特許第6623106号(P6623106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000002
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000003
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000004
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000005
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000006
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000007
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000008
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000009
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000010
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000011
  • 特許6623106-光導波路構造および光導波路回路 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623106
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】光導波路構造および光導波路回路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/126 20060101AFI20191209BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G02B6/126
   G02B6/122 311
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-72504(P2016-72504)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181963(P2017-181963A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰芳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−258610(JP,A)
【文献】 特開2006−184756(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド中に形成された前記クラッドよりも屈折率の高いコアによって光を導波する光導波路構造であって、
前記コアによって導波される光の導波方向に対して横断的に形成されたスリットと、
前記スリットを介して対向して配置された前記コアの一対の端面と、
を備え、
前記コアの端面の各々と前記スリットとの間には前記クラッドと同じ材料からなる部分が介在し
前記コアの端面の各々と前記スリットとの間における前記クラッドと同じ材料からなる部分は、前記コアによって導波される光の導波方向に関する長さが3μm以下である、
ことを特徴とする光導波路構造。
【請求項2】
前記コアの端部は、前記端面に近付くにつれてコア幅が拡大する部位を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路構造。
【請求項3】
前記コアの端部の形状は、端部形状を微小に摂動させた形状における結合損失を繰り返して計算することにより特定された構造最適化形状である、
ことを特徴とする請求項に記載の光導波路構造。
【請求項4】
請求項1から請求項のうち何れか1項に記載の光導波路構造を備えることを特徴とする光導波路回路。
【請求項5】
DP−QPSK変調方式の復調器に用いられるコヒーレントミキサである、ことを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項6】
入力された光の偏波を分波または合波する偏波合分波器である、ことを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路構造および光導波路回路に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的かつ実用的なコヒーレント変調方式として、四値位相変調方式が普及している。さらに、この四値位相変調方式と偏波多重技術を組み合わせた偏波多重四値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)方式は、周波数利用効率を高めることができるので、大容量光伝送を実現する技術として、より有望視されている。
【0003】
DP−QPSK変調方式の復調器は、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)技術を用いて素子を集積した光導波路回路によって実現する構成例が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5684131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偏波多重技術を利用しているDP−QPSK変調方式のための光導波路回路等において、光導波路の途中に波長板を設けることがある。そして、光導波路の途中に波長板を設ける場合、光導波路を切断するようにスリットを形成し、当該スリットに波長板を挿入するのが一般的な製造方法である。
【0006】
