特許第6623132号(P6623132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623132仮接着用組成物、硬化膜および半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623132
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】仮接着用組成物、硬化膜および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20191209BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191209BHJP
   C09J 125/08 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09J125/08
【請求項の数】11
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-170282(P2016-170282)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-35279(P2018-35279A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】加持 義貴
(72)【発明者】
【氏名】室 祐継
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/132962(WO,A1)
【文献】 特開2013−237816(JP,A)
【文献】 特開2009−235168(JP,A)
【文献】 特開平7−74136(JP,A)
【文献】 特開平10−321565(JP,A)
【文献】 特開2012−168487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00− 5/10
7/00− 7/50
9/00−201/10
H01L21/304
21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、溶剤とを含み、
仮接着用組成物中に、前記溶剤を68〜97質量%含有し、
前記溶剤は、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、
前記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmであり、
前記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、下記式(X)で表される溶剤である
仮接着用組成物
式(X)
【化1】
上記式(X)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1〜3の整数である;但し、トルエンを除く。
【請求項2】
前記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜100質量ppmである、請求項1に記載の仮接着用組成物。
【請求項3】
前記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜10質量ppmである、請求項1に記載の仮接着用組成物。
【請求項4】
前記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン環と、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3つ有する溶剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項5】
前記溶剤中の、トルエンと、前記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の合計含有量は、40〜100質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項6】
前記アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤が、キシレンを含み、かつ、前記キシレンの含有量は、トルエンの含有量の1〜3倍である、請求項1〜のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含有し、前記界面活性剤を、前記仮接着用組成物の全固形分に対し、0.0001〜3質量%含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項8】
前記エラストマーは、ポリスチレン系エラストマーを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項9】
前記ポリスチレン系エラストマーは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、およびポリスチレン−ポリ(エチレン/エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の仮接着用組成物。
【請求項10】
前記ポリスチレン系エラストマーにおけるスチレン由来の繰り返し単位の含有量が55質量%以下である、請求項またはに記載の仮接着用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の仮接着用組成物を用いる半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着用組成物、硬化膜および半導体素子の製造方法に関する。
【0002】
集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)などの半導体素子などの製造プロセスにおいては、デバイスウェハ上に多数のICチップが形成され、ダイシングにより個片化される。電子機器の更なる小型化および高性能化のニーズに伴い、電子機器に搭載されるICチップについても更なる小型化および高集積化が求められているが、デバイスウェハの面内方向における集積回路の高集積化は限界に近づいている。
【0003】
ICチップ内の集積回路から、ICチップの外部端子への電気的な接続方法としては、従来より、ワイヤーボンディング法が広く知られている。また、ICチップの小型化を図るべく、近年、デバイスウェハに貫通孔を設け、外部端子としての金属プラグを、貫通孔内を貫通するように集積回路に接続する方法(いわゆる、シリコン貫通電極(TSV)を形成する方法)が知られている。しかしながら、シリコン貫通電極を形成する方法のみでは、上記した近年のICチップに対する更なる高集積化のニーズに充分応えられるものではない。
【0004】
以上を鑑み、ICチップ内の集積回路を多層化することにより、デバイスウェハの単位面積当たりの集積度を向上させる技術が知られている。しかしながら、集積回路の多層化は、ICチップの厚みを増大させるため、ICチップを構成する部材の薄型化が必要である。このような部材の薄型化としては、例えば、デバイスウェハの薄型化が検討されており、ICチップの小型化につながるのみならず、シリコン貫通電極の製造におけるデバイスウェハの貫通孔製造工程を省力化できることから、有望視されている。また、パワーデバイスやイメージセンサーなどの半導体素子においても、上記集積度の向上やデバイス構造の自由度向上の観点から、薄型化が試みられている。
【0005】
デバイスウェハとしては、約700〜900μmの厚さを有するものが広く知られているが、近年、ICチップの小型化等を目的に、デバイスウェハの厚さを200μm以下となるまで薄くすることが試みられている。
しかしながら、厚さ200μm以下のデバイスウェハは非常に薄く、これを用いた半導体素子製造用部材も非常に薄いため、このような部材に対して更なる処理を施したり、あるいは、このような部材を単に移動したりする場合等において、部材を安定的に、かつ、損傷を与えることなく支持することは困難である。
【0006】
上記のような問題を解決すべく、薄型化前のデバイスウェハとキャリア基板とを仮接着用組成物を用いて一時的に固定(仮接着)し、デバイスウェハの裏面を研削して薄型化した後に、デバイスウェハからキャリア基板を剥離(脱離)させる技術が知られている。
【0007】
例えば、特許文献1には、接着剤層を介してウェハに貼り付けられた支持体を、ウェハから剥離する剥離方法であって、上記接着剤層を膨潤させて、その表面の接着性を低下させる溶剤を、上記接着剤層に供給する溶剤供給工程と、上記ウェハから、膨潤した上記接着剤層を剥離する剥離工程と、を包含することを特徴とする剥離方法が開示されている。
また、特許文献2には、JIS K−7210に準拠した10kg荷重における200℃でのメルトフローレートが4〜150g/10分である樹脂を含む、デバイスウェハと支持基板とを接着するための保護層形成用組成物であって、上記保護層形成用組成物のJIS K−7127に準拠したヤング率が0.02GPa以下である、保護層形成用組成物に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−49698号公報
【特許文献2】特開2015−191940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、仮接着用組成物は、製造後すぐに使用することもあるが、長期間保管した後に使用することもある。本発明者らの検討によれば、仮接着用組成物は、保管中に残渣が生じやすいことがあった。また、残渣としては、エラストマー等の有機物由来の残渣や金属成分由来の金属系残渣が生成しやすいことが分かった。これらの残渣を仮接着用組成物の硬化膜から取り除くことができれば有益である。
【0010】
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、長期間保存しても、残渣を効果的に除去可能な、仮接着用組成物、硬化膜および半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる状況のもと、検討を行った結果、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<15>により、上記課題は解決された。
<1>エラストマーと、溶剤とを含み、上記溶剤は、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、上記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmである、仮接着用組成物。
<2>上記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜100質量ppmである、<1>に記載の仮接着用組成物。
<3>上記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜10質量ppmである、<1>に記載の仮接着用組成物。
<4>上記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン環と、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3つ有する溶剤である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<5>上記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、下記式(X)で表される溶剤である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物;
式(X)
【化1】
上記式(X)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1〜3の整数である;但し、トルエンを除く。
<6>上記仮接着用組成物中に、上記溶剤を68〜97質量%含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<7>上記溶剤中の、トルエンと、上記トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の合計含有量は、40〜100質量%である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<8>上記アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤が、キシレンを含み、かつ、上記キシレンの含有量は、トルエンの含有量の1〜3倍である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<9>さらに界面活性剤を含有し、上記界面活性剤を、上記仮接着用組成物の全固形分に対し、0.0001〜3質量%含有する、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<10>上記エラストマーは、ポリスチレン系エラストマーを含む、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<11>上記ポリスチレン系エラストマーは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、およびポリスチレン−ポリ(エチレン/エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、<10>に記載の仮接着用組成物。
