特許第6623006号(P6623006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623006
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】排水機場および排水方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 5/00 20060101AFI20191209BHJP
   E03B 3/04 20060101ALI20191209BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   E03B5/00 Z
   E03B3/04
   F04D13/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-174558(P2015-174558)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48648(P2017-48648A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】江藤 文宣
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−014179(JP,A)
【文献】 特開2004−003151(JP,A)
【文献】 特開2006−200502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0011372(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104278740(CN,A)
【文献】 特開昭59−063377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 5/00
E03B 3/04
F04D 13/00
E21D 1/00
F04D 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に水が流れる流入水路からの水が流れ込む吸込水槽であって、前記流入水路より幅広であり、かつ、前記流入水路との接続点において前記流入水路より深い、吸込水槽と、
前記吸込水槽からの水が流れ込むポンプ吸込水路であって、前記吸込水槽より浅い、ポンプ吸込水路と、
前記ポンプ吸込水路に配置されて複数の水路を形成する隔壁と、
前記複数の水路のそれぞれに配置され、各水路内の水を排水するポンプと、
前記吸込水槽内にあって水の流れと略直交して延びており、下端が前記流入水路の底より低い位置にあるが、前記吸込水槽の底には接しない、前記吸込水槽内の水流を減勢するための壁と、を備え、
る排水機場。
【請求項2】
前記吸込水槽の底には集砂ピットが形成され、
前記吸込水槽の底は、前記集砂ピットに向かって下り勾配である、請求項1に記載の排水機場。
【請求項3】
当該排水機場は地下に設けられるが、前記集砂ピットの上方は開口が形成されており、
当該ポンプは、前記集砂ピットの上方に設けられた揚砂機を備え、この揚砂機は、前記開口を通って下降し、前記集砂ピットに溜まった砂を吊り上げる、請求項2に記載の排水機場。
【請求項4】
前記壁によって、前記流入水路からの水は前記吸込水槽内で下降した後に上昇し、
上昇する際の流速は、水に含まれる砂が沈降する所定速度以下である、請求項2または3に記載の排水機場。
【請求項5】
前記壁と前記隔壁との間に設けられ、上端は計画高水位以上の位置にあり、下端は前記ポンプ吸込水路の底以下の位置にあるが前記吸込水槽の底には接しない、前記隔壁に対して角度をもって設けられたバッフルを備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の排水機場。
【請求項6】
複数のポンプが設けられた排水機場における排水方法であって、
略水平方向に水が流れる流入水路からの水が流れ込む吸込水槽であって、前記流入水路より幅広であり、かつ、前記流入水路との接続点において前記流入水路より深い、吸込水槽内に、前記流入水路からの水の流れに対して略直交する、前記吸込水槽内の水流を減勢するための壁を設け、水が前記壁に当たることで水を減勢するとともに、水が前記壁の下方を通過することで水を整流し、偏流を抑えて各ポンプに水を導く、排水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川または地下放水路等からの流入水を複数のポンプで排水する排水機場に関し、特に、例えば都市部に設置するのに好適なコンパクトな排水機場に関する。また、本発明は、当該排水機場の排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や下水などを排水する排水機場におけるポンプは、その重要性や予備機を設けない設計思想などから、確実な始動および運転が求められる。したがって、全てのポンプが同様の条件で安定した運転ができるよう、ポンプに流れ込む水流を安定化させる必要がある。
