特許第6623518号(P6623518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623518
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】距離測定システム及び距離測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/14 20060101AFI20191216BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G01B7/14
   G01B7/00 101H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-6613(P2015-6613)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-133336(P2016-133336A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】鬼本 隆
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕太
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−109142(JP,U)
【文献】 特開2007−248105(JP,A)
【文献】 実開平04−078583(JP,U)
【文献】 実開昭52−001157(JP,U)
【文献】 特開平08−226046(JP,A)
【文献】 特開平05−087187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の接離方向に相対移動可能な第1部材及び第2部材間の距離を測定する距離測定システムであって、
前記第1部材に形成された凹部に一部が嵌合すると共に、温度が100℃以上となる空間内に配置される永久磁石と、
前記第2部材に固定され、前記永久磁石により発生する磁界の強度を検出する磁界センサとを備え、
前記第1部材は、軟磁性体からなり、前記凹部が前記第2部材に向かって開口し、
前記永久磁石は、一対の磁極の並び方向に沿う中心軸線方向の一端部における端面が前記凹部の底面に面接触するように嵌合し、接着剤を用いることなくそれ自体の磁力のみによって前記第1部材に固定され、かつ前記凹部への嵌合により前記接離方向に対して交差する方向への移動が規制され、
前記永久磁石の中心軸線方向の全長に対する前記凹部に嵌合した部分の長さの割合が10〜50%である、
距離測定システム。
【請求項2】
前記永久磁石及び前記凹部は共に円柱状であり、
前記永久磁石の直径をDとし、前記凹部の内径をDとし、前記凹部における前記永久磁石の嵌合深さをDとしたとき、下記式を満たす、
請求項に記載の距離測定システム。
−D<D
【請求項3】
前記永久磁石は、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石である、
請求項1又は2に記載の距離測定システム。
【請求項4】
前記永久磁石の残留磁束密度が1.0T以上である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の距離測定システム。
【請求項5】
所定の接離方向に相対移動可能な第1部材及び第2部材間の距離を測定する距離測定方法であって、
前記第1部材に前記第2部材に向かって開口する凹部を形成し、
前記凹部に一部が嵌合すると共に、温度が100℃以上となる空間内に永久磁石を配置し、
前記永久磁石により発生する磁界の強度を検出する磁界センサを前記第2部材に配置し、
前記第1部材は、前記永久磁石の磁路の一部を構成する軟磁性体からなり、
前記永久磁石は、一対の磁極の並び方向に沿う中心軸線方向の一端部における端面が前記凹部の底面に面接触するように嵌合し、接着剤を用いることなくそれ自体の磁力のみによって前記第1部材に固定され、かつ前記凹部への嵌合により前記接離方向に対して交差する方向への移動が規制され、
前記永久磁石の中心軸線方向の全長に対する前記凹部に嵌合した部分の長さの割合が10〜50%であり、
前記磁界センサによって検出される磁界の強度に基づいて前記第1部材及び前記第2部材間の距離を測定する、
