特許第6622970号(P6622970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクトロニクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許6622970試験測定用システム及びアクセサリ補償方法
<>
  • 特許6622970-試験測定用システム及びアクセサリ補償方法 図000002
  • 特許6622970-試験測定用システム及びアクセサリ補償方法 図000003
  • 特許6622970-試験測定用システム及びアクセサリ補償方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622970
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】試験測定用システム及びアクセサリ補償方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20191209BHJP
   G01R 13/28 20060101ALI20191209BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20191209BHJP
   G01R 23/173 20060101ALI20191209BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G01R31/28 K
   G01R13/28 K
   G01R13/20 F
   G01R23/173 D
   G01R35/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-33896(P2015-33896)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-158495(P2015-158495A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】14/188299
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ジェイ・メンデ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エイ・ブーマン
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−003268(JP,A)
【文献】 特開2001−289910(JP,A)
【文献】 特開平09−073055(JP,A)
【文献】 特開2007−171184(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0271075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 13/20
G01R 13/28
G01R 23/173
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスに接続されるアクセサリであって
上記被試験デバイスからの電気入力信号を受ける信号入力部と、
該電気入力信号のDC成分を表す第1デジタル・データを生成する第1変換回路と、
バイアス制御電極と上記電気入力信号を受ける信号入力電極とを有し、光入力信号を受けて上記電気入力信号に応じて輝度変調された光出力信号を出力する光学電圧センサと、
上記バイアス制御電極に補償信号を印加するよう構成される補償ユニットと、
上記光出力信号を出力する信号出力部と
を有する上記アクセサリと、
該アクセサリに接続されるコントローラであって、
上記アクセサリからの上記第1デジタル・データ及び上記出力信号を受ける受信部と、
上記光出力信号に対応する電気出力信号を生成する光電変換部と、
上記電気出力信号のDC成分を表す第2デジタル・データを生成する第2変換回路と
を有し、上記第1デジタル・データと上記第2デジタル・データとを比較し、比較結果に応じて上記補償信号を求めるよう構成されるコントローラ
を具える試験測定システム。
【請求項2】
アクセサリ及びコントローラを含み、ホスト及び被試験デバイス間に接続される試験測定システム中の上記アクセサリ補償する方法であって、
上記被試験デバイスからの電気入力信号をアクセサリで受ける処理と、
上記電気入力信号のDC成分を表す第1デジタル・データを生成する処理と、
バイアス制御電極と上記電気入力信号を受ける信号入力電極とを有する上記アクセサリ内の光学電圧センサによって、光入力信号を受けて上記電気入力信号に基づいて輝度変調された光出力信号を出力する処理と、
上記光出力信号に対応する電気出力信号を生成する処理と、
上記電気出力信号のDC成分を表す第2デジタル・データを生成する処理と、