しかしながら、スリットを形成する際には、形成されるスリット幅にバラツキが発生してしまい、当該バラツキが光導波路における損失のバラツキを引き起こしてしまうことがある。間を隔てて配置された2つの光導波路間における損失は、当該光導波路のコア間の距離に依存するからである。光導波路を切断するようにスリットを形成すると、スリット幅のバラツキが切断されたコア間の距離のバラツキに直結してしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、光導波路に対して横断的に設けられたスリットにおけるスリット幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制できる光導波路構造および光導波路回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光導波路構造は、クラッド中に形成された前記クラッドよりも屈折率の高いコアによって光を導波する光導波路構造であって、前記コアによって導波される光の導波方向に対して横断的に形成されたスリットと、前記スリットを介して対向して配置された前記コアの一対の端面と、を備え、前記コアの端面の各々と前記スリットとの間には前記クラッドと同じ材料からなる部分が介在し、前記コアの端面の各々と前記スリットとの間における前記クラッドと同じ材料からなる部分は、前記コアによって導波される光の導波方向に関する長さが3μm以下である、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る光導波路構造は、前記コアの端部は、前記端面に近付くにつれてコア幅が拡大する部位を有している、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る光導波路構造は、前記コアの端部の形状は、端部形状を微小に摂動させた形状における結合損失を繰り返して計算することにより特定された構造最適化形状である、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る光導波路回路は、上記光導波路構造を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る光導波路回路は、DP−QPSK変調方式の復調器に用いられるコヒーレントミキサである、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係る光導波路回路は、入力された光の偏波を分波または合波する偏波合分波器である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光導波路構造および光導波路回路は、光導波路に対して横断的に設けられたスリットにおけるスリット幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図2図2は、石英系ガラス材料からなるPLC型の光導波路回路における光導波路の横断方向の断面を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る光導波路構造における光の伝搬方向に関する断面を示す図である。
図4図4は、コアの端部がMMI形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。
図5図5は、コアの端部がMMI形状である場合の伝搬状態を示す図である。
図6図6は、コアの端部が構造最適化形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。
図7図7は、コアの端部がテーパー形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。
図8図8は、コアの端部がテーパー形状である場合の伝搬状態を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る光導波路回路の製造方法の例を示す図である。
図10図10は、1/2波長板をガラスブロックに固定する構成例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る光導波路回路を偏波分波器に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明に係る光導波路回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の寸法の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
(光導波路回路の実施形態)
図1は、実施形態に係る光導波路回路の模式的な平面図である。図1に示される光導波路回路は、石英系ガラス材料からなるPLC型の光導波路回路であり、DP−QPSK変調方式の復調器に用いられるコヒーレントミキサとして使用することを想定した構成例である。図1に示される光導波路回路の構成は、後に詳述する実施形態に係る光導波路構造を適用する好適な構成例であり、例えば図1中の領域A、Bの光導波路において後に詳述する実施形態に係る光導波路構造を適用し得る。
【0019】
図1に示すように、光導波路回路100は、入力光導波路11、12と、偏波分波器21と、接続光導波路31、32、33、34と、90度ハイブリッド素子41、42と、Y分岐光導波路51、スリット61、62と、1/2波長板71を備えている。
【0020】
信号光L1が入力される入力光導波路11は、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい屈曲部を組み合わせたS字形状の屈曲部を経由して、偏波分波器21へ接続されている。一方、局所発振光LOが入力される入力光導波路12は、略直線状にY分岐光導波路51へ接続されている。
【0021】
偏波分波器21は、さらに詳しくは、Y分岐光導波路と方向性結合器とY分岐光導波路および方向性結合器を接続する2本のアーム光導波路とを備えており、マッハツェンダー(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)型干渉計の構成を有している。接続光導波路31、33は、それぞれ、偏波分波器21によって分波された光線の光路を90度ハイブリッド素子41、42へ接続する光路である。
【0022】
