(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマーフィルムの波長550nmにおける面内のレターデーションRe1(550)、および、厚み方向のレターデーションRth1(550)が、それぞれ、下記式(2)および下記式(3)を満たし、
前記液晶層の波長550nmにおける面内のレターデーションRe2(550)、および、厚み方向のレターデーションRth2(550)が、それぞれ、下記式(4)および下記式(5)、または、下記式(6)および下記式(7)を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(2) 5nm≦Re1(550)≦300nm
式(3) 10nm≦Rth1(550)≦240nm
式(4) 0nm≦Re2(550)≦10nm
式(5) −360nm≦Rth2(550)≦−50nm
式(6) 10nm≦Re2(550)≦220nm
式(7) −110nm≦Rth2(550)≦−5nm
前記保護フィルムの波長550nmにおける面内のレターデーションRe3(550)、および、厚み方向のレターデーションRth3(550)が、それぞれ、下記式(8)および下記式(9)を満たす、請求項8に記載の偏光板。
式(8) 0nm≦Re3(550)≦10nm
式(9) −40nm≦Rth3(550)≦40nm
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
また、本明細書において、偏光板とは、偏光子の少なくとも一方の表面に保護層または機能層が配置されたものをいい、偏光子と偏光板は区別して用いる。
【0019】
また、本明細書において、平行および直交とは、厳密な意味での平行および直交を意味するのではなく、それぞれ、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
【0020】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートのいずれかを意味する表記であり、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルのいずれかを意味する表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルのいずれかを意味する表記である。
【0021】
また、本明細書において、液晶組成物および液晶性化合物は、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
【0022】
《レターデーション》
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((Nx+Ny)/2−Nz)×dが算出される。
【0023】
《屈折率》
本発明において、屈折率Nx、NyおよびNzは、アッベ屈折計(NAR−4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。
また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組合せで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。
主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
【0024】
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、シクロオレフィン系ポリマーを含むポリマーフィルムと、ポリマーフィルムに隣接して設けられる液晶層とを有する。
また、本発明の光学フィルムは、液晶層が、液晶性化合物と、後述する式(I)で表される化合物とを含有する液晶組成物を用いて形成される。
また、本発明の光学フィルムは、液晶組成物が、後述する式(I)で表される化合物を、液晶性化合物の質量に対して0.5〜7.0質量%含有する組成物である。
そして、本発明の光学フィルムのうち、第1の態様に係る光学フィルムは、後述する式(1−1)で表される偏在値が20〜80%を満たすものである。
一方、本発明の光学フィルムのうち、第2の態様に係る光学フィルムは、後述する式(1−2)で表されるピーク強度比が1.1〜5.0を満たすものである。
なお、以下の説明において、第1の態様および第2の態様で特に区別を要しない場合は、これらの態様をまとめて単に「本発明の光学フィルム」と略す。
【0025】
本発明の光学フィルムは、第1の態様においては後述する式(1−1)で表される偏在値が20〜80%を満たし、第2の態様においては後述する式(1−2)で表されるピーク強度比が1.1〜5.0を満たすことにより、シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルムに隣接させて液晶層を設けた場合であっても、液晶性化合物の配向性を悪化させることなく、ポリマーフィルムと液晶層との密着性を確保することができる。
このメカニズムに関して、詳細は定かではないが、本発明者らは以下のように推定している。
液晶層を形成する組成物中に後述する式(I)で表される化合物を添加しても、通常シクロオレフィン系のポリマーフィルム表面には、後述する式(I)で表される化合物と相互作用する構造を持っていないため、形成される液晶層との密着性の改善には寄与しない。
そこで、例えば、ポリマーフィルムの表面を水接触角が特定の値となるように、すなわち、親水性の構造を付与した上で、後述する式(I)で表される化合物を有する組成物を用いて液晶層を形成することで、後述する式(1−1)で表される偏在値または後述する式(1−2)で表されるピーク強度比が所定の範囲となり、ポリマーフィルムと液晶層とが相互作用し、配向性を失わない状態で密着性を確保できると考えられる。
【0026】
一般的にポリマーフィルムと塗布層との界面には、塗布層とポリマーフィルムとが混じり合った染み込み層が形成される場合がある。
また、一般的には、このような染み込み層が形成されている方が密着性には有利であると解されている。
しかし、本発明の光学フィルムの構成においては、染み込み層が小さい方が好ましい。この理由については定かではないが、塗布層中の液晶性化合物とポリマーフィルムとが混じり合うと、液晶性化合物がポリマーフィルムのポリマー鎖により配向阻害を受けることが考えられる。
また、染み込み層が小さいほうが上記式(I)で表される化合物と、ポリマーフィルムとが効果的に相互作用し、配向性を向上できると考えられる。
さらに、染み込み層がある場合でも、上記式(I)で表される化合物が局所的に偏在することで配向性を向上できると考えられる。
【0027】
ここで、本発明において「染み込み層」とは、ポリマーフィルムの素材と液晶層の素材が両方検出される領域を意味する。
染み込み層の厚みは、30〜300nmの範囲が好ましく、50〜250nmの範囲がより好ましい。この範囲であると、液晶層とポリマーフィルムとの密着性がよく、かつ、液晶層の配向性が向上できる。検出方法については後述する。
【0028】
図1に本発明の光学フィルムの一例の模式的な断面図を示す。
図1に示す光学フィルム10は、シクロオレフィン系ポリマーを含むポリマーフィルム1と、ポリマーフィルム1に隣接している液晶層2とを有する。
次に、本発明の光学フィルムを構成するポリマーフィルムおよび液晶層について詳述する。
【0029】
〔ポリマーフィルム〕
本発明の光学フィルムが有するポリマーフィルムは、シクロオレフィン系ポリマーを含むポリマーフィルムである。
シクロオレフィン系ポリマーの含有量は、ポリマーフィルム中の全固形分に対して、シクロオレフィン系ポリマーが60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0030】
{シクロオレフィン系ポリマー}
本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環のシクロオレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、および、(1)〜(4)の水素化物などがある。
上記シクロオレフィン系ポリマーとしては、具体的には、例えば、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体シクロポリオレフィン、および、下記一般式(III)で表される繰り返し単位とともに下記一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体シクロポリオレフィンなどが好適に挙げられる。
また、上記シクロオレフィン系ポリマーとしては、下記一般式(IV)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
【0034】
上記一般式(II)〜(IV)中、mは0〜4の整数を表す。R
1〜R
6は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、X
1〜X
3およびY
1〜Y
3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH
2)
nCOOR
11、−(CH
2)
nOCOR
12、−(CH
2)
nNCO、−(CH
2)
nNO
2、−(CH
2)
nCN、−(CH
2)
nCONR
13R
14、−(CH
2)
nNR
13R
14、−(CH
2)
nOZ、−(CH
2)
nW、あるいは、X
1とY
1、X
2とY
2もしくはX
3とY
3から構成された(−CO)
2Oまたは(−CO)
2NR
15を示す。なお、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を示し、WはSiR
16pD
3−p(R