上記第1デジタル・データと上記第2デジタル・データとを上記コントローラで比較し、補償信号を求める処理と、
上記補償信号を上記バイアス制御電極に供給し、上記光学電圧センサからの上記出力信号を補償する処理と
を具えるアクセサリ補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子試験測定システム及びそのためのアクセサリの補償方法に関し、特に、被試験デバイス、アクセサリ、コントローラ及び被試験デバイスを含む電子試験測定システムの中の、被試験デバイス及びホスト間に接続される、アクセサリ及びコントローラからなるシステムにおいて、測定のためにプローブのようなアクセサリを使用しているときに、このアクセサリをダイナミックに補償することに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、試験測定システム中のプローブのようなアクセサリを補償するには、被試験デバイス(DUT)からアクセサリを取り外す工程、アクセサリを校正又は補償用信号源に接続する工程とがある。従来、試験測定システムには、ホスト、コントローラ及び被試験デバイスとがある。アクセサリは、被試験デバイスに取り付けられ、被試験デバイスからの信号を取込み、それをホストに送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−49473号公報
【特許文献2】特開2006−3619号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「絶縁 (電気)」の記事、特に「isolation」について、Wikipedia(日本語版)、[オンライン]、[2014年12月8日検索]、インターネット<http://ja.wikipedia.org/wiki/絶縁 (電気)>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アクセサリを補償する(compensate)には、アクセサリを被試験デバイスから外し、典型的にはホスト内に装備された校正/補償用信号源に取り付けられる。校正/補償用信号源にプローブ・アクセサリを接続するには、プローブ・アクセサリと信号源との間のインタフェースに特別なアダプタとフィクスチャ(取付装置)を使用することが多い。
【0006】
過去、光学センサを使った場合、直流までの正確な測定には、あまり成功しているとはいえない。光学センサは、周りの環境の変化に影響を受けやすい。光学センサに加えられる温度、機械的張力及び信号は、センサの直流(DC)/低周波数(LF)オフセット成分の原因となり、センサを劇的に利用不能にしたり、大幅な測定エラーを生じさせることになる。
【0007】
このため、アクセサリを動作させながら、アクセサリをリアルタイムでダイナミックにDCオフセット又はDCオフセットのドリフト(DCオフセットの低周波数変動)を校正又は補償できることが必要である。この際、アクセサリをマニュアルで校正又は補償用信号源に接続する必要がなく、また、校正又は補償のために、アクセサリをDUTから外す必要もないことが望ましい。更に、このダイナミックな補償が、ユーザにとってわかりやすいことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態としては、試験測定システムがあり、これには、被試験デバイス、アクセサリ、コントローラ及び試験測定装置が含まれる。被試験デバイスに接続されるアクセサリには、被試験デバイスからの入力信号を受ける入力端子と、アクセサリ内部に補償信号をダイナミックに印加するよう構成された補償ユニットと、被試験デバイスから読み出した出力信号を出力する出力端子とがある。アクセサリに接続されるコントローラには、入力信号とアクセサリからの上記出力信号を受ける1つ以上の受信部と、上記入力信号と上記出力信号とを比較し、この比較結果に応じて、測定をしながら、リアルタイムで補償ユニットから補償信号をダイナミックに供給させるよう構成されるマイクロコントローラとがある。
【0009】
他の実施形態には、ホスト、コントローラ及び被試験デバイスを含む測定システム中のアクセサリを内部的に校正する方法がある。この方法には、被試験デバイスからの入力信号をアクセサリで受ける処理と、この入力信号に基いてアクセサリから出力信号を出力する処理と、上記出力信号と上記入力信号をコントローラで比較し、補償値を決定する処理と、アクセサリ又はホスト(試験測定装置)中の補償ユニットに上記補償値を供給し、上記被試験デバイスからの上記出力信号を補償する処理とがある。
【0010】
本発明の概念1は、試験測定システムであって
被試験デバイスと、
上記被試験デバイスからの入力信号を受ける信号入力部と、
アクセサリ内部に補償信号を印加するよう構成される補償ユニットと、
被試験デバイスから読み取った出力信号を出力する信号出力部と
を有する上記被試験デバイスに接続されたアクセサリと、