Y分岐光導波路51は、入力光導波路12に入力された局所発振光LOを、分岐比1:1で接続光導波路32、34に分岐する。接続光導波路32、34は、それぞれY分岐光導波路51によって分波された光線の光路を90度ハイブリッド素子41、42へ接続する光路である。
【0023】
90度ハイブリッド素子41、42は、干渉回路の一種であり、入力された信号光L1と局所発振光LOとをそれぞれ二分岐し、二分岐された局所発振光LOに光波の相対位相差として90度の位相差を与えた後、二分岐された一方の信号光L1と局所発振光LO、および二分岐されたもう一方の信号光L1と局所発振光LOをそれぞれ混合する回路である。
【0024】
ここで、図1に示すように、Y分岐光導波路51から90度ハイブリッド素子41への接続光導波路32の領域Aには、スリット61が設けられ、当該スリット61には1/2波長板71が挿入されている。なお、1/2波長板71の光軸は接続光導波路32の偏波軸と45度の角度をなすように調整されている。したがって、1/2波長板71を通過する局所発振光LOは、偏波が90度回転されて90度ハイブリッド素子41へ入力される。
【0025】
一方、Y分岐光導波路51から90度ハイブリッド素子42への接続光導波路34の領域Bには、スリット62が設けられているが、当該スリット62には1/2波長板が挿入されていない。したがって、90度ハイブリッド素子42へは、そのままの偏波で局所発振光LOが入力される。
【0026】
ところで、接続光導波路34には、スリット62が設けられているが、当該スリット62には1/2波長板が挿入されていない理由は以下ととおりである。
【0027】
接続光導波路32には、スリット61が設けられ、1/2波長板71が挿入されているので、その分の損失が発生している。したがって、そのままでは、90度ハイブリッド素子41に入力する局所発振光は、90度ハイブリッド素子42に入力する局所発振光よりも、過剰な損失を受ける。そこで、光導波路回路100では、当該損失を補償するために、接続光導波路34にもスリット62を設けている。
【0028】
上記目的のため、接続光導波路34に設けられたスリット62のスリット幅は、接続光導波路32におけるスリット61および1/2波長板71によって発生する損失に相当する量の損失が発生するように設計することが好ましい。なお、接続光導波路34には交差点Cが存在するので、交差点Cにおける交差損失の分を考慮してスリット62のスリット幅を設計すればより好ましい。
【0029】
(光導波路構造の実施形態)
以下、図1に示される領域Aまたは領域Bに適用し得る実施形態に係る光導波路構造について説明する。なお、説明の重複を避けるために、以下で説明する光導波路構造の例は、スリットに波長板を挿入した構成とするが、スリットに波長板を挿入しない構成も、波長板の有無を除いて、以下で説明する例と同様に構成することができる。
【0030】
図2は、石英系ガラス材料からなるPLC型の光導波路回路における光導波路の横断方向の断面を示す図である。図2に示すように、光導波路回路100は、シリコン等からなる基板101上に形成された石英ガラス系材料からなるクラッド102内に、クラッド102よりも屈折率の高いコア103が形成されることによって構成されたものである。クラッド102よりも屈折率の高いコア103を得るには、例えばジルコニア(ZrO)やゲルマニア(GeO)等を石英ガラス系材料にドープすればよい。ここで、コア103は、光導波路回路100において実質的に光導波路に相当する構成であり、図1に示される接続光導波路33、34などの光導波路を代表する構成として記載している。
【0031】
図3は、実施形態に係る光導波路構造における光の伝搬方向に関する断面を示す図である。図3に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bによって導波される光の導波方向(図中矢印方向)に対して横断的に形成されたスリット61を備えている。スリット61は、例えば1/2波長板71を挿入するためのものであり、実施形態に係る光導波路構造の使用目的に応じて適した光学素子を挿入することが可能であり、また、図1に示される領域Bのように、光学素子を挿入しない構成とすることも可能である。
【0032】
コア103a、103bは、スリット61を介して、コア103aとコア103bに分割されており、コア103aの端面Saとコア103bの端面Sbとは、スリット61を介して対向して配置されている。また、コア103aの端面Saとスリット61との間には、クラッド102aと同じ材料からなる部分が介在し、コア103bの端面Sbとスリット61との間には、クラッド102bと同じ材料からなる部分が介在している。
【0033】
なお、ここでは図面を参照した説明を容易にするため、クラッド102aとクラッド102bとを区別して記載しているが、一般には図面外にてクラッド102aとクラッド102bとは繋がっており、同一の材料からなる。
【0034】
上記の構成により、実施形態に係る光導波路構造では、コア103aの端面Saから出射した光は、クラッド102aと同じ材料からなる部分と、スリット61に挿入された1/2波長板71と、クラッド102bと同じ材料からなる部分とを順次通過し、コア103bの端面Sbに入射される。
【0035】
上記構成を言い換えると、実施形態に係る光導波路構造では、スリット61の幅Gは、コア103aの端面Saとコア103bの端面Sbとの間の幅Gよりも狭いことになる。
【0036】
また、コア103aの端面Saとスリット61との間におけるクラッド102aと同じ材料からなる部分の幅G、および、コア103bの端面Sbとスリット61との間におけるクラッド102bと同じ材料からなる部分の幅Gは、いずれも、3μm以下であることが好ましい。幅Gおよび幅Gが広いほど、スリット61の幅のバラツキに対する耐性が高くなるが、コア103aとコア103bとの間の結合損失を低く抑制することとのバランスを考えると、幅Gおよび幅Gが3μm以下とすることが好ましい。
【0037】
なお、上記幅G、G、G、Gは、いずれも、コア103a、103bによって導波される光の導波方向に関して測定した長さとする。
【0038】