距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の接離方向に相対移動可能な第1部材及び第2部材間の距離を測定する距離測定システム及び距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象との距離を永久磁石の磁気によって測定可能な非接触型の距離計が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の距離計は、測定対象を通過する磁束を発生させる永久磁石と、永久磁石と測定対象との間に配置された磁気センサと、磁気センサから測定対象までの距離の変化量を磁気センサで検出された磁束密度の変化量から算出する距離算出回路とを備えて構成されている。磁気センサは、円柱状に形成されたコアと、コアに巻装された検出コイルからなり、距離算出回路は、検出コイルの両端出力電圧の正負の波高値に基づいて磁気センサから測定対象までの距離の変化量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−243801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の距離計では、永久磁石と測定対象との間に磁気センサが配置されるので、永久磁石と測定対象との間が大きくあいてしまう。このため、測定対象を通過する磁束を大きくすることができず、磁気センサから測定対象までの距離の変化量に対する磁気センサにおける磁束密度の変化量の割合が小さいため、磁気センサから測定対象までの距離の精度向上が難しかった。
【0006】
また、例えば永久磁石の大きさを大きくすれば、測定対象を通過する磁束を増大させることができるが、この場合には、設置スペースの大型化と高コスト化を招来してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、永久磁石を大型化しなくとも、距離の測定精度を向上させることが可能な距離測定システム及び距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、所定の接離方向に相対移動可能な第1部材及び第2部材間の距離を測定する距離測定システムであって、前記第1部材に形成された凹部に一部が嵌合する永久磁石と、前記第2部材に固定され、前記永久磁石により発生する磁界の強度を検出する磁界センサとを備え、前記第1部材は、軟磁性体からなり、前記凹部が前記第2部材に向かって開口し、前記永久磁石は、それ自体の磁力によって前記第1部材に固定され、かつ前記凹部への嵌合により前記離接方向に対して交差する方向への移動が規制される、距離測定システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、所定の接離方向に相対移動可能な第1部材及び第2部材間の距離を測定する距離測定方法であって、前記第1部材に前記第2部材に向かって開口する凹部を形成し、前記凹部に一部が嵌合するように永久磁石を配置し、前記永久磁石により発生する磁界の強度を検出する磁界センサを前記第2部材に配置し、前記第1部材は、前記永久磁石の磁路の一部を構成する軟磁性体からなり、前記永久磁石は、それ自体の磁力によって前記第1部材に固定され、かつ前記凹部への嵌合により前記離接方向に対して交差する方向への移動が規制され、前記磁界センサによって検出される磁界の強度に基づいて前記第1部材及び前記第2部材間の距離を測定する、距離測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る距離測定システム及び距離測定方法によれば、永久磁石を大型化しなくとも、距離の測定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、本実施の形態に係る距離測定システムの構成例を示す分解斜視図であり、(b)は、この距離測定システムに用いられる磁界センサを示す斜視図である。
図2】第1部材の凹部の周辺部、及び凹部に嵌合固定された永久磁石を示す断面図である。
図3】(a)及び(b)は、距離測定システムの動作を説明するために示す説明図である。
図4】(a)〜(e)は、この永久磁石の凹部への嵌合割合が、1.0(100%)、0.5(50%)、0.25(25%)、0.1(10%)、及び0(0%)の各場合における永久磁石から放射される磁力線を模式的に示す模式図である。
図5】第1部材11と第2部材12との間の距離と、磁界センサによって検出される磁界の強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、図1乃至図5を参照し、本発明の実施の形態に係る距離測定システム、及びこの距離測定システムを用いた距離測定方法について説明する。