上記アクセサリからの上記入力信号及び上記出力信号を受ける1つ又は複数の受信部と、
上記入力信号と上記出力信号を比較し、比較結果に応じて上記補償信号を求めるよう構成されるマイクロコントローラ又は補正回路と
を有する上記アクセサリに接続されたコントローラと、
上記コントローラに接続された試験測定装置と
を具えている。
【0011】
本発明の概念2は、上記概念1のシステムであって、このとき、上記アクセサリが変換装置(transducer:トランスデューサ)である。
【0012】
本発明の概念3は、上記概念2のシステムであって、このとき、上記変換装置が、電圧プローブ又は電流プローブである。
【0013】
本発明の概念4は、上記概念1のシステムであって、このとき、上記コントローラは、上記出力信号を上記試験測定装置に出力し、上記試験測定装置の表示装置上で表示するよう更に構成されている。
【0014】
本発明の概念5は、上記概念1のアクセサリであって、上記アクセサリとしては、更に、光学電圧センサがあり、このとき、上記被試験デバイスからの上記入力信号は、上記光学電圧センサの信号入力電極に接続され、上記補償ユニットが上記光学電圧センサのバイアス制御電極に接続されている。
【0015】
本発明の概念6は、上記概念1のアクセサリであって、上記アクセサリが被試験デバイスに取り付けされたときに、上記補償ユニットが上記補償信号を印加するよう更に構成されている。
【0016】
本発明の概念7は、上記概念1のアクセサリであって、このとき、上記補償信号が上記補償ユニットに送られ、上記補償ユニットが上記出力信号を上記補償信号で補償するよう構成される。
【0017】
本発明の概念8は、上記概念1のアクセサリであって、このとき、上記補償信号が上記試験測定装置に送られ、上記試験測定装置が上記出力信号を上記補償信号で補償するよう構成される。
【0018】
本発明の概念9は、ホスト、コントローラ及び被試験デバイスを含む測定システム中のアクセサリを内部的に補償する方法であって、
上記被試験デバイスからの入力信号をアクセサリで受ける処理と、
上記アクセサリから上記入力信号に基づく出力信号を出力する処理と、
上記入力信号と上記出力信号を上記コントローラで比較し、補償値を求める処理と、
上記補償値を上記アクセサリ中の上記補償ユニットに供給し、上記被試験デバイスからの上記出力信号を補償する処理と
を具えている。
【0019】
本発明の概念10は、上記概念9の方法であって、上記アクセサリが被試験デバイスに取り付けされたときに、上記補償値が上記補償ユニットに供給される。
【0020】
本発明の概念11は、上記概念9の方法であって、上記補償値で補償された出力信号を上記試験測定装置に供給する処理を更に具えている。
【0021】
本発明の概念12は、上記概念9の方法であって、上記アクセサリで受けた上記被試験デバイスからの上記入力信号は、電圧センサの第1電極セット及び上記補償ユニットに送られ、上記補償値が上記電圧センサの第2電極セットに供給される。
【0022】
本発明の概念13は、試験測定システムであって、
被試験デバイスと、
上記被試験デバイスからの入力信号を受ける手段と、
アクセサリ内部に補償信号を印加する手段と、
被試験デバイスから読み取った出力信号を出力する手段と
を有する上記被試験デバイスに接続されたアクセサリと、
上記アクセサリからの上記入力信号及び上記出力信号を受ける手段と、
上記入力信号と上記出力信号を比較し、比較結果に応じて上記補償信号を上記補償ユニットに供給する手段と
を有する上記アクセサリに接続されたコントローラと、
上記コントローラに接続された試験測定装置と
を具えている。
【0023】
本発明の概念14は、上記概念13の試験測定システムであって、
上記入力信号と上記出力信号の比較は、それぞれの所望の監視部分に関して行われることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、補償ユニットを含む差動入力アクセサリ・ヘッドを用いた測定システムの実施形態の一例のブロック図である。
図2図2は、補償ユニットを含むシングル・エンド入力アクセサリ・ヘッドを用いた測定システムの実施形態の一例のブロック図である。
図3図3は、光学センサ及び補償ユニットを含むアクセサリ・ヘッドを用いた測定システムの実施形態の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に示す複数の図面において、類似又は対応する要素には、同じ符号を付して説明する。なお、これら図面において、各要素の縮尺は、説明の都合上、必ずしも同一ではない。
【0026】
アクセサリを校正又は補償したくても、DUTに取り付けられたアクセサリを簡単には外せないことは多い。例えば、アクセサリが、DUTに半田付けされるなど、テスト・フィクスチャ(試験用取付装置)に恒久的に取り付けられていたり、高電圧な場所などの危険な場所や環境室のように、アクセス困難な場所又は遠隔地に取り付けられることがある。従って、こうした状況では、DUTからアクセサリから取り外すことなく、アクセサリを校正又は補償できることが重要である。
