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特許6622448バッテリ管理システムおよびその駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622448
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】バッテリ管理システムおよびその駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20190101AFI20191209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20191209BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G01R31/36
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 X
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-215323(P2013-215323)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-211427(P2014-211427A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年10月6日
【審判番号】不服2018-11314(P2018-11314/J1)
【審判請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0043023
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 永信
(72)【発明者】
【氏名】李 守眞
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲ヨン▼祐
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 梶田 真也
【審判官】 小林 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0041607(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/019005(WO,A1)
【文献】 特開2012−247339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36, H01M10/48, H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電流および電圧を測定して電流データおよび電圧データを取得するセンシング部と、
前記電流データおよび前記電圧データを用いて前記バッテリの容量を管理するMCUとを含み、
前記MCUは、
前記電流データおよび前記バッテリの内部抵抗を用いて、前記バッテリの現在の放電条件で使用不可能な使用不能容量を算出する使用不能容量算出部と、
前記バッテリが安定した時点で測定された電圧データのOCV(Open Circuit Voltage)を用いて、前記バッテリの既使用容量を算出する既使用容量算出部と、
前記既使用容量と前記既使用容量が算出された時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された第1電流積算値との差分に基づいて、前記バッテリの未充電容量を算出する未充電容量算出部とを含むことを特徴とするバッテリ管理システム。
【請求項2】
前記使用不能容量は、前記電圧データが放電中止電圧に到達して前記バッテリが完全放電になった場合、前記バッテリに残っている残余容量を意味することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ管理システム。
【請求項3】
前記センシング部は、前記バッテリの温度を測定して温度データをさらに取得するが、前記放電条件は、現在の放電時点で取得される前記電流データの大きさおよび前記温度データの大きさのうちの少なくとも1つを意味することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ管理システム。
【請求項4】
前記使用不能容量算出部は、前記MCUに予め格納された電流データおよび内部抵抗と使用不能容量との比例係数をさらに用いて、前記放電条件での使用不能容量を算出することを特徴とする請求項3に記載のバッテリ管理システム。
【請求項5】
前記使用不能容量算出部は、前記バッテリの内部抵抗を、前記放電条件での電流データの大きさによって決定される補正変数を用いて補正することを特徴とする請求項4に記載のバッテリ管理システム。
【請求項6】
前記MCUは、前記バッテリの最大容量、前記バッテリの未充電容量、前記使用不能容量を用いて、前記バッテリの使用可能な全体容量を算出する全体容量算出部を含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ管理システム。
【請求項7】
前記MCUは、前記電流データを積算して電流積算値を算出する電流積算部をさらに含み、
