特許第6622178号(P6622178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622178縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法、及び発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622178
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法、及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20191209BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20191209BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191209BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20191209BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08K3/01
   C08J5/18CFH
   H01L33/56
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-236150(P2016-236150)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-90720(P2018-90720A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】楠木 貴行
(72)【発明者】
【氏名】高見澤 祐介
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−108472(JP,A)
【文献】 特開平07−331077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08K 3/01
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)常温で可塑性の固体状もしくは半固体状であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000以上1,000,000以下であり、下記式(1)で示されるケイ素原子に結合したアルコキシ基又は水酸基を分子内に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(RSiO1/2a’(RSiO2/2b’(RSiO3/2c’(SiO4/2d’(ORe’ (1)
(Rは水素原子、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルコキシアルキル基であり、a’、b’、c’、及びd’は各々0以上の整数であり、e’は2以上の整数であり、b’+c’+d’は1以上の整数である。)
(B)ポリスチレン換算分子量が10,000以上1,000,000以下であり、下記式(2)で示されるアルコキシ基又は水酸基を2個と水素原子1個とを同時に有するケイ素原子を分子内に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン:(A)成分100質量部に対して(B)成分が5〜100質量部となる量、
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(OR(HSi(OR1/2(2)
(R、R、及びRは上記と同様であり、a、b、c、d、及びeは各々0以上の整数であり、c+dは2以上の整数であり、fは2以上の整数である。)
を含み、常温で可塑性の固体状もしくは半固体状のものであることを特徴とする縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート。
【請求項2】
前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートが、さらに(C)成分として、蛍光体を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート。
【請求項3】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜1,000質量部であることを特徴とする請求項2に記載の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート。
【請求項4】
前記(C)成分の平均粒径が1〜50μmであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法であって、
前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを構成するオルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤で希釈し、該有機溶剤で希釈されたオルガノポリシロキサン組成物を基材シート上に塗布して塗膜を形成し、該形成された塗膜を25〜180℃で乾燥して前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを製造することを特徴とする縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法。
【請求項6】
被覆LED素子を有する発光装置の製造方法であって、
LED素子の表面に、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを配置し、該縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを加熱硬化させてシリコーン樹脂層を形成し、該形成されたシリコーン樹脂層で前記LED素子の表面を被覆することを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子のチップ表面に積層させ接着することでLEDの青色光及び紫外光を変換させることが可能な、未硬化状態(即ち、非加熱処理下)において室温で固体又は半固体の縮合硬化型シリコーン樹脂組成物シート及びその製造方法、並びに該縮合硬化型シリコーン樹脂組成物シートを利用する発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)の分野では波長変換のために蛍光体を使用することは知られている(特許文献1)。一方、シリコーン樹脂は耐光性に優れることからLED素子を封止、保護のために被覆する材料として注目されている(特許文献2)。