【0013】
図1(a)は、本実施の形態に係る距離測定システムの構成例を示す分解斜視図である。図1(b)は、この距離測定システムに用いられる磁界センサを示す斜視図である。
【0014】
この距離測定システム1は、所定の接離方向に相対移動可能な第1部材11及び第2部材12を備え、これら第1部材11と第2部材12との間の距離を非接触で測定可能である。本実施の形態では、第2部材12が図略のフレーム等の固定部材に固定され、第1部材11が第2部材12に対して移動する移動体である場合について説明する。また、この距離測定システム1は、例えば第2部材12に対して第1部材11が最も接近した最接近位置から20mm以内の範囲における第1部材11の位置を測定する近距離測定に好適に用いることができる。
【0015】
距離測定システム1は、第1部材11に形成された凹部110に一部が嵌合する永久磁石2と、第2部材12に固定され、永久磁石2により発生する磁界の強度を検出する磁界センサ3と、磁界センサ3による磁界の強度の検出結果に基づいて第1部材11と第2部材12との間の距離を演算により求める演算部(後述)とを備えて構成される。また、この距離測定システム1は、永久磁石2の周辺温度が100℃以上となる環境下で使用される。すなわち、永久磁石2は、温度が100℃以上となる空間内に配置される。
【0016】
第1部材11は、第2部材12からの距離の測定対象となる移動体であり、図略の移動力発生機構からの移動力を受けて第2部材12に対して進退移動する。第1部材11には、第2部材12に対向する対向面11aの一部に、この対向面11aに対して垂直な方向に窪んで形成された凹部110が形成されている。本実施の形態では、この凹部110の内部空間が円柱状であり、第2部材12に向かって開口している。
【0017】
また、第1部材11は、永久磁石2の磁路の一部を構成する軟磁性体からなる。この軟磁性体として、具体的には、鉄系金属やマルテンサイト系又はフェライト系のステンレスを用いることができる。
【0018】
以下の説明では、第1部材11が第2部材12に対して直線運動する場合について説明するが、これに限らず、第1部材11が図略の支持軸を中心として揺動(所定の角度範囲で回転動作すること)可能に支持されていてもよい。この場合には、距離測定システム1により、第1部材11の揺動に伴って変化する凹部110の位置と第2部材12との間の距離を測定することが可能である。
【0019】
永久磁石2は、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石である。サマリウムコバルト磁石は、サマコバ磁石とも称され、サマリウム(Sm)及びコバルト(Co)を主成分とする希土類磁石である。ネオジム磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、及びホウ素(B)を主成分とする希土類磁石である。サマリウムコバルト磁石及びネオジム磁石は、例えばフェライト磁石に比較して高い残留磁束密度を得ることができ、本実施の形態では、永久磁石2の残留磁束密度が1.0T(テスラ)以上である。なお、防錆等のため、これらの磁石の表面にニッケル等をメッキしてもよい。
【0020】
本実施の形態では、永久磁石2が円柱状であり、その中心軸線c方向に一対の磁極(N極及びS極)が並んで形成されている。永久磁石2は、一対の磁極の並び方向に沿う中心軸線c方向の一端部21が第1部材11の凹部110に嵌合する。この一端部21とは反対側の他端部22における永久磁石2の端面2bは、第2部材12に対向する。
【0021】
本実施の形態では、第2部材12がモールド樹脂からなり、このモールド樹脂に磁界センサ3がインサート成型されている。本実施の形態では、第2部材12が四角柱状であるが、第2部材12は、磁界センサ3を固定することが可能な非磁性体であればよく、その材質や形状は、様々なものを用いることが可能である。
【0022】
本実施の形態では、磁界センサ3がホールICであり、ホール効果を利用して磁界の強度を電気信号に変換するホール素子を樹脂やセラミック等の絶縁体によって封止してなる本体部30と、本体部30から導出された第1乃至第3のリード線31〜33とを有している。第1のリード線31は電源線であり、第2のリード線32は信号線であり、第3のリード線33はグランド線である。本体部30は、永久磁石2の中心軸線cに沿った磁界の強度を検出可能な位置及び向きに配置されている。磁界センサ3は、磁界の強度に応じた電気信号を第2のリード線32から出力する。
