(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という)について説明する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
<ガス濃度測定装置>
本実施形態のガス濃度測定装置は、発光層を有するPIN構造を含む光源と、活性層を有するPIN構造を含む赤外線センサと、測定対象ガスによる赤外線の吸収が生じる波長域の赤外線を透過する光学フィルタと、赤外線センサの温度、又は、赤外線センサの温度と相関する温度を測定し、温度情報として出力する温度測定部と、赤外線センサの出力及び前記温度情報が入力される演算部と、を備えたガス濃度測定装置であって、発光層はAl
XIn
1−XSb(0.000<X<0.045)であり、活性層はAl
YIn
1−YSb(0.000<Y<0.045)であり、演算部は、赤外線センサの出力を変数とするn次多項式(nは1以上の整数)である濃度算出式に、測定時の温度情報を適用して測定対象ガスの濃度を算出するガス濃度測定装置である。
【0012】
本実施形態に係るガス濃度測定装置によれば、赤外線センサの出力と濃度算出式の両方に対して温度補正をする必要がなく、従来と比べてより簡易に測定ガスの濃度の温度補正が可能かつ高精度なガス濃度測定装置を実現することができる。
また、本実施形態のガス濃度測定装置において、測定対象ガスが二酸化炭素であってもよい。本発明の光源及び赤外線センサは、二酸化炭素ガスの光吸収のピークである4.26μm付近での発光強度及び受光感度に優れるため、高いS/Nで二酸化炭素による吸収の影響を検知することができ、高精度にガス濃度を測定することが可能となる。
【0013】
<光源>
本実施形態に係るガス濃度測定装置における光源は、発光層を有するPIN構造を含み、発光層はAl
XIn
1−XSb(0.000<X<0.045)である。光源は、測定対象ガスによって吸収される波長を含む光を出力する。ここで、発光層のAl
XIn
1−XSbのAl組成Xは以下のように測定する。
【0014】
(発光層のAl
XIn
1−XSbのAl組成Xの測定方法)
発光層のAl
XIn
1−XSbのAl組成Xは、X線回折(XRD:X−ray Diffaction)法による2θ−ωスキャンを行うことにより測定することができる。
具体的には、基板の表面の面方位に対応する面の面指数の2θ−ωスキャンにおけるピーク位置から発光層のAl
XIn
1−XSbの格子定数を求めることができる。
ここで基板が所定の面方位に精度良く切断された基板(ジャスト基板)の場合には、上記のようにジャスト基板の面方位に対応する面の面指数の2θ−ωスキャンにおけるピーク位置から格子定数を求めることができる。
【0015】
また、基板が所定の面方位からオフ角を付与して切断された基板(オフ基板)の場合には、オフ基板の表面からオフ角の分だけずらした角度からX線を入射させて2θ−ωスキャンを行うことで、そこから発光層のAl
XIn
1−XSbの格子定数を求めることができる。
ここで発光層のAl
XIn
1−XSbの格子定数からAl組成Xを求める際には、Vegard則を用いて混晶組成比の決定することができる。Vegard則は具体的には以下の式(1)で表される。
【0017】
ここでa
AはAlSb、a
BはInSbの格子定数であり、a
ABは上記のX線回折により求まる発光層のAl
XIn
1−XSbの格子定数である。ここで、a
Aやa
Bは非特許文献1の値(a
A=0.61355、a
B=0.647877)を使用することができる。これにより式(1)からAl組成Xの値を求めることができる。
ここで、光源の発光層のAl組成Xが0.000<X<0.045の範囲にあることで、二酸化炭素ガスの光吸収のピークである4.26μm付近に強い発光強度を有し、且つ同時に、簡易に測定ガスの濃度の温度補正が可能なガス濃度測定装置に好適な光源を得ることが可能となる。またここで、光源の発光層のAl組成Xの上限値としては、X≦0.0425が好ましく、X≦0.040がより好ましく、X≦0.025がさらに好ましい。またここで、光源の発光層のAl組成Xの下限値としては、0.005≦Xが好ましく、0.010≦Xがより好ましい。
【0018】
また、光源のPIN構造におけるn層及びp層としては、In、Al、Gaからなる群より選択される少なくとも一つのIII族原子と、Sb、Asからなる群より選択される少なくとも一つのV族原子からなる化合物半導体が好ましく、InSb或いはAlInSbであることがさらに好ましい。