【0003】
一般に、白色LEDでは、蛍光体を分散させたシリコーン樹脂やエポキシ樹脂でLEDチップを被覆する等の方法により蛍光体をチップ近傍に分散させて青色光を擬似白色光に変換させている。
しかし蛍光体の樹脂層中での分散が不均一であったり偏りがあったりすると色ずれが起こりやすいため、均一な白色光を作り出すには蛍光体が被覆樹脂層中に均一に分散することが必要である。そのために、スクリーン印刷や、蛍光体を沈降により分散させる方法等が検討されているが、製造工程が複雑化したり、得られる安定化の程度が不十分であったりする問題があった。従って、蛍光体をチップ表面に均一に分散させることができる容易な技術が求められている。
【0004】
また、LED等においては、LED素子を被覆する樹脂層に高い耐熱性、耐紫外線性等が求められるが、近年ではLEDの短波長化、ハイパワー化に伴い、特許文献3のような付加硬化性シリコーン樹脂では耐熱性や耐紫外線性が不足するようになってきた。これは、付加硬化性シリコーン樹脂を硬化することによって得られるシリコーン樹脂硬化物が、主鎖骨格内にシルメチレン結合(Si−CH−CH−Si)を含むためである。このシルメチレン結合は短波長のUV−LEDで劣化が特に促進されるため、蛍光体を用いずUV光をそのまま透過させるための透明封止層において極めて問題となる。そこで、上記問題を解決するために、主鎖骨格がシロキサン結合(Si−O−Si)のみである縮合硬化性シリコーン樹脂が提案されている。しかしながら、付加硬化性ポリオルガノシロキサンに比べて反応性が低い縮合硬化性ポリオルガノシロキサンでは生産性に劣り、反応性を向上させるために多量の縮合触媒を用いると、シリコーン樹脂の劣化を加速させてしまうため、シリコーン樹脂本来の高い耐熱性や耐光性を発揮できないという問題がある。また、触媒自体が色を帯びていたり、劣化により色を呈するようになったりと透明性が重要な分野には不適な触媒も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−524737号公報
【特許文献2】特開2004−339482号公報
【特許文献3】特許第4927019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、取扱い容易であって、硬化性に優れながらも高い耐熱性と耐紫外線性を有する縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、
(A)常温で可塑性の固体状もしくは半固体状であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000以上1,000,000以下であり、下記式(1)で示されるケイ素原子に結合したアルコキシ基又は水酸基を分子内に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(RSiO1/2a’(RSiO2/2b’(RSiO3/2c’(SiO4/2d’(ORe’ (1)
(Rは水素原子、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルコキシアルキル基であり、a’、b’、c’、及びd’は各々0以上の整数であり、e’は2以上の整数であり、b’+c’+d’は1以上の整数である。)
(B)ポリスチレン換算分子量が10,000以上1,000,000以下であり、下記式(2)で示されるアルコキシ基又は水酸基を2個と水素原子1個とを同時に有するケイ素原子を分子内に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン:(A)成分100質量部に対して(B)成分が5〜100質量部となる量、
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(OR(HSi(OR1/2(2)
(R、R、及びRは上記と同様であり、a、b、c、d、及びeは各々0以上の整数であり、c+dは2以上の整数であり、fは2以上の整数である。)
を含み、常温で可塑性の固体状もしくは半固体状の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを提供する。
【0008】
このような縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートであれば、室温下、未硬化状態で固体状又は半固体状であるため取扱い容易であり、速やかに硬化物を得ることができ、高い耐熱性、及び耐紫外線性等の耐光性を発揮する硬化物を与えることができる縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートとなる。
【0009】
このとき、前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートが、さらに(C)成分として、蛍光体を含むものであることが好ましい。
【0010】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、蛍光体を含ませることで波長変換シートとして用いることができ、また、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは常温で固体ないし半固体であるため、蛍光体の分散状態が経時的に安定となる。
【0011】
またこのとき、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜1,000質量部であることが好ましい。
【0012】
(C)成分の含有量をこのようなものとすれば、波長変換シートとしてより好適なものとなる。
【0013】
またこのとき、前記(C)成分の平均粒径が1〜50μmであることが好ましい。
【0014】
このように、(C)成分の蛍光体の平均粒径は1〜50μmであることが好ましい。