【0023】
図2は、第1部材11の凹部110の周辺部、及び凹部110に一端部21が嵌合して固定された永久磁石2を、その中心軸線cを含む断面において示す断面図である。
【0024】
永久磁石2の一端部21における端面2aは、凹部110の底面110aに面接触している。そして、永久磁石2は、それ自体の磁力によって第1部材11に固定されている。すなわち、永久磁石2は、接着剤等の固定手段を用いることなく、永久磁石2自身が持つ吸着力によって、第1部材11に固定されている。
【0025】
また、永久磁石2は、凹部110への嵌合により、第2部材12との離接方向に対して交差する方向への移動が規制されている。図2では、この離接方向を矢印Aで示している。本実施の形態では、この離接方向が永久磁石2の中心軸線cと平行である。
【0026】
図2に示すように、永久磁石2の直径をDとし、第1部材11の凹部110の内径をDとすると、凹部110の内径Dは、永久磁石2の直径Dよりも僅かに大きく、この径差ΔD(ΔD=D−D)は、例えば0.5mmである。また、凹部110の深さ、すなわち凹部110における永久磁石2の嵌合深さをDとすると、この深さDは、径差ΔDよりも深い。つまり、永久磁石2の直径D、凹部110の内径D、凹部110における永久磁石2の嵌合深さDは、下記の関係式(1)を満たしている。
−D<D・・・(1)
これにより、第1部材11に振動や衝撃が加わった場合でも、永久磁石2が凹部110から離脱してしまうことが抑制される。
【0027】
なお、凹部110における永久磁石2の嵌合深さDは、0.5mm以上であることが望ましい。この嵌合深さDが0.5mm未満であると、例えば第1部材11に振動や衝撃が加わったときに、永久磁石2が凹部110の側面110bを乗り越え、永久磁石2の位置ずれが発生しやすくなるためである。
【0028】
またさらに、永久磁石2の中心軸線c方向の厚みをtとすると、この厚みtは、永久磁石2の直径Dよりも小さい(t<D)。すなわち、永久磁石2は、扁平な円柱状に形成されている。これにより、永久磁石2の中心軸線c方向の厚みtが永久磁石2の直径Dよりも大きい場合に比較して、永久磁石2の一端部21における端面2aが凹部110の底面110aに対して傾き、永久磁石2が倒れてしまうことが抑制される。
【0029】
また、永久磁石2の中心軸線c方向の全長(厚みt)に対する凹部110に嵌合した部分の長さ(嵌合深さD)の割合を嵌合割合R(R=D/t)とすると、この嵌合割合Rは、0.1〜0.5であることが望ましい。すなわち、本実施の形態では、永久磁石2の中心軸線c方向の全長に対する凹部110に嵌合した部分の長さの割合が10〜50%(10%以上50%以下)である。この割合が10%未満であると、凹部110から永久磁石2が抜け出しやすくなるので好ましくない。また、この割合が50%を超えると、永久磁石2の磁界が磁界センサ3に到達しにくくなるので好ましくない。
【0030】
なお、図2では、永久磁石2の厚みtが3mm、嵌合深さDが0.75mmであり、嵌合割合Rが0.25(25%)である場合について例示している。
【0031】
図3(a)及び(b)は、距離測定システム1の動作を説明するために示す説明図である。図3(b)では、第1部材11と第2部材12との間の距離Lが、図3(a)に示す状態における第1部材11と第2部材12との間の距離Lよりも小さい状態を図示している。
【0032】
また、図3(a)及び(b)では、第2部材12の内部における磁界センサ3、及び磁界センサ3に接続されるケーブル4を実線で示し、永久磁石2の磁界を示す磁力線を二点鎖線で示している。磁界センサ3は、ケーブル4によって演算部5に接続されている。
【0033】
永久磁石2は、一端部21にS極が、他端部22にN極が、それぞれ形成されている。他端部22における端面2bから放射された磁力線は、湾曲して第1部材11に入射する。また、一端部21における端面2aから放射された磁力線の一部は、磁界センサ3の本体部30に鎖交する。
【0034】
ケーブル4は、第1乃至第3の電線41〜43と、第1乃至第3の電線41〜43を一括して被覆するシース40とを有している。第1乃至第3の電線41〜43は、それぞれが芯線を絶縁被覆してなる絶縁電線であり、第1の電線41の芯線が磁界センサ3の第1のリード線31に、第2の電線42の芯線が磁界センサ3の第2のリード線32に、第3の電線43の芯線が磁界センサ3の第3のリード線33に、それぞれ接続されている。
【0035】