【0027】
本発明の実施形態の中には、詳しくは後述のように、光学電圧センサを利用可能なものがあり、これによれば、測定をしながら、光学電圧センサの直流(DC)/低周波数(LF)の時間に対する不安定な特性(DCオフセットとDCオフセットのドリフト(変動))をダイナミックに補償することによって、直流(DC)からGHz(ギガ・ヘルツ)までの電気信号を測定可能になる。光学センサの出力は、周囲の環境の変化並びにセンサに印加される信号及びバイアスの影響を受けやすい。詳しくは後述する補正回路を加えることで、高い同相信号除去比と広い電圧レンジを有し、電気的に完全にアイソレートされ、DC結合、広帯域幅、高感度の差動アクセサリ・ヘッドを開発できる。
【0028】
本発明の実施形態には、試験測定システムがあり、これは、試験測定装置のようなホスト100と、コントローラ102と、アクセサリ・ヘッド104と、DUT106とを含んでいる。図1は、こうしたシステムの1例を示す。アクセサリ・ヘッド104には、詳しくは後述する補償ユニット108がある。
【0029】
測定動作の間、アクセサリ・ヘッド104の入力端子114及び116でDUT106からの差動入力信号を受ける。この被測定信号は、増幅器118、メイン・パス120及びパス124を介してホスト100へ送信される。補償ユニット108も、被測定信号中の監視部分(DC/LF成分)をホストに通信ライン122を介して送信し、これが後でシステムの補償に利用される。
【0030】
図1及び2に示す試験測定システムにおける補償量を決定するため、DUT106からの差動入力信号の監視部分(DC/LF成分)は、差動増幅器128を介して、アナログ・デジタル変換器130でデジタル化されて、補償ユニット108に送信される。差動増幅器128は、監視部分(DC/LF成分)のみに対応した周波数特性を有するものを利用しても良いし、別途、ローパス・フィルタ(図示せず)を利用して、監視部分(DC/LF成分)を通過させるようにしても良い。続いて、補償ユニット108は、DUT106からの入力信号の監視部分(DC/LF成分)のデジタル・データを、分析のために通信ライン122を介してコントローラ102へと送る。
【0031】
一方、増幅器118からのアナログ出力信号も、分析のために、コントローラ102へと送られる。コントローラ102内のADC126は、増幅器118からのアナログ出力信号中の監視部分(DC/LF成分)をデジタル化する。増幅器118からのアナログ出力信号中の監視部分(DC/LF成分)を抽出するのに、ここでも必要に応じて、ローパス・フィルタ(図示せず)を利用しても良い。図示しないが、これら出力信号と入力信号それぞれのデジタル・データは、アクセサリ・ヘッド104内で分析されるようにしても良い。コントローラ102は、これら出力信号と入力信号それぞれの監視部分デジタル・データを比較し、その比較結果からDC/LFオフセット・エラーを決定する。更に、このDC/LFオフセット・エラーに基いて、増幅器118の出力信号に補償ユニット108から印加したときに、DC/LFオフセット・エラーを最小にする補償値(DCバイアス電圧)を決定する。この得られた補償値のデジタル・データは、コントローラ102からアクセサリ・ヘッド104中の補償ユニット108へと通信ライン122を介して送られる。補償ユニット108は、補償値のデジタル・データに基いて、増幅器118の出力信号に補償値(DCバイアス電圧)を印加する。DUT106からの信号の測定値中のオフセット・ドリフト・エラーを最小に維持するために、このサイクルは、好ましくは、継続的に繰り返される。
【0032】
図1は、DUT106から2つの入力信号を受ける差動アクセサリ・ヘッドを示す。しかし、補償ユニット108は、図2に示すシングル・エンド入力のアクセサリ・ヘッド104内でも利用できる。図2のシステムは、シングル・エンド入力をバッファ129で受けることを除けば、図1に示すシステムと同様に動作する。
【0033】
補償は、継続的に行われる。図1及び2の実施形態を応用した別の実施形態では、補償ユニット108からの補償信号(DCバイアス)を求めたら、補償ユニット108で補償信号を印加する代わりに、ホスト100又はコントローラ102で増幅器118からの出力信号に補償信号を印加しても良い。
【0034】
図3に示すように、もしアクセサリ・ヘッド104が光学アクセサリ・ヘッドならば、アクセサリ・ヘッド104が光学センサを含んでいても良い。そうした場合でも、図3に示す測定システムは、図1及び2で上述したように、ホスト100、コントローラ102、補償ユニット108及びDUT106を有する。増幅器118を使うのではなく、図3の測定システムは、光学センサ400を有する。光学センサ400は、例えば、マッハツェンダ(Mach-Zehnder)光学センサとしても良い。しかし、他の光学センサを同様に用いても良い。