【0003】
そのために、長い吸込水槽を構築することで沈砂と流入水の安定、すなわち偏流や渦の防止を図ることが行われてきた(例えば、特許文献1)。しかしながら、流入水を安定させるためには吸込水槽を相応の長さにする必要があり、スペース的にも費用的にも問題がある。しかも、近年の排水設備では、地域の都市化やゲリラ豪雨などの影響で流入量が計画時より多くなる可能性や、長距離にわたって地下に幹線を敷設する際の費用削減のために幹線の水路幅が小型化されて、排水機場流入部での流速が速くなることなどから、さらに長い吸込水槽(安定区間)が必要となってきており、上記の問題はますます大きくなっている。
【0004】
従来、吸込水槽内に可動仕切壁を設けること(特許文献2)や、吸込水槽内に隔壁を設けること(特許文献3)が開示されているが、流入水路の流速が速い場合、吸込水槽内の流れはそのまま直進する傾向にあり(図20)、流入水の安定を図ることができない。なお、図20では、矢印の長さが流速の大きさを表している。
【0005】
特許文献4〜6には、底部に吸込水槽を、中央部に吐出水路を設け、複数の立軸ポンプを吐出水路の外周部に周方向に配置した構成のポンプ場が開示されている。また、特許文献7には、水流に対して直交する堰を流路に設けた構成のポンプ吸込水槽が開示されている。これらの構成によれば、吸込水槽を短くすることが見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−73090号公報
【特許文献2】特開平9−53600号公報
【特許文献3】実開平6−67898号公報
【特許文献4】特開平5−180187号公報
【特許文献5】実開平5−89520号公報
【特許文献6】特許第2506233号公報
【特許文献7】実開昭61−187998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4〜6の構成では、吸込水槽が閉鎖空間となるため、ポンプトリップ時に生じるアップサージやU字管現象により上流側に水が逆流することがあり、マンホールが吹き飛んだりするおそれがある。また、特許文献7の構成では、堰を設けるため流入側の運用水位が高くなり、治水の信頼性を悪化させる。すなわち流入水の流量変動に対してポンプ側の水位変化が極めて敏感であり、始動の遅れや、流入量と吐出量のアンバランスにより上流側河川が溢れる虞がある。このため吸込水槽に十分なバッファを設ける必要があり、排水機場のスペースが広大となる。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、広大な設置面積を不要とし、かつ流入水を偏流なく各ポンプへ導き、全てのポンプの能力を最大限に発揮することのできる排水機場および排水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、流入水路からの水が流れ込む吸込水槽であって、前記流入水路より幅広であり、かつ、前記流入水路より深い、吸込水槽と、前記吸込水槽からの水が流れ込むポンプ吸込水路であって、前記吸込水槽より浅い、ポンプ吸込水路と、前記ポンプ吸込水路に配置されて複数の水路を形成する隔壁と、前記複数の水路のそれぞれに配置され、各水路内の水を排水するポンプと、前記吸込水槽内にあって水の流れと略直交して延びており、下端が前記流入水路の底より低い位置にあるが、前記吸込水槽の底には接しない壁と、を備える排水機場が提供される。
【0010】
この構成によれば、壁を設けることで水を減勢および整流でき、各ポンプに偏流なく水が導かれるため、全てのポンプの能力を最大限に発揮できる。また、吸込水槽を短くすることができ、コンパクト化が可能である。
【0011】
前記吸込水槽の底には集砂ピットが形成され、前記吸込水槽の底は、前記集砂ピットに向かって下り勾配であるのが望ましい。
この構成によれば、集砂ピットに砂を沈降させることができ、従来の沈砂池設備または長大な吸込水槽を省く排水機場の小型化が可能である。また主ポンプの損傷などを抑えることができる。
【0012】
当該排水機場は地下に設けられるが、前記集砂ピットの上方は開口が形成されており、当該ポンプは、前記集砂ピットの上方に設けられた揚砂機を備え、この揚砂機は、前記開口を通って下降し、前記集砂ピットに溜まった砂を吊り上げるのが望ましい。
この構成によれば、集砂ピットに溜まった砂を開口から地上に吊り上げることができる。
【0013】