【0015】
また、本発明では、上述の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法であって、
前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを構成するオルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤で希釈し、該有機溶剤で希釈されたオルガノポリシロキサン組成物を基材シート上に塗布して塗膜を形成し、該形成された塗膜を25〜180℃で乾燥して前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを製造する縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、このような製造方法で製造することができる。
【0017】
さらに、本発明では、被覆LED素子を有する発光装置の製造方法であって、
LED素子の表面に、上述の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを配置し、該縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを加熱硬化させてシリコーン樹脂層を形成し、該形成されたシリコーン樹脂層で前記LED素子の表面を被覆する発光装置の製造方法を提供する。
【0018】
このような発光装置の製造方法であれば、LED素子の表面に光変換を安定して行う蛍光体含有層を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは硬化性、及び取扱性即ち作業性が良好であり、LED素子を被覆する透明又は蛍光体含有の硬化物層を容易に形成することができる。こうして形成された硬化物層はシリコーン樹脂本来の耐熱性、耐紫外線性等の耐光性、光学的透明性、強靭性、及び接着性に優れる。従って、LED素子封止用として特に好適なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、取扱いが容易で、速やかに硬化物を得ることができ、高い耐熱性と耐光性を発揮する硬化物を与えることができる縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートが求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケイ素原子に結合したアルコキシ基又は水酸基を分子内に少なくとも2個有する常温で固体状もしくは半固体状のオルガノポリシロキサンと、即硬化性を与える同一ケイ素原子上に1個以上の水素原子と2個以上のアルコキシ基又は水酸基を有するケイ素原子を分子内に2個以上有するオルガノポリシロキサンを含み、組成物として常温で固体状もしくは半固体状である縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、縮合硬化する際に無触媒でありながら速やかな硬化性を有し、高い耐熱性、耐光性を発揮する硬化物を与えることができる縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書において、常温とは24±2℃(即ち、22〜26℃)を意味するものであり、ポリスチレン換算の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において下記測定条件で測定されるものである。
また、本明細書において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0023】
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0024】
<縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート>
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、下記に示す(A)成分及び(B)成分を含み、常温で可塑性の固体状もしくは半固体状のものである。
【0025】
[(A)成分]
本発明における(A)成分は、常温で可塑性の固体状もしくは半固体状であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000以上1,000,000以下であり、下記式(1)で示されるケイ素原子に結合したアルコキシ基又は水酸基を分子内に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。この(A)成分は、硬化性や物性を調整する目的で加えるものである。
(RSiO1/2a’(RSiO2/2b’(RSiO3/2c’(SiO4/2d’(ORe’ (1)
(Rは水素原子、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルコキシアルキル基であり、a’、b’、c’、及びd’は各々0以上の整数であり、e’は2以上の整数であり、b’+c’+d’は1以上の整数である。)
【0026】
上述のa’、b’、c’、d’、及びe’の好ましい範囲としては、a’は0〜5,000の整数であり、さらには0〜2,500の整数であり、b’は10〜12,000の整数、さらには100〜10,000の整数であり、c’は0〜10,000の整数、さらには0〜8,000の整数であり、d’は0〜10,000の整数であり、さらには0〜8,000の整数であり、e’は2〜500の整数であり、さらには2〜250の整数であり、20≦c’+d’≦20,000であり、さらには50≦c’+d’≦15,000であり、15≦b’+c’+d’≦1,500であり、さらには20≦b’+c’+d’≦1,000である。
【0027】
(A)成分が上記好ましい範囲内の固体状もしくは半固体状のオルガノポリシロキサンであれば、シートとしたときの取扱いが容易であり、機械的物性にも優れる。
【0028】
また、本発明における(A)成分のオルガノポリシロキサンは、ポリスチレン換算分子量が5,000以上1,000,000以下のものである。(A)成分のポリスチレン換算分子量が5,000未満では液体になりやすくなる。また、(A)成分のポリスチレン換算分子量が1,000,000を超えるとゲル状となり、溶剤にも不溶で他のものとも相溶しなくなる。
