【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、導体に絶縁被覆を被覆して、前記絶縁被覆の先端側を所定長さ剥いで前記導体を露出させた導体露出部を有する複数の被覆電線と、複数の前記導体露出部を内部に挿入した断面環状に形成した接続部材とで構成し、複数の前記導体露出部が導電可能に接続された電気接続構造体であって、少なくとも一本の前記被覆電線における前記導体を、アルミニウム系材料で構成したアルミニウム導体とするとともに、前記接続部材を、前記アルミニウム導体よりも融点が高い材料で構成
するとともに、
前記接続部材を、軸方向における長さを前記導体露出部の長さの3分の1以上5分の4以下とした短尺状接続部材とし、前記被覆電線に対して、前記絶縁被覆の先端と前記短尺状接続部材の基端とが離間する位置に前記短尺状接続部材が配置され、前記
短尺状接続部材の内部に挿入した複数の前記導体露出部と前記
短尺状接続部材とが、断面形状が、
圧着前の短尺状接続部材の直径と同等の幅の略楕円形となるように圧着溶着され
、前記導体露出部と前記短尺状接続部材との溶着状態において、前記短尺状接続部材の先端から前記導体露出部の先端が露出するとともに、圧着によって縮径されない先端露出部が形成された電線接続構造体であることを特徴とする。
【0012】
上記接続部材は、複数の導体露出部の挿入を許容する断面環状であれば、例えば、断面円形、矩形、あるいは多角形などでもよい。
上記アルミニウム系材料とは、アルミニウムやアルミニウム合金などを含む材料である。
上記溶着とは、超音波溶接、電気抵抗溶接、またはレーザー溶接などによって導体露出部同士を溶着する概念である。
【0013】
上記複数の被覆電線は、少なくとも1本の被覆電線がアルミニウム導体を有していれば、銅や銅合金などで構成した導体を有する被覆電線と、アルミニウム導体を有する被覆電線とを束ねて構成してもよく、アルミニウム導体を有する被覆電線のみを束ねて構成してもよい。
上記圧着溶着とは、導体露出部と接続部材とを圧着してから溶着すること、あるいは溶着しながら圧着することを含む概念である。
【0014】
この発明により、導体露出部と接続部材とを溶着する溶着治具と、溶融した導体露出部とが接触して固着することなく、導体露出部同士、および導体露出部と接続部材とを溶着することができる。
【0015】
詳述すると、アルミニウム系材料は、融点と軟化点とが近く、溶着によってアルミニウム導体の一部が溶融するおそれがあるが、断面環状に形成した接続部材の内部に導体露出部を挿入して、導体露出部と溶着治具との間に接続部材を介在させることにより、導体露出部と溶着治具とが接触することがなく、導体露出部と溶着治具とが固着することを防止できる。
【0016】
しかも、接続部材を、アルミニウム導体よりも融点が高い材料で構成したことにより、導体露出部が溶融しても接続部材は溶融されないため、導体露出部と溶着治具とが固着することを確実に防止することができる。
【0017】
仮に、オープンバレル型などの断面環状でない接続部材である場合、導体露出部と接続部材との接続状態において、接続部材の先端部と基端部以外から導体露出部の一部が意図せずはみ出るおそれがあるが、断面環状に形成した接続部材は、導体露出部と接続部材との接続状態において、接続部材の先端部および基端部以外から導体露出部がはみ出ることを確実に防止できる。
したがって、導体露出部は、接続部材の内部において確実に保持されるため、導体露出部と接続部材とは、確実に導電することができる。
【0018】
さらにまた、アルミニウムやアルミニウム合金を含むアルミニウム系材料は、一般的な被覆電線の導体を構成する銅や銅合金を含む銅系材料よりも比重が小さいため、アルミニウム導体で構成した被覆電線を複数束ねて構成したワイヤハーネスは、効率良く軽量化することができる。
【0019】
また、複数の前記導体露出部と前記接続部材との溶着を、前記導体露出部と前記接続部材との圧着が伴う圧着溶着とすることにより、導体露出部と接続部材とを密着するように接続することができる。
