特許第6622094号(P6622094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622094
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/16 20060101AFI20191209BHJP
   F04D 29/12 20060101ALI20191209BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   F04D29/16
   F04D29/12 Z
   F04D29/70 G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-8931(P2016-8931)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-129064(P2017-129064A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100168594
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 克自
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠一郎
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−089482(JP,A)
【文献】 特開2005−098416(JP,A)
【文献】 特開平10−089281(JP,A)
【文献】 特開平06−058287(JP,A)
【文献】 実開平07−010496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16、17/00−19/02、
21/00−25/16、29/00−35/00
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を伝達する主軸と、
前記主軸に取り付けられる羽根車と、
前記主軸および前記羽根車を囲む周壁、ならびに前記周壁の内側で前記羽根車の入口側と出口側とを隔てる隔壁を含むケーシングと、
前記隔壁と、前記羽根車の入口および出口の間の周面との間をシールするライナーリングであって、周方向に勾配をもって形成されたヘリカル状の溝部を含み、前記溝部の勾配の下端は前記羽根車の入口側から出口側まで貫通する切欠部に面するライナーリングと
を備え
前記ライナーリングは、前記周面に対向し、前記溝部の内側に立ち上がる壁状のリップ部を含み、
前記切欠部は前記リップ部に形成される、ポンプ装置。
【請求項2】
前記切欠部は、前記溝部に形成される、請求項に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立型のポンプ装置、例えば深井戸などに据え付けられる水中ポンプ装置では、垂直方向に延びる主軸に羽根車が取り付けられている。主軸と羽根車とは略円筒状のケーシングに収容されており、ケーシングの周壁の内側が、羽根車の回転によって加圧された流体を上方に送る際の流路になっている。このとき、加圧されて羽根車を出た流体が、より低圧である羽根車の入口側に漏洩しないように、羽根車とケーシングとの間の隙間をシールするライナーリングが設けられる。ライナーリングは、例えば芯材に弾性体を被覆することによって構成されるリング状の部材であり、弾性体部分が羽根車の周面(または羽根車に取り付けられたウェアリング。以下同様)にわずかな隙間で対向している。
【0003】
このような立軸式のポンプに設けられるライナーリングに関する技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたポンプ装置では、ライナーリングの弾性体の上面部分に、羽根車の回転方向に沿って径方向外側に広がるスパイラル状の突起が設けられる。このような突起を設けることによって、ポンプ装置の停止中にライナーリング付近に堆積し、運転再開後もこの付近で発生する旋回流に乗って滞留し続けようとする砂や粘土などの異物を、強制的に羽根車の外方に排出することができる。また、旋回流の流速を低下させて、異物によるケーシングの摩耗を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−89281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたようなポンプ装置では、ライナーリングの内側に設けられるリップ部の構造上、リップ部と羽根車との間の隙間が大きくなる場合がある。それゆえ、例えば、ポンプの停止中にケーシング内を自然流下してこの隙間に入り込んだ異物が運転再開時に噛み込まれ、リップ部とリップ部に対向する羽根車周面の異常摩耗につながる場合があった。また、運転条件によってはスパイラル状の突起と羽根車との間に発生する二次流れのために異物が排出されない可能性があった。さらに、スパイラル状の突起を設けるためには、ライナーリングの弾性体部分に、径方向について十分な幅をもたせなければならないが、そうすることによって弾性体部分がその厚さに比べて薄くなり、強度が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一つは、立型のポンプ装置において、ライナーリング付近に集積する異物がポンプの運転に及ぼす影響を効果的に低減させることが可能なポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、回転駆動力を伝達する主軸と、主軸に取り付けられる羽根車と、主軸および羽根車を囲む周壁、ならびに周壁の内側で羽根車の入口側と出口側とを隔てる隔壁を含むケーシングと、隔壁と、羽根車の入口および出口の間の周面との間をシールするライナーリングであって、周方向に勾配をもって形成されたヘリカル状の溝部を含み、溝部の勾配の下端は羽根車の入口側から出口側まで貫通する切欠部に面するライナ