前記既使用容量が算出される時点の電流積算値は0であることを特徴とする請求項6に記載のバッテリ管理システム。
【請求項8】
前記満充電時点は、前記取得される電圧データの大きさが予め設定された満充電電圧値以上であり、前記取得される電流データの大きさが予め設定された値未満になる時点を意味することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ管理システム。
【請求項9】
前記MCUは、前記バッテリの最後の充電または放電直前の第1の安定した時点で取得された電圧データの第1OCVを用いて算出された第1放電深度、前記バッテリの最後の充電または放電後の第2の安定した時点で取得された電圧データの第2OCVを用いて算出された第2放電深度、および前記第1の安定した時点から前記第2の安定した時点までの前記電流データが積算された第2電流積算値を用いて、前記最大容量を算出する最大容量算出部をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のバッテリ管理システム。
【請求項10】
前記安定した時点は、予め設定された時間の間、前記バッテリから放電される電流データの大きさが予め設定された値未満であるか、または前記電圧データの大きさの変化が予め設定された値未満の場合のうちの少なくとも1つを満足する時点を意味することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のバッテリ管理システム。
【請求項11】
前記最大容量算出部は、前記第2電流積算値が予め設定された値以上の場合、前記最大容量を算出することを特徴とする請求項9に記載のバッテリ管理システム。
【請求項12】
前記MCUは、前記全体容量、前記未充電容量、前記既使用容量、および前記既使用容量が算出された時点から現時点までの前記電流データが積算された第3電流積算値を用いて、前記バッテリの実際に使用可能な残余容量を算出する残余容量算出部をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のバッテリ管理システム。
【請求項13】
前記内部抵抗は、基準内部抵抗、前記放電条件での温度データおよび温度補正変数を用いて算出されるが、
前記基準内部抵抗は、任意の一地点でのSOCを用いて推定されたOCV、前記任意の一地点で測定された電流、電圧、温度データおよび前記温度補正変数のうちの少なくとも1つを用いて算出される抵抗を意味し、前記温度補正変数は、前記内部抵抗を標準化するための温度と内部抵抗との関係の関係データを意味することを特徴とする請求項3に記載のバッテリ管理システム。
【請求項14】
バッテリの電流、電圧および温度を測定して電流データを取得するセンシング部と、
前記電流データおよび電圧データを用いて前記バッテリの容量を管理するMCUとを含み、
前記MCUは、
前記バッテリが安定した時点で取得された電圧データのOCVを用いて、前記バッテリの既使用容量を算出する既使用容量算出部と、
前記既使用容量と前記既使用容量の算出時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された電流積算値との差分に基づいて、前記バッテリの未充電容量を算出する未充電容量算出部とを含むことを特徴とするバッテリ管理システム。
【請求項15】
バッテリの電流データおよび電圧データを受信するステップと、
前記バッテリの安定した時点で受信された電圧データのOCVを用いて、前記バッテリの既使用容量を算出するステップと、
前記既使用容量と前記既使用容量の算出時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された電流積算値との差分に基づいて、前記バッテリの未充電容量を算出するステップとを含むことを特徴とするバッテリ理方法。
【請求項16】
前記電流データおよび前記バッテリの内部抵抗を用いて、前記バッテリの現在の放電条件で使用不可能な使用不能容量を算出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のバッテリ理方法。
【請求項17】
前記バッテリの最大容量、前記バッテリの未充電容量、前記使用不能容量を用いて、前記バッテリの使用可能な全体容量を算出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のバッテリ理方法。
【請求項18】
前記全体容量、前記未充電容量、前記既使用容量、および前記既使用容量算出時点から現時点までの前記電流データが積算された電流積算値を用いて、前記バッテリの実際に使用可能な残余容量を算出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載のバッテリ理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ管理システムおよびその駆動方法に関するものであって、より詳細には、バッテリの容量を管理するバッテリ管理システムおよびその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、高エネルギー密度の非水電解液を用いた高出力二次電池が開発されている。電気自動車などのように、モータ駆動のための大電力を必要とする機器に使用できるように、前記高出力二次電池は、複数個を直列に連結して大容量の二次電池(以下、「バッテリ」という)を構成する。