前記壁によって、前記流入水路からの水は前記吸込水槽内で下降した後に上昇し、上昇する際の流速は、水に含まれる砂が沈降する所定速度以下であるのが望ましい。
この構成によれば、流速を遅くすることで、砂を効率よく集砂ピットに沈降させることができる。
【0014】
当該排水機場は、前記壁と前記隔壁との間に設けられ、上端は計画高水位以上の位置にあり、下端は前記ポンプ吸込水路の底以下の位置にあるが前記吸込水槽の底には接しない、前記隔壁に対して角度をもって設けられたバッフルを備えるのが望ましい。
この構成によれば、バッフルを設けることで、ポンプに達するまでに水を整流できる。
【0015】
また、本発明の別の態様によれば、複数のポンプが設けられた排水機場における排水方法であって、流入水路からの水の流れに対して略直交する壁を設け、水が前記壁に当たることで水を減勢するとともに、水が前記壁の下方を通過することで水を整流し、偏流を抑えて各ポンプに水を導く、排水方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
水の流れに対して略直交する壁を設けることで、水を減勢および整流でき、安全性が向上するとともに、排水機場を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る排水機場100を上方から見た図
図2図1の排水機場100のA−A断面図
図3】別の例における吸込水槽2の底の断面図
図4】壁21を流入水路1側から見た図
図5】第2の実施形態に係る排水機場101を上方から見た図
図6】第3の実施形態に係る排水機場102を上方から見た図
図7図6の排水機場102のB−B断面図
図8図6の排水機場102の別の例のB−B断面図
図9】第5の実施形態に係る排水機場104を上方から見た図
図10図9の排水機場104のA−A断面図
図11図10におけるF1平面図
図12図10におけるF2平面図
図13図10におけるF3平面図
図14】固定壁211を流入水路1側から見た図
図15】第6の実施形態に係る排水機場105を上方から見た図
図16】排水機場105のA−A断面図
図17図16におけるF1平面図
図18図16におけるF2平面図
図19図16におけるF3平面図
図20】従来の吸込水槽における水の流れを模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る排水機場100を上方から見た図である。図2は、図1の排水機場100のA−A断面図(隔壁31aは省略)である。この排水機場100は地上から数十mの地下に設けられるものであり、排水機場100は、上流側から順に並ぶ流入水路1、吸込水槽2およびポンプ吸込水路3を備えるとともに、吸込水槽2に設けられた壁21およびバッフル22a〜22cと、ポンプ吸込水路3に設けられた隔壁31a〜31cおよびポンプ32a〜32dとを備えている。
【0020】
流入水路1は排水機場100の上流側に設けられており、その形状は、図示のように矩形でもよいし、円形であってもよく、特に制限はない。流入水路1は、省スペースのため、できるだけ狭い幅で形成されるのが望ましい。
【0021】
吸込水槽2は流入水路1の下流側にあり、流入水路1からの水を吸い込む。吸込水槽2の形状は、図示のように矩形でもよいし、流入水路1との接続箇所から徐々に拡がってもよく、特に制限はない。ただし、吸込水槽2は、図1に示すように流入水路1より幅広であり、かつ、図2に示すように流入水路1より深い。
【0022】
また、吸込水槽2の底の下流側(すなわち、壁21を超えた位置)の隅には、窪んだ集砂ピット23が形成されている。そして、吸込水槽2の底は流入水路1側から集砂ピット23に向かって下方に傾斜している。なお、図3に示すように、吸込水槽2の底の下流側の隅および上流側の隅の両方に集砂ピット23が形成され、吸込水槽2の底は、中央部が高く、2つの集砂ピット23に向かって下方に傾斜していてもよい。そして、図2に示すように、集砂ピット23の上方は開口しており、揚砂機24が設けられる。
【0023】
吸込水槽2には、水流とほぼ直交する方向(吸込水槽2の幅方向)に延びる壁21が設けられる。壁21の両側面は吸込水槽2の側壁に接続されてもよい。壁21の上端は計画高水位HWL(High Water Level)より高い位置にあればよく、例えば天井から懸下される。壁21の下端は、流入水路1およびポンプ吸込水路3の底より低い位置にあるが、吸込水槽2の底には接していない。
【0024】
図4は、壁21を流入水路1側から見た図である。壁21の下端は水平であってもよいが、図示のように中央部が最も低く、吸込水槽2の側壁に近いほど高くなるよう傾斜していてもよい。これにより、水流が水槽の中央に偏るのを緩和することができる。
【0025】