【0029】
このような(A)成分のポリオルガノシロキサンは、公知の方法によって、ハロゲン化シランやアルコキシシランを加水分解縮合することによって合成することができるが、市販のものを用いても良い。
【0030】
[(B)成分]
本発明における(B)成分は、ポリスチレン換算分子量が10,000以上1,000,000以下であり、下記式(2)で示されるアルコキシ基又は水酸基を2個と水素原子1個とを同時に有するケイ素原子を分子内に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサンである。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(OR(HSi(OR1/2(2)
(R、R、及びRは上記と同様であり、a、b、c、d、及びeは各々0以上の整数であり、c+dは2以上の整数であり、fは2以上の整数である。)
【0031】
上述のa、b、c、d、e、及びfの好ましい範囲としては、aは0〜5,000の整数であり、さらには0〜2,500の整数であり、bは10〜12,000の整数、さらには100〜10,000の整数であり、cは0〜10,000の整数、さらには0〜8,000の整数であり、dは0〜10,000の整数であり、さらには0〜8,000の整数であり、eは0〜500の整数であり、さらには0〜250の整数であり、fは2〜500の整数であり、さらには2〜250の整数であり、20≦c+d≦20,000であり、さらには50≦c+d≦15,000である。
【0032】
本発明における(B)成分のオルガノポリシロキサンは、ポリスチレン換算分子量が10,000以上1,000,000以下のものである。(B)成分のポリスチレン換算分子量が10,000未満では、縮合反応を行った際の反応が遅く、速やかに硬化物を得ることができない。また、(B)成分のポリスチレン換算分子量が1,000,000を超えるとゲル状となり、溶剤にも不溶で他のものとも相溶しなくなる。
【0033】
(B)成分が上記好ましい範囲内の固体状もしくは半固体状のオルガノポリシロキサンであれば、シートとしたときの取扱いが容易であり、機械的物性にも優れる。
【0034】
上記(B)成分は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0035】
このような(B)成分のポリオルガノシロキサンは、公知の方法によって、ハロゲン化シランやアルコキシシランを加水分解縮合することによって合成することができるが、市販のものを用いても良い。合成方法の一例として、アルコキシ基又は水酸基を3個と水素原子1個とを同時に有するケイ素原子を分子内に有する有機ケイ素化合物とシラノール基を有する有機ケイ素化合物とをアルカリ土類金属の水酸化物等を触媒として縮合反応させる方法が挙げられる。
【0036】
(B)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して(B)成分が5〜100質量部、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜80質量部となる量である。この範囲であれば十分な硬化速度を得ることができる。また、(B)成分が常温で液体であっても、硬化性樹脂組成物とした時に固体状又は半固体状を維持しているならば本発明の範囲内に含まれるが、好ましくは(B)成分は、常温で固体状又は半固体状のオルガノポリシロキサンである。
【0037】
[(C)成分]
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートにおける(C)成分は、蛍光体である。(C)成分の蛍光体は、公知の蛍光体であればいずれのものであっても使用することができ、その配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、通常、0.1〜1,000質量部の範囲であり、好ましくは10〜500質量部である。(C)成分の蛍光体は、例えば、シーラスレーザー測定装置等のレーザー光回折法による粒度分布測定における粒径の範囲として、通常その粒径が0.01〜100μmであればよく、好適には0.1〜80μm、より好適には0.5〜50μm程度のものが使用される。また、平均粒径は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜20μmである。ここで、平均粒径とはレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した粒度分布における質量平均値D50(又はメジアン径)での粒径を示す。
【0038】
蛍光体は、例えば、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体蛍光体、Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。なお、以下の蛍光体の説明において、Mは、Sr、Ca、Ba、Mg及びZnから選ばれる少なくとも1種であり、Xは、F、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、又はEuとMnとの組み合わせである。
【0039】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、MSi:Eu等がある。また、MSi:EuのほかMSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu等もある。
【0040】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi:Eu等がある。
【0041】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M(POX:R等がある。
【0042】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、MX:R等がある。
【0043】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl:R、SrAl1425:R、CaAl:R、BaMgAl1627:R、BaMgAl1612:R、BaMgAl1017:R等がある。