以下、実施形態に係る光導波路構造におけるコア103a、103bの端部の形状例について説明する。以下で説明するように、コア103a、103bの端部の形状は、コア103aとコア103bとの間の結合損失が小さくなるように設計されている。実施形態に係る光導波路構造は、結合損失が小さくなるように好適に設計された光導波路構造に対して、スリット幅のバラツキが光導波路の損失へ影響するのを抑制できる。
【0039】
(MMI形状)
図4は、コアの端部がMMI(Multi-Mode Interference)形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。なお、図4では、コアの端部形状を見やすくするために、スリット61は、端面位置を直線で記載し、スリット61に挿入される光学素子の記載を省略している。図5は、コアの端部がMMI形状である場合の伝搬状態を示す図である。
【0040】
図4に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端部F1a、F1bの形状をMMI形状とすることができる。
【0041】
図5に示すように、コア103a、103bの端部F1a、F1bの形状がMMI形状である導波路構造では、コア103aの端面Saから出射された光は、端面Saと端面Sbとの間で集光し、端面Sbへ入射される。その結果、コア103aの端面Saから出射された光がクラッドへ拡散することが抑制され、コア103aとコア103bとの間の結合損失が小さくなる。そして、このような伝搬状態は、コア103a、103bの端部F1a、F1bの形状を適切に設計することにより実現されている。
【0042】
図4に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端面Sa、Sbとスリット61との間には、幅G、Gのクラッドと同じ材料からなる部分が介在しているので、スリット61の位置または幅Gにバラツキが生じた場合であっても、コア103a、103bの端部F1a、F1bの形状に影響を及ぼすことが抑制されている。特に、コア103a、103bの端面Sa、Sbの間の幅Gは、コア103aとコア103bとの間の結合損失に大きく影響を与えるので、本実施形態に係る光導波路構造の効果は顕著である。つまり、本実施形態に係る光導波路構造は、スリット幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制できる構成である。
【0043】
(構造最適化形状)
図6は、コアの端部が構造最適化形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。図4と同様に、図6でも、コアの端部形状を見やすくするために、スリット61は、端面位置を直線で記載し、スリット61に挿入される光学素子の記載を省略している。
【0044】
図6に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端部F2a、F2bの形状を構造最適化形状とすることができる。ここで、構造最適化形状とは、コア103a、103bの端部F2a、F2bの形状を微小に摂動させ、当該摂動させた形状における結合損失をコンピュータシミュレーションによって計算するというプロセスを繰り返すことにより、結合損失が小さく抑えられる形状としてコンピュータシミュレーションによって特定された形状のことである。この最適化アルゴリズムは、例えば波面整合法やトポロジー最適化法という名で知られている手法を用いることができる。
【0045】
図6に示されるように、コア103a、103bの端部F2a、F2bの形状が構造最適化形状である導波路構造では、コア103a、103bの端面Sa、Sbが平坦な面ではない場合もある。これは、コア103a、103bの端面Sa、Sbも構造最適化の計算過程において形状が摂動された結果である。
【0046】
つまり、図6に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端面Sa、Sbとスリット61との間には、幅G、Gのクラッドと同じ材料からなる部分が介在しているので、コア103a、103bの端面Sa、Sbも構造最適化の形状パラメータの一部にすることができ、結合損失を抑制するのにより好適な形状を採用することが可能となる。特に、コア103a、103bの端面Sa、Sbの間の幅Gは、コア103aとコア103bとの間の結合損失に大きく影響を与えるので、本実施形態に係る光導波路構造の効果は顕著である。つまり、本実施形態に係る光導波路構造は、スリット幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制できる構成である。
【0047】
(テーパー形状)
図7は、コアの端部がテーパー形状である場合の光導波路構造を模式的に示す平面図である。なお、図4と同様に、図7でも、コアの端部形状を見やすくするために、スリット61は、端面位置を直線で記載し、スリット61に挿入される光学素子の記載を省略している。図8は、コアの端部がテーパー形状である場合の伝搬状態を示す図である。
【0048】
図7に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端部F3a、F3bの形状をテーパー形状とすることができる。
【0049】
図8に示すように、コア103a、103bの端部F3a、F3bの形状がテーパー形状である導波路構造では、コア103aの端面Saから出射された光は、コア103bの端部F3bのテーパー形状によって拡散が吸収される。その結果、コア103aの端面Saから出射された光がクラッドへ拡散することが抑制され、コア103aとコア103bとの間の結合損失が小さくなる。テーパー形状の場合も、このような伝搬状態は、コア103a、103bの端部F3a、F3bの形状を適切に設計することにより実現されている。
【0050】
図7に示すように、実施形態に係る光導波路構造は、コア103a、103bの端面Sa、Sbとスリット61との間には、幅G、Gのクラッドと同じ材料からなる部分が介在しているので、スリット61の位置または幅Gにバラツキが生じた場合であっても、コア103a、103bの端部F3a、F3bの形状に影響を及ぼすことが抑制されている。特に、コア103a、103bの端面Sa、Sbの間の幅Gは、コア103aとコア103bとの間の結合損失に大きく影響を与えるので、本実施形態に係る光導波路構造の効果は顕著である。つまり、本実施形態に係る光導波路構造は、スリット幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制できる構成である。