図1および図2に戻り、吸込水槽2には、一端が壁21に接続された複数のバッフル22a〜22cが設けられる。中央のバッフル22bは壁21に対してほぼ直角に延びている。一方、両隣のバッフル22a,22cは、下流側ほど吸込水槽2の側壁に近づくよう、若干傾斜して延びている。バッフル22a〜22cの上端は計画高水位HWLより高い位置にある。バッフル22a〜22cの下端は、ポンプ吸込水路3の底以下の位置にあるが、吸込水槽2の床には接していない。
【0026】
ポンプ吸込水路3は吸込水槽2の下流側にあり、吸込水槽2からの水を吸い込む。図1に示すように、ポンプ吸込水路3は吸込水槽2と幅が等しい。また、図2に示すように、ポンプ吸込水路3は吸込水槽2より浅いが、流入水路1よりやや深くてもよい。ポンプ吸込水路3における天井面は、吸込水槽2側から所定距離は高さが一定であり、その後、下流側に向かって下方に傾斜し、その後、また高さが一定となる。
【0027】
ポンプ吸込水路3には、平行に延びる複数の隔壁31a〜31cが設けられる。隔壁31a〜31cの一端は、それぞれバッフル22a〜22cに接続される。隔壁31a〜31cの他端は、ポンプ吸込水路3の終端に接続される。
【0028】
また、ポンプ吸込水路3には、その最下流にポンプ32a〜32dが設けられる。なお、ポンプ32a〜32dとして立軸斜流ポンプを例示しているが、立軸渦巻斜流ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプ、渦巻斜流ポンプ、水中ポンプなどでもよく、特に制限はない。
【0029】
以下、吸込水槽2およびポンプ吸込水路3の側壁と、バッフル22aと、隔壁31aとによって形成される水路を第1水路61と呼ぶ。バッフル22a,22bおよび隔壁31a,31bによって形成される水路を第2水路62と呼ぶ。バッフル22b,22cおよび隔壁31b,31cによって形成される水路を第3水路63と呼ぶ。バッフル22cと、隔壁31cと、吸込水槽2およびポンプ吸込水路3の側壁とによって形成される水路を第4水路64と呼ぶ。
【0030】
このような排水機場100は次のように機能する。
流入水路1には、流速2〜5m/s程度の水が、河川や地下放水路などから流入する。この水は吸込水槽2に流れ込む。流入水路1は(少なくとも吸込水槽2より)狭いため、流れ込む水の流速が速いこともあり得る。
【0031】
次いで、図2に示すように、吸込水槽2において壁21の流入水路1側の面に水がぶつかる。これにより、水流は乱れるが、流速を下げることができる。すなわち、壁21は水を減勢する。壁21にぶつかることで水流は下向きとなり、壁21に沿って下降する。そして、水は吸込水槽2の底と壁21の下端との間を通る。この際に、乱れた水流は整えられる。
【0032】
水は壁21をくぐって上昇するとともに、バッフル22a〜22cによってさらに水が整流され、第1水路61〜第4水路64のいずれかに偏流することなく分流し、ポンプ吸込水路3に流れ込む。各水路におけるポンプ32a〜32dは、水路内の水を揚水して吐出側河川(不図示)に排出する。
【0033】
吸込水槽2の底が集砂ピット23に向かって傾斜していることで、水が壁21の下方を通過する際に落ちた砂が集砂ピット23に沈降する。また、水が壁21をくぐって上昇する際に、砂が落ちてやはり集砂ピット23に沈降する。集砂ピット23に溜まった砂は、上方に設けられた揚砂機24によって吊り上げられる。
【0034】
なお、一般に流速が0.15〜0.3m/sとなれば水に含まれる砂が落下する。よって、壁21をくぐって上昇する際の水の流速が、この流速以下となるようにするのが望ましい。上昇する水の流速は、ポンプ32a〜32dの能力が高いほど高くなり、壁21から吸込水槽2の終端までの体積が大きいほど低くなるので、これらを適切に設計して上昇する水の流速を制御すればよい。これにより、ポンプ32a〜32dに到達する砂の量を減らすことができる。
【0035】
このように、吸込水槽2に壁21を設けて水を減勢し、吸込水槽2の底に集砂ピット23を形成することで、効率よく砂を除去できる。
【0036】
図4に示すように、壁21の下端が傾斜していると、吸込水槽2の側壁側の開口面積が広くなって水が流れやすくなり、中央の第2水路62および第3水路63に水流が偏ることなく、端の第1水路61および第4水路64にも水流を振り分けることができる。
【0037】
このように、第1の実施形態では、吸込水槽2内に、下端が流入水路1の底面およびポンプ吸込水路3の底面より深い位置にある壁21を設ける。したがって、流入水路1からの水が壁21に当たり一旦下降した後に上昇することで、水が減勢されるとともに、水が壁21の下端をくぐる際に整流される。よって、水を偏流なく各ポンプ32a〜32dに導くことができ、各ポンプ32a〜32の能力を最大限に発揮できる。また、壁21で水を減勢できるため、吸込水槽2の長さを短くすることができ、排水機場100の小型化が可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る排水機場101を上方から見た図である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