【0020】
詳述すると、接続部材は、複数の導体露出部を挿入できる大きさに形成しているため、導体露出部と接続部材との間には隙間が生じており、この隙間によって導体露出部と接続部材とが、確実に溶着されないおそれがある。
【0021】
しかし、導体露出部と接続部材とを、圧着を伴う圧着溶着を行うことで、導体露出部と接続部材との隙間を潰すように圧着しながら溶着するため、電線接続構造体は、導体露出部と接続部材とが密着した接続状態を得ることができる。
したがって、導体露出部と接続部材とは、確実に導電することができる。
【0022】
ま
た、前記接続部材を、軸方向における長さを前記導体露出部の長さの3分の1以上5分の4以下とした短尺状接続部材とし、前記被覆電線に対して、前記絶縁被覆の先端と前記短尺状接続部材の基端とが離間する位置に前記短尺状接続部材を配置するこ
とにより、導体露出部と
短尺状接続部材との導電性を確保することができる。
【0023】
詳述すると、
短尺状接続部材と圧着して圧縮される複数の導体露出部は、
短尺状接続部材との圧着状態において、被覆電線側よりも
短尺状接続部材側の方が縮径されるため、被覆電線側で複数束ねた導体露出部と
短尺状接続部材側で複数束ねた導体露出部との間に線径差が生じる。
【0024】
絶縁被覆の先端と
短尺状接続部材の基端とが密着するように導体露出部と
短尺状接続部材とを圧着すると、上述した線径差によって、絶縁被覆と
短尺状接続部材との境界に位置する導体露出部は、急激に縮径されることで断線したりして、導体露出部同士の確実な導電性を得ることができないおそれがある。
【0025】
しかし、
短尺状接続部材を、軸方向における長さを導体露出部の長さの5分の4以下とし、被覆電線に対して、絶縁被覆の先端と
短尺状接続部材の基端とが離間する位置に
短尺状接続部材を配置したことにより、圧着状態における絶縁被覆と
短尺状接続部材との間に位置する導体露出部は、離間した分だけ、徐々に縮径されるため、電気的特性が変化することを抑制したり、導体露出部が断線したりすることを防止して、確実に導体露出部同士の導電性を得ることができる。
【0026】
一方、
短尺状接続部材を、軸方向における長さを導体露出部の長さの3分の1以上としたことにより、圧着に伴って
短尺状接続部材が破損したり、導体露出部と
短尺状接続部材との圧着状態において、導体露出部を引っ張ることで
短尺状接続部材が破損したりすることなく、導体露出部と
短尺状接続部材との安定した接続状態を得ることができるとともに、導体露出部同士と
短尺状接続部材との安定した導電性を確保するだけの接触面積を得ることができる。
【0027】
ま
た、前記導体露出部と前記
短尺状接続部材との溶着状態において、前記
短尺状接続部材の先端から前記導体露出部の先端が露出する
するとともに、圧着によって縮径されない先端露出部を形成するこ
とにより、導体露出部と
短尺状接続部材との接続状態を保持することができる。
【0028】
詳述すると、導体露出部と
短尺状接続部材とを圧着すると、
短尺状接続部材に挿入した部分における導体露出部は圧着によって縮径されるが、
短尺状接続部材から露出した先端露出部は圧着によって縮径されないため、仮に、
短尺状接続部材と接続した導体露出部を引っ張っても、縮径されていない先端露出部が縮径した
短尺状接続部材の先端に引っかかり、導体露出部が
短尺状接続部材から抜けることなく、導体露出部と
短尺状接続部材との接続状態を保持することができる。
【0029】
さらに、先端露出部を形成したことにより、導体露出部は、
短尺状接続部材の内面の全体と確実に接続されるため、導体露出部同士と
短尺状接続部材との間における電気抵抗値が上昇することを抑制し、優れた導電性を得ることができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記
短尺状接続部材を、銅の純度が60%以上の材料で構成することができる。
この発明により、
短尺状接続部材の変形性をより向上させることができる。
【0031】