【0003】
前記のようなバッテリの場合、複数の二次電池の充放電などを制御してバッテリが適正な動作状態に維持されるように管理する必要性がある。このために、各二次電池の電圧、バッテリの電圧および電流などを測定して各二次電池の充放電を管理するバッテリ管理システム(Battery Management System、BMS)が備えられる。
【0004】
バッテリを効率的に用いるためには、バッテリ管理システムでバッテリの容量を正確に推定することが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術の問題を解決するために、本発明の目的は、バッテリの容量を正確に推定することができるバッテリ管理システムおよびその駆動方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、下記の実施形態を通じて当業者によって導出できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の好ましい一実施形態によれば、バッテリの電流、電圧を測定して電流データおよび電圧データを取得するセンシング部と、前記電流データおよび前記電圧データを用いて前記バッテリの容量を管理するMCUとを含むが、前記MCUは、前記電流データおよび前記バッテリの内部抵抗を用いて、前記バッテリの現在の放電条件で使用不可能な使用不能容量を算出する使用不能容量算出部を含むバッテリ管理システムが提供される。
【0008】
前記使用不能容量は、前記電圧データが放電中止電圧に到達して前記バッテリが満放電になった場合、前記バッテリに残っている残余容量を意味することができる。
【0009】
前記センシング部は、前記バッテリの温度を測定して温度データをさらに取得するが、前記放電条件は、現在の放電時点で取得される前記電流データの大きさおよび前記温度データの大きさのうちの少なくとも1つを意味することができる。
【0010】
前記使用不能容量算出部は、前記MCUに予め格納された電流データおよび内部抵抗と使用不能容量との比例係数をさらに用いて、前記放電条件での使用不能容量を算出することができる。
【0011】
前記使用不能容量算出部は、前記バッテリの内部抵抗を、前記放電条件での電流データの大きさによって決定される補正変数を用いて補正することができる。
【0012】
前記MCUは、前記バッテリの最大容量、前記バッテリの未充電容量、前記使用不能容量を用いて、前記バッテリの使用可能な全体容量を算出する全体容量算出部を含むことができる。
【0013】
前記MCUは、前記バッテリが安定した時点で測定された電圧データのOCV(Open Circuit Voltage)を用いて、前記バッテリの既使用容量を算出する既使用容量算出部をさらに含むことができる。
【0014】
前記MCUは、前記電流データを積算して電流積算値を算出する電流積算部をさらに含むが、前記電流積算部は、前記既使用容量が算出される時点の電流積算値を0に設定することができる。
【0015】
前記MCUは、前記既使用容量、および前記既使用容量が算出された時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された第1電流積算値を用いて、前記バッテリの未充電容量を算出する未充電容量算出部をさらに含むことができる。
【0016】
前記満充電時点は、前記取得される電圧データの大きさが予め設定された満充電電圧値以上であり、前記取得される電流データの大きさが予め設定された値未満になる時点を意味することができる。
【0017】
前記MCUは、前記バッテリの最後の充電または放電直前の第1の安定した時点で取得された電圧データの第1OCVを用いて算出された第1放電深度、前記バッテリの最後の充電または放電後の第2の安定した時点で取得された第2OCVを用いて算出された第2放電深度、および前記第1の安定した時点から前記第2の安定した時点までの前記電流データが積算された第2電流積算値を用いて、前記最大容量を算出する最大容量算出部をさらに含むことができる。
【0018】
前記安定した時点は、予め設定された時間の間、前記バッテリから放電される電流データの大きさが予め設定された値未満であるか、または前記電圧データの大きさの変化が予め設定された値未満の場合のうちの少なくとも1つを満足する時点を意味することができる。
【0019】
前記最大容量算出部は、前記第2電流積算値が予め設定された値以上の場合、前記最大容量を算出することができる。
【0020】
前記MCUは、前記全体容量、前記未充電容量、前記既使用容量、および前記既使用容量が算出された時点から現時点までの前記電流データが積算された第3電流積算値を用いて、前記バッテリの実際に使用可能な残余容量を算出する残余容量算出部をさらに含むことができる。
【0021】