【0035】
アクセサリ・ヘッド104の入力端子114及び116は、信号入力電極402及び404に接続される。一方、補償ユニット108は、光学センサ400のバイアス制御電極406及び408に接続される。制御電極406及び408は、信号入力電極402及び404から独立していて、電気的にアイソレートされている。
【0036】
光学センサ400を用いる場合、コントローラ102には、レーザ制御部410、レーザ412、光学送受信部414、光電変換部416、アナログ・デジタル変換部418及びマイクロコントローラ420が設けられる。
【0037】
コントローラ102内のレーザ412から放射された光は、光供給パス110を介して、光学センサ400に供給され、分岐されて、2つの光導波路112a及び112bに供給される。続いて光導波路112a及び112bを通過した2つの光が1つの光に合波されて出力され、光出力パス(メイン信号パス)121を介して、コントローラ102の光電変換部416へと戻る。このとき、DUT106からの入力信号によって信号入力電極402及び404間に生じる電界により、第1光導波路112aを通過する光には位相シフトが生じる。このため、2つの分岐光導波路112a及び112bからの光が合波されたとき、両者の位相差に応じて、合波された光の強度が変化するので、この変化を検出することで、DUT106からの信号の電圧測定値を検出できる。光学パス110には、偏波保持ファイバ(Polarization Maintaining Fiber)を用いても良い。
【0038】
同様に、制御電極406及び408は、これらの間に生じる電界により、第2光導波路112bを通過する光に位相シフトを生じさせることができる。レーザ412から入力される光入力信号を、2つの分岐光導波路112a及び112bに分配する際には、DUT106からの入力信号がない状態では、2つの分岐光導波路112a及び112bを通過して合波される直前の光の特性が全く同一であることが理想的である。更に、2つの分岐光導波路112a及び112bの特性も全く同一であることが理想的である。しかし、現実的には、製造時の個体差や使用時の環境によって、全く同一とは限らないので、制御電極406及び408に供給する電圧によって、予め校正し、同一となるようにできる。また、応用としては、測定対象に応じて、制御電極406及び408によって、意図的なバイアスを加えることもできる。
【0039】
バイアス制御電極406及び408に印加される補償量は、図1及び2に関して上述したことと同様にして決定される。このとき、DUT106からの差動入力信号は、信号入力電極402及び404だけでなく、差動増幅器128を介してアナログ・デジタル変換器130でデジタル信号に変換され、補償ユニット108にも送られる。このとき、差動増幅器128は、周波数特性が低く設計されており、所望の周波数成分以下だけを通過させる。また、上述と同様に、ローパス・フィルタ(図示せず)を用いて、所望の監視部分の周波数だけを通過させるようにしても良い。よって、補償ユニット108は、DUT106からの入力信号中の監視したい直流から低周波数までの成分のみを含む入力信号をデジタル化したデジタル入力信号を受けることになる。このデジタル化入力信号は、更に光学送受信部132で光信号に変換され、光通信ライン123を介して、コントローラ102内の光学送受信部414に送られ、分析のためにマイクロコントローラ420に最終的に送られる。光通信ライン123は、例えば、2本の光ファイバから構成され、コントローラ102とアクセサリ・ヘッド104の両方の光学送受信部414及び132間で双方向に通信可能となっている。
【0040】
DUT106からの入力信号を反映した光学センサ400からの光出力信号は、コントローラ102内の光電変換部416に送られてアナログ電気信号に変換され、ローパス・フィルタ417を通して監視したい直流から所望の低周波成分がアナログ・デジタル変換器418でデジタル信号に変換される。アナログ・デジタル変換器418からのデジタル出力信号は、DUT106からの入力信号のDC/LF成分を分析するために、コントローラ102内のマイクロコントローラ420に送信される。光電変換部416からのアナログ電気出力信号は、オシロスコープなどのホスト100に送られ、周知の技術により、直流から例えばGHz帯域までの測定に利用される。
【0041】