詳述すると、銅の純度が60%以上の材料で
短尺状接続部材を構成することで短
尺状接続部材の靱性が向上し、導体露出部と
短尺状接続部材とを圧着する場合に、
短尺状接続部材をより容易に変形することができるため、導体露出部と
短尺状接続部材とを圧着した際に短
尺状接続部材の変形によってヒビやワレなどの不具合が
短尺状接続部材に生じることを、より抑制することができる。
【0032】
なお、銅の純度が60%以上の銅系材料である黄銅、タフピッチ銅、あるいは無酸素銅などで構成した
短尺状接続部材は、アルミニウム系材料で構成した
短尺状接続部材よりも融点が高いため、導体露出部と
短尺状接続部材とを溶着する際に、導体露出部が溶融しても
短尺状接続部材は溶融されずに、導体露出部を溶着治具とが固着することを防止できる。
【0033】
この発明は、導体に絶縁被覆を被覆した被覆電線における前記絶縁被覆の先端側を所定長さ剥いで前記導体を露出させた導体露出部を、断面環状に形成した接続部材の内部に複数配置し、前記導体露出部と前記接続部材とを溶着治具を用いて溶着して導電可能に接続し、前記導体をアルミニウム系材料で構成したアルミニウム導体を有する前記被覆電線を少なくとも一本用いることを特徴とし、前記接続部材を、前記アルミニウム導体よりも融点が高い材料で構成
するとともに、前記接続部材を、軸方向における長さを前記導体露出部の長さの3分の1以上5分の4以下とした短尺状接続部材とし、前記被覆電線に対して、前記絶縁被覆の先端と前記短尺状接続部材の基端とが離間する位置に前記短尺状接続部材を配置し、複数の前記導体露出部と前記
短尺状接続部材とを、前記
短尺状接続部材
の軸方向に直交する断面において、該短尺状接続部材を圧着する圧着方向に交差する方向を、前記短尺状接続部材が圧着前の短尺状接続部材の直径と同等の幅に規制しながら断面形状が略楕円形となるように
前記短尺状接続部材を圧着しながら溶着
し、前記導体露出部と前記短尺状接続部材との溶着状態において、前記短尺状接続部材の先端から前記導体露出部の先端が露出するとともに、圧着によって縮径されない先端露出部を形成することを特徴とする電線接続方法である。
【0034】
この発明により、導体露出部と接続部材とを溶着する溶着治具と、溶融した導体露出部とが接触して固着することなく、導体露出部同士、および導体露出部と接続部材とを、密着させながら一体化するように、圧着しながら溶着することができる。
【0035】
また、前記接続部材を、軸方向における長さを前記導体露出部の長さの3分の1以上5分の4以下とした短尺状接続部材とし、前記被覆電線に対して、前記絶縁被覆の先端と前記短尺状接続部材の基端とが離間する位置に前記短尺状接続部材を配置することにより、短尺状接続部材と絶縁被覆との間に隙間を設けて、導体露出部の導電性を確保することができる。
【0036】
ま
た、前記
短尺状接続部材の軸方向に直交する断面において、該
短尺状接続部材を圧着する圧着方向に交差する方向を
、前記短尺状接続部材が圧着前の短尺状接続部材の直径と同等の幅に規制しながら
前記短尺状接続部材を圧着するこ
とにより、
短尺状接続部材の軸方向に直交する断面において、
短尺状接続部材が圧着方向に交差する方向へ大きく変形して、圧着後の形状が偏平形状になることを防止できるため、
短尺状接続部材にヒビやワレなどが発生することを抑制することができる。
したがって、導体露出部と
短尺状接続部材とを、確実に接続して導電させることができる。
【0037】
ま
た、前記導体露出部と前記
短尺状接続部材との溶着状態において、前記
短尺状接続部材の先端から前記導体露出部の先端が露出する
とともに、圧着によって縮径されない先端露出部を形成するこ
とにより、導体露出部と
短尺状接続部材との接続状態を保持することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、銅の純度が60%以上の材料で構成した前記
短尺状接続部材を用いて行うことができる。
この発明により、