前記内部抵抗は、基準内部抵抗、前記放電条件での温度データおよび温度補正変数を用いて算出されるが、前記基準内部抵抗は、前記任意の一地点でのSOC(State of Charge)を用いて推定されたOCV、前記任意の一地点で測定された電流、電圧、温度データ、および前記温度補正変数のうちの少なくとも1つを用いて算出される抵抗を意味し、前記温度補正変数は、前記内部抵抗値を標準化するための温度と内部抵抗との関係の関係データを意味することができる。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、バッテリの電流、電圧および温度を測定して電流データを取得するセンシング部と、前記電流データおよび前記電圧データを用いて前記バッテリの容量を管理するMCUとを含むが、前記MCUは、前記バッテリが安定した時点で取得された電圧データのOCVを用いて、前記既使用容量を算出する既使用容量算出部と、前記既使用容量、および前記既使用容量算出時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された電流積算値を用いて、前記バッテリの未充電容量を算出する未充電容量算出部とを含むバッテリ管理システムが提供される。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、バッテリの電流データおよび電圧データを受信するステップと、前記バッテリの安定した時点で受信された電圧データのOCVを用いて、前記バッテリの既使用容量を算出するステップと、前記既使用容量、および前記既使用容量算出時点から前記バッテリの満充電時点までの電流データが積算された電流積算値を用いて、前記バッテリの未充電容量を算出するステップとを含むバッテリ管理システムの駆動方法が提供される。
【0024】
前記電流データおよび前記バッテリの内部抵抗を用いて、前記バッテリの現在の放電条件で使用不可能な使用不能容量を算出するステップをさらに含むことができる。
【0025】
前記バッテリの最大容量、前記バッテリの未充電容量、前記使用不能容量を用いて、前記バッテリの使用可能な全体容量を算出するステップをさらに含むことができる。
【0026】
前記全体容量、前記未充電容量、前記既使用容量、および前記既使用容量算出時点から現時点までの前記電流データが積算された電流積算値を用いて、前記バッテリの実際に使用可能な残余容量を算出するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、現在の放電条件を考慮したバッテリの容量を効率的に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態にかかるバッテリを示す図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるバッテリ管理システムのブロック図を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるOCVとSOCとの関係を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態にかかる使用不能容量と、電流、温度、内部抵抗との関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態にかかるバッテリの内部抵抗とDoDの関係を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態にかかるバッテリの最大容量、全体容量、未充電容量、既使用容量、使用不能容量、残余容量の間の関係を示す図である。
図7】本発明の一実施形態にかかるバッテリ管理システムの駆動方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
その他実施形態の具体的な事項は詳細な説明および図面に含まれている。
【0030】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、以下の説明において、ある部分が他の部分に連結されているとする時、これは、直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に別の素子を挟んで電気的に連結されている場合も含む。また、図面において、本発明と関係のない部分は本発明の説明を明確にするために省略し、明細書全体にわたって類似の部分については同一の図面符号を付した。
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明について説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態にかかるバッテリを示す図である。
【0033】
図1を参照すれば、バッテリ10は、大容量の電池モジュールで、複数の二次電池11が一定間隔をおいて連続的に配列され、前記複数の二次電池が内部に配置され、冷却媒体が流通するハウジング13と、前記バッテリの充放電を管理するバッテリ管理システム(Battery Management System、BMS)20とを含むことができる。
【0034】
二次電池11の間および最外側の二次電池11に電池隔壁12が配置され、この電池隔壁12は、各二次電池11の間隔を一定に維持させながら温度制御用空気を流通させ、各二次電池11の側面を支持する機能を果たす。
【0035】
図1では、二次電池11が四角形の外形を有するものとして示されているが、二次電池11は円筒形構造であり得ることはもちろんである。
【0036】
バッテリ管理システム20は、バッテリ10に設けられた電流センサ、電圧センサおよび温度センサからデータを受け、前記データを用いてバッテリの容量を管理する。
【0037】