16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR
16または−OR
16、pは0〜3の整数を示す)を示し、nは0〜10の整数を示す。
【0035】
上記一般式(II)〜(IV)中、X
1〜X
3およびY
1〜Y
3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムのRthを大きくし、Reの発現性を大きくすることができる。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
【0036】
本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、US2004229157A1号明細書あるいは国際公開第2004/070463A1号パンフレット等に開示されているものも用いることができる。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。
このノルボルネン系付加(共)重合体としては、市販品を用いることもできる。具体的には、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0037】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号公報、特開平7−196736号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭62−19801号公報、特開2003−1159767号公報あるいは特開2004−309979号等公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られるものを用いることができる。
本発明に用いるノルボルネン系重合体において、上記一般式(IV)中のR
5〜R
6は、水素原子または−CH
3が好ましく、上記一般式(IV)中のX
3およびY
3は、水素原子、Cl、−COOCH
3が好ましく、その他の基は適宜選択される。
このノルボルネン系樹脂は、市販品を用いることもでき、具体的にはJSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0038】
本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン分子量換算で5,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、50,000〜300,000であることがさらに好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn;MnはGPCにより測定した数平均分子量)は10以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)により測定されるガラス転移温度(Tg)は50〜350℃であることが好ましく、より好ましくは80〜330℃、さらに好ましくは100〜300℃の範囲にある。
【0039】
本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で添加剤を含有していてもよく、特開2009−114303号公報の段落番号0025〜0074、0086〜0091の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0040】
{ポリマーフィルムの水接触角}
本発明の光学フィルムが有するポリマーフィルムは、後述する本発明の光学フィルムの製造方法に示す通り、液晶層と隣接する側の表面における水接触角が5°〜65°となるよう表面処理されていることが好ましい。
また、ポリマーフィルムの水接触角は、5°〜55°であることがより好ましく、5°〜50°であることが特に好ましい。
【0041】
本発明において、水接触角は、ポリマーフィルム表面の、上記式(I)で表される化合物と相互作用する構造が存在する指標と考えられる。
ここで、上記式(I)で表される化合物と相互作用する構造としては、ヒドロキシル基またはカルボキシル基が好ましく、ヒドロキシル基がより好ましい。
【0042】
《水接触角の測定方法》
本発明において、水接触角は、下記の方法で測定された値をいう。
水接触角は、JIS R 3257:1999の静滴法に基づいて測定を行う。
また、測定には、株式会社ニック製LSE−ME1(ソフトウェア2win mini)を用いる。具体的には、純水を用いて室温20℃で、水平を保ったポリマーフィルム表面上に液滴2μlを滴下し、滴下後20秒の時点での接触角を測定する。
【0043】
{ポリマーフィルムの光学特性}
本発明の光学フィルムが有するポリマーフィルムの光学特性は、後述する本発明の偏光板を画像表示装置に使用した際に表示性能が向上する理由から、下記式(2)および下記式(3)を満たしていることが好ましく、下記式(2−1)および下記式(3−1)を満たしていることがより好ましく、下記式(2−2)および下記式(3−2)を満たしていることが更に好ましい。
式(2) 5nm≦Re1(550)≦300nm
式(3) 10nm≦Rth1(550)≦240nm
【0044】
式(2−1) 40nm≦Re1(550)≦200nm
式(3−1) 20nm≦Rth1(550)≦200nm
【0045】
式(2−2) 80nm≦Re1(550)≦150nm
式(3−2) 40nm≦Rth1(550)≦150nm
【0046】
{ポリマーフィルムの延伸}
本発明の光学フィルムが有するポリマーフィルムは、延伸により各種特性を調整することができる。詳しくは、ポリマーフィルムを、縦方向(搬送方向)、横方向(幅方向)に延伸(一軸または二軸延伸)することによって、面内レターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)および任意の膜厚を発現させることができる。
【0047】
特性を調整するために、延伸や緩和を組み合わせてもよい。例えば、以下の(a)〜(k)に記載する各処理を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 縦延伸
(c) 横延伸→緩和処理
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦延伸→横延伸
(f) 縦延伸→横延伸→緩和処理
(g) 縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
(h) 横延伸→縦延伸→緩和処理
(i) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
(j) 縦延伸→横延伸→縦延伸
(k) 縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に重要となるのが、(a)の横延伸工程、(b)の縦延伸工程である。
【0048】
〈縦延伸〉
ポリマーフィルムを縦方向に延伸する場合には、例えば、複数本の予熱ローラでポリマーフィルムを予熱した後に、一対の延伸ローラに周速差をつけることで縦方向に延伸加工することができる。
【0049】
なお、この縦延伸工程では、特開2008−213332号公報の[0036]〜[0045]に記載のように、シワの発生の防止のために、複数本の予熱ローラと上流側の延伸ローラの周速度を、各ローラへのフィルム接触前後での温度変化に基づき、下流に向かうに従い次第に増速させて、各予熱ローラ間に適度な張力を付与してもよい。
【0050】
また、特開2011−207168号公報の[0022]〜[0031]に記載のように、擦り傷の発生を抑えるために、縦延伸後に冷却ローラによりフィルムを急冷してもよい。
【0051】
〈横延伸〉
ポリマーフィルムを横延伸する場合には、例えばテンターを用いることで、横方向に延伸加工することができる。即ちポリマーフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。
本明細書中、「延伸温度」(以下、「横延伸温度」ともいう。)は、ポリマーフィルム膜面温度によって特定する。
延伸温度が、Tg−40℃〜Tg+40℃となるように制御して行うことが好ましい。すなわち、横延伸工程の横延伸温度はTg−40℃〜Tg+40℃が好ましく、より好ましくはTg−20℃〜Tg+20℃、さらに好ましくはTg−10℃〜Tg+10℃である。ここで、横延伸工程における横延伸温度とは、延伸開始点から延伸終了点までの間の平均温度を意味する。
【0052】
横延伸工程の延伸時間は、1秒〜10分が好ましく、より好ましくは2秒〜5分、さらに好ましくは5秒〜3分である。延伸温度および延伸時間を上記の範囲内に制御することにより、本発明の好ましい範囲内のRe、Rth、膜厚に調整することができる。
【0053】
また、好ましい横延伸倍率は1.01〜4倍、より好ましく1.03〜3.5倍、さらに好ましくは1.1〜3.0倍である。横延伸倍率は1.51〜3.0倍であるのが特に好ましい。
【0054】
〈同時2軸延伸〉
ポリマーフィルムを同時2軸延伸する場合には、通常の横延伸方法と同様、横方向にクリップを拡幅し、それと同時に縦方向に延伸、収縮することで、縦方向と横方向に同時に延伸加工することができる。具体的には、実開昭55−93520号、特開昭63−247021号、特開平6−210726号、特開平6−278204号、特開2000−334832号、特開2004−106434号、特開2004−195712号、特開2006−142595号、特開2007−210306号、特開2005−22087号、特表2006−517608号、特開2007−210306号各公報に記載されていて、いずれの公報に記載の方法も参照することができる。
【0055】