ーリングとを備えるポンプ装置が提供される。
【0008】
上記の構成では、切欠部が異物または異物を含む流体のための流路を提供し、溝部につけられた勾配が異物または流体を切欠部へと誘導する。従って、異物が堆積したり、ライナーリングと羽根車との間に噛み込まれたりしてポンプの運転に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0009】
上記のポンプ装置において、ライナーリングは、周面に対向し、溝部の内側に立ち上がる壁状のリップ部を含み、切欠部はリップ部に形成されてもよい。
溝部の内側に立ち上がる壁状のリップ部を設けることによって、異物または異物を含む流体が溝部の勾配に沿って流れるようにガイドすることができる。また、切欠部がリップ部に形成されることによって、リップ部の径方向の変形に対する柔軟性が向上し、リップ部と羽根車の周面との間で所定の隙間が維持されやすくなる結果、隙間に異物が噛み込まれることによって異常摩耗などが発生するのを防止することができる。
【0010】
また、上記のポンプ装置において、切欠部は、溝部に形成されてもよい。
ライナーリングは、必ずしも壁状のリップ部を含まなくてもよい。この場合、切欠部は溝部に形成される。また、ライナーリングが壁状のリップ部を含む場合に、溝部とリップ部との両方に切欠部が形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の羽根車およびケーシングを含むポンプ部分の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るポンプ装置に設置されるライナーリングの平面図である。
図3図2に示すライナーリングをIII−III線で切断した斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置の羽根車およびケーシングを含むポンプ部分の断面図である。図1を参照すると、ポンプ装置10のポンプ部分は、主軸11に取り付けられる羽根車12と、主軸11および羽根車12を収容するケーシング13とを含む。主軸11は、電動機などの駆動源(図示せず)に接続され、羽根車12に回転駆動力を伝達する。羽根車12は、入口12aから吸い込まれた流体を遠心力によって加圧して出口12bから吐出する。吐出された流体は、ケーシング13に取り付けられた円弧面14によって向きを変えられ、案内羽根15を経て次の段の羽根車12の入口12aに至る。このようにして、ポンプ装置10では、ポンプ部分の下方にある吸込口(図示せず)から吸い込まれた流体が、ポンプ部分に設けられた複数の羽根車12によって多段的に加圧され、ポンプ部分の上方にある吐出口(図示せず)から吐出される。
【0014】
図示された例において、ケーシング13は、周壁13aと隔壁13bとが一体になった構造を有する。他の例では、周壁13aと隔壁13bとは別体であり、これらを結合させることによってケーシング13が構成されてもよい。周壁13aは羽根車12を囲み、円弧面14および案内羽根15とともに、羽根車12の回転によって加圧された流体の流路になる空間を形成する。隔壁13bは、周壁13aの内側で羽根車12に向かって延び、羽根車12の入口12a側と出口12b側との間を隔てる。さらに、羽根車12に近い隔壁13bの端部にはライナーリング20が設けられ、隔壁13bと羽根車12の周面12cとの間をシールする。ここで、周面12cは、羽根車12の入口12aと出口12bとの間に位置する。ライナーリング20は、例えば芯材に弾性体を被覆することによって構
成されるリング状の部材であり、弾性体部分が羽根車12の周面12cにわずかな隙間で対向することによって、隔壁13bと周面12cの間がシールされる。これによって、ポンプ装置10では、羽根車12の入口12a側が低圧、出口12b側が高圧になるような圧力差が維持される。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置に設置されるライナーリングの平面図である。図3は、図2に示すライナーリングをIII−III線で切断した斜視断面図である。図2および図3を参照すると、ライナーリング20は、芯材21と、芯材を被覆する弾性体部分22とを含む。芯材21は、任意の密閉固定構造(図示せず)によって、隔壁13bの端部に連結される。図示された例において、弾性体部分22は、周方向に形成される溝部22aと、溝部22aの内側に立ち上がる壁状のリップ部22bとを含む。このように構成されたライナーリング20では、最も内側に位置するリップ部22bが、羽根車12の周面12cに対向する。ライナーリング20は、リップ部22bと周面12cとの間の隙間がわずかになるように設計されており、これによってライナーリング20が周面12cと隔壁13bとの間をシールする機能が実現される。
【0016】
さらに、本実施形態において、溝部22aおよびリップ部22bには、羽根車12の入口12a側から出口12b側まで貫通する切欠部23が形成される。溝部22aおよびリップ部22bは、いずれも、平面視した場合には切欠部23が欠損した環状の部分になる。また、図3に特に示されるように、溝部22aおよびリップ部22bは、いずれも、周方向に勾配をもって形成されている。より具体的には、溝部22aおよびリップ部22bには、時計回りに周回すると下り勾配になるようにヘリカル状の勾配がつけられている。切欠部23に面して、溝部22aの勾配の上端23aおよび下端23bが形成される。図示された例では、勾配の上端23aと下端23bとの間に高低差hが生じている。
【0017】
このような構成、すなわち、周方向に勾配をもったヘリカル状の溝部22aが形成され、溝部22aの勾配の下端が切欠部23に面する構成によって、本実施形態に係るライナーリング20では、砂や粘土などの異物がライナーリング20に堆積したり、ライナーリング20と羽根車12との間に噛み込まれたりしてポンプの運転に影響を及ぼすことが防止される。この点について、以下でさらに説明する。