短尺状接続部材の変形性をより向上させることができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記短尺状接続部材に挿入する複数本の前記導体露出部を略円形に配置するとともに、断面積の合計が、前記短尺状接続部材の内部の断面積の20%以上90%以下となるように形成することができる。
【0040】
この発明は、導体に絶縁被覆を被覆するとともに、先端側において前記導体が露出する導体露出部を有する複数の被覆電線と、断面環状に形成するとともに、基端側の挿入開口より内部に複数の前記導体露出部を挿入する接続部材とを導通可能に接続した電線接続構造体であって、少なくとも一本の前記被覆電線における前記導体を、アルミニウム系材料で構成したアルミニウム導体とするとともに、前記接続部材を、前記アルミニウム導体よりも融点が高い材料で構成し、挿入した前記導体露出部と前記接続部材とを溶着によって接続し、前記接続部材の前記挿入開口の内縁を、前記基端側に向けて徐々に拡大する拡大内縁とし、前記拡大内縁を、前記接続部材の中心軸を通る断面において、前記中心軸に向けて突出する円弧状に形成するとともに、円弧状の前記拡大内縁の半径を、前記接続部材の板厚の2分の1以上とした電気接続構造体であることを特徴とする。
【0041】
上記徐々に拡大する拡大内縁とは、例えば、接続部材の中心軸を通る断面において、挿入開口の内縁をテーパ状に形成した拡大内縁などを含む概念である。
この発明により、接続部材の内部に導体露出部を確実かつ容易に挿入して、導体露出部と接続部材とを溶着する溶着治具と、溶融した導体露出部とが接触して固着することなく、導体露出部同士、および導体露出部と接続部材とを溶着することができる。
【0042】
詳述すると、接続部材の挿入開口の内縁を、基端側に向けて徐々に拡大する拡大内縁としたことにより、導体露出部を接続部材に挿入する際、導体露出部が接続部材の基端側の端面に当接しても、拡大内縁が接続部材の内部に導体露出部を案内するため、接続部材の内部に導体露出部を確実かつ容易に挿入することができる。
したがって、導体露出部と接続部材とを確実に導電させることができる。
【0043】
また、前記拡大内縁を、前記接続部材の中心軸を通る断面において、前記中心軸に向けて突出する円弧状に形成するとともに、円弧状の前記拡大内縁の半径を、前記接続部材の板厚の2分の1以上とすることで、円弧状の拡大内縁を備えた接続部材と導体露出部とを接続した状態において、接続部材よりも基端側における被覆電線が、接続部材の径方向に引っ張られても、被覆電線と接続部材とは角当たりしないため、被覆電線が破損することを防止できる。
したがって、導体露出部と接続部材とをより確実に導電させることができる。
【0044】
またこの発明の態様として、前記接続部材を囲繞するように装着する有底筒状のキャップを備え、前記接続部材の前記先端側である先端部の外縁を、前記先端側に向けて徐々に縮小した縮小外縁とすることができる。
【0045】
上記有底筒状のキャップとは、軸方向の一方を閉塞した略筒状のキャップなどを含む概念である。
上記徐々に縮小する縮小外縁とは、例えば、円弧状に形成した縮小外縁、あるいは、テーパ状に形成した縮小外縁などを含む概念である。
【0046】
この発明により、電線接続構造体の止水性を向上させることができるとともに、電線接続構造体に絶縁キャップを容易に装着することができる。
詳述すると、電線接続構造体は、接続部材を囲繞するように装着する有底筒状のキャップを備えたことにより、導体露出部と接続部材との接続部分に水分が浸入することを防止するため、電線接続構造体の止水性を向上させることができる。
【0047】
しかも、有底筒状のキャップは、例えば、シリコン材などを内部に注入して保持することができるため、導体露出部と接続部材との接続部分に水分が浸入することをより確実に防止して、電線接続構造体の止水性をより向上させることができる。
【0048】
さらに、電線接続構造体は、接続部材の先端側である先端部の外縁を、先端側に向けて徐々に縮小した縮小外縁としたことにより、接続部材に対してキャップを確実かつ容易に装着することができる。
