【文献】
TAKAHASHI, M., UCHIDA, Y., YAMASAKI, S., HASEGAWA, J., YAGI, T.,Compact and Low-Loss Coherent Mixer Based on High Δ ZrO2-SiO2 PLC,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2014年,Vol. 32, No. 17,p. 3081-3088
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明に係る光導波回路装置の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光導波回路装置である光スイッチ装置の模式的な構成図である。この光スイッチ装置10は、光導波回路であるPLC11と、複数のヒータ12と、電極パッド領域13と、配線基板14とを備えている。PLC11には、1×8光スイッチ回路として機能する光スイッチ回路11aが形成されている。光スイッチ回路11aは、1つの共通ポート11bと、8つの分岐ポート11cと、カスケード状に接続された複数のマッハツェンダ型干渉計(MZI)11dとを有する。
【0015】
各MZI11dは、2つのカプラ(本実施形態ではMMI(多モード干渉)カプラ)11daと、2つのカプラ11daを接続する2本のアーム導波路11db、11dcとで構成されている。なお、MZI11dが有するカプラとしては、MMIカプラだけでなく、DC(方向性結合器)、WINC(波長無依存カプラ)やY分岐等のカプラを特性に応じて用いてもよい。
【0016】
光スイッチ回路11aにおいて、共通ポート11b側から見て、1段目ST1には1つのMZI11dが設けられており、2段目ST2には2つのMZI11dが設けられている。一段目ST1のMZI11dの2つの入力ポートには二段目ST2の2つのMZI11dの出力ポートがそれぞれ接続されている。三段目ST3には4つのMZI11dが設けられている。二段目ST2の2つのMZI11dの合計4つの入力ポートは、三段目ST3の4つのMZI11cの出力ポートにそれぞれ接続されている。四段目ST4には4つのMZI11dが設けられており、五段目ST5には8つのMZI11dが設けられている。三段目ST3の4つのMZI11dの合計8つの入力ポートは、四段目ST4の4つのMZI11cの出力ポートまたは五段目ST5のうち4つのMZI11cの出力ポートにそれぞれ接続されている。四段目ST4の4つのMZI11cの4つの入力ポートは、五段目ST5のうち残りの4つのMZI11cの出力ポートにそれぞれ接続されている。
【0017】
なお、MZI11dのうち、破線で囲んだスイッチSW1はゲートスイッチを構成し、スイッチSW2は2×1スイッチを構成している。スイッチSW1においてはMZI11dの2本のアーム導波路11db、11dcのうち一方にヒータ12が設けられ、スイッチSW2においては2本のアーム導波路11db、11dcの両方にヒータ12が設けられている。したがって、ヒータ12は全部で22個設けられている。
【0018】
ヒータ12による加熱を行わない状態においては、MZI11dの2つの入力ポートのいずれかから入力された光信号は、スイッチSW1を構成するMZI11dについては、2つの出力ポートの一方から出力されるように調整されており、スイッチSW2を構成するMZI11dについては、2つの出力ポートに1:1の分岐比で出力されるように調整されている。ヒータ12によって2本の2本のアーム導波路11db、11dcのいずれかを加熱すると、該導波路における光の伝搬速度が低下し、光信号が2つの出力ポートの他方から出力されるように変化する。そのため、ヒータ12の加熱のオン、オフを制御することにより、入力ポートから入力された光信号を2つの出力ポートのどちらから出力するかを選択することができる。各ヒータ12は電極パッド領域13の電極パッドに配線電極層(
図1では不図示)により接続されている。不図示の制御部から配線基板14、電極パッド、配線電極層を介してヒータ12への電力供給の有無を制御することによって、ヒータ12の加熱の有無を切り替えることができる。このような構成によって、光スイッチ回路11a内において光信号の通る経路を動的に変更することができる。なお、配線基板14はたとえばフレキシブルプリント基板で構成される。
【0019】
また、スイッチSW1が構成する2段構成のゲートスイッチによって、ヒータ12の無通電時にも光スイッチ回路11aの消光比を高めることができる。
【0020】
つぎに、光スイッチ装置10のより具体的な構成について
図2を参照して説明する図である。
図2(a)は光スイッチ装置10の模式的な一部平面図であり、
図2(b)は光スイッチ装置10の、PLCの基板の主表面に垂直な面での一部断面図であり、
図2(c)は
図2(b)におけるA矢視概略図である。