【0044】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Eu等がある。
【0045】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系蛍光体等がある。また、Yの一部もしくは全部をTb、Lu等で置換したTbAl12:Ce、LuAl12:Ce等もある。
【0046】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、ZnGeO:Mn、MGa:Eu等がある。
【0047】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0048】
Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体とは、モル%表示で、CaCOをCaOに換算して20〜50モル%、Alを0〜30モル%、SiOを25〜60モル%、AlNを5〜50モル%、希土類酸化物又は遷移金属酸化物を0.1〜20モル%とし、5成分の合計が100モル%となるオキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体である。なお、オキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体では、窒素含有量が15wt%以下であることが好ましく、希土類酸化物イオンの他に増感剤となる他の希土類元素イオンを希土類酸化物として蛍光ガラス中に0.1〜10モル%の範囲の含有量で共賦活剤として含むことが好ましい。
【0049】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0050】
なお、本実施形態における縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートには、上述した(A)〜(C)成分以外にも、その他の任意成分を配合することができる。
【0051】
・無機充填剤
無機充填剤を配合すると、得られる硬化物の光の散乱や組成物の流動性が適切な範囲となったり、該組成物を利用した材料が高強度化されたりする等の効果がある。無機充填剤としては、特に限定されないが、光学特性を低下させない微粒子状のものが好ましい。例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン、ヒュームドアルミナ等の補強性無機充填剤、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填剤等を挙げることができる。これらの無機充填剤は、合計で、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部当り600質量部以下(0〜600質量部)の範囲で適宜配合することができる。
【0052】
・液状シリコーン
本実施形態における縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートには、必要に応じて、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートが室温で固体状もしくは半固体状を維持し、液状にならない程度に液状シリコーン成分を添加することができる。このような液状シリコーン成分としては、25℃で粘度1〜100,000mPa.s程度のものが好ましく、例えばビニルシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、アルコキシシロキサン、ハイドロキシシロキサン及びこれらの混合物が挙げられ、添加量は、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートが室温で固体状もしくは半固体状を維持することが条件であり、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート全体に対して通常50質量%以下である。
【0053】
・その他の成分
さらに、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分の一例としては、pH調整剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0054】
pH調整剤の例としては、酢酸、クエン酸等の有機酸類、ピリジンやN,N−ジメチルアニリン等の有機塩基類が挙げられる。
【0055】
老化防止剤の例としては、安息香酸、イソプロピルメチルフェノール、エチルヘキサンジオール、塩化リゾチーム、クロルヘキシジン塩酸塩、オクチルフェノキシエタノール、オルトフェニルフェノール等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、縮合触媒を含まないものであることが好ましい。このようなものを用いて得られる硬化物であれば、触媒による樹脂の着色や触媒の劣化等の発生を防止でき、シリコーン樹脂本来の高い耐熱性と耐光性等を発揮することができる。ただし、目的に応じ縮合触媒を少量入れることはできる。
【0057】
本実施形態における縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの最も単純な形態は、前記(A)成分及び前記(B)成分のみからなり、その他の成分を含有しない組成物である。
【0058】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、未硬化状態において、常温で可塑性の固体もしくは半固体の状態である熱硬化性樹脂組成物からなる。ここで、「常温」とは通常の状態における周囲温度を意味し、通常15〜35℃の範囲の温度であり、典型的には25℃である。「半固体」とは可塑性を有し、特定の形状に成形されたときに少なくとも1時間、好ましくは8時間以上その形状を保持し得る物質の状態をいう。従って、例えば、常温で非常に高い粘度を有する流動性物質が本質的には流動性を有するものの、非常に高い粘度のために少なくとも1時間という短時間では付与された形状に変化(即ち、くずれ)を肉眼では認めることができないとき、その物質は半固体の状態にある。
【0059】
(縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法)