排水機場101は、吸込水槽2に接続された残水排水槽4と、残水排水槽4内に設けられた揚水ポンプ41とを更に備えている。
【0040】
吸込水槽2の側壁には開口42が形成されており、この開口42を通って吸込水槽2から残水排水槽4に水が流れることができる。揚水ポンプ41は、吸込水槽2内の水を揚水して、例えば下水処理施設に排水する。開口42が設けられる位置は任意でよいが、壁21の上流側に設けられるのが望ましい。砂によって揚水ポンプ41が詰まったり損傷したりするのを抑えることができるためである。
【0041】
ポンプ32a〜32dは、ポンプ吸込水路3内の水を排水するが、吸込水槽2内の水をすべて排水できるとは限らず、ポンプ吸込水路3の底より低い水位で吸込水槽2内に水が残ることもある。そこで、本実施形態では、吸込水槽2内の残水を残水排水槽4に引き込み、揚水ポンプ41で排水する。これにより、吸込水槽2内を常時はドライにすることができ、水質の悪化や悪臭を抑えることができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る排水機場102を上方から見た図である。図7は、図6の排水機場102のB−B断面図である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0043】
排水機場102における吸込水槽2の側壁には、例えば壁21の上流側に開口25が形成されている。図7に示すように、開口25は縦長形状であり、その上端は計画高水位HWLと同程度の位置にあり、下端は流入水路1の底と同程度からそれより若干高い位置にある。
【0044】
また、排水機場102は、開口25を開閉するゲート26と、ゲート26を昇降する昇降機構27(例えばモータ)と、開口25の外側に設けられたバケット28および揚水ポンプ29とを備えている。
【0045】
壁21を設けると、油水分離槽と同様の原理により、油や浮遊塵芥などの浮遊物が吸込水槽2の上流側に漂流する。そこで、本実施形態では、以下のようにして、ポンプ32a〜32dの運転中に、流入水路1から流れ込む水に含まれる浮遊物を除去する。
【0046】
不図示の水位計により吸込水槽2の水位を計測し、その結果に応じて昇降機構27はゲート26を昇降させる。より具体的には、昇降機構27は、ゲート26の上端が水位より数十cm程度下に位置するよう、ゲート26の位置を調節する。昇降機構27は、随時ゲート26を昇降させてもよいが、望ましくは、水位設定値を設けて水位設定値を跨ぐ度に段階的にゲート26を昇降させる。
【0047】
ゲート26の上端が水位より所定値だけ下に位置することにより、吸込水槽2の上水(浮遊物を含む)のみが開口25を通る。その後、浮遊物はバケット28によって除去され、水は揚水ポンプ29によって下水処理施設などに排水される。なお、ポンプ32a〜32dの運転中には、ゲート26は上昇して開口25が閉じるようにしてもよい。
【0048】
このように、第3の実施形態では、吸込水槽2に開口25を形成するとともに、ゲート26を設ける。そのため、浮遊物がポンプ32a〜32dから吐出側河川に排出されるのを抑えることができ、環境性に優れた排水機場102を構築できる。
【0049】
(第4の実施形態)
上述した第3の実施形態は、ポンプ32a〜32dの運転中に浮遊物を除去するものであった。これに対し、以下に説明する第4の実施形態は、ポンプ32a〜32dの停止中に浮遊物を除去するものである。本実施形態に係る排水機場102を上方から見た図は図6と同じであり、以下、第3の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
図8は、図6の排水機場102の別のB−B断面図である。開口25aは、図7に示す開口25より小さい。すなわち、開口25aの上端はポンプ32a〜32dの停止時の水位(固定値、以下では停止水位という)以上の位置にあり、下端は同停止水位より数十cm〜1m程度低い位置にある。開口25aが小さいため、ゲート26aも小型なものでよい。
【0051】
本実施形態では、ポンプ32a〜32dの運転中、昇降機構27はゲート26aを上昇させて開口25aを閉じておく。ポンプ32a〜32dが停止した後、昇降機構27はゲート26aを下降させて開口25aを全開とする。ポンプ32a〜32が停止すると、吸込水槽2における水位は固定値である停止水位となり、やはり吸込水槽2の上水のみが開口25を通り、浮遊物はバケット28によって除去され、水は揚水ポンプ29によって下水処理施設などに排水される。