【0021】
PLC11は、シリコンや石英ガラスからなる基板11Aの主表面の上に形成された石英系ガラスからなるクラッド層11Bと、クラッド層11B内に形成された石英系ガラスからなる複数の光導波路11Cと、を有する。
【0022】
光導波路11Cは、屈折率を高めるドーパントであるジルコニア(ZrO
2)が添加されている石英系ガラスからなる。これによって、光導波路11Cはクラッド層11Bよりも屈折率が高くなるので、光を閉じ込めて導波する光導波路として機能し、光スイッチ回路11aの共通ポート11bや分岐ポート11cやMZI11dを構成する。光導波路11Cは、クラッド層11Bに対する比屈折率差がたとえば3%〜10%であり、断面のサイズは、1.0μm×1.0μm〜5.0μm×5.0μmである。また、より好ましくは比屈折率差が5%〜10%であり、断面のサイズは1.0μm×1.0μm〜3.5μm×3.5μmである。光導波路11Cの断面は基本的には正方形だが、長方形もしくは台形でもよい。
【0023】
光導波路11Cは、ZrO
2を含むので、屈折率を高めるドーパントとしてGeO
2を使用した場合に比べて、屈折率を高くすることができる。光導波路11Cの、クラッド層11Bに対する比屈折率差は、ZrO
2の含有量の調整によって、たとえば3%〜10%にすることができる。これに対して、GeO
2を使用した光導波路の比屈折率差は、一般的には1.5%未満であり、最大でも2.5%程度である。PLC11におけるMZI11dのような光干渉素子において、所望の光干渉を発生させるために必要な導波路長が、屈折率の高さに比例して短くなる。その結果、光導波路11CにZrO
2を含むMZI11d、およびこれを含むPLC11は小型になる。
【0024】
複数(本実施形態1では22個)のヒータ12は、クラッド層11Bの上方かつ加熱対象の光導波路11Cの上方にそれぞれ形成される。本実施形態1では、ヒータ12はクラッド層11Bの直上に形成されている。
【0025】
複数(本実施形態1では44本)の配線電極層15は、クラッド層11Bの上方に形成され、複数のヒータ12のそれぞれの両端に接続し、接続したヒータ12を加熱させるための電力を供給するものである。ヒータ12はたとえばTaN、配線電極層15はたとえば金(Au)などの材料からなる。
【0026】
絶縁層16は、たとえばSiO
2からなり、クラッド層11B、ヒータ12、および配線電極層15を覆うものである。ここで、配線電極層15は、基板11Aからの距離(主表面からの距離)が互いに異なる2層の配線層La、Lbのいずれかに形成されている。具体的には、配線層Lbは配線層Laよりも基板11Aからの距離が遠い位置にある。配線層Laに形成されている配線電極層15aはクラッド層11Bの直上に形成されており、その表面と側面とを絶縁層16に覆われている。一方、配線層Lbに形成されている配線電極層15bはその周囲を絶縁層16に覆われている。
【0027】
なお、上述したようにヒータ12はクラッド層11Bの直上に形成されているので、配線層Lbに形成されている配線電極層15bは必ず配線層Laに形成されている配線電極層15aと配線電極層15cを介して接続している。
【0028】
また、
図2(a)に示すように、平面視では配線電極層15a、15bが互いに隣接しており、それぞれ異なる配線層La、Lbに形成されている。また、同一の配線層、たとえば配線層Lbにおいて互いに隣接する配線電極層15bの離間距離はD1であり、製造工程の加工精度により決まる所定の距離D0以上となっている。なお、D0は小さいほどPLC11の小型化には有効であるが、製造工程の加工精度による制約から70μm以上、より好ましくは100μm以上である。同様に、配線層Laにおいて互いに隣接する配線電極層15aの離間距離はD1であり、所定の距離D0以上となっている。配線電極層15a、15bの幅については、給電量に応じて設定され、所望の電力を供給可能な所定のサイズ以上となる。配線電極層15a、15bの幅は、好ましくは30μm以上、より好ましくは100μm以上である。ただし、チップサイズの小型化には配線電極層15a、15bの幅は小さい方が有利であり、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。
【0029】
このように、平面視で異なる配線層La、Lbに形成されている配線電極層15a、15bが互いに隣接しており、同一の配線層Laまたは配線層Lbにおいて互いに隣接する配線電極層15aまたは配線電極層15bの離間距離が所定の距離以上となっていることにより、配線電極層の幅を狭くしたり、配線電極層間の離間距離を狭くしたりしなくても、配線電極層15を高密度化できる。また、配線電極層15a、15bを異なる配線層La、Lbに形成することで、これらを立体交差させて配線電極層形成領域のサイズを小さくすることもできる。これにより、給電量や製造性を確保しながら、配線電極層形成領域のサイズを小型化できるので、小型の光スイッチ装置10を実現できる。