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うことがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うことが好ましく、即ち延伸と連続して行うことが好ましい。
【0056】
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
【0057】
熱固定は延伸温度より1℃以上50℃以下低い温度で行うことができ、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以上低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、ポリマーフィルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
【0058】
このような延伸によりさらに、Re、Rthの、幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を90°±5°以下または0°±5°以下とすることができ、より好ましくは90°±3°以下または0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下または0°±1°以下とすることができる。
高速延伸処理を行ってもよく、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、さらに好ましくは30m/分以上で延伸処理することができる。
【0059】
本発明においては、ポリマーフィルムの厚みは特に限定されないが、5μm〜60μmであることが好ましく、7μm〜50μmであるのことより好ましく、10μm〜40μmであることが更に好ましい。
【0060】
〔液晶層〕
本発明の光学フィルムが有する液晶層は、上述したポリマーフィルムに隣接して設けられる層であり、後述する液晶性化合物と式(I)で表される化合物とを含有する液晶組成物を用いて形成される液晶層である。
また、液晶組成物において、後述する式(I)で表される化合物は、液晶性化合物の質量に対して0.5〜7.0質量%含有している。
【0061】
{液晶層の光学特性}
本発明の光学フィルムが有する液晶層の光学特性は、後述する本発明の偏光板を画像表示装置に使用した際に表示性能が向上する理由から、下記式(4)および下記式(5)、または、下記式(6)および下記式(7)を満たすことが好ましい。
式(4) 0nm≦Re2(550)≦10nm
式(5) −360nm≦Rth2(550)≦−50nm
式(6) 10nm≦Re2(550)≦220nm
式(7) −110nm≦Rth2(550)≦−5nm
【0062】
また、本発明の光学フィルムが有する液晶層の光学特性は、下記式(4−1)および下記式(5−1)、または、下記式(6−1)および下記式(7−1)を満たすことがより好ましく、下記式(4−2)および下記式(5−2)、または、下記式(6−2)および下記式(7−2)を満たすことが更に好ましい。
【0063】
式(4−1) 0nm≦Re2(550)≦5nm
式(5−1) −270nm≦Rth2(550)≦−50nm
式(6−1) 20nm≦Re2(550)≦200nm
式(7−1) −100nm≦Rth2(550)≦−10nm
【0064】
式(4−2) 0nm≦Re2(550)≦1nm
式(5−2) −180nm≦Rth2(550)≦−100nm
式(6−2) 60nm≦Re2(550)≦160nm
式(7−2) −80nm≦Rth2(550)≦−30nm
【0065】
本発明においては、液晶層の厚みは特に限定されないが、0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.3μm〜8μmであることがより好ましく、0.5μm〜5μmであることが更に好ましい。
【0066】
{液晶性化合物}
本発明の光学フィルムが有する液晶層を形成する液晶組成物は、液晶性化合物を含有する。
液晶性化合物は、棒状液晶性化合物またはディスコティック液晶性化合物であることが好ましく、後述する本発明の偏光板を画像表示装置に使用した際に表示性能が向上する理由から、棒状液晶性化合物であることがより好ましい。
【0067】
使用可能な棒状液晶性化合物については、例えば、特開2009−217256号公報の[0045]〜[0066]に記載があり、これらの内容は本明細書に取り込まれる。
【0068】
ディスコティック液晶性化合物としては、例えば、特開2006−301614号公報の[0025]〜[0153]、特開2007−108732号公報の[0020]〜[0122]や特開2010−244038号公報の[0012]〜[0108]に記載があり、これらの内容は本明細書に取り込まれる。
【0069】
本発明に用いられる液晶性化合物は、液晶層の光学特性の調整のために、垂直配向した状態で固定化されていることが好ましい。
例えば、棒状液晶性化合物を垂直配向状態で固定化した層は、正のC−プレートとして機能することができる。また、ディスコティック液晶性化合物を垂直配向状態で固定化した層は、負のA−プレートとして機能することができる。
【0070】
なお、本発明において、垂直配向とは、棒状液晶性化合物であれば、層の法線方向と液晶分子の長軸方向が、ディスクティック液晶性化合物であれば、層の法線方向と液晶分子の円盤面が平行となる配向状態である。なお、液晶分子の長軸方向、液晶分子の円盤面は層の法線方向と平行であることが特に好ましいが、液晶分子の配向状態により傾きをもつ場合がある。この傾きは3.5°以内であることが好ましい。
【0071】
ここで、棒状液晶性化合物が垂直配向している場合は、上記式(4)および(5)を満たすことが好ましく、ディスコティック液晶性化合物が垂直配向している場合は、上記式(6)および(7)を満たすことが好ましい。
【0072】
{式(I)で表される化合物}
本発明の光学フィルムが有する液晶層を形成する液晶組成物は、下記式(I)で表される化合物を含有する。
式(I) (Z)
n−L
100−(Q)
m
ここで、式(I)中、Zは、重合性基を有する置換基を表し、nは、0〜4の整数を表し、nが2〜4の整数である場合、2以上のZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、Qは、少なくとも1つのホウ素原子を含有する置換基を表し、mは、1または2を表し、mが2の場合、2つのQは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、L
100は、n+m価の連結基を表す。ただし、nが0を表し、かつ、mが1を表す場合は、L
100は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。
【0073】
上記式(I)中、Zが表す重合性基を有する置換基としては、例えば、(メタ)アクリレート基、スチリル基、ビニルケトン基、ブタジエン基、ビニルエーテル基、オキシラニル基、アジリジニル基およびオキセタン基等を含む置換基が挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリレート基、スチリル基、オキシラニル基もしくはオキセタン基を含む置換基が好ましく、(メタ)アクリレート基またはスチリル基を含む置換基がより好ましい。
【0074】
特に、(メタ)アクリレート基を含む置換基としては、下記一般式(V)で表されるエチレン性不飽和二重結合を有する基であることが好ましい。
【0076】
上記一般式(V)中、R
3は水素原子またはメチル基であり、水素原子が好ましい。
また、上記一般式(V)中、L
1は、単結合、または、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる二価の連結基であり、単結合、−CO−NH−または−COO−が好ましく、単結合または−CO−NH−が特に好ましい。
【0077】
上記式(I)中、nは、0〜4の整数を表し、0または1を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
また、mは、1または2を表し、1を表すことが好ましい。
また、L
100としては、例えば、二価の連結基として、単結合、または、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリール基、および、それらの組み合わせから選ばれる二価の連結基が挙げられる。
これらのうち、置換もしくは無置換のアリーレン基がより好ましい。
また、L
100が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基については、下記一般式(VI)中のR
1およびR
2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、これらの基が有する置換基としては、例えば、特開2013−054201号公報の[0046]段落に記載された置換基などが挙げられる。
【0078】
上記式(I)中、Qは、少なくとも1つのホウ素原子を含有する置換基であり、ポリマーフィルムに吸着して結合することができる基であることが好ましい。
例えば、ポリマーフィルムが、表面処理等により表面にヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する場合は、ポリマーフィルムのヒドロキシル基またはカルボキシル基と結合できる基が好ましい。
なお、「ポリマーフィルムに吸着して結合することができる基」とは、ポリマーフィルムを構成している材料が有する構造と相互作用して、ポリマーフィルムに化学吸着可能な基を意味する。
【0079】
少なくとも1つのホウ素原子を含有する置換基としては、下記一般式(VI)で表される置換基などが挙げられる。
【0081】