これにより、二酸化炭素ガスの光吸収のピークである4.26μm付近に適した発光特性を持つ光源を実現することができる。光源のダイオードの構造はPINのみに限らず、キャリアの拡散防止及び/若しくはキャリアの閉じ込め効果を持たせるために、発光層よりバンドギャップの大きい層をさらに設けても良い。例えばP層/バリア層/I層/バリア層/N層という構造を持っても良い。この場合、センサ側のS/N比が向上されつつ、発光特性も改善され、システムのS/Nが向上・高精度のガス濃度測定装置が実現できるため、好ましい場合はある。
【0019】
<赤外線センサ>
本実施形態に係るガス濃度測定装置における赤外線センサは、活性層を有するPIN構造を含み、活性層はAl
YIn
1−YSb(0.000<Y<0.045)である。赤外線センサは、受光した赤外線に応じた電気信号を出力する。ここで、活性層のAl
YIn
1−YSbのAl組成Yの測定方法は、光源における発光層のAl
XIn
1−XSbのAl組成Xの測定方法と同じ手法を用いる。
ここで、赤外線センサの活性層のAl組成が0.000<Y<0.045の範囲にあることで、二酸化炭素ガスの光吸収のピークである4.26μm付近に強い受光感度を有し、且つ同時に、簡易に測定ガスの濃度の温度補正が可能なガス濃度測定装置に好適な赤外線センサを得ることが可能となる。またここで、赤外線センサの活性層のAl組成Yの上限値としては、Y≦0.0425が好ましく、Y≦0.040がより好ましく、Y≦0.025がさらに好ましい。またここで、赤外線センサの活性層のAl組成Yの下限値としては、0.005≦Yが好ましく、0.010≦Yがより好ましい。
【0020】
また、赤外線センサのPIN構造におけるn層及びp層としては、In、Al、Gaからなる群より選択される少なくとも一つのIII族原子と、Sb、Asからなる群より選択される少なくとも一つのV族原子からなる化合物半導体が好ましく、InSb或いはAlInSbであることがさらに好ましい。
これにより、二酸化炭素ガスの光吸収のピークである4.26μm付近の検出に適した赤外線センサを実現することができる。赤外線センサのダイオードの構造はPINのみに限らず、キャリアの拡散防止及び/若しくはキャリアの閉じ込め効果を持たせるために、活性層よりバンドギャップの大きい層をさらに設けても良い。例えばP層/バリア層/I層/バリア層/N層という構造を持っても良い。この場合、センサ側のS/N比が向上されつつ、発光特性も改善され、システムのS/Nが向上・高精度のガス濃度測定装置が実現できるため、好ましい場合はある。
【0021】
<光学フィルタ>
本実施形態に係るガス濃度測定装置において、光学フィルタは、測定対象ガスによる赤外線の吸収が生じる波長域の赤外線を透過するものである。光学フィルタは、異なる屈折率の材料の多層膜からなる干渉フィルタであってもよい。光学フィルタの具体的な例としては透明な基板上に、屈折率の異なる材料(例えば、Ge、ZnSe、ZnS、SiO2、等)を交互に積層した干渉構造が利用できる。波長によって、入射光が干渉現象によって、強めあったり、弱めあったりし、特定の光のみ強く反射させることができる。これらの積層構造は光学フィルタの基板の両面に形成しても良いし、片面でも良い。この基板の具体的な例としてはGaAsやSiやサファイアが挙げられる。干渉フィルタの具体的な例としては、透過率の高いSi基板の両面に、Ge及びZnSの薄膜を交互に、数周期〜数十周期を積層した干渉フィルタが挙げられる。このような構造を利用することによって、一部の波長のみ強く(例えば80%以上)の反射率が実現でき、その他の波長を透過するような構造が実現できる。
【0022】
また、検出対象ガスが二酸化炭素である場合、光学フィルタの中心波長は4.2μm<CWL<4.4μmの関係を満たすことが好ましい。ここで光学フィルタの中心波長CWLとは、光学フィルタが透過する波長帯の中心波長を意味する。ここでフィルタのCWLを定義したが、ガスセルの設計によって、フィルタに透過する光の入射角度が垂直でない場合もあれば、垂直である場合もある。一方、光学フィルタフィルタの構造や材質や設計によって、入射角に依存してCWLが異なることもある。言うまでもないが、本発明で定義するCWLとはガスセルの光路設計で決められる入射角を考慮した透過特性の中心波長を言う。例えば、入射角が垂直に対して30度の場合、CWLは30度に於ける中心波長を言う。