【0030】
つぎに、
図3のフローチャートおよび
図4を参照して光スイッチ装置10の製造方法の一例を説明する。
まず、ステップS101において、たとえばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、基板11A上に下部クラッド層11BAを成膜し、スパッタ法によって、下部クラッド層11BA上に、光導波路11Cを形成するための光導波路形成層11Dを成膜する(
図4(a)参照)。なお、下部クラッド層11BAは、基板11Aを熱酸化して形成した熱酸化膜を利用してもよいし、火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition:FHD)法で作製しても良い。
つづいて、ステップS102において、下部クラッド層11BA、光導波路形成層11Dを加熱処理してアニールする。
【0031】
つづいて、ステップS103において、光導波路形成層11Dを、フォトリソグラフィ技術およびエッチングによって光導波路11Cのパターンにパターニングし、光導波路11Cとする(
図4(a)参照)。エッチングについては、たとえば石英系ガラスの加工プロセスにおいて用いられるフッ素系ガス(たとえばCF
4)を用いたドライエッチングによって行う。
【0032】
つづいて、ステップS104において、下部クラッド層11BAおよび光導波路11Cを覆うようにオーバークラッド部11BBを形成し、下部クラッド層11BAとオーバークラッド部11BBとからなるクラッド層11Bを形成する(
図4(a)参照)。オーバークラッド部11BBは、たとえば公知のFHD法により、下部クラッド層11BAおよび光導波路11Cを覆うように石英系ガラスからなる微粒子を堆積し、微粒子を加熱溶融して透明ガラス化することによって形成できる。
【0033】
つづいて、ステップS105において、クラッド層11Bの表面にヒータ12となる金属材料を成膜してヒータ層を形成し、ステップS106において、ヒータ層をパターニングし、ヒータ12を形成する(
図4(a)参照)。
【0034】
つづいて、ステップS107において、クラッド層11Bの表面に配線電極層15aとなる金属材料を成膜して電極層を形成し、ステップS108において、電極層をパターニングし、配線電極層15a(
図4(b)、(c)参照)を形成する。つづいて、ステップS109において、クラッド層11Bの主表面と配線電極層15aとを覆うように絶縁層16aを形成する。
【0035】
つづいて、ステップS110において、絶縁層16aをパターニングし、配線電極層15b、15cを形成するためのパターンを形成する。具体的には、絶縁層16aの表面に所定の配線電極層15aの一端が露出するように溝gを形成する(
図4(b)参照)。
【0036】
つづいて、ステップS111において、クラッド層11Bの表面に配線電極層15b、15cとなる金属材料を成膜して電極層ELを形成し(
図4(b)参照)、ステップS112において、電極層をパターニングするとともに、余分な電極層をリフトオフまたはエッチングし、配線電極層15b、15cを形成する(
図4(b)参照)。
【0037】
つづいて、ステップS113において、所定層数の配線層を形成したかどうかを判定する。本実施形態1では、所定層数は2であるので、所定層数を形成したと判定し(ステップS113、Yes)、ステップS114に進む。なお、配線層をさらに形成する場合は、所定層数を形成していない判定し(ステップS113、No)、ステップS109に戻る。
【0038】
つづいて、ステップS114において、絶縁層16aと配線電極層15b、15cとを覆うように絶縁層を形成し、絶縁層16とする。その後、ステップS115において電極パッド領域13において絶縁層16の一部をエッチングして配線電極層15a、15bの一端を電極パッドとして露出させ、ステップS116において、配線電極層15a、15bと配線基板14との配線を行って、ステップを終了する。
【0039】
配線電極層15a、15bと配線基板14との配線について
図5、6を参照して説明する。なお、
図5では、配線電極層15a、15bのうち配線電極層15aのみ示している。配線の際には、
図5(a)に示すように、電極パッド領域13において絶縁層16から露出した配線電極層15aの電極パッド部15aaと配線基板14の電極14aと対向するようにPLC11と配線基板14を配置し、これらの間に異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)17を挟む。異方性導電フィルム17は、フィルム状の接着剤17aに導電性粒子17bが分散されたものである。接着剤17aは、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂やアクリル樹脂からなり、導電性粒子17bは、たとえば金属粒子や、樹脂に導電材料を被覆してなる粒子である。