本発明では、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法であって、前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを構成するオルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤で希釈し、該有機溶剤で希釈されたオルガノポリシロキサン組成物を基材シート上に塗布して塗膜を形成し、該形成された塗膜を25〜180℃で乾燥して前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを製造する縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの製造方法を提供する。
【0060】
上記したように、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、(A)〜(B)成分、又は(A)〜(C)成分、及び場合により含有される任意成分を任意の方法により混合して、前記縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを構成するオルガノポリシロキサン組成物を調製し、このオルガノポリシロキサン組成物を用いて製造することができる。具体的には、例えば、(A)成分のオルガノポリシロキサンと(B)成分のオルガノポリシロキサン、(C)成分の蛍光体、及び上記任意成分を、通常、市販の攪拌機(例えば、プラネタリーミキサー)で、均一に混練することによって、オルガノポリシロキサン組成物を調製することができる。また、有機溶剤に(A)成分及び(B)成分を溶解させ、(C)成分を加えた後、市販の攪拌機(例えば、THINKYCONDITIONINGMIXER((株)シンキー製)等)で均一に混合してワニスとすることもできる。
【0061】
有機溶剤は(A)成分と(B)成分を溶解させることができる溶剤であれば特に限定は無いが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、さらにセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチロセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ジグライム、トリグライム等の溶剤である。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、上述のオルガノポリシロキサン組成物を無溶剤の状態で熱プレス機等によって40℃〜150℃でシート状に成形することによって製造してもよいが、上述のオルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤で希釈(溶解)し、該有機溶剤で希釈されたワニス状態のオルガノポリシロキサン組成物をフィルムコータで基材シート上に塗布して塗膜を形成し、該形成された塗膜を数分、25〜180℃で乾燥(好ましくは、60〜180℃の間で加熱)して溶剤を蒸発させてシート状に加工することで製造することもできる。成形した縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、硬化反応が進行しないよう、例えば冷凍して保存することが望ましい。
【0063】
上記のようにして製造した本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを、必要時に加熱することにより直ちに硬化させることで、高い硬度を有し、表面タックのない可撓性シート状硬化物を形成することができる。
【0064】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、所望の硬化時間で硬化するように硬化温度を調節することができる。硬化温度は、好ましくは40℃〜200℃の間であり、より好ましくは60℃〜180℃の間である。また、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの硬化は、揮発成分による発泡を抑える目的で、多段階の硬化温度で行うことがより好ましい。
【0065】
なお、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、150℃におけるゲル化タイムが4時間以内であるものが好ましい。
【0066】
(発光装置の製造方法)
本発明によれば、被覆LED素子を有する発光装置の製造方法であって、LED素子の表面に、上記の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを配置し、該縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを加熱硬化させてシリコーン樹脂層を形成し、該形成された(透明又は蛍光体含有の)シリコーン樹脂層で前記LED素子の表面を被覆することを含む発光装置の製造方法が提供される。
【0067】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、LED素子封止用、特に青色LEDや紫外LEDの素子封止用として有用なものである。本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを該LED素子の上に配置(通常、圧着)した後に加熱して硬化させることで、上記LED素子上に硬化物被膜を形成することができる。こうしてLED素子の表面に光変換を安定して行う蛍光体含有層が形成される。得られた蛍光体含有層は硬質でありながら可撓性に優れ、表面のタックが少ない。
【0068】
縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは通常1〜500μm、好ましくは10〜300μmの厚さで使用されるが、蛍光体の含有量や発光効率等によって適宜調整される。縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの大きさは、被覆されるLED素子のサイズに合わせればよい。縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートをLED素子の表面に配置後、加熱硬化させる。加熱硬化の条件は上記の通りであり、通常、一次硬化の後二次硬化させる。
