電池パックが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に係る車両用バッテリーパックは、車両の衝突事故などのような致命的な外部衝撃によって焼損が発生する場合、火事及び爆発が発生し得る。また、バッテリーパックの回路の問題でショートが発生する場合、火事及び爆発が発生し得る。
【0005】
本発明は、前記のような問題を解決するために発明されたものであって、本発明の目的は、外部衝撃またはショートによってバッテリーパックに問題が発生する場合、車両のエンジンを冷却する冷却水をバッテリーパックに注入して鎮めることでバッテリーパックの爆発を防止することができ、搭乗客の安全性を高めることができる車両用バッテリーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような目的を達成するための本発明に係る車両用バッテリーシステムは、車両のトランクルームに設けられ、複数の電池セルと電解質で設けられたバッテリーパック;冷却水を循環させて前記車両に設けられたエンジンを冷却する冷却装置;及び、前記バッテリーパックが設定温度以上上昇すれば、前記冷却装置の冷却水を前記バッテリーパックの内部に注入し、前記複数の電池セルと前記冷却水の含浸を介して前記バッテリーパックを冷却する安全装置を含むことができる。
【0007】
前記安全装置は、前記冷却装置の冷却水を前記バッテリーパックの内部に注入する注入管と、前記注入管を開閉する開閉バルブと、前記バッテリーパックの温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーによって検出された前記バッテリーパックの温度が設定温度以上であれば、前記冷却装置の冷却水が前記バッテリーパックの内部に注入されるように前記開閉バルブを開放させる制御部と、を含むことができる。
【0008】
前記バッテリーパックの内部には、前記バッテリーパックに注入される冷却水に溶融される電気伝導度を高める物質が含まれてよい。
【0009】
前記電気伝導度を高める物質は、塩であってよい。
【0010】
前記電気伝導度を高める物質は、前記注入管が位置した前記バッテリーパックの内部に微細な孔が形成されている不織布に内蔵された状態で備えられてよい。
【0011】
前記バッテリーパックには、前記バッテリーパックの内部の空気を外部へ放出するチェックバルブが備えられてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両に備えられたエンジンを冷却する冷却水を利用してバッテリーパックを冷却することにより、外部または内部の要因によるバッテリーパックの爆発を防止することができ、特に車両の冷却水を利用することから製作費用を大幅に節減することができる。
【0013】
また、本発明は、バッテリーパックの内部に電気伝導度を高めることができる物質を含むことにより、冷却水とともに電気伝導度を高めることができる物質によってバッテリーパックを速やかに放電させることができ、よって、バッテリーパックによって今後発生し得る事故を予め防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る車両用バッテリーパックシステムを示した図である。
【
図2】本発明に係る車両用バッテリーパックシステムを示した拡大図である。
【
図3】本発明に係る電気伝導度を高める物質が含まれている車両用バッテリーパックシステムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるよう、本発明の実施形態を詳しく説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図において、本発明を明確に説明するため、説明と係わりのない部分は省略し、明細書全体に亘って類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0016】
本発明に係る車両用バッテリーシステムは、
図1に示す通り、車両10のトランクルーム11に設けられて複数の電池セル111と電解質112で設けられたバッテリーパック110、冷却水を循環させて車両10に設けられたエンジン12を冷却する冷却装置120、及びバッテリーパック110が設定温度以上上昇すれば、冷却装置120の冷却水をバッテリーパック110の内部に注入し、複数の電池セル111と冷却水の含浸を介してバッテリーパック110を冷却する安全装置130を含む。
【0017】
一方、本発明に係る車両用バッテリーシステムは、バッテリーパック110で発生した電気エネルギーを利用してエンジン12を駆動させるか、または車両の照明装置などの電子機器を作動させる。ここで、エンジン12の駆動時に高熱が発生するところ、このエンジン12の高熱は、冷却装置120の冷却水がエンジン12の周囲を循環しながらエンジン12を冷却する。
【0018】
ここで、車両10の衝突事故の際に車両10の座屈に伴ってバッテリーパック110に変形が発生することがあり、このとき、バッテリーパック110に含まれている複数の電池セル111に繋がれた回路が短絡されるか、またはショートによる発火の発生で車両10が爆発する事故が発生し得る。
【0019】