【0051】
スリットの幅Gのバラツキは、例えばダイシングで作製した時に±3μm存在する。これに対し、コアの端面の間の幅Gは、コアの位置精度および線幅精度により決まり、およそ±0.3μm以下である。例えば、コアとクラッドとの比屈折率差が5%Δの光導波路に対して20μmのスリットを形成するという条件で比較すると、スリットの幅Gのバラツキが直接コアの端面間の幅Gのバラツキになる場合は、損失が±0.45dBであるのに対し、本実施形態に係る光導波路構造の場合は、コアの端面間の幅Gはコアの位置精度および線幅精度により決まるため、損失のバラツキを±0.05dBに抑制することができる。
【0052】
(製造方法例)
ここで、図9を参照しながら、実施形態に係る光導波路回路100の製造方法の例について説明する。最初に、シリコンや石英ガラスなどで形成された基板101を用意する。次に、コア103a、103bよりも下のクラッドである下部クラッド102cに対応する石英系ガラスからなる層を基板101上に形成し、その後、当該層をアニールして透明ガラス化する。
【0053】
次に、スパッタ法を用いて、下部クラッド102c上におけるコア103に対応する箇所にジルコニア(ZrO)がドープされたシリカ(SiO)層を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術等によって、光導波路に対応する所望の形状にジルコニア(ZrO)がドープされたシリカ(SiO)層を加工し、クラッドよりも屈折率の高いコア103が形成される。
【0054】
その後、コア103の上、および、コア103が形成されなかった下部クラッド102cの上に、石英系ガラスからなる上部クラッド102dを形成する。
【0055】
次に、スリット61を形成するが、その形成手法は、ダイシングやエッチング加工やレーザー加工など、どの加工方法を採用してもよい。これらの選択肢の中でもエッチング加工は、スリット幅のバラツキを小さくすることができるのでより好ましい。実施形態に係る光導波路構造は、スリット幅のバラツキに対する耐性があるが、スリット幅のバラツキを小さくすることが出来れば、コアとスリットとの間におけるクラッドの幅を狭く設計することができ、このことは、結合損失を低減することに資する。
【0056】
ここで、スリット61aの深さは、図9に示すように、基板101の一部を含む深さまで到達させることが好ましい。一般に光導波路回路100のクラッド(下部クラッド102cおよび上部クラッド102d)の厚さは100μm以下であり、1/2波長板71を十分に安定させるためには、基板101の一部を含む深さまで到達させることが好ましい。なお、スリット61aをエッチング加工によって形成する場合、クラッドを四フッ化炭素(CF)等のエッチング剤でエッチングし、シリコンからなる基板を六フッ化硫黄(SF)等のエッチング剤でエッチングすればよい。
【0057】
なお、上記製造方法例では、基板101の一部を含む深さのスリット61aを形成するものとしたが、クラッド(下部クラッド102cおよび上部クラッド102d)のみに形成したスリット61であっても、1/2波長板71を十分に安定させることできる構成を採用し得る。例えば、図10に示すように、スリット61の縁にガラスブロック81等を配置し、1/2波長板71をガラスブロック81に固定する構成とすることも可能である。
【0058】
(変形実施形態)
上記説明した実施形態に係る光導波路回路は、DP−QPSK変調方式の復調器に用いられるコヒーレントミキサとして使用することを想定した構成例であるが、本発明の実施はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、実施形態に係る光導波路回路を偏波分波器(または偏波合波器)に適用することも可能である。
【0059】
図11は、実施形態に係る光導波路回路を偏波分波器に適用した例を示す図である。図11に示すように、光導波路回路200は、Y分岐光導波路91と方向性結合器93とY分岐光導波路91および方向性結合器93を接続する2本のアーム光導波路92a、92bとを備えており、マッハツェンダー型干渉計の構成を有している。
【0060】
2本のアーム光導波路92a、92bの途中には、スリット63が設けられ、当該スリット63にはそれぞれ1/4波長板72、73が挿入されている。ここで、アーム光導波路92aの途中に挿入された1/4波長板72は、遅軸が基板と垂直になるように挿入され、アーム光導波路92bの途中に挿入された1/4波長板73は、遅軸が基板と水平になるように挿入されている。
【0061】
以上の構成により、光導波路回路200は、入力された信号光L2を偏波分波する偏波分波器として機能する。また、以上の構成の光導波路回路200におけるスリット63においても、上記説明した実施形態に係る光導波路構造を適用することが可能である。そして、実施形態に係る光導波路構造を適用する結果、スリット63の幅のバラツキによる光導波路の損失のバラツキを抑制することができる光導波路回路200が実現される。
【0062】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
100、200 光導波路回路
101 基板
102、102a、102b クラッド
102c 下部クラッド
102d 上部クラッド
103、103a、103b コア
11、12 入力光導波路
21 偏波分波器
31、32、33、34 接続光導波路
41、42 90度ハイブリッド素子
51、91 Y分岐光導波路
61、61a、62、63 スリット
71 1/2波長板
72、73 1/4波長板
81 ガラスブロック
92a、92b アーム光導波路
93 方向性結合器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11