上記一般式(VI)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換のアリール基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。
また、上記一般式(VI)中のR
1およびR
2は、R
1およびR
2が連結してアルキレン基、アリール基、またはこれらの組み合わせからなる連結基を構成していてもよい。
【0082】
上記一般式(VI)中、R
1およびR
2がそれぞれ表す置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基には、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基が含まれる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝状、または環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、1個から4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と不飽和五員環とが縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0083】
また、上記一般式(VI)中、R
1およびR
2がそれぞれ表す置換もしくは無置換のヘテロアリール基の例には、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環上の水素原子を1個除し、ヘテロアリール基としたものが含まれる。
窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等が挙げられる。
【0084】
上記一般式(VI)中のR
1およびR
2として好ましくは水素原子である。
【0085】
また、上記一般式(VI)中のR
1およびR
2、ならびに、上記式(I)中のL
100は、可能な場合はさらに1個以上の置換基によって置換されていてもよい。これらの炭化水素基は任意の置換基によって1個以上置換されていてもよい。置換基としては水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができる。
【0086】
上記式(I)で表される化合物の分子量としては、120〜1200が好ましく、180〜800がより好ましい。
【0087】
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2007−219193号公報の段落[0035]〜[0040]に記載の具体例に例示されている化合物の他に以下の化合物が挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。もちろん、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0091】
上記式(I)で表される化合物は、上述した通り、液晶組成物中の液晶性化合物の質量に対して0.5%〜7質量%含有しており、1〜5質量%含有していることが好ましく、3〜5質量%含有していることがより好ましい。
上記式(I)で表される化合物の配合量を0.5質量%以上とすることで密着性を向上でき、7質量%以下とすることで配向性を向上できる。
なお、液晶性化合物が複数種含まれている時は、その合計に対しての割合である。
【0092】
本発明においては、上記式(I)で表される化合物は、液晶層中で膜厚方向において、ポリマーフィルムに近い側に偏在していることが好ましい。
ここでいう偏在とは、化合物そのものとして偏在している場合の他、液晶層が液晶性組成物の重合物である場合は重合後の反応生成物としてその分布が偏在していることも包含する概念である。
具体的には、本発明の光学フィルムのうち、第1の態様に係る光学フィルムは、後述する式(1−1)で表される偏在値が20〜80%を満たし、第2の態様に係る光学フィルムは、後述する式(1−2)で表されるピーク強度比が1.1〜5.0を満たすものである。
【0093】
式(1−1) S
0.1/S
total×100%
上記式(1−1)中、S
totalは、飛行時間型二次イオン質量分析法(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF−SIMS)で検出されるBO
2−の二次イオン強度の積分値を表す。
また、S
0.1は、液晶層の、ポリマーフィルムとの界面から液晶層の膜厚の1/10の距離までの領域における、TOF−SIMSで検出されるBO
2−の二次イオン強度の積分値を表す。
なお、TOF−SIMSにおいてBO
2−を検出している理由は、検出されるBO
2−の二次イオン強度が、主に、液晶層中の上記式(I)で表される化合物のホウ素原子に由来する二次イオン強度と考えられるためである。
【0094】
式(1−2) P
1/P
ave
上記式(1−2)中、P
1は、TOF−SIMSで検出されるBO
2−の二次イオン強度のピークのうち、最もポリマーフィルム側に存在しているピークの強度を表す。
また、P
aveは、P
1のピーク強度を算出したピークの位置よりもポリマーフィルムから離れた側における、TOF−SIMSで検出されるBO
2−の二次イオン強度の平均値を表す。ただし、液晶層のポリマーフィルムを設けた表面とは反対側の表面に最も近いピークの二次イオン強度は、P
aveの算出からは除くものとする。
【0095】
ここで、TOF−SIMSの測定方法は、まず、液晶層の表面に対して、TOF−SIMSを用いて、表面の二次イオン強度を測定して行う。次いで、スパッタ銃を用いて測定面表面をエッチングし、エッチングした表面の二次イオン強度を測定する。その後、エッチングと測定のサイクルを液晶層のポリマーフィルム側の界面まで繰り返し、二次イオン強度の分布(マッピング)を作成し、上述した二次イオン強度の積分値およびピークの強度の算出に用いた。
【0096】
また、TOF−SIMSの測定条件は、ULVAC−PHI社製 TRIFT V nanoTOF(商品名)を用いて、高質量分解能モード、測定範囲100mm
2、積算5回/サイクルで測定した。帯電補正に低速電子銃を使用し、エッチングにはAr−GCIB(Ar2500+、20kV、2nA)を500mm
2、5s/サイクルで使用した。
また、液晶層に存在する上記式(I)で表される化合物のホウ素原子は、フラグメント(BO
2−)を検出することで観察した。
【0097】
上記式(1−1)で表される偏在値が20〜80%を満たし、または、上記式(1−2)で表されるピーク強度比が1.1〜5.0を満たすことで、ポリマーフィルムと液晶層の密着性を効果的に改善することができる。
また、上記式(I)で表される化合物の種類、上述したポリマーフィルムの表面の水接触角、または、液晶組成物に含まれる溶剤種を調整することで、偏在値やピーク強度比を調整することができる。
【0098】
{その他の添加剤}
本発明の光学フィルムが有する液晶層または液晶層を形成する液晶組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の添加剤を配合してもよい。
他の添加剤としては、例えば、垂直配向剤が挙げられる。垂直配向剤としては、ピリジニウム化合物やオニウム化合物を使用することが好ましく、これら化合物を含有させることで、液晶性化合物のポリマーフィルム界面における垂直配向を促進する垂直配向剤として作用するとともに、液晶性化合物の配向状態を固定した液晶層とポリマーフィルムとの界面の密着性改善にも寄与する。ピリジニウム化合物については、例えば、特開2007−093864号公報の[0030]〜[0052]、オニウム化合物については、例えば、特開2012−208397号公報の[0027]〜[0058]に記載があり、これらの内容は本明細書に取り込まれる。
また、液晶性化合物の配向状態を固定した液晶層は、必要に応じて、空気界面側の配向を制御する空気界面側配向制御剤(例えば、フルオロ脂肪族基を有する繰り返し単位を含む共重合体)を含有していてもよい。
また、液晶組成物は、例えば、重合開始剤を配合することができる。重合開始剤としては、特開2010−84032号公報の段落[0099]〜[0100]、特開2007−219193号公報の段落[0065]〜[0067]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に取り込まれる。重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE907、184、819、TPO、OXE01、OXE02、127、2959(BASF社製)等が挙げられ、重合開始剤を2種以上併用してもよい。また、ベンゾフェノン類およびチオキサントン類等の各種増感剤、ならびに、各種連鎖移動剤を組み合わせて用いることもできる。連鎖移動剤としては、チオール類が挙げられ、市販品としては、例えば、カレンズMT(登録商標。以下同様。)PE1、BD1、NR1(昭和電工製)等が挙げられる。
また、液晶組成物は、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。具体的には、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート]、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレートなど〕、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)、ならびに、メタクリルアミドが挙げられる。なお、これらのモノマーは2種以上併用してもよい。
【0099】