このように、第4の実施形態では、ポンプ32a〜32dの停止中に浮遊物を除去できる。また、開口25aやゲート26aを小型化できる。
【0052】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態に係る排水機場104を上方から見た図である。図10は、図9の排水機場104のA−A断面図である。また、図11図13は、図10におけるF1平面、F2平面およびF3平面をそれぞれ示す図である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
排水機場104は、排水機場100における壁21が固定壁211および可動壁212a〜212dから構成されるともに、可動壁212a〜212dを昇降させる昇降機構2Aを備えている。
【0054】
固定壁211は、流入水路1側から見た図を図14に示すように、水流とほぼ直交する方向に延びる壁本体2110と、壁本体2110から下方に延びる吸込水槽隔壁211a〜211cとから構成され、吸込水槽隔壁211a〜211c間は開口している。図10に示すように、壁本体2110の上端は計画高水位HWLより高い位置にあり、例えば天井から懸下される。壁本体2110の下端は計画高水位HWLより低い位置(例えば流入水路1の上端と同程度)にある。
【0055】
図12に示すように、吸込水槽隔壁211a〜211cの一端はそれぞれバッフル22a〜22cに接続され、第1水路61〜第4水路64を形成する。また、図11に示すように、吸込水槽隔壁211a〜211cの水流方向の長さは、壁本体2110の水流方向の長さより若干長く、上流側に張り出している。この張り出した部分において、鉛直方向に延びる溝状の切り欠きが形成されている。また、吸込水槽2の両側壁にも同様の切り欠きが形成されている。
【0056】
これらの切り欠きに可動壁212a〜212dの両端が嵌まっており、固定壁211の下部に形成された開口を開閉する。より具体的には、可動壁212aは、第1水路61の最も上流側、言い換えると、吸込水槽2の側壁と吸込水槽隔壁211aとの間の開口と対向して設けられ、水流とほぼ直交する方向に延びている。同様に、可動壁212bは吸込水槽隔壁211a,211b間の開口、可動壁212cは吸込水槽隔壁211b,211c間の開口、可動壁212dは吸込水槽隔壁211cと吸込水槽2の側壁との間の開口にそれぞれ対向して設けられる。
【0057】
なお、本実施形態では1つの水路に対して1つの可動壁を設ける例を示しているが、複数の水路に対して1つの可動壁を設けてもよい。可動壁212a〜212dの下端は、中央部が端より低い位置にあってもよい。より具体的には、図4と同様に可動壁212a〜212dのそれぞれの下端が傾斜していてもよいし、中央に位置する可動壁212b,212cは低い位置まであり、端に位置する可動壁212a,211dは少し高い位置まであってもよい。溝状の切り欠きは、壁表面に設置されたガイド部材でもよい。
【0058】
そして、昇降機構2Aは、切り欠きに沿って、可動壁212a〜212dを個別に昇降させる。
【0059】
このような構成の排水機場104において、流入水路1からの水量が少ない時には、昇降機構2Aによって可動壁212a〜212dを上昇させ、開口を開ける。そうすると、可動壁212a〜212dの下端が壁本体2110の下端と同程度の位置となり(図10を参照)、流入水路1からの水はほとんど固定壁211(および可動壁212a〜212d)にぶつかることなくポンプ吸込水路3に達する。これにより、通常時の水路損失を低減できる。通常時はもともと流速が遅いため、偏流はほとんどないし、集砂ピット23に砂を沈降させることができる。
【0060】
一方、流入水路1からの水量が多い場合、昇降機構2Aによって、可動壁212a〜212dを下降させ、開口を閉じる。これによって図1と同様の状態となり、偏流を抑えることができる。
【0061】
なお、流入水路1からの水量に応じて、昇降機構2Aは、可動壁212a〜212dの一部を上昇させ、他を下降させてもよい。例えば、流入水路1からの水量が中程度である場合、中央の可動壁212b,212cのみを下降させるようにしてもよい。
【0062】
ところで、ポンプ32a〜32dは、通常は停止しており、大雨など流入水路1からの水量が多いときに運転する。よって、長期間ポンプ32a〜32dが運転しないこともあり得る。そのため、ポンプ32a〜32dが正常に動作することを定期的に確認しておく必要があり、そのための運転を管理運転という。本実施形態では、昇降機構2Aが、可動壁212a〜212dの下端が吸込水槽2の底に達するまでこれらを下降させることで、簡易に管理運転を行うことができる。以下、管理運転を行うための構成を説明する。
【0063】