【0069】
なお、圧着は、通常、室温〜300℃以下で、10MPa以下(通常0.01〜10のMPa)加圧下で行うことができ、好ましくは5MPa以下(例えば0.1〜5MPa)、特には0.5〜5MPaである。
【0070】
上記のような製造方法により被覆LED素子を有する発光装置を得ることができる。
【0071】
本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは、常温で固体又は半固体状であるので取扱いが容易であり、たとえ縮合触媒を用いなかったとしても短時間で硬化することができるため、工業的に有利なものとなる。また、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いて得られる硬化物は耐熱性や耐紫外線性、耐光性に優れるので、半導体やLED、太陽電池の封止材等過酷な状況に曝される用途で非常に有用なものとなる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、重量平均分子量は、GPCにより上述した条件で測定されたポリスチレン換算の測定値である。また、平均粒径とはレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した粒度分布における質量平均値D50(またはメジアン径)での粒径を指す。また、(A)〜(E)成分としては、以下の物質を用いた。
【0073】
(A)成分
(A−1):((CHSiO1.0b’(SiO2.0d’(OCHe’
b’=300、d’=2、e’=6、Mw=23,206
(A−2):((CHSiO0.5a’(SiO2.0d’(ORe’
a’=448、d’=750、e’=98、R=H又はCH(CH、Mw=83,523
(A−3):((CHSiO1.0b’(OH)e’
b’=11,000、e’=2、Mw=820,000
【0074】
(A−4):((CHSiO1.0b’(CHSiO1.5c’(ORe’
b’=202、c’=810、e’=120、R=H又はCH、Mw=73,087
(A−5):((CHSiO1.0b’(CHSiO1.5c’(ORe’
b’=2,950、c’=9,100、e’=414、R=H又はCH(CH、Mw=850,067
(A−6):((CHSiO0.5a’(MeSiO1.0b’(MeSiO1.5c’(ORe’
a’=5、b’=32、c’=105、e’=14、R=H又はCH(CH、Mw=10,096
(A−7):((CHSiO1.0b1’((CH)HSiO1.0b2’((C)SiO1.5c’(OH)e’
b1’=21、b2’=1、c’=100、e’=19、Mw=15,045
(A’−1):((CHSiO1.0b’(CHSiO1.5c’(OCHe’
b’=20、c’=2、e’=4、Mw=1,862
【0075】
(B)成分
(B−1):((CHSiO1.0(CHSiO1.5(OCH(CH(HSi(OCH0.5
b=2,950、c=9,100、e=310、f=104、Mw=857,026
(B−2):((CHSiO0.5((CHSiO1.0(CHSiO1.5(OCH(CH((HSi(OCHCH0.5
a=5、b=29、c=102、e=9、f=5、Mw=10,959
(B−3):((CHSiO1.0(CHSiO1.5(OCHCH(HSi(OCH0.5
b=11,050、c=2,010、e=19、f=20、Mw=956,673
(B−4):((CHSiO0.5((CHSiO1.0(CHSiO1.5(OCH(CH(HSi(OCH0.5
a=10、b=298、c=608、e=21、f=78、Mw=73,239
(B−5):((CHSiO0.5(SiO2.0(OCHCH(HSi(OCH0.5
a=3,810、d=8,660、e=89、f=152、Mw=908,201
【0076】
(B−6):((CHSiO0.5((CHSiO1.0(SiO2.0(OCH(CH(HSi(OCH0.5
a=4,690、b=2,030、d=3,960、e=54、f=305、Mw=848,410
(B−7):((CHSiO0.5((CHSiO1.0(SiO2.0(OCH(CH((HSi(OCH0.5
a=1,505、b=1,520、d=3,010、e=188、f=80、Mw=436,079
(B−8):((CHSiO1.0b1((CH)HSiO1.0b2((C)SiO1.5(HSi(OCHCH0.5
b1=21、b2=1、c=100、f=19、Mw=16,858
(B−9):((C)(CH)SiO1.0((C)SiO1.5(OH)(HSi(OCH0.5
b=10、c=89、e=5、f=16、Mw=14,122
【0077】
(B’−1):(H(OEt)SiO)(HSi(OEt)0.5
b=1、f=2、Mw=342
(B’−2):(Me(OMe)SiO)(HSi(OMe)0.5
b=4、f=2、Mw=582
(B’−3):(MeSiO)(HSi(OMe)0.5
b=120、f=2、Mw=9,102
【0078】
(C)成分
蛍光体:NYAG4454L(Intematix社製、D=12.8μm)
【0079】
(D)成分
(D−1):((CHSiO1.0b’(OH)e’
b’=1,000、e’=2、Mw=74,200
(D−2):((C)(CH)SiO1.0b’(OH)e’
b’=50、e’=2、Mw=7,002
【0080】
(E)成分 縮合触媒
AlキレートD(川研ファインケミカル株式会社製)
【0081】
[実施例1〜10、比較例1〜5]
(A)、(B)、(D)、(E)成分を表1及び表2に記載した重量分計量し、キシレンに溶解させ、オルガノポリシロキサン組成物のキシレン溶液(樹脂溶液)を調製した。この時のキシレン量は(A)、(B)、(D)、(E)成分の合計量に対して20wt%となる量である。得られた樹脂溶液を下記のように評価した。
【0082】
[(1)縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートの作製]