したがって、接続部材にキャップを装着して、止水性が向上した電線接続構造体は、被覆電線と接続部材とを確実に導通可能に接続することができる。
【0049】
この発明は、導体に絶縁被覆を被覆するとともに、先端側において前記導体が露出する導体露出部を有する複数の被覆電線と、断面環状に形成するとともに、基端側の挿入開口より内部に複数の前記導体露出部を挿入する接続部材とを導通可能に接続した電線接続構造体であって、少なくとも一本の前記被覆電線における前記導体を、アルミニウム系材料で構成したアルミニウム導体とするとともに、前記接続部材を、前記アルミニウム導体よりも融点が高い材料で構成し、挿入した前記導体露出部と前記接続部材とを溶着によって接続し、前記接続部材の前記挿入開口の内縁を、前記基端側に向けて徐々に拡大する拡大内縁とし、前記接続部材を囲繞するように装着する有底筒状のキャップを備え、前記接続部材の前記先端側である先端部の外縁を、前記先端側に向けて徐々に縮小した縮小外縁とした電気接続構造体であることを特徴とする。
【0050】
この発明により、接続部材の内部に導体露出部を確実かつ容易に挿入して、導体露出部と接続部材とを溶着する溶着治具と、溶融した導体露出部とが接触して固着することなく、導体露出部同士、および導体露出部と接続部材とを溶着することができる。
【0051】
詳述すると、接続部材の挿入開口の内縁を、基端側に向けて徐々に拡大する拡大内縁としたことにより、導体露出部を接続部材に挿入する際、導体露出部が接続部材の基端側の端面に当接しても、拡大内縁が接続部材の内部に導体露出部を案内するため、接続部材の内部に導体露出部を確実かつ容易に挿入することができる。
したがって、導体露出部と接続部材とを確実に導電させることができる。
【0052】
また、前記接続部材を囲繞するように装着する有底筒状のキャップを備え、前記接続部材の前記先端側である先端部の外縁を、前記先端側に向けて徐々に縮小した縮小外縁とすることがで、電線接続構造体の止水性を向上させることができるとともに、電線接続構造体に絶縁キャップを容易に装着することができる。
【0053】
詳述すると、電線接続構造体は、接続部材を囲繞するように装着する有底筒状のキャップを備えたことにより、導体露出部と接続部材との接続部分に水分が浸入することを防止するため、電線接続構造体の止水性を向上させることができる。
【0054】
しかも、有底筒状のキャップは、例えば、シリコン材などを内部に注入して保持することができるため、導体露出部と接続部材との接続部分に水分が浸入することをより確実に防止して、電線接続構造体の止水性をより向上させることができる。
【0055】
さらに、電線接続構造体は、接続部材の先端側である先端部の外縁を、先端側に向けて徐々に縮小した縮小外縁としたことにより、接続部材に対してキャップを確実かつ容易に装着することができる。
したがって、接続部材にキャップを装着して、止水性が向上した電線接続構造体は、被覆電線と接続部材とを確実に導通可能に接続することができる。
【0056】
この発明の態様として、前記拡大内縁を、前記接続部材の中心軸を通る断面において、前記中心軸に向けて突出する円弧状に形成するとともに、円弧状の前記拡大内縁の半径を、前記接続部材の板厚の2分の1以上とすることができる。
【0057】
この発明により、円弧状の拡大内縁を備えた接続部材と導体露出部とを接続した状態において、接続部材よりも基端側における被覆電線が、接続部材の径方向に引っ張られても、被覆電線と接続部材とは角当たりしないため、被覆電線が破損することを防止できる。
したがって、導体露出部と接続部材とをより確実に導電させることができる。
【0058】
またこの発明の態様として、複数の前記導体露出部と前記接続部材との溶着を、前記導体露出部と前記接続部材との圧着が伴う圧着溶着とすることができる。
この発明により、導体露出部と接続部材とを密着するように接続することができる。
したがって、導体露出部と接続部材とをより確実に導電させることができる。