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも略す。)は、シクロオレフィン系ポリマーを含むポリマーフィルムの表面に対して、水接触角が5°〜65°となるように表面処理を施す表面処理工程と、表面処理を施した表面に対して、液晶性化合物と上記式(I)で表される化合物と溶剤とを含む液晶組成物を接触させた後、液晶層を形成する液晶層形成工程とを有する。
また、上記液晶組成物は、上記式(I)で表される化合物を、液晶性化合物の質量に対して0.5〜7.0質量%含有する組成物である。
【0100】
〔表面処理工程〕
本発明の製造方法が有する表面処理工程は、ポリマーフィルム表面に対して、水接触角が5°〜65°となるように表面処理する工程である。水接触角の測定方法については前述の通りである。
【0101】
また、表面処理工程は、ポリマーフィルム表面にヒドロキシル基またはカルボキシル基を付加する工程であることが好ましい。具体的な手段は各種公知のものを用いることができるが、コロナ処理が好ましい。
【0102】
{コロナ処理}
コロナ処理としては、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、10W・min/m2〜1000W・min/m
2、好ましくは20W・min/m
2〜500W・min/m
2、より好ましくは30W・min/m
2〜250W・min/m
2である。
【0103】
〔液晶層形成工程〕
本発明の製造方法が有する液晶層形成工程は、表面処理を施した表面に対して、液晶性化合物と上記式(I)で表される化合物と溶剤とを含む液晶組成物を接触させた後、液晶層を形成する工程である。
液晶組成物を接触させる方法は特に限定はなく、塗布等、各種公知の方法を用いることができる。
また、液晶層形成工程においては、大気雰囲気下で紫外線照射することで液晶性化合物を固定化することが好ましい。
【0104】
ここで、上述した染み込み層を制御する観点から、溶剤はポリマーフィルムに対して溶解能も膨潤能も有さない溶剤とすることが好ましい。ポリマーフィルムに対する溶解能も膨潤能も有さない溶剤とは、ポリマーフィルムと相溶性の低い溶剤をいい、ポリマーフィルムに対しての溶解能や膨潤能に応じて使い分けることができる。
【0105】
なお、ポリマーフィルムに対する溶解能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさのポリマーフィルムを該溶剤の入った15cm
3の瓶に室温下(25℃)で60秒浸漬させて取り出した後に、浸漬させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したとき、ポリマーフィルム成分のピーク面積が400mV/sec以上である溶剤のことを意味する。
【0106】
ポリマーフィルムに対する膨潤能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさのポリマーフィルムを該溶剤の入った15cm
3の瓶に縦に入れ、25℃で60秒浸漬し、適宜該瓶を揺らしながら観察し、折れ曲がりや変形が見られる溶剤を意味する。なお、ポリマーフィルムは膨潤した部分の寸度が変化し折れ曲がりや変形として観察される。膨潤能の無い溶媒では折れ曲がりや変形といった変化が見られない。
【0107】
本発明に好ましく用いられる溶剤の例としては、メタノール、エタノール、シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
一方で、溶剤がポリマーフィルムに対して溶解能または膨潤能を有するかどうかは、ポリマーフィルムの成分と溶剤の組み合わせのみならず、ポリマーフィルムを製造する際の製造方法によっても影響があるため、ポリマーフィルムに応じて溶剤を選択することが好ましい。酢酸メチル等のエステル系溶剤、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒が、ポリマーフィルムに対する溶解能または膨潤能と、液晶性化合物の溶解安定性とのバランスに優れ好ましく用いることができる。
【0109】
<偏光板>
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルムと偏光子とを有する。
偏光子の、光学フィルムと反対側には別途光学フィルムを設けてもよいし、硬化樹脂層を配置してもよいし、後述の画像表示装置の別の部材と直接貼りあわせてもよい。
なお、本発明の光学フィルムは、ポリマーフィルム側を偏光子側として配置しても、液晶層側を偏光子側として配置してもよい。
【0110】
偏光子と光学フィルムの積層には、接着剤を用いることができる。
偏光子と両面の偏光板保護フィルムの間の接着剤層は、その厚さを0.01〜30μm程度とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μmである。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される光学フィルムと偏光子との間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
【0111】
好ましい接着剤の一つとして、水系接着剤、すなわち、接着剤成分が水に溶解または分散しているものを挙げることができ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤が好ましく用いられる。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤において、ポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。
この接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキシル酸塩等が架橋剤として添加されていてもよい。水系接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層の厚みは通常、1μm以下である。
【0112】
もう一つの好ましい接着剤として、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射または加熱により硬化する、カチオン重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物や、ラジカル重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物等が挙げられる。特に、偏光子と光学フィルムが有する液晶層との貼合には、紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。カチオン重合性化合物としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、特開2004−245925号公報に詳細に説明されている化合物を用いることができる。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であれば特に限定されず、単官能ラジカル重合性化合物、分子内に2個以上の重合性基を有する多官能ラジカル重合性化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられ、これらの化合物を単独で用いても、組み合わせて用いても良い。例えば、特開2015−11094号公報に詳細に説明されている化合物を用いることができる。また、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0113】
硬化性接着剤を用いる場合には、貼合ロールを用いてフィルムを貼合した後、必要に応じて乾燥を行ない、活性エネルギー線を照射するかまたは加熱することにより硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。
【0114】
また、光学フィルムと偏光子とを接着剤で貼合するにあたり、接着強度向上や、光学フィルム表面への接着剤の濡れ性を改善する目的で、光学フィルムの、偏光子と対向する面に表面処理(例えばグロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理)や易接着層形成等をしてもよい。特開2007−127893号公報、特開2007−127893号公報等に記載されている易接着層の材料や形成法などを用いることができる。
【0115】
光学フィルムの液晶層側と偏光子をポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤で貼合する場合には、液晶層表面のグロー放電処理、コロナ放電処理や、液晶層へポリビニルアルコールと親和性の高い添加剤を添加し、接着強度向上させることが好ましい。
また、光学フィルムの液晶層側と偏光子を、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する接着剤を用いて貼合する場合には、液晶層表面をグロー放電処理、またはコロナ放電処理しておくことが、接着強度向上や、光学フィルム表面への接着剤の濡れ性改善の観点で好ましい。更に、液晶層がハーフキュアの状態で光学フィルムを作製しておき、偏光子と接着貼合した際の活性エネルギー線照射または加熱によってフルキュアする事で、高い接着性を得ることができる。
【0116】
また、本発明の偏光板は、保護フィルムを有していてもよい。
なお、保護フィルムを有する場合は、偏光子と光学フィルムとの間や、光学フィルムの偏光子とは反対側等に、粘着剤または接着剤を介して配置してもよい。
【0117】
〔偏光子〕
本発明の偏光板が有する偏光子は、特に限定はなく、自然光を特定の直線偏光に変換する機能を有するいわゆる直線偏光子であればよい。偏光子としては、特に限定されないが、吸収型偏光子を利用することができる。
【0118】