この光学フィルタ、光源及び赤外線センサを用いることで、赤外線センサの出力と濃度算出式の両方に対して温度補正をする必要がなく、従来と比べてより簡易に測定ガスの濃度の温度補正が可能かつ高精度なガス濃度測定装置の提供することができる。
【0023】
<温度測定部>
本実施形態に係るガス濃度測定装置において、温度測定部は、赤外線センサの温度、又は、赤外線センサの温度と相関する温度を測定し、温度情報として出力する。温度測定部は赤外線センサの温度、又は、前記赤外線センサの温度と相関する温度を測定可能なものであれば特に限定されない。具体的には、サーミスタや白金抵抗体を利用することができる。
また、温度測定部が出力する温度情報は、温度計によって測定された温度情報であってもよい。温度計を用いることで、測定対象ガスの温度を直接測定することができる。赤外線センサの温度と測定対象ガスの温度は相関を持つと考えられるので、温度計の出力する温度情報から赤外線センサの温度を推定し、それにより測定ガスの濃度の温度補正が可能となる。
【0024】
また、温度測定部が出力する温度情報は、赤外線センサ、若しくは光源の抵抗値から算出された温度情報であってもよい。赤外線センサの抵抗は、温度によって変化する。特に活性層にInまたはSbを含むような半導体材料は、一般的に温度による抵抗の変化が大きいため、微小な温度変化であってもモニタできる。そのため、赤外線センサの抵抗値から算出された温度情報を用いることで、高精度に温度を測定することができる。赤外線センサの抵抗は例えば赤外線センサに電流を流すまたは電圧を印可することで測定することができる。赤外線センサの抵抗値から算出された温度情報を用いることで、測定ガスの濃度の温度補正が可能となる。
【0025】
<演算部>
本実施形態に係るガス濃度測定装置における演算部は、赤外線センサの出力及び温度情報が入力され、赤外線センサの出力を変数とするn次多項式(nは1以上の整数)である濃度算出式に、測定時の温度情報を適用して測定対象ガスの濃度を算出するものである。演算部は、ガス濃度算出における演算が可能なものであれば特に制限されず、例えば、アナログIC、ディジタルIC及びCPU(Central Processing Unit)等が好適である。演算部には、光源を制御するための機能が含まれ、いわゆるアナログ回路及びディジタル回路の混載回路であっても構わない。
【0026】
用途によっては、光源を制御する機能と、赤外線センサの出力を増幅するアンプと、赤外線センサの出力及び温度情報を利用し3次式演算ロジック若しくはアナログ回路のみで演算部が構成されても良い。この場合、複雑なCPUを有しない、高精度且つ簡易的な小型なガスセンサが実現できるので省スペース及び低消費電力の観点から好ましい場合はある。
また、本実施形態に係るガス濃度測定装置における演算部は、温度情報に基づいて赤外線センサの出力を補正し、濃度算出式に、補正した赤外線センサの出力を代入することで測定対象ガスの濃度を算出してもよい。温度情報に基づいて赤外線センサの出力を補正することで、ガス濃度測定装置の周囲及び内部の温度変動による赤外線センサの出力への影響を低減させ、より高精度にガス濃度を算出することが可能となる。
【0027】
<濃度算出式>
本実施形態に係るガス濃度測定装置における濃度算出式は、下記式(2)を用いてもよい。
c(Ip,T)=a
n(Ip/g(T))
n+a
n−1(Ip/g(T))
n−1+・・・+a
1(Ip/g(T))+a
0
g(T)=b
mT
m+b
m−1T
m−1+・・・+b
1T+b
0 ・・・式(2)
式中、cは測定対象ガスの濃度、Ipは赤外線センサの出力、a
nは濃度算出式のn次の係数、b
mは赤外線センサの出力の補正式g(T)のm次の係数、Tは温度測定部の出力する温度情報である。
式(2)では、a
n(Ip/g(T))
nを示したが、{Ip/g(T)}の項は{Ip×h(T)}でも、{Ip+k(T)でも、{Ip−w(T)}でも良い。ここで、h(T)、k(T)及びw(T)は、温度測定部の出力する温度情報Tを変数とする任意の関数を意味する。設計者は演算部の精度を考慮して、もっとも効率の良い(少ない)補正方法を選定することができる。
【0028】