<12>上記ポリスチレン系エラストマーにおけるスチレン由来の繰り返し単位の含有量が55質量%以下である、<10>または<11>に記載の仮接着用組成物。
<13><1>〜<12>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物を硬化してなる硬化膜であって、有機系残渣が1cmあたり0.03個以下であり、金属系残渣が1cmあたり0.03個以下である、硬化膜;但し、有機系残渣とは少なくとも炭素原子と酸素原子とが検出され、金属成分が検出されない硬化膜の表面の欠陥をいい、金属系残渣とは、少なくとも炭素原子と酸素原子と、少なくとも1種の金属成分とが検出される硬化膜の表面の欠陥をいう。
<14><1>〜<12>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物を用いる半導体素子の製造方法。
<15>上記仮接着用組成物を用いて硬化膜を形成し、上記硬化膜を、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を用いて洗浄することを含む、<14>に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、長期間保存しても、残渣を効果的に除去可能な、仮接着用組成物、硬化膜および半導体素子の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体素子の製造方法を示す第一の実施形態の概略図である。
図2】半導体素子の製造方法を示す第二の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」または「放射線」は、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものを意味する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定に従ったポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、内径(ID)6.0mm×15.0cm)を用い、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリドン)溶液を用いることによって求めることができる。
なお、以下に説明する実施の形態において、既に参照した図面において説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略化する。
【0015】
<仮接着用組成物>
本発明の仮接着用組成物は、エラストマーと、溶剤とを含み、上記溶剤は、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、上記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmであることを特徴とする。
このように、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を用いる場合、微量のトルエンを配合することにより、得られる硬化膜の有機系残渣や金属系残渣の両方を効果的に洗浄除去することが可能になる。より具体的には、トルエンの量を溶剤中、0.1質量ppm以上とすることにより、硬化膜中の有機系残渣が洗浄液に溶解しやすくなり、硬化膜中の有機系残渣を低減することができる。一方、トルエンの量を溶剤中、300質量ppm以下とすることにより、硬化膜中に、金属系残渣を発生しにくくすることができる。
ここで、有機系残渣とは、エラストマー中の超高分子量体や経時劣化した凝集体などであり、金属系残渣とは、金属塩を核にした成分などであると推測される。詳しくは、後述する実施例に従って測定される残渣をいう。
さらに、本発明では、キシレンを所定の割合で配合することにより、膜中に残存するキシレンの量を増やすことができ、長期間保存した後の塗布欠陥をより効果的に抑制できる。その結果、塗布後の硬化膜の表面での欠陥の発生をより効果的に抑制できる。
【0016】
<<エラストマー>>
本発明の仮接着用組成物は、エラストマーを含む。エラストマーを使用することで、基板(キャリア基板やデバイスウェハ等の被加工基板)の微細な凹凸にも追従し、適度なアンカー効果により、接着性に優れた膜を形成できる。エラストマーは、1種または2種以上を併用することができる。なお、本明細書において、エラストマーとは、弾性変形を示す高分子化合物を表す。すなわち外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有する高分子化合物と定義する。
【0017】
本発明において、エラストマーの重量平均分子量は、2,000〜200,000が好ましく、10,000〜200,000がより好ましく、50,000〜100,000がさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあるエラストマーは、溶剤への溶解性が優れるため、キャリア基板を被加工基板から剥離した後、溶剤を用いて、被加工基板やキャリア基板の上に残存するエラストマー由来の残渣を除去する際、残渣が容易に溶剤に溶解して除去される。このため、被加工基板やキャリア基板などに残渣が残らないなどの利点がある。
【0018】
本発明において、エラストマーとしては、特に限定されず、スチレン由来の繰り返し単位を含むエラストマー(ポリスチレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリイミド系エラストマーなどが使用できる。特に、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが好ましく、耐熱性と剥離性の観点からポリスチレン系エラストマーがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、エラストマーは、水添物であることが好ましい。特に、ポリスチレン系エラストマーの水添物が好ましい。エラストマーが水添物であると、熱安定性や保存安定性が向上する。さらには、剥離性および剥離後の膜の除去性が向上する。ポリスチレン系エラストマーの水添物を使用した場合、上記効果が顕著である。なお、水添物とは、エラストマーが水添された構造の重合体を意味する。
【0020】
本発明において、エラストマーは、25℃から、20℃/分の昇温速度で昇温した際の5%熱質量減少温度が、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、400℃以上であることが一層好ましい。また、上限値は特に限定はないが、例えば1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れた膜を形成できる。
本発明におけるエラストマーは、元の大きさを100%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で200%まで変形させることができ、かつ外力を除いたときに、短時間で130%以下に戻る性質を有することが好ましい。
【0021】
(ポリスチレン系エラストマー)
ポリスチレン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられ、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体およびポリスチレン−ポリ(エチレン/エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
ポリスチレン系エラストマーにおける、スチレン由来の繰り返し単位の含有量は90質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、48質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が一層好ましく、33質量%以下がより一層好ましい。上記スチレン由来の繰り返し単位の割合の下限は、0質量%であってもよいが、10質量%以上とすることもできる。このような範囲とすることにより、基板同士を仮接着用組成物で貼り合わせて積層体を形成した際において、積層体の反りをより効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明における好ましい態様の一つとして、スチレン由来の繰り返し単位を全繰り返し単位中に10質量%以上55質量%以下の割合で含有するエラストマーAと、スチレン由来の繰り返し単位を全繰り返し単位中に55質量%を超えて95質量%以下の割合で含有するエラストマーBとを組み合わせて用いることが挙げられる。エラストマーAとエラストマーBとを併用することで、上記積層体の反りの発生を効果的に抑制できる。このような効果が得られるメカニズムは、以下によるものと推測できる。すなわち、エラストマーAは、比較的柔らかい材料であるため、弾性を有する膜を形成しやすい。このため、仮接着用組成物を用いて被加工基板とキャリア基板との積層体を製造し、被加工基板を研磨して薄膜化する際に、研磨時の圧力が局所的に加わっても、仮接着用組成物により形成される膜が弾性変形して元の形状に戻り易い。その結果、優れた平坦研磨性が得られる。また、研磨後の積層体を、加熱処理し、その後冷却しても、冷却時に発生する内部応力を仮接着用組成物により形成される膜によって緩和でき、反りの発生を効果的に抑制できる。
また、上記エラストマーBは、比較的硬い材料であるため、エラストマーBを含むことで、剥離性に優れた膜を形成できる。
【0024】
上記エラストマーAと上記エラストマーBを配合する場合の質量比は、エラストマーA:エラストマーB=1:99〜99:1が好ましく、3:97〜97:3がより好ましく、5:95〜95:5がさらに好ましく、10:90〜90:10が一層好ましい。上記範囲であれば、反りの発生をより効果的に抑制できる。
【0025】
ポリスチレン系エラストマーは、スチレンと他のモノマーとのブロック共重合体であることが好ましく、片末端または両末端がスチレンブロックであるブロック共重合体であることがより好ましく、両末端がスチレンブロックであることが特に好ましい。ポリスチレン系エラストマーの両端を、スチレンブロック(スチレン由来の繰り返し単位)とすると、耐熱性がより向上する傾向にある。これは、耐熱性の高いスチレン由来の繰り返し単位が末端に存在することとなるためである。特に、スチレン由来の繰り返し単位のブロック部位が反応性のポリスチレン系ハードブロックであることにより、耐熱性、耐薬品性により優れる傾向にあり好ましい。加えて、このようなエラストマーは、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
また、ポリスチレン系エラストマーは水添物であると、熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。さらに、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
ポリスチレン系エラストマーの不飽和二重結合量としては、剥離性の観点から、ポリスチレン系エラストマー1gあたり、15mmol未満であることが好ましく、5mmol未満であることがより好ましく、0.5mmol未満であることがさらに好ましい。なお、ここでいう不飽和二重結合量は、スチレン由来のベンゼン環内の不飽和二重結合の量を含まない。不飽和二重結合量は、NMR(核磁気共鳴)測定により算出することができる。
【0026】
なお、本明細書において「スチレン由来の繰り返し単位」とは、スチレンまたはスチレン誘導体を重合した際に重合体に含まれるスチレン由来の構造単位であり、置換基を有していてもよい。スチレン誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等が挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0027】
ポリスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S、ソルプレンT、アサプレンT−411、アサプレンT−432、アサプレンT−437、アサプレンT−438、アサプレンT−439、タフテックH1272、タフテックP1500、タフテックH1052、タフテックH1062、タフテックM1943、タフテックM1911、タフテックH1041、タフテックMP10、タフテックM1913、タフテックH1051、タフテックH1053、タフテックP2000、タフテックH1043(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、エラストマーAR−850C、エラストマーAR−815C、エラストマーAR−840C、エラストマーAR−830C、エラストマーAR−860C、エラストマーAR−875C、エラストマーAR−885C、エラストマーAR−SC−15、エラストマーAR−SC−0、エラストマーAR−SC−5、エラストマーAR−710、エラストマーAR−SC−65、エラストマーAR−SC−30、エラストマーAR−SC−75、エラストマーAR−SC−45、エラストマーAR−720、エラストマーAR−741、エラストマーAR−731、エラストマーAR−750、エラストマーAR−760、エラストマーAR−770、エラストマーAR−781、エラストマーAR−791、エラストマーAR−FL−75N、エラストマーAR−FL−85N、エラストマーAR−FL−60N、エラストマーAR−1050、エラストマーAR−1060、エラストマーAR−1040(以上、アロン化成(株)製)、クレイトンD1111、クレイトンD1113、クレイトンD1114、クレイトンD1117、クレイトンD1119、クレイトンD1124、クレイトンD1126、クレイトンD1161、クレイトンD1162、クレイトンD1163、クレイトンD1164、クレイトンD1165、クレイトンD1183、クレイトンD1193、クレイトンDX406、クレイトンD4141、クレイトンD4150、クレイトンD4153、クレイトンD4158、クレイトンD4270、クレイトンD 4271、クレイトンD 4433、クレイトンD 1170、クレイトンD 1171、クレイトンD 1173、カリフレックスIR0307、カリフレックスIR 0310、カリフレックスIR 0401、クレイトンD0242、クレイトンD1101、クレイトンD1102、クレイトンD1116、クレイトンD1118、クレイトンD1133、クレイトンD1152、クレイトンD1153、クレイトンD1155、クレイトンD1184、クレイトンD1186、クレイトンD1189、クレイトンD1191、クレイトンD1192、クレイトンDX405、クレイトンDX408、クレイトンDX410、クレイトンDX414、クレイトンDX415、クレイトンA1535、クレイトンA1536、クレイトンFG1901、クレイトンFG1924、クレイトンG1640、クレイトンG1641、クレイトンG1642、クレイトンG1643、クレイトンG1645、クレイトンG1633、クレイトンG1650、クレイトンG1651、クレイトンG1652(G1652MU−1000)、クレイトンG1654、クレイトンG1657、クレイトンG1660、クレイトンG1726、クレイトンG1701、クレイトンG1702、クレイトンG1730、クレイトンG1750、クレイトンG1765、クレイトンG4609、クレイトンG4610(以上、クレイトンポリマージャパン(株)製)、TR2000、TR2001、TR2003、TR2250、TR2500、TR2601、TR2630、TR2787、TR2827、TR1086、TR1600、SIS5002、SIS5200、SIS5250、SIS5405、SIS5505、ダイナロン6100P、ダイナロン4600P、ダイナロン6200P、ダイナロン4630P、ダイナロン8601P、ダイナロン8630P、ダイナロン8600P、ダイナロン8903P、ダイナロン6201B、ダイナロン1321P、ダイナロン1320P、ダイナロン2324P、ダイナロン9901P(以上、JSR(株)製)、デンカSTRシリーズ(電気化学工業(株)製)、クインタック3520、クインタック3433N、クインタック3421、クインタック3620、クインタック3450、クインタック3460(以上、日本ゼオン製)、TPE−SBシリーズ(住友化学(株)製)、ラバロンシリーズ(三菱化学(株)製)、セプトン1001、セプトン1020、セプトン2002、セプトン2004、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2007、セプトン2063、セプトン2104、セプトン4033、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099、セプトンHG252、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007、セプトン8076、セプトン8104、セプトンV9461、セプトンV9475、セプトンV9827、ハイブラー7311、ハイブラー7125、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、(株)クラレ製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、リケンテクノス(株)製)などが挙げられる。
【0028】
(ポリエステル系エラストマー)
ポリエステル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジカルボン酸またはその誘導体と、ジオール化合物またはその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオール、下記構造式で表される2価のフェノールなどが挙げられる。
【0029】
【化2】
【0030】
上記式中、YDOは、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数4〜8のシクロアルキレン基、−O−、−S−、および−SO−のいずれかを表すか、単結合を表す。RDO1およびRDO2は各々独立に、ハロゲン原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。pdo1およびpdo2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、ndo1は、0または1を表す。
【0031】
2価のフェノールの具体例としては、ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、レゾルシンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用して用いてもよい。
また、ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることもできる。マルチブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントとの種類、比率、および分子量の違いによりさまざまなグレードのものが挙げられる。具体例としては、ハイトレル(東レ・デュポン(株)製)、ペルプレン(東洋紡(株)製)、プリマロイ(三菱化学(株)製)、ヌーベラン(帝人(株)製)、エスペル1612、1620(以上、日立化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0032】
(ポリオレフィン系エラストマー)
ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体などが挙げられる。例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレンなどの炭素数2〜20の非共役ジエンとα−オレフィンの共重合体などが挙げられる。また、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性ニトリルゴムが挙げられる。具体的には、エチレン・α−オレフィンの共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α−オレフィンの共重合体ゴム、ブテン・α−オレフィンの共重合体ゴムなどが挙げられる。
市販品として、ミラストマー(三井化学(株)製)、サーモラン(三菱化学(株)製)EXACT(エクソンモービル製)、ENGAGE(ダウ・ケミカル日本(株)製)、エスポレックス(住友化学(株)製)、Sarlink(東洋紡(株)製)、ニューコン(日本ポリプロ(株)製)、EXCELINK(JSR(株)製)などが挙げられる。
【0033】
(ポリウレタン系エラストマー)
ポリウレタン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、低分子のグリコールおよびジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールおよびジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構造単位を含むエラストマーなどが挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン・1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−ヘキシレン・ネオペンチレンアジペート)などが挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10,000が好ましい。
低分子のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500が好ましい。
ポリウレタン系エラストマーの市販品としては、PANDEX T−2185、T−2983N(以上、DIC(株)製)、ミラクトラン(日本ミラクトラン(株)製)、エラストラン(BASFジャパン(株)製)、レザミン(大日精化工業(株)製)、ペレセン(ダウ・ケミカル日本(株)製)、アイアンラバー(NOK(株)製)、モビロン(日清紡ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0034】
(ポリアミド系エラストマー)
ポリアミド系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリアミド6、11、12などのポリアミドをハードセグメントに用い、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルおよびポリエステルのうちの少なくとも一方をソフトセグメントに用いたエラストマーなどが挙げられる。このエラストマーは、ポリエーテルブロックアミド型、ポリエーテルエステルブロックアミド型の2種に大別される。
市販品として、UBEポリアミドエラストマー、UBESTA XPA(宇部興産(株)製)、ダイアミド(ダイセルエボニック(株)製)、PEBAX(ARKEMA社製)、グリロンELX(エムスケミージャパン(株)製)、ノパミッド(三菱化学(株)製)、グリラックス(東洋紡製)、ポリエーテルエステルアミドPA−200、PA−201、TPAE−12、TPAE−32、ポリエステルアミドTPAE−617、TPAE−617C(以上、(株)T&K TOKA製)などが挙げられる。
【0035】
(ポリアクリル系エラストマー)
ポリアクリル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルをモノマー材料の主成分としたものや、アクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを共重合した共重合体が挙げられる。さらに、アクリル酸エステルと、アクリロニトリルやエチレンなどの架橋点モノマーとを共重合してなるものなどが挙げられる。具体的には、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0036】
本発明では、ポリアクリル系エラストマーは、(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニルメタ(アクリレート)、ベンジルメタ(アクリレート)、および2−メチルブチル(メタ)アクリレートが例示される。
また、ポリアクリル系エラストマーは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、(メタ)アクリレートモノマーと他のモノマーとを共重合してもよい。(メタ)アクリレートモノマーと他のモノマーとを共重合する場合、他のモノマーの量は、全モノマーの10モル%以下が好ましい。
また、上記の他、三菱レイヨン(株)製、アクリペット MF 001、スリーエム ジャパン(株)製、LC−5320 F1035などが例示される。
【0037】
本発明では、オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル系エラストマーも好ましい。オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル系エラストマーとしては、下記式(3)で表されるアクリル系エラストマーが挙げられる。
式(3)
【化3】
上記式(3)中、Rは複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−CH、−C、−CH(CHまたは−CH(CHを示す。Rは複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−H、−CH、−C、−CH(CHまたは−CH(CHを示す。Rは複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−Hまたは−CHを示す。Rは複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−H、−CH、−C、−CH(CH、−CH(CH、またはエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、ビニル基、シラノール基およびイソシアネート基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を示す。 aは50〜150であり、bは50〜150であり、cは80〜600である。また、mは1〜10である。
オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル系エラストマーの具体例としては、信越化学工業(株)製、シリコーングラフトアクリル系エラストマー、商品名:X−24−798A、X−22−8004(R:COH、官能基当量:3250(g/mol))、X−22−8009(R:Si(OCH含有アルキル基、官能基当量:6200(g/mol))、X−22−8053(R:H、官能基当量:900(g/mol))、X−22−8084、X−22−8084EM、X−22−8195(R:H、官能基当量:2700(g/mol))、東亞合成(株)製サイマックシリーズ(US−270、US−350、US−352、US−380、US−413、US−450等)、レゼタGS−1000シリーズ(GS−1015、GS−1302等)等が挙げられる。
【0038】
(シロキサン重合体)