本発明に用いられる偏光子の素材は特に限定はなく、通常用いられている偏光子を利用することができ、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子のいずれも用いることができる。
【0119】
本発明においては、偏光子の厚みは特に限定されないが、3μm〜60μmであることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましく、5μm〜15μmであることが更に好ましい。
【0120】
〔保護フィルム〕
保護フィルムの材料としては特に限定されず、例えばセルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、ポリオレフィン、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))、などが挙げられる。このうちセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0121】
保護フィルムの光学特性としては、本発明の偏光板を画像表示装置に使用した際に表示性能が向上する理由から、下記式(8)および下記式(9)を満たすことが好ましい。
式(8) 0nm≦Re3(550)≦10nm
式(9) −40nm≦Rth3(550)≦40nm
【0122】
特に本発明の光学フィルムと偏光子との間や、光学フィルムの偏光子とは反対側等に保護フィルムを設ける場合においては、保護フィルムは、下記式(10)および下記式(11)の光学特性を満たす波長分散補償層であることが好ましい。
式(10) 3nm≦|Rth(450)−Rth(550)|≦30nm
式(11) 0nm≦|Rth(450)|<30nm、または、0nm≦|Rth(550)|<30nm
【0123】
偏光子と、上記式(10)および(11)を満たす保護フィルムと、本発明の光学フィルムとを積層した偏光板とすることで、屈折率の波長分散性が是正され、全可視光波長域にわたり理想的な光学補償を実現することができる。
【0124】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光板と、画像表示素子を有する。
また、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光板と、画像表示素子と、対向偏光板とを有し、画像表示素子が、液晶セルであり、対向偏光板が、偏光子と、上記式(10)および上記式(11)を満たす保護フィルム(波長分散補償層)とを有する対向偏光板を有し、保護フィルムが液晶セル側となるように配置された画像表示装置であることが好ましい。
式(10) 3nm≦|Rth3(450)−Rth3(550)|≦30nm
式(11) 0nm≦|Rth3(450)|<30nm、または、0nm≦|Rth3(550)|<30nm
【0125】
〔画像表示素子〕
本発明に用いられる画像表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであることが好ましく、液晶セルであることがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、画像表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、画像表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であることが好ましく、液晶表示装置であることがより好ましい。
【0126】
{液晶セル}
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment
)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、FFSやIPS(In−Plane−Switching)モード、または、TN(TwistedNematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0127】
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0128】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、および特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
【0129】
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0130】
{有機EL表示パネル}
本発明に用いられる画像表示素子として用いられる有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0131】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0132】
[実施例1]
<光学フィルムの作製>
シクロレオレフィンポリマーフィルム(JSR(株)製 商品名:アートンフィルム、Re=95nm、Rth=100nm、膜厚20μm)の片面を放電量125W・min/m
2でコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に以下の組成で調製した液晶層形成用組成物1を、#3.0のワイヤーバーで塗布した。
次いで、組成物の溶媒の乾燥および液晶性化合物の配向熟成のために、70℃の温風で90秒加熱した。
次いで、窒素パージ下酸素濃度0.1%で40℃にて紫外線照射(300mJ/cm
2)を行い、液晶性化合物の配向を固定化し、実施例1の光学フィルムを作製した。
【0133】
――――――――――――――――――――――――――――――
液晶層形成用組成物1
――――――――――――――――――――――――――――――
下記液晶性化合物R1 100.0質量部
下記配向助剤(A1) 1.0質量部
下記一般式(I)で表される化合物B1 1.0質量部
下記重合開始剤(P1) 3.0質量部
下記増感剤(P2) 1.0質量部
下記界面活性剤(S1) 0.4質量部
酢酸メチル 250.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0134】
・液晶性化合物R1
下記液晶性化合物(RA)(RB)(RC)の83:15:2(質量比)の混合物
【化9】
【0135】
・配向助剤A1
【化10】
【0136】
・式(I)で表される化合物B1
【化11】
【0137】
・重合開始剤P1
【化12】
【0138】
・増感剤P2
【化13】
【0139】
・界面活性剤S1
【化14】
【0140】
作製した光学フィルムについて、ポリマーフィルムの膜厚、Re(550)、Rth(550)、水接触角、液晶層の膜厚、Re(550)、Rth(550)、上記式(I)で表される化合物の偏在値を、上述した方法にしたがって測定した。結果を下記表1に示す。
【0141】
<評価>
〔配向性の評価〕
作製した光学フィルムの液晶層に関して、液晶層の膜厚1μmに対する|Rth(550)|の値を計算し、下記の基準で評価した。なお、液晶性化合物が同一であれば、配向性が高い方が、液晶層の膜厚1μmに対する|Rth(550)|は大きくなる。
よって、液晶層の膜厚1μmに対する|Rth(550)|で、配向性を評価した。結果を下記表1に示す。
A:110nm/μm超
B:100nm/μm超110nm/μm以下
C:100nm/μm以下
【0142】
〔密着性の評価〕
作製した光学フィルムの液晶層側に、1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。
ニチバン(株)製のセロテープ(登録商標)を圧着し、1分間放置した後に勢いよく剥離した。液晶層の剥がれの有無を目視で観察し、各升内の1/4以上の面積(0.25mm
2以上)が剥離しているものを剥離升とみなして、剥離升数をカウントし、液晶層とポリマーフィルムとの密着性を下記の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
A:80〜100升
B:51〜79升
C:0〜50升
【0143】
【表1】
【0144】
[実施例2〜17、比較例1〜4および比較例6〜9]
ポリマーフィルムの種類、膜厚、Re(550)、Rth(550)、液晶性化合物の種類、上記式(I)で表される化合物の種類、添加量、液晶層の厚みを上記表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜17、比較例1〜4および比較例6〜9の光学フィルムを作製し、評価を行った。結果を上記表1に示す。
なお、上記表1中、実施例16および17については、ディスコティック液晶性化合物を使用しており、他の実施例とは位相差が異なる理由から、液晶層の膜厚1μmに対する|Rth(550)|の代わりに、液晶層の膜厚1μmに対するRe(550)の値で配向性を評価した。なお、評価は、上述した液晶層の膜厚1μmに対する|Rth(550)|と同様の基準で行った。
【0145】
上記表1中、ポリマーフィルムの種類について、アートンはJSR(株)製 商品名:アートンフィルムを、ゼオノアは日本ゼオン(株)製 商品名:ゼオノアフィルムを意味する。また、表1に示す膜厚、Re(550)、Rth(550)となるように、未延伸のポリマーフィルムに対して、延伸処理を行い、各実施例、比較例のポリマーフィルムを作製した。
【0146】
また、変更した化合物の構造を下記に示す。
・液晶性化合物R2
【化15】
【0147】
・液晶性化合物D1
【化16】
【0148】
・液晶性化合物D2
下記ディスコティック液晶性化合物(DA)と(DB)の80:20(質量比)の混合物
【化17】
【0149】
・式(I)で表される化合物B2
【化18】