従来の一般的なバッテリ10の容量計算方法は、バッテリ10の放電効率を利用した電流積算と、放電末期の電圧を利用した容量補正を並行して使用するものである。満充電のバッテリ10を例に挙げると、放電初期および中期には放電効率テーブルと電流積算値を用いて容量を計算し、放電末期にはバッテリ10の電圧を用いて容量を補正する。
【0038】
しかし、前記方法は、3つの問題を抱えている。第一は、容量を計算するために用いられるパラメータ(放電効率テーブル、電圧補正テーブル)を固定された値として使用する。しかし、バッテリ10の特性は、劣化が進行するにつれて変化するため、前記方法は、時間の経過に伴って精度が減少する。
【0039】
第二の問題は、自己放電の計算にある。自己放電は、バッテリ10が不使用期間に自然に放電される現象である。このように放電される容量は電流計測で測定できないため、前記方法は、任意の固定された値を時間に応じて反映するが、正確度が低い問題がある。
【0040】
第三の問題は、バッテリ10の全体容量を知るためには、満充電から満放電まで放電経験が必要であることである。しかし、実際の使用環境では満放電近傍まで放電される場合が多くないため、バッテリ10の全体容量を計算することができる機会が少ない。前記3つの問題は、バッテリ10の容量計算において誤差を発生させる主な原因となる。
【0041】
したがって、本発明のバッテリ管理システム20は、バッテリの容量である既使用容量、未充電容量、最大容量、バッテリの使用不能容量、バッテリの実際に使用可能な全体容量、バッテリの残っている残余容量などを現在の放電条件を考慮して算出することによって、部分的に充放電が行われる環境においてもバッテリの容量を正確に計算することができる。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態にかかるバッテリ管理システムのブロック図を概略的に示す図である。
【0043】
図2に示されるように、バッテリ管理システム20は、センシング部200と、MCU(Main Controller Unit)300とを含むことができる。
【0044】
センシング部200は、電流センサ、電圧センサおよび温度センサによりバッテリの出力電流、電圧および温度を測定して電流データ、電圧データおよび温度データを取得し、これをMCU300に伝達する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、MCU300は、既使用容量算出部301と、電流積算部303と、未充電容量算出部305と、最大容量算出部307と、使用不能容量算出部309と、内部抵抗算出部311と、全体容量算出部313と、残余容量算出部315とを含むことができる。
【0046】
既使用容量算出部301は、バッテリが安定した時点で取得された電圧データのOCV(Open Circuit Voltage)を用いて、バッテリの既に使用された容量の既使用容量を算出する。
【0047】
ここで、バッテリの安定した時点は、予め設定された時間の間放電される電流データの大きさが予め設定された値未満であるか、またはバッテリの電圧の変化が予め設定された値未満の場合のうちの少なくとも1つを満足する時点を意味することができる。
【0048】
より詳細には、既使用容量算出部301は、バッテリが安定した時点の電圧データのOCV、およびOCVと固有容量(State of Charge、以下、SOCという)との関係データからSOCを推定する。具体的には、MCU300は、OCVとSOCとの間の関係を実験的に求めた関係データを予め格納することができる。このような関係をグラフで示すと図3の通りである。図3に示されるように、既使用容量算出部301は、前記OCV(Vocv1)に対応するSOC(SOC1)を検出する。次に、既使用容量算出部301は、前記推定されたSOCから既使用容量を算出する。
【0049】
一例として、バッテリの最大容量が1000mA/hで、推定されたバッテリの固有容量のSOCが40%であれば、バッテリの既に使用された容量の既使用容量は、最大容量の60%である600mA/hとして計算できる。
【0050】
電流積算部303は、センシング部200で取得される電流データを積算した電流積算値を算出する。
【0051】
ここで、電流データは、正(+)の値を有する充電電流、および負(−)の値を有する放電電流を含むことができる。したがって、同一量の充電および放電が行われると、電流積算値は0になる。
【0052】
本発明では、既使用容量が算出される時点が電流積算の基準点となる。すなわち、電流積算部303は、前記既使用容量が算出される時点の電流積算値を0に設定し、以後取得される電流データを積算して電流積算値を算出する。
【0053】
未充電容量算出部305は、既使用容量算出部301で算出された前記バッテリの既使用容量、および前記電流積算部303で算出された電流積算値を用いて、バッテリの未充電容量を算出する。
【0054】
一般的に、バッテリは、温度と内部抵抗によって最大容量まで充電されない。すなわち、バッテリが満充電と認識されたにもかかわらず充電されない容量が発生し、このような容量を、本発明では未充電容量として定義する。
【0055】
したがって、未充電容量を算出するための電流積算値は、バッテリの満充電時点までの電流データが積算された第1電流積算値であり得る。
【0056】