本発明において、エラストマーとして用いられるシロキサン重合体としては、下記式(1)で示される繰り返し単位を有するシロキサン重合体が好ましい。
【0039】
【化4】
式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数であり、Bは正の整数、Aは0または正の整数である。Xは下記式(2)で示される2価の有機基である。
【化5】
式(2)中、Zは、以下のいずれかの構造単位から選ばれる2価の有機基であり、nは0または1である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは、それぞれ独立に、0、1、2のいずれかである。
【化6】
【0040】
式(1)において、R〜Rの具体例としては、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられ、mは、好ましくは3〜60、より好ましくは8〜40の整数である。また、B/Aは0〜20、特に0.5〜5である。
【0041】
上記シロキサン重合体の詳細については、特開2013−243350号公報の段落番号0038〜0044の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
また、シロキサン重合体として、熱可塑性シロキサン重合体を用いることができる。
熱可塑性シロキサン重合体は、R212223SiO1/2単位(R21、R22、R23はそれぞれ、非置換または置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基または水酸基である。)およびSiO4/2単位を含有し、上記R212223SiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンと、下記式(4)で表わされるオルガノポリシロキサンとが、部分的に脱水縮合したものであって、上記脱水縮合させるオルガノポリシロキサンと上記オルガノポリシロキサンとの比率が、99:1〜50:50であり、重量平均分子量が200,000〜1,500,000であることが好ましい。
式(4)
【化7】
(式(4)中、R11およびR12はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、nは5000〜10000である。)
【0043】
上記式(4)において、R11およびR12は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭化水素基、これら炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が好ましく、より好ましくはメチル基およびフェニル基である。
【0044】
熱可塑性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは200,000以上、より好ましくは350,000以上、かつ、好ましくは1,500,000以下、さらに好ましくは1,000,000以下である。また、分子量が740以下の低分子量成分含有量が好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
市販品としては、SILRESシリーズ、例えば、SILRESシリーズ 604(旭化成ワッカーシリコーン社製)が例示される。
【0045】
(ポリカーボネート樹脂)
本発明において、エラストマーとして用いられるポリカーボネート樹脂は、式(11)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0046】
式(11)
【化8】
式(11)中、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表す。
【0047】
式(11)におけるArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
これらの芳香族基は、置換基を有していてもよいが、有していない方が好ましい。
芳香族基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれであってもよい。また、アルキル基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂の、重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜80,000であることがより好ましい。上記範囲であれば、溶剤への溶解性、耐熱性が良好である。
【0049】
ポリカーボネート樹脂の市販品としては、例えば、PCZ−200、PCZ−300、PCZ−500、PCZ−800(以上、三菱ガス化学(株)製)、APEC9379(バイエル製)、パンライトL−1225LM(帝人(株)製)などが挙げられる。
【0050】
本発明では、上記の他、WO2016/076261号の段落0065〜0083に記載のエラストマーも好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明におけるエラストマーは、25℃における、JIS(日本工業規格) K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが1MPa以上4000MPa以下であることが好ましく、1MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、1MPa以上60MPa以下であることがさらに好ましく、1MPa以上35MPa以下であることが一層好ましく、1MPa以上20MPa以下であることがより一層好ましく、1MPa以上15MPa以下であることがさらに一層好ましく、3MPa以上10MPa以下であることが特に一層好ましい。このような範囲にすることにより、反りをより効果的に抑制することが可能になる。
【0051】
本発明の仮接着用組成物は、エラストマーを、仮接着用組成物の全固形分(溶剤を除いた全成分)中に50.00〜99.99質量%の割合で含むことが好ましく、70.00〜99.99質量%の割合で含むことがより好ましく、88.00〜99.99質量%の割合で含むことが特に好ましい。エラストマーの含有量が上記範囲であれば、接着性および剥離性に優れる。
【0052】
<<溶剤>>
本発明の仮接着用組成物は、溶剤を含み、上記溶剤は、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、上記溶剤中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmである。
【0053】
<<<トルエン>>>
本発明において、溶剤中におけるトルエンの含有量は、0.1〜300質量ppmであり、0.1〜100質量ppmが好ましく、0.1〜50質量ppmがより好ましく、0.1〜10質量ppmがさらに好ましい。トルエンの含有量を0.1質量ppm以上とすることで、仮接着用組成物を硬化した硬化膜中において、エラストマー等の有機物を核とする凝集体を効果的に洗浄除去できる。また、トルエンの含有量を300質量ppm以下とすることで、仮接着用組成物中において、金属成分等を核とする凝集体の生成を効果的に抑制できる。
本発明の仮接着剤用組成物が含む溶剤中のトルエンの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法等の公知の手段によって測定することができる。
【0054】
<<<トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤>>>
本発明の組成物は、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を含む。ここで、芳香族炭化水素系溶剤とは、炭素原子および水素原子のみからなり、芳香環を有する溶剤を意味する。
また、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とは、炭素原子からなる直鎖または分岐のアルキル基により置換された芳香族炭化水素を意味する。
本発明で用いられる、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、高純度に精製された電子工業グレードの有機溶媒等が好適に用いられる。溶剤の精製方法としては、例えば、理論段数が8〜40段の連続蒸留を数回繰り返し行い精留する方法や、薄膜蒸留装置、回転バンド蒸留装置などを用いて精密蒸留する方法が挙げられる。
本発明で用いる、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を構成するアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。アルキル基を構成する炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。
本発明で用いる、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン環と、炭素数1〜10のアルキル基を1〜3つ有する溶剤であることが好ましく、下記式(X)で表される溶剤であることがより好ましい。
式(X)
【化9】
上記式(X)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1〜3の整数である。
Rは、直鎖または分岐の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基がより好ましい。また、Rを構成する炭素数の合計が2〜5の整数であることが好ましく、3または4がより好ましい。
【0055】
本発明で用いるアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の沸点としては、50〜250℃が好ましく、80〜200℃がより好ましく、120〜170℃がさらに好ましい。このような沸点の溶剤を用いることにより、調液時および濾過時の溶媒の揮発による固形分変動をより効果的に抑制し、薬液塗布時のウェハの面内の均一性をより向上させ、さらに、ベーク後の塗布ムラをより効果的に抑制できる。
【0056】
本発明で用いるアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の具体例としては、トルエンの他、キシレン、トリメチルベンゼン(好ましくは、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、より好ましくは、1,3,5−トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、メチルエチルベンゼン(好ましくは、1−メチルエチルベンゼン)、ブチルベンゼン(好ましくは、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、より好ましくは、tert−ブチルベンゼン)、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、1−フェニルへキサン、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン、1−フェニルノナン、1−フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2−エチルトルエン、1,2−ジエチルベンゼン、o−シメン(2−イソプロピルトルエン)、3−エチルトルエン、m−シメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,4−ジエチルベンゼン、p−シメン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−tert−ブチルトルエン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、5−tert−ブチル−m−キシレン、3,5−ジ−tert−ブチルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン等が挙げられる。
【0057】
本発明の仮接着用組成物は、特に、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤として、キシレンを含むことが好ましく、キシレンと、トルエンおよびキシレン以外のアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を含むことがより好ましい。キシレンを含むことにより、硬化膜としたときに、添加剤が表面にブリードアウトすることを効果的に抑制できる。
【0058】
トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、好ましくは、キシレン、ならびに、トリメチルベンゼン、ブチルベンゼンおよびジエチルベンゼンの少なくとも1種であり、より好ましくは、キシレン、ならびに、トリメチルベンゼンおよびブチルベンゼンの少なくとも1種である。
【0059】
本発明において、溶剤中における、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の合計含有量は40〜100質量%であることが好ましい。
本発明では、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明において、溶剤中における、キシレンの含有量は、トルエンの含有量の1〜10倍であることが好ましく、1〜5倍であることがより好ましく、1〜3倍であることがさらに好ましい。トルエンとキシレンの量比が上記範囲であれば、長期間保存後(例えば、冷蔵6ヶ月保管後)の塗布欠陥をより効果的に抑制できる。