第1部材11が第2部材12に接近すると、磁界センサ3によって検出される磁界の強度が強くなり、第1部材11が第2部材12から離間すると、磁界センサ3によって検出される磁界の強度が弱くなる。演算部5は、磁界センサ3によって検出される磁界の強度に基づいて、第1部材11及び第2部材12間の距離を演算によって測定する。
【0036】
演算部5は、例えばCPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等によって構成される記憶素子と、ケーブル4の第2の電線42によって伝送される磁界センサ3の出力信号をアナログ−デジタル変換するAD変換素子とを有して構成され、記憶素子には、磁界センサ3によって検出される磁界の強度と第1部材11と第2部材12との間の距離との関係を示す関係情報が記憶されている。CPUは、磁界センサ3によって検出され、AD変換素子でデジタル変換された磁界の強度を示す数値情報に基づいて記憶素子に記憶された関係情報を参照し、第1部材11及び第2部材12間の距離を演算によって求める。
【0037】
(永久磁石2の嵌合割合Rについての考察)
次に、永久磁石2の中心軸線c方向の全長(厚みt)に対する凹部110に嵌合した部分の長さ(嵌合深さD)の割合である嵌合割合Rの好適な範囲について、図4及び図5を参照して説明する。
【0038】
図4(a)〜(e)は、この嵌合割合Rが、1.0(100%)、0.5(50%)、0.25(25%)、0.1(10%)、及び0(0%)の各場合における永久磁石2から放射される磁力線を模式的に示す模式図であり、図5は、これら各場合における第1部材11と第2部材12との間の距離Lと、磁界センサ3によって検出される磁界強度Bとの関係を示すグラフである。図4(a)〜(e)において、永久磁石2の中心軸線cに沿った方向における永久磁石2のN極側の端面2bと第2部材12との間の距離は一定である。
【0039】
図4(a)〜(e)に示すように、嵌合割合Rが小さいほど、永久磁石2から放射される磁力線が永久磁石2の中心軸線cに沿って大きく延び、磁界センサ3によって検出される磁界の強度が強くなる。また、第1部材11と第2部材12との間の距離は、第1部材11の移動に伴う磁界センサ3で検出される磁界の強度の変化量が大きいほど、精度よく求めることができる。すなわち、図5から明らかなように、嵌合割合Rが小さいほど、第1部材11と第2部材12との間の距離Lの変化に応じて磁界センサ3によって検出される磁界強度Bが大きく変化し、第1部材11と第2部材12との間の距離Lの検出精度を高めることが可能となる。
【0040】
ただし、永久磁石2が凹部110に嵌合されないと、すなわち嵌合深さDがゼロであると、永久磁石2が第1部材11に対して滑ることにより永久磁石2の位置ずれが発生してしまい、第1部材11と第2部材12との間の距離を正確に測定できなくなる。また、永久磁石2が凹部110に嵌合されていても、嵌合割合Rが小さすぎると、永久磁石2が倒れやすくなってしまう。そこで、本実施の形態では、嵌合割合Rを0.1〜0.5(10〜50%)とすることで、永久磁石2の位置ずれ及び倒れの防止と、第1部材11と第2部材12との間の距離の測定精度向上との両立を図っているのである。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0042】
(1)永久磁石2は、測定対象である第1部材11に固定され、第1部材11と共に第2部材12に対して移動するので、第1部材11の移動に伴って変化する磁界強度の変化を、第2部材12に固定された磁界センサ3によって直接的に検出することができる。これにより、第1部材11の移動に伴う磁界センサ3によって検出される磁界強度の変化量を大きくすることができ、第1部材11と第2部材12との間の距離の測定精度を高めることが可能となる。
【0043】
(2)永久磁石2は、それ自体の磁力によって第1部材11に固定されているので、接着剤等の固定手段を設けることなく、永久磁石2の固定を行うことができる。これにより、永久磁石2を第1部材11に取り付ける際の工数を削減することができると共に、例えば100℃を超える高温環境においても、接着剤の接着強度の低下等を懸念することなく、永久磁石2を第1部材11に安定的に固定しておくことが可能となる。
【0044】
(3)永久磁石2は、第1部材11の凹部110に嵌合されるので、第1部材11に対する位置ずれや倒れを防止することができる。
【0045】