ここで、満充電時点は、センシング部200で取得される電圧データの大きさが予め設定された満充電電圧値以上であり、前記取得される電流データの大きさが予め設定された値未満になる時点を意味することができる。ここで、満充電電圧値は、バッテリの容量に応じて変化し得る値である。前記定義された満充電時点を認識する方法は一例に過ぎず、満充電時点を認識する多様な実施形態があり得ることは当業者にとって自明である。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、未充電容量を算出する<数式1>は、下記の通りである。
【数1】
【0058】
【数2】
【0059】
一例として、既使用容量が600mA/hで、電圧データが満充電電圧値以上になる瞬間の第1電流積算値が500mA/hの場合、未充電容量は100mA/hであり得る。
【0060】
最大容量算出部307は、バッテリの理論的最大容量を算出する。より詳細には、最大容量算出部307は、バッテリの最後の充電または放電直前の第1の安定した時点で取得された電圧データの第1OCVを用いて算出された第1放電深度(Depth of discharge、DoD)、前記バッテリの最後の充電または放電後の第2の安定した時点で取得された電圧データの第2OCVを用いて算出された第2放電深度、および前記第1の安定した時点から前記第2の安定した時点までの電流データが積算された第2電流積算値を用いて、最大容量を算出することができる。
【0061】
ここで、バッテリの安定した時点は、予め設定された時間の間バッテリの電流が放電されないか、またはバッテリの電圧の変化が予め設定された値未満の場合のうちの少なくとも1つを満足する時点を意味することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、最大容量を算出する数式2は、下記の通りである。
【数3】
【0063】
【数4】
【0064】
この時、放電深度は、下記の数式3のように表現できる。
【数5】
【0065】
ここで、DoDは0〜1の範囲を有する。すなわち、バッテリの満充電時にDoDは0の値を、満放電時にDoDは1の値を有する。
【0066】
したがって、最大容量算出部307は、前記第1の安定した時点および第2の安定した時点で取得された第1OCVおよび第2OCVを用いてSOCをそれぞれ推定し、前記数式3を用いて第1放電深度および第2放電深度を算出する。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、最大容量算出部307は、第2電流積算値が予め設定された値以上の場合に前記最大容量を算出することができる。好ましくは、最大容量算出部307は、第2電流積算値が前に算出された最大容量の20%以上の時に最大容量を算出することができる。第2電流積算値が少なすぎる場合、算出される最大容量の誤差が大きくなり得るからである。
【0068】
使用不能容量算出部309は、電流データおよびバッテリの内部抵抗を用いて、バッテリの現在の放電条件での使用不能容量を算出する。
【0069】
ここで、使用不能容量は、バッテリの放電に応じて電圧データが放電中止電圧に到達した場合、バッテリに残っている残存容量を意味する。すなわち、バッテリを使用する機器の駆動のためには最小必要電圧が存在し、最小必要電圧以下にバッテリの出力電圧が低下させる場合、機器は動作することができない。すなわち、バッテリの使用不能容量とは、バッテリが完全放電したわけではないが、バッテリの電圧データが機器駆動のための最小限の電圧、すなわち放電中止電圧以下に低下させる場合の、バッテリに残っている残存容量を意味する。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、使用不能容量算出部309は、MCUに予め格納された放電電流および前記バッテリの内部抵抗と使用不能容量との比例係数をさらに用いて、バッテリの現在の放電条件での使用不能容量を算出することができる。
【0071】
この時、放電条件は、バッテリの放電時の電流データの大きさおよび前記温度データの大きさのうちの少なくとも1つを意味することができ、使用不能容量は、下記の数式4のように表現できる。
【数6】
【0072】
【数7】
【0073】
ここで、補正変数は、バッテリ放電時の電流データの大きさに応じて決定される値を意味し、使用不能容量の算出時に内部抵抗値を補正する。
【0074】
図4は、本発明の一実施形態にかかる使用不能容量と電流、温度、内部抵抗との関係を示す図である。
【0075】
図4を参照すれば、A、B、Cグラフは、バッテリの放電電流の大きさがそれぞれa、b、cの時の、数式4によるグラフであり、A’、B’、C’グラフは、バッテリの放電電流の大きさがそれぞれa、b、cの時の、実験的に求めた使用不能容量と電流、温度、内部抵抗との関係グラフである。ここで、a、b、cは、a<b<cのような関係を有する。
【0076】
【数8】
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記内部抵抗は、バッテリの温度に応じて標準化(normalization)された抵抗値であり得、内部抵抗算出部311は、下記の数式5を用いてバッテリの内部抵抗を算出することができる。
【数9】
【0078】
【数10】
【0079】
より詳細には、基準内部抵抗(
【数11】