【0061】
仮接着用組成物中における溶剤の合計含有量は、10〜99質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が一層好ましく、60質量%以上がより一層好ましく、68質量%以上が特に一層好ましい。上限は、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下が一層好ましく、85質量%以下がより一層好ましい。溶剤の含有量は、68〜97質量%であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の仮接着用組成物は、また、上記アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤以外の溶剤を含んでいてもよい。しかしながら、本発明では、芳香族炭化水素系溶剤以外の溶剤を実質的に含まない方が好ましく、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤以外の溶剤を実質的に含まない方がより好ましい。
実質的に含まないとは、本発明の仮接着用組成物に含まれる溶剤のうち、上記特定の溶剤の割合が、5質量%以下のことをいい、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0063】
<<界面活性剤>>
本発明の仮接着用組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、フッ素原子を含む化合物およびシリコン原子を含む化合物が例示され、シリコン原子を含む化合物が好ましく、シリコーン化合物またはシランカップリング剤がさらに好ましい。
シリコーン化合物としては、Si−O結合を含む化合物であり、シリコーンオイル、シシリコーン樹脂、シリコーンゴム、環状シロキサンなどの低分子量シリコーンが例示され、シリコーンオイルが好ましい。
シリコーン化合物は、また、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
シリコーン化合物の屈折率は、1.350〜1.480が好ましく、1.390〜1.440がより好ましく、1.400〜1.430がさらに好ましい。
シリコーン化合物を280℃、N気流下で30分加熱した際の重量減少率は、0〜70%が好ましく、5〜50%がより好ましく、10〜30%がさらに好ましい。
【0064】
ポリエーテル変性シリコーンは、式(A)で表される比率が80%以上であることが好ましい。
式(A) {(MO+EO)/AO}×100
上記式(A)中、MOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるメチレンオキシドのモル%であり、EOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるエチレンオキシドのモル%であり、AOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるアルキレンオキシドのモル%をいう。
上記式(A)で表される比率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが一層好ましく、100%がより一層好ましい。
【0065】
ポリエーテル変性シリコーンの重量平均分子量は、500〜100000が好ましく、1000〜50000がより好ましく、2000〜40000がさらに好ましい。
【0066】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンは、ポリエーテル変性シリコーンを窒素気流60mL/分のもと、20℃から280℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、280℃の温度で30分間保持したときの質量減少率が50質量%以下であることが好ましい。このような化合物を用いることにより、加熱を伴う基板の加工後の面状がより向上する傾向にある。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が一層好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率の下限値は0質量%であってもよいが、15質量%以上、さらには20質量%以上でも十分に実用レベルである。
【0067】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンの光の屈折率は、1.440以下であることが好ましい。下限値については、特に定めるものではないが、1.400以上であっても十分実用レベルである。
【0068】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンは、下記式(101)〜式(104)のいずれかで表されるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
式(101)
【化10】
上記式(101)中、R11およびR16は、それぞれ独立に、置換基であり、R12およびR14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R13およびR15は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m11、m12、n1およびp1は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x1およびy1は、それぞれ独立に2〜100の数である。
式(102)
【化11】
上記式(102)中、R21、R25およびR26は、それぞれ独立に、置換基であり、R22は、2価の連結基であり、R23は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m2およびn2は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x2は、2〜100の数である。
式(103)
【化12】
上記式(103)中、R31およびR36は、それぞれ独立に、置換基であり、R32およびR34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R33およびR35は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m31、m32、n3およびp3は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x3は、2〜100の数である。
式(104)
【化13】
上記式(104)中、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、それぞれ独立に、置換基であり、R47は、2価の連結基であり、R48は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m4およびn4は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x4およびy4は、それぞれ独立に2〜100の数である。
【0069】
上記式(101)中、R11およびR16は、それぞれ独立に、置換基であり、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記式(101)中、R12およびR14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、カルボニル基、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜16のシクロアルキレン基、炭素数2〜8のアルケニレン基、炭素数2〜5のアルキニレン基、および炭素数6〜10のアリーレン基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
式(101)中、R13およびR15は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0070】
上記式(102)中、R21、R25およびR26は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(102)中、R22は、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(102)中、R23は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
上記式(103)中、R31およびR36は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(103)中、R32およびR34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(103)中、R33およびR35は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0072】
上記式(104)中、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(104)中、R47は、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(104)中、R48は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0073】
式(101)〜式(104)中、式(103)または式(104)が好ましく、式(104)がより好ましい。
【0074】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンにおいて、ポリオキシアルキレン基の分子中での含有量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中1質量%を超えるものが望ましい。
ポリオキシアルキレン基の含有率は、「{(1分子中のポリオキシアルキレン基の式量)/1分子の分子量}×100」で定義される。
【0075】
シランカップリング剤の例としては、フッ素原子含有シランカップリング剤が挙げられる。例えば、クロロジメチル[3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルシラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリクロロ[3−(ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、トリメトキシ(11−ペンタフルオロフェノキシウンデシル)シラン、トリエトキシ[5,5,6,6,7,7,7−ヘプタフルオロ−4,4−ビス(トリフルオロメチル)ヘプチル]シラン、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シランが好ましい。
さらに、特開昭62−36663号、特開昭61−226746号、特開昭61−226745号、特開昭62−170950号、特開昭63−34540号、特開平7−230165号、特開平8−62834号、特開平9−54432号、特開平9−5988号、特開2001−330953号各公報に記載の界面活性剤も挙げられる。
【0076】
本発明で用いる界面活性剤は、市販品を用いることもできる。例えば、ADVALON FA33、FLUID L03、FLUID L033、FLUID L051、FLUID L053、FLUID L060、FLUID L066、IM22、WACKER−Belsil DMC 6038(以上、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)、KF−352A、KF−353、KF−615A、KP−112、KP−341、X−22−4515、KF−354L、KF−355A、KF−6004、KF−6011、KF−6011P、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6016、KF−6017、KF−6017P、KF−6020、KF−6028、KF−6028P、KF−6038、KF−6043、KF−6048、KF−6123、KF−6204、KF−640、KF−642、KF−643、KF−644、KF−945、KP−110、KP−355、KP−369、KS−604、Polon SR−Conc、X−22−4272、X−22−4952(以上、信越化学工業(株)製)、8526 ADDITIVE、FZ−2203、FZ−5609、L−7001、SF 8410、2501 COSMETIC WAX、5200 FORMULATION AID、57 ADDITIVE、8019 ADDITIVE、8029 ADDITIVE、8054 ADDITIVE、BY16−036、BY16−201、ES−5612 FORMULATION AID、FZ−2104、FZ−2108、FZ−2123、FZ−2162、FZ−2164、FZ−2191、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222、FZ−7001、FZ−77、L−7002、L−7604、SF8427、SF8428、SH 28 PAINR ADDITIVE、SH3749、SH3773M、SH8400、SH8700(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、BYK−378、BYK−302、BYK−307、BYK−331、BYK−345、BYK−B、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−377(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、Silwet L−7001、Silwet L−7002、Silwet L−720、Silwet L−7200、Silwet L−7210、Silwet L−7220、Silwet L−7230、Silwet L−7605、TSF4445、TSF4446、TSF4452、Silwet Hydrostable 68、Silwet L−722、Silwet L−7280、Silwet L−7500、Silwet L−7550、Silwet L−7600、Silwet L−7602、Silwet L−7604、Silwet L−7607、Silwet L−7608、Silwet L−7622、Silwet L−7650、Silwet L−7657、Silwet L−77、Silwet L−8500、Silwet L−8610、TSF4440、TSF4441、TSF4450、TSF4460(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が例示される。