上記の樹脂溶液を10cm×10cm×0.1μm厚のテフロン(登録商標)金型に流し込み、スキージすることによって厚みを均一にした。その後、キシレンを60℃、1時間で揮発させ、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを作製した。また、作製した縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを金型から出し、水平台上に25℃で8時間放置して寸法の変化がないか観察した。さらに、25℃で1週間放置して寸法の変化を観察した。1週間寸法の変化が無かったものを固体状とし、8時間は寸法の変化が無かったが1週間後に寸法の変化があったものを半固体状とした。観察結果を表3及び表4に示す。
【0083】
[(2)ゲル分率]
上記(1)で得られた縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを150℃で2時間硬化させてシート硬化物を得た。得られたシート硬化物約1gをアセトン20gに完全に浸し、25℃で3時間放置した。その後、濾過によりアセトンを除去し、濾紙上に残ったシート硬化物を良く乾燥させてその重量を測定した。アセトン浸漬後の重量を浸漬前の重量で除したものをゲル分率とした。表3及び表4に百分率表記した結果を記載する。
【0084】
[(3)シート硬化物の硬さ]
2cm×2cm×3mm厚のテフロン(登録商標)金型に上記(1)で得られた縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート約2gを折りたたんで詰め込み、コンプレッション成型機によって圧縮成型(150℃、5分間)した。得られた成型物を150℃、6時間硬化させ、得られた硬化物の硬さ(デュロメータTypeAもしくはTypeD)をJIS K 6253−3:2012に準拠して測定した。結果を表3及び表4に記載する。
【0085】
[(4)硬化物の引っ張り強さ及び切断時伸び]
上記(1)で得られた縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートをJIS K 6251:2010に準拠して、卓上試験機EZ TEST(機器名:EZ−L、株式会社島津製作所製)を用いて、試験速度500mm/min、つかみ具間距離80mm、及び標点間距離40mmの条件でサンプルの引張強さと切断時伸びを測定した。結果を表3及び表4に記載する。
【0086】
[(5)表面のタック性]
上記(1)で得られた縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを150℃で6時間硬化させ、市販の銀紛(平均粒径5μm)中に硬化物を置き、取り出し後、エアーを吹き付けて表面に埃のように付着した銀粉が取れるか試験し、銀粉が残らなかったものをタック無しとした。結果を表3及び表4に記載する。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表3に示されるように、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた実施例1〜10は、硬さ、切断時伸び、及び引っ張り強さが十分に良好で、表面タック性による銀紛の付着のない硬化物が得られた。
【0092】
一方、表4に示されるように、(A)成分として(A’−1)を有する縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた比較例1,2や、(B)成分として(B’−2)や(B’−3)を有する縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた比較例3,4ではゲル分率が低く、硬化が不十分であり、表面タックによる銀粉の付着が見られた。また、(B)成分を有さない縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた比較例5ではゲル分率が高く、良好な硬化物は得られたものの、これらの縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートは縮合触媒を含むものであった。
【0093】
[実施例11〜13、比較例6]
(A)、(B)、(D)、(E)成分の表5に記載の配合量の合計が20wt%となるようにキシレンに溶解させた樹脂溶液に(C)成分の蛍光体を表5に記載した重量分混合した。
【0094】
[(6)波長変換シートの作製]
上記(1)と同様に、樹脂溶液を10cm×10cm×0.1μm厚のテフロン(登録商標)金型に流し込み、スキージすることによって厚みを均一にした。その後、キシレンを60℃、1時間で揮発させて、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シート(蛍光体含有の波長変換シート)を作製した。
【0095】
[(7)点灯試験]
セラミックス基板に配置した金電極上に450nmの光を発するLEDフリップチップ(B4545FCM1、Genelite社製)を半田接合にて実装し、加圧式真空ラミネータ(V130、ニッコーマテリアル株式会社製)を用いて上記(6)で得られた波長変換シートを貼り合せた(貼り合せ条件は80℃、真空引き時間60秒)後、150℃、6時間、シートを硬化して、LED発光装置を作製した。LE−5400(大塚電子株式会社製)にて、作製したLED発光装置のu’v’色度を測定した。その後、150℃のオーブン中にてLED発光装置を1.4Aで点灯させ、1,000時間後のu’v’色度を測定した。初期の色度を0として、点灯1,000時間後の色度のズレを表6に記載する。また、1.4Aで点灯させながら−40℃〜125℃、1,000回のサーマルサイクル試験(TCT)を行った後の色度のズレも表6に記載する。なお、色度のズレ(色ズレ)の値が大きいほど波長変換シートの劣化による着色、樹脂クラック、基板からの剥離等が大きいことを意味する。
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
表6に示されるように、本発明の縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた実施例11〜13は、色ズレの値が小さく、耐熱性や耐光性に優れていた。一方、(B)成分を有さない縮合硬化性シリコーン樹脂組成物シートを用いた比較例6は、色ズレの値が大きく、耐熱性や耐光性に劣るものであった。
【0099】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。