)は、バッテリの放電深度(DoD)が0〜0.7の領域中の、任意の一地点でのSOCを用いて推定されたOCV、電流データ、電圧データおよび温度補正変数を用いて算出された値であり得る。好ましくは、放電深度が0.4の状態で算出された抵抗値であり得る。
【0080】
図5は、本発明の一実施形態にかかるバッテリの内部抵抗とDoDとの関係を示すグラフである。
【0081】
図5を参照すれば、DoDが0〜0.7の領域の内部抵抗値は平坦であり、DoDが0.7を超える場合の内部抵抗値対比小さい値を有する。したがって、DoDが0〜0.7の領域、好ましくは、DoDが0.4の場合の内部抵抗値を利用する場合、算出される使用不能容量の誤差値を小さくすることができるという利点がある。
【0082】
【数12】
【0083】
【数13】
【0084】
全体容量算出部313は、前記算出されたバッテリの未充電容量、最大容量および使用不能容量を用いて、バッテリの現在の放電条件で使用可能な全体容量を算出する。バッテリの使用可能な全体容量は、下記の数式6のように表現できる。
【数14】
【0085】
【数15】
【0086】
残余容量算出部315は、バッテリの全体容量、未充電容量、既使用容量、および前記既使用容量が算出された時点から現時点までの電流データが積算された第3電流積算値を用いて、バッテリの現在の放電条件で残っている残余容量を算出する。バッテリの残余容量は、下記の数式7のように表現できる。
【数17】
【0087】
【数18】
【0088】
図6は、本発明の一実施形態にかかる、バッテリの最大容量、全体容量、未充電容量、既使用容量、使用不能容量、残余容量の間の関係を示す図である。
【0089】
図6を参照すれば、本発明のバッテリ管理システム20は、既使用容量(Qstart)および第1電流積算値(Qcc1)の差を用いて未充電容量(Qeoc)を算出し、現時点の使用不能容量(Qres)を算出してバッテリの現時点の放電条件による使用可能な全体容量(Qav)を算出することができる。すなわち、本発明は、現時点の放電条件を考慮して全体容量を新たに算出することによって、より正確なバッテリの容量管理が可能である。また、バッテリ管理システムは、現時点での使用可能な全体容量(Qav)、未充電容量(Qeoc)、既使用容量(Qstart)、および第3電流積算値(Qcc3)を用いて、現時点でのバッテリの残余容量(Qrm)を正確に算出することができる。
【0090】
つまり、本発明は、現時点の放電条件による容量(使用不能容量、全体容量、残余容量など)を毎回新たに算出することによって、放電効率テーブルと電流積算を用いてバッテリの容量を計算していた従来方式に比べて、バッテリの使用に応じて変更される劣化特性をさらに反映することができ、部分充放電の環境においてもバッテリの容量を正確に管理することができる。
【0091】
図7は、本発明の一実施形態にかかるバッテリ管理システムの駆動方法を示すフローチャートである。
【0092】
図7に示されるように、MCU(300)は、センシング部200から取得されたバッテリの電流データおよび電圧データを受信する(S700)。
【0093】
次に、MCU(300)は、前記取得された電流データおよび電圧データを用いて、バッテリが安定した状態、放電状態または満充電状態であるかを判断する(S705)。
【0094】
ステップS705でバッテリが安定した状態の場合、既使用容量算出部301は、安定した時点で測定された電圧データのOCVを用いて、既使用容量を算出する(S710)。
【0095】
ステップS705でバッテリが満充電状態の場合、未充電容量算出部305は、前記算出された既使用容量、および既使用容量が算出された時点から満充電時点までの電流データを積算した電流積算値を用いて、未充電容量を算出する(S715)。
【0096】
ステップS705でバッテリが放電状態の場合、使用不能容量算出部309は、放電時の電流データおよび内部抵抗を用いて、使用不能容量を算出する(S720)。
【0097】
次に、全体容量算出部313は、バッテリの最大容量、未充電容量、使用不能容量を用いて、バッテリの全体容量を算出する(S725)。
【0098】
最後に、残余容量算出部315は、バッテリの全体容量、未充電容量、既使用容量、および既使用容量が算出された時点から現在の放電時点までの電流積算値を用いて、バッテリの残余容量を算出する(S730)。
【0099】
以上、本発明では、具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施形態および図面によって説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたに過ぎず、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、説明された実施形態に限って定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものは本発明の思想の範疇に属する。
【符号の説明】
【0100】
10 バッテリ
20 バッテリ管理システム
200 センシング部
300 MCU
301 既使用容量算出部
303 電流積算部
305 未充電容量算出部
307 最大容量算出部
309 使用不能容量算出部
311 内部抵抗算出部
313 全体容量算出部
315 残余容量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7