(4)永久磁石2の中心軸線c方向の全長(厚みt)に対する凹部110に嵌合した部分の長さ(嵌合深さD)の割合である嵌合割合Rを0.1〜0.5(10〜50%)としたので、永久磁石2の位置ずれ及び倒れの防止と、第1部材11と第2部材12との間の距離の測定精度向上とを両立させることができる。
【0046】
(5)永久磁石2としてサマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石を用いることにより、永久磁石2をフェライト磁石とした場合に比較して高い吸着力を得ることができ、第1部材11が振動又は衝撃を受けても、永久磁石2が第1部材11に対して傾いたり離脱してしまうことを抑制することができる。
【0047】
(6)永久磁石2の残留磁束密度を1.0T以上とすることにより、第1部材11への永久磁石2の固定をより確実にすることができる。
【0048】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0049】
[1]所定の接離方向に相対移動可能な第1部材(11)及び第2部材(12)間の距離を測定する距離測定システム(1)であって、前記第1部材(11)に形成された凹部(110)に一部が嵌合する永久磁石(2)と、前記第2部材(12)に固定され、前記永久磁石(2)により発生する磁界の強度を検出する磁界センサ(3)とを備え、前記第1部材(11)は、軟磁性体からなり、前記凹部(110)が前記第2部材(12)に向かって開口し、前記永久磁石(2)は、それ自体の磁力によって前記第1部材(11)に固定され、かつ前記凹部(110)への嵌合により前記離接方向に対して交差する方向への移動が規制される、距離測定システム(1)。
【0050】
[2]前記永久磁石(2)は、一対の磁極の並び方向に沿う中心軸線(C)方向の一端部(21)が前記凹部(110)に嵌合し、前記永久磁石(2)の中心軸線(C)方向の全長に対する前記凹部(110)に嵌合した部分の長さの割合が10〜50%である、前記[1]に記載の距離測定システム(1)。
【0051】
[3]前記永久磁石(2)及び前記凹部(110)は共に円柱状であり、前記永久磁石(2)の直径をDとし、前記凹部(110)の内径をDとし、前記凹部(110)における前記永久磁石(2)の嵌合深さをDとしたとき、下記式を満たす、前記[1]又は[2]に記載の距離測定システム(1)。D−D<D
【0052】
[4]前記永久磁石(2)は、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石である、前記[1]乃至[3]の何れか1つに記載の距離測定システム(1)。
【0053】
[5]前記永久磁石(2)の残留磁束密度が1.0T以上である、前記[1]乃至[4]の何れか1つに記載の距離測定システム(1)。
【0054】
[6]前記永久磁石(2)は、温度が100℃以上となる空間内に配置される、前記[1]乃至[5]の何れか1つに記載の距離測定システム(1)。
【0055】
[7]所定の接離方向に相対移動可能な第1部材(11)及び第2部材(12)間の距離を測定する距離測定方法であって、前記第1部材(11)に前記第2部材(12)に向かって開口する凹部(110)を形成し、前記凹部(110)に一部が嵌合するように永久磁石(2)を配置し、前記永久磁石(2)により発生する磁界の強度を検出する磁界センサ(3)を前記第2部材(12)に配置し、前記第1部材(11)は、前記永久磁石(2)の磁路の一部を構成する軟磁性体からなり、前記永久磁石(2)は、それ自体の磁力によって前記第1部材(11)に固定され、かつ前記凹部(110)への嵌合により前記離接方向に対して交差する方向への移動が規制され、前記磁界センサ(3)によって検出される磁界の強度に基づいて前記第1部材(11)及び前記第2部材(12)間の距離を測定する、距離測定方法。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0057】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第2部材12が固定され、第1部材11が第2部材12に対して移動する場合について説明したが、これに限らず、第1部材11が機器のフレーム等の固定部材に固定され、第2部材12が第1部材11に対して移動するように距離測定システムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…距離測定システム
11…第1部材
110…凹部
12…第2部材
2…永久磁石
3…磁界センサ
図1
図2
図3
図4
図5