【0040】
つぎに、加熱しながらPLC11と配線基板14とが近付く方向に圧力を掛ける。これにより、
図5(b)に示すようにPLC11と配線基板14とが異方性導電フィルム17によって接着される。その結果、電極パッド部15aaと電極14aの間には導電性粒子17bが介在することとなり、導電性粒子17bが電極パッド部15aaと電極14aとに同時に接触することで、両者の導通が確保される。
【0041】
なお、導電性粒子17bの最外周には、圧力により破れる絶縁層が被覆されていてもよい。その場合には、導電性粒子17bが電極パッド部15aaと電極14aとで挟まれると、その圧力により絶縁層が破れて導電性が発生するため、電極パッド部15aaと電極14aとの間でのみ導通が発生し、それ以外の部分は絶縁性が維持される。その結果、意図しない短絡の発生をより効果的に抑制することができる。なお、異方性導電フィルム17に代えて、ペースト状の接着剤に導電性粒子を分散させた異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste:ACP)を用いてもよい。
【0042】
本実施形態1では、2枚の配線基板14のそれぞれを配線電極層15a、15bのそれぞれに接続する。
図6(a)、(b)に示すように、一方の配線基板14の電極と配線電極層15aの端部の電極パッド部15aaとの間、および、他方の配線電極14の電極と配線電極層15bの端部の電極パッド部15baとの間のそれぞれに、異方性導電フィルム17を挟み、接着させることで、一方の配線基板14の電極と電極パッド部15aaとの間、および、一方の配線基板14の電極と電極パッド部15baとの間の導通が確保される。なお、
図6(b)では、2枚の配線基板14はそれぞれ別々の電子基板18に異方性導電フィルム17を介して接続されているが、
図6(c)のように2枚の配線基板14のいずれもが1つの電子基板18に異方性導電フィルム17を介して接続されていてもよい。なお、電子基板18は、ヒータ12に与える電力を配線基板14に供給する機能を有する基板であり、制御部を搭載していてもよい。また、配線基板14を2枚用いずに、
図6(d)に示すように1枚の配線基板14を折り曲げて電極パッド部15aa、15aaの両方に接続するようにしてもよい。
【0043】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る光導波回路装置である光スイッチ装置の模式的な構成図である。この光スイッチ装置20は、光導波回路であるPLC21と、複数のヒータ22と、電極パッド領域23a、23bと、配線基板である配線基板24a、24bとを備えている。PLC21には、4アレイ型の8×1光スイッチ回路として機能する光スイッチ回路21aが形成されている。光スイッチ回路21aは、8つの光入力ポート21bと、8つの光出力ポート21cとを有する。
【0044】
8つの光入力ポート21bは、8つの2分岐カプラ21dのそれぞれの入力ポートに接続されている。各2分岐カプラ21dの一方の出力ポートは、それぞれ8つの2分岐カプラ21eのそれぞれの入力ポートに接続されている。各2分岐カプラ21eの一方の出力ポートは、それぞれ8つの2分岐カプラ21fのそれぞれの入力ポートに接続されている。他方の出力ポートは、それぞれ8つの2分岐カプラ21gのそれぞれの入力ポートに接続されている。2分岐カプラ21f、21gの合計32個の出力ポートは、
図1に示す光スイッチ回路11aが4つ並列接続された構成を有するアレイ光スイッチ部21hの各分岐ポートに接続している。アレイ光スイッチ部21hの4つの共通ポートは、4つの接続導波路21iを介して光出力ポート21cのうちの4つに接続している。
【0045】
一方、各2分岐カプラ21dの他方の出力ポートは、8つの接続導波路21jを介してそれぞれ8つの2分岐カプラ21kのそれぞれの入力ポートに接続されている。各2分岐カプラ21kの一方の出力ポートは、それぞれ8つの2分岐カプラ21lのそれぞれの入力ポートに接続されている。他方の出力ポートは、それぞれ8つの2分岐カプラ21mのそれぞれの入力ポートに接続されている。2分岐カプラ21l、21mの合計32個の出力ポートは、
図1に示す光スイッチ回路11aが4つ並列接続された構成を有するアレイ光スイッチ部21nの各分岐ポートに接続している。アレイ光スイッチ部21nの4つの共通ポートは、4つの接続導波路21oを介して光出力ポート21cのうちの他の4つに接続している。
【0046】
この光スイッチ回路21aでは、2つのアレイ光スイッチ部21h、21nを互いに180度反転して配置しているので、光導波路形成領域が小型になる。
【0047】