【0059】
またこの発明の態様として、圧着前における前記接続部材において、前記導体露出部と圧着する部分を、前記絶縁被覆と圧着する被覆圧着部よりも断面を縮小した導体圧着部とすることができる。
この発明により、接続部材が破損することなく、導体露出部と接続部材とを密着するように接続して、導体露出部と接続部材との導電性を確保することができる。
【0060】
詳述すると、導体に被覆した絶縁被覆と圧着する被覆圧着部は、導体露出部と圧着する導体圧着部よりも電線径が大きいため、導体圧着部と被覆圧着部との断面を同等に形成した接続部材と被覆電線と圧着する場合、導体圧着部は、被覆圧着部よりも変形量が増大して破損するおそれがあるが、導体露出部と圧着する部分を、絶縁被覆と圧着する被覆圧着部よりも断面を縮小した導体圧着部としたことにより、導体圧着部の変形量が増大することを抑制し、接続部材が破損することを防止でき、電線接続構造体は、導電性と止水性とを確保することができる。
【0061】
またこの発明の態様として、圧着状態において、挿入された前記導体露出部の厚さを、前記接続部材の厚さの3分の1以上とすることができる。
上記導体露出部の厚さや接続部材の厚さとは、圧着形状が断面楕円形などの場合における導体露出部や接続部材の最小外径の箇所における厚さを含む概念である。
【0062】
この発明により、導体に一般的に用いられる銅よりも融点が低く溶融し易いアルミニウム系材料で構成したアルミニウム導体が、導体露出部と接続部材とを溶着する際に溶けきることを防止できるため、アルミニウム導体を含む導体露出部と接続部材とを確実に接続することができる。
【0063】
またこの発明の態様として、挿入された前記導体露出部の断面積を、前記接続部材の内部の断面積の90%以下とすることができる。
この発明により、接続部材の内部に導体露出部をより確実かつ容易に挿入することができる。
【0064】
詳述すると、挿入された導体露出部の断面積を、接続部材の内部の断面積の90%以下としたことにより、導体露出部の先端が、接続部材における挿入開口の外縁に当接して、導体露出部が、接続部材の外部に飛び出したり、接続部材の内部でばらけることを防止して、接続部材の内部に導体露出部をより確実かつ容易に挿入でき、電線接続構造体の導電性を向上させることができる。
【0065】
なお、圧着を伴う溶着を行うことを考慮すると、導体露出部全体の断面積は、接続部材の内部の断面積の20%以上であることが望ましい。これにより、接続部材は、導体露出部と圧着する際の変形量を減少させ、破損することを防止するとともに、導体露出部と隙間なく密着させるように接続できるため、電線接続構造体の導電性をより向上させることができる。
【0066】
より好ましくは、導体露出部全体の断面積を、接続部材の内部の断面積の40%以上70%以下とする。これにより、接続部材の内部への導体露出部の挿入性と、接続部材と導体露出部との密着性とを、より向上させることができるため、電線接続構造体の導電性をさらに向上させることができる。
【0067】
またこの発明の態様として、前記接続部材の前記先端側である先端部を閉塞する閉塞部を備えることができる。
この発明により、溶着治具と導体露出部とが接触して固着することを確実に防止できるとともに、電線接続構造体の止水性を向上させることができる。
【0068】
詳述すると、電線接続構造体は、接続部材の先端側に閉塞部を備えたことにより、溶融したアルミニウム導体の一部が接続部材の先端側から溶け出して溶着治具と接触することなく、導体露出部同士を接続することができるとともに、導体露出部と接続した接続部材の内部に先端側から水分が侵入することを確実に防止して、電線接続構造体の止水性を向上させることができる。
【0069】
しかも、電線接続構造体の止水性を向上させるために、挿入開口から接続部材の内部に、例えば、シリコン材などを注入しても、接続部材の先端側からシリコン材などが流れ落ちることを防止して、接続部材の基端側の止水性を確保することができるため、電線接続構造体の止水性をさらに向上させることができる。