市販品としては、また、商品名「BYK−300」、「BYK−306」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−313」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−3550」、「BYK−SILCLEAN3700」、「BYK−SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製)、商品名「ポリフローKL−400X」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」、「ポリフローKL−700」(以上、共栄社化学(株)製)、商品名「KP−301」、「KP−306」、「KP−109」、「KP−310」、「KP−310B」、「KP−323」、「KP−326」、「KP−341」、「KP−104」、「KP−110」、「KP−112」、「KP−360A」、「KP−361」、「KP−354」、「KP−357」、「KP−358」、「KP−359」、「KP−362」、「KP−365」、「KP−366」、「KP−368」、「KP−330」、「KP−650」、「KP−651」、「KP−390」、「KP−391」、「KP−392」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「LP−7001」、「LP−7002」、「8032 ADDITIVE」、「FZ−2110」、「FZ−2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、「TEGO WET 270」(エボニック・デグサ・ジャパン(株)製)、「NBX−15」(ネオス(株)製)なども使用することができる。
【0077】
フッ素原子を含む化合物としては、フッ素系液体状化合物が例示される。フッ素系液体状化合物としては、国際公開WO2015/190477号公報の段落番号0025〜0035を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
仮接着用組成物が、界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分の0.0001〜3質量%の範囲が好ましい。下限は、0.001質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上がさらに好ましく、0.006質量%以上が一層好ましく、0.008質量%以上がより一層好ましく、0.009質量%以上が特に一層好ましい。上限は、1質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましく、0.6質量%以下が一層好ましく、0.3質量%以下がより一層好ましく、0.15質量%以下がさらに一層好ましく、0.09質量%以下が特に一層好ましい。
界面活性剤は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0079】
<<酸化防止剤>>
本発明の仮接着用組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが使用できる。
フェノール系酸化防止剤としては例えば、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、Irganox1010、Irganox1330、Irganox3114、Irganox1035(以上、BASFジャパン(株)製)、Sumilizer MDP−S、Sumilizer GA−80(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては例えば、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TPM、Sumilizer TPS、Sumilizer TP−D(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスフィト、ジフェニルイソデシルホスフィト、2−エチルヘキシルジフェニルホスフィト、トリフェニルホスフィト、Irgafos168、Irgafos38(以上、BASFジャパン(株)製)などが挙げられる。
キノン系酸化防止剤としては例えば、p−ベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンなどが挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては例えば、ジメチルアニリンやフェノチアジンなどが挙げられる。
酸化防止剤は、Irganox1010、Irganox1330、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010、Irganox1330がより好ましく、Irganox1010が特に好ましい。
また、上記酸化防止剤のうち、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤とを併用することが好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが最も好ましい。特に、エラストマーとして、ポリスチレン系エラストマーを使用した場合において、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが好ましい。このような組み合わせにすることにより、酸化反応による仮接着用組成物の劣化を、効率よく抑制できる効果が期待できる。フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤との質量比は、フェノール系酸化防止剤:硫黄系酸化防止剤=95:5〜5:95が好ましく、25:75〜75:25がより好ましい。
酸化防止剤の組み合わせとしては、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−D、および、Sumilizer GA−80とSumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−Dがより好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−Dが特に好ましい。
【0080】
酸化防止剤の分子量は加熱中の昇華防止の観点から、400以上が好ましく、600以上がさらに好ましく、750以上が特に好ましい。
【0081】
仮接着用組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分に対して、0.001〜20.0質量%が好ましく、0.005〜10.0質量%がより好ましい。酸化防止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。酸化防止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0082】
<<可塑剤>>
本発明の仮接着用組成物は、必要に応じて可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、ポリエステルなどが使用できる。
【0083】
フタル酸エステルとしては例えば、DMP、DEP、DBP、#10、BBP、DOP、DINP、DIDP(以上、大八化学工業(株)製)、PL−200、DOIP(以上、シージーエスター(株)製)、サンソサイザーDUP(新日本理化(株)製)などが挙げられる。
脂肪酸エステルとしては例えば、ブチルステアレート、ユニスターM−9676、ユニスターM−2222SL、ユニスターH−476、ユニスターH−476D、パナセート800B、パナセート875、パナセート810(以上、日油(株)製)、DBA、DIBA、DBS、DOA、DINA、DIDA、DOS、BXA、DOZ、DESU(以上、大八化学製)などが挙げられる。
芳香族多価カルボン酸エステルとしては、TOTM(大八化学工業(株)製)、モノサイザーW−705(大八化学工業(株)製)、UL−80、UL−100((株)ADEKA製)などが挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリサイザーTD−1720、ポリサイザーS−2002、ポリサイザーS−2010(以上、DIC(株)製)、BAA−15(大八化学工業(株)製)などが挙げられる。
上記可塑剤の中では、DIDP、DIDA、TOTM、ユニスターM−2222SL、ポリサイザーTD−1720が好ましく、DIDA、TOTMがより好ましく、TOTMが特に好ましい。
可塑剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0084】
可塑剤は、加熱中の昇華防止の観点から、窒素気流下、20℃/分の一定速度の昇温条件のもとで重量変化を測定したとき、その重量が1質量%減少する温度が、250℃以上であることが好ましく、270℃以上がより好ましく、300℃以上が特に好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、500℃以下とすることができる。
【0085】
可塑剤の添加量は、仮接着用組成物の全固形分に対して、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜2.0質量%である。
【0086】
<<その他の添加剤>>
本発明の仮接着用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加物、例えば、硬化剤、硬化触媒、充填剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は仮接着用組成物の全固形分の3質量%以下が好ましい。
【0087】
本発明の仮接着用組成物は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。不純物の含有量としては、1質量ppm(parts per million)以下が好ましく、100質量ppt(parts per trillion)以下がより好ましく、10質量ppt以下がさらに好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
仮接着用組成物から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルタを用いたろ過を挙げることができる。フィルタ孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下がさらに好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルタが好ましい。フィルタは、溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルタろ過工程では、複数種類のフィルタを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルタを使用する場合は、孔径および/または材質が異なるフィルタを組み合わせて使用してもよい。また、濾過は、複数回行ってもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過工程であってもよい。
また、仮接着用組成物に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、仮接着用組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、仮接着用組成物を構成する原料に対してフィルタろ過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。仮接着用組成物を構成する原料に対して行うフィルタろ過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルタろ過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルタろ過と吸着材による不純物の除去とを併用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0088】