【0150】
・式(I)で表される化合物B3
【化19】
【0151】
[実施例18]
上記液晶組成物における酢酸メチル250.0質量部に代えて、アセトン250.0質量部を用い、ポリマーフィルムの厚み、Re(550)、Rth(550)、液晶性化合物の種類、上記式(I)で表される化合物の種類、添加量、液晶層の厚みを上記表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例18の光学フィルムを作製した。結果を上記表1に示す。
【0152】
[実施例19]
上記液晶組成物における酢酸メチル250.0質量部に代えて、アセトン205.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート37.5質量部、メタノール7.5質量部を用い、ポリマーフィルムの厚み、Re(550)、Rth(550)、液晶性化合物の種類、上記式(I)で表される化合物の種類、添加量、液晶層の厚みを上記表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして実施例19の光学フィルムを作製した。結果を上記表1に示す。
【0153】
[実施例20]
下記液晶層形成組成物2を用い、ポリマーフィルムの膜厚、Re(550)、Rth(550)、液晶層の厚みを上記表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして実施例20の光学フィルムを作製した。結果を上記表1に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶層形成用組成物2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物R1 100.0質量部
配向助剤(A1) 2.0質量部
上記式(I)で表される化合物B1 4.5質量部
単量体(K1) 8.0質量部
重合開始剤(P3) 5.0質量部
界面活性剤(S1) 0.3質量部
界面活性剤(S2) 0.5質量部
アセトン 229.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 42.0質量部
メタノール 8.4質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0154】
・単量体(K1):ビスコート#360(大阪有機化学工業株式会社製)
・重合開始剤(P3):OXE−01(BASF社製)
【0155】
・界面活性剤S2(重量平均分子量:11,200)
【化20】
【0156】
[比較例5]
上記液晶組成物における酢酸メチル250.0質量部に代えて、酢酸メチル242.5質量部とシクロヘキサンノン7.5質量部の混合物を用い、ポリマーフィルムの厚み、Re(550)、Rth(550)、液晶性化合物の種類、上記式(I)で表される化合物の種類、添加量、液晶層の厚みを上記表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして比較例5の光学フィルムを作製した。結果を上記表1に示す。
【0157】
[実施例21〜46および参考例1]
<保護フィルム1の作製>
〔コア層セルロースアシレートドープ1の作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
下記エステルオリゴマーA 10質量部
下記偏光子耐久性改良剤 4質量部
下記紫外線吸収剤 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0158】
・エステルオリゴマーA(分子量MW:750)
【化21】
【0159】
・偏光子耐久性改良剤
【化22】
【0160】
・紫外線吸収剤
【化23】
【0161】
〔外層セルロースアシレートドープ1の作製〕
上記のコア層セルロースアシレートドープ1の90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――
外層セルロースアシレートドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ1 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0162】
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
上記コア層セルロースアシレートドープ1とその両側に外層セルロースアシレートドープ1とを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、残留溶剤が3〜15%の状態で、横方向に1.1倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚さ40μmのセルロースアシレートフィルム1を作製し、保護フィルム1とした。
【0163】
<保護フィルム2の作製>
〔コア層セルロースアシレートドープ2の作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ2を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ2
――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
下記ポリエステル 12質量部
上記偏光子耐久性改良剤 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
・ポリエステル(数平均分子量800)
【化24】
【0165】
〔外層セルロースアシレートドープ2の作製〕
上記のコア層セルロースアシレートドープ2の90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ2を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0166】
〔セルロースアシレートフィルム2の作製〕
上記コア層セルロースアシレートドープ2と上記外層セルロースアシレートドープ2を平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープ2とその両側に外層セルロースアシレートドープ2とを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルム2を作製し、保護フィルム2とした。
【0167】
<セルロースアシレートフィルム3〜5の作製>
上記保護フィルム2の作製において、ドープ吐出量と延伸倍率の調整により膜厚および光学特性を種々調整して、下記表2に記載のセルロースアシレートフィルム3〜5を作製し、それぞれ保護フィルム3〜5とした。
【0168】
<保護フィルム6の作製>
〔コア層セルロースアシレートドープ3の作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ3を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ3
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
下記のエステル化合物1 5.9質量部
下記の糖エステル化合物2 2.0質量部
上記の紫外線吸収剤 2.4質量部
メチレンクロライド 266質量部
メタノール 58質量部
ブタノール 2.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0169】
・糖エステル化合物1
【化25】
【0170】
・糖エステル化合物2
【化26】
【0171】
〔外層セルロースアシレートドープ3の作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、外層セルロースアシレートドープ3を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――
外層セルロースアシレートドープ3
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
上記の糖エステル化合物1 5.9質量部
上記の糖エステル化合物2 2.0質量部
上記の紫外線吸収剤 2.4質量部
シリカ粒子分散液(平均粒径16nm)
(AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製)
0.078質量部
メチレンクロライド 339質量部
メタノール 74質量部
ブタノール 3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0172】
〔セルロースアシレートフィルム6の流延、製膜〕
上記コア層セルロースアシレートドープ3と上記外層セルロースアシレートドープ3を平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープ3とその両側に外層セルロースアシレートドープ3とを3層同時に流延口から−7℃に冷却したドラム上に流延した(ドラム流延機)。流延された膜にドラム上で34℃の乾燥風を270m3/分で当てた後、セルロースエステルフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターでクリップした。剥離の際、長手方向(搬送方向)に11.0%の延伸を行った。さらに、幅手方向に倍率を5.0%となるよう幅を保持しながら乾燥を行い、これを巻き取ってセルロースアシレートフィルム6を作製し、保護フィルム6とした。
【0173】
<保護フィルム7の作製>
〔PMMA(ポリメタクリル酸メチル)ドープの作製〕