この光スイッチ装置20のPLC21、ヒータ、配線電極層、絶縁層、電極パッド領域23a、23b、および配線基板24a、24bの構成は実施形態1の光スイッチ装置10の対応する構成と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
また、この光スイッチ装置20では、ヒータ22の数は88個であり、光スイッチ装置10におけるヒータ12の数の4倍である。さらに、この光スイッチ装置20では、配線電極層の数は176本であり、光スイッチ装置10における配線電極層の数の4倍である。
【0049】
この光スイッチ装置20においても、配線層が2つあり、平面視で異なる配線層に形成されている配線電極層が互いに隣接しており、同一の配線層において互いに隣接する配線電極層の離間距離が所定の距離以上となっている。これにより、配線電極層の幅を狭くしたり、配線電極層間の離間距離を狭くしたりしなくても、配線電極層を高密度化できる。また、異なる配線層に形成した配線電極層を立体交差させて配線電極層形成領域のサイズを小さくすることもできる。これにより、給電量や製造性を確保しながら、配線電極層形成領域のサイズを小型化できるので、小型の光スイッチ装置20を実現できる。なお、光スイッチ装置20は、光スイッチ装置10と同様の方法で製造することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、配線層が2層であるが、3層以上としてもよい。配線層を3層以上とすることで、配線電極層形成領域のサイズをより小型化できる。
【0051】
つぎに、実施形態2の光スイッチ装置と、
図11に示す比較形態の光スイッチ装置とで、そのサイズを比較する。比較形態の光スイッチ装置100は、実施形態2の光スイッチ装置10とは、PLC11や絶縁層16の構成は同一であり、4アレイ型の8×1光スイッチ回路を構成しているが、配線電極層15はいずれもクラッド層11Bの表面に形成されている。すなわち配線層の数は1層である。
【0052】
ここで、光導波路11CはZrO
2が添加された石英系ガラスであり、クラッド層11Bとの比屈折率差Δが5%とした。また、ヒータについては、駆動するヒータの数を176個とし、各ヒータのグラウンドも含めた電極パッド数は200個程度であり、(配線電極層の幅)/(隣接する配線電極層間の離間距離)は100μm/100μm(すなわち、配線電極層のピッチとしては200μm)とした。すると、
図8に示すように、実施形態2、比較形態2とも、光導波路形成領域S1のサイズは一例として20mm×8mmであった。また、比較形態の配線電極層形成領域S2のサイズは一例として
図8(a)に示すように40.5mm×9.0mmであるのに対して、実施形態2の配線電極層形成領域S3のサイズは一例として
図8(b)に示すように20.5mm×9.5mmであり、実施形態2の構成の採用により大幅に小型化されることが確認された。
【0053】
ところで、実施形態2では、ゲートスイッチを構成するMZIは片方のアーム導波路にのみヒータが設けられている。一方、ゲートスイッチを構成するMZIの両方のアーム導波路にヒータを設け、これらに給電する構成とすることもできる。このような構成とすれば、製造誤差等により両方のアーム導波路により与える光の位相差にズレが生じた場合でも、両方のヒータに給電し、加熱することで、最大消光比を得られるように調整することができ、製造歩留まりが向上する。このような構成の場合、駆動するヒータの数を304個とし、各ヒータのグラウンドも含めた電極パッド数は330個程度となる。このような構成の場合、比較形態の配線電極層形成領域S2Aのサイズは一例として
図9(a)に示すように66.5mm×9.0mmであるのに対して、実施形態2の配線電極層形成領域S3Aのサイズは一例として
図9(b)に示すように33.5mm×9.5mmであり、実施形態2の構成の採用により大幅に小型化されることが確認された。さらには、配線層を3層とすると、配線電極層形成領域S4Aのサイズを一例として
図9(c)に示すように22.5mm×10.0mmまで小型化できることを確認した。
【0054】
なお、上記実施形態において、MZI11dのアーム導波路11db、11dcの両方にヒータ12を設ける場合、
図10(a)に示すように各アーム導波路11db、11dcに1個ずつヒータ12を設けてもよいが、
図10(b)に示すように各アーム導波路11db、11dcに2個のヒータ12をそれぞれ設け、これらを配線電極層15にて並列接続するようにてもよい。これにより、1個あたりのヒータ12の抵抗値が小さくなるので、印加する電圧を低電圧とすることができる。なお、
図10(b)のような構成とすると、ヒータ12の数が増加するので、必要な配線電極層15の数も増加する。これに対して、本発明の多層配線層構成を採用することにより、配線電極層形成領域をそれほど大きくせず、またはサイズをそのままとして、ヒータ12を増加させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。