図9に示すように、排水機場104は、吐出水槽(不図示)からの水が流れ込むバイパス水路5と、管理運転用バイパスゲート51とを備えている。
【0064】
吸込水槽2またはポンプ吸込水路3の側壁には、バイパス水路5が接続される開口52が設けられる。開口52が設けられる位置は、バッフル22cと対向する位置であるのが望ましいが、ポンプ32dより上流側であればよい。そして、この開口52を開閉できるよう管理運転用バイパスゲート51が設けられる。すなわち、管理運転用バイパスゲート51は、バイパス水路5とポンプ32dとの間に設けられる。管理運転用バイパスゲート51は通常は閉じているが、これが開くと、バイパス水路5からの水が第4水路64を通ってポンプ32dに流れる。なお、第1水路61に接続されるバイパス水路および管理運転用バイパスゲートをさらに設けてもよい。
【0065】
管理運転を行う際、管理運転用バイパスゲート51を開くとともに、昇降機構2Aによって可動壁212a〜212dの下端が吸込水槽2の底に接するまでこれらを下降させる。これにより、吐出水槽からの水がポンプ32dに流れ込み、ポンプ32dを運転させることができる。
【0066】
このように、第5の実施形態では、可動壁212a〜212dを設ける。そのため、流入水路1からの水量に応じてポンプ吸込水路3に流れ込む水を制御できる。また、可動壁212a〜212dを吸込水槽2の底まで下降させられるようにすることで、簡易に管理運転を行うことができる。
【0067】
(第6の実施形態)
上述した第5の実施形態は、固定壁211の下部を開口させ、この開口に対向して可動壁212a〜212dを設けるものであった。これに対し、以下に説明する第6の実施形態は、壁21として可動壁212a〜212dのみを設けるものである。
【0068】
図15は、第6の実施形態に係る排水機場105を上方から見た図である。図16は、排水機場105のA−A断面図である。また、図17図19図16におけるF1平面、F2平面およびF3平面をそれぞれ示す図である。以下、第5の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0069】
図15に示すように、隔壁31a〜31cがポンプ吸込水路3から吸込水槽2内まで張り出している。張り出した部分の下端は、ポンプ吸込水路3の底以下に位置する。この張り出した部分において、可動壁212a〜212dが上下方向に可動するように構成されている。また、図16に示すように、ポンプ吸込水路3の底は流入水路1の底よりも下に位置する。
【0070】
そして、第5の実施形態と同様に、流入水路1からの水量が少ない時には、昇降機構2Aによって、可動壁212a〜212dを、例えばその下端が流入水路1の上端と同程度になるまで上昇させる。一方、流入水路1からの水量が多い場合、昇降機構2Aによって、可動壁212a〜212dを、下端が流入水路1の下端以下まで下降させる。これにより、流入水路から流入した水流は可動壁にあたって減勢され、吸込水槽2の下方へ方向を変え、次に吸込水槽2の壁に沿って上昇し、整流されながらポンプ吸込水路へ吸込まれる。また、昇降機構2Aが、可動壁212a〜212dの下端がポンプ吸込水路3の底に達するまでこれらを下降させることで、簡易に管理運転を行うこともできる。
【0071】
このように、第6の実施形態でも、可動壁212a〜212dを設けることで、流入水路1からの水量に応じてポンプ吸込水路3に流れ込む水を制御できるとともに、簡易に管理運転を行うことができる。
上述した第1から第6の実施形態において、排水機場の形は図示したような矩形でなくてもよいことはもちろんである。また、流入水路は排水機場に対して流入角度があってもよく、本発明は排水機場に対して流入角を持った流入水にも適用できる。排水機場に設置するポンプの台数は複数であり、実施形態で示す4台より多くてもよい。
【0072】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0073】
1 流入水路
2 吸込水槽
21 壁
211 固定壁
2110 壁本体
211a〜211c 吸込水槽隔壁
212a〜212d 可動壁
22a〜22c バッフル
23 集砂ピット
24 揚砂機
25 開口
26 ゲート
27 昇降機構
28 バケット
29 揚水ポンプ
2A 昇降機構
3 ポンプ吸込水路
31a〜31c 隔壁
32a〜32d ポンプ
4 残水排水槽
41 揚水ポンプ
42 開口
5 バイパス水路
51 管理運転用バイパスゲート
52 開口
61〜64 水路
100〜104 排水機場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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