下記のドープ組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、PMMAドープを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――
PMMAドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――
PMMA樹脂 100質量部
スミライザーGS(住友化学社製) 0.1質量部
ジクロロメタン 426質量部
メタノール 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0174】
〔PMMAフィルムの作製〕
前述のPMMAドープをステンレス製のバンド(流延支持体)に流延ダイから均一に流延した(バンド流延機)。流延膜中の残留溶媒量が20質量%になった時点で流延支持体から流延膜として剥離した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのPMMAフィルムを作製し、保護フィルム7とした。
【0175】
得られた各保護フィルムの膜厚、Re(550)、Rth(550)およびRth(450)を表2に示す。
【0176】
【表2】
【0177】
<保護フィルムのけん化処理>
上記作製した保護フィルム1〜7を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥し、保護フィルム表面の鹸化処理を行った。
【0178】
<光学フィルムの作製>
ポリマーフィルムの種類、膜厚、Re(550)、Rth(550)、液晶層の膜厚を下記表3に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例21〜46に用いる光学フィルムを作製した。
【0179】
<光学フィルムのコロナ処理>
上記作製した光学フィルム、保護フィルム7の、偏光子との貼り合わせ面に対して、放電量125W・min/m
2でコロナ処理を行った。
【0180】
<偏光板の作製>
下記表3に記載の構成となるように、上記作製した保護フィルム、ポリビニルアルコール系偏光子、光学フィルムを用いて貼りあわせた。
接着剤としては、ポリマーフィルムと保護フィルムとの貼合、および保護フィルム7と偏光子との貼合には総研科学社製SK2057を、それ以外にはPVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を用いた。
【0181】
<液晶表示装置の作製>
iPad(登録商標、Apple社製)の液晶セルから偏光板を剥し、IPSモードの液晶セルとして利用した。
剥がした偏光板の代わりに、下記表3に記載の構成となるように、上記作製した偏光板を液晶セルに総研科学社製SK2057を用いて貼合し、実施例21〜46、参考例1の液晶表示装置をそれぞれ作製した。
【0182】
なお、下記表3中、構成欄は、液晶表示装置の層構成、軸関係がそれぞれ
図2〜5の構成であることを表す。ここで、各層上の矢印は、偏光子においては吸収軸方向を、それ以外の層においては遅相軸方向を表す。また、保護フィルムの欄は、
図2〜5の各構成における保護フィルムa〜dとして、上記作製した保護フィルム1〜7のいずれを用いたかを表す。なし、についてはその位置に保護フィルムを配置しなかったことを表す。
また、参考例1については、本発明の光学フィルムを配置していない構成である。
【0183】
この貼合したiPad(登録商標)の表示性能を確認し、目視で全くムラが視認できないことを確認した。また、黒表示における斜め方向への光漏れが良好であり、カラーシフトもほとんどないことを確認した。また、下記の方法により、視野角コントラスト(視野角CR)と色味を測定した。評価結果を下記表3に示す。
【0184】
[製造例1〜3]
シクロレオレフィンポリマーフィルム(JSR(株)製 商品名:アートンフィルム、Re=275nm、Rth=0nm、膜厚130μm)の片面を放電量125W・min/m
2でコロナ処理を行い、この面を貼合面として本発明の光学フィルムに代えて用いた以外は他の実施例と同様に偏光板、液晶表示装置を構成し、下記の方法により、視野角コントラスト(視野角CR)と色味を測定した。評価結果を表3に示す。
【0185】
《視野角コントラスト、色味の測定》
各実施例、比較例の液晶表示装置について、測定機“EZ−Contrast XL88”(ELDIM社製)を用いて、方位角0°(水平方向)から反時計方向に359°まで1°刻み、および極角0゜(正面方向)から88゜までの1゜刻みの白表示における輝度(Yw)および黒表示における輝度(Yb)を測定し、コントラスト比(Yw/Yb)を算出し、方位角45°、極角60°方向においてコントラスト比を下記の評価基準で評価した。
A:コントラスト比の高い領域が特に広く、特に優れている(コントラスト比200以上)
B:コントラスト比の高い領域が広く、優れている(コントラスト比100〜200未満)
C:コントラスト比の高い領域が狭い(コントラスト比100未満)
【0186】
《色味の評価》
参考例1を基準とし、黒表示時の全方位角・全極角での色味変化を目視で評価した。
++++:ほぼ全方位、全極角で色味変化が見られない
+++: 極角が特に大きい場合(60°以上)のみパネルを回転させると特定の方位角でわずかな色味変化が見られるが、それ以外は色味変化が小さい
++: 極角が特に大きい場合(60°以上)のみパネルを回転させると色味付きが見られるが、極角が小さければ色味変化が小さい
+: パネル正面以外で全体に色味変化が見られるが、特定の方位角では色味変化が小さい
=:参考例と同程度(パネル正面以外では色味変化が見られる)
【0187】
【表3】
【0188】
[偏光板接着性の評価]
(接着剤の調製)
下記化合物を記載の比率で混合し、接着剤液Aを作製した。
アロニックスM−220(東亜合成株式会社製):20質量部
4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成株式会社製):40質量部
アクリル酸−2−エチルヘキシル(三菱化学株式会社製):40質量部
Irgacure907(BASF製):1.5質量部
KAYACURE DETX−S(日本化薬株式会社製):0.5質量部
【0189】
[実施例47]
偏光板の作製時の偏光子と本発明の光学フィルムの貼合方法を下記に変更した以外は、実施例34と同様にして偏光板、液晶表示装置を作製した。
偏光板を作製する際、接着剤液Aを光学フィルムの液晶層側に、厚み0.5μmになる様に塗設した。その後、接着剤塗布面を偏光子と貼り合わせ、大気雰囲気下40℃にて光学フィルムの基材側から紫外線を1000mJ/cm
2照射した。その後、60℃で3分間乾燥し、実施例47の偏光板を作製した。
【0190】
[実施例48]
光学フィルム作製時の液晶層の硬化条件を、窒素パージ下酸素濃度0.1%で40℃にて紫外線を10mJ/cm
2照射に変更した以外は、実施例47と同様にして偏光板、液晶表示装置を作製した。
【0191】
[実施例49]
光学フィルムの液晶層表面を放電量125W・min/m
2でコロナ処理してから、接着剤液Aと塗工し、偏光子と貼合した以外は、実施例48と同様にして、偏光板、液晶表示装置を作製した。
【0192】
[実施例50]
光学フィルム作製時の液晶層の硬化条件を大気雰囲気下で40℃にて紫外線を300mJ/cm
2照射に変更した以外は、実施例49と同様にして液晶層表面にコロナ処理を実施してから接着剤液Aを塗工し、偏光板、液晶表示装置を作製した。
【0193】
[実施例51]
液晶層形成時に、液晶層形成組成物3を用いた以外は、実施例50と同様にして実施例51の偏光板、液晶表示装置を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶層形成用組成物3
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物R1 100.0質量部
配向助剤(A1) 2.0質量部
式(I)で表される化合物B1 4.5質量部
下記単量体(K2) 8.0質量部
重合開始剤(P3) 2.0質量部
下記重合開始剤(P4) 5.0質量部
界面活性剤(S1) 0.3質量部
界面活性剤(S2) 0.5質量部
アセトン 229.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 42.0質量部
メタノール 8.4質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0194】
・単量体(K2):カレンズMT BD1(昭和電工株式会社製)
・重合開始剤(P4):IRGACURE127(BASF社製)
【0195】
作製した実施例47〜51の偏光板の視野角CR、Yw/Yb、色味は実施例34と同様の値を示した。また、実施例47〜51の偏光板の接着性を下記方法によって評価した結果、実施例47の偏光板はD判定であったのに対し、実施例48はC判定、実施例49はB判定、実施例50および実施例51はA判定と改善することを確認した。また、貼合前に液晶層表面にコロナ処理を施した実施例49〜51の偏光板は、接着剤のハジキ等も無く、良好な面状が得られた。
【0196】
<光学フィルムと偏光子の接着性評価>
接着性評価は、JIS K 5600−5−6−1に記載のクロスカット法にて評価を行った。
具体的には、作製した偏光板の光学フィルム表面に1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)製)で密着試験を行った。
新しいセロハンテープを貼ったあとに剥離し、以下の基準で判定した。
A:碁盤目中のマスの剥離が起こらない
B:碁盤目中のマスの剥離が無いものが50%以上100%未満
C:碁盤目中のマスの剥離が無いものが20%以上50%未満
D:碁盤目中のマスの剥離が無いものが20%未満
実用上問題が無いのはA、B、Cの基準である。Aの基準であることが好ましい。