ここで、式(2)の次数mまたはnは、演算部の処理能力や記憶能力等を考慮して適宜決定することができる。また、式(2)の濃度算出式のn次の係数a
nは、予め求めた同一の系における基準温度(例えば、20℃)における代表的な赤外線センサの出力と測定対象ガス濃度との関係式(3)のn次の係数を用いることができる。
c’(Ip)=a
n(Ip)
n+a
n−1(Ip)
n−1+・・・・
+a
1(Ip)+a
0 ・・・式(3)
また、補正式のm次の係数b
mは、複数の温度における赤外線センサの出力を用いて式(3)から算出された測定対象ガスの濃度と実際の測定対象ガスの濃度とのずれから求めることができる。ただし、このずれを求める際に測定対象ガスの濃度を変える必要はないため、従来と比べてより簡易に測定ガスの濃度の温度補正が可能となる。
【0029】
<ガスセル>
本実施形態のガス濃度測定装置において、ガスセルは被検出ガスを導入することが可能なものであれば特に制限されない。すなわち、被検出ガスの導入口を有していれば良い。被検出ガスのリアルタイム検出の精度向上の観点から、前記導入口に加えて、導出口を備えていることが好ましい。ガスセルを構成する材料は特に制限されない。例えば、金属、ガラス、セラミックス、ステンレス等の材料が挙げられるがこの限りではない。検出感度向上の観点から、第1の光源から出力された光の吸収係数が小さく、反射率が高い材料であることが好ましい。具体的にはアルミニウムからなる金属筐体や、アルミニウム、金、銀含む合金、もしくはこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体、が好ましい。信頼性・経時変化の観点から金または金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体が好ましい。
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<実施形態>
図1は、本発明に係るガス濃度測定装置の実施形態を説明するための構成図である。
本実施形態のガス濃度測定装置は、ガスセル4と、ガスセル4中に配置される、発光層を有するPIN構造を含む光源1と、活性層を有するPIN構造を含み、光源1からの光を受光する赤外線センサ2と、測定対象ガスによる赤外線の吸収が生じる波長域の赤外線を透過する光学フィルタ3と、赤外線センサ2の温度、又は、赤外線センサ2の温度と相関する温度を測定し、温度情報として出力する温度測定部5と、赤外線センサ2からの出力が入力される演算部8(
図2参照)と、を備えている。
【0031】
なおここでは参考のため、ガスセルを明示しているが、本発明においてガスセルは必須の構成ではなく、ガスセルの無い形態でも試験容器内等にガス濃度測定装置を配置することで下記と同様のガス濃度の測定を行うことが可能である。
光源1の発光層は、Al
XIn
1−XSb(0.000<X<0.045)であり、赤外線センサ2の活性層は、Al
YIn
1−YSb(0.000<Y<0.045)である。演算部8は、赤外線センサ2の出力を変数とするn次多項式である濃度算出式に、測定時の温度情報を適用して測定対象ガスの濃度を算出する。
【0032】
つまり、
図1に示すように、本実施形態のガス濃度測定装置は、ガスセル4内に光源1、赤外線センサ2、光学フィルタ4及び温度測定部5を備えている。光源より出射された光は、光学フィルタ4を透過して赤外線センサ2に届く。
光学フィルタ4の中心波長CWLは、4.2μm<CWL<4.4μmの関係を満たしている。
図2は、
図1に示したガス濃度測定装置おける演算部を説明するための構成図である。
図2に示すように、演算部8内には信号処理部6及び濃度算出部7を備えている。
赤外線センサ2から得られた信号Ip及び温度測定部5から得られた温度情報Tを元に、信号処理部6で補正式g(T)を用いて赤外線センサ2から得られた信号Ipを補正する。信号処理部6で得られたIp/g(T)を、濃度算出部7において濃度算出式に代入することで、検出対象ガスである二酸化炭素の濃度を算出する。
次に、本実施形態のガス濃度測定装置の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0033】
光源及び赤外線センサとして、発光層及び活性層がそれぞれAl
0.025In
0.975SbのPIN構造からなるダイオードを、光学フィルタとしてCWLが4.26μm(垂直入射に対しての中心波長)の光学フィルタを用意した。