本発明の仮接着用組成物は、上述の各成分を混合して調製することができる。各成分の混合は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、各成分を混合した後、例えば、フィルタでろ過することが好ましい。ろ過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、ろ過した液を再ろ過することもできる。
【0089】
<硬化膜>
本発明は、本発明の仮接着用組成物を硬化してなる硬化膜を開示する。本発明の硬化膜は、仮接着用組成物を硬化してなる硬化膜であって、有機系残渣が1cmあたり0.03個以下であり、金属系残渣が1cmあたり0.03個以下である。但し、有機系残渣とは少なくとも炭素原子と酸素原子とが検出され、金属成分が検出されない硬化膜の表面の欠陥をいい、金属系残渣とは、少なくとも炭素原子と酸素原子と少なくとも1種の金属成分が検出される硬化膜の表面の欠陥をいう。ここで、有機系残渣は、通常、炭素原子と酸素原子の合計が50質量%を超えるものをいう。また、金属系残渣において検出される金属成分は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケルおよびアルミニウムの少なくとも1種が例示される。このように残渣の少ない硬化膜は、本発明の仮接着用組成物を用いて製造することにより得られる。有機系残渣および金属系残渣の測定は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0090】
<半導体素子の製造方法>
本発明ではまた、本発明の仮接着用組成物を用いる半導体素子の製造方法について開示する。
以下、半導体素子の製造方法の一実施形態について、図1をあわせて参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(A)〜(E)は、それぞれ、キャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図1(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図1(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(図1(D))、デバイスウェハから仮接着層を除去した後の状態(図1(E))を示す概略断面図である。
【0091】
この実施形態では、図1(A)に示すように、先ず、キャリア基板12に仮接着層11が設けられてなる接着性キャリア基板100が準備される。
仮接着層11は、本発明の仮接着用組成物を用いて形成されるものであり、実質的に溶剤を含まない態様であることが好ましい。
さらに、本発明では、仮接着用組成物を硬化してなる硬化膜(仮接着層)を、洗浄液を用いて洗浄する工程を設けてもよい。特に、本発明で用いる洗浄液は、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を含む洗浄液が好ましく、トルエンと、トルエン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、洗浄液中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmである洗浄液がより好ましく、トルエンと、キシレンと、トルエンおよびキシレン以外の、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤とを含み、洗浄液中におけるトルエンの含有量が0.1〜300質量ppmであり、キシレンの含有量は、トルエンの含有量の1〜3倍である洗浄液がさらに好ましい。アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の好ましい範囲は、仮接着用組成物に用いるアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の好ましい範囲と同じである。さらに、本発明で用いる洗浄液に含まれる溶剤成分は、仮接着用組成物に含まれる溶剤と、80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましく、完全に同一であることが特に好ましい。
デバイスウェハ60は、シリコン基板61の表面61aに複数のデバイスチップ62が設けられてなる。
シリコン基板61の厚さは、例えば、200〜1200μmが好ましい。デバイスチップ62は例えば金属構造体であることが好ましく、高さは10〜100μmが好ましい。
仮接着層を形成させる過程で、キャリア基板およびデバイスウェハの裏面を、上述の洗浄液や後述する剥離液を用いて洗浄する工程を設けてもよい。
具体的には、キャリア基板やデバイスウェハの端面または裏面に付着した仮接着層の残渣を、洗浄液や剥離液を用いて除去することで、装置の汚染を防ぐことができ、薄型化デバイスウェハのTTV(Total Thickness Variation)を低下させることができる。
【0092】
次いで、図1(B)に示す通り、接着性キャリア基板100とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。
仮接着層11は、デバイスチップ62を完全に覆っていることが好ましい。また、デバイスチップの高さがXμm、仮接着層の厚みがYμmの場合、「X+100≧Y>X」の関係を満たすことが好ましい。
仮接着層11がデバイスチップ62を完全に被覆していることは、薄型化デバイスウェハのTTVをより低下したい場合(すなわち、薄型化デバイスウェハの平坦性をより向上させたい場合)に有効である。
すなわち、デバイスウェハを薄型化する際において、複数のデバイスチップ62を仮接着層11によって保護することにより、キャリア基板12との接触面において、凹凸形状をほとんど無くすことが可能である。よって、このように支持した状態で薄型化しても、複数のデバイスチップ62に由来する形状が、薄型化デバイスウェハの裏面61b1に転写されるおそれは低減され、その結果、最終的に得られる薄型化デバイスウェハのTTVをより低下することができる。
【0093】
次いで、図1(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理(特に限定されないが、例えば、グライディングや化学機械研磨(CMP)等の薄膜化処理、化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)などの高温および真空下での処理、溶剤、酸性処理液や塩基性処理液などの薬品を用いた処理、めっき処理、活性光線の照射、加熱処理ならびに冷却処理など)を施す。図1(C)では、シリコン基板61の厚さを薄くし(例えば、上述の厚さとなるように薄型化し)、薄型化デバイスウェハ60aを得ている。
【0094】
デバイスウェハを薄型化した後、高温および真空下での処理を行う前の段階で、デバイスウェハの基板面の面積よりも外側にはみ出した仮接着層を剥離液で洗浄する工程を設けてもよい。具体的には、デバイスウェハを薄型化した後、はみ出した仮接着層を、剥離液を用いて除去することで、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質を防ぐことができる。
仮接着層の膜面の面積は、キャリア基板の基板面の面積よりも小さいことが好ましい。また、キャリア基板の基板面の直径をCμm、デバイスウェハの基板面の直径をDμm、仮接着層の膜面の直径をTμmとしたとき、(C−200)≧T≧Dを満たすことがより好ましい。さらに、キャリア基板の基板面の直径をCμm、デバイスウェハの基板面の直径をDμm、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の直径をTμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の直径をTμmとしたとき、(C−200)≧T>T≧Dを満たすことが好ましい。このような構成とすることにより、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質をより抑制することができる。尚、仮接着層の膜面の面積とは、キャリア基板に対し垂直な方向から見たときの面積をいい、膜面の凹凸は考えないものとする。デバイスウェハの基板面についても同様である。すなわち、ここでいう、デバイスウェハの基板面とは、例えば、図1の61a面に対応する面であり、デバイスチップが設けられている側の面であろう。仮接着層の膜面等の直径についても、同様に考える。また、仮接着層の膜面の直径Tとは、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の直径をTμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の直径をTμmとしたとき、T=(T+T)/2とする。キャリア基板の基板面の直径およびデバイスウェハの基板面の直径は、仮接着層と接している側の表面の直径をいう。
また、機械的または化学的な処理として、薄膜化処理の後に、薄型化デバイスウェハ60aの裏面61b1からシリコン基板を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔内にシリコン貫通電極(図示せず)を形成する処理を行ってもよい。
また、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着した後、剥離するまでの間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の一例として、機械的または化学的な処理を行う際に、加熱を行うことが挙げられる。
加熱処理における最高到達温度は80〜400℃が好ましく、130℃〜400℃がより好ましく、180℃〜350℃がさらに好ましい。加熱処理における最高到達温度は仮接着層の分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。加熱処理は、最高到達温度での30秒〜30分間の加熱であることが好ましく、最高到達温度での1分〜10分の加熱であることがより好ましい。
【0095】
次いで、図1(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60a(機械的または化学的な処理を施したデバイスウェハ)から剥離させる。剥離の際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下とすることもできる。剥離の際の温度の下限値としては、例えば、0℃以上であり、好ましくは、10℃以上である。本発明においては、15〜35℃程度の常温で剥離を行える点で価値が高い。
【0096】
剥離の方法は特に限定されるものではないが、薄型化デバイスウェハ60aを固定し、キャリア基板12を、端部から薄型化デバイスウェハ60aに対して垂直方向に引き上げて剥離することが好ましい。このとき、剥離界面は、キャリア基板12と仮接着層11の界面であることが好ましい。剥離の際の引き上げ速度は、30〜100mm/分の速さであることが好ましく、40〜80mm/分の速さであることがより好ましい。この場合、キャリア基板12と仮接着層11の界面の密着強度A、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bは、以下の式(A1)を満たすことが好ましい。
A<B ・・・・式(A1)
また、剥離の際の端部を引き上げる際の力は、0.33N/mm以下であることが好ましく、0.2N/mm以下とすることもできる。下限値としては、好ましくは0.07N/mm以上である。この際の力は、フォースゲージを用いて測定することができる。
【0097】
そして、図1(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11を除去することにより、薄型化デバイスウェハを得ることができる。このような工程を経て半導体素子を製造できる。
【0098】
仮接着層11の除去方法は、例えば、剥離液を用いて除去する方法(仮接着層を剥離液で膨潤させた後に剥離除去する方法、仮接着層に剥離液を噴射して破壊除去する方法、仮接着層を剥離液に溶解させて溶解除去する方法等)、仮接着層を活性光線、放射線または熱の照射により分解または気化して除去する方法などが挙げられる。
溶剤の使用量削減の観点からは、仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去(ピールオフ)することが好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去する方法とは、剥離液を用いる等の化学的処理を行うことなく、仮接着層をフィルム状のまま物理的な力を加えて剥離除去(ピールオフ)する方法をいう。仮接着層をフィルム状の状態のままで剥離除去する場合、手での剥離または機械剥離が好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去するためには、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bが以下の式(B1)を満たすことが好ましい。
B≦4N/cm ・・・・式(B1)
【0099】
また、剥離液としては、仮接着層11を溶解する溶剤が好ましい。上記溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤や、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等の極性溶剤が挙げられ、芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。特に、剥離液に用いられる好ましい溶剤は、上記洗浄液に用いられる溶剤と同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0100】