上述と同様に、マイクロコントローラ420は、デジタル入力信号と、ADC418からのデジタル出力信号とを比較し、DC/LFオフセット・エラーを求める。続いて、この比較結果に基づいて、光学センサ400中のバイアス制御電極406及び408に印加したときにDC/LFオフセット・エラーを最小にする補償値(バイアス電圧のデジタル・データ)を求める。マイクロコントローラ420が決定した補償値(バイアス電圧のデジタル・データ)は、光学送受信部414を介して補償ユニット108に送り返される。補償ユニット108は、補償値(バイアス電圧のデジタル・データ)から、補償に必要となるバイアス電圧を発生してバイアス制御電極406及び408に印加する。DUT106からの信号のDC/LF成分に関するこれら入力信号及び出力信号は、継続的に監視され、コントローラ102内のマイクロコントローラ420に送信される。これによって、補償値が連続的に決定され、オフセット・ドリフト・エラーが最小値に維持される。なお、マイクロコントローラ420の代わりに、補正回路を用いることもできる。
【0042】
上述では、監視する信号成分をDCオフセットとDCオフセット・ドリフト(LF成分)とする例で説明したが、監視する信号成分をより高い周波数成分としても良い。よって、本発明は、直流電圧を校正又は補償できるだけでなく、例えば、交流電圧の利得及び周波数を補償するのにも利用可能である。
【0043】
本発明は、電圧プローブでの使用に限定されない。アクセサリ・デバイスは、動作に電圧、電流、電力などを必要とする任意の形式の変換デバイス又は一般的なアクセサリ・デバイスであってもよく、これは、例えば、測定プローブ、測定プローブ・アダプタ、アクティブ・フィルタ・デバイス、プローブ校正フィクスチャ、プローブ・アイソレーション・アクセサリなどがある。
【0044】
ホスト100は、アクセサリ・デバイスを受けるアクセサリ・デバイス・インターフェイスを有するオシロスコープ、ロジック・アナライザ、スペクトラム・アナライザなどのような試験測定装置としても良い。
【0045】
アクセサリ・ヘッド104のコントローラ102への接続は、当業者には周知のように、適宜、有線接続、光ファイバ接続又は無線接続としても良い。もしDUT106及びアクセサリ・ヘッド104が遠隔地に配置されているなら、無線接続を利用する必要があるかもしれない。信号パス120、122及び124は、当業者には周知のように、有線又は無線接続としても良い。
【0046】
本発明による実施形態(図示せず)の中には、コントローラを必要としないものもある。この場合、図1〜3に示したコントローラ102内の全ての構成要素は、ホスト100内に配置しても良い。
【0047】
本発明で用いている用語「コントローラ」及び「マイクロコントローラ」は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC、専用ハードウェア・コントローラなどを意図している。本発明は、別の観点から見れば、1つ以上のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)などで実行される1つ以上のプログラム・モジュールのようなコンピュータで利用可能なデータやコンピュータで実行可能な命令の形で実現されてもよい。一般に、プログラム・モジュールには、複数のルーチン、複数のプログラム、複数のオブジェクト、複数のコンポーンネント、複数のデータ構造などが含まれ、これらは、コンピュータなどの装置中のプロセッサで実行されたときに、特定のタスクを実行したり、抽象データ型(abstract data type)を実現する。コンピュータで実行可能な命令は、ハード・ディスク、光ディスク、リムーバブル記録媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのような非一時的なコンピュータ読み出し可能なメディアに記録しても良い。当業者にとっては当然ながら、複数のプログラム・モジュールの機能は、必要に応じて、種々の実施形態において、組み合わせたり、個別に分けたりしても良い。加えて、これら機能は、その全体又はその一部が、集積回路やFPGA(field programmable gate arrays)などによるファームウェアやハードウェアの形の等価なもので実現されても良い。本発明のいくつかの観点を効果的に実現するのに特定のデータ構造を利用でき、こうしたデータ構造は、本願で言うコンピュータで利用可能なデータやコンピュータで実行可能な命令の範囲に含まれると考えられる。
【0048】
図示した実施形態を参照しながら本発明の原理を説明してきたが、こうした原理から離れることなく、図示した実施形態の構成や詳細を変更したり、望ましい形態に組み合わせても良いことが理解できよう。
【符号の説明】
【0049】
100 ホスト
102 コントローラ
104 アクセサリ・ヘッド
106 DUT(被測定デバイス)
108 補償ユニット
110 光学信号パス
112a 第1光導波路
112b 第2光導波路
114 入力端子
116 入力端子
118 増幅器
120 メイン信号パス
121 光学メイン信号パス
122 通信ライン
123 光学通信ライン
124 通信ライン
126 ADC
128 差動増幅器
130 ADC
132 光学送受信部
400 光学センサ
416 光電変換部
417 ローパス・フィルタ
420 マイクロコントローラ
図1
図2
図3