濃度算出式において、演算部の処理能力や記憶能力等を考慮して濃度算出式(式(2))の次数m及びnをそれぞれ3次とした。また、この系の基準濃度算出式(式(3))の次数も同様に3次とし、二酸化炭素の濃度を固定した状態で温度を変えて、g(T)の係数を求めた。
図3は、実施例1におけるCO
2濃度と誤差の関係を示す図である。
濃度3000ppmの二酸化炭素をガスセル中に充填した後、温度を0℃から50℃まで変えながら、赤外線センサの出力と温度計から得られた温度情報を元に濃度算出式から二酸化炭素濃度を算出した。その結果、算出された濃度と実際の濃度との最大誤差は100ppmであった。
【実施例2】
【0034】
光源及び赤外線センサとして、発光層及び活性層がそれぞれAl
0.010In
0.990SbのPIN構造からなるダイオードを、光学フィルタとしてCWLが4.26μmの光学フィルタを用意した。
濃度算出式において、演算部の処理能力や記憶能力等を考慮して濃度算出式(式(2))の次数m及びnをそれぞれ3次とした。また、この系の基準濃度算出式(式(3))の次数も同様に3次とし、二酸化炭素の濃度を固定した状態で温度を変えて、g(T)の係数を求めた。
図4は、実施例2におけるCO
2濃度と誤差の関係を示す図である。
濃度3000ppmの二酸化炭素をガスセル中に充填した後、温度を0℃から50℃まで変えながら、赤外線センサの出力と温度計から得られた温度情報を元に濃度算出式から二酸化炭素濃度を算出した。その結果、算出された濃度と実際の濃度との最大誤差は107ppmであった。
【実施例3】
【0035】
光源及び赤外線センサとして、発光層及び活性層がAl
0.040In
0.960SbのPIN構造からなるダイオードを、光学フィルタとしてCWLが4.26μmの光学フィルタを用意した。
濃度算出式において、演算部の処理能力や記憶能力等を考慮して濃度算出式(式(2))の次数m及びnをそれぞれ3次とした。また、この系の基準濃度算出式(式(3))の次数も同様に3次とし、二酸化炭素の濃度を固定した状態で温度を変えて、g(T)の係数を求めた。
図5は、実施例3におけるCO
2濃度と誤差の関係を示す図である。
濃度3000ppmの二酸化炭素をガスセル中に充填した後、温度を0℃から50℃まで変えながら、赤外線センサの出力と温度計から得られた温度情報を元に濃度算出式から二酸化炭素濃度を算出した。その結果、算出された濃度と実際の濃度との最大誤差は133ppmであった。
【0036】
[比較例1]
光源及び赤外線センサとして、発光層及び活性層がAl
0.045In
0.955SbのPIN構造からなるダイオードを、光学フィルタとしてCWLが4.26μm(垂直入射に対しての中心波長)の光学フィルタを用意した。
図6は、比較例1におけるCO
2濃度と誤差の関係を示す図である。
濃度算出式は実施例と同様に求めた。濃度3000ppmの二酸化炭素をガスセル中に充填した後、温度を0℃から50℃まで変えながら、赤外線センサの出力と温度計から得られた温度情報を元に濃度算出式から二酸化炭素濃度を算出した。その結果、算出された濃度と実際の濃度との最大誤差は450ppmであった。
【0037】
[比較例2]
光源及び赤外線センサとして、発光層及び活性層がAl
0.050In
0.950SbのPIN構造からなるダイオードを、光学フィルタとしてCWLが4.26μmの光学フィルタを用意した。
濃度算出式において、演算部の処理能力や記憶能力等を考慮して濃度算出式(式(2))の次数m及びnをそれぞれ3次とした。また、この系の基準濃度算出式(式(3))の次数も同様に3次とし、二酸化炭素の濃度を固定した状態で温度を変えて、g(T)の係数を求めた。
【0038】
図7は、比較例2におけるCO
2濃度と誤差の関係を示す図である。
濃度3000ppmの二酸化炭素をガスセル中に充填した後、温度を0℃から50℃まで変えながら、赤外線センサの出力と温度計から得られた温度情報を元に濃度算出式から二酸化炭素濃度を算出した。その結果、算出された濃度と実際の濃度との最大誤差は338ppmであった。
図8は、上述した各実施例及び各比較例の結果を表にまとめた図である。
確かに本発明のAl組成の範囲内では、温度変化による誤差が小さく、高精度にガス濃度を算出できていることが分かる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。