さらに、剥離性の観点から、剥離液は、アルカリ、酸、および界面活性剤を含んでいてもよい。これらの成分を配合する場合、配合量は、それぞれ、剥離液の0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
さらに剥離性の観点から、2種以上の溶剤および水、2種以上のアルカリ、酸および界面活性剤を混合する形態も好ましい。
【0101】
アルカリとしては、例えば、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第二リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤を使用することができる。これらのアルカリ剤は、単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
酸としては、ハロゲン化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸や、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸を使用することができる。
【0103】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系の界面活性剤を使用することができる。この場合、界面活性剤の含有量は、アルカリ水溶液の全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
界面活性剤の含有量を上記した範囲内とすることにより、仮接着層11と薄型化デバイスウェハ60aとの剥離性をより向上できる傾向となる。
【0104】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0105】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0106】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中で、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換または無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物またはアルキル置換または無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0107】
両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号公報の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報の段落番号〔0022〕〜〔0029〕で示される化合物を用いることができる。
【0108】
さらに必要に応じ、剥離液は、消泡剤および硬水軟化剤のような添加剤を含有することもできる。
【0109】
キャリア基板12を薄型化デバイスウェハ60aから剥離した後、薄型化デバイスウェハ60aに対して、種々の公知の処理を施し、薄型化デバイスウェハ60aを有する半導体素子を製造する。
【0110】
また、キャリア基板に仮接着層が付着している場合は、仮接着層を除去することにより、キャリア基板を再生することができる。仮接着層を除去する方法としては、フィルム状のままで、ブラシ、超音波、氷粒子、エアロゾルの吹付けにより物理的に除去する方法、溶剤に溶解させて溶解除去する方法、活性光線、放射線、熱の照射により分解または気化させる方法などの化学的に除去する方法が挙げられるが、キャリア基板に応じて、従来既知の洗浄方法を利用することができる。
例えば、キャリア基板としてシリコン基板を使用した場合、従来既知のシリコンウェハの洗浄方法を使用することができ、例えば化学的に除去する場合に使用できる溶剤としては、強酸、強塩基、強酸化剤、またはそれらの混合物が上げられ、具体的には、硫酸、塩酸、フッ酸、硝酸、有機酸などの酸類、テトラメチルアンモニウム、アンモニア、有機塩基などの塩基類、過酸化水素などの酸化剤、またはアンモニアと過酸化水素の混合物、塩酸と過酸化水素水の混合物、硫酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合物などが挙げられる。
【0111】
再生したキャリア基板を使った場合の接着性の観点から、キャリア基板洗浄液を用いることが好ましい。キャリア基板洗浄液は、pKaが0未満の酸(強酸)と過酸化水素を含んでいることが好ましい。pKaが0未満の酸としては、ヨウ化水素、過塩素酸、臭化水素、塩化水素、硝酸、硫酸などの無機酸、またはアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸などの有機酸から選択される。キャリア基板上の仮接着層の洗浄性の観点から無機酸であることが好ましく、硫酸が最も好ましい。
【0112】
過酸化水素としては、30質量%過酸化水素水が好ましく使用でき、上記強酸と30質量%過酸化水素水との混合比は、質量比で1:100〜100:1が好ましく、1:1〜10:1がより好ましく、3:1〜5:1が最も好ましい。
【0113】
半導体素子の製造方法の第二の実施形態について、図2をあわせて参照しながら説明する。上述した第一の実施形態と同一箇所は、同一符号を付してその説明を省略する。
図2(A)〜(E)は、それぞれ、キャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図2(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図2(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(図2(D))、デバイスウェハから仮接着層を除去した後の状態(図2(E))を示す概略断面図である。
この実施形態では、図2(A)に示すように、デバイスウェハの表面61a上に仮接着層を形成する点が上記第一の実施形態と相違する。
デバイスウェハ60の表面61a上に、仮接着層11aを設ける場合は、デバイスウェハ60の表面61aの表面に仮接着用組成物を適用(好ましくは塗布)し、次いで、乾燥(ベーク)することにより形成することができる。乾燥は、例えば、60〜150℃で、10秒〜2分行うことができる。
次いで、図2(B)に示す通り、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。次いで、図2(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理を施して、シリコン基板61の厚さを薄くし、薄型化デバイスウェハ60aを得る。次いで、図2(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60aから剥離させる。そして、図2(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11aを除去する。このような工程を経て半導体素子を製造できる。
【0114】
本発明の半導体素子の製造方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハとして、シリコン基板を挙げたが、これに限定されるものではなく、半導体素子の製造方法において、機械的または化学的な処理に供され得るいずれの被処理部材であってもよい。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハ(シリコン基板)に対する機械的または化学的な処理として、デバイスウェハの薄膜化処理、および、シリコン貫通電極の形成処理を挙げたが、これらに限定されるものではなく、半導体素子の製造方法において必要ないずれの処理も挙げられる。
その他、上述した実施形態において例示した、デバイスウェハにおけるデバイスチップの形状、寸法、数、配置箇所等は任意であり、限定されない。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0116】
<組成物の調製>
下記の表1に記載の成分を混合して均一な溶液とした後、5μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いてろ過して、組成物1〜18を調製した。溶剤S−1〜S−4に関しては、蒸留精製したものを用いた。
【0117】
【表1】
【0118】
表1中に記載の化合物は以下の通りである。
(エラストマー)
P−1:セプトン4033((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー、スチレン由来の繰り返し単位の含有量=30質量%)
P−2:セプトン2104((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー、スチレン由来の繰り返し単位の含有量=65質量%)
P−3:セプトン8004((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー、スチレン由来の繰り返し単位の含有量=31質量%)
P−4:クレイトンG1652(クレイトンポリマージャパン(株)製、ポリスチレン系エラストマー、スチレン由来の繰り返し単位の含有量=30質量%)
P−5:タフテックP2000(旭化成ケミカルズ(株)製、ポリスチレン系エラストマー、スチレン由来の繰り返し単位の含有量=67質量%)
P−6:PCZ−300(三菱ガス化学(株)製、ポリカーボネート樹脂(エラストマー))
P−7:SILRES604(旭化成ワッカー(株)製、シロキサン重合体(エラストマー))
(添加剤)
A−1:Irganox 1010(BASFジャパン(株)製)
A−2:Sumilizer TP−D (住友化学(株)製)
A−3:TSF4446(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
A−4:TSF4445(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
(溶剤)
S−1:1,3,5−トリメチルベンゼン
S−2:tert−ブチルベンゼン
S−3:1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン
S−4:デカヒドロナフタレン
【0119】
<仮接着用組成物の調製>
上記表1に従って、各成分を配合し、さらに、溶剤中におけるトルエンの含有量およびキシレンの含有量が、それぞれ下記表2または表3に示す量となるように、トルエンおよびキシレンを配合して、仮接着用組成物を調製した。調整した溶液は、ポリ手トラフルオロエチレン(PTFE)メンブレン、ポアサイズ5μmフィルタでろ過を実施した。
【0120】
<評価>
[冷蔵6ヶ月後の金属系残渣および有機系残渣の評価]
上記で得られた組成物を、冷蔵庫暗所で、5℃で6ヶ月保管した。保管後の組成物を、直径が300mmベアシリコンの表面に、コーティング装置(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 101)を用いて塗布し、110℃で3分間加熱し、さらに、180℃で3分間加熱することで、溶剤を乾燥させ、ベアシリコンの表面に仮接着層を形成した。仮接着層を手で剥離した後、表面を精製したメシチレン溶剤で洗浄した。
洗浄後の仮接着層を、欠陥検査装置COMPLUS 3T(AMAT社製)にて、5000nm以上の長さを有する欠陥を残渣として、その個数を確認した。
残渣のうち、金属系に特徴的な核のある欠陥残渣の形状を、SEM VISION G4(AMAT製)で観察し、さらにエネルギー分散型X線分析(EDX)により金属成分の有無を解析した。残渣のうち、金属成分が検出されたものを金属系残渣とし、それ以外を有機系残渣とした。
ここで有機系残渣とは、少なくとも炭素原子と酸素原子とが検出され、金属成分が検出されない硬化膜の表面の欠陥をいい、金属系残渣とは、少なくとも炭素原子と酸素原子と、少なくとも1種の金属成分とが検出される硬化膜の表面の欠陥である。
欠陥数は同様にして作製したウェハ4枚の平均値とした。
結果を表2または表3に示した。
【0121】
[冷蔵6ヶ月後の塗布欠陥の評価]
上記で得られた組成物を、冷蔵庫暗所で、5℃で6ヶ月保管した。保管後の組成物を、直径300mmのベアシリコンの表面に、仮接着用組成物をコーティング装置(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 101)を用いて塗布し、成膜した。ホットプレート(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 105)を用いて、得られた仮接着層について、欠陥検査装置COMPLUS 3T(AMAT社製)にて、500nm以上の長さを有する欠陥を残渣として、その個数を確認した。
欠陥数は同様にして作製したウェハ4枚の平均値とした。
【0122】
【表2】
【表3】
【0123】
上記表に示す通り、実施例は金属系残渣および有機系残渣を効果的に洗浄できた。更に塗布後の結果も少なかった。さらに、キシレンを配合することにより、塗布欠陥もより効果的に抑制できた。一方、比較例では、金属系残渣および有機残渣の少なくとも一方が十分に洗浄できなかった。
【符号の説明】
【0124】
11、11a:仮接着層
12:キャリア基板
60:デバイスウェハ
60a:薄型化デバイスウェハ
61:シリコン基板
61a:表面
61b、61b1:裏面
62:デバイスチップ
100:接着性キャリア基板
図1
図2