【0018】
砂や粘土などの異物は、例えば水などの流体よりも比重が大きいため、羽根車12の出口12bから円弧面14に沿って上方に向かう流体から離脱して、ライナーリング20付近に集積しやすい。ライナーリング20において、溝部22aに勾配がなく、また切欠部23も形成されない場合、ライナーリング20付近では溝部22aに異物が堆積し、堆積した異物が羽根車12の周りで発生する旋回流に巻き込まれてケーシング13や円弧面14を摩耗させたりする可能性がある。これに対して、本実施形態では、切欠部23が異物または異物を含む流体のための流路を提供し、溝部22aにつけられた勾配が異物または流体を切欠部23へと誘導することによって、ライナーリング20付近に集積した異物を効果的に排出することができる。
【0019】
より具体的には、例えば、ポンプ装置10の運転中は、羽根車12の入口12a側と出口12b側との差圧によって、溝部22aの下り勾配に沿って異物を含む流体の流れが形成される。この流れは、勾配の下端23bから切欠部23を通って入口12a側へと流れ、これによってライナーリング20付近に集積した異物が排出される。また、ポンプ装置10の停止中は、異物が溝部22aの下り勾配に沿って自然流下し、勾配の下端23bから切欠部23を通って入口12a側へとさらに流下し、最終的にはポンプ装置10の吸込口から外部に排出される。このとき、流下する異物が溝部22aの下り勾配に沿って切欠部23まで誘導されることによって、切欠部23以外の部分で羽根車12の周面12cとリップ部22bとの間の狭い隙間を通過する異物が減少する。従って、ポンプ装置10の
停止中に自然流下する異物が周面12cとリップ部22bとの間の狭い隙間に挟まり、運転再開時に噛み込まれることによって異常摩耗などを発生させるのを防止することができる。
【0020】
また、本実施形態では、切欠部23が、リップ部22bが形成する環状の壁の開放部分になっている。これによって、リップ部22bの径方向の変形に対する柔軟性が向上し、リップ部22bと羽根車12の周面との間で所定の隙間が維持されやすくなる。ライナーリング20に切欠部23がない場合、リップ部22bは閉じた環状の壁を形成する。この場合、リップ部22bの全周にわたって、それぞれの部分の径方向の変形が互いに影響し合うため、リップ部22bの径方向の変形に対する柔軟性は必ずしも高くない。従って、何らかの原因で発生したリップ部22bの径方向の変形が復元されず、リップ部22bと羽根車12の周面との間の隙間が大きい部分が継続的に発生する可能性がある。そのような部分には、ライナーリング20付近に集積した異物が噛み込まれやすい。本実施形態では、リップ部22bが形成する環状の壁に開放部分があることによってリップ部22bの径方向の変形に対する柔軟性が向上しているため、何らかの原因でリップ部22bの径方向の変形が発生しても、弾性的に復元される可能性が高い。従って、リップ部22bと羽根車12の周面との間で所定の隙間が維持され、ポンプ装置10の運転中、または運転再開時にこの隙間に異物が噛み込まれることによって異常摩耗などが発生するのを防止することができる。
【0021】
なお、上記の例では、ライナーリング20においてリップ部22bに1ヶ所の切欠部23が形成されたが、本発明の実施形態はこのような例には限定されない。切欠部は、例えば2ヶ所以上形成されてもよい。切欠部23の数は、例えば、切欠部23によって提供される流路の大きさが異物の排出に十分であるか、切欠部23によって分割されるリップ部22bの径方向での柔軟性が、羽根車12の周面12cとの間で所定の隙間を維持するのに適した程度であるか、といったような観点から、任意に選択されうる。
【0022】
また、上記の例では、溝部22aと同様にリップ部22bも周方向に勾配をもって形成されたが、他の例では必ずしもそうでなくてもよい。本実施形態において、リップ部22bは、異物または異物を含む流体が溝部22aの勾配に沿って流れるようにガイドする機能を有する。従って、この機能が実現される限りにおいて、リップ部22bは、例えば溝部22aとは異なり上面が平坦になるように形成されてもよい。また、本実施形態において壁状のリップ部22bによって提供されるガイドの機能は付随的なものであるため、他の実施形態ではリップ部22bが壁状ではなくてもよい。
【0023】
上記の実施形態の説明で参照されたポンプ装置10の構成は例示的なものにすぎない。本発明の実施形態に係るポンプ装置としては、羽根車とケーシングとの間にライナーリングを設置可能な任意の構成のポンプ装置が採用されうる。また、上記の実施形態の説明で参照されたライナーリング20についても、溝部22aに周方向の勾配がつけられ、溝部22aまたはリップ部22bの少なくともいずれかに切欠部23が形成される点を除けば、その構成は任意である。例えば、芯材21を弾性体部分22で被覆する構造、および芯材21および弾性体部分22のそれぞれの形状は、公知のライナーリングの例などから当業者に明らかな範囲において、上記の実施形態の説明で参照されたものに限らず任意に変形されてもよく、そのようなライナーリングを備えるポンプ装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0024】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的
範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0025】
10 ポンプ装置
11 主軸
12 羽根車
12a 入口
12b 出口
12c 周面
13 ケーシング
13a 周壁
13b 隔壁
20 ライナーリング
22a 溝部
22b リップ部
23 切欠部
23a 勾配の上端
23b 勾配の下端
図1
図2
図3