このような問題点を解決するため、本発明に係る車両用バッテリーシステムは、バッテリーパック110が設定温度以上上昇すれば、冷却装置120の冷却水をバッテリーパック110の内部に注入してバッテリーパック110のショート及び発火を抑える安全装置130を含み、この安全装置130を介して車両10の爆発事故を予め防止する。
【0020】
つまり、本発明に係る車両用バッテリーシステムに含まれている安全装置130は、冷却装置120とバッテリーパック110を連結して冷却装置120の冷却水をバッテリーパック110の内部に注入する注入管131と、注入管131を開閉する開閉バルブ132と、バッテリーパック110の温度を検出する温度センサー133と、温度センサー133によって検出されたバッテリーパック110の温度が設定温度以上であれば、開閉バルブ132を開放させて冷却装置120の冷却水をバッテリーパック110の内部に注入させる制御部134とを含む。ここで、前記設定温度は50℃〜100℃であってよい。
【0021】
一方、安全装置130は、バッテリーパック110の内部の空気を外部へ放出するとともに、外部の空気がバッテリーパック110の内部に流入されないように遮断するチェックバルブ150を含む。
【0022】
つまり、チェックバルブ150は、バッテリーパック110の内部に冷却水が注入されると、バッテリーパックの内部の空気がチェックバルブ150を介して外部へ排出され、よって、バッテリーパック110の内部に冷却水をより速やかに注入することができる。
【0023】
このような本発明に係る車両用バッテリーシステムに含まれている安全装置130は、車両の衝突によってバッテリーパック110の温度が上昇すれば、温度センサー133がこれを検出して制御部134へ伝送し、制御部134は、温度センサー133から検出されたバッテリーパック110の温度と設定された温度とを比べる。このとき、バッテリーパック110の温度が設定された温度以上であれば、制御部134はバッテリーパック110に問題が発生したものと判断して開閉バルブ132を開放し、よって、冷却装置120の冷却水が注入管131を介してバッテリーパック110の内部に注入され、バッテリーパック110に注入された冷却水は、電解質112と混合されるとともに複数の電池セル111に含浸されるに伴って冷却及び発火を抑える。特に、バッテリーパック110の内部の回路まで冷却水に浸漬されることによってショートによる発火を防止する。
【0024】
つまり、冷却水がバッテリーパック110に注入されながらバッテリーパック110の温度を設定温度以下に冷却させるようになり、よって、バッテリーパック及び車両の爆発を防止することができる。
【0025】
ここで、バッテリーパック110の内部の空気はチェックバルブ150へ排出されることによって冷却水を一層速やかに注入することができる。
【0026】
一方、衝突事故が発生した車両を長時間捨ておく場合、バッテリーパック110の内部に注入された冷却水は、バッテリーパック110の外部に引き出されながら除去される。このとき、バッテリーパック110の内部に注入された冷却水の除去に伴って、バッテリーパック110の電池セルに残っているエネルギーによりショートが再度発生し得る。
【0027】
これを防止するため、本発明に係る車両用バッテリーシステムは、電池セルを冷却するとともに、電池セルに残っているエネルギーを速やかに消費させ、今後発生し得る事故を予め防止することができる。
【0028】
つまり、本発明に係る車両用バッテリーシステムは、バッテリーパック110の内部に注入される冷却水に溶融されるとともに電解質112の性質を最大化するための電気伝導度を高める物質140が含まれ、電気伝導度を高める物質140は、注入管131が位置したバッテリーパック110に備えられ、注入管131を介してバッテリーパック110に注入される冷却水に漸次溶融され、冷却水とともに電解質と混合されながら電解質112の性質を最大化させ、よって、電池セル111のエネルギーを速やかに消費させて放電させる。ここで電気伝導度を高める物質140は塩であってよい。
【0029】
一方、電気伝導度を高める物質140は、微細な孔が形成されている不織布141に内蔵された状態でバッテリーパック110に備えられ、よって、電気伝導度を高める物質140の保管性を高めることができる。
【0030】
一方、バッテリーパック110には、内部に発生したガスを外部へ放出するチェックバルブ150が備えられ、チェックバルブ150は、バッテリーパック110の内部に発生したガスを外部へ放出させて爆発事故を予め防止し、特に外部の空気及び異物は流入されないので、バッテリーパック110の内部の汚染を防止することができる。
【0031】
したがって、本発明に係る車両用バッテリーシステムは、車両のエンジン12を冷却する冷却装置120の冷却水をバッテリーパック110の内部に直接供給してバッテリーパック110を冷却することにより、バッテリーパック110による事故を予め防止することができる。
【0032】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導き出される多様な実施形態が可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 車両
11 トランクルーム
12 エンジン
110 バッテリーパック
111 電池セル
112 電解質
120 冷却装置
130 安全装置
131 注入管
132 開閉バルブ
133 温度センサー
134 制御部
140 物質
141 不